JP4220733B2 - 超伝導磁気軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超伝導磁気軸受に関し、特に、電力貯蔵用フライホイールや高速回転機器等に用いられる超伝導軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
超伝導軸受は、超伝導体と磁石との間のピンニング効果を利用したものであり、物体を制御なしで非接触で安定に浮上・回転できる機能を有する軸受である。超伝導軸受における超伝導体と磁石の位置関係には、主にアキシャル軸受型配置とラジアル軸受型配置がある。図1に示すように、アキシャル軸受型配置では、超伝導体と磁石は軸方向に対向している。一方、図2に示すように、ラジアル軸受型配置では、超伝導体と磁石は動径方向に対向している。
【0003】
超伝導軸受には、単結晶状に作製された大型の酸化物系超伝導体が用いられる。しかし、単結晶状の酸化物系超伝導体には結晶方位による異方性があり、結晶の c軸に平行な方向と、結晶の c軸に垂直な方向、すなわち結晶の a軸と b軸で形成する a-b面内に平行な方向との間で、超伝導特性が大きく異なる。その結果、磁石に対する超伝導体の結晶方位をどちらに向けるかによって浮上力が大きく異なる。従来は、浮上力を大きくするため、超伝導体の c軸を磁石の方に向ける、すなわち超伝導体の c軸が磁石の面に垂直になるような結晶配置で用いられるのが一般的であった。すなわち、アキシャル軸受型配置では、超伝導体の c軸は軸方向に向いたアキシャル配向であり、ラジアル軸受型配置では、超伝導体の c軸は動径方向を向いたラジアル配向であった。
【0004】
アキシャル軸受型配置では、軸受を構成する超伝導体全体の c軸をアキシャル配向させることは可能である。しかしながら、ラジアル軸受型配置では、軸受を構成する超伝導体の c軸を軸受全周にわたってラジアル配向させることは、単一の結晶では不可能である。従って、従来技術としては、図2に示すように、いくつかの試料を作製し、それぞれを扇形状に加工し、それらを組み合わせて1つの軸受を構成する超伝導体とし、軸受を構成する個々の要素部材の c軸をラジアル配向させる手法がとられている。このとき、個々の扇形状部材間の接合方法は、個々の部材を単に冷却容器に収納することによって物理的に接合しているだけか、あるいは冷却容器に収納する際にお互いに接着剤で接合固定しているだけである。上記従来技術は、特開2001−248642号公報に記載されている。
また、回転運動する軸受に対し、並進運動する磁気浮上装置には、リニアモータ搬送装置等がある。図3に超伝導搬送装置の基本構造を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図1、図2及び図3のように複数の超伝導体で超伝導軸受を作製すると、個々の超伝導要素部材は単に物理的に結合されているだけであり、各要素部材間の境界では超伝導電流は流れない。しかも、ラジアル型軸受の場合、厳密には個々の要素部材の c軸がラジアル配向している部分は要素部材の中央部だけであり、中央部からずれるにつれて c軸と動径方向とのずれは大きくなる。そのため、軸受全体としての超伝導体の c軸が動径方向へ配向している度合いを改善するには、要素部材の数を多くすることになるが、このことは逆に超伝導電流の流れない要素部材間の境界の数も増やすことになる。従って、ラジアル軸受型配置においては、従来の方法では、軸受全体の結晶の配向性を向上させることと、超伝導電流が流れない境界面の数を低減させることが、相反する性質を有しているため、浮上力及び回転損失を改善することが難しいという問題があった。
【0006】
また、アキシャル軸受型配置でも、軸受サイズが大きくなると、単結晶状の超伝導体を一体もので作製することは困難なので、複数の超伝導体を組み合わせることになる。この場合にも、個々の超伝導体間に超伝導電流が流れないので、浮上力及び回転損失を改善することが難しいという問題があった。
【0007】
このような課題に対し、図4及び図5に示すように、超伝導体を積層構造にし、かつ、隣り合う層毎に超伝導部材同士の境界面の位置がずれるようにすることによって、全体としての超伝導体の特性の均一化を図ることが、特開2001−248642号公報に記載されている。
【0008】
複数の超伝導部材からなる超伝導磁気軸受において、個々の部材の継ぎ目、及び個々の超伝導体内の特性不均質は、全体としての超伝導体の不均一性として現れる。軸受または搬送装置に荷重等の負荷が加えられた時、超伝導体は実質的に超伝導磁石として機能し、載荷力(又は反発力、又は浮上力)を発生する。この全体としての不均質は、不均質な超伝導磁石の原因になり、たとえ永久磁石の本来の特性が均質であったとしても、回転又は並進運動時には永久磁石内に誘導電流を誘起し、エネルギー損失をもたらす。 また、さらには、永久磁石の見掛けの磁場分布均質性を低下させる。このようなエネルギー損失は、超伝導フライホイールエネルギー貯蔵装置用軸受の場合、特に低減する必要がある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決し、より簡便でかつ経済的に回転運動時に損失の少ない超伝導磁気軸受を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、以下のとおりである。
(1) 磁石と超伝導部材とが動径方向に対向するラジアル型配置の超伝導磁気軸受であって、前記超伝導部材が複数の超伝導体からなる超伝導部材であって、該超伝導部材の超伝導体同士を接合した面の少なくとも一部が、該超伝導体の接合面に接する面の何れかの面と、直交しない磁気浮上用超伝導部材であることを特徴とする超伝導磁気軸受。
(2) 前記超伝導部材がリング形状を有する部材であることを特徴とする(1)に記載の超伝導磁気軸受。
(3) 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が、前記超伝導体の接合面に接する面の何れかと、0°超45°以下の交差角度を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の超伝導磁気軸受。
(4) 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が平面であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の超伝導磁気軸受。
(5) 前記超伝導部材を構成する個々の超伝導体が単結晶状であり、かつ、該超伝導体の結晶学的c軸と回転軸とのなす角度が90°±30°の範囲内にあることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の超伝導磁気軸受。
(6) 前記c軸と回転軸とのなす角度が90°であることを特徴とする(5)に記載の超伝導磁気軸受。
(7) 磁石と超伝導部材とが軸方向に対向するアキシャル型配置の超伝導磁気軸受であって、前記超伝導部材が複数の超伝導体からなる超伝導部材であって、該超伝導部材の超伝導体同士を接合した面の少なくとも一部が、該超伝導体の接合面に接する面の何れかの面と、直交しない磁気浮上用超伝導部材であることを特徴とする超伝導磁気軸受。
(8) 前記超伝導部材がリング形状を有する部材であることを特徴とする(7)に記載の超伝導磁気軸受。
(9) 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が、前記超伝導体の接合面に接する面の何れかと、0°超45°以下の交差角度を有することを特徴とする(7)又は(8)に記載の超伝導磁気軸受。
(10) 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が平面であることを特徴とする(7)〜(9)の何れかに記載の超伝導磁気軸受。
(11) 前記超伝導部材を構成する個々の超伝導体が単結晶状であり、かつ、該超伝導体の結晶学的c軸と回転軸とのなす角度が0°±30°の範囲内にあることを特徴とする(7)〜(10)の何れかに記載の超伝導磁気軸受。
(12) 前記c軸と回転軸とのなす角度が0°であることを特徴とする(11)に記載の超伝導磁気軸受。
【0011】
【発明の実施の形態】
永久磁石と超伝導体との自立安定型の超伝導磁気浮上を例に、本発明の内容を詳述する。超伝導体が永久磁石の磁場中で超伝導状態に冷却され、その安定点で、永久磁石から発する磁束が超伝導体中に捕捉されている状況を考える。永久磁石が安定点から変位しようとした場合、永久磁石が安定点から変位するときに発生する磁束変化を打ち消すように、超伝導体内で超伝導電流が誘起される。この超伝導電流により超伝導体は磁石となり、永久磁石と超伝導磁石との間に力が作用する。この力が載荷力(反発力又は浮上力)と呼ばれるもので、安定点への復元力であり、安定磁気浮上の原理である。すなわち、磁気浮上において、超伝導体は永久磁石との変位に応じて強度を変化させる制御磁石として機能する。
【0012】
したがって、超伝導磁気浮上状態において、永久磁石と超伝導体との相対的変位が発生する場合、永久磁石の磁場分布が均一であっても、超伝導体の特性が不均一な場合は、超伝導磁石の不均一磁場により永久磁石内で誘導電流が発生し、エネルギー損失が生じる。このような、エネルギー損失を軽減するには、均質な永久磁石を用い、かつ全体としてより均一な超伝導体を用いる必要がある。超伝導体の不均質の要因には、個々の超伝導体の不均質と、個々の超伝導体間の継ぎ目による不均質がある。本発明は、主に、超伝導体間の継ぎ目による不均質を比較的簡便に改善するものである。
【0013】
超伝導体は磁石として機能することから、磁場中冷却等で着磁された個々の超伝導体及び継ぎ目の磁束分布を均質にすることが、相対運動を伴う磁気浮上におけるエネルギー損失の低減に寄与する。
【0014】
図6に十分に着磁された2つの超伝導体について、超伝導体内の超伝導電流の流れ、矢印の方向から見た磁束分布、超伝導体表面での磁束密度を、図6(a)、図6(b)、図6(c)にそれぞれ模式的に示す。図6から、磁石と対向する超伝導体の面と超伝導体同士の接合面の全部が直交している場合は、接合面で極性が反転する等、磁束密度分布は大きく変化しており、きわめて不均質な超伝導磁石になることが分かる。
【0015】
これに対して、磁石と対向する超伝導体の面と超伝導体同士の接合面の全部が直交せず、例えば、斜めに重なり合うようにして接合されている場合は、図7に示すように、接合面での磁場分布は、かなり改善される。本発明における超伝導部材の磁石との対向面と超伝導体接合面との交差角度とは、図7の場合、90°以下の狭い方の角度を意味し、30°となる。
【0016】
通常、磁気浮上において、上述した十分に着磁された状態は、安定点から完全離れた状態に対応する。実際には、磁気浮上状態においては、比較的小さな変位に対し、超伝導体の一部にのみ電流が流れる状態で機能している。図6と図7の比較において、このような場合の磁場分布は、図7の接合がより均質な磁場分布を形成する。
【0017】
上記原理に基づき、アキシャル型超伝導磁気軸受、ラジアル型超伝導磁気軸受、並進型搬送装置等を構成する場合、図1、図2、図3に示す従来の超伝導体に対し、図8ないし図10に記載の超伝導体の接合構造が、エネルギー損失の面からより優れていることが分かる。
【0018】
磁石と対向する超伝導体の面と超伝導体同士の接合面とが必ずしも斜めの平面接合である必要はない。図11に接合面の形状の例を示す。図11(a)のような曲面でもよいが、加工の容易さの点からは図11(b)の平面が好ましい。また、図11(c)ように磁石の対向面のみ接合し、反対面は接合面を形成しない方法は、均質性を大きく損なうことなく、より小型の超伝導材料で実現できることから、経済的に優れている。超伝導体間の接合界面には、非超伝導物質又はギャップ等が存在しない方が望ましいが、補強等の観点から必要な場合は、最小限にとどめることが望ましい。なお、本発明における対向面との交差角度は、接合面全部で直交していなければ良く、図11(d)及び図11(e)のように、一部に直交した部分を有する場合でも、他の接合面による改善効果により、全体として磁場分布が改善できる。
【0019】
本発明に用いる超伝導体は、ピンニング効果を発揮し得るものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは、ピンニング力の強い超伝導体が望ましい。後述する本実施例で用いた超伝導体は、QMG材と呼ばれるもので、単結晶状のREBa2Cu3Ox相(REはYを含む希土類元素及びその組み合わせ)中にRE2BaCuO5相が微細分散している酸化物系超伝導体で、液体窒素温度でピンニング力の強い材料である(特許登録番号第1869884号)。
【0020】
QMG材は、超伝導相であるREBa2Cu3Ox相の結晶学的方位における c軸に垂直な面(a−b面)間に劈開性が有り、ミクロなクラックが発生しやすい。そのため、図8ないし図10及び図12に示すような、a−b面内に超伝導電流を誘起する軸受構造又は搬送装置構造をとることが望ましい。図9及び図12は c軸と回転軸とのなす角度が0°の位置関係を示し、図8は、 c軸と回転軸とのなす角度が90°の場合を示す。また、図10は、 c軸と磁石の移動方向とが直交している場合を示す。
【0021】
一方、「Proceedings of the fifth U.S.-Japan Workshop on high Tc Superconductor(November 10, 1992, p95,Tsukuba, Japan)」にも記載されているように、単結晶状のQMG材の超伝導相には、結晶方位の揺らぎがある。c軸方向の揺らぎに関して、数mmの範囲内では、±6°程度ある。また、数cmの範囲内では、±30°程度ある場合がある。この揺らぎは、隣り合う亜粒界の方位差は数°以内であるため、臨界電流密度を極端に低下させる弱結合とはならない。上記の理由から請求項5、6、11、12の超伝導体とc軸と軸受の回転軸との方位関係を限定した。
【0022】
また、本発明に用いる磁石は、軸受構造が簡単になるので永久磁石が望ましいが、電磁石や超伝導磁石でもよい。超伝導体と対向する表面の磁束密度が大きいほど浮上力も大きくなるので、永久磁石を用いる場合には、希土類系の永久磁石のように表面磁束密度の大きい材料、例えば、Nd-Fe-B系や Pr-Fe-B系、Sm-Co系等の永久磁石が望ましい。
【0023】
超伝導体を用いた磁気軸受は、一般に、ギャップを適宜調整した上で、超伝導体が常伝導状態で永久磁石と対向させた後、液体窒素等の冷媒又は冷凍機等を用いて超伝導状態に冷却される。所定の温度に超伝導体が冷却された後、永久磁石の質量及びフライホイール等の質量が加わり、負荷が加わると超伝導体と磁石との無負荷での平衡状態から変位し、超伝導体中には超伝導電流が流れ、新たな平衡点に達する。
【0024】
軸受において、超伝導体の機械的強度の観点から回転子側が永久磁石である方が望ましいが、回転子側が超伝導体であってもよい。
【0025】
【実施例】
(参考例)
図13(a)に示すように、厚さ5mm、幅25mm、長さ約50mmの平面状の接合面を有する超伝導材料を2本、物理的に接合し、交差角度の異なる4組の超伝導部材を作製した。交差角度は90°、45°、30°、20°の4種類であり、図13(a)は90°の場合を示す。これらの超伝導体に対して、1T及び0.14Tの磁場中で77Kに冷却した後、外部磁場を取り除いたときの接合界面付近における超伝導材料表面の磁束密度分布を測定した。用いた超伝導材料は、単結晶状のYBa2Cu3Ox相中に1μm程度のY2BaCuO5相が20体積%程度分散している酸化物系超伝導体(QMG材)で、YBa2Cu3Ox相の結晶学的方位におけるc軸が板面に垂直であるように作製した。磁場印加方向は、c軸と平行であり、主に超伝導材料のa−b面内に流れる超伝導電流によるc軸方向の磁場を測定した。
【0026】
図13(b)に、交差角度90°の材料について、図13(a)中の点線が示す接合部付近の超伝導磁束密度分布を矢印が示す方向から見た様子を示す。接合部分で磁極が反転し、最低値を示す。表1及び表2に、同様に、各交差角度で接続した超伝導材料に対し、1T及び 0.14T中で冷却した場合の磁束密度分布を示す。交差角度が45°でも磁場分布を均一化する効果があり、30°以下では、極めて大きな均一化効果があることが分かる。さらに、1T中で十分な着磁を行った場合よりも、比較的弱い磁場中 (0.14T)で、超伝導体が十分に磁化していない着磁を行った場合の方が、均一化効果が大きく現れることが分かる。
【0027】
以上のように、交差角度を小さくすることによって、超伝導磁石の均質化が図られ、並進及び回転運動を伴う磁気浮上装置において、磁石との相対運動による損失が低減できることが明らかになった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
(実施例1)
図14に示すように、外径180mm、内径100mm、厚さ15mmの8分割された超伝導バルク材料と外径170mm、内径120mm、厚さ10mmのSm-Co系永久磁石を対向させ、アキシャル型超伝導磁気軸受を構成し、回転数の減衰率を測定した。超伝導材料は、単結晶状のYBa2Cu3Ox相中に1μm程度のY2BaCuO5相が20体積%程度分散している酸化物系超伝導体(QMG材)で、YBa2Cu3Ox相のc軸が回転軸と平行であるように作製した。交差角度は30°である。永久磁石は継ぎ目を有しない一体ものであり、着磁は、回転軸と平行に磁場が発生するように行った。
【0031】
真空チャンバー内において、永久磁石と超伝導材料とを10mm離した状態で超伝導体を液体窒素中(77K)に冷却した。3000rpmまで高速回転させた後、2500rpmまでに減衰する時間から、減衰率を評価したところ 2.0%/hであった。
比較材として、交差角度が90°の上記8分割された超伝導バルク材料を作製し、同様の実験を行ったところ、減衰率は、4.0%/hであった。
これらの比較から、交差角度が30°の場合、90°の場合と比べ、極めて減衰率が低くなり、損失が低下することが明らかになった。
【0032】
(実施例2)
図15に示すような、外径120mm、内径100mm、高さ50mmの8分割された超伝導バルク材料と、外径146mm、内径126mm、厚さ40mmのSm-Co系永久磁石を対向させ、アキシャル型超伝導磁気軸受を構成し、回転数の減衰率を測定した。超伝導材料は、単結晶状のGdBa2Cu3Ox相中に1μm程度のGd2BaCuO5相が20体積%程度分散し、かつ数百μmの銀粒子が15体積%程度分散している酸化物系超伝導体(QMG材)で、GdBa2Cu3Ox相のc軸が回転軸と垂直であるように作製した。交差角度は35°である。永久磁石は継ぎ目を有しない一体ものであり、着磁は、回転軸と垂直に磁場が発生するように行った。
【0033】
真空チャンバー内において、永久磁石と超伝導材料と隙間を3mm離した状態で超伝導体を液体窒素温度(77K)に冷却した。3000rpmまで高速回転させた後、2500rpmまでに減衰する時間から減衰率を評価したところ 2.8%/hであった。
比較材として、交差角度が90°の上記8分割された超伝導バルク材料を作製し、同様の実験を行ったところ、減衰率は、4.6%/hであった。
これらの比較から、交差角度が35°の場合、90°の場合と比べ、極めて減衰率が低くなり、損失が低下することが明らかになった。
【0034】
【発明の効果】
以上で述べたように、本願発明の超伝導軸受は、回転又は平行移動にともなう損失が小さく、電力貯蔵用フライホイールや高速回転機器等に用いられる超伝導軸受に好適に用いることができ、その工業的効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のアキシャル型超伝導磁気軸受の永久磁石と超伝導部材の配置例と、これに用いる超伝導部材の例を示す図である。
【図2】 従来のラジアル型超伝導磁気軸受の永久磁石と超伝導部材の配置例と、これに用いる超伝導部材の例を示す図である。
【図3】 従来の並進浮上型装置の永久磁石と超伝導部材の配置例と、これに用いる超伝導部材の例を示す図である。
【図4】 継ぎ目を覆うように超伝導材料を配置した従来技術の例を示す図である。
【図5】 継ぎ目を覆うように超伝導材料を配置した従来のラジアル型超伝導磁気軸受用の超伝導部材の例を示す図である。
【図6】 (a)十分に着磁された2つの超伝導体(交差角度=90°)及び超伝導電流の流れと、(b)これの矢印方向から見た磁束分布と、(c)超伝導体表面での磁束密度とを示す図である。
【図7】 (a)十分に着磁された2つの超伝導体(交差角度=30°)及び超伝導電流の流れと、(b)これの矢印の方向から見た磁束分布と、(c)超伝導体表面での磁束密度とを示す図である。
【図8】 本発明のラジアル型超伝導磁気軸受用の超伝導部材の例を示す図である。
【図9】 本発明のアキシャル型超伝導磁気軸受用の超伝導部材を示す図である。
【図10】 本発明の並進浮上型装置の超伝導部材の例を示す図である。
【図11】 (a)〜(e)はそれぞれ本発明における超伝導部材の接合面の例を示す図を示す図である。
【図12】 超伝導材料のc軸が軸方向と平行なラジアル型超伝導磁気軸受の超伝導部材の例を示す図である。
【図13】 (a)参考例で用いた超伝導体の一例と、これにおける(b)磁束密度分布を示す図である。
【図14】 実施例1で用いたアキシャル型磁気軸受用超伝導体を示す図である。
【図15】 実施例2で用いたラジアル型磁気軸受用超伝導体を示す図である。
Claims (12)
- 磁石と超伝導部材とが動径方向に対向するラジアル型配置の超伝導磁気軸受であって、前記超伝導部材が複数の超伝導体からなる超伝導部材であって、該超伝導部材の超伝導体同士を接合した面の少なくとも一部が、該超伝導体の接合面に接する面の何れかの面と、直交しない磁気浮上用超伝導部材であることを特徴とする超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導部材がリング形状を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が、前記超伝導体の接合面に接する面の何れかと、0°超45°以下の交差角度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が平面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導部材を構成する個々の超伝導体が単結晶状であり、かつ、該超伝導体の結晶学的c軸と回転軸とのなす角度が90°±30°の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記c軸と回転軸とのなす角度が90°であることを特徴とする請求項5に記載の超伝導磁気軸受。
- 磁石と超伝導部材とが軸方向に対向するアキシャル型配置の超伝導磁気軸受であって、前記超伝導部材が複数の超伝導体からなる超伝導部材であって、該超伝導部材の超伝導体同士を接合した面の少なくとも一部が、該超伝導体の接合面に接する面の何れかの面と、直交しない磁気浮上用超伝導部材であることを特徴とする超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導部材がリング形状を有する部材であることを特徴とする請求項7に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が、前記超伝導体の接合面に接する面の何れかと、0°超45°以下の交差角度を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導体接合面の少なくとも一部が平面であることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記超伝導部材を構成する個々の超伝導体が単結晶状であり、かつ、該超伝導体の結晶学的c軸と回転軸とのなす角度が0°±30°の範囲内にあることを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の超伝導磁気軸受。
- 前記c軸と回転軸とのなす角度が0°であることを特徴とする請求項11に記載の超伝導磁気軸受。
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