JP4219789B2 - 骨髄由来の不死化樹状細胞株 - Google Patents

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Description

本発明は、骨髄に由来する不死化樹状細胞株に関し、詳しくはSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(ts SV40 LT Tgマウス)の骨髄に由来する樹状細胞(Dendritic cell;DC)を継代培養することにより樹立することができる不死化樹状細胞株及びその製法や、その利用に関する。本発明の不死化樹状細胞株は、樹状細胞のインビトロにおける解析や樹状細胞を用いたワクチン療法の開発並びに免疫応答の修飾、増強の研究に応用できる。
従来、医薬品の安全性や有効性に関する試験研究には主として動物が用いられていたが、動物愛護の観点から動物を使用する代わりに、培養細胞等を用いてインビトロで医薬品の有効性や安全性を試験研究する技術の実用化レベルでの研究が行われている。例えば、生体組織から採取した初代培養細胞や無限増殖する不死化細胞(樹立細胞)系を用いる方法で予め試験した後に動物試験が行われている。しかし、初代細胞は初期段階ではよく増殖するが、継代培養とともに次第に増殖が停止し、やがては死滅する(この現象を細胞老化という)。さらに、初代細胞は、その特性が生体組織から採取する度に異なるという危惧に加え、継代とともに変化することが指摘されている。特に、増殖速度が非常に遅い場合や微小器官に由来する場合には、試験に供するに足る初代細胞を得ることは非常に困難であるとされている。
一方、初代培養の継代を重ねるなかで、細胞老化を免れて無限増殖する能力を獲得した不死化細胞では、安定して均一の特性を有することになるが、このような不死化細胞の多くは、その細胞が生体において本来有していた形態や機能の一部又はその全てを喪失する。そのため、このような不死化細胞株を用いた試験では、その細胞株の由来する組織での本来の特性を正確に反映することは難しいとされていた。そこで、初代細胞にras遺伝子やc−myc遺伝子などの発癌遺伝子、アデノウイルスのE1A遺伝子、SV40ウイルスのラージT抗原遺伝子、ヒトパピローマウイルスのHPV16遺伝子等を導入して細胞を形質転換し、初代細胞の有する活発な増殖能を継続的に保持し、さらに継代することによってその細胞固有の特性を喪失しない不死化細胞を樹立する試みがなされている。ところが、このような不死化細胞においても、対象とする臓器によっては、その初代細胞を調製し、これらの癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を導入する時点で、すでに幾つかの機能を喪失するため、本来の機能を保持する厳密な意味での不死化細胞の取得は困難であった。特に、増殖速度が非常に遅い場合や微小器官に由来する場合の初代細胞を調製して株化することは極めて困難であった。
これに対し、近年確立された動物個体への遺伝子導入技術を用いて、個々の細胞に癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を導入するかわりに、これらの遺伝子を安定的に染色体に組み込んだ遺伝子導入動物を作出し、個体の発生時点において既に癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を細胞の中に保有する動物の臓器から初代細胞を調製して、これを継代することによって不死化細胞を樹立する方法が報告されている。特にts SV40 LT Tgマウスの臓器から得られる不死化細胞は、その増殖や分化形質の発現を温度を変えることによって操作することができるため、非常に有効であるとされている(例えば、非特許文献1〜8参照。)。
他方、樹状細胞(DC)は造血幹細胞由来の樹枝状形態をとる細胞集団で、生体内に広く分布している。未成熟樹状細胞は、それぞれの組織に侵入したウイルスや細菌をはじめとする異物を認識して取り込み、リンパ系器官T細胞領域への移動の過程でペプチドを消化分解によって生成し、MHC分子に結合させて細胞表面に提示することにより、抗原特異的なT細胞を活性化して免疫応答を誘導する抗原提示細胞としての役割を担っている(例えば、非特許文献9、10参照。)。このように、DCはT細胞依存性の初期免疫応答を惹起できるというT細胞応答の始動にとって非常に重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献11、12参照。)。骨髄で生まれたDCは未熟な状態で、生体内の様々な組織に飲食作用をもって分布する。その未熟DCは抗原を取り込み成熟し、2次リンパ性器官へと移動する。そしてそのT細胞領域に蓄積して、体内を循環しているT細胞のうち抗原特異的なものを選択的に活性化して免疫応答を駆動する。しかし、DCのインビボにおけるこれらの詳しいメカニズムは未だ分かっておらず、インビトロにて解析する必要がある。マウスのインビトロのシステムにおいて顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を用いることにより、機能的なDCの誘導が初期培養で可能であるが、その寿命は長くても2ヶ月である(例えば、非特許文献13参照。)。近年、マウスの2次リンパ性器官である脾臓から、DCがGM−CSF依存的に長期培養(12ヶ月以上)できることが報告されたが(D1細胞:例えば、非特許文献14参照。)、未熟で抗原を取り込んでいない、骨髄などの1次リンパ組織からはDC細胞株が樹立されていない。
Transgenic Research 4, 215-225, 1995 Genes to Cells, 2, 235-244, 1997 Exp. Cell Res., 197, 50-56, 1991 Exp. Cell Res., 209, 382-387, 1993 Exp. Cell Res., 218, 424-429, 1995 Blood, 86, 2590-2597, 1995 J. Cell. Physiol., 164, 55-64, 1995 Exp. Hematol., 27, 1087-1096, 1999 Ann. Rev. Immunol. 9, 271-296, 1991 J. Exp. Med., 185, 2133-2141, 1997 Nature, 392, 245-252, 1998 Annu. Rev. Immunol., 18, 767-811, 2000 J. Exp. Med., 175, 1157-1167, 1992 J. Exp. Med., 185, 317-328, 1997
樹状細胞(DC)は免疫応答の駆動を行う重要な細胞である。しかし、DCの生体内での動態の解析や、癌免疫賦活への応用は始まったばかりであり、未解明な点が多く残されている。DCは生体から調製することで培養可能であるが、その寿命は限られており、GM−CSF等のサイトカイン存在下で培養しても、長くて1ヶ月程度しか存続できず、その後死滅する。これまでは、安定的に増殖し続ける樹状細胞の作製は非常に困難であって、樹状細胞の簡便な株化方法もなく、免疫の誘導や修飾、樹状細胞を用いた治療などに目処が立っていなかった。すなわち本発明の課題は、樹状細胞が本来有する機能・特性を保持する不死化樹状細胞株やその樹立方法、かかる不死化樹状細胞株を用いた有用物質のスクリーニング方法及びかかる不死化樹状細胞株を主成分とする細胞ワクチンを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、ts SV40 LT Tgマウスの骨髄細胞を溶血処理した後、リンパ球及びIa陽性細胞を除去し、得られた細胞をGM−CSFの存在下培養することにより樹状細胞を誘導し、継代培養を10回以上繰り返し、樹立した不死化樹状細胞株が、細胞表面にミエロイド分子及びロイコサイト分子を発現し、抗原の取込み能、抗原の提示能、及びCTL活性の誘導能を有するなど、DCが本来有している性質を備えていることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの骨髄細胞を溶血処理した後、リンパ球及びIa陽性細胞を除去し、得られた細胞をGM−CSFの存在下培養することにより樹状細胞を誘導し、継代培養を10回以上繰り返して樹立される細胞であって、細胞表面にミエロイド分子及びロイコサイト分子を発現し、抗原の取込み能、抗原の提示能、及びCTL活性の誘導能を有し、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制され、LPS刺激に応答能を有することを特徴とする不死化樹状細胞株TDC(FERM BP−08527)に関する。
また本発明は、(2)被検物質の存在下、上記(1)記載の不死化樹状細胞株を培養し、該細胞株における成熟マーカータンパク質の発現の程度を測定・評価することを特徴とする樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(3)マーカータンパク質が、ミエロイド分子、ロイコサイト分子、I−A b 、CD86及び/又はCD40であることを特徴とする上記(2)記載の樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(4)被検物質の存在下、上記(1)記載の不死化樹状細胞株を培養し、該細胞の増殖の程度を測定・評価することを特徴とする樹状細胞における細胞増殖促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(5)被検物質の存在下、上記(1)記載の不死化樹状細胞株をLPS刺激し、該細胞のIL−12産生量を測定、評価することを特徴とする樹状細胞の活性化促進又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。
さらに本発明は、(6)上記(1)記載の不死化樹状細胞株を主成分とすることを特徴とする細胞ワクチンや、(7)不死化樹状細胞株が、抗原又は抗原−IgG免疫複合体を取り込ませた不死化樹状細胞株であることを特徴とする上記(6)記載の細胞ワクチンや、(8)抗原が腫瘍抗原であることを特徴とする上記(7)記載の細胞ワクチンに関する。
本発明によれば、安定的に増殖し続ける不死化樹状細胞株を得ることができ、該樹状細胞株を用いて免疫の誘導や修飾、樹状細胞株を用いた治療法の開発など利用することができる。また、本発明によれば、当該細胞株の由来する組織における本来の機能・特性を保持しているので、これを用いた樹状細胞に対する有用物質のスクリーニング方法及び免疫応答を増強する物質を提供することができる。
本発明の不死化樹状細胞株としては、骨髄に由来する不死化樹状細胞株であればどのようなものでもよく、33℃で増殖することができ、37℃では増殖が抑制される細胞株が好ましく、この温度感受性の点を除いては、DCが本来備えている性質を有するものがより好ましい。例えば、細胞表面にミエロイド分子及びロイコサイト分子を発現し、抗原の取込み能、抗原の提示能、及びCTL活性の誘導能を有する細胞株や、LPSによる刺激により樹状細胞が成熟化、活性化され、IL−12を産生するなどLPS刺激に応答能を有する細胞株や、これらの性質を合わせ有する細胞株を好適に例示することができる。また、かかる不死化樹状細胞株の具体例として、不死化樹状細胞株TDCを挙げることができ、このTDC株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−08527(平成14年9月26日に寄託されたFERM P−19044号より移管)として、ブダペスト条約に基づく寄託がなされている。また、本発明の不死化樹状細胞株の由来は特に限定されないが、マウス等の齧歯類などの動物から得られた不死化樹状細胞株は、マウスが豊富な病態モデルを有し、薬理作用の評価に広く用いられていることから好ましい。以下、本発明の不死化樹状細胞株の製造方法を、マウスを用いた方法を例にとって説明する。
マウス由来の本発明の不死化樹状細胞株は、例えば、ts SV40 LT Tgマウスの骨髄細胞を塩化アンモニウムを用いて溶血処理した後、例えば抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗I−Ab抗体、抗ラットIg抗体とウサギ補体を用いて、リンパ球とIa陽性細胞を除去した細胞を20ng/mLのマウスリコンビナントGM−CSFを含む完全RPMI培地(5%FCS)を用いて培養し、樹状細胞(DC)を誘導し、継代培養を10回以上繰り返し、細胞表面にミエロイド分子及びロイコサイト分子を発現し、抗原の取込み能、抗原の提示能、及びCTL活性の誘導能を有する細胞株を樹立することにより得ることができる。
また、ts SV40 LT Tgマウスは、次のようにして作製することができる。SV40の複製起点(ori)を欠失させたtsA58ori(−)−2の全DNAを制限酸素BamHIで開環してpBR322に導入したプラスミドpSVtsA58(−)−2(OhnoT. et al., Cytotechnology 7, 165-172, 1991)を常法に従い大腸菌内で大量に増幅させ、この増幅したプラスミドを制限酵素BamHIで切断してベクター部位を除去し、tsA58のラージT抗原遺伝子を有するDNA断片を調製する。このラージT抗原遺伝子のプロモーターが内在するDNA断片を常法に従いマウスの全能性細胞に遺伝子導入することにより、SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を全ての細胞内に有する遺伝子導入マウス、すなわちトランスジェニックマウスを作出することができる。かかるトランスジェニックマウスは、その全ての体細胞においてtsA58のラージT抗原遺伝子が発現することになる。そして、上記全能性細胞としては、受精卵や初期胚のほか、多分化能を有するES細胞などを具体的に挙げることができる。また、全能性細胞へのDNAの導入方法としては、マイクロインジェクション法、電気パルス法、リポソーム法、リン酸カルシウム法等の公知の遺伝子導入法を用いることができる。
上記マウスの全能性細胞(培養細胞)の核を、除核未受精卵に移植して初期化すること(核移植)で卵子にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入することができる。また、前核期受精卵の雄性前核にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子をマイクロインジェクションして得られる卵子を仮親の卵管に移植して産仔を得た後、注入した遺伝子を持つ産仔を選出し、安定的にかかる遺伝子が組み込まれた個体を得ることで、個体発生時にすでにtsA58のラージT抗原遺伝子が各組織の細胞の染色体に組み込まれた遺伝子導入マウス、すなわちトランスジェニックマウスを効率よく作出することができる。
本発明の不死化樹状細胞株は、33℃において永久的増殖能を保持し、37℃においては増殖が抑制され、39℃においては増殖を停止するため、細胞固有の分化形質の発現を制御することができるという特色を有している。また、この不死化樹状細胞株は、7ヶ月以上継代培養行っても33℃で良好な増殖性を示し、樹状細胞としての機能を保持している。本発明の不死化樹状細胞株は、安定的に増殖し続けることができ、また、該樹状細胞の有する抗原取り込み能及び抗原提示能により、T細胞を活性化させることができるので細胞ワクチンとして有用である上に、免疫の誘導や修飾、樹状細胞を用いた治療の研究に用いることができる。また、以下に示すように、樹状細胞に対する有用物質のスクリーニングに用いることができる。
本発明におけるスクリーニング方法としては、被検物質の存在下、上記本発明の不死化樹状細胞株を培養し、該細胞株におけるミエロイド分子、ロイコサイト分子、I−Ab、CD86、CD40等の成熟マーカータンパク質の発現の程度を測定・評価する樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、該細胞株の増殖の程度を測定・評価する樹状細胞における細胞増殖促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、該細胞株をLPS刺激し、該細胞のIL−12産生量を測定、評価する樹状細胞の活性化促進又は抑制物質のスクリーニング方法等を挙げることができる。そして、上記スクリーニング方法により得られる樹状細胞における成熟促進物質や、樹状細胞における細胞増殖促進物質や、樹状細胞の活性化促進物質も本発明に含まれる。
上記樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニングは、不死化樹状細胞株を種々の濃度の被検物質の存在下でそれぞれ培養し、一定時間培養後に発現したマーカータンパク質の量を検出・測定し、被検物質の非存在下で培養した対照のものと比較・評価することにより行われる。例えば、樹状細胞の表面に発現する成熟度マーカータンパク質であるミエロイド分子やロイコサイト分子は、それぞれ特異抗体を用いて常法により免疫化学的に検出することにより測定することができる。また、これらに相当するmRNAの発現量を常法により検出することにより測定することもできる。上記樹状細胞における細胞増殖促進又は抑制物質のスクリーニングは、不死化樹状細胞株を種々の濃度の被検物質の存在下でそれぞれ培養し、一定時間培養後に細胞数や細胞の形態を測定・解析し、被検物質の非存在下に培養した対照のものと比較・評価することにより行われる。また、上記樹状細胞の活性化促進又は抑制物質のスクリーニングは、不死化樹状細胞株を種々の濃度の被検物質の存在下でそれぞれ培養し、一定時間培養後にIL−12の産生量を測定し、被検物質の非存在下に培養した対照のものと比較・評価することにより行われる。
本発明の細胞ワクチンとしては、上記本発明の不死化樹状細胞株を主成分とするものであれば特に制限されるものではないが、上記不死化樹状細胞株としてはヒト由来の不死化樹状細胞株が好ましく、かかるヒト由来の不死化樹状細胞株は、ヒト末梢血又は骨髄より樹状細胞株を単離し、SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入し、継代培養を繰り返すことにより、あるいはヒトの胚性幹細胞(ES細胞)にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入し、これをインビトロで樹状細胞株に分化させ、継代培養を繰り返すことにより樹立することができる。また、不死化樹状細胞株としては、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されるものや、不死化樹状細胞株が腫瘍抗原等の抗原や抗原−IgG免疫複合体を取り込ませたものが好ましい。本発明の細胞ワクチンは、インビボ又はインビトロで抗原を取り込ませ、修飾後細胞表面に抗原性のペプチドを提示する、T細胞を刺激する抗原提示細胞として用いることができる。例えば、本発明の不死化樹状細胞株の懸濁液からなる本発明の細胞ワクチンは、ヒト体内に治療用のワクチンとして接種されることになるが、37℃では増殖が抑制されることから安全性が高い。通常、細胞ワクチンとしての安全性を高めるために、加熱処理、放射線処理、あるいはマイトマイシンC処理などが必要とされるが、本発明の不死化樹状細胞株は、かかる細胞不活化処理が不要で、かつ、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されることから極めて安全性が高いワクチンということができる。
本発明の細胞ワクチン、特にヒト由来の不死化樹状細胞株を主成分とする細胞ワクチンは、ヒトに移入可能な細胞ワクチンとして、白血病、肝癌、肺癌、胃癌、大腸癌などの各種腫瘍、及び各種ウイルス、細菌等による感染症等に対して有利に利用することができる。本発明の細胞ワクチンの投与量は、患者の年齢、体重、性別、癌の種類及び癌の進行度、症状等により異なり、一概に決定できないが、現在行われている細胞ワクチン療法で注入されるのと同程度の量が患者に投与することができる。本発明の細胞ワクチンは、患者本人に使用することもできるが、骨髄バンク、臍帯血バンクの発達により、MHC適合の同種の多数の患者に投与することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(トランスジェニックマウスの作出)
SV40の温度感受性突然変異株tsA58のDNAを導入したトランスジェニックマウスは、下記の手順で作出した。
(導入遺伝子の調製)
マイクロインジェクションにはSV40の温度感受性突然変異株tsA58のゲノムDNAを遺伝子工学的手法で改変したものを使用した。tsA58のゲノムDNAを制限酵素BamHIで開環し、pBR322のBamHI部位に導入し、SfiI配列をSacIIに変換してSV40の複製起点(ori)を欠失するori(−)としたDNAクローンpSVtsA58ori(−)−2(Ohno T. et al., Cytotechnology, 165-172, 1991)から常法に従い導入用DNAを調製した。すなわち、大腸菌内で大量に増幅させることにより得られたプラスミドDNAのpSVtsA58ori(−)−2を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で消化した後、アガロース電気泳動法(1%ゲル;ベーリンガー社製)により分離し、ゲルを溶解した後、フェノール・クロロホルム処理及びエタノール沈殿処理を行いDNAを回収した。回収した精製DNAをTEバッファー(1mMのEDTAを含む10mMのTris−HCl;pH7.6)に溶解して170μg/mlの精製DNAを含む溶液を得た。このDNA溶液を注入用バッファー(0.1mMのEDTAを含む10mMのTris−HCl;pH7.6)で5μg/mlとなるように希釈して注入用DNA溶液を調製した。なお、調製したDNA溶液は注入操作まで−20℃で保存した。
(トランスジェニックマウスの作出)
マウス前核期受精卵への上記調製した注入用DNA溶液のマイクロインジェクションは下記の要領で行った。性成熟した8週齢のウィスターマウスを明暗サイクル12時間(4:00〜16:00を明時間)、温度23±2℃、湿度55±5%で飼育し、膣スメアにより雌の性周期を観察して、ホルモン処理日を選択した。まず、雌マウスにより150IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(日本ゼンヤク社製;PMSゴナドトロピン(pregnanto mare serum gonadotropin:PMSG))を腹腔内投与し、その48時間後に75IU/kgのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(三共臓器社製;プベローゲン(human chorionic gonadotropin:hCG))を投与して過剰排卵処理を行った後、雄との同居により交配を行った。hCG投与32時間後に卵管灌流により前核期受精卵を採取した。卵管灌流及び卵の培養にはmKRB液(Toyoda Y. and Chang M.C., J. Reprod. Fertil., 36, 9-22, 1974)を使用した。採取した受精卵を0.1%のヒアルロニダーゼ(シグマ社製;Hyaluronidase Typel-S)を含むmKRB液中で37℃、5分間の酵素処理を行い卵丘細胞を除去した後、mKRB液で3回洗浄して酵素を除去し、DNA注入操作までCO2−インキュベーター内(5%のCO2−95%のAir,37℃、飽和湿度)に保存した。この様にして準備したマウス受精卵の雄性前核に前記DNA溶液を注入した。注入した228個の卵を9匹の仮親に移植して出産させ80匹の産仔を得た。注入DNAのマウスへの導入は、離乳直後に断尾して得た尾より調製したDNAをPCR法により検定した[使用プライマー;tsA58−1A,5’−TCCTAATGTGCAGTCAGGTG−3’(1365〜1384部位に相当:配列番号1)、tsA58−1B,5’−ATGACGAGCTTTGGCACTTG−3’(1571〜1590部位に相当:配列番号2)]。その結果、遺伝子導入の認められた20匹(雄6匹、雌8匹、性別不明6匹)の産仔の中から性成熟期間を経過する12週齢まで生存した11ラインのトランスジェニックマウス(雄ライン:#07−2,#07−5,#09−6,#12−3,#19−5,雌ライン:#09−7,#11−6,#12−5,#12−7,#18−5,#19−8)を得た。これらのG0世代のトランスジェニックマウスとウィスターマウスを交配し、雄ファウンダーの2ライン(#07−2,#07−5)と雌ファウンダーの3ライン(#09−7,#11−6,#19−8)において次世代以降への遺伝子の伝達を確認した。
(マウス骨髄からのDCの分離・調整)
マウスはC57BL/6(B6マウス)と温度感受性SV40T抗原トランスジェニックマウス(ts SV40 LT Tgマウス;B6バックグラウンド)の2系統を用いた。また、これらマウスは全て6〜8週齢の雌を用いた。マウスの骨髄細胞を0.144M塩化アンモニウムにて赤血球lysis処理し、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗I−Ab抗体、抗ラットIg抗体(それぞれTIB207、211、154、216:Amerikan Type Culture Collection)とウサギ補体(Cedarlane社製)を用いて、リンパ球とIa陽性細胞の除去を行った。この細胞1×106/wellを20ng/mLのマウスリコンビナントGM−CSF(Peprotech社製)を含む完全RPMI培地(5%FCS)を用い、24穴プレートで培養し、6日後に樹状細胞(DC)を誘導した。ts SV40 LT TgマウスからのDCは33℃、5%CO2条件下で誘導後、継代を5×105/mL/wellで10回以上繰り返し(4〜5日ごとに培地交換、3週ごとに継代)、7ヶ月以上培養したものを用いた。なお、B6マウスからのDCは上記の方法により骨髄細胞を単離し、DCを誘導した後、37℃、5%CO2条件下で培養し、その時点で解析に用いた。
(ライトギムザ染色による形態観察)
実施例2で得られたDCのライトギムザ(Wright-Giemsa)染色を行った。B6マウスとts SV40 LT Tgマウスの2系統を起源とするそれぞれのDCをサイトスピンでスライドグラスに接着させ、ライトギムザ法(ライト染色液・ギムザ染色液、ともにメルク社製)にて染色し、可視化した。結果を図1に示す。この結果、細胞の大きさは、ts SV40 LT TgのDC(SV40T B6)の方がB6マウスのDC(初代培養B6)より大きかった。
(異なる温度での増殖能)
MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazo-lium bromide)はミトコンドリア内膜の脱水素酵素などにより開裂されて赤紫色のMTT-formazanを生成する。この呈色反応が細胞の増殖能に比例することに基づいたMTTアッセイにより、ts SV40 LT TgのDCの異なる温度(33℃、37℃、39℃)での増殖能を測定した。MTTアッセイは、5mg/mLのMTT(シグマ社製)溶液10μLを前記20ng/mLのマウスリコンビナントGM−CSF(Peprotech社製)を含む細胞懸濁液100μLに添加し、96穴プレートに7.5×103/100μL/wellで細胞をまき、測定時にMTT溶液を10μL/well添加し、経時的に測定を行った。結果を図2に示す。この結果、SV40T抗原が発現する33℃で最も増殖能が高かった。
(GM−CSF要求性)
ts SV40 LT TgのDCについて、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)要求性を検討するため、実施例4と同様な条件で、MTTアッセイを行った。すなわち、5mg/mLのMTT(シグマ社製)溶液10μLをそれぞれ20、10、2、0ng/mL濃度のマウスリコンビナントGM−CSF(Peprotech社製)を含む細胞懸濁液100μLに添加し、96穴プレートに7.5×103/100μL/wellで細胞をまき、測定時にMTT溶液を10μL/well添加し、経時的に測定を行った。結果を図3に示す。この結果、通常の初代培養のDC誘導に用いる濃度の20ng/mLで一番増殖が良かった。この不死化細胞はGM−CSF依存的に増殖する細胞であることが分かった。
(細胞表面に発現するタンパク質の検討)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCを用いて、細胞表面上に発現する代表的なタンパク質であるミエロイド分子及びロイコサイト分子の発現をFACSにて解析した。結果を図4及び図5に示す。この結果、上記2系統を起源とするDCにおけるミエロイド分子及びロイコサイト分子の発現量は共に変わらなかった。
(抗原の取込み能の比較検討)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCを用いて、10μg/mLの抗原(OVA−FITC;Molecule Probes社製)を添加後2日目に取込み能の比較検討をFACSにて行った。結果を図6に示す。この結果、ts SV40 LT TgのDCはB6マウスのDCよりも強い取込み能を示した。
(LPS刺激に対する樹状細胞の成熟化の比較検討)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCについて、それぞれのDCの培養ウェルにLPSを2μg/mL添加して、24時間後の細胞表面上の成熟度マーカーであるI−Ab、CD86とCD40の発現量をFACSにて解析した。結果を図7に示す。この結果、ts SV40 LT TgのDCにおける成熟度マーカーのアップレギュレーション、つまり成熟度はB6マウス(初代培養B6)のDCと変わらず起こることが分かった。
(LPS刺激に対する樹状細胞の活性化の比較検討)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCにおける、LPS刺激に対するDCの活性化としてIL−12p70産生量をELISAにて測定した。結果を図8に示す。この結果、それぞれのDCの培養ウェルにLPSを2μg/mL添加して、24時間後の上清中のIL−12p70産生量は2系統間で変わらなかった。
(抗原を取り込ませた場合の樹状細胞の成熟化)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCに、抗原として10μg/mLのOVA−FITCを取り込ませて、2日後にそれらの成熟度をFACSにて解析した。結果を図9に示す。この結果、B6マウス(初代培養B6)のDCの方が強い成熟度を示した。
(樹状細胞によるOVA−T細胞への抗原提示能の比較検討)
本発明者らが以前樹立したOVA特異的CD4T細胞を用いて、ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCの抗原提示能を測定した。提示能としてT細胞のIL−4産生と増殖を測定した。X線照射したDC(5×103/well)を1×105のOVA特異的T細胞と様々な濃度のOVA又はOVA−IgG免疫複合体(IC)存在下で96穴プレートにて共培養した。免疫複合体はFcγレセプターを介して抗原を取り込ませると、高効率な抗原提示が起きると言われている(J. Immunol., 161, 6059-6067, 1998、J. Exp. Med., 189, 371-380, 1999、Eur. J. Immunol., 30, 848-857, 2000、J. Exp. Med., 195, F1-F3, 2002)ことから、比較検討に用いた。なお、OVA−IgG免疫複合体(IC)は、卵白アルブミン(OVA;Sigma社製)をウサギ抗OVA IgG(BioDesign社製)を重量比1:10で混合し、37℃で1時間インキュベートして作製した。24時間後、その培養上清を回収し、T細胞のIL−4産生量をELISAにて測定した。T細胞の増殖は、48時間の共培養後、[3H]−TdRの取り込みを測定した。結果を図10に示す。この結果、2系統を起源とするそれぞれのDCは、共に同じくらいのT細胞の増殖、IL−4産生を起こした。ただ、IL−4産生において添加したOVAが1μg/mLの場合、OVA−IgG免疫複合体(IC)を抗原に用いたときに、ts SV40 LT TgのDCによるIL−4産生量はB6マウス(初代培養B6)のDCに比べて少なかった。
(経時的抗OVA抗体価)
ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCに、OVA又はOVA−IgG免疫複合体を負荷して、移入した後の経時的抗OVA抗体価を調べた。インビボの実験において、DCを培養しているウェルにOVA又はOVA−IgG免疫複合体を10μg/mL含む新鮮培地と交換後2日目に、抗原を取り込んだ成熟DCを回収してPBS(−)で洗浄し、レシピエントとなるB6マウス1匹あたりDC1×106cellsを尾静脈に移入した。免疫後、眼底より採血し、経時的な抗OVA抗体価をELISAにより測定した。結果を図11に示す。この結果、OVA−IgG免疫複合体(IC)では、2系統ともIgG1、IgG2a、IgG2bいずれにおいても効果的な抗体産生が見られた。抗原にOVAを用いたとき、IgG2aにおいてts SV40 LT TgのDCによる抗体産生が有意な差をもって高かった(2週間後)。
(抗GL−7抗体による脾臓組織の免疫組織化学染色)
マウスにDCを移入し、約3週後にそのマウスの脾臓を採取し、活性化した胚中心の指標であるGL−7の発現を免疫組織化学染色法にて検鏡した。結果を図12に示す。この結果、B6マウス及びts SV40 LT Tgマウス共に免疫複合体(IC)を抗原に用いたとき、その形成が効果的だった。これら2系統間に差は無かった。
(生体内CTL活性)
マウスへのDC移入による生体内のCTL活性を比較検討した。移入7日後のマウスの脾臓細胞を採取し、37℃のCO2インキュベーターにて30分間インキュベートすることで付着性細胞を取り除き、T細胞リッチな状態にした。この非付着性細胞1×107と、X線照射し増殖を止めたE.G7−OVA 1×106を24穴プレートにて共培養した。E.G7−OVA(CRL2113;ATCC)はB6由来のthymomaであるEL−4にOVAのcDNAをトランスフェクトしたものであり、そのMHCクラスI上には常にOVAのペプチドがロードされている。培養5日目に、E.G7−OVAをNa2 51CrO4(Amersham Pharmacia Biotech社製)で1時間かけてラベルした。様々な濃度の生脾細胞とその51CrラベルしたE.G7−OVA 1×104とを96穴Uボトムプレートにて共培養し、4時間後に上清中の51Crの放出をオートウェルガンマシステム(Aloka社製)にて測定した。結果を図13に示す。この結果、ts SV40 LT TgのDCにOVAを添加したときに、B6マウスのDCと比較すると、免疫複合体を取り込ませたときと同程度の、かなり強力なCTL活性を誘導した。
(樹状細胞におけるMHCクラスI/OVAペプチド複合体の発現)
上記実施例14において、ts SV40 LT TgのDCにOVAを添加したときに、B6マウス(初代培養B6)のDCと比較すると、免疫複合体を取り込ませたときと同程度の、かなり強力なCTL活性を誘導した理由として、DCのMHCクラスI分子上により多くの抗原由来ペプチドが提示されているのではないかと考え、MHCクラスI/OVAペプチド複合体に特異的なモノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより解析した。50μg/mlのOVA存在下で、ts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDCを48時間培養した。次いで、抗FcγRII/III抗体でFcレセプターをブロックした後、抗CD11c−PE抗体及び抗MHC I−FITC抗体、又は抗CD11c−PE抗体及び抗MHC I/OVAペプチド抗体を用いて染色した。なお、抗MHC I/OVAペプチド抗体染色の場合、2次抗体(抗マウスIgG1−FITC抗体)で染色した。染色後、フローサイトメトリー(BDLSR)で測定し、データはBD CellQuestで解析した。樹状細胞(CD11c陽性細胞)のMHC I又はMHC I/OVAペプチド細胞表面発現量をヒストグラムで示した結果を図14に示す。この結果、ts SV40 LT TgのDCのMHCクラスIの発現レベルは野生型のB6マウス(初代培養B6)とほぼ同等であったが、MHCクラスI/OVAペプチド複合体の発現はts SV40 LT TgのDCにおいて劇的に高くなっていた。すなわち、ts SV40 LT TgのDCはMHCクラスIに効率良くOVAペプチドを提示することでCTLに対する効率良い抗原提示ができる細胞であることがわかった。
(インビボにおける抗腫瘍活性)
ts SV40 LT TgのDCの生体内における増強されたCTL応答を具体的に評価するために、抗腫瘍実験を行った。OVA刺激(10μg/ml,48時間)を与えたts SV40 LT Tgマウス(SV40T B6)とB6マウス(初代培養B6)の2系統を起源とするそれぞれのDC(5×105/マウス)、又は生理食塩水(200μl)を、未感作マウス(7〜8匹)の尾静脈より投与し、7日後に再度DC又は生理食塩水を投与し、さらに7日後にOVAを発現する腫瘍細胞(E.G7)を左大腿部に1×105/マウスで植え付け、腫瘍形成を日を追って観察し、腫瘍の直径が5mm以上のものを腫瘍が形成されたと判定した。結果を図15に示す。図15における腫瘍抑制率は、腫瘍が形成されていないマウスの割合を%で表示したものである。ts SV40 LT TgのDCを移入したマウスは野生型のB6マウスのDCを移入したマウスよりも腫瘍形成が遅く、効率良く腫瘍形成を抑制した。すなはち、ts SV40 LT TgのDCは生体内において野生型DCよりも効率良く抗腫瘍活性を誘導する細胞であることが判った。
(考察)
ts SV40 LT Tgマウスの骨髄細胞から誘導して、10回以上継代し、7ヶ月以上33℃で長期培養を繰り返したDCは初期培養のそれに比べ、大きさが少々大きく、取り込み能が高いが、インビトロにおいての抗原提示能ではMHCクラスIIを介した場合で変わらない機能を持つことが分かった。このことから、インビトロにおけるDCの解析に用いるのに有用な細胞株であると考えられる。また、インビボにおいてワクチンとして用いると、特にMHCクラスIを介して強力にCTLを誘導した。これは高効率のMHCクラスIを介した提示能は高い抗原の取り込み量に依存するという報告(Annu. Rev. Immunol., 19, 47-64, 2001)と一致する。このことから、ts SV40 LT TgのDCは癌やウイルスなどに対するワクチン効果を生体内で効率よく起こすことができる。
本発明の不死化した樹状細胞株の樹状細胞とB6マウスの樹状細胞をライトギムザ染色した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株について、MTTアッセイにより温度条件を変えて増殖能を測定した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株の増殖において、GM−CSFの要求性をMTTアッセイにより測定した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞上の代表的なミエロイド分子の発現量をFACSで解析した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞表面上の代表的なロイコサイト分子の発現量をFACSで解析した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞の抗原取り込み能をFACSで解析した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞のLPS刺激に対する、樹状細胞の成熟度をFACSで解析した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞のLPS刺激に対する、樹状細胞のIL−12p70産生量をELISA法にて測定した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞にOVAを取り込ませ、2日後の成熟度をFACSで解析した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞のOVA−T細胞への抗原提示能の結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞にOVAを移入し、経時的抗OVA抗体価を示す図である。 本発明の樹状細胞株の樹状細胞を移入した後、約3週間後の、脾臓胚中心の免疫組織化学染色(抗GL−7抗体)した結果を示す図である。 本発明の樹状細胞株の樹状細胞を移入したことによる、生体内のCTL活性を比較検討した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株とB6マウスの樹状細胞におけるMHCクラスI/OVAペプチド複合体の発現量を比較した結果を示す図である。 本発明の不死化した樹状細胞株を移入したことによる、生体内での増強された抗腫瘍活性の結果を示す図である。

Claims (8)

  1. SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの骨髄細胞を溶血処理した後、リンパ球及びIa陽性細胞を除去し、得られた細胞をGM−CSFの存在下培養することにより樹状細胞を誘導し、継代培養を10回以上繰り返して樹立される細胞であって、細胞表面にミエロイド分子及びロイコサイト分子を発現し、抗原の取込み能、抗原の提示能、及びCTL活性の誘導能を有し、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制され、LPS刺激に応答能を有することを特徴とする不死化樹状細胞株TDC(FERM BP−08527)。
  2. 被検物質の存在下、請求項記載の不死化樹状細胞株を培養し、該細胞株における成熟マーカータンパク質の発現の程度を測定・評価することを特徴とする樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
  3. マーカータンパク質が、ミエロイド分子、ロイコサイト分子、I−Ab、CD86及び/又はCD40であることを特徴とする請求項記載の樹状細胞における成熟促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
  4. 被検物質の存在下、請求項記載の不死化樹状細胞株を培養し、該細胞の増殖の程度を測定・評価することを特徴とする樹状細胞における細胞増殖促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
  5. 被検物質の存在下、請求項記載の不死化樹状細胞株をLPS刺激し、該細胞のIL−12産生量を測定、評価することを特徴とする樹状細胞の活性化促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
  6. 請求項記載の不死化樹状細胞株を主成分とすることを特徴とする細胞ワクチン。
  7. 不死化樹状細胞株が、抗原又は抗原−IgG免疫複合体を取り込ませた不死化樹状細胞株であることを特徴とする請求項記載の細胞ワクチン。
  8. 抗原が腫瘍抗原であることを特徴とする請求項記載の細胞ワクチン。
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