JP4219476B2 - 薄膜形成方法及び薄膜形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成に用いられる原料溶液を微粒子化し、基板上に吹き付けて製膜する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜形成方法としては、減圧下でソースを蒸発させてガラス基板に膜を形成するスパッタリング法及び物理的蒸着法や、塗布焼結法及び化学的蒸着法(CVD法)等が知られている。
【0003】
スパッタリング法や物理的蒸着法は減圧のための真空装置を必要とするために装置費用が非常に高くなる。特に大面積の膜を作製するには大型の装置が必要になり装置費用が極めて高額になる。さらに均一な膜質のものを得ようとすると製膜速度が遅くなり大量生産上問題があった。
【0004】
また塗布焼結法は、原料ペーストを基板上にスクリーン印刷した後、連続ベルト炉で焼結するものであり、装置費用は比較的安価であるが、原料ペースト中の粒径が比較的大きいことに依存して焼結時の空隙が多数残り、高品位で均一な膜を得ることは難しい。
【0005】
CVD法は、原料ガスが高温に加熱されているために、直接原料ガスの流量を制御することが難しく、これまではキャリアガスの流量調節と原料容器の加熱設定により、原料ガスの導入量を制御していた。このため反応容器の形状、容量及び原料残量により流量が変化してしまい、均一な膜質が得ることが困難である。またソース材料とドーブ材料の蒸気圧が異なるために膜中のドーブ量を制御することも難しい。
【0006】
また、最近、前記CVD法の欠点を改良する目的で、液体原料の供給量を液体流量制御器で制御すると共に、前記流量制御器の直後に前記原料分子が吸収し得る振動数の振動を与え、液体流量制御器出口から流出する前記原料を微粒子化することで均一な膜質の薄膜を得る方法が開発されている。しかしながら前記方法を用いても大面積の基板に均一に膜を形成するのは困難であり、量産性にも問題がある。
【0007】
さらに大面積の基板に安価で再現性良く膜を形成する方法として、原料溶液を超音波振動により微粒子化した後、加熱して溶媒を気化分離し、さらに原料を液化した後に基板上に吹き付けて膜を形成する方法が考案されている。しかしこの方法では、微粒子化してから吹き付けまでの間に微粒子が再疑集して巨大粒子となり膜質を低下させたり、また基板上各部への微粒子の吹き付け流量が不安定になると同時に基板温度のバラツキも大きくなり膜質が低下する。さらに大型の基板の場合、加熱による変形が大きいため、基板上各部で微粒子の膜形成量が異なってくる結果、膜厚のバラツキが生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題に鑑み、本発明は、大面積でかつ均一な膜質の薄膜を安価に再現性良く製造できる工業的方法を提供することを目的とする。また、本発明はそのような薄膜を工業的に製造しうる装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の薄膜の形成方法は、原料溶液を超音波振動槽で微粒子化した後、得られた微粒子をキャリアガスと共に微粒子吹き付けノズルを介して加熱基板上に吹き付けて薄膜を形成する方法において、記微粒子吹き付けノズル内の供給経路と排出経路は共に複数のゾーンに分割されており、前記分割されたゾーン毎に流量調節弁が設けられて前記微粒子の流量及び流速を独立して制御すると共に、前記分割されたゾーン毎に温度調節器が配置されて前記微粒子の温度を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の薄膜の形成装置は、原料溶液を微粒子化する超音波振動槽と、得られた微粒子をキャリアガスと共に加熱基板上に吹き付けて薄膜を形成する微粒子吹き付けノズルとを有する薄膜形成装置において、記微粒子吹き付けノズル内の供給経路と排出経路は共に複数のゾーンに分割されており、前記分割されたゾーン毎に前記微粒子の流量及び流速を制御する流量調節弁と、前記分割されたゾーン毎に前記微粒子の温度を制御する温度調節器とが設置されていることを特徴とする。
【0021】
前記本発明の方法(又は装置)は、上記の微粒子吹き付け用ノズルを採用することにより、大型基板上に再現性良く均一に且つ安価に薄膜を形成することができる。
【0022】
すなわち、微粒子化した原料溶液を、加熱された基板上に吹き付け、微粒子が気化乾燥し基板上で熱分解し薄膜が形成される工程において、上記の微粒子吹き付け用ノズルを設置することで、大型の基板に対しても均等に微粒子を吹き付けることができ、且つ熱分解のバラツキが低減されるので、薄膜の均一な堆積が可能になる。
【0023】
さらに本発明の方法及び装置は、反応容器の形状、容量に制約されることなく付加的に設置できるので、太陽電池の化合物半導体膜や、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)の透明導電性膜及び/又は誘導体保護膜等の形成に使用する薄膜形成用反応装置のみならず、スピンコートをはじめとする各種のコーティング装置へも適用することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づき、本発明の一実施の形態を示す。
【0025】
図1に、本発明の微粒子化装置の概略構成を示す。
【0026】
1は原料溶液12を微粒子化するためのの微粒子化槽であり、その内部の底面には原料溶液12に超音波振動を伝えるための超音波振動子2が固定されている。超音波振動子2により微粒子化された原料は、流量計10を介して供給されるキャリアガスと共に微粒子流出口11より流出され、後述する微粒子吹き付けノズル(図2参照)へ送られる。
【0027】
3は微粒子化槽1に原料溶液を供給するための供給槽である。供給槽3内の原料溶液12はポンプ4により微粒子化槽1に供給される。過剰に供給された原料溶液は、微粒子化槽1内に設置したオーバーフロー管5から供給槽3に戻され、微粒子化槽1内の原料溶液の液面が常に一定に保たれるようになっている。これにより、微粒子化量の経時的な変動が少なくなる。
【0028】
前記供給槽3の外部には原料溶液12を貯蔵する主タンク8が設置され、主タンク8内の原料溶液12がポンプ9を介して供給槽3に随時供給される。供給槽3内には液面レベルセンサー6,7が設置されており、これからの信号をもとに制御回路13がポンプ9を駆動して、供給槽3内の原料溶液12の液面レベルが所定高さとなるように管理される。
【0029】
図2に、本発明の微粒子吹き付けノズル、分級装置及び圧力緩衝器の構成例を示す。
【0030】
15は分級装置であり、微粒子化装置14(図1の微粒子化槽1に相当する)から流出してきた微粒子の内、粗大粒子が遠心力により壁面に付着し系外に除外され、残りの微粒子のみが圧力緩衝器16に流入する。粗大粒子が除去される結果、微粒子の粒径が均一化され、膜厚が均一で、経時的な膜厚変動が少ない薄膜が得られる。
【0031】
圧力緩衝器16に流入してきた微粒子は、圧力緩衝器16の内部にほぼ均一に拡散されるとともに、キャリアガスの圧力変動が緩和される。この結果、経時的に安定した微粒子の供給が可能となり、均一な膜厚を有する薄膜を形成することができる。
【0032】
その後、微粒子は、反応装置18内に組み込まれた微粒子吹き付けノズル17に導入される。微粒子吹き付けノズル17内の、微粒子供給経路20と微粒子排出経路21は共に複数に分割されており、それぞれのゾーンには流量調節弁19が設けられ、各経路の流量及び流速を独立して制御できるようになっている。これにより大面積を有する基板に対しても均一な薄膜を形成することができる。
【0033】
さらにこれらのゾーン毎に、温度調節器23が配置され、微粒子温度を制御できる構造になっている。本実施の形態の温度調節器23は、ゾーンの温度を検知する温度センサー23aと、ゾーン内の微粒子の加熱を行なう微粒子加熱用ヒーター26と、温度センサー23aからの信号をもとにヒーター26に給電を行ない所定温度に制御する制御装置23bとから構成される。これにより、大面積を有する基板に対しても、熱分解のばらつきを抑えることができるので、膜質の均一な薄膜が形成できる。
【0034】
微粒子吹き付けノズル17の下部には、微粒子の吹き出し口から排気口までの周囲に囲い22が設けてあり、微粒子吹き付けノズル17の外部からの影響が及びにくい構造になっている。これにより、上記により設定された各ゾーンの微粒子の流量と流速、及び温度条件を一定に維持することが容易になり、安定した薄膜形成が可能になる。
【0035】
微粒子は、これらの機構を具備したノズル17に流入して、微粒子加熱用ヒーター26により加熱され、流出口から出て、基板加熱用ヒーター25で加熱された基板24上に吹き付けられた後、排出口から吸入され、系外に排出される。
【0036】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を示すことにより本発明をより具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
原料溶液として、ジブチルチンスズクロライド20重量%とフッ酸0.5重量%を含有する水溶液を図1の微粒子化装置に入れた。超音波振動子の出力を100V、6A、100kHzとし、キャリアガスとして空気を260リットル/分流した。図1に示す本発明の装置により、原料溶液の微粒子化量は約3g/分に制御できた。微粒子化装置の後には、図2の分級装置、圧力緩衝器及び微粒子吹き付けノズルを備え付けた装置をセットした。ノズルは5分割し、中央のゾーンの流量調節弁の開口度を50%、その両側のゾーンの開口度を75%とし両端の開口度を100%として、約600℃に加熱したガラス基板上に向けて微粒子を吹き付けた。この時、各ゾーンの温度は300℃になるように制御した。また同様にして、連続的に60分間原料溶液を流し、膜厚の時間的変化も追跡した。
【0038】
ガラス基板として、図3に示すように、35cm×35cmの正方形のものを用いた。前記本実施例に従って酸化スズ膜を形成した時のガラス基板を図3のように9つの領域に分割して、各部の膜厚分布を測定した結果を図4に示す。また、前記の膜厚の時間変化を図5に示す。図5において横軸は時間、縦軸は膜厚を示す。
【0039】
(比較例1)
実施例1で使用した図1,図2の装置に代えて、図6及び図7に示したような装置を用いた以外は、実施例1と同じ条件で酸化スズ膜を形成した。
【0040】
図6において、32は原料溶液37を微粒子化するためのの微粒子化槽であり、その内部の底面には原料溶液37に超音波振動を伝えるための超音波振動子33が固定されている。超音波振動子37により微粒子化された原料は、流量計36を介して供給されるキャリアガスと共に流出口38より流出され、後述する図7の反応装置29へ送られる。35は微粒子化槽32に原料溶液を供給するための供給槽である。供給槽35内の原料溶液37はポンプ34により微粒子化槽32に供給される。
【0041】
図7において、微粒子化装置27(図6の微粒子化槽32に相当する)から流出してきた微粒子はキャリアガスとともに反応装置29内に供給され、基板加熱用ヒーター31で加熱された基板30上に吹き付けられ、反応装置29の下端と基板30との間の隙間から系外に排出される。28は供給された微粒子を加熱する微粒子加熱用ヒーターである。
【0042】
実施例1と同様に、図3のガラス基板上に形成された酸化スズ膜の各部の膜厚分布を図4に示す。また、膜厚の時間的変化を図5に示す。
【0043】
図4、図5より明らかなように、本実施例によると、基板内での膜厚のバラツキが少なく、また時間的な膜厚の変化も少ない、均一な薄膜が形成できることが分かる。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、大面積でかつ均一な膜質の薄膜を安価に再現性良く製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原料溶液の微粒子化装置の一例を示した概略図。
【図2】本発明の薄膜形成装置の一例を示した概略図。
【図3】実施例で使用したガラス基板の大きさ及び領域分割を示した平面図。
【図4】本発明の効果を示すために、本発明により酸化スズ膜を形成した実施例1と、従来法により酸化スズ膜を形成した比較例1の、基板各部の膜厚のバラツキを比較して示した図。
【図5】本発明の効果を示すために、本発明により酸化スズ膜を形成した実施例1と、従来法により酸化スズ膜を形成した比較例1の、膜厚の時間的変化を比較して示した図。
【図6】従来の薄膜形成装置に使用される微粒子化装置の概略図。
【図7】従来の薄膜形成装置の概略図。
【符号の説明】
1 微粒子化槽
2 超音波振動子
3 供給槽
4 ポンプ
5 オーバーフロー管
6 液面レベルセンサー
7 液面レベルセンサー
8 主タンク
9 ポンプ
10 流量計
11 微粒子流出口
12 原料溶液
13 制御回路
14 微粒子化装置
15 分級装置
16 圧力緩衝器
17 微粒子吹き付けノズル
18 反応装置
19 流量調節弁
20 微粒子供給経路
21 微粒子排気経路
22 囲い
23 温度調節器
24 基板
25 基板加熱用ヒータ
26 微粒子加熱用ヒータ
27 微粒子化装置
28 微粒子加熱用ヒータ
29 反応装置
30 基板
31 基板加熱用ヒータ
32 微粒子化槽
33 超音波振動子
34 ポンプ
35 供給槽
36 流量計
37 原料溶液

Claims (16)

  1. 原料溶液を超音波振動槽で微粒子化した後、得られた微粒子をキャリアガスと共に微粒子吹き付けノズルを介して加熱基板上に吹き付けて薄膜を形成する方法において、
    前記微粒子吹き付けノズル内の供給経路と排出経路は共に複数のゾーンに分割されており、前記分割されたゾーン毎に流量調節弁が設けられて前記微粒子の流量及び流速を独立して制御すると共に、前記分割されたゾーン毎に温度調節器が配置されて前記微粒子の温度を制御することを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 記微粒子吹き付けノズルの吹き出し口から排気口までの周囲に囲いを設けた状態で薄膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  3. 記微粒子を含むキャリアガスを前記微粒子吹き付けノズルに供給するに先立って、微粒子の分級を行ない粗大粒子を除去することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  4. 記微粒子を含むキャリアガスを圧力緩衝器に通過させた後に、前記微粒子吹き付けノズルに供給することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  5. 記超音波振動槽に前記原料溶液を供給するとともに、前記超音波振動槽内の所定高さ設置した排出口に前記原料溶液をオーバーフローさせて、前記原料溶液の液面を一定に維持することにより前記微粒子化量を制御することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  6. 前記薄膜が太陽電池の化合物半導体膜に供される請求項1〜のいずれかに記載の薄膜形成方法。
  7. 前記薄膜がプラズマ・ディスプレイ・パネルの透明導電性膜及び/又は誘導体保護膜に供される請求項1〜のいずれかに記載の薄膜形成方法。
  8. 前記薄膜がスピンコーティング用膜に供される請求項1〜のいずれかに記載の薄膜形成方法。
  9. 原料溶液を微粒子化する超音波振動槽と、得られた微粒子をキャリアガスと共に加熱基板上に吹き付けて薄膜を形成する微粒子吹き付けノズルとを有する薄膜形成装置において、
    前記微粒子吹き付けノズル内の供給経路と排出経路は共に複数のゾーンに分割されており、
    前記分割されたゾーン毎に前記微粒子の流量及び流速を制御する流量調節弁と、前記分割されたゾーン毎に前記微粒子の温度を制御する温度調節器とが設置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
  10. 記微粒子吹き付けノズルの吹き出し口から排気口までの周囲に囲いが設置されていることを特徴とする請求項9に記載の薄膜形成装置。
  11. 記超音波振動槽と微粒子吹き付けノズルとの間に微粒子の分級装置を備えたことを特徴とする請求項9に記載の薄膜形成装置。
  12. 記微粒子吹き付けノズルの直前に圧力緩衝器を備えたことを特徴とする請求項9に記載の薄膜形成装置。
  13. 前記超音波振動槽は、その内部に所定高さ設置した排出口を有し、供給される前記原料溶液を前記排出口からオーバーフローさせて、前記原料溶液の液面を一定に維持することにより前記微粒子化量が制御できるようにしてあることを特徴とする請求項9に記載の薄膜形成装置。
  14. 前記薄膜が太陽電池の化合物半導体膜に供される請求項9〜13のいずれかに記載の薄膜形成装置。
  15. 前記薄膜がプラズマ・ディスプレイ・パネルの透明導電性膜及び/又は誘導体保護膜に供される請求項9〜13のいずれかに記載の薄膜形成装置。
  16. 前記薄膜がスピンコーティング用膜に供される請求項9〜13のいずれかに記載の薄膜形成装置。
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