JP4218276B2 - ころ軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車などの自動変速機(オートマチック・トランスミッション)などでは、相対回転する軸体と外筒との間の環状空間に、針状ころ軸受が用いられている。
【0003】
この針状ころ軸受は、通常、シェル形の外輪と、複数の針状ころと、保持器リングとを含む構成になっている。
【0004】
例えば上記外筒と軸体との間の環状空間で針状ころ軸受の一側から他側へ向けて潤滑油の通過流量を制限したい場合があり、そのような場合に、例えば特開平6−330952号公報や実開平4−74727号公報に示すように、上記針状ころ軸受に対して、潤滑油の通過流量を制限するための部品を組み込むことが考えられている。この部品については、外輪に対して非回転状態に取り付けられて、軸体の外周面に対して微小隙間を介して対向されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、潤滑油の通過流量を制限するために、軸受と別体の部品を用いているから、部品点数ならびに組立工数が多くなっているなど、コストアップを余儀なくされている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ少なくとも軸方向一側に径方向内向きのフランジを有する外輪と、この外輪の内周で円周数ヶ所に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころとを含み、前記外輪が、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作されるシェル形の外輪とされており、前記外輪の軸方向一側のフランジに、前記軸体の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される小径円筒部が一体に設けられ、前記小径円筒部に、前記外筒の内周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される径方向外向きのフランジが一体に設けられている。
【0007】
この場合、外輪に対して、潤滑油の通過流量を制限するための小径円筒部を一体に設けて、従来例のような別部品を省略しているから、従来例に比べると部品点数、組立工数を低減できる点で有利となる。
【0008】
ところで、上記外輪は、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作されるシェル形の外輪とすることができる。この場合、外輪に小径円筒部を設ける分、プレス加工の工数を増やす必要があるものの、簡単に製作できるようになる。
【0009】
また、本発明は、外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ少なくとも軸方向一側に径方向内向きのフランジを有する外輪と、この外輪の内周で円周数ヶ所に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころと、前記外輪の内周に収納されて前記ころそれぞれを保持する保持器リングとを含む。前記保持器リングが、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作されているものであり、前記保持器リングの軸方向一側に、前記軸体の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される小径円筒部が一体に設けられ、前記小径円筒部に、前記外輪の内周面に対して微小な隙間を介して対向される径方向外向きのフランジが一体に設けられている。
【0010】
この場合、保持器リングに対して、潤滑油の通過流量を制限するための小径円筒部を一体に設けて、従来例のような別部品を省略しているから、従来例に比べると部品点数、組立工数を低減できる点で有利となる。
【0011】
なお、上記保持器リングは、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作することができる。この場合、保持器リングに小径円筒部を設ける分、プレス加工の工数を増やす必要があるものの、従来例に比べると部品点数、組立工数を低減できる点で有利となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1および図2に本発明の実施形態1を示している。この実施形態1では、ころ軸受として針状ころ軸受を例に挙げる。図中、1は外筒、2は軸体、3は針状ころ軸受である。
【0014】
外筒1と軸体2との間の環状空間に針状ころ軸受3が介装されており、前記環状空間において針状ころ軸受3の一側に潤滑油が存在する場合に、この潤滑油が針状ころ軸受3を通過して他側へ流出する量を制限できるように工夫している。
【0015】
詳しくは、針状ころ軸受3は、シェル形の外輪4と、複数の針状ころ5と、保持器リング6とを含む構成である。
【0016】
シェル形の外輪4は、外筒1の内周面に対して例えば圧入により嵌合固定されるもので、円筒部4aの軸方向両側に径方向内向きのフランジ4b,4cが設けられている。このシェル形の外輪4において一方のフランジ4bの内周に、軸方向外方へ延びる小径円筒部4dが一体に設けられており、この小径円筒部4dに対して径方向外向きのフランジ4eが一体に設けられている。
【0017】
保持器リング6は、シェル形の外輪4の内周に非分離に組み込まれるもので、上半分の断面がほぼU字形に形成されている。詳しくは、保持器リング6は、軸方向でほぼ平行に対向する環状板部6a,6bの内周において円周数ヶ所を架橋部6cで連接した形状になっている。この周方向で隣り合う架橋部6cの間に針状ころ5が収納されるポケット6dを作っている。
【0018】
なお、上記シェル形の外輪4と保持器リング6は、一枚の金属板(薄鋼板など)をプレス加工により屈曲して製作されるものである。
【0019】
このようなシェル形の外輪4では、小径円筒部4dとフランジ4eを設けている分、従来例のシェル形の外輪に比べてプレス加工の工数を増やす必要がある。また、シェル形の外輪4は、その他方のフランジ4cを屈曲する前の状態で、保持器リング6に対して針状ころ5を収納した組立体を組み込んでから、前記フランジ4cを屈曲させるようにしたものである。そのために、前記フランジ4cや、前記円筒部4aにおいてフランジ4c寄りの領域は、円筒部4aの軌道面領域よりも薄肉に設定されている。
【0020】
なお、保持器リング6の各架橋部6cは、針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)よりも内径側に位置されており、図2に示すように、周方向で隣り合う架橋部6cの離隔寸法W1は、針状ころ5の直径Rよりも小さく設定されている。なお、各架橋部6cの周方向両端の面は、それぞれ保持器リング6の中心からポケット6dの中心を結ぶ直線に対して平行になっている。これにより、保持器リング6のポケット6dから針状ころ5が径方向内向きに抜け出ないように構成されている。
【0021】
さらに、上記シェル形の外輪4に対して設けた小径円筒部4dは、シェル形の外輪4の軌道面よりも小径に設定されているとともに、軸体2の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向されている。この小径円筒部4dと軸体2との間の隙間において径方向幅や軸方向長さについては、潤滑油の通過流量を制限する度合いに応じて適宜設定するのが好ましい。また、シェル形の外輪4に対して設けたフランジ4eは、外筒1の内周面に対して微小の隙間を介して対向されている。
【0022】
つまり、上記シェル形の外輪4に設けた小径円筒部4dとフランジ4eが、外筒1と軸体2との間の環状空間において針状ころ軸受3の一側から他側へ向けて潤滑油が通過する流量を制限するようになっている。なお、針状ころ軸受3を挟む両側の空間で潤滑油の通過流量を可及的に低減するように制限するには、上記小径円筒部4dと軸体2との間の隙間およびフランジ4eと外筒1との間の隙間を可能な限り小さくするのが好ましい。
【0023】
以上説明した実施形態では、針状ころ軸受3に備えるシェル形の外輪4に対して潤滑油の通過流量を制限するための小径円筒部4dを一体に設けて、従来例のような別部品を省略しているから、従来例に比べて部品点数や組立工数を減らすことができ、製造コストの低減に貢献できる。
【0024】
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0025】
(1)図3に本発明の実施形態1に関連する参考例を示している。この参考例では、上記実施形態1で示したシェル形の外輪4において径方向外向きのフランジ4eを省略している。この場合でも、シェル形の外輪4の小径円筒部4dが針状ころ軸受3の内部を通過する潤滑油の流量を制限できる。しかも、シェル形の外輪4をプレス加工で製作する場合だと、曲げ工程を1つ減らせるので、その分、ローコスト化が可能になる。
【0026】
(2)図4から図6に本発明の実施形態3を示している。この実施形態3では、保持器リング6として上半分の断面がほぼM形に形成されたものを用いており、その一方の環状板部6aの内周に小径円筒部6eを一体に設けているとともに、この小径円筒部6eに径方向外向きのフランジ6fを一体に設けている。この保持器リング6は、シェル形の外輪4の内部に収納されており、そのようにするために、外輪4の軸方向寸法が長く設定されている。この小径円筒部6eは、軸体2の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向されており、フランジ6fは、外輪4の内周面に対して微小の隙間を介して対向されている。なお、保持器リング6は、ポケット6dから針状ころ5が径方向内外に抜け出ないように構成されている。つまり、保持器リング6において、周方向で隣り合う各架橋部6cの軸方向中間は、針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)よりも内径側に位置されており、図5に示すように、周方向で隣り合う架橋部6cの軸方向中間での離隔寸法W2は、針状ころ5の直径Rよりも小さく設定されている。また、保持器リング6において、周方向で隣り合う各架橋部6cの軸方向両端は、針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)よりも外径側に位置されており、図6に示すように、周方向で隣り合う架橋部6cの軸方向両端での離隔寸法W3は、針状ころ5の直径Rよりも小さく設定されている。
【0027】
この実施形態3では、保持器リング6をプレス加工により製作することができる。この場合、保持器リング6に小径円筒部6eを設ける分、プレス加工の工数を増やす必要があるものの、従来例のような別部品を用いる場合に比べると部品点数、組立工数を低減できる点で有利となる。
【0029】
(3)上記実施形態1,3では、針状ころ軸受3を例に挙げたが、ころ軸受とすることができる。
【0030】
(4)上記実施形態1に示す針状ころ軸受3において、保持器リング6を用いていないものも本発明に含まれる。
【0031】
(5)上記実施形態1,3において、外輪4についてその軸方向両端にフランジ4b,4cを設けたものに限定されず、図示しないが、外輪4の軸方向一端のみにフランジを設けているものも本発明に含まれる。
【0032】
(6)上記保持器リング6は、上記実施形態1,3に示した断面形状のもの以外に、図示しないが周知のいろいろな形状に変更することができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明では、ころ軸受に備える外輪または保持器リングに対して、潤滑油の通過流量を制限するための小径円筒部および径方向外向きのフランジを一体に設けて、従来例のような別部品を省略しているから、従来例に比べて部品点数や組立工数を減らすことができ、製造コストの低減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【図2】 図1の(2)−(2)線断面の矢視図
【図3】参考例に係る針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【図4】本発明の実施形態3に係る針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【図5】 図4の(5)−(5)線断面の矢視図
【図6】 図4の(6)−(6)線断面の矢視図
【符号の説明】
1 外筒 2 回転軸
3 針状ころ軸受 4 シェル形の外輪
5 針状ころ 6 保持器リング
4b 外輪のフランジ 4d 外輪の小径円筒部
Claims (2)
- 外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、
前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ少なくとも軸方向一側に径方向内向きのフランジを有する外輪と、この外輪の内周で円周数ヶ所に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころとを含み、
前記外輪が、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作されるシェル形の外輪とされており、前記外輪の軸方向一側のフランジに、前記軸体の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される小径円筒部が一体に設けられ、前記小径円筒部に、前記外筒の内周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される径方向外向きのフランジが一体に設けられている、ころ軸受。 - 外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、
前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ少なくとも軸方向一側に径方向内向きのフランジを有する外輪と、この外輪の内周で円周数ヶ所に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころと、前記外輪の内周に収納されて前記ころそれぞれを保持する保持器リングとを含み、
前記保持器リングが、一枚の金属板をプレス加工により屈曲して製作されているものであり、前記保持器リングの軸方向一側に、前記軸体の外周面に対して潤滑油の通過流量を制限する隙間を介して対向される小径円筒部が一体に設けられ、前記小径円筒部に、前記外輪の内周面に対して微小な隙間を介して対向される径方向外向きのフランジが一体に設けられている、ころ軸受。
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