JP4216213B2 - 液晶光変調器およびそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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液晶光変調器は、他の電気光学効果を示す光学結晶に比べて低電圧で動作するため、表示装置用の電気光学素子として、近年注目されている。
このような液晶光変調器においては、電圧印加に伴う液晶分子の配向変化に応じて旋光能が変化するため、この変化を利用して入射光を変調するようにしている。
上述したような、液晶内に合成樹脂を混合してなる複合体(以下、液晶・樹脂複合体と称する)では、樹脂表面における液晶の配向規制力が働くため、液晶内に合成樹脂を分散しないものと比べて、高速な応答が得られる。それにより、フラットパネルディスプレイや投写型ディスプレイ等への適用が期待されている。
すなわち、前者の液晶光変調器においては、透明基板上にポリイミド膜等の配向膜を均一に塗布した状態で高温焼成処理を施し、さらに液晶分子を配向させるための摩擦(ラビング)処理を施す必要があるため、それに伴う微細塵や静電気の発生により、製造歩留りが低下して、製造コストが高くなる。
対向配置された1対の透明電極膜と、
該1対の透明電極膜の間であって、この透明電極膜の面方向に、所定間隔をおいて互いに平行となるよう、該透明電極膜に対して固定配置された複数本の樹脂繊維と、
これら複数本の樹脂繊維の間に各々充填された液晶と、
前記液晶の層厚を設定保持する、前記1対の透明電極膜間に介在するスペーサと、
を備えた液晶光変調器において、
前記樹脂繊維の各々が、直径が10μm以下の樹脂繊維単位を複数本ずつ束ねられ、全体としての直径が2〜50μmとされてなり、
前記1対の透明電極膜の少なくとも一方が、プラスチックフィルムよりなる透明基板上に形成されてなることを特徴とするものである。
さらに、ポリイミド等の配向膜の高温焼成処理が不要となるため、プラスティック基板を使用することができ、軽量で柔軟な液晶光変調器や液晶表示装置を容易に構成できる。
さらに、従来、光重合反応処理を行なうための精密な温度管理が不要とされ、液晶・樹脂複合体の再分離の後に液晶中に残留している合成樹脂による液晶の電気光学特性(応答時間やコントラスト比)の低下を生じる虞もない。
図1に示すように、本実施形態の液晶光変調器は、透過型の液晶光変調器であって、対向配置された1対の透明電極膜2(図示されない透明基板の内側に付設されている)と、これら1対の透明電極膜2の間に、等しい間隔をおいて互いに平行となるように、一方の透明電極膜2に対して固定配置された複数本の微細な樹脂繊維3と、これら各樹脂繊維3の間に各々充填されたネマティック型の液晶1とを備えている。
また、上記各透明電極2はリード線4を介して、交流電圧を供給する電圧源5に接続されている。
すなわち、透明電極2間に印加される電圧の強度に応じて、液晶1の配向性が変化するため、一方の偏光板6に入射した光7は、この液晶1により偏光方向が変化し、他方の偏光板6の光吸収により強度変調された光8として出射される。
その結果、透明電極2に電圧が印加されていない場合、各樹脂繊維3の間では液晶材料の弾性により、液晶1の各分子が一方向に配向される。
したがって、図示されない透明基板の外側に、偏光透過軸が互いに直交もしくは平行とされた2枚の偏光板6を配設することにより、光変調機能を得ることができる。
この場合、高い配列秩序に液晶1の各分子を配向させて高コントラスト比を得るためには、上述したように樹脂繊維3の表面分子も樹脂繊維3自体の伸びる方向に配向されていることが望ましい。
また、隣接する樹脂繊維3の間隔を、小さくするほど液晶1の各分子の配向が容易となるが、その一方で、このように間隔を小さくするほど液晶1が存在する光変調部の面積比率が減少してしまう。そこで、液晶表示装置を構成するのであれば、隣接する樹脂繊維3の間隔を単位画素の間隔とし、画素間の遮光部として設けられるブラックマトリックス部と位置を一致させるようにして樹脂繊維3を配設することが望ましい。
なお、樹脂繊維3の太さとしては、成形や取り扱いの容易さを勘案すると、2μmから50μmの間の値に設定することが望ましい。
なお、樹脂繊維3は一本づつ配置しても良いが、機械的な強度の確保や取り扱いの容易さを考慮して、複数の繊維を束ねたものを樹脂繊維3としてもよい。
また、配向性に優れた樹脂材料として、液晶性のモノマを硬化させた合成樹脂や、高分子液晶を用いることも可能である。
ただし高速応答を得るには、低粘性かつ高弾性の液晶材料が適しており、化学構造としては、液晶1の屈折率異方性Δn(Δn=異常光屈折率ne−常光屈折率no)が大きいシアノ系、ビフェニール系、ターフェニール系、ピリミジン系、トラン系あるいはフッ素系等のネマティック液晶が適している。
また、厚みが0.4mm以下のポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレートあるいはアモルファスポリオレフィン等の非晶質透明樹脂等の柔軟なプラスティックフィルムを用いることができる。このような柔軟なプラスティックフィルム基板を用いた場合、軽量で曲げることが可能な液晶光変調器を実現することができる。
スペーサ9としては、例えば粒径の揃ったスペーサ粒子(硬質樹脂、SiO2など)や光リソグラフィーで形成した柱状の樹脂構造物が望ましい。
また、透明電極2は、ポリチオフェン系樹脂等の透明な有機系導電性材料を、スピンコート法や印刷法等を用いて透明基板上に形成するようにしてもよい。
さらに、上記液晶光変調器に光反射板や光拡散板を設けることにより、バックライトが不要とされる低消費電力の反射型液晶表示装置を構成することも可能である。
その結果、ラビング時に発生する静電気による薄膜トランジスタの破壊や発塵を招来せず、さらにポリイミド等の配向膜の高温形成が不要となるため、熱処理に弱いプラスティック基板や透明電極2にダメージを与えることなく、生産性を高めることが可能となる。
通常、洗浄に用いる不織布には、微小な付着物等の汚れを落とすために微細な繊維が使用されており、本実施例においては、このような不織布を樹脂繊維3として用いた。
すなわち、まず、セルロース製の洗浄用不織布(旭化成社 ベンコットM−3)を室温で一方向に延伸して、繊維の絡みをほぐした。
次に、透明電極2を付設した一方のガラス基板上に、上記のようにして作製した樹脂繊維3を平行に一定間隔で配置した。
樹脂繊維3は、張設された状態で、粘着剤10(光硬化樹脂)を用いて両端を透明電極2上に固定した。また、作製の容易さから、樹脂繊維3の配設間隔(ピッチ)を平均250μm(通常の液晶表示装置の画素と同程度)とした。
このため、樹脂繊維3は両透明基板により挟持され、つぶれた状態となり、透明基板の面方向に50μm程度の幅を有するに至った。
その結果、樹脂繊維3の延伸方向と偏光板6の透過軸方向が、互いに平行な場合と45°傾いて交差した場合とで、透過光強度が変化して、延伸方向を光学軸方向とした明確な複屈折現象が認められた。
これにより、液晶1の分子が樹脂繊維3の延伸方向に分子配向(水平配向)していることが確認された。
これにより、樹脂繊維3の配向規制力によって、液晶1の分子配向が支配されていることが確認された。
この隣接する樹脂繊維3の間隔が約500μmとされた液晶セルを、上記と同様にクロスニコルの偏光顕微鏡で観察した。
その結果、液晶配向の一様性が上記のものと比べて大幅に低下していることが明らかとなった。
2 透明電極
3 樹脂繊維
4 リード線
5 電源
6 偏光板
7 光(入射光)
8 光(出射光)
9 スペーサ
10 粘着剤
Claims (6)
- 対向配置された1対の透明電極膜と、
該1対の透明電極膜の間であって、この透明電極膜の面方向に、所定間隔をおいて互いに平行となるよう、該透明電極膜に対して固定配置された複数本の樹脂繊維と、
これら複数本の樹脂繊維の間に各々充填された液晶と、
前記液晶の層厚を設定保持する、前記1対の透明電極膜間に介在するスペーサと、
を備えた液晶光変調器において、
前記樹脂繊維の各々が、直径が10μm以下の樹脂繊維単位を複数本ずつ束ねられ、全体としての直径が2〜50μmとされてなり、
前記1対の透明電極膜の少なくとも一方が、プラスチックフィルムよりなる透明基板上に形成されてなることを特徴とする液晶光変調器。 - 前記樹脂繊維の表面分子が、機械的な延伸処理により配列形成されていることを特徴とする請求項1記載の液晶光変調器。
- 前記樹脂繊維の間隔および太さは、光変調効果による所定の応答速度および所定のコントラスト比が得られる値に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の液晶光変調器。
- 前記1対の透明電極膜のうちの一方の電極膜を不透明の電極膜とし、他方の電極膜は透明電極膜としたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の液晶光変調器。
- 前記他方の電極膜が、透明基板上に形成されてなることを特徴とする請求項4記載の液晶光変調器。
- 請求項1〜5のうちいずれか1項記載の液晶光変調器を備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
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