JP4215898B2 - 粘着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粘着剤組成物に関する。さらに詳しくは、(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体と光重合開始剤を含有し、速硬化性で、かつ重合体の粘度が低いためにハイソリッド化が可能な粘着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系粘着剤は粘着付与樹脂を添加しなくともバランスのとれた粘着特性を有し、天然ゴム系粘着剤と並んで大量に生産されている。アクリル系粘着剤は、分子量、分子量分布の問題から、特に凝集力が不足するため、一般に架橋によりこれを改善している。架橋方法としては、各種の形式が開発されており、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、多価カルボン酸、ポリアミン化合物、フェノール樹脂、イオウ化合物等の架橋剤を加える方法等が提案されている。
【0003】
上記アクリル系粘着剤は、一般に、アクリル系モノマーを主成分とするビニル系モノマーを、有機溶剤で溶液重合して得られる粘着剤溶液、又は水系で乳化重合して得られるエマルジョンを、基材に塗布又は含浸し、これを加熱乾燥して得られる。
【0004】
しかしながら、粘着剤溶液を用いる場合には、溶液の乾燥に多大なエネルギーが消費され、また大気の汚染や溶剤の引火の危険性などの問題点があった。また、エマルジョンを用いる場合においても、水を蒸発させるのには、溶剤を用いる場合よりもさらに大きなエネルギーが必要であり、また、性能面でも用いられるモノマー種が限られ、粘着剤に要求される多種多様なニーズへの対応性が乏しいという欠点があった。
【0005】
このような問題点を解決するための方法として、光重合性粘着剤が提案されている。この光重合性組成物においては、多くの場合、(メタ)アクリロイル基を持つ低分子量の化合物が用いられる。しかしながら硬化中及び硬化後において、低沸点の未反応化合物が揮発することによる臭気が大きな問題となっている。また、モノマーを主体とする組成物を基材に均一に塗布するためには、組成物にある程度の粘度が必要であり、何らかの方法による増粘が必要である。
【0006】
臭気の問題を回避するために、(メタ)アクリロイル基を持つオリゴマーが使用されうる。しかし、このようなオリゴマーは、主に合成上の問題から、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などに限定され、しかも、分子量の大きなオリゴマーはあまりない。
【0007】
また、特開平2−60981号公報には、アクリルゴムやエピクロルヒドリンゴム等を添加して、組成物を増粘する方法が記載されているが、この方法においては、添加されたゴム成分が非架橋物として粘着剤中に残存するため、粘着剤の性能の低下は避けられない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、分子末端に(メタ)アクリロイル系基を高い比率で有するビニル系重合体を主成分とする、ハイソリッド化が可能で、速硬化性である粘着剤組成物及びそれからなる粘着剤を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成からなる新規な粘着剤組成物及び粘着剤を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
1)一般式1
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
で表される基[以下、(メタ)アクリロイル系基という]を1分子あたり少なくとも1個、分子内に有するビニル系重合体[以下、重合体(I)という]を必須成分とする粘着剤組成物、
2)重合体(I)が、(メタ)アクリロイル系基を分子末端に少なくとも1個有するものである粘着剤組成物、
3)(メタ)アクリロイル系基のRが、水素またはメチル基である粘着剤組成物。
4)重合体(I)が以下の工程:
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体に、
一般式2
M+-OC(O)C(R)=CH2 (2)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを表す。)
で示される化合物と反応させること;
により製造されるものである粘着剤組成物、
5)重合体(I)が以下の工程:
末端に水酸基を有するビニル系重合体に、
一般式4
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
で示される化合物を反応させること;
により製造されるものである粘着剤組成物、
6)重合体(I)が以下の工程:
(1)末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、
(2)残存イソシアネート基と一般式5
HO−R’−OC(O)C(R)=CH2 (5)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R’は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
で示される化合物と反応させること;
により製造されるものである粘着剤組成物、
7)重合体(I)の主鎖が、ビニル系モノマーのリビングラジカル重合により製造されるものである粘着剤組成物、
8)重合体(I)の主鎖が、連鎖移動剤を用いたビニル系モノマーの重合により製造されるものである粘着剤組成物、
9)重合体(I)の数平均分子量が、3000以上である粘着剤組成物、
10)重合体(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が1.8未満のものである粘着剤組成物、
である。
また、
11)粘着剤組成物は、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含んでいても良い。
さらに、本発明は、
12)粘着剤組成物を硬化させることにより得られる粘着剤でもよく、
13)硬化方法として活性エネルギー線照射や熱による硬化を利用するものでもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、一般式1:
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
で表される基[以下、(メタ)アクリロイル系基という]を1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体[以下、重合体(I)という]を必須成分とする粘着剤組成物に関する。
<重合体(I)について>
(メタ)アクリロイル系基の数は特に限定されないが、重合体(I)同士が架橋するという観点から1分子あたり1個未満であると硬化性が悪くなるので、1個以上が好ましく、1.2〜4個であることがより好ましい。
【0011】
また、(メタ)アクリロイル系基は分子の側鎖及び/又は末端のいずれに存在していても構わないが、ゴム弾性の点からは分子の末端に存在することが好ましい。
【0012】
(メタ)アクリロイル系基のRの具体例としては特に限定されず、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN
等が挙げられるが、好ましくは−H、−CH3である。
【0013】
重合体(I)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させても良く、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
【0014】
重合体(I)の分子量分布[ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比]は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、さらに好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.6以下であり、特に好ましくは1.5以下であり、特別に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。なお、本発明におけるGPC測定の際には、通常は、クロロホルム又はテトラヒドロフラン等を移動相として、ポリスチレンゲルカラム等を使用し、分子量の値はポリスチレン換算値等で求めている。
【0015】
重合体(I)の数平均分子量は500〜100000の範囲が好ましく、3000〜40000がさらに好ましい。分子量が500以下であると、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくく、また、100000以上であると、ハンドリングが困難になる。
<重合体(I)の製法について>
重合体(I)の製法については特に限定されない。ビニル系重合体は一般に、アニオン重合あるいはラジカル重合によって製造されるが、モノマーの汎用性、あるいは制御の容易さからラジカル重合が好ましい。ラジカル重合の中でも、リビングラジカル重合、あるいは、連鎖移動剤を用いたラジカル重合によって製造されるのが好ましく、特に前者が好ましい。
【0016】
重合体(I)を合成する方法において用いられるラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
【0017】
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0018】
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0019】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができる。
【0020】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0021】
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0022】
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
【0023】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁などが挙げられる。
【0024】
本発明において、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、基本的には制御ラジカル重合が利用され、更に制御の容易さなどからリビングラジカル重合が好ましく、特に原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0025】
まず、制御ラジカル重合のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合について説明する。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
【0026】
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
【0027】
次に、リビングラジカル重合について説明する。
【0028】
そのうち、まず、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0029】
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル開始剤0.1〜10モルが適切である。
【0030】
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキシドが好ましい。このパーオキシドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキシドが好ましい。さらに、パーオキシドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
【0031】
Macromolecules 1995,28,2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下図のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
【0032】
【化1】
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上図で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
【0033】
上記のニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
【0034】
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
【0035】
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
C6H5−CH2X、C6H5−C(H)(X)CH3、C6H5−C(X)(CH3)2(ただし、上の化学式中、C6H5はフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
R3−C(H)(X)−CO2R4、R3−C(CH3)(X)−CO2R4、R3−C(H)(X)−C(O)R4、R3−C(CH3)(X)−C(O)R4、
(式中、R3、R4は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
R3−C6H4−SO2X
(上記の各式において、R3は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0036】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に上記一般式2で表される構造を有するビニル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0037】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式6に示す構造を有するものが例示される。
R6R7C(X)−R8−R9−C(R5)=CH2 (6)
(式中、R5は水素、またはメチル基、R6、R7は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、R8は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R9は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
置換基R6、R7の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R6とR7は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0038】
一般式6で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCH2C(O)O(CH2)nCH=CH2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
【0039】
【化2】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
【0040】
【化3】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式7で示される化合物が挙げられる。
H2C=C(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (7)
(式中、R5、R6、R7、R9、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
R9は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0041】
一般式7の化合物を具体的に例示するならば、
CH2=CHCH2X、CH2=C(CH3)CH2X、
CH2=CHC(H)(X)CH3、CH2=C(CH3)C(H)(X)CH3、
CH2=CHC(X)(CH3)2、CH2=CHC(H)(X)C2H5、
CH2=CHC(H)(X)CH(CH3)2、
CH2=CHC(H)(X)C6H5、CH2=CHC(H)(X)CH2C6H5、
CH2=CHCH2C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)8C(H)(X)−CO2R、
CH2=CHCH2C(H)(X)−C6H5、
CH2=CH(CH2)2C(H)(X)−C6H5、
CH2=CH(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0042】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−C6H4−SO2X、
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−O−C6H4−SO2X、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
【0043】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式8に示す構造を有するものが例示される。
R6R7C(X)−R8−R9−C(H)(R5)CH2−[Si(R11)2-b(Y)bO]m−Si(R12)3-a(Y)a (8)
(式中、R5、R6、R7、R8、R9、Xは上記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
一般式8の化合物を具体的に例示するならば、
XCH2C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
CH3C(H)(X)C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
(CH3)2C(X)C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
XCH2C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
CH3C(H)(X)C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(CH3)2C(X)C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0044】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式9で示される構造を有するものが例示される。
(R12)3-a(Y)aSi−[OSi(R11)2-b(Y)b]m−CH2−C(H)(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (9)
(式中、R5、R6、R7、R9、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CH3O)3SiCH2CH2C(H)(X)C6H5、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C(H)(X)C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)4C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)9C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)9C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)4C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4C(H)(X)−C6H5、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
【0045】
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH2)n−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
H2N−(CH2)n−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
【0046】
【化4】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)本発明の末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
等があげられる。
【0049】
この重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
【0050】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子を添加することができる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好適である。
【0051】
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行うことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、重合は室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
<官能基導入法>
重合体(I)の製造方法は特に限定されないが、例えば上述の方法により反応性官能基を有するビニル系重合体を製造し、反応性官能基を(メタ)アクリロイル系基を有する置換基に変換することにより製造することができる。以下に、本発明の重合体の末端官能基の導入について説明する。
【0052】
ビニル系重合体の末端に(メタ)アクリロイル系基を導入する方法としては、限定はされないが、以下のような方法が挙げられる。
(導入方法1)末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、一般式2で示される化合物との反応による方法。
M+-OC(O)C(R)=CH2 (2)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを表す。)
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体としては一般式3に示す末端構造を有するものが好ましい。
−CR1R2X (3)
(式中、R1、R2は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
(導入方法2)末端に水酸基を有するビニル系重合体と、一般式4で示される化合物との反応による方法。
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
(導入方法3)末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式5で示される化合物との反応による方法。
HO−R’−OC(O)C(R)=CH2 (5)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R’は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
以下にこれらの各方法について詳細に説明する。
<導入方法1>
導入方法1は末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、一般式2で示される化合物との反応による方法である。
M+-OC(O)C(R)=CH2 (2)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを表す。)
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体としては特に限定されないが、一般式3に示す末端構造を有するものが好ましい。
−CR1R2X (3)
(式中、R1、R2は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
一般式3で表される末端構造を有するビニル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0053】
一般式2で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN、
等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0054】
M+はオキシアニオンの対カチオンであり、M+の種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式2のオキシアニオンの使用量は、一般式3のハロゲン末端に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃、より好ましくは室温〜100℃である。
<導入方法2>
導入方法2は、末端に水酸基を有するビニル系重合体と、一般式4で示される化合物との反応による方法である。
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
一般式4で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN、
等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0055】
末端に水酸基を有するビニル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、水酸基を持つ化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。これらの方法により末端に水酸基を有するビニル系重合体を製造する方法は限定されないが、以下のような方法が例示される。
【0056】
(a)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、下記一般式10等で表される一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
H2C=C(R13)−R14−R15−OH (10)
(式中、R13は炭素数1〜20の有機基で水素またはメチル基が好ましく、互いに同一であっても異なっていてもよい。R14は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−もしくはp−フェニレン基を表す。R15は直接結合、または1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。R14がエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、R14がフェニレン基のものはスチレン系化合物である。)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0057】
(b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
【0058】
このような化合物としては特に限定されないが、一般式11に示される化合物等が挙げられる。
H2C=C(R13)−R16−OH (11)
(式中、R13は上述したものと同様である。R16は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
上記一般式11に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
(c)特開平4−132706号公報などに開示されるような方法で、原子移動ラジカル重合により得られる一般式2で表される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個に有するビニル系重合体のハロゲンを、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
(d)原子移動ラジカル重合により得られる一般式2で表される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式12に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
M+C-(R17)(R18)−R16−OH (12)
(式中、R16およびM+は上述したものと同様である。R17およびR18はともにカルバニオンC-を安定化する電子吸引基、または一方が上記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を表す。R17およびR18の電子吸引基としては、−CO2R(エステル基)、−C(O)R(ケト基)、−CON(R2)(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO2(ニトロ基)等が挙げられる。置換基Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基である。R17およびR18としては、−CO2R、−C(O)Rおよび−CNが特に好ましい。)
(e)原子移動ラジカル重合により得られる一般式2で表される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
【0059】
(f)重合体末端のハロゲン、好ましくは一般式2で表されるハロゲンを少なくとも1個有するビニル系重合体に、下記一般式13等で表される水酸基含有オキシアニオン又は下記一般式14等で表される水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R16−O-M+ (13)
(式中、R16およびM+は上述したものと同様である。)
HO−R16−C(O)O-M+ (14)
(式中、R16およびM+は上述したものと同様である。)
本発明では(a)〜(b)のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合、制御がより容易である点から(b)の方法がさらに好ましい。
【0060】
また(c)〜(f)のような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、制御がより容易である点から(f)の方法がさらに好ましい。
<導入方法3>
導入方法3は、末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式5で示される化合物との反応による方法である。
HO−R’−OC(O)C(R)=CH2 (5)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R’は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
一般式5で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN、
等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。具体的な化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0061】
末端に水酸基を有するビニル系重合体は、上記の通り。
【0062】
ジイソシアネート化合物は、特に限定されないが、従来公知のものをいずれも使用することができ、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;等を挙げることができる。これらは、単独で使用しうるほか、2種以上を併用することもできる。またブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0063】
よりすぐれた耐候性を生かすためには、多官能イソシアネート化合物(b)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香環を有しないジイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
<粘着剤組成物について>
本発明の粘着剤組成物は、重合体(I)を必須成分とするものである。残存モノマーによる臭気問題の解消のために他の重合性モノマーを含有しないことが好ましいが、その目的に応じて、重合性のモノマー及び/又はオリゴマーや各種添加剤を併用しても構わない。
【0064】
重合性のモノマー及び/又はオリゴマーとしては、ラジカル重合性の基を持つモノマー及び/又はオリゴマー、あるいはアニオン重合性の基を持つモノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等のアクリル官能性基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、本発明の重合体と類似する(メタ)アクリル基を持つものが好ましい。アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、等が挙げられる。なかでも、本発明の重合体と類似するアクリル官能性基を持つものが好ましい。
【0065】
上記のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマーなどが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルや下式の化合物などを挙げることができる。
【0066】
【化7】
【0067】
【化8】
【0068】
【化9】
【0069】
【化10】
【0070】
【化11】
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン等が、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が、共役ジエン系モノマーとしてはブタジエン、イソプレン等が、ビニルケトン系モノマーとしてはメチルビニルケトン等が挙げられる。
【0071】
多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0072】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂、ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂、上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
【0073】
これらのモノマー及びオリゴマーは、目的に応じて選択される。
【0074】
また、アクリル官能性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、2000以下であることが好ましく、1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0075】
本発明の粘着剤組成物は、好ましくは(メタ)アクリル系重合体を主成分とするものであるため、粘着付与樹脂を添加する必要は必ずしもないが、必要に応じて、各種のものを使用することができる。具体例を挙げるならば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等である。
【0076】
本発明の粘着剤組成物には、物性を調製するために各種の添加剤、例えば、老化防止材、可塑剤、物性調整剤、溶剤などを配合してもよい。
【0077】
アクリル系重合体は本来、耐熱性、耐候性、耐久性に優れた重合体であるので、老化防止剤は必ずしも必要ではないが、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤を適宜用いることができる。
【0078】
可塑剤としては物性の調整、性状の調節等の目的により、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油等を単独、または2種以上混合して使用することができるが、必ずしも必要とするものではない。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0079】
重合体の製造時に用いてもよい溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
【0080】
また、本発明の粘着剤組成物には、各種支持体(プラスチックフィルム、紙等)に対する接着性を向上させるために各種接着性改良剤を添加してもよい。例示するならば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等である。
<硬化方法について>
本発明の粘着剤組成物は、特に限定されないが、UVや電子線などの活性エネルギー線又は熱により硬化させることが好ましい。
<活性エネルギー線硬化>
活性エネルギー線により硬化させる場合には粘着剤組成物として光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0081】
光重合開始剤としては特に制限はないが、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4‘−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン等が挙げられる。これらの開始剤は単独でも、他の化合物と組み合わせても良い。具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミンとの組み合わせ、更にこれにジフェニルヨードニウムクロリドなどのヨードニウム塩と組み合わせたもの、メチレンブルーなどの色素及びアミンと組み合わせたものが挙げられる。
【0082】
また、近赤外光重合開始剤として、近赤外光吸収性陽イオン染料を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、例えば特開平3−111402号、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体などを用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
【0083】
光重合開始剤の添加量は系をわずかに光官能化するだけでよいので、特に制限はないが、この組成物の重合体100部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0084】
活性エネルギー線源としては特に限定されないが、その光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー等による光及び電子線の照射が挙げられる。
<熱硬化>
熱により硬化させる場合には、粘着剤組成物として熱重合開始剤を含有することが好ましい。
【0085】
熱重合開始剤としては特に限定されないが、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸、及びレドックス開始剤が含まれる。
【0086】
適切なアゾ系開始剤としては、限定されるわけではないが、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(全てDuPont Chemicalから入手可能)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)(V−601)(和光純薬より入手可能)等が挙げられる。
【0087】
適切な過酸化物開始剤としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(Akzo Nobelから入手可能)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11)(Elf Atochemから入手可能)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox 21−C50)(Akzo Nobelから入手可能)、及び過酸化ジクミル等が挙げられる。
【0088】
適切な過硫酸塩開始剤としては、限定されるわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0089】
適切なレドックス(酸化還元)開始剤としては、限定されるわけではないが、上記過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;並びに有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系等が挙げられる。
【0090】
他の開始剤としては、限定されるわけではないが、テトラフェニル1,1,2,2−エタンジオールのようなピナコール等が挙げられる。
【0091】
熱ラジカル開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物系開始剤からなる群から選ばれるものが好ましい。更に好ましいものは、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、t−ブチルパーオキシピバレート、及びジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、並びにこれらの混合物である。
【0092】
本発明に用いられる熱開始剤は触媒的に有効な量で存在し、このような量は、限定はされないが、典型的には、本発明の少なくとも一つの末端にアクリル官能性基を有する重合体及び他に添加されるモノマー及びオリゴマー混合物の合計量を100重量部とした場合に約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。開始剤の混合物が使用される場合には、開始剤の混合物の合計量は、あたかもただ1種の開始剤が使用されるかのような量である。
【0093】
熱硬化条件は特に限定されないが、その温度は、使用する熱開始剤、重合体(I)及び添加される化合物等の種類により異なるが、50℃〜250℃の範囲内が好ましく、70℃〜200℃の範囲内がより好ましい。硬化時間は、使用する重合開始剤、単量体、溶媒、反応温度等により異なるが、通常1分〜10時間の範囲内である。
<粘着剤について>
本発明の粘着剤組成物はテープ、シート、ラベル、箔等に広く適用することができる。例えば、合成樹脂製または変成天然物製のフィルム、紙、あらゆる種類の布、金属箔、金属化プラスチック箔、アスベストまたはガラス繊維布などの基質材料に溶剤型、エマルション型またはホットメルト型等の形で前記粘着剤組成物を塗布し、活性エネルギー線や熱により硬化させればよい。
【0094】
【実施例】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。
【0095】
下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0096】
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0097】
下記実施例中、「平均末端(メタ)アクリロイル基数」は、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」であり、1H NMR分析およびGPCにより求められた数平均分子量により算出した。
(製造例1)(メタクリル酸カリウムの合成)
フラスコに、メタノール(800mL)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(130g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、メタクリル酸(100g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより下式に示すメタクリル酸カリウム(以下、化合物(1)という)を得た。
CH2=C(CH3)CO2K
(製造例2)(アクリル酸カリウムの合成)
フラスコに、メタノール(500mL)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(78g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、アクリル酸(50g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより下式に示すアクリル酸カリウム(以下、化合物(2)という)を得た。
CH2=CHCO2K
(製造例3)(メタクリロイル末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)の合成)
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤としてアクリル酸n−ブチルを重合し、数平均分子量10900、分子量分布1.12の臭素基末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体〔1〕という)を得た。重合体〔1〕20.0gをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、化合物(1)1.46gを加え、室温で2日間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、不溶部を濾過した。濾液を更に酢酸エチル(150mL)で希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、揮発分を減圧留去することにより、メタクリロイル基末端ポリ(アクリル酸ブチル)(以下、重合体〔2〕という)を得た。
【0098】
精製後の重合体〔2〕の平均末端メタクリロイル基数は1.52であった。
(製造例4)(アクリロイル末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)の合成)
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤としてアクリル酸n−ブチルを重合し、数平均分子量10800、分子量分布1.15の末端臭素基ポリ(アクリル酸n−ブチル)を得た。
【0099】
この重合体300gをN,N−ジメチルアセトアミド(300mL)に溶解させ、化合物(2)8.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間加熱攪拌し、アクリロイル基末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体〔3〕という)の混合物を得た。この混合液のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、残さにトルエンを加えて、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを減圧留去して、重合体〔3〕を精製した。
【0100】
精製後の重合体〔3〕の平均末端アクリロイル基数は2.0であった。
(実施例1)(光硬化試験1)
重合体〔2〕2.0gに、ベンゾフェノン(25.2mg、0.138mmol)、ジエタノールメチルアミン(0.079mL、0.691mmol)、およびジフェニルヨードニウムクロリド(35.0mg、0.111mmol)を加え、よく混合した。
【0101】
このようにして得られた組成物の一部をガラス板上に塗布し、高圧水銀ランプ(SHL−100UVQ−2;東芝ライテック(株)製)を用い、50cmの照射距離で5分間、光を照射することにより、ゴム状の硬化物を得た。
(実施例2)(光硬化試験2)
重合体〔2〕3.0gに、ベンゾフェノン(0.207mmol、50重量%酢酸エチル溶液)、ジエタノールメチルアミン(0.119mL、1.036mmol)を加え、よく混合した。
【0102】
このようにして得られた組成物を型枠に流し込み、揮発分を減圧留去した後、高圧水銀ランプ(SHL−100UVQ−2;東芝ライテック(株)製)を用い、50cmの照射距離で10分間、光を照射することにより、ゴム状硬化物を得た。
【0103】
上記硬化物から3号ミニダンベル試験片を打ち抜き、島津製オートグラフを用いて引張り試験を行った。破断強度0.34MPaおよび破断伸び56%であった(測定条件:23℃、引張り速度200mm/分)。
(実施例3〜6)(光硬化試験3)
重合体〔3〕およびジエトキシアセトフェノンを表1に示した比率でよく混合した。これらの組成物を型枠に充填し、減圧脱泡した後、その表面をガラス板で覆い、サンプルを作成した。これらのサンプルについて、表1に示した照射時間で高圧水銀ランプ(SHL−100UVQ−2;東芝ライテック(株)製)により光を照射したところ、ゴム状の硬化物が得られた。ただし、高圧水銀ランプとサンプルの距離を20cmとした。
【0104】
得られた硬化物について、ゲル分率の測定を行った。ただし、ゲル分率は、硬化物の未硬化部分抽出前と抽出後の硬化物の重量比により求められた。未硬化部分の抽出は、硬化物をトルエンに浸漬することにより行われた。結果を表1に示した。
【0105】
【表1】
(実施例7〜9)(熱硬化試験)
重合体〔1〕および有機過酸化物パーヘキサ3M(1,1−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;日本油脂(株)製)を表2に示した比率でよく混合した。これらの組成物を型枠に充填し、減圧脱泡した後、150℃で5分間加熱したところ、ゴム状硬化物が得られた。
【0106】
得られた硬化物について、ゲル分率の測定および引っ張り試験を行った。ゲル分率は、硬化物の未硬化部分抽出前と抽出後の硬化物の重量比により求められた。未硬化部分の抽出は、硬化物をトルエンに浸漬することにより行われた。引っ張り試験は、シート状硬化物から2(1/3)号形ダンベル試験片を打ち抜き、島津製オートグラフを用いて行われた(測定条件:23℃、200mm/min)。ゲル分率および引っ張り試験の結果を併せて表2に示した。
【0107】
【表2】
(実施例10)(光硬化粘着剤シートの作成と粘着試験)
重合体〔3〕100部、ジエトキシアセトフェノン1部、テルペンフェノール系タッキファイヤー(YSポリスターT115;安原ケミカル製)の40%アセトン溶液175部(タッキファイヤーとして70部)をよく混合し、粘着剤組成物を得た。
【0108】
このようにして得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが約40μmとなるように厚さ50μmのコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製)に塗布し、室温で減圧乾燥した後、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプ(SHL−100UVQ−2;東芝ライテック(株)製)により10分間光照射を行い、硬化させた。得られた粘着テープについて粘着力をJIS Z−0237に準じ、以下の方法に従って測定した。
【0109】
得られた粘着テープを幅25mmに切断し、予め表面を240番耐水研磨紙にて研磨したステンレス鋼板(SUS#304)に粘着面を圧着させ、試験体を作成した。試験体を30分放置した後、引っ張り試験機にて23℃、65RH条件下、剥離速度300mm/minで180度引き剥がし粘着力を測定した結果、8.3N/25mmであった。
(実施例11)(熱硬化粘着剤シートの作成と粘着試験)
重合体〔3〕100部、有機過酸化物パーヘキサ3M(1,1−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;日本油脂(株)製)1部、テルペンフェノール系タッキファイヤー(YSポリスターT115;安原ケミカル製)の40%アセトン溶液175部(タッキファイヤーとして70部)をよく混合し、粘着剤組成物を得た。
【0110】
このようにして得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが約40μmとなるように厚さ50μmのコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製)に塗布し、室温で減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、150℃にて10分間加熱硬化させた。得られた粘着テープについて粘着力をJIS Z−0237に準じ、以下の方法に従って測定した。
【0111】
得られた粘着テープを幅25mmに切断し、予め表面を240番耐水研磨紙にて研磨したステンレス鋼板(SUS#304)に粘着面を圧着させ、試験体を作成した。試験体を30分放置した後、引っ張り試験機にて23℃、65RH条件下、剥離速度300mm/minで180度引き剥がし粘着力を測定した結果、19.7N/25mmであった。
【0112】
【発明の効果】
本発明の粘着剤組成物は、主成分である(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体の分子量分布が狭いので低粘度であり、ハイソリッド化が可能である。 また、重合体末端に重合活性を持つ(メタ)アクリロイル基が導入されているので、活性エネルギー線硬化型や熱硬化型の粘着剤とすることができる。重合体末端への(メタ)アクリロイル基の導入率が高いので、高ゲル分の硬化物が得られ、速硬化でもある。また、重合体の主鎖がビニル系重合体であるため耐候性が高いことも特徴の一つである。
Claims (19)
- 一般式1
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
で表される基を分子末端に少なくとも1個、分子中に有し、主鎖が、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合により製造される(メタ)アクリル系重合体[重合体(I)]を必須成分とする粘着剤組成物であって、
重合体(I)が以下の工程:
一般式3
−CR 1 R 2 X (3)
(式中、R 1 、R 2 は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
で示される末端構造を有するビニル系重合体に、
一般式2
M +- OC(O)C(R)=CH 2 (2)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M + はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを表す。)
で示される化合物を反応させること;
により製造されるものであり、
重合体(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比の値が1.5以下のものである粘着剤組成物。 - Rが水素、または、炭素数1〜20の炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
- Rが水素、または、メチル基であることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
- 重合体(I)が、アクリル酸エステル系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- 原子移動ラジカル重合の触媒である遷移金属錯体が銅、ニッケル、ルテニウム、または鉄の錯体より選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- 遷移金属錯体が銅の錯体であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤組成物。
- 重合体(I)の数平均分子量が、3000以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- ラジカル重合性の基を持つ、モノマー及び/又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- アニオン重合性の基を持つ、モノマー及び/又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- (メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項8または9に記載の粘着剤組成物。
- (メタ)アクリロイル系基を有し、さらに数平均分子量が2000以下である、モノマー及び/又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項10に記載の粘着剤組成物。
- 光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- 光重合開始剤が光ラジカル開始剤である請求項12記載の粘着剤組成物。
- 光重合開始剤が光アニオン開始剤である請求項12記載の粘着剤組成物。
- 熱重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の粘着剤組成物。
- 熱重合開始剤が、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸物、及びレドックス開始剤からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項15に記載の粘着剤組成物。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の粘着性組成物より得られる粘着剤。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射させることにより得られる粘着剤。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の粘着剤組成物の熱硬化により得られる粘着剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19186099A JP4215898B2 (ja) | 1998-08-27 | 1999-07-06 | 粘着剤組成物 |
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JP29267398 | 1998-10-15 | ||
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