以下、本発明における好ましいコードレスアイロンの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、コードレスアイロンの特に電気的な構成を示した電子回路周りのシステムブロック図である。同図において、1はアイロン本体、2はアイロン本体1の載置および離脱が可能な載置台としての設置台であって、これらは周知のように、設置台2に設けた電源コード3を、例えばAC100V用のコンセント(図示せず)に差し込んだ状態で、設置台2の載置部にアイロン本体1を載せることにより、設置台2からアイロン本体1側に電源供給を行なう構成となっている。また4は、アイロン本体1から供給されるAC100Vの電源電圧を、例えば後述するフラッシュマイコン11の駆動、およびLED24の点灯などに使用する電源電圧(例えばDC5V)や、リレー43の駆動などに使用する別の電源電圧(例えばDC12V)に変換する電源回路であり、この電源回路4によってアイロン本体1の各部に給電が行なわれるようになっている。
アイロン本体1の内部には、コードレスアイロンの制御手段としてのフラッシュマイコン11が搭載される。このフラッシュマイコン11には、第1の記憶手段としてのフラッシュメモリ12と、第2の記憶手段としてのRAM15が内蔵される。フラッシュメモリ12は、データの消去・書き込みを自由に行なうことができ、フラッシュメモリ12への電源供給が途絶えてもその内容を保持する半導体メモリにより構成される。またRAM15は、データの読み書きは自由に行なえるものの、RAM15への電源供給が途絶えるとその内容が消去されるものである。一例として、本実施例におけるフラッシュメモリ12の記憶容量は4Kバイトであり、RAM15の記憶容量は128バイトであるが、これらの値に特に限定されるものではない。ここでのフラッシュメモリ12は、コードレスアイロンを制御するためのプログラムを書き込んだプログラム領域13と、コードレスアイロンの動作状態を記憶させるためのデータ領域14とにより構成される。
フラッシュマイコン11には、その他に演算処理手段としての演算回路(コア回路)16と、計時手段としてのタイマ回路17と、内蔵クロック発生用の発振手段としての発振回路18と、リセット手段としてのリセット回路19と、外部との信号のやり取りを可能にする入出力手段としての入出力回路20と、をそれぞれ備えている。そのなかで演算回路16は、フラッシュマイコン11としての演算処理を行なう中枢部として機能するもので、フラッシュメモリ12のプログラム領域13に記憶されるプログラムを逐次読み出して実行し、計算や判定を行なう。なお、演算回路16による具体的な処理の仕方については、後ほど詳しく説明する。
タイマ回路17は、前記プログラムが要求する時間カウントなどの基本時間を計時するものである。発振回路18は、前記演算回路16やタイマ回路17の動作タイミングを決めるクロックを発生するものである。因みに、通常のマイコン(マイクロコンピュータ)では、発振回路の発振子(セラミック発振子,水晶発振子,CR発振)をマイコンの外部に設けているが、ここで使用するフラッシュマイコン11の内部にはオシレータが備わっているので、このオシレータを発振回路18として利用することで、フラッシュマイコン11を搭載する基板(図示せず)の小型化を図っている。リセット回路19は、フラッシュマイコン11の保証電圧未満ではフラッシュマイコン11を強制的にリセットする回路である。即ちフラッシュマイコン11に供給される電源電圧を監視する電源監視回路である。なお、通常のマイコンでは、リセット回路をマイコンの外部に設けているが、ここで使用するフラッシュマイコン11の内部にはリセット回路19が備わっており、フラッシュマイコン11を搭載する基板の小型化を図っている。
入出力回路20の入力側ポートには、ユーザーが操作可能な操作部としての設定スイッチ21と、後述するベース31の温度を検出して電気信号に変換するベース温度検出回路22がそれぞれ接続される。好ましくは、設定スイッチ21に対応する入出力回路20のマイコンポートには、プルアップ抵抗(図示せず)が内蔵されており、設定スイッチ21を押すとL(低)レベルの信号が当該ポートに入力されるようになっている。このように、フラッシュマイコン11に内蔵するプルアップ抵抗を利用すれば、従来のようなマイコンの外部にわざわざプルアップ抵抗を設ける必要がなく、フラッシュマイコン11を搭載する基板の小型化を図ることができる。
ここで、ベース温度検出回路22の回路構成を図2に基づき説明する。同図において、ベース温度検出回路22は、ベース31の温度に応じてその抵抗値が変化する感温素子としてのサーミスタ32と、ベース31の温度による影響を極力受けないように、例えばフラッシュマイコン11を搭載する基板に実装された基準抵抗(プルダウン抵抗)33との直列回路を、電源回路4から供給される例えばDC5Vの給電端子34と、接地ライン35との間に接続して基本的に構成され、サーミスタ32と基準抵抗33との接続点を入出力回路20の入力側ポートに接続することで、ベース温度の検出信号がフラッシュマイコン11に取込まれる。また、本実施例におけるベース31の温度検出範囲は、低温側が約−20℃(断線),高温側が約260℃(短絡)と広いので、プルダウン抵抗値をベース31の検出温度に応じて切替えるレンジ切替回路23を、ベース温度検出回路22に設けている。具体的には、このレンジ切替回路23は、一端をサーミスタ32と基準抵抗33との接続点に接続し、他端を入出力回路20の出力ポートに接続した固定抵抗36により構成される。そして、高温レンジでベース31の温度を検出する場合は、フラッシュマイコン11からL(低)レベルの切替信号が固定抵抗36の他端に与えられて、基準抵抗33に固定抵抗36が並列接続された状態になり、サーミスタ32と直列回路をなすプルダウン抵抗の抵抗値が低くなる一方で、低温レンジでベース31の温度を検出する場合は、フラッシュマイコン11からHi−Z(入力)レベルの切替信号が固定抵抗36の他端に与えられて、基準抵抗33から固定抵抗36が切り離され、サーミスタ32と直列回路をなすプルダウン抵抗の抵抗値が高くなる。このように、レンジ切替回路23はベース31の検出温度に応じて、基準抵抗33に並列の固定抵抗36を接続または切り離す機能を有するが、より細かい温度レンジに抵抗値を切替えできるように、複数の固定抵抗を設けてもよく、またベース温度検出回路22を含めて別な回路で構成してもよい。
図1に戻って説明すると、前記入出力回路20の他の出力側ポートには、ユーザーの設定状態やベース31の温度状態などを表示する表示回路としてのLED24や、駆動手段としてのヒータ駆動回路25が接続される。なお、LED24の個数や表示形態は特に限定されず、またLED24以外の表示手段を利用してもよい。
図3は、ヒータ駆動回路25およびその周辺の回路構成を具体的に示したものである。同図において、41は掛け面であるベース31を加熱する加熱手段としてのヒータであり、アイロン本体1の載置時に設置台2から与えられる交流電源(AC100V)42からの電源電圧が、ヒータ41とリレー43の開閉接点43bとからなる直列回路に印加される構成となっている。一方、ヒータ駆動回路25は、このリレー43と、複数のトランジスタ44,45とを備え、より具体的には、電源回路4から供給されるDC5Vの給電端子34に、第1のPNP型トランジスタ44のエミッタを接続し、このトランジスタ44のベースを入出力回路20の出力側ポートに接続すると共に、電源回路4から供給されるDC12Vの給電端子46と、接地ライン35との間に、第2のNPN型トランジスタ45とリレー43のコイル部43Aとの直列回路を接続し、このトランジスタ45のベースと前記トランジスタ44のコレクタとを接続して構成される。そして、入出力回路20からLレベルのヒータオン信号が出力されると、トランジスタ44,45がオンしてリレー43のコイル部43Aに電流が流れ、開閉接点43bが閉じてヒータ41を通電する一方で、入出力回路20からH(高)レベルのヒータオフ信号が出力されると、トランジスタ44,45がオフしてリレー43のコイル部43Aへの電流供給が遮断され、開閉接点43bが開いてヒータ41を断電するようになっている。
再度図1に戻って説明すると、アイロン本体1には、フラッシュメモリ12やRAM15に記憶されたデータを外部に送信する外部出力手段26を備えている。この外部出力手段26は、入出力回路20の出力側ポートに接続する例えばコネクタなどで構成され、例えばパソコンなどのデータ受信装置27が接続できるようになっている。外部出力手段26から送信する信号は、後述するフラッシュメモリ12に記憶した動作データを含む。但しそれ以外にも、フラッシュメモリ12に記憶した他のデータや、RAM15に記憶した一部または全部のデータを含んでもよい。本実施例では、この信号送信用に入出力回路20のポートを1本使用しているが、前記表示用のLED24に接続するポートなどを利用してもよいし、複数のポートを利用してもよい。さらに、外部出力手段26は、フラッシュメモリ12に記憶した動作データが外部から取得できる構成であれば、どのようなものでも構わない。
外部出力手段26からの送信信号はUART信号(非同期シリアル信号)で、フラッシュマイコン11の動作中に常時送信されるが、それ以外の方式による信号を用いてもよいし、ある条件の場合にのみ信号を送信してもよい。データ受信装置27は、フラッシュメモリ12やRAM15に記憶されたデータを受信する機能を有し、受信したデータはデータ受信装置27の表示器(図示せず)で視認できるようになっている。データ受信装置27は、例えばパソコン以外にも、外部出力手段26を介して送られてきたデータを外部から視認できれば、どのような形態のものでもよい。
29はアイロン本体1に設けられた停電検出手段としての停電検出回路であって、これはアイロン本体1が設置台2から持ち上げられたりして、設置台2からの電源供給(AC100V)が途絶えたときに、フラッシュマイコン11に対して停電信号を出力するものであり、この停電信号はフラッシュマイコン11が停電して動作停止する前に与えられる。
次に、上記構成のコードレスアイロンに関し、その動作概要を図4を参照しながら説明する。前記フラッシュマイコン11は、アイロン本体1を設置台2に置いた状態、すなわち設置台2からアイロン本体1側に給電が行なわれる通電状態で、ベース31の温度が予め設定した温度(設定温度)となるように制御する加熱制御手段51を備えている。本実施例では設定温度を決めるに際し、設定スイッチ21の操作により、「低温コース」,「中温コース」,「高温コース」の3コースを選択できるようになっている。すなわち、「低温コース」を選択すると設定温度が約120℃となり、加熱制御手段51は通電状態において、サーミスタ32で検出されるベース31の温度が、設定温度である約120℃となるように、ヒータ駆動回路25を介してヒータ41の通断電を制御する。また、「中温コース」では設定温度が約160℃,「高温コース」では設定温度が約200℃となり、ベース31の温度がそれぞれの設定温度となるように、加熱制御手段51は同様の制御を行なう。なお、ここでのコース数や温度値はあくまでも一例であり、より細かく設定温度を決められるようにしてもよい。
各コースの選択切り替えは、上記のように設定スイッチ21で行なう。ここでは、設定スイッチ21を一回押す毎に、「低温コース」→「中温コース」→「高温コース」→「切」→「低温コース」の順を繰り返して、選択されるコースが切り替ると共に、「切」を選択すると、設定温度の選択が必要で、且つベース31への加熱を行なわない切状態に移行することができる(図4の符号A1〜A4参照)。すなわちフラッシュマイコン11は、前記ベース31を設定温度に加熱する加熱制御手段51の他に、アイロン本体1を切状態にする切状態制御手段52を、通電状態における動作制御手段53として備えている。さらに、この動作制御手段53とは別に、通電状態において、設定スイッチ21の操作を受け付けず、且つベース31への加熱を行なわないロック状態にするロック状態制御手段54を、フラッシュマイコン11の機能として備えている。
アイロン掛け時には、アイロン本体1を設置台2に載せる通電状態と、アイロン本体1を設置台2から持ち上げる停電状態が繰り返される。例えば、「中温コース」を選択した状態(設定温度は約160℃)で、アイロン本体1を設置台2から持ち上げてアイロン掛けを行ない、図4の符号A5に示すように、設置台2からアイロン本体1側への給電が途絶える停電状態に移行した後、再度アイロン本体1を設置台2に戻して再通電したら(符号A6参照)、フラッシュマイコン11は、フラッシュメモリ12のデータ領域14に記憶されている内容を読み出して、それまでエラー(例えば、ベース温度検出回路22の故障や、ヒータ41用のリレー43の接点溶着など)を検出していたり、リレー43のオン・オフ回数が所定回数(例えば20万回)以上になっているような異常履歴があるか否かを第1の判定手段55で判断する。そして、異常履歴がなければ、フラッシュマイコン11は符号A7に従って、次の第2の判定手段56による停電時間の長短を判断するが、アイロン掛けの場合は一般に短時間の停電であるので、停電前の「中温コース」が自動的に選択されて、この「中温コース」による加熱制御が再開する(符号A8参照)。
フラッシュマイコン11に備えた第2の判定手段56は、通電開始時にベース31の検出温度が設定温度よりも遥かに低い所定温度(例えば50℃)未満である場合や、さもなければ停電前にフラッシュメモリ12のデータ領域14に書き込まれたベース31の検出温度と、再通電直後におけるベース31の検出温度との差が、所定値以上の場合には、図4の符号A9に示すように、長時間停電していたと判断して切状態に移行し、それ以外の場合は短時間停電していたと判断して、停電前のコースを自動的に選択するものである。したがって、設置台2の電源プラグ3をコンセントから抜いて、コードレスアイロンを収納状態に片付け、暫くしてから再度通電状態に移行した場合には、第2の判定手段56により切状態から再開するようになっている。
一方、前記通電状態で動作制御手段53による正常動作を行なっている時に、例えば前述のエラーを検出したり、リレー43のオン・オフ回数が所定回数以上に達して過多になると、図4の符号A10に示すように、フラッシュマイコン11のロック状態制御手段54によりロック状態に移行する。このロック状態では、設定スイッチ21からの入力操作を受け付けなくなるので、動作制御手段53による正常動作には戻らなくなる。また、上記エラー検出の有無や、リレー43のオン・オフ回数は、フラッシュメモリ12のデータ領域14に書き込まれており、停電後の再通電において、第1の判定手段55により異常履歴があると判断した場合も、同様にロック状態を継続する(符号A11参照)。
図5は、本実施例で使用するフラッシュメモリ12の内部構造を示したものである。前述のように、フラッシュメモリ12の記憶容量は4Kバイトであり、64バイトを1ブロックとして、各ブロック単位毎にデータを消去できるようになっている。また本実施例では、64バイト×1ブロック(=64バイト)を動作状態の記録部であるデータ領域14に割り当て、残りの全てをプログラム領域13に割り当てている。プログラム領域13は、マイコンプログラム迷走などで、万一データが書き換えられたり消去されるのを防ぐために、プロテクト機能を用いて書き換えできないように設定されている。データ領域14のブロックは0番地〜63番地からなる64のアドレスで構成され、消去の際には全アドレスのデータ値がFFhex(hexは16進数を示す)にセットされて、未使用領域となる。
図6は、データ領域14におけるフラッシュメモリ12の書き込みと読み出しの一例を示したものである。先ず、書き込み時の動作について説明すると、アイロン本体1が設置台2から離されると、設置台2からの電源供給が途絶えたのを停電検出回路29が検出して、フラッシュマイコン11に停電信号を送出する。これを受けてフラッシュマイコン11は、フラッシュメモリ12のデータ領域14中にある未使用領域に対し、その最初のアドレスから、アイロン本体1の動作状態に係る情報を記録する。これは具体的には、温度設定状態(設定温度の状態)とエラー情報を記録する第1の記憶部61と、ベース31の温度(検出温度)を記録する第2の記憶部62と、リレー43の接点43Bのオン回数を記録する第3の記憶部63として書き込まれ、第1の記憶部61は1バイト,第2の記憶部62は1バイト,第3の記憶部63は3バイトの領域を占有する。ここでは、1回の通電状態につき一回ずつ新たな書き込みが行なわれる。
第1の記憶部61には、その下位4ビットに設定温度の状態が書き込まれる。一例として、停止(切状態)の時には0(=0000bin)となり、「低温コース」選択時には1(=0001bin)となり、「中温コース」選択時には3(=0011bin)となり、「高温コース」選択時には7(=0111bin)となる。なお、binは2進数をあらわす。また、第1の記憶部61の上位4ビットには、エラー情報が書き込まれる。一例として、サーミスタ32の断線エラーの時にはビット4が1(=???1????)となり、サーミスタ32の短絡エラーの時にはビット5が1(=??1?????)となり、リレー43の溶着時にはビット6が1(=??1?????)となる。なお、?は0または1の任意の数である。サーミスタ32が断線または短絡しているか否かは、ベース温度検出回路22から入出力回路20に送出されるベース温度の検出信号により判断できる。またリレー43が溶着したか否かも、ヒータ駆動回路25に対するヒータオン信号/ヒータオフ信号と、ベース温度検出回路22から得られる検出信号との関係から判断できる。このようなサーミスタ32やリレー43の異常監視手段(図示せず)は、フラッシュマイコン11の機能として内蔵され、この異常監視手段の監視結果がエラー情報として第1の記憶部61に記録される。監視対象は、サーミスタ32やリレー43に限られない。
第2の記憶部62には、高温レンジでベース31の温度を検出している場合に、ベース温度の検出信号をそのままA/D変換した値が記録され、低温レンジでベース31の温度を検出している場合に、固定値である例えば00hexが記録されるようになっている。したがって、第2の記憶部62には、停電発生時におけるベース31の温度が記録される。
第3の記憶部63にはリレー43の接点43Bのオン回数が記録されるが、この第3の記憶部63は3バイト確保されており、256の三乗から1を引いた16777215回まで記録が可能である。記録する回数(書き込み回数)は、今までの回数に今回の回数を加えた累計となる。なお、リレー43の接点43Bのオン回数ではなく、オフ回数やオンおよびオフ回数など、要はリレー43の動作回数を記録できればよい。
フラッシュメモリ12の書き込み時間は1バイトにつき0.01ms程度である。そのため、上記5バイト分の書き込みは0.1msもあれば完了する。その後は、フラッシュメモリ12への電源供給が途絶えても、新たに書き込まれた動作状態に係る情報を含めて、フラッシュメモリ12の記憶内容が保持されるので、フラッシュマイコン11が停電検出回路29からの停電信号を受取って、フラッシュメモリ12の書き込みが完了するまでの僅かな時間(例えば0.5〜5ms)だけ、フラッシュマイコン11をバックアップ動作させるコンデンサを電源回路4に備えていれば、上記書込み動作を十分に行なうことができる。
また本実施例では、停電を検出した時にだけ、フラッシュメモリ12に対し動作状態を記録するが、これは通常のフラッシュメモリ12が10〜100万回の書き込み(消去)しか保証していないためで、通電状態で頻繁にフラッシュメモリ12に対する書き込み動作を省くことで、書き込み回数を極力減らして、フラッシュメモリ12の寿命を延ばすことが可能になる。
次に、読み出し時の動作について説明すると、アイロン本体1を設置台2に載置して、設置台2側からフラッシュマイコン11に電源供給が行なわれる通電状態に移行すると、フラッシュマイコン11の演算回路16は、フラッシュメモリ12のプログラム領域13に格納されたプログラムを読み込んで、内部の制御レジスタやRAM15をクリア(0をセット)した後、フラッシュメモリ12のデータ領域14内から、アイロン本体1の動作状態に係る情報を一回だけ読み出す。すなわち、ここでは1回の通電状態につき一回の読み込みが行なわれる。
読み出しの際の動作をより詳しく説明すると、フラッシュマイコン11は、フラッシュメモリ12の先頭アドレスから5バイト置きに、未使用のデータ(FFhex)が存在するまで検索を行なう。この5バイト置きというのは、書き込み時のデータが5バイトであるためで、書き込み時と同じバイト置きに検索すればよい。未使用のデータ(FFhex)が見つかると、その1〜5番地前のデータ(5バイト)が直前のデータとなるので、フラッシュマイコン11は、当該直前のデータを取得して、前記第1の判定手段55や第2の判定手段56に使用する。
第1の判定手段55は、先ず第1の記憶部61に記憶されるエラー情報から、エラーの有無を判定する。サーミスタ32の断線または短絡,リレー43の溶着などのエラーが有れば、ロック状態制御手段54によるロック状態に移行すると共に、LED24によるエラー表示を行なう。併せて、必要に応じてLED24を点滅表示させたり、図示しないブザーの報知を行なうなどして、アイロン本体1が使用不能状態であることをユーザーに知らせてもよい。次に第1の判定手段55は、リレー43の接点43Bのオン回数を判定し、リレー43の寿命回数以上の開閉が行なわれていれば、ロック状態制御手段54によるロック状態に移行する。この場合も、必要に応じてLED24を点滅表示させたり、図示しないブザーの報知を行なうなどして、アイロン本体1が使用不能状態であることをユーザーに知らせてもよい。
第1の判定手段55によりエラーが無く、しかもリレー43の接点43Bのオン回数も寿命回数未満であると判定されたら、第2の判定手段56は、停電直前にフラッシュメモリ12に書き込まれたベース31の温度と、現在のベース31の温度との差を算出し、現在のベース31の温度が所定値(80℃)以上低下していたら、切状態に移行させる。さらに、現在のベース31の温度そのものが、所定温度である例えば50℃未満ならば、同様に切状態に移行させ、そうでなければ停電直前の設定温度にて、アイロン本体1の動作を再開させる。
ここで図6に基づき、実際のフラッシュメモリ12の書き込みの一例を説明すると、前述の通り、本実施例では一回当たり5バイトずつ、アイロン本体1の動作状態に関わる情報を書き込んで行く。図6の例では、フラッシュメモリ12のデータ領域14(便宜上、最初のアドレスを0番地とし、以下最終の63番地まで1バイトづつ数字が増えるものとする)のなかで、20番地以降、すなわち5回目以降のデータが全て未使用のFFhexとなっており、4回分のデータが書き込まれている。
先ず、4回目(15〜19番地)のデータを例に説明すると、第1の記憶部61に割り当てられた15番地の値は03hexなので、下位4ビットは「3」で「中温コース」が選択され、上位4ビットは「0」でエラーが無かったことがわかる。また、第2の記憶部62に割り当てられた16番地の値から、ベース31の検出温度のAD値が85hexであることがわかる。さらに、第3の記憶部62に割り当てられた17番地〜19番地の値(0050E9hex)から、リレー43の接点43Bが20713回オンしたことがわかる。
その後、アイロン本体1を設置台2に載置して、設置台2側からフラッシュマイコン11に電源供給が行なわれる通電状態に移行すると、フラッシュメモリ12のプログラム領域13に格納されたプログラムが動作し、フラッシュメモリ12のデータ領域14からデータの読み出しを行なう。読み出しに際しては、先ず1回目の書き込みデータの1バイト目である0番地の値を確認する。0番地の値は07hexで、未使用のFFhexではないので、次の2回目の書き込みデータの1バイト目である5番地の値を確認する。5番地の値は00hexで、未使用のFFhexではないので、3回目の書き込みデータの1バイト目である10番地の値を確認する。10番地の値は03hexで、未使用のFFhexではないので、4回目の書き込みデータの1バイト目である15番地の値を確認する。15番地の値は03hexで、未使用のFFhexではないので、5回目の書き込みデータの1バイト目である20番地の値を確認する。20番地の値は未使用のFFhexであるので、フラッシュマイコン11の動作として、次にデータ領域14に書き込むのは、5回目の20番地であることをRAM15に記憶し、4回目の書き込みデータを読み込む(上述の通り、その内容は、「中温コース」,エラー無し,ベース31の検出温度のAD値=85hex,リレー43の接点43Bのオン回数=20713回である)。なお、フラッシュメモリ12のデータ領域14に書き込みデータが最後まで書かれていた場合(図6の例では,12回目まで書き込まれていた場合)は、データ領域14内の64バイト全部のデータを消去(未使用のFFhexをセット)して、次回の書き込みが1回目の0番地であることをRAM15に記憶する。こうして、RAM15を利用して、次回の書き込みの番地を指定することができる。
その後、フラッシュマイコン11に組み込まれた第1の判定手段55は、フラッシュメモリ12から読み出したデータにより、エラーの有無を判定し、エラーが有った場合にはロック状態制御手段54によるロック状態に移行する。このロック状態では、設定スイッチ21を受け付けず、他は切状態と同じ動作になる。一方、エラーが無い場合は、第1の判定手段55によりリレー43の接点43Bのオン回数が所定回数である例えば20万回未満であるか否かを判定し、所定回数以上であればやはりロック状態に移行する。リレー43の接点43Bのオン回数が所定回数未満であれば、第2の判定手段56はベース温度検出回路22により検出される現在のベース31の温度を取得し、この現在のベース温度が所定温度(例えば50℃)以上であり、且つ現在のベース温度と、フラッシュメモリ12から読み込んだ停電発生時におけるベース温度(AD値=85hex)との差が、所定値未満である場合に、同じくフラッシュメモリ12から読み込んだ停電前の「中温コース」により、前回の続きとして加熱制御が再開する。一方、そうでない場合には、切状態からの開始となる。そして、アイロン本体1が設置台2から再度離されると、停電検出回路29からの停電信号がフラッシュマイコン11に入ってくるので、その時の動作状態をRAM15に記憶された次の書き込み番地(5回目の20番地)に書き込む。
なお、この実施例では同様の動作を発揮するあらゆるフラッシュマイコン11を利用できる。すなわちフラッシュメモリ12を備え、このフラッシュメモリ12をプログラムで読み書きできるものであればよい。また、本実施例と同じデータを読み書きする必要はなく、例えばアイロン本体1が設置台2に置かれた時に、ユーザーにとって使い勝手や安全性がよくなるあらゆる動作情報をフラッシュメモリ12に記録してよい。また、市場でどのような使われ方をしているかを調べる動作情報として、例えばアイロン本体1をどの程度動作させたのかを示す通算の動作時間を記録してもよい。
以上のように本実施例では、フラッシュメモリ12を内蔵した制御手段としてのフラッシュマイコン11を備え、フラッシュメモリ12にコードレスアイロンに関わる種々の動作状態を記録するように構成している。
この場合、フラッシュメモリ12は電源供給が途絶えても、記憶した動作状態を保持することができるので、メモリ保持用のバックアップ電源回路が不要になる。これにより部品点数が低減し、コストダウンを図ることができる。また、アイロン本体1内部の各種電子部品を搭載する基板にもスペースの余裕ができ、デザイン的な自由度が高まる。さらに、フラッシュメモリ12では長時間の記憶が可能になり、例えば従来は記憶が不可能だったリレー43の積算動作回数や、アイロン本体1の動作時間なども記録できるようになった。しかも、フラッシュメモリを使用すると超短納期を達成でき、開発期間を短縮できると共に、マスク代も不要になり、この点でもコストダウンを実現できる。
また、本実施例のフラッシュマイコン11は、フラッシュメモリ12に記録してある動作状態から、停電復帰後の動作内容を決定するようにしている。このようにすることで、例えば動作状態としてコードレスアイロンが正しく動作していないとのエラーが記録してあれば、停電復帰後にコードレスアイロンを使用できないように動作内容を決定することで、ユーザーに対してより使い勝手や安全性の高いコードレスアイロンを提供できる。
また、このような構成では、停電発生時にフラッシュメモリ12に動作状態を記録させるようなフラッシュマイコン11であることが好ましい。こうすれば、コードレスアイロンの動作状態をフラッシュメモリ12に無用に書き込むことが無く、書き込みの回数を必要最小限に抑えて、フラッシュメモリ12の寿命を延ばすことができる。
また、フラッシュメモリ12に記録する動作状態としては、掛け面であるベース31を何度に設定するのかを決める設定値としての例えば設定温度であることが好ましい。フラッシュメモリ12に設定温度が記憶されていれば、例えば停電復帰後に同じ設定温度で動作を再開させることができ、設定温度に関してユーザーに対する使い勝手が向上する。
また、特にこの場合は、停電復帰時の所定部分であるベース31の温度が所定温度以上であったら、フラッシュメモリ12に記録した設定温度で動作を開始するような構成を、制御手段であるフラッシュマイコン11に持たせるのが好ましい。このようにすると、アイロン掛けを行なうために、一時的に停電状態になった場合は、ベース31の温度が所定温度以上になっているので、フラッシュメモリ12に記憶した設定温度で動作を再開させることができる。一方、例えば収納状態にあるコードレスアイロンを取り出して、アイロン掛けを開始する際には、停電復帰時におけるベース31の温度が室温にほぼ一致して、所定温度未満になっているので、そのような場合は例えば切状態にして、前回と同じ設定温度で勝手に動作が開始しないようにする。これにより、ベース31の設定温度に関して、ユーザーに対しより使い勝手のよいコードレスアイロンを提供できる。
フラッシュメモリ12に記録する動作状態としては、ベース温度検出手段22で検出されるベース31の温度であってもよい。ベース31がどのような温度であったのかという情報がフラッシュメモリ12に記憶されていれば、例えば停電復帰後にこのフラッシュメモリ12に記録されたベース31の温度を判定条件として、最適な状態で動作を再開させることができ、ユーザーに対する使い勝手が向上する。
さらに、フラッシュメモリ12に、前記設定温度と温度検出手段22で検出されるベース31の温度とを動作状態として記録すると共に、停電復帰時におけるベース31の温度と、フラッシュメモリ12に記録したベース31の温度との差が所定値未満の場合に、フラッシュメモリ12に記録した設定温度で動作を開始するように、制御手段であるフラッシュマイコン11を構成してもよい。このようにすると、アイロン掛けを行なうために、一時的に停電状態になった場合は、停電復帰時におけるベース31の温度と、フラッシュメモリ12に記録したベース31の温度との差が所定値未満になっているので、フラッシュメモリ12に記憶した設定温度で動作を再開させることができる。一方、例えば収納状態にあるコードレスアイロンを取り出して、アイロン掛けを開始する際には、停電復帰時におけるベース31の温度が室温にほぼ一致して、停電復帰時におけるベース31の温度と、フラッシュメモリ12に記録したベース31の温度との差が所定値以上になっているので、そのような場合は例えば切状態にして、前回と同じ設定温度で勝手に動作が開始しないようにする。これにより、ベース31の設定温度に関して、ユーザーに対しより使い勝手のよいコードレスアイロンを提供できる。
他にフラッシュメモリ12に記録する動作状態としては、例えば加熱手段であるヒータ41を通断電するリレー43の接点43Bの動作回数(オン回数,オフ回数,オンおよびオフ回数)であることが好ましい。フラッシュメモリ12にリレー43の接点43Bの動作回数が記憶されていれば、例えばその動作回数が所定回数以上に達した時点で、その後は長時間の停電に及んでも、例えば操作を受け付けないようにしたり、警告を行なうなどの必要な処置を講じることができ、より安全性が高まる。さらに製品の戻入時に、ユーザーがどのような使い方をしていたのかを知ることができ、故障の原因推測や設計時における製品寿命の参考とすることができる。
また、特にこの場合は、リレー43の接点43Bの動作回数が所定回数以上に達したら、使用不能状態にさせるような構成を、制御手段であるフラッシュマイコン11に持たせるのが好ましい。この場合、ヒータ43の接点43Bの動作回数が寿命に達したら、その後は長時間の停電に及んでも、コードレスアイロンとしての使用ができなくなる。そのため、よりユーザーに対する安全性を高めることができる。
さらに、リレー43の接点43Bの動作回数が所定回数以上に達したら、表示や報知による警報を行なうように構成してもよい。この場合も、ヒータ43の接点43Bの動作回数が寿命に達したら、その後は長時間の停電に及んでも、ユーザーに警報を行なうことができる。そのため、よりユーザーに対する安全性を高めることができる。
フラッシュメモリ12に記録する動作状態としては、例えばベース温度検出回路22の故障や、ヒータ41用のリレー43の接点溶着などの有無を示すエラー情報であってもよい。フラッシュメモリ12にこうしたエラー情報が記憶されていれば、エラー発生時に例えば操作を受け付けないようにしたり、警告を行なうなどの必要な処置を講じることができ、より安全性が高まる。
また、特にこの場合は、エラー情報にエラーが記録されていれば、使用不能状態にさせるような構成を、制御手段であるフラッシュマイコン11に持たせるのが好ましい。この場合、エラー情報にエラーが記録されていれば、その後は長時間の停電に及んでも、コードレスアイロンとしての使用ができなくなる。そのため、よりユーザーに対する安全性を高めることができる。
フラッシュメモリ12に記録する動作状態としては、例えば、コードレスアイロンの動作時間であってもよい。こうした動作時間がフラッシュメモリ12に記憶されていれば、例えば動作時間が所定時間以上に達した時点で、その後は長時間の停電に及んでも、例えば操作を受け付けないようにしたり、警告を行なうなどの必要な処置を講じることができ、より安全性が高まる。さらに製品の戻入時に、ユーザーがどのような使い方をしていたのかを知ることができ、故障の原因推測や設計時における製品寿命の参考とすることができる。
さらに本実施例では、フラッシュメモリ12の記録データを外部から取得できる手段として、アイロン本体1に外部出力手段26を備えており、この外部出力手段26を利用して、データ受信装置27などの任意の外部機器にフラッシュメモリ12の記録内容を転送することができる。そのため、製品の戻入時に、ユーザーがどのような使い方をしていたのかを、データ受信装置27を利用して知ることができ、故障の原因推測や設計時における製品寿命の参考とすることができる。さらに、製品開発時のマイコンプログラムデバックも容易になり、開発効率が向上する。
次に、本発明の別な変形例を図7〜図15に基づき説明する。なお、上記実施例と共通箇所には共通符号を付し、その共通する部分の説明は極力省略する。コードレスアイロンの電気的な構成は、停電検出回路29が不要である点を除けば図1〜図3と共通しているが、その動作概要やフラッシュメモリ12の書き込み/読み出しの仕方が上記実施例と異なる。そこで、図7に基づき本例におけるコードレスアイロンの動作概要を説明する。
加熱制御手段51は前述のように、通電状態でベース31の温度が予め設定した温度(設定温度)となるように制御を行なうもので、ここでも設定スイッチ21の操作により、「低温コース」,「中温コース」,「高温コース」の3コースを選択できるようになっている。また、設定スイッチ21を一回押す毎に、「低温コース」→「中温コース」→「高温コース」→「切」→「低温コース」の順を繰り返して、選択されるコースが切り替ると共に、「切」を選択すると、設定温度の選択が必要で、且つベース31への加熱を行なわない切状態に移行することができる(図7の符号A1〜A4参照)。すなわちフラッシュマイコン11は、前記加熱制御手段51の他に、アイロン本体1を切状態にする切状態制御手段52を、通電状態における動作制御手段53として備えている。
アイロン掛け時には、アイロン本体1を設置台2に載せる通電状態と、アイロン本体1を設置台2から持ち上げる停電状態が繰り返される。例えば、「中温コース」を選択した状態(設定温度は約160℃)で、アイロン本体1を設置台2から持ち上げてアイロン掛けを行ない、図7の符号A5に示すように、設置台2からアイロン本体1側への給電が途絶える停電状態に移行した後、再度アイロン本体1を設置台2に戻して再通電したら(符号A21参照)、判定手段56による停電時間の長短を判断する。アイロン掛けの場合は一般に短時間の停電であり、通電開始時におけるベース31の検出温度が所定温度(例えば50℃)以上であるので、停電前の「中温コース」が自動的に選択されて、この「中温コース」による加熱制御が再開する(符号A8参照)が、例えば設置台2の電源プラグ3をコンセントから抜いて、コードレスアイロンを収納状態に片付け、暫くしてから再度通電状態に移行した場合には、通電開始時におけるベース31の検出温度が所定温度未満であるので、切状態に移行するようになっている(符号A9参照)。
次に、フラッシュメモリ12の書き込みと読み出しについて説明すると、ここで使用するフラッシュメモリ12の記憶容量は4Kバイトであり、64バイトを1ブロックとして、各ブロック単位毎にデータを消去できるようになっている。またこの変形例では、64バイト×3ブロック(=192バイト)を動作状態の記録部であるデータ領域14に割り当てている。具体的には、EE00〜EE3F,EE40〜EE7F,EE80〜EEBFの各番地(何れも16進数)の3ブロックがデータ領域14で、残りがプログラム領域13である。プログラム領域13は前述したように、プロテクト機能を用いて書き換えできないように設定されている。
図8〜図15は、データ領域14におけるフラッシュメモリ12の書き込みと読み出しの一例を示したものである。先ず、書き込み時の動作について説明すると、この変形例では、設定スイッチ21を押す毎に、その設定内容がフラッシュメモリ12に書き込まれる。ここで注目すべき点は、フラッシュマイコン11の機能により、同一の意味を持つ設定内容がフラッシュメモリ12の複数箇所に書き込まれることである。この変形例では、フラッシュメモリ12の3箇所に書き込みが行なわれるが、この3箇所は全て異なる上記3ブロックに割り当てられている。このようにする理由は、仮に書き込みの途中で停電が発生して、フラッシュメモリ12への書き込みに失敗し、例えばあるブロックのデータが全て壊れた場合でも、残りの2ブロックのデータが助かるようにするためである。また、3ヶ所のデータを書き込む際に、最初の第1のブロック(1バイト目)に書き込んでから、次の第2のブロック(2バイト目)に書き込むまで、一定の時間(例えば50ms)を空けており、また第2のブロックに書き込んでから、最後の第3のブロック(3バイト目)に書き込むまで、同様に一定の時間(例えば50ms)を空けている。その理由は、ここで使用するフラッシュマイコン11のフラッシュメモリ12に対する書き込み保証電圧が2.7V以上であるのに対して、フラッシュマイコン11にリセットが掛かって、プログラムが停止する電圧が、それよりも低い2.5〜2.6Vであり、プログラムによりフラッシュメモリ12への書き込みはできるものの、その書き込みが保証されない電圧帯が存在するからである。そのため停電が発生し、フラッシュマイコン11への供給電圧が上記書き込み保証電圧である2.7V未満になってから、リセットが掛かって、プログラムが停止する電圧に低下するまでの時間(この変形例では、10mS)よりも長い、50ms×2=100mSの時間間隔を空けて書き込みを行なっている。
一例として、書き込むデータは次のようになっている。「切コース」である停止(切状態)の時には00000000bin=00hexとなり、「低温コース」選択時には01110111bin=77hexとなり、「中温コース」選択時には00110011bin=33hexとなり、「高温コース」選択時には00010001bin=11hexとなる。設定スイッチ21の操作時にのみ、データを書き込むように決めているのは、フラッシュメモリ12が10〜100万回の書き込み(消去)しか保証していないためで、フラッシュメモリ12に対する不必要な書き込み動作を省くことで、書き込み回数を極力減らして、フラッシュメモリ12の寿命を延ばすことが可能になる。
上述のように設定スイッチ21を押す毎に、フラッシュマイコン11の設定内容は「低温コース」→「中温コース」→「高温コース」→「切」→「低温コース」と切り替わる。この順でフラッシュメモリ12に書き込みを行なうと、「低温コース」→「中温コース」に切り替わる際には、01110111bin→00110011binとなって、ビット2とビット6をクリアすればよく、「中温コース」→「高温コース」に切り替わる際には、00110011bin→00010001binとなって、ビット1とビット5をクリアすればよく、さらに「高温コース」→「切」に切り替わる際には、00010001bin→00000000binとなって、ビット0とビット4をクリアすればよく、何れもビットをクリアするだけなので、前回書き込んだ箇所に再度書き込むことが可能になる。これにより毎回では4回の書き込みが必要なのに対し、1回の書き込みで済み、フラッシュメモリ12の消去回数を1/4に減らすことができる。
次に、読み出し時の動作について説明すると、アイロン本体1を設置台2に載置して通電状態に移行すると、フラッシュマイコン11の演算回路16は、フラッシュメモリ12のプログラム領域13に格納されたプログラムを読み込んで、内部の制御レジスタやRAM15をクリア(0をセット)した後、フラッシュメモリ12のデータ領域14内から、アイロン本体1の動作状態に係る情報を一回だけ読み出す(1回の通電状態につき一回の読み込み)。そして、データ領域14の各ブロックで、最後のアドレス(各ブロックの63番地)から最初のアドレス(0番地)に向けて、1番地ずつ未使用のデータ(FFhex)であるか否かを検索する。
各ブロックにおける検索結果のうち、未使用のデータ(FFhex)以外のもので、一番最後のアドレスに近いアドレス(一番大きなアドレス)を取得し、このアドレスから3つの各ブロックで1番地ずつ0番地に近いアドレスに向けて、データの比較を行なう。具体的には、3つのブロックの同じアドレスで、FFhexのデータ値が0個または1個(1個以下)となるまで検索を行ない(2個または3個の場合は、アドレスを一つ戻して検索する)、この検索条件に合致する同じアドレスのデータが各ブロックで見つかったら、フラッシュマイコン11は次の条件と順番で判定を行ない、データを最終的に確定する。
すなわち、(1)3個のデータが共に一致していたら、そのデータを採用する。(2)第1のブロックと第2のブロックが一致していた場合、その一致したデータを採用する。(3)第2のブロックと第3のブロックが一致していた場合、その一致したデータを採用する。(4)上記(1)〜(3)以外の場合は、第3のブロックのデータを採用する。(5)但し、(1)〜(4)で採用したデータが、未定義データ(上記00hex,77hex,33hex,11hex)以外の場合には、切状態に移行させる。
ここで図8〜図15に基づき、実際のフラッシュメモリ12の書き込みや読み出しの例を説明する。先ず、フラッシュメモリ12のデータ領域14内において、図8に示すようなデータが、EE00〜EE3F,EE40〜EE7F,EE80〜EEBFの各番地(マイコンアドレス)の各メモリブロック(ブロック)に書き込まれ、保持されているとする。ここで、アイロン本体1を設置台2に載せる通電状態に移行すると、それぞれのメモリブロックで、最終のブロックアドレス(63=FFhex番地)から、最初のブロックアドレス(00=00hex番地)に向けて、1番地ずつ未使用のデータ(FFhex)以外のデータが存在するブロックアドレスを検索すると、第1〜第3のメモリブロックの全てが08hex番地となり、一番最後のアドレスに近いアドレス(最も大きいアドレス)も同じく08hex番地となる。ここで、各メモリブロックの08hex番地から1番地ずつ00hex番地に近いアドレスに向けてデータ比較を行ない、FFhexのデータ値が1個以下となるブロックアドレスを検索すると、これも08hex番地となる。したがって、上記(1)〜(5)の判定を行なうと、(1)の条件に当てはまり、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、08hex番地のデータ値33hexに対応した「中温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
次に、「中温コース」から動作を継続している間に、設定スイッチ21を押して「高温コース」に切り替えたら、フラッシュマイコン11は各ブロックの08hex番地に対して、所定の時間間隔を置きながら、「高温コース」に対応するデータ値11hexを書き込んで行く。図9は、全てのブロックの08hex番地に、「高温コース」に対応するデータ値11hexが正しく書き込まれた例を示している。
一方、第3のメモリブロックの書き込み動作の途中で停電になり、例えば図10に示すように、第3のメモリブロックへの書き込みが失敗して、未定義のデータ値10hexが第3のメモリブロックの08hex番地に書き込まれたとする。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(2)の条件が該当し、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、第1のメモリブロックおよび第2のメモリブロックの08hex番地のデータ値11hexに対応した「高温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
また、例えば図11に示すように、第2のメモリブロックと第3のメモリブロックの書き込み途中で、第3のメモリブロックに対する書き込みを行なわずに停電になった場合は、第3のメモリブロックの08hex番地におけるデータ値は、「中温コース」に対応した33hexのままとなる。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(2)の条件が該当し、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、第1のメモリブロックおよび第2のメモリブロックにおける08hex番地のデータ値11hexに対応した「高温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
また、例えば図12に示すように、第2のメモリブロックの書き込み途中で停電になり、第2のメモリブロックへの書き込みが失敗して、未定義のデータ値10hexが第2のメモリブロックの07hex番地に書き込まれたとする。この場合、第3のメモリブロックの07hex番地におけるデータ値は、「中温コース」に対応した33hexのままとなる。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(4)の条件が該当し、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、第3のメモリブロックにおける07hex番地のデータ値33hexに対応した「中温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
また、例えば図13に示すように、第1のメモリブロックと第2のメモリブロックの書き込み途中で、第2のメモリブロックに対する書き込みを行なわずに停電になった場合は、第2のメモリブロックおよび第3のメモリブロックの07hex番地におけるデータ値は、いずれも「中温コース」に対応した33hexのままとなる。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(3)の条件が該当し、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、第3のメモリブロックおよび第3のメモリブロックにおける07hex番地のデータ値33hexに対応した「中温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
また、例えば図14に示すように、第1のメモリブロックの書き込み途中で停電になり、第1のメモリブロックへの書き込みが失敗して、未定義のデータ値10hexが第1のメモリブロックの07hex番地に書き込まれたとする。この場合、第2のメモリブロックと第3のメモリブロックの07hex番地におけるデータ値は、「中温コース」に対応した33hexのままとなる。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(3)の条件が該当し、ベース31の検出温度が例えば50℃以上であれば、第2のメモリブロックと第3のメモリブロックにおける07hex番地のデータ値33hexに対応した「中温コース」で、アイロン本体1の動作が再開する。
さらに、例えば図15に示すように、「切コース」から「低温コース」に切換えた瞬間に停電が発生し、第2のメモリブロックへの書き込みが失敗して、未定義のデータ値10hexが第2のメモリブロックの07hex番地に書き込まれたとする。この場合、第1のメモリブロックの07hex番地におけるデータ値は、「低温コース」に対応した77hexで、第3のメモリブロックの07hex番地におけるデータ値は、未使用のデータに対応したFFhexのままとなる。その後、通電状態に復帰してフラッシュマイコン11をリセットし、再起動後のフラッシュメモリ12の読み出しになると、上記(1)〜(5)の判定において、(4)の条件が該当し、第3のメモリブロックにおける07hex番地のデータ値FFhexが採用されるが、これは未定義データなので切状態に移行する(ベース31の検出温度が例えば50℃以上の場合)。
因みに、この変形例でも同様の動作を発揮するあらゆるフラッシュマイコン11を利用できる。すなわちフラッシュメモリ12を備え、このフラッシュメモリ12をプログラムで読み書きできるものであればよい。また、本実施例と同じデータを読み書きする必要はなく、また同一データを書き込む際に、全く同じデータを書き込む必要はない(データが異なっていても同じ意味を持つものであればよい)。例えば、第1のメモリブロックでは、「低温コース」に対応したデータ値を01110111binとするのに対し、第2のメモリブロックでは、同じ「低温コース」に対応したデータ値を10001000binのようにビット反転させて書き込んでもよい。
以上のように、この変形例でも、フラッシュメモリ12を内蔵した制御手段としてのフラッシュマイコン11を備え、フラッシュメモリ12にコードレスアイロンに関わる種々の動作状態を記録するように構成している。
この場合、フラッシュメモリ12は電源供給が途絶えても、記憶した動作状態を保持することができるので、メモリ保持用のバックアップ電源回路が不要になる。これにより部品点数が低減し、コストダウンを図ることができる。また、アイロン本体1内部の各種電子部品を搭載する基板にもスペースの余裕ができ、デザイン的な自由度が高まる。さらに、フラッシュメモリ12では長時間の記憶が可能になる。しかも、フラッシュメモリを使用すると超短納期を達成でき、開発期間を短縮できると共に、マスク代も不要になり、この点でもコストダウンを実現できる。
また本実施例では、同じ意味を持つ動作状態のデータをフラッシュメモリ12の複数箇所に記録するように構成したことで、停電時にフラッシュメモリ12へのデータの書き込みを失敗しても、フラッシュメモリ12から正しいデータを取得することができる。そのため、停電状態の有無を監視する停電検知回路も不要になり、更なるコストダウンを図ることができる。併せて、上記基板に対するスペースの余裕も広がり、デザイン的な自由度もさらに高まる。
またこの変形例では、最初のデータ書き込みから最後のデータ書き込みまでのデータ書き込みの時間を、停電発生時にフラッシュメモリ12の書き込み動作が可能な電圧(書き込み保証電圧)に達してから、フラッシュマイコン11がリセットする電圧領域の時間より長くなるように構成している。このようにすれば、フラッシュメモリ12の書き込み動作が保証されないものの、フラッシュマイコン11のプログラムが動作する時間帯で、同じ意味を持つ動作状態のデータが集中して書き込まれるのを防ぐことができ、より確実に正しいデータをフラッシュメモリ12から取得することが可能になる。
さらにこの変形例では、同じ意味を持つ動作状態のデータをフラッシュメモリ12の異なるブロック領域にそれぞれ記録しており、停電時にフラッシュメモリ12へのデータの書き込みを失敗して、1つのメモリブロックのデータが全て壊れたとしても、フラッシュメモリ12から正しいデータを取得することができる。そのため、停電状態の有無を監視する停電検知回路も不要になり、更なるコストダウンを図ることができる。併せて、上記基板に対するスペースの余裕も広がり、デザイン的な自由度もさらに高まる。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。