JP4213806B2 - コイル一体型点火プラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に取り付けられる点火コイル部と点火プラグ部の両者を回転不能に一体化させたコイル一体型点火プラグに関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、自動車の高性能化に伴って多くの補機類品(電装品)がエンジンルーム内に搭載される関係上、エンジンルーム内におけるスペースを有効に確保しようとする傾向にある。そのため、内燃機関の設置スペースの縮小化が求められており、内燃機関自体も小型化を要求されている。従って、内燃機関に取り付けられる点火コイル部と点火プラグ部とを各々別体で取り付け、両者をハイテンションコード等を用いて接続するといった従来の方法では、エンジンルーム内におけるスペース確保への対応の妨げとなってしまう。
【0003】
そこで、従来より、軸孔を有しその軸孔に中心電極が挿設されている絶縁体と、その絶縁体を嵌着してなる主体金具とから構成される点火プラグ部と、点火プラグ部へ高電圧を供給するための電圧発生手段(一次コイル及び二次コイル、コイルコア等)を備えた点火コイル部とを回転不能に直接一体化させたコイル一体型点火プラグが提案されている。このように点火コイル部と点火プラグ部を一体化させたコイル一体型点火プラグにあっては、ハイテンションコード等を用いて両者を接続する必要がなく、部品点数の減少を図ることができ、さらにハイテンションコードの絶縁劣化による点火不良等の弊害を防ぐことが可能となる。また、ディストリビュータ等の機械式配電器を廃止することもでき、部品点数の減少を図ることができ、さらには内燃機関や電装品等に電波雑音の弊害を防ぐことが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来からのコイル一体型点火プラグは、点火コイル部にコイルコアを配する構成よりなるものであるが、そのコイルコアの形状は様々であって一定ではなく、その大半は開磁路を構成してなるコイルコア(以下、開磁路型コイルコアという)であった。そのために開磁路型コイルコアを備えるコイル一体型点火プラグにあっては、コイルコア外部(大気中)を磁路としていることから磁気抵抗が大きくなってしまう。従って、磁束の洩れが発生し、点火プラグ部への供給電圧に損失を生じてしまうことが懸念される。即ち、従来のコイル一体型点火プラグでは、磁路については十分に考慮されておらず、磁気特性に優れたものとは言い難いものであった。
【0005】
そこで、図6に示すように、実開平1−63780号公報には、閉磁路を構成してなるコイルコア4(以下、閉磁路型コイルコアという)を点火コイル部2に配したコイル一体型点火プラグ1が提案されている。前記公報技術では、閉磁路コイルコア4を点火コイル部2に備えてなることから、磁路はそのコイルコア4により形成されることになる。このコイル一体型点火プラグ1に磁束が発生した場合には、その磁束がコイルコア4外部(大気中)を経由しないことから、磁束の洩れの発生を低減することができる。その結果、洩れ磁束に伴う点火プラグ部3への供給電圧の損失が少なく、良好な火花放電を行うことが可能となる。
【0006】
しかしながら、点火コイル部2に配される閉磁路型コイルコア4は、通常、前記公報技術のように二組のコ字型コイル同士やE時型コイル同士(図示しない)を対向状に組合わせたり、コ字型コイルとI字型コイルを組合わせて構成されるものである。そのため、一組からなるI字型コイルまたはT字型コイルにより形成される開磁路型コイルコアを点火コイル部に配するコイル一体型点火プラグと比較すると、点火コイル部2のスペースを大きく設計せざるをえない。即ち、点火コイル部2に磁気特性に優れる閉磁路型コイルコア4を配したコイル一体型点火プラグ1にあっては、コイル一体型点火プラグ1が大型化してしまうおそれがあり、それ自体の小型化の要求には不向きであることから、内燃機関におけるスペースの縮小化の妨げとなってしまう。
【0007】
また、図7に示すように、特開昭58−5984号公報では、コイルコア8と強磁性体材料により形成された円筒9との組合わせにより形成される閉磁路を点火コイル部6に配したコイル一体型点火プラグ5が提案されている。前記公報技術では、コイルコア8と強磁性体材料により形成された円筒9との組合わせによる閉磁路を備えてなることから、前記実開平1−63780号公報同様、洩れ磁束に伴う点火プラグ部7への供給電圧の損失が少なく、良好な火花放電を行うことが可能となる。
【0008】
しかしながら、前記公報技術においても、コイルコア8と強磁性体材料により形成された円筒9とを組合わせて予め閉磁路を形成した上で、その閉磁路を点火コイル部6に配するコイル一体型点火プラグ5であり、それ自体の小型化への対応には限界がある。即ち、点火コイル部6に前述の構成による閉磁路を備えるコイル一体型点火プラグ5にあっても、磁気特性には優れてなるものであるが、点火プラグ部とは別体の点火コイル部で閉磁路を形成した上で点火プラグ部と一体化させるものであることから、コイル一体型点火プラグが縦方向(図中上下方向)に延びた形で構成されてしまい、小型化への対応には不向きと言える。
【0009】
さらに、実開昭64−32464号公報のように、一次コイルと二次コイルを閉磁路型コイルコアに巻装してなる点火トランスを、絶縁体及び主体金具内に埋設させて小型化を図った点火プラグ等も提案されているが、絶縁体及び主体金具内にそのような点火トランスを埋設させることは現実的に困難であり、またそのように絶縁体及び主体金具を加工すること自体、製造コスト及び製造効率の点からみても優れたものであるとは言い難いものである。
【0010】
本発明は、前述したような問題点に鑑みて為された発明であって、磁束の洩れに伴う点火プラグ部への供給電圧の損失が少なく、良好な火花放電を行うことを可能とする閉磁路をコイル一体型点火プラグに有しつつ、かつ、小型化への対応についても十分に満足することができるコイル一体型点火プラグを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用、効果】
その目的を達成するための本発明のコイル一体型点火プラグは、一次コイル及び二次コイルを巻装してなる中心コア部と該中心コア部の外側に位置する外部コア部とを有する強磁性体材料よりなるコイルコアを備えてなる点火コイル部と、軸孔を有し該軸孔に中心電極が挿設されている絶縁体と、該絶縁体を嵌着する主体金具とを備えてなる点火プラグ部とから構成され、前記点火コイル部と前記点火プラグ部とが回転不能に一体化されていると共に、該点火コイル部の前記コイルコアと該点火プラグ部の前記主体金具により閉磁路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明において注目すべき点は、点火コイル部と点火プラグ部とを一体化させることにより、点火コイル部のコイルコアと点火プラグ部の主体金具とにより閉磁路を形成してなる点である。
【0013】
かかる構成では、コイルコアと主体金具により閉磁路が形成されているので、コイルコアの中心コア部に巻装された一次コイルに低電圧(一次電圧)が送られ一次電流が流れると、コイルコア及び主体金具からなる閉磁路に磁束が発生する。その際、この閉磁路では、開磁路型コイルコアとは異なり磁束がコイルコア外部(大気中)を経由することがないことから、磁気抵抗が小さく抑えることが可能となる。従って、一次電流により磁束が誘起される際の磁束の洩れを少なくすることができるため、小型であるにもかかわらず、高い二次コイルの電圧(二次電圧)を発生させることができる。その結果、点火プラグ部へ供給される電圧の損失が少なく、十分なエネルギーを有した電圧(二次電圧)を点火プラグ部に供給することができ、常に良好かつ安定した火花放電を行うことができる。
【0014】
さらに、かかる構成では、従来とは異なり、閉磁路を有するコイル一体型点火プラグを形成するに際して、点火コイル部において予め閉磁路を配した上で点火プラグ部と組合わせて一体化させる必要性がない。即ち、本発明では、点火コイル部と点火プラグ部とを一体化させることで初めて閉磁路を形成するものである。従って、点火コイル部に予め閉磁路を配さずに、主体金具を用いて閉磁路を形成することから、点火コイル部のスペースを縮小化することができるばかりか、閉磁路を備えつつも小型化をも満足するコイル一体型点火プラグを提供することができる。さらに、点火コイル部と点火プラグ部を単に接合等により回転不能に一体化させるだけで閉磁路を形成することが可能であることから、製造コスト、製造効率の点からみても非常に優れているものとなる。
【0015】
さらに、前記コイル一体型点火プラグにおいて、コイルコアを形成する外部コア部が略円筒状に形成され、かつ、該外部コア部が点火コイル部のケーシングの一部を形成しているとよい。
【0016】
かかる構成では、コイルコアが中心コア部とその中心コア部の外側に位置する円筒状の外部コア部により形成され、そのコイルコアと主体金具との組合わせにより閉磁路を形成することから、小型であるにもかかわらず、磁気特性に優れるコイル一体型点火プラグを提供することができる。さらに、前記円筒状の外部コア部が点火コイル部のケーシングの一部を形成(代用)することにより、コイルコアを金属製のケーシング等で収納する必要がない。従って、本発明のコイルコアは閉磁路を形成すると共にケーシングについても形成することになるので、より小型のコイル一体型点火プラグを実現することができる。
【0017】
さらに、前記コイル一体型点火プラグにおいて、前記中心コア部の一部が前記絶縁体の軸孔内に挿設されているとよい。
【0018】
かかる構成では、コイルコアと主体金具とにより形成される閉磁路において、磁束の切れ目となる部分の縮小化を図ることが可能となる。それより、一次電流により閉磁路に発生した磁束の洩れを生じさせ難くすることが可能となる。その結果、本発明のコイル一体型点火プラグでは、洩れ磁束をより低減することが可能となり、効率良く火花放電を行うことが可能となる。
【0019】
さらに、前記コイル一体型点火プラグにおいて、前記点火プラグ部の中心電極の少なくとも一部が強磁性体材料により形成されると共に、前記閉磁路の一部を形成しているとよい。
【0020】
かかる構成では、点火プラグ部の中心電極の少なくとも一部が、コイルコアと主体金具とともに閉磁路の一部を形成しうることから、閉磁路における磁束の切れ目となる部分をより最小限に縮小することができる。それより、一次電流により閉磁路に発生した磁束の洩れを最小限に抑制することが可能となる。その結果、本発明のコイル一体型点火プラグでは、洩れ磁束を最小限に抑制することができ、より高効率で良好かつ安定な火花放電を行うことができる。
【0021】
さらに、前記コイル一体型点火プラグにおいて、前記閉磁路は、少なくとも1つ以上の磁束飽和ギャップを有しているとよい。
【0022】
ところで、本発明における閉磁路については、その閉磁路を構成するコイルコア及び主体金具さらには中心電極の強磁性体材料によっても異なるが、ヒステリシス特性上の磁束密度の最大値(以下、最大磁束密度という)が決まってくる。そのために、一次電流により閉磁路に発生した磁束がヒステリシス特性上の最大磁束密度に達することがあると、磁束の変化が停止してしまい、コイルコアはインダクタとしての機能を失い、電気抵抗としての機能のみになってしまうことが懸念される。即ち、閉磁路を備えるコイル一体型点火プラグにあっては、一次電流により閉磁路に発生した磁束が最大磁束密度に達することがあると、磁束の変化が有効に起きずに磁気飽和してしまい、一次電流により誘起した磁束を打ち消すように過電流が発生してしまうのである。その結果、二次コイルから昇圧される高電圧(二次電圧)を十分に得ることができずに、点火プラグ部において良好な火花放電を行えず、極端な場合には飛火ミスが起こってしまうといったおそれがある。
【0023】
そこで、本発明では、コイルコアと主体金具さらには中心電極により形成される閉磁路に、少なくとも1つ以上の磁束飽和ギャップを形成するものとする。詳細には、点火プラグ部にあっては、点火コイル部から印加される高電圧(二次電圧)を絶縁するために絶縁体を有してなるものであることから、この絶縁体の肉厚を代用して磁束飽和ギャップを形成するものとする。これにより、ヒステリシス特性上決定される最大磁束密度の値の付近に、故意に磁束密度の最高値を制限させることが可能となる。その結果、本発明の閉磁路を備えるコイル一体型点火プラグにおいては、一次電流により閉磁路に発生する磁束の変化を有効に確保することができ、点火プラグ部において常に良好かつ安定な火花放電を行うことができる。尚、絶縁体の肉厚は、耐電圧に許容される範囲の肉厚を有しつつも、極力薄く形成されていることが望ましい。
【0024】
ついで、前記コイル一体型点火プラグは、燃料として気体燃料を使用するガスエンジンに取り付けられることで、より効果を発揮する。
【0025】
ところで、気体燃料は、液体燃料であるガソリンに比べて絶縁性が高いため、気体燃料を用いるガスエンジンでは、相対的に放電電圧が高くなる。詳細には、ガスエンジンにおける点火プラグ部での放電電圧は、ガソリンエンジンの場合と比べ30〜40%大きくかかる。さらに、点火プラグ部で飛火するためには、火花放電するために供給される電源電圧が放電電圧と比べて大きくなければならないため、ガスエンジンに取り付けられるコイル一体型点火プラグでは火花放電するために供給される電圧に損失がないことが必要となる。
【0026】
そこで、洩れ磁束の低減が図れ、火花放電するために供給される電圧を損失させることなく供給可能な本発明のコイル一体型点火プラグを、ガスエンジンに取り付けることで、高い放電電圧が必要なガスエンジンにあっても、火花放電するために供給される電圧を常に放電電圧よりも大きく供給することができ、高効率で良好かつ安定な火花放電を常に提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下に本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態にかかるコイル一体型点火プラグ100の部分断面全体図である。このコイル一体型点火プラグ100は、点火コイル部11と点火プラグ部12とが一体化された構成よりなるものである。
【0028】
このコイル一体型点火プラグ100の一方を構成する点火プラグ部11は、軸孔を有するセラミック製の絶縁体13と、軸孔14に挿設される金属製の中心電極15と、絶縁体13を嵌着してなる円筒状の主体金具16とを有する。主体金具16は、後述するように閉磁路の一部を形成するために強磁性体材料により、具体的には軟鋼(炭素鋼)等により形成されている。さらに、この主体金具16は、絶縁体13が抜けるのを防止するため滑石粉末等の無機粉末28を介在させて内向き略R状にカシメられたカシメ部16aと、そのカシメ部16aに隣接し径大に形成された略円筒状をした本体部16bと、内燃機関(シリンダーヘッド)に取り付けるためのネジ(雄ネジ)が形成され、本体部16bよりも径小に形成されたネジ部16cから構成されている。また、主体金具16の先端部には一極の接地電極17が固着されている。この接地電極17の先端は、中心電極15と所定の放電ギャップを形成するように、中心電極15に向って略L字状に曲げ返されている。
【0029】
ついで、本実施形態にかかるコイル一体型点火プラグ100の他方を構成する点火コイル部12について説明する。点火コイル部12には、中心コア部18a及びその中心コア部18aの両側に略平行に位置する外部コア部18bを有するE字型コイルからなるコイルコア18が配されている。尚、本実施形態のコイルコア18としては、強磁性体材料である珪素鋼板を積層して形成されているものを使用している。また、本実施形態において、コイルコア18はE字型コイルからなるものであるが、例えば珪素鋼板を積層して形成されたコ字型コイル及びI字型コイルをE字形状に組合わせて構成したものを使用してもよい。また、前記中心コア部18aにおいては、一次ボビン20に捲回された一次コイル19及び二次ボビン22に捲回された二次コイル21が、同軸状に巻装されてなる。尚、中心コア部18aの一部は、点火プラグ部11の絶縁体13の軸孔14内に挿入(挿設)された構成をしている。
【0030】
コイルコア18及びそのコイルコア18を構成する中心コア部18aに巻装された一次コイル19及び二次コイル21は、金属製の、具体的には鉄製の円筒状に形成されたケーシング23内に収納されている。尚、このようにケーシング23を用いて収納する理由としては、耐衝撃性に劣る珪素鋼板からなるコイルコア18に欠けや割れ等の欠陥を生じさせないためである。また、このケーシング23の外径は、前記点火プラグ部11の主体金具16の本体部16bの外径と略同径に形成され、かつ、コイルコア18と接するような大きさに形成されている。そして、ケーシング23の先端部23aは面形状に形成されており、後述するように主体金具16の本体部16b上面部と接合面となる。また、コイルコア18と主体金具16における当接部分24について溶接あるいはロウ付けにより接合されている。そして、ケーシング23内は絶縁性を向上させるために、絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂材料26(エポキシ樹脂等)を用いることによりモールドされている。
【0031】
尚、ケーシング23の上部には、主体金具16を内燃機関(シリンダーヘッド)に取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させるための六角ナット部23bが形成されている。また、その六角ナット部23bを貫通するケーブル27を通じて一次コイル19に低電圧が送られ、二次コイル21により発生する高電圧(二次電圧)は、その二次電圧を送るためのケーブル27bと接続された出力端子25により点火プラグ部11の中心電極15に供給される構成をしている。
【0032】
ついで、本実施形態にかかる前記点火プラグ部11と前記点火コイル部12とを一体化させることについて説明する。まず、E字型コイルからなるコイルコア18を形成し、そのコイルコア18を構成する中心コア部18aに一次コイル19が捲回された一次ボビン20及び二次コイル21が捲回された二次ボビン22を同軸状に巻装する。ついで、点火プラグ部11を配し、二次コイル21から延設するケーブル27bと接続された出力端子25を点火プラグ部11の中心電極15に当接(接続)させ、さらにコイルコア18と主体金具16とを当接させる。そして、その当接部分24を溶接あるいはロウ付けにより接合する。ついで、コイルコア18を収納するためのケーシング23を配し、そのケーシング23の先端部23aが点火プラグ部11の主体金具16の本体部16b上面部と当接するまで前記ケーシング23を挿入する。ケーシング23の先端部23aと主体金具16の本体部16b上面部との当接部分24は、抵抗溶接やレーザー溶接等により接合する。その際、ケーシング23の先端部23aと主体金具16の本体部16bとを圧接させた状態で接合してもよい。さらに、ケーシング23の一部分から絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂材料26を、ケーシング23(コイルコア18)内の空間部を満たすまで軟化した状態で充填し、その樹脂材料26を硬化させることによりケーシング23内をモールドする。
【0033】
このようにして前記点火プラグ部11と前記点火コイル部12を一体化させることにより、コイル一体型点火プラグ100は、コイルコア18と主体金具16により閉磁路を形成する。従って、コイル一体型点火プラグ100においては、点火コイル部12の一次コイル19に低電圧が送り込まれ一次電流が流れると、コイルコア18及び主体金具16により形成される閉磁路に磁束Φが発生する。そして、磁束Φは図2に示すような磁路を形成し、その磁束Φはコイルコア18外部(大気中)を経由することがないため、磁気抵抗を小さくすることが可能となる。その結果、一次電流により磁束が誘起される際の磁束Φの洩れが少なく、高い二次コイル21の電圧(二次電圧)を発生することができ、二次コイル21から点火プラグ部11の中心電極15に供給される電圧の損失を少なくし、点火プラグ部11の放電ギャップにおいて良好かつ安定した火花放電を行うことができる。
【0034】
さらに、本実施形態のコイル一体型点火プラグ100では、前述したように閉磁路がコイルコア18と主体金具16との組合わせにより形成されるものであることから、点火コイル部に予め閉磁路を配した上で点火プラグ部と一体化させる必要性がない。即ち、点火コイル部12のスペースを縮小化できるばかりか、閉磁路を備えつつも小型化をも満足するコイル一体型点火プラグ100を提供することができる。
【0035】
尚、本実施形態のコイル一体型点火プラグ100のように閉磁路を有する場合には、その閉磁路を構成するコイルコア18及び主体金具16の強磁性体材料によっても異なるが、ヒステリシス特性上、磁束密度の最大値(以下、最大磁束密度という)が決まってくる。そのために、一次電流により閉磁路に発生する磁束が最大磁束密度に達してしまい、磁束の変化が有効に起きずに磁気飽和を起こし、一次電流により誘起した磁束を打ち消すように過電流が発生してしまうおそれがある。そこで、本実施形態のコイル一体型点火プラグ100では、コイルコア18と主体金具16により形成される閉磁路に磁束飽和ギャップを形成してなる。詳細には、点火プラグ部11の絶縁体13の肉厚をもって磁束飽和ギャップ29を形成(代用)している。そしてこのように、磁束飽和ギャップ29を形成することにより、ヒステリシス特性上における最大磁束密度の値の付近に磁束密度の最高値を制限させ、一次コイル19に一次電流が流れた際に生じる磁束の変化を有効に確保しているのである。尚、絶縁体13の肉厚は点火プラグ部11が耐電圧に許容される範囲の肉厚を有している。
【0036】
また、前述の実施形態においては、コイルコア18として耐衝撃性に劣る珪素鋼板を使用することから、そのコイルコア18の欠けや割れ等の欠陥を防止するために金属製のケーシング23に収納させた上でコイル一体型点火プラグを形成している(図1参照)が、図3に示すように、金属製のケーシングを用いずに、主体金具16の本体部16b上面部の一部にネジ切りされた窪み部28を形成し、その窪み部28を充填するように絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂材料26によりモールドして回転不能に一体化させたコイル一体型点火プラグ200であってもよい。このようなコイル一体型点火プラグ200では、金属製のケーシングを用いる必要がないことから製造工数が減少し、コスト低減にも寄与することが可能となる。
【0037】
(実施形態2)
前記実施形態1では、中心コア部18a及びその中心コア部18aの両側に略平行に位置する外部コア部18bを有する略E字型コイルからなるコイルコア18と主体金具16とにより閉磁路を形成しているコイル一体型点火プラグ100を例(図1参照)として示したが、本実施形態では別形態をしたコイルコアと主体金具との組合わせにより閉磁路を形成する例について説明する。詳細には、コイルコアが、中心コア部とその中心コア部の外側に位置する円筒状の外部コア部との組合わせにより形成され、さらにその外部コア部が点火コイル部のケーシングの一部を構成するものである。
【0038】
本実施形態のコイル一体型点火プラグ300について、図4を参照しつつ説明する。尚、本実施形態のコイル一体型点火プラグ300は、後述するようにコイルコア31を備えた点火コイル部32を前記実施形態1に記載した点火プラグ部11に一体化させた構造よりなる。この点火コイル部32は、中心コア部31aを有するように珪素鋼板を積層して形成されたT字型コイルの外側に、強磁性体材料よりなる、具体的にはフェライトよりなる円筒状の外部コア部31bを配して、T字型コイルと円筒状の外部コア部31bとを組合わせたコイルコア31を備えている。尚、中心コア部31aには、一次コイル19が捲回された一次ボビン20及び二次コイル21が捲回された二次ボビン22が同軸状に巻装されている。また、前記円筒状の外部コア部31bの外径は、主体金具16の本体部16bの外径と略同径となるように形成されている。
【0039】
ついで、本実施形態にかかる前記点火プラグ部11と前記点火コイル部32とを一体化させることについて説明する。まず、T字型コイルを形成し、そのT字型コイルの中心コア部31aに一次コイル19が捲回された一次ボビン20及び二次コイル21が捲回された二次ボビン22を同軸状に巻装する。尚、中心コア部18aの一部は、点火プラグ部11の絶縁体13の軸孔14内に挿入(挿設)されている。そして、二次コイル21により発生する電圧(二次電圧)を送るためのケーブル27bと接続された出力端子25を点火プラグ部11の中心電極15に当接(接続)する。ついで、T字型コイルを覆うようにして円筒状の外部コア部31bを挿入し、その外部コア部31bとT字型コイルと組合わせることによりコイルコア31を形成する。さらに、円筒状の外部コア部31bを挿入するにあたっては、その外部コア部31bの先端面31cが点火プラグ部11の主体金具16の本体部16b上面部と当接するまで挿入する。そして、円筒状の外部コア部31bの先端面31cと主体金具16の本体部16b上面部との当接部分33を、抵抗溶接やレーザー溶接等により接合する。その際、外部コア部31bの先端部31cと主体金具16の本体部16bとを圧接させた状態で接合してもよい。ついで、円筒状の外部コア部31bと主体金具16とが接合されている反対側から、絶縁性及び耐熱性に優れた軟化した状態の樹脂材料34(エポキシ樹脂等)を円筒内の空間部を満たすまで充填し、その樹脂材料34を硬化させ、六角ナット部35を一面に有する常磁性体材料からなる円板36を外部コア部31bに接合することで密閉する。
【0040】
このようにして前記点火コイル部32と前記点火プラグ部11を一体化させることにより、本実施形態のコイル一体型点火プラグ300は、コイルコア31と主体金具16により閉磁路を形成する。さらに、そのコイルコア31を構成する円筒状の外部コア部31bが、点火コイル部32のケーシングの一部を代用する構成を有する。従って、コイル一体型点火プラグ300では、コイルコアを別体のケーシングを用いて収納させる必要がなく、コイルコアの機能とケーシングの機能を同時に果たすようにコイルコアが形成されることにより、実施形態1と比較しても、より小型化を満足するコイル一体型点火プラグを提供することができる。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態では、前記実施形態1または2のコイル一体型点火プラグにおける点火プラグ部の中心電極を、強磁性体材料であるニッケル(ニッケル合金)等を用いて形成することにより、コイルコア及び主体金具により形成される閉磁路とともに、その閉磁路の一部を形成するものである。以下、本実施形態を説明するにあたっては、実施形態1と同構造をしてなるコイル一体型点火プラグを用いた上で説明することにする。
【0042】
図5に示すように、本実施形態のコイル一体型点火プラグ400の構造は、基本的に実施形態1(図1参照)と同様であるが、中心電極42が、強磁性体材料であるニッケルよりなる合金により形成されている。即ち、その中心電極42が、コイルコア18及び主体金具16により形成される閉磁路の一部を構成することになる。従って、一次電流により磁束Φが発生した場合においては、その磁束Φは図5に示すような磁路を形成する。その結果、閉磁路における磁束の切れ目となる部分が最小限に縮小されることから、磁束Φの洩れを最小限に抑制することができ、点火プラグ部41の中心電極42へ供給するための点火コイル部12からの電圧の損失についても最小限に抑制することができる。尚、本実施形態においても、絶縁体13の肉厚を代用して磁束飽和ギャップ43を形成している。
【0043】
しかも、前記実施形態1〜3に記載のコイル一体型点火プラグは、メタンガス等といった気体燃料を燃料とするガスエンジンに取り付けられることで、より効果を発揮する。
【0044】
通常、気体燃料は、液体燃料であるガソリンに比べて絶縁性が高いため、気体燃料を用いるガスエンジンでは、相対的に放電電圧が高くなる。詳細には、ガスエンジンにおける点火プラグ部での放電電圧は、ガソリンエンジンの場合と比べ30〜40%大きくかかるものである。さらに、点火プラグ部で飛火するためには、火花放電するために供給される電源電圧が放電電圧と比べて大きくなければならない。そのために、ガスエンジンに取り付けられるコイル一体型点火プラグにおいては、火花放電するために供給される電圧の洩れが少ないことが要求される。
【0045】
そこで、前記実施形態1〜3に記載のコイル一体型点火プラグにあっては、前述したようにコイルコアと主体金具により、あるいはコイルコアと主体金具に加えて中心電極により閉磁路を形成してなるものであることから、一次コイルに低電圧が送り込まれて一次電流が流れた際においても、前記閉磁路に発生する磁束の洩れが少なく、高い二次コイルの電圧(二次電圧)を発生することができるものである。即ち、本実施形態1〜3に記載のコイル一体型点火プラグをガスエンジンに取り付けた場合にも、高効率で良好かつ安定した火花放電を行うことが可能となる。従って、気体燃料を燃料とするガスエンジンにあっては、本発明のコイル一体型点火プラグは非常に効果的である。
【0046】
しかも、ガスエンジンは燃料として気体燃料を使用することから、点火プラグ部に燻り(絶縁体へのカーボン付着のこと)がほとんど生じることがない。そのため、コイル一体型点火プラグとしての寿命の長寿命化が図れ、またプラグ交換を不要とすることができることから、コイル一体型プラグのメンテナンスフリーを実現することができる。
【0047】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1〜3において、点火プラグ部は一極の接地電極により構成されたものを示したが、多極であっても何等構わない。また、実施形態3においては、中心電極が強磁性体材料であるニッケルの合金よりなるもので構成されたものを示したが、中心電極の熱引きを良好にするために、銅よりなる芯部を強磁性体材料であるニッケルよりなる合金により被覆した形で中心電極を構成してもよい。
【0048】
さらに、実施形態1〜3においては、点火プラグ部の主体金具に内燃機関(シリンダーヘッド)に固定するためにネジ部が形成された構成であったが、このネジ部の部分を雄ネジを形成せずに単に円筒状に形成し、加えて点火コイル部の一部において内燃機関と固定するためのボルト孔を有するフランジ部を形成した構成のコイル一体型点火プラグとしてもよい。このようにコイル一体型点火プラグを構成することにより、内燃機関への取り付けに対しては、六角ナット部にプラグレンチ等を嵌め込み回転させることにより主体金具のネジ部を回転させて取り付ける必要性がない。即ち、内燃機関に前記構成のコイル一体型点火プラグを挿入し、フランジ部のボルト孔と内燃機関に設けられたボルト孔とを位置合わせした後、ボルト締め固定するだけで取り付けが可能となるので、コイル一体型点火プラグの取り付けを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態のコイル一体型点火プラグにかかる部分断面全体図である。
【図2】第1の実施形態のコイル一体型点火プラグに形成された閉磁路における磁束Φの磁路を示した概念図である。
【図3】樹脂材料によりコイルコア全体を覆ってなる第1の実施形態の別形態を示したコイル一体型点火プラグにかかる部分断面全体図である。
【図4】第2の実施形態のコイル一体型点火プラグにかかる部分断面全体図である。
【図5】第3の実施形態のコイル一体型点火プラグにかかる部分断面全体図、並びに、そのコイル一体型点火プラグに形成された閉磁路における磁束Φの磁路を示した概念図である。
【図6】 従来技術における、閉磁路型コイルコアを点火コイル部に配したコイル一体型点火プラグの部分断面全体図である。
【図7】 従来技術における、コイルコアと強磁性体材料により形成された円筒との組合わせにより形成される閉磁路を点火コイル部に配したコイル一体型点火プラグの部分断面全体図である。
【符号の説明】
100、200、300、400 コイル一体型点火プラグ
11、41 点火プラグ部
12、32 点火コイル部
13 絶縁体
15、42 中心電極
16 主体金具
16b 本体部
18、31 コイルコア
18a、31a 中心コア部
18b 外部コア部
31b 外部コア部(円筒状の外部コア部)
19 一次コイル
21 二次コイル
29、43 磁束飽和ギャップ
Claims (7)
- 一次コイル及び二次コイルを巻装してなる中心コア部と該中心コア部の外側に位置する外部コア部とを有する強磁性体材料よりなるコイルコアを備えてなる点火コイル部と、
軸孔を有し該軸孔に中心電極が挿設されている絶縁体と、該絶縁体を嵌着する主体金具とを備えてなる点火プラグ部と
から構成され、
前記点火コイル部と前記点火プラグ部とが回転不能に一体化されていると共に、
該点火コイル部の前記コイルコアと該点火プラグ部の前記主体金具により閉磁路が形成されている
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項1に記載のコイル一体型点火プラグであって、
前記外部コア部は略円筒状に形成され、かつ、該外部コア部が前記点火コイル部のケーシングの一部を形成している
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項1または2に記載のコイル一体型点火プラグであって、
前記中心コア部の一部が前記絶縁体の前記軸孔内に挿設されている
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項1〜3に記載のコイル一体型点火プラグであって、
前記中心電極の少なくとも一部が強磁性体材料により形成されると共に、前記閉磁路の一部を形成している
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項1〜4に記載のコイル一体型点火プラグであって、
前記閉磁路は、少なくとも1つ以上の磁束飽和ギャップを有している
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項5に記載のコイル一体型点火プラグであって、
前記磁束飽和ギャップに、前記絶縁体が挿入されている
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。 - 請求項1〜6に記載のコイル一体型点火プラグは、燃料として気体燃料を使用するガスエンジンに取り付けられる
ことを特徴とするコイル一体型点火プラグ。
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