JP4213394B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン−ビニルアルコール:EVOH)は、溶融成形性、ガスバリアー性、耐水性、耐油性、非帯電性および機械的強度に優れており、フィルム、シート、容器などの各種包装材料として使用されている。需要増加に伴い、EVOHとその前駆体(EVA)の製造技術、特にEVAの連続製造技術の重要性が高まっている。
【0003】
特開昭60−53513号公報には、EVAを長期間連続して製造するための方法が開示されている。重合槽の過熱および重合槽へのスケール付着を防止するために、この方法は、エチレン含有ガスと酢酸ビニルまたは酢酸ビニル溶液とを熱交換器内において向流接触させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭60−53513号公報に記載の方法では、EVAの製造量を引き上げるために原料の量を増やすにつれて、熱交換器内を上昇するガスが酢酸ビニル(溶液)の円滑な下降を阻害する。このいわゆるフラッディング現象のために、EVAの製造量は熱交換器の容量が許容する範囲に限定される。
そこで、本発明は、生産量の引き上げにも対応できるEVAの製造方法および生産能力が高いEVAの製造装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の製造方法は、エチレン、酢酸ビニル、重合開始剤および重合溶媒を含む重合溶液でエチレン−酢酸ビニル共重合体を製造する方法であって、
(a)前記重合溶液から気化したエチレンを含むエチレン含有ガスと、酢酸ビニル含有液とを熱交換器内に導入する工程と、
(b)前記熱交換器内で前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを接触させ、前記エチレン含有ガス内のエチレンの少なくとも一部を前記酢酸ビニル含有液に溶解させる工程と、
(c)前記酢酸ビニル含有液を前記熱交換器から前記重合溶液へと導入する工程とを含み、
前記熱交換器に、前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触させることを特徴とする。
【0006】
酢酸ビニル含有液としては、酢酸ビニルまたは酢酸ビニル溶液を用いることができる。酢酸ビニル溶液は、重合溶媒を含んでいてもよく、好ましくは酢酸ビニルの重合溶媒溶液である。熱交換器は、複数の管を備えていることが好ましく、酢酸ビニル含有液を上記管の内側の表面に沿って流し、冷却媒体を上記管の外側に沿って流すことが好ましい。冷却媒体と酢酸ビニル含有液とは、熱交換器内で同一方向に流すことが好ましい。
【0007】
熱交換器から重合溶液に導入される酢酸ビニル含有液の温度T1(℃)、重合溶液の温度T2(℃)は、−20≦T1<T2の関係を満たすとよい。EVAの好ましいエチレン含有量は5〜60モル%である。重合溶媒としては、炭素数が4以下の脂肪族アルコールを含む溶媒が適している。
【0008】
本発明の第2の製造方法は、エチレン含有量が5〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を連続して製造する方法であって、
(a’)連続して、(1)エチレン、(2)酢酸ビニルおよび酢酸ビニル溶液から選ばれる少なくとも一方である酢酸ビニル含有液、(3)重合溶媒および(4)重合開始剤を、前記酢酸ビニル含有液の少なくとも一部が熱交換器を介して重合槽に導入されるように、前記重合槽に導入し、
(b’)連続して、前記重合槽内の重合溶液から気化したエチレンを含むエチレン含有ガスを、前記熱交換器へと導入し、
(c’)連続して、前記熱交換器に前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触させ、前記エチレン含有ガス内のエチレンの少なくとも一部を前記酢酸ビニル含有液へと溶解させ、
(d’)連続して、前記熱交換器から前記重合溶液へ前記エチレン含有ガスと酢酸ビニルを含有した液を導入し、
(e’)連続して、前記重合溶液の重合熱の少なくとも一部を吸収するために、前記重合溶液のエチレンの一部を気化させ、この気化したエチレンの少なくとも一部を(b’)工程におけるエチレン含有ガスに含ませ、
(f’)連続して、前記重合槽から前記重合溶液の一部を排出する、
ことを特徴とする。
【0009】
別の側面において、本発明は、上記記載の方法で得たEVAをケン化してエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を製造する方法を提供する。
【0010】
本発明のEVAの製造装置は、エチレン、酢酸ビニル、重合溶媒および重合開始剤を含む重合溶液を保持する重合槽と、
熱交換器と、
一方の端部が前記熱交換器に接続され、酢酸ビニル含有液を前記熱交換器へと導入する第1の導管と、
一方の端部が前記熱交換器に接続され、エチレン含有ガスを前記重合槽から前記熱交換器へと導入する第2の導管と、
前記酢酸ビニル含有液を前記熱交換器から前記重合槽へと導入する第3の導管と、を備え、
前記熱交換器内に前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触するように、前記第1の導管における前記一方の端部と、前記第2の導管における前記一方の端部とを、前記熱交換器に接続したことを特徴とする。
【0011】
第1の導管および第2の導管の上記一方の端部は、熱交換器の上部に接続するとよい。第3の導管の一方の端部は、熱交換器の下部(換言すれば、熱交換器に第1および第2の導管が接続された位置のいずれよりも低い位置)に接続するとよい。
【0012】
熱交換器としては、濡壁多管式熱交換器が好適である。上記製造装置は、EVAを含む重合溶液を重合槽から排出する第4の導管を備えていてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
特開昭60−53513号公報に記載されているように、工程(a)〜(c)、又は工程(a’)〜(f’)を含む方法は、以下の利点を有する。
i)ポリマースケールの付着量が減るため、伝熱能力の大幅な低下がない。このため、長期間の連続運転が可能である。
ii)重合槽内のコイルが不要であり、デッドスペースを解消でき、ゲルなども低減できる。
iii)重合槽の大型化が可能である。
iv)循環のための駆動機器が不要であり、設備を相対的に簡素化できる。
v)エチレンの凝縮熱のみならず溶解熱を利用して重合熱を吸収するため、大量のエチレンを循環させなくてよい。
vi)エチレン−酢酸ビニル混合系では、エチレンを凝縮する条件が狭い範囲に限定されず、冷却媒体の温度も高くてよい。
【0014】
重合槽からのエチレンは、熱交換器において、酢酸ビニル含有液に接触し、同一方向に流れる。こうして、熱交換器は、エチレンの吸収装置としても機能する。
化学工学の分野では、吸収および吸収装置に関して様々な検討が進められてきた。例えば、「初歩化学工学」(1964年、化学工学協会、いずみ書房)の166ページには、吸収装置として、総括物質移動係数、気液接触面積、推進力が重要であること、推進力を大きくするためには、並流方式よりも向流方式が優れていると述べられている。同168ページには、向流方式を採用した濡壁多管式熱交換器が示されている。この技術分野における技術常識では、長年の間、気液は向流接触させるべきものであった。
【0015】
特開昭60−53513号公報は、この技術常識に従い、ガスの吸収効率に重点を置いている。しかし、先に述べたように、この方法は、EVAの製造量を増すと、フラッディング現象が発生するという問題を生じさせる。
【0016】
並流方式は、通常の吸収装置では、気体を100%に近い効率で溶液に吸収させる必要があるため、問題が生じる可能性がある。驚くべきことに、発明者は、EVAの製造の際に気化したエチレンを酢酸ビニル含有液に溶解する場合には、並流方式が向流方式よりも優れていることを見出した。エチレンが吸収されずに熱交換器内に残存し、さらに重合槽内に導入されたとしても、気体のエチレンは問題を生じさせない。また、並流接触においても気体と液体との接触機会を十分確保できるため、吸収効率が低下しない。並流方式は、フラッディングの原因を除去するため、エチレンの供給量や反応温度といった反応条件を制限する必要はない。従って、並流方式は、生産性の点で有利である。
【0017】
本発明では、凝縮熱のみならずエチレンの溶解熱が重合熱の低減に利用される。このため、重合槽内の溶液は所定量以上のエチレン濃度を有することが好ましい。従って、この溶液からのEVAは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上のエチレンを含有する。5モル%未満のエチレンを含有するEVAを連続して製造するには、十分に重合熱を除くために、酢酸ビニルの供給量の低減、重合溶媒の供給量の増加が必要となる。これは、生産性の低下および製造コストの増大を招く。
【0018】
エチレン含有量がかなり高いEVAを得るためには、重合槽内の溶液のエチレン濃度を高くする必要があり、このため、重合槽内のエチレンガスの分圧を高くする必要がある。過度に高い内圧は重合槽への負荷を増す。従って、安全性を考慮し、重合溶液からのEVAのエチレン含有量は60モル%以下、さらに55モル%以下、特に50モル%以下が好ましい。
【0019】
効率的な除熱には、濡壁多管式熱交換器が好適である。この熱交換器では、吸収液が薄膜状となって通過し、気体との接触面積を拡大し、その結果、効率的な吸収が可能となる。冷却媒体は、管の外側を、エチレン含有ガスおよび酢酸ビニル含有液と同一方向に流す、換言すれば含有液と並流させることが好ましい。この並流により、エチレンの溶解速度は上昇する。気体と液体とが十分に温度の低い冷却媒体によって効率的に冷却されるからである。
【0020】
重合槽内の重合溶液の温度T2(℃)は、特に制限されないが、30〜150℃が好ましい。T2が150℃を上回ると、副反応の速度が増大してEVA中の不純物が増える場合がある。T2が30℃を下回ると、重合反応速度が大きく低下する場合がある。T2は、35℃以上、さらには40℃以上、特に45℃以上が好ましい。上限温度については、120℃以下、さらには100℃以下、特に95℃以下が好ましい。
【0021】
重合槽に導入される酢酸ビニル含有液の温度T1(℃)は、エチレンが気相と液相とで共存できる範囲が好ましい。重合圧力(重合槽の気相の圧力)が20〜70kg/cm2の場合、T1は、−20℃以上、さらには−10℃以上が好ましく、50℃以下、さらには40℃以下が好ましい。
【0022】
T1(℃)とT2(℃)とは−20≦T1<T2の関係を満たすことが好ましい。T1がT2よりも高くなると、重合槽内の除熱が期待できない。これらの温度は、エチレン、酢酸ビニルもしくは重合溶媒の投入速度もしくは投入温度、または重合圧力を調整することにより、設定できる。
【0023】
操作性およびコストを考慮すると、重合溶媒としては、炭素数4以下の脂肪族アルコールを含む溶媒が適している。この脂肪族アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールが挙げられる。炭素数3以下の脂肪族アルコールがより好ましく、炭素数1の脂肪族アルコール、すなわちメタノールが最も適している。
【0024】
重合開始剤としては、特に制限されないが、ジアシルパーオキサイド系開始剤、バレロニトリル系開始剤およびパーオキシジカーボネート系開始剤から選ばれる少なくとも1種の使用が好適である。ジアシルパーオキサイド系重合開始剤の例としては、アセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドが挙げられ、バレロニトリル系重合開始剤の例としては、2,2′−アゾビス(2,4,4′−トリメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−エトキシ−2,4−ジエチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4,4′−ジエトキシ−2−メチルバレロニトリル)が挙げられ、パーオキシジカーボネート系重合開始剤の例としては、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートが挙げられる。これらの中でも、アセチルパーオキサイド、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートが好ましく、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
【0025】
EVAの重合の際に、他の重合性単量体を同時に供給して共重合してもよい。重合性単量体の例としては、プロピレン、n−ブテン、i−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル化物、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類を挙げることができる。
【0026】
以下、図面を参照して製造装置の好ましい例を説明する。
図1の装置では、重合槽1に、複数の導管5、6、7が接続されている。管の本数、配置は図示した形態に限らない。これらの導管を通して、エチレン、重合開始剤、重合溶媒、場合によっては原料として加えるべき酢酸ビニル含有液の一部が重合槽1に供給される。重合槽内の重合溶液は、重合の終了後、または重合の間、連続して、重合槽1下部に接続した重合液回収管9から排出される。溶液の均一性を確保するために、重合槽1には、攪拌器8を設置することが好ましい。
【0027】
熱交換器2には、酢酸ビニル含有液導入管10が接続されており、これを通して酢酸ビニルの一部または全部が熱交換器2に供給される。熱交換器には、冷却媒体供給/排出管11,12が接続されている。管の位置は図示した形態に限らないが、冷却媒体は、熱交換器の上部に接続された管11から供給し、熱交換器の下部に接続された管12から排出するとよい。熱交換器の上部を効率的に冷却するためである。
【0028】
熱交換器2から気体を排出するために、導管13が熱交換器の下部に接続されている。この気体排出管13には、ミスト分離器(図示せず)を接続してもよい。排出された気体中の液滴は、ミスト分離器により除去され、ミストがないエチレンを回収または放出できる。ミスト分離器は、重力・遠心力・静電気力といった外力、または、遮りもしくは篩効果を利用して気体中に浮遊している液滴を分離する装置である。ミスト分離器としては、重力沈降器、サイクロン、電気集塵機、スクラバー、バグフィルター、充填層が挙げられる。これらの中でも、サイクロンが好ましい。
【0029】
2本の導管3,4が重合槽1と熱交換器2とを接続しており、これら4つの要素1,2,3,4が物質循環系を形成している。エチレン含有ガスは重合槽1から気体導入管3を通して熱交換器2へと導入され、酢酸ビニル含有液は熱交換器2から凝縮液導入管4を通して重合槽1へと導入される。
【0030】
重合槽1に供給されるべき酢酸ビニル含有液の全部または一部は、導管10を通して熱交換器2へと送り込まれる。酢酸ビニル含有液は、熱交換器2に導入され、熱交換器を通過しながらエチレンを吸収する。エチレンを吸収した酢酸ビニル含有液は、重合熱の除去に重要な役割を担っている。従って、熱低減効果を増すために、原料としての酢酸ビニル含有液の全てを、熱交換器2を経由して供給するとよい。
【0031】
エチレン含有ガスは、熱交換器2の上部に接続された導管3を通して熱交換器2へと導入される。熱交換器側の導管3,10の開口端部は、熱交換器2の上部に配置される。導管3の開口端部が熱交換器の下部に配置されると、気体の供給量の増加により、酢酸ビニル含有液のフラッディングが引き起こしやすくなる。エチレン含有ガスと酢酸ビニル含有液との十分な接触を確保するために、導管10の開口端部は、導管3の開口端部に近接して配置するとよい。こうして、エチレン含有ガスは、酢酸ビニル含有液と接触しながら、この含有液と並行して熱交換器2内を下降していく。その結果、ガス中のエチレンが酢酸ビニル含有液に溶解される。
【0032】
酢酸ビニルとエチレンとを含む含有液は、導管4を通して重合槽1へ導入される。重合溶液の熱、即ち重合熱は、この含有液のエチレン溶解度を低下させ、過剰のエチレンを気化させる。即ち、エチレン溶解度を超えたエチレンが蒸発する。連続製造の場合は、エチレンは、見かけ上、装置1,2および導管3,4を循環する。エチレンの一部はEVAなどとして導管9から排出され、重合槽1に接続されたエチレン供給源から、導管5,6,7の少なくとも1つを介して補充される。一方、酢酸ビニル供給源は、少なくとも導管10に接続されている。
【0033】
本発明によって得られるEVAは、アルカリ触媒を用いる公知のケン化方法によりEVOHとしてもよい。EVAは、連続式、回分式のいずれによってケン化してもよい。EVOHのケン化度は、95モル%以上が好ましく、99%モル以上がさらに好ましい。ケン化度が十分でないと、ガスバリアー性が劣化する。層間接着性などを改善するために、ケン化度を80〜95モル%程度としてもよい。このEVOHは、単独で、あるいはケン化度が99モル%以上であるEVOHとブレンドして用いることができる。
【0034】
上記により得られるEVOHのメルトフローレート(MFR)は、おおむね0.1〜100g/10分の範囲である。ここで、EVOHのMFRとは、JISK7210に基づき、190℃、2160g荷重下で測定した値をいう。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは、2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRを縦軸(対数)としてプロットし、190℃に外挿した値をいう。
【0035】
EVOHには、必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、他の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。こうして得られたEVOH樹脂は、公知の成形方法によってフィルム、シート、パイプ、チューブ、ボトルなどの各種の成形物とすることができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
図1に示す製造装置を用いて、EVAを連続的に製造した。内容積が750Lの重合槽1と、伝熱面積が4m2、管数が10本の縦型濡壁多管式熱交換器2とを準備した。
【0038】
導管5からエチレンを10.3kg/hrの速度で、導管6から重合開始剤の2,2´−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を9.8g/hrの速度で、導管7から重合溶媒のメタノールを1.2kg/hrの速度で、それぞれ重合槽1に導入した。酢酸ビニルを、導管10と熱交換器2とを介して、27.5kg/hrの速度で重合槽1に導入した。また、エチレン含有ガスを重合槽1から導管3を介して熱交換器2へと導入した。酢酸ビニルは、熱交換器2内において、エチレン含有ガスと同一方向に管の表面に沿って流下し、エチレンを吸収した。酢酸ビニルは、導管4を介して重合槽1に注ぎ込まれ、重合溶液と混合され、エチレンとの連続重合に供された。
【0039】
共重合の間、冷却媒体として、30重量%のメタノール水溶液を導管11から供給し、導管12から排出した。熱交換器2において、冷却媒体は酢酸ビニルと同じ方向に流下する。この熱交換器により、共重合で発生する熱のすべてを除去できた。このようにして、12日間、熱交換器でのフラッディングもなく、導管9より、39kg/hrの速度でEVAを含む重合溶液を連続して得た。熱交換器により除去した熱量は、6880kcal/hr(28.8MJ/hr)であった。
【0040】
(実施例2)
冷却媒体を導管12から供給して導管11から排出することにより、熱交換器2内で冷却媒体と酢酸ビニルとを逆向きに流れるようにした以外は、実施例1と同様にしてEVAを連続して製造した。12日間の連続運転の間、フラッディングは確認されなかった。この熱交換器による除熱量は5130kcal/hr(21.5MJ/hr)であった。
【0041】
(比較例)
図2に示すように、ガス供給管3を熱交換器2の下部に接続した以外は、実施例2と同様にしてEVAを製造した。この場合、酢酸ビニルはエチレンと向流接触する。運転開始後まもなくフラッディングが頻発したため、連続運転を中止せざるを得なかった。そこで、重合槽1内にコイルを設置することとした。熱交換器、コイルおよび重合槽のジャケットを用いて重合熱を除去しながらEVAを連続して製造した。熱交換器による除熱量は3980kcal/hr(16.7MJ/hr)であった。
【0042】
製造条件および結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明を適用すれば、重合槽内の加熱やスケールの付着を防止しながら、熱交換器内におけるフラッディング現象を抑制し、EVA製造の生産能力の向上を図ることができる。本発明は、特に小型の装置を用いたEVAの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造装置の一例を示す図である。
【図2】 従来のEVAの製造装置を示す図である。
【符号の説明】
1 重合槽
2 熱交換器
3〜7,9〜13 導管
8 攪拌器
Claims (12)
- エチレン、酢酸ビニル、重合開始剤および重合溶媒を含む重合溶液でエチレン−酢酸ビニル共重合体を製造する方法であって、
(a)前記重合溶液から気化したエチレンを含むエチレン含有ガスと、酢酸ビニル含有液とを熱交換器内に導入する工程と、
(b)前記熱交換器内で前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを接触させ、前記エチレン含有ガス内のエチレンの少なくとも一部を前記酢酸ビニル含有液に溶解させる工程と、
(c)前記酢酸ビニル含有液を前記熱交換器から前記重合溶液へと導入する工程とを含み、
前記熱交換器に、前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触させることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。 - 酢酸ビニル含有液が、酢酸ビニルおよび酢酸ビニル溶液から選ばれるいずれか一方である請求項1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。
- 熱交換器が複数の管を備え、酢酸ビニル含有液が前記複数の管の内側の表面に沿って流れ、冷却媒体が前記複数の管の外側に沿って流れる請求項1または2に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。
- 熱交換器から重合溶液に導入される酢酸ビニル含有液の温度T1(℃)と前記重合溶液の温度T2(℃)とが−20≦T1<T2の関係を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量が5〜60モル%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。
- 重合溶媒が、炭素数が4以下である脂肪族アルコールを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。
- エチレン含有量が5〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を連続して製造する方法であって、
(a’)連続して、(1)エチレン、(2)酢酸ビニルおよび酢酸ビニル溶液から選ばれる少なくとも一方である酢酸ビニル含有液、(3)重合溶媒および(4)重合開始剤を、前記酢酸ビニル含有液の少なくとも一部が熱交換器を介して重合槽に導入されるように、前記重合槽に導入し、
(b’)連続して、前記重合槽内の重合溶液から気化したエチレンを含むエチレン含有ガスを、前記熱交換器へと導入し、
(c’)連続して、前記熱交換器に前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触させ、前記エチレン含有ガス内のエチレンの少なくとも一部を前記酢酸ビニル含有液へと溶解させ、
(d’)連続して、前記熱交換器から前記重合溶液へ前記エチレン含有ガスと酢酸ビニルを含有した液を導入し、
(e’)連続して、前記重合溶液の重合熱の少なくとも一部を吸収するために、前記重合溶液のエチレンの一部を気化させ、この気化したエチレンの少なくとも一部を(b’)工程におけるエチレン含有ガスに含ませ、
(f’)連続して、前記重合槽から前記重合溶液の一部を排出する、
ことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体の製造装置であって、
エチレン、酢酸ビニル、重合溶媒および重合開始剤を含む重合溶液を保持する重合槽と、
熱交換器と、
一方の端部が前記熱交換器に接続され、酢酸ビニル含有液を前記熱交換器へと導入する第1の導管と、
一方の端部が前記熱交換器に接続され、エチレン含有ガスを前記重合槽から前記熱交換器へと導入する第2の導管と、
前記酢酸ビニル含有液を前記熱交換器から前記重合槽へと導入する第3の導管と、を備え、
前記熱交換器内に前記エチレン含有ガスと前記酢酸ビニル含有液とを供給して並流接触するように、前記第1の導管における前記一方の端部と、前記第2の導管における前記一方の端部とを、前記熱交換器に接続したことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造装置。 - 第3の導管の一方の端部を、熱交換器に第1の導管および第2の導管が接続された位置のいずれよりも下方において、前記熱交換器に接続した請求項9に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造装置。
- 熱交換器が、濡壁多管式熱交換器である請求項9または10に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造装置。
- 重合液からエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む重合溶液を排出する第4の導管をさらに含む請求項9〜11のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造装置。
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