JP4213331B2 - 有機金属気相成長方法及び有機金属気相成長装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機金属気相成長方法および有機金属気相成長装置に関し、特に、有機金属を原料として基板上に原料を構成する金属からなる薄膜を形成する有機金属気相成長方法及び有機金属気相成長装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、気相の化学反応を利用して基板上に金属や金属酸化物の薄膜を形成するMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法などの気相成長方法が知られている。
図8は、従来から用いられている有機金属気相成長装置(MOCVD装置)の一例を示している。この図8に示されるMOCVD装置は、真空排気された反応容器9内の基板10上にPZT膜を形成するためのものであり、原料容器1a,1b,1cを、温度コントローラ801a,801b,801cによりそれぞれ所定の温度に加熱して、ジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2 、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 、Zr(O-t-Bu)4 を気化させる。
【0003】
そして、気化したPb(DPM)2 ガス、Ti(O-i-Pr)4 ガス、Zr(O-t-Bu)4 ガスをNO2 やO2 などの酸化ガスと共に反応容器9内に導入し、気相の化学反応を利用して基板10上にPZT膜を形成する。
このとき、Pb(DPM)2 ガス、Ti(O-i-Pr)4 ガス、Zr(O-t-Bu)4 ガス、NO2 ガスの各流量は、それぞれのガスが反応容器9に至るガス供給路の途中に設けられたマスフローコントローラ7a,7b,7c,7dによってそれぞれ制御される。
【0004】
図8に示されるMOCVD装置では、上述した気相の化学反応を反応容器9内で起こすために、各原料ガスは、所定の蒸気圧で各MFCに導かれる必要がある。この必要な原料蒸気圧を得るために、原料容器1a,1b,1cを所定温度に維持するように設定している。
しかし、この温度設定は、各原料が各原料容器1a,1b,1c内に十分に充填されているときのものであるため、各原料容器1a,1b,1c内の原料がガス化されて反応容器9に供給されるに従って徐々に減少し、原料容器1a,1b,1c内の原料が減少するにしたがって必要な原料蒸気圧が得られないという問題を生じる。
【0005】
また、所定の原料流量を確保するために、He,Ar,N2 などのキャリアガスを原料容器に導入し、このキャリアガスにより原料ガスを反応容器9へ輸送する場合においても、同様な問題点があった。すなわち、使用するにつれて原料容器内の原料が減ってゆくと、必要な原料蒸気圧が得られなくなり、原料流量制御が不安定になるという問題である。
【0006】
このような原料容器内の残量変動による供給蒸気圧の変動を補償するために、例えば特開平4−362176号公報に記載されたMOCVD装置が提案されている。この公報に示されるMOCVD装置を図9に示される基本構成によって説明すると、この図9に示されるMOCVD装置では、真空ポンプ54により真空排気された反応容器51に、酸素雰囲気を形成するための酸素と窒素でバブリングした有機金属原料のペンタエトキシタンタル(Ta(OC2H5)5 )が導入されている。この場合、反応容器51に導入される酸素と材料容器55に導入される窒素の流量は、流量制御コントローラ61からマスフローコントローラ58に送られた信号により制御されている。
【0007】
この図9のMOCVD装置で使用されるペンタエトキシタンタルは、常温では液体であるため、材料容器55全体が、恒温槽57によって、例えば100℃のような温度に加熱され、さらに材料容器55内に導かれた窒素でバブリングされることにより、蒸気の形で反応容器51に導入される。この場合、ペンタエトキシタンタル及び窒素が材料容器55から反応容器51に至るガス供給路あるいは配管で液化されないようにするために、ガス供給路あるいは配管は、ガス配管ヒータ56によって加熱されている。このガス配管ヒータ56および恒温槽57のヒータは、後述する四重極質量分析器62の出力を受ける温度制御コントローラ59,60によってそれぞれ制御されている。
反応容器51内に導入された酸素とペンタエトキシタンタルとは、反応容器51の周囲に配置された電気炉53から供給される熱エネルギーによって熱反応することにより反応容器51内に配置された基板52上にタンタル酸化膜Ta2O5が形成される。
【0008】
反応容器51に接続された四重極質量分析器62は、反応容器51に導入される酸素及びペンタエトキシタンタルの濃度を検知し、ペンタエトキシタンタルの質量数が「405」の近辺で電気信号を出力する。この電気信号の大小によって示されるペンタエトキシタンタルの濃度が所定値より大きい場合には、ガス配管ヒータ56の温度制御コントローラ59と恒温槽ヒータ57の温度制御コントローラ60とは、ガス配管ヒータ56及び恒温槽ヒータ57の温度を下げ、かつ流量コントローラ61によりマスフローコントローラ58がバブリング用の窒素流量を下げ、これによってペンタエトキシタンタルの反応容器51への供給量を減らす。このようなペンタエトキシタンタルの反応容器51への供給量を減らす動作は、四重極質量分析器62からの電気信号が示すペンタエトキシタンタルの濃度が所望の濃度になるまで行われる。
反対に、四重極質量分析器62からの電気信号が示すペンタエトキシタンタルの濃度が所望の濃度より小さい場合には、上記と逆の制御により、ペンタエトキシタンタルの反応容器51への供給量を増やす。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図9に示されるMOCVD装置を用いても、測定器として四重極質量分析器62を用いていることによる様々な制約が生じる。四重極質量分析器は、構造上、使用できる真空度が10−5torr程度以上の高真空領域に限定される。一方、化学気相成長を行っている時の反応容器内の真空度はプロセスにもよるが、通常これほど高真空であることはなく、高い真空度であったとしてもせいぜい10−1torr程度である。このような圧力領域において四重極質量分析器を使用するには、反応容器の排気用ポンプとは別にターボ分子ポンプ等の高真空ポンプをさらに別に設けて差動排気を行わなければならない。
【0010】
従って、図9に示される装置のように四重極質量分析器を用いて化学気相成長プロセス中の反応容器内原料濃度を測定する場合、反応容器周りの排気構造は複雑にならざるを得ない。また、あえてこのような構造を用いて四重極質量分析器を設置したとしても、反応容器内のガス成分と四重極質量分析器内に到達するガス成分が同じである保証はなく、加えて、反応容器内に入った原料のいくらかは高温のウエハ加熱装置によって分解されるため、これらを考慮に入れる必要が生じる。以上に述べた理由から、四重極質量分析器を用いて化学気相成長を行っている時の反応容器内原料濃度を測定することにより、原料容器内の残量変動を補償することは現実的ではない。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、必要な有機金属原料ガスを従来よりも安定的に反応容器へ供給して所望の有機金属膜を形成できる有機金属気相成長方法及び有機金属気相成長装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機金属気相成長方法は、原料容器内にキャリアガスを導入し、キャリアガスを用いて原料容器内の原料輸送を行う有機金属気相成長方法であって、成膜が完了した基板を反応容器から搬出して新しい基板を反応容器内へ搬入することと並行して、キャリアガスの原料容器内への供給を中止し、少なくとも1個の原料容器から送出される有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として圧力を検出し、この圧力の値が反応容器内の基板上に形成される有機金属原料を構成する金属からなる薄膜を形成するために必要な範囲の値を取るように、原料容器内に収容された有機金属原料の加熱あるいは冷却温度設定を変更してからキャリアガスの原料容器内への供給を再開し、これにより反応容器内に有機金属原料のガスを定量的に供給して新たに搬入された基板上に薄膜を形成しようとしたものである。
この発明によれば、原料容器から反応容器に供給される有機金属原料のガスの圧力が安定する。
【0013】
本発明の有機金属気相成長装置は、原料容器内にキャリアガスを導入し、キャリアガスを用いて原料容器内の原料輸送を行う有機金属気相成長装置であって、キャリアガスの原料容器内への供給手段と、キャリアガスの原料容器内への供給停止手段と、少なくとも1個の有機金属原料のガスを送出する原料容器と、この原料容器から送出される有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として圧力をキャリアガスの供給を停止した状態で検出する圧力計と、この圧力計が検出した圧力の値が反応容器の基板上に形成される有機金属原料を構成する金属からなる薄膜を形成するために必要な範囲の値をとるように、原料容器内に収容された有機金属原料の加熱あるいは冷却温度設定を変更する原料温度調節手段とを備え、圧力計による圧力の検出および原料温度調節手段による温度設定の変更は、成膜が完了した基板を反応容器から搬出して新しい基板を反応容器内へ搬入することと並行して行われ、これにより反応容器内に有機金属のガスを定量的に供給して基板上に薄膜を形成するようにしたものである。
この発明によれば、原料容器から反応容器に供給される有機金属原料のガスの圧力が安定する。
また、上記発明において、キャリアガスの流量を制御する流量制御器を備え、この流量制御器は、原料容器の上流に配置されている。
【0014】
上記発明において、圧力計は、原料容器に接続されて原料容器内のガスの圧力を検出するか、原料容器から送出されるガスを反応容器内に輸送する配管の途中に設けられ、この配管中のガスの圧力を検出するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明による有機金属気相成長法および有機金属気相成長装置(MOCVD装置)を説明するための第1の実施の形態の基本構成を示している。図1において、1a,1b,1cは、内容積1リットル程度の原料容器であり、原料容器1aには、ジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2 が収容されており、原料容器1bには、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 が収容され、原料容器1cには、有機金属化合物原料Zr(O-t-Bu)4 が収容されている。
【0017】
2a,2b,2cは、それぞれ原料容器1a,1b,1cに取り付けられた加熱装置33を制御する加熱コントローラ、3a,3b,3cはそれぞれ原料容器1a,1b,1cの冷却装置34を制御する冷却コントローラである。この場合、加熱装置33および冷却装置34は、各原料容器内部に貯留されている原料を加熱および冷却するものであり、このような処理をすることにより後述するように各原料容器から吐出される原料ガスが、所定圧で後段に送られるようにオン・オフ制御される。この制御は、例えばPID制御とすることで精度を向上させることができる。
従って、これらの加熱装置33および冷却装置34は、各原料容器から吐出される原料ガスを所定圧にするための原料温度調節装置MTCDを構成することになる。この原料温度調節装置MTCDを構成する加熱装置33および冷却装置34の具体例が、図2A,2Bに示され、詳細は後述される。
【0018】
また、4a,4b,4cは、それぞれ原料容器1a,1b,1c内の原料蒸気圧を測定するバラトロン等の圧力計、6a,6b,6cはそれぞれ原料容器1a,1b,1cのガス流出口に設けられたバルブである。また、7a,7b,7c,7dは、各バルブ6a,6b、6cから吐出されるPb(DPM)2 ガス,Ti(O-i-Pr)4 ガス,Zr(O-t-Bu)4 ガス,NO2 ガスの流量をそれぞれ制御するマスフローコントローラ(以下、MFCと略する)、8a,8b,8c,8dは、MFC7a,7b,7c,7dのそれぞれと反応容器との間のガス配管の途中に設けられたバルブである。
【0019】
9は、反応容器であり、この反応容器9には前述したバルブ8a,8b,8c,8dからのガス配管が接続されている。10は、この反応容器9内に配置された半導体あるいはその他の公知の材料からなる基板、11a,11b,11cは、原料容器1a,1b,1cとMFC7a,7b,7cとの間のガス配管の途中に設けられたバラトロン等の圧力計、12a,12b,12cは排気バルブである。また、9aは基板10を加熱するために反応容器9内に収容されたヒータである。
【0020】
本実施の形態で使用されるジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2 は常温において固体、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 ,Zr(O-t-Bu)4 は、いずれも常温において高い粘性を持つ液体である。したがって、これらの原料は、通常原料容器1a,1b,1cを加熱することによって気化され、原料ガスとなり、後段に送出される。例えば、原料容器1a内において、Pb(DPM)2が十分に充填されている場合、Pb(DPM)2の蒸気圧は、110℃に加熱することで約2.67Paとなり、150℃に加熱することで約74.7Paとなり、200℃に加熱することで約667Paとなる。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、原料温度調節装置の具体例を示しており、本例では、ヒータ装置および冷却装置を用いた具体的構造例を示している。
詳述すれば、図2Aは、原料容器1a,1b,1cを水平方向に切断した横断面図、図2Bは、原料容器1a,1b,1cを2B−2B線に沿って垂直方向に切断した縦断面図である。以下の説明は、原料容器1a,1b,1cが同じ構造であるため原料容器1aを代表させて説明する。
【0022】
原料容器1aは、アルミニュウム(Al)製の筐体31が使用される。この筐体31としてアルミニュウムを使用するのは、熱伝導性が良いことと加工し易いことからである。筐体31の内部には、原料を溜める空洞32が形成され、この周囲には、空洞31に収容された原料を加熱するヒータのような加熱装置33と、シリコンオイルや空気等の冷媒が循環される冷却管によって構成される冷却装置34が配置されている。なお、図2Bでは、筐体31部分に加熱装置33が組み込まれているが、これに限るものではない。
【0023】
加熱コントローラ2aは、加熱装置33に電流を供給することにより、加熱装置33によって原料容器1aを加熱し、これによって原料容器に内蔵される原料ガスを所定圧にするように制御する。また、冷却コントローラ3aは、管34と管34を流れる冷媒を温度制御して原料容器1aに内蔵される原料ガスを所定圧にするように制御する。
なお、図2Aに示すように、複数の原料容器1a,1b,1cを近接配置して、同一の断熱材35で包むことにより、熱の放散を少なくし、これによって経済性に優れた原料容器を実現することもできるが、図2Cに示すように、各原料容器1a,1b,1cを個別に断熱材35a,35b,35cで包むようにしてもよい。
【0024】
つぎに、以上のように構成された有機金属気相成長装置を用い、有機金属原料を構成する金属からなる薄膜としてPZT膜を形成するプロセスについて図1を用いて説明する。
まず、原料容器1aを原料温度調節装置MTCDによって加熱することにより、常温で固体であるジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2 を気化させ、同時に、原料容器1b,1cを加熱することにより、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 、有機金属化合物原料Zr(O-t-Bu)4 を気化させる。
真空排気された反応容器9内の基板10は、ヒータ9aによって所定の温度に加熱される。
【0025】
続いて、バルブ6a,8aを開けて原料容器4aから送出されるPb(DPM)2 ガスをバルブ6a、MFC7a、バルブ8aを介して反応容器9内に導入する。また、このPb(DPM)2 ガスの反応容器9a内への導入と併せて、バルブ6b,8bを開けて原料容器4bから送出されるTi(O-i-Pr)4 ガスをバルブ6b、MFC7b、バルブ8bを介して反応容器9内に導入し、さらに、バルブ6c,8cを開けて原料容器4cからのZr(O-t-Bu)4 ガスをバルブ6c、MFC7c、バルブ8cを介して反応容器9内に導入する。上述した処理と同時に、バルブ6d、MFC7d、バルブ8dを介してNO2 ガスも反応容器9内に導入する。
【0026】
Pb(DPM)2 ガス、Ti(O-i-Pr)4 ガス、Zr(O-t-Bu)4 ガス、NO2 ガスの各流量は、基板10上に形成されるPZT膜に要求される特性を考慮してMFC7a,7b,7c,7dによってそれぞれ制御される。
こうして、基板10上には、ペロブスカイト構造のPZT膜(PbZrxTi1−xO3 膜)が形成される。
【0027】
ここで、排気バルブ12a,12b,12c,12dの役割を説明する。上述のPZT膜の化学気相成長プロセスにおいては、MFC7a,7b,7c,7dの動作が安定するまでにある程度の時間を要する。このため、MFC7a,7b,7c,7dの動作が安定するまでの間、排気バルブ12a,12b,12c,12dを開きかつバルブ8a,8b,8c,8dを閉じることにより、MFC7a,7b,7c,7dから後段に送られる各ガスを排気バルブ12a,12b,12c,12dから排出し、反応容器9内に入らないようにしている。そして、MFC7a,7b,7c,7dの動作が安定すると、各排気バルブ12a,12b,12c,12dを閉じかつバルブ8a,8b,8c,8dを閉じて反応容器9内に各ガスを導く。
【0028】
以上のような化学気相成長プロセスにおいて、本実施の形態で特徴づけられることは、プロセス中に各原料ガスの原料蒸気圧を測定し、この測定値に基づいて各原料ガスの原料蒸気圧が所定の圧力を維持するように原料容器の温度を制御することである。
すなわち、上記化学気相成長プロセスにおいて、圧力計11aは、原料容器1aからMFC7aへのガス配管内の原料ガスの原料蒸気圧を測定し、圧力計11bは、原料容器1bからMFC7bへのガス配管内の原料ガスの原料蒸気圧を測定し、圧力計11cは、内原料容器1cからMFC7cへのガス配管内の原料ガスの原料蒸気圧を測定する。
【0029】
そして、圧力計11aの測定値は、コントローラ2a,3aにフィードバックされ、圧力計11bの測定値は、コントローラ2b,3bにフィードバックされ、圧力計11cの測定値は、コントローラ2c,3cにフィードバックされる。コントローラ2a,3aは、圧力計11aの測定値に基づいて、原料容器1aからMFC7aへ供給される原料ガスの原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、圧力計11bの測定値に基づいて、原料容器1bから供給される原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、圧力計11cの測定値に基づいて、原料容器1cからの原料ガスの原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1cの温度を制御する。
【0030】
この制御に関して図3のフローチャートを用いて説明すると、まず、原料容器における温度制御では、ステップS1で、原料容器温度を測定し、ステップS2で、測定した温度が、設定されている下限温度以下かどうかを判定する。ステップS2で下限温度以下と判定された場合は、ステップS3に進み、原料容器を熱するヒータを稼働させるように制御し、この後ステップS1に戻る。ステップS2で下限温度を超えていると判定された場合、ステップS4に進み、測定した温度が上限温度以上かどうかを判定する。ステップS4で上限温度以上と判定された場合、ステップS5に進み、ヒータの稼働を停止させるように制御し、ステップS1に戻る。ステップS4で上限温度未満と判定された場合、ステップS1に戻る。
【0031】
一方、ステップS11で、圧力計による圧力測定を行い、ステップS12で測定した圧力が下限圧力以下かどうかを判定する。ステップS12で測定した圧力が下限圧力以下と判定された場合は、ステップS13に進み、上記ステップS2における下限温度の設定値を上昇させる方に変更し、この後ステップS11に戻る。ステップS12で下限圧力を越えていると判定された場合、ステップS14に進み、測定した圧力が上限圧力以上かどうかを判定する。ステップS14で上限圧力以上と判定された場合、ステップS15に進み、上記ステップS2における下限温度の設定値を下降させる方に変更し、この後ステップS11に戻る。ステップS14で、上限圧力未満と判定された場合、ステップS11に戻る。
【0032】
ただし、MOCVD法で用いる原料は、あまり高温にすると分解してしまうので、上記制御では、各原料容器内の原料が分解してしまう温度にまで上昇しないように注意する。
こうして、各原料容器から送出される原料ガスを常に安定した圧力に保つことにより、常に安定した流量の原料ガスを後段に供給することができる。
また、本実施の形態のように原料容器の後段にMFC7a,7b,7cを配置する場合にはMFC7a,7b,7cの動作を安定させることができる。
【0033】
ここでは、原料容器1a,1b,1cからMFC7a,7b,7cへ原料ガスを導く配管の途中に圧力計11a,11b,11cを設けた例を説明したが、原料容器1a,1b,1c内の原料ガスの圧力を測定するように原料容器1a,1b,1c直接接続された圧力計4a,4b,4cを用いてもよい。
この場合には、圧力計4a,4b,4cで測定された原料蒸気圧の測定値は、コントローラ2aと3a、コントローラ2bと3b、コントローラ2cと3cにそれぞれフィードバックされる。
【0034】
そして、コントローラ2a,3aは、圧力計4aの測定値に基づいて原料容器1a内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、圧力計4bの測定値に基づいて原料容器1b内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、圧力計4cの測定値に基づいて原料容器1c内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1cの温度を制御する。
以上のように本実施の形態では、圧力計4a,4b,4cあるいは圧力計11a,11b,11cのいずれか一方を設けることにより、常に安定した原料供給を行うことができると共に、MFC7a,7b,7cの動作を安定させることができる。
【0035】
なお、上述では、有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として圧力を測定しているが、これは単位体積あたりのmol数(mol/m3)を測定することと同様である。気体の法則(law of gases)「pV=nRT」(pは気体の圧力、Vは体積、nはmol数、Rは気体定数、Tは絶対温度)に示されているように、体積,温度が一定なら、圧力pを求めれば、mol数が決定される。図1に示した装置では、原料容器1aやガス配管内部の容積Vは一定なので、配管や原料容器の温度が一定であるならば、例えば圧力計4aの測定値は、ガス配管内におけるPb(DPM)2 ガスの単位体積あたりの分子存在量、すなわちmol濃度に比例している。
【0036】
ところで、MFCを安定して動作させるためには、MFCの入力側と出力側に必要な差圧(例えば100〜300Pa)を確保する必要がある。MFCの入力側の圧力(元圧)が必要な圧力以下に低下すると、MFCの安定動作が阻害されてMFCによる流量制御に乱れが発生する。このため、原料容器内の原料がガス化されて消費されるに従って徐々に減少して原料容器内の原料がある値以下に減少すると、初期の温度設定状態では、必要な原料蒸気圧が得られなくなる。この結果、MFCへの元圧が低下することになり、MFCによる流量制御に乱れが発生し、原料流量制御が不安定になる。
【0037】
このMFCの動作に関する問題に対し、上記実施の形態では、図1に示したように、例えば圧力計11aの測定値に基づいて、MFC7aへ供給される原料蒸気圧、すなわちMFC7aの元圧が制御できる。このため、本実施の形態によれば、原料容器内の原料が減少しても、MFCへの元圧を必要な圧力以上にしているので、MFCを安定動作させることが可能となる。
【0038】
[実施の形態2]
図4は、本発明による有機金属気相成長装置(MOCVD装置)第2実施の形態を示しており、図1と同一の構成にものには同一の符号を付してある。
図4に示されるMOCVD装置では、キャリアガスを用いて原料輸送を行うために、原料容器1a,1b,1cにはバルブ5a,5b,5cを介してキャリアガスが供給される。
【0039】
図4に示されるMOCVD装置を用いたPZT膜の化学気相成長プロセスについて説明する。
まず、原料容器1aを加熱することにより、ジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2 を気化させ、同時に、原料容器1b,1cを加熱することにより、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 、有機金属化合物原料Zr(O-t-Bu)4 を気化させる。
真空排気された反応容器9内の基板10は、ヒータ9aによって所定の温度に加熱される。
【0040】
続いて、バルブ5aを開けてArやN2 等のキャリアガスを原料容器1a内に導入し、キャリアガスと混合したPb(DPM)2 ガスをバルブ6a、MFC7a、バルブ8aを介して反応容器9内に導入する。また、バルブ5bを開けてキャリアガスを原料容器1b内に導入し、キャリアガスと混合したTi(O-i-Pr)4 ガスをバルブ6b、MFC7b、バルブ8bを介して反応容器9内に導入し、バルブ5cを開けてキャリアガスを原料容器1c内に導入し、キャリアガスと混合したZr(O-t-Bu)4 ガスをバルブ6c、MFC7c、バルブ8cを介して反応容器9内に導入する。同時に、バルブ6d、MFC7d、バルブ8dを介してNO2 ガスも反応容器9内に導入する。
【0041】
キャリアガスと混合したPb(DPM)2 ガス、キャリアガスと混合したTi(O-i-Pr)4 ガス、キャリアガスと混合したZr(O-t-Bu)4 ガス、NO2 ガスの各流量は、MFC7a,7b,7c,7dによってそれぞれ制御される。
こうして、基板10上には、ペロブスカイト構造のPZT膜(PbZrxTi1−xO3 膜)が形成される。
【0042】
本実施の形態では、化学気相成長プロセスが終了すると、直ちにバルブ8a,8b,8c,8dを閉じると共に、排気バルブ12a,12b,12c,12dを開き、キャリアガスと混合した原料ガス及び酸化ガスNO2 を排気し、化学気相成長が完了した基板10を反応容器から搬出する。この後、バルブ5a,5b,5cを閉じてキャリアガスを遮断し、所定の時間が経過したらバルブ6a,6b,6cを閉じて、原料容器1a,1b,1c内の原料蒸気圧を圧力計4a,4b,4cで測定する。
圧力計4aの測定値は、コントローラ2aと3a、圧力計4bの測定値は、コントローラ2bと3b、圧力計4cの測定値は、コントローラ2cと3cにそれぞれフィードバックされる。
【0043】
コントローラ2a,3aは、圧力計4aの測定値に基づいて原料容器1a内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、圧力計4bの測定値に基づいて原料容器1b内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、圧力計4cの測定値に基づいて原料容器1c内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1cの温度を制御する。
原料容器1a,1b,1cの温度調整と並行して、膜を形成すべき次の基板10を反応容器9内に搬入して、上記と同様の成膜プロセスを実施する。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、成膜プロセスと、原料容器1a,1b,1c内の原料蒸気圧の測定と、原料容器1a,1b,1cの温度制御とを1成膜プロセス毎に繰り返すことにより、直前のプロセスにおける原料流量を把握することによって、常に安定した原料供給を行うことができる。
なお、成膜終了後の一連の作業は、成膜が完了した基板10を反応容器から搬出し、新しい基板10を反応容器に搬入することと並行して行われるため、従来と変わらない生産性を維持できる。
【0045】
[実施の形態3]
図5は、本発明によるMOCVD装置の第3の実施の形態を示しており原料容器内あるいは原料容器からMFCまでの配管の途中の原料濃度(kg/m3)を測定して原料容器内の温度を制御するようにしたもので、図1と同一の構成のものには同一の符号を付してある。
図5の実施の形態では、原料容器1a,1b,1c内の原料濃度を測定する濃度計13a,13b,13c、あるいは原料容器1a,1b,1cとMFC7a,7b,7cとの間のガス配管内の原料濃度を測定する濃度計14a,14b,14cのいずれか一方を設けている。
【0046】
図6Aは、図5の実施の形態で使用される濃度計13a,13b.13cの構成例、図6Bは、濃度計14a,14b,14cの構成例をそれぞれ示しており、図6Aは濃度計13a、図6Bは濃度計14aをそれぞれ代表させて示してある。
図6Aに示される濃度計13aは、発光素子15と、受光素子17とを備え、原料容器1aの頂部に対向して設けられた2つの窓16a,16bに発光素子15と受光素子17がそれぞれ取り付けられている。
【0047】
図6Aに示される濃度計13aでは、発光素子15から発せられた光は原料容器1aの一方の窓16aから入射され、これと対向する他方の窓16bから出射した光が受光素子17で受光される。これにより、原料容器1a内の窓16aと16b間に存在する原料ガスによる光吸収を測定することで、原料濃度を測定する。ここでは、濃度計13aについてその構成を説明したが、他の濃度計13b,13cについても同様である。
また、図6Bに示される濃度計14aは、発光素子18と、原料容器1aとMFC7aとの間のガス配管に設けられた2つの窓19a,19bと、受光素子20とからなる。
【0048】
この濃度計14aでは、発光素子18から発せられた光をガス配管の一方の窓19aに入射させ、これと対向する他方の窓19bから出射した光を受光素子20で受光する。こうして、ガス配管内の原料ガスによる光吸収を測定することで、原料濃度を測定する。ここでは、濃度計14aの構成について説明したが、濃度計14b,14cについても同様である。また、発光素子と窓、窓と受光素子との間の光の伝達は、光ファイバーなどの伝達手段で受け持ってもよい。
【0049】
本実施の形態においても、成膜プロセスは第1の実施の形態と同様である。
濃度計13aの測定値は、コントローラ2a,3aにフィードバックされ、濃度計13bの測定値は、コントローラ2b,3bにフィードバックされ、濃度計13cの測定値は、コントローラ2c,3cにフィードバックされる。
コントローラ2a,3aは、濃度計13aの測定値に基づいて原料容器1a内の原料濃度が所定値となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、濃度計13bの測定値に基づいて原料容器1b内の原料濃度が所定値となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、濃度計13cの測定値に基づいて原料容器1c内の原料濃度が所定値となるように原料容器1cの温度を制御する。
【0050】
また、濃度計14a,14b,14cを設ける場合、濃度計14aの測定値は、コントローラ2a,3aにフィードバックされ、濃度計14bの測定値は、コントローラ2b,3bにフィードバックされ、濃度計14cの測定値は、コントローラ2c,3cにフィードバックされる。
コントローラ2a,3aは、濃度計14aの測定値に基づいて原料容器1a内の原料濃度が所定値となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、濃度計14bの測定値に基づいて原料容器1b内の原料濃度が所定値となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、濃度計14cの測定値に基づいて原料容器1c内の原料濃度が所定値となるように原料容器1cの温度を制御する。
こうして、実施の形態の1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
なお、上述では、有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として原料濃度(kg/m3)を測定しているが、これは単位体積あたりのmol数(mol/m3)を測定することと同様である。物質1モルあたりの質量は、この物質に一意に決まるものである。つまり、用いる原料の1モルあたりの質量は、原料に固有のものであるので、単位体積あたりの質量である原料濃度は、ガス配管内における原料ガスの単位体積あたりの分子存在量すなわちmol数に相当している。
【0052】
[実施の形態4]
図7は、本発明の第4の実施の形態となる気相成長装置(MOCVD装置)を説明するための第4実施の形態の基本構成を示している。なお、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。
図7に示されるMOCVD装置では、キャリアガスを用いて原料輸送(原料供給)を行うために、原料容器1a,1b,1cへのキャリアガスの流入口には、バルブ5a,5b,5cを介してキャリアガスが供給される。図4に示したMOCVD装置と異なる点は、MFC7a,7b,7cが、キャリアガスの流入口に設けられたバルブ5a,5b,5cの上流側に設置されていることである。
【0053】
図7に示されるMOCVD装置を用いたPZT膜の成膜プロセスについて説明する。
まず、原料容器1aを加熱することにより、ジピバロイルメタナート鉛錯体Pb(DPM)2を気化させ、同時に、原料容器1b,1cを加熱することにより、有機金属化合物原料Ti(O-i-Pr)4 、有機金属化合物原料Zr(O-t-Bu)4を気化させる。
真空排気された反応容器9内の基板10は、ヒータ9aによって所定の温度に加熱される。
【0054】
続いて、バルブ5aを開けてArやN2 等のキャリアガスをMFC7aを介して原料容器1a内に導入し、キャリアガスと混合したPb(DPM)2 ガスをバルブ6a,8aを介して反応容器9内に導入する。また、バルブ5bを開けてキャリアガスをMFC7bを介して原料容器1b内に導入し、キャリアガスと混合したTi(O-i-Pr)4 ガスをバルブ6b,8bを介して反応容器9内に導入する。同時に、バルブ5cを開けてキャリアガスをMFC7cを介して原料容器1c内に導入し、キャリアガスと混合したZr(O-t-Bu)4 ガスをバルブ6c,8cを介して反応容器9内に導入する。同時に、バルブ6d、MFC7d、バルブ8dを介してNO2 ガスを反応容器9内に導入する。
【0055】
キャリアガスと混合したPb(DPM)2 ガス、キャリアガスと混合したTi(O-i-Pr)4 ガス、キャリアガスと混合したZr(O-t-Bu)4 ガス、NO2 ガスの各流量は、基板10上に形成されるPZT膜に要求される特性を考慮して、MFC7a,7b,7c,7dによってそれぞれ制御される。
こうして、基板10上には、ペロブスカイト構造のPZT膜(PbZrxTi1−xO3 膜)が形成される。
【0056】
本実施の形態では、成膜プロセスが終了すると、直ちにバルブ8a,8b,8c,8dを閉じると共に、排気バルブ12a,12b,12c,12dを開き、キャリアガスと混合した原料ガス及び酸化ガスNO2 を排気し、成膜が完了した基板10を反応容器9から搬出する。基板10を搬出した後、バルブ5a,5b,5cを閉じてキャリアガスを遮断し、所定の時間が経過したらバルブ6a,6b,6cを閉じ、原料容器1a,1b,1c内の原料蒸気圧を圧力計4a,4b,4cで測定する。
圧力計4aの測定値は、コントローラ2a,3aにフィードバックされ、圧力計4bの測定値は、コントローラ2b,3bにフィードバックされ、圧力計4cの測定値は、コントローラ2c,3cにフィードバックされる。
【0057】
コントローラ2a,3aは、圧力計4aの測定値に基づいて原料容器1a内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1aの温度を制御する。同様に、コントローラ2b,3bは、圧力計4bの測定値に基づいて原料容器1b内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1bの温度を制御し、コントローラ2c,3cは、圧力計4cの測定値に基づいて原料容器1c内の原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器1cの温度を制御する。
原料容器1a,1b,1cの温度調整と並行して、成膜すべき次の基板10を反応容器9内に搬入して、上記と同様の成膜プロセスを実施する。
以上のように、本実施の形態では、成膜プロセスと、原料容器1a,1b,1c内の原料蒸気圧の測定と、原料容器1a,1b,1cの温度制御とを1成膜プロセス毎に繰り返すことにより、常に安定した原料供給を行うことができる。
【0058】
本実施の形態では、MFC7a,7b,7cがキャリアガスの流入口に設けられたバルブ5a,5b,5cの上流側に設置されていることにより、図4のMOCVD装置と比較した場合に、次のような利点がある。図4のMOCVD装置では、原料蒸気圧を保つために原料容器と同程度の温度までMFCを加熱する必要があるが、本実施の形態におけるMFCはキャリアガスの流量制御を行うためのものであるので、MFCを高温にする必要がないことである。必要な原料蒸気圧を得るためには、原料容器と、原料容器から反応容器までの配管の加熱温度が200℃以上にならざるを得ない場合もあるが、MFCの加熱温度が200℃ぐらいに高くなると、MFCの精度と安定性が悪化する。このような理由から、図7のMOCVD装置本実施の形態のように、MFC7a,7b,7cをキャリアガスの流入口に設けられたバルブ5a,5b,5cの上流側に設置することにより、図4のMOCVD装置と比較して、さらに精度よく安定した原料供給を行うことができる。
【0059】
なお、成膜終了後の一連の作業は、成膜が完了した基板10を反応容器から搬出し、新しい基板10を反応容器に搬入することと並行して行われるため、従来と変わらない生産性を維持できる。この点は図4のMOCVD装置と全く同じである。
なお、以上の実施の形態では、基板10上にPZT膜を形成しているが、本発明は他の薄膜形成にも適用できることは言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、原料容器とマスフローコントローラとの間のガス配管内もしくは原料容器内の有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値を検出し、この検出した値に基づいて原料を加熱するようにしたので、反応容器内に原料のガスを定量的に供給することができるようになる。この結果、例えばマスフローコントローラの動作を安定させることができ、常に安定した原料供給を行うことができる。
従来では、原料容器の温度を一定値に設定していたため、原料容器1a,1b,1c内の原料が減るにつれて原料ガスの流量が減少して原料供給が不安定となっていたが、本発明により安定した原料供給が可能となり、従来の装置における問題点が解消される。
【0061】
また、原料ガスをマスフローコントローラで流量制御し、かつガス配管内もしくは原料容器内の原料蒸気圧を測定して原料容器の温度を制御するため、特開平4−362176号公報に開示された気相成長装置よりも、より現実的な原料供給装置であると言える。したがって、再現性の高い均一なCVD成膜を提供することができる。
また、キャリアガスにより原料ガスを反応容器へ輸送する場合は、成膜プロセスが終了する度に原料容器のガス流入口及びガス流出口に設けられたバルブを閉じて、原料容器内の原料蒸気圧を測定し、この測定値に基づいて原料蒸気圧が所定の圧力となるように原料容器の温度を制御することにより、原料容器内の原料蒸気圧を常に一定にすることができる。この結果、キャリアガスにより原料ガスを反応容器へ輸送する場合であっても、常に安定した原料供給を行うことができる。また、原料ガスをマスフローコントローラで流量制御し、かつ原料容器内の原料蒸気圧を測定して原料容器の温度を制御するため、特開平4−362176号公報に開示された気相成長装置よりも、より現実的な原料供給装置であると言える。したがって、再現性の高い均一なCVD成膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による有機金属気相成長法および有機金属気相成長装置を説明するための第1の実施の形態の基本構成を示す系統図である。
【図2】 図1に示される原料容器の横断面図および2B-2B線方向の縦断面図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態における温度調節動作を示すフローチャートである。
【図4】 本発明を説明するための第2の実施の形態を示す系統図である。
【図5】 本発明を説明するための第3の実施の形態を示す系統図である。
【図6】 原料ガスの濃度を測定する濃度計の一例を示す構成図である。
【図7】 本発明を説明するための第4の実施の形態を示す系統図である。
【図8】 従来の気相成長装置の構成を示す系統図である。
【図9】 従来の他の気相成長装置の構成を示す系統図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c…原料容器、2a,2b,2c…加熱コントローラ、3a,3b,3c…冷却コントローラ、4a,4b,4c…圧力計、6a〜6d、8a〜8d,12a〜12d…バルブ、7a〜7d…マスフローコントローラ、9…反応容器、9a…ヒータ、10…基板、11a,11b,11c…圧力計、33…加熱装置、34…冷却装置。
Claims (5)
- 原料容器内にキャリアガスを導入し、前記キャリアガスを用いて前記原料容器内の原料輸送を行う有機金属気相成長方法であって、
成膜が完了した基板を反応容器から搬出して新しい基板を反応容器内へ搬入することと並行して、前記キャリアガスの前記原料容器内への供給を中止し、
少なくとも1個の原料容器から送出される有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として、前記原料容器から前記反応容器への前記有機金属原料のガスの供給路と前記原料容器内への前記キャリアガスの供給路とを共に遮断した状態で前記原料容器内の圧力を検出し、
この圧力の値が反応容器内の基板上に形成される前記有機金属原料を構成する金属からなる薄膜を形成するために必要な範囲の値を取るように、前記原料容器内に収容された前記有機金属原料の加熱あるいは冷却温度設定を変更してから前記キャリアガスの前記原料容器内への供給を再開し、
これにより前記反応容器内に前記有機金属原料のガスを定量的に供給して新たに搬入された前記基板上に前記薄膜を形成する
ことを特徴とする有機金属気相成長方法。 - 原料容器内にキャリアガスを導入し、前記キャリアガスを用いて前記原料容器内の原料輸送を行う有機金属気相成長装置であって、
前記キャリアガスの前記原料容器内への供給手段と、
前記キャリアガスの前記原料容器内への供給停止手段と、
少なくとも1個の有機金属原料のガスを送出する原料容器と、
この原料容器から送出される前記有機金属原料のガスを反応容器内に輸送する配管と、
この配管の途中に設けられて前記反応容器内への前記有機金属原料のガスの供給を遮断するバルブと、
前記原料容器から送出される前記有機金属原料のガスのmol数に換算しうるパラメータの値として、前記原料容器から前記反応容器への有機金属原料のガスの供給路と前記原料容器内への前記キャリアガスの供給路とを共に遮断した状態で、前記原料容器内の圧力を検出する圧力計と、
この圧力計が検出した圧力の値が反応容器の基板上に形成される前記有機金属原料を構成する金属からなる薄膜を形成するために必要な範囲の値をとるように、前記原料容器内に収容された前記有機金属原料の加熱あるいは冷却温度設定を変更する原料温度調節手段と
を備え、
前記圧力計による圧力の検出および前記原料温度調節手段による温度設定の変更は、成膜が完了した基板を前記反応容器から搬出して新しい基板を前記反応容器内へ搬入することと並行して行われ、
これにより前記反応容器内に前記有機金属のガスを定量的に供給して前記基板上に前記薄膜を形成するようにし
たことを特徴とする有機金属気相成長装置。 - 請求項2記載の有機金属気相成長装置において、
前記キャリアガスの流量を制御する流量制御器を備え、この流量制御器は、前記原料容器の上流に配置されていることを特徴とする有機金属気相成長装置。 - 請求項2または3記載の有機金属気相成長装置において
前記圧力計は、前記原料容器に接続されて前記原料容器内のガスの圧力を検出することを特徴とする有機金属気相成長装置。 - 請求2または3記載の有機金属気相成長装置において、
前記圧力計は、前記原料容器から送出されるガスを前記反応容器内に輸送する前記配管の途中の前記バルブよりも前記原料容器側に設けられ、この配管を介して前記原料容器内の圧力を検出することを特徴とする有機金属気相成長装置。
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