JP4212750B2 - ポリウレタン樹脂接着用アラミド繊維コードの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタン樹脂をマトリックスとする構造体の補強用繊維コードとして好適に使用することのできるアラミド繊維コードの製造方法に関するものである。特に、本発明は、動力伝達ウレタンベルトの芯線コードとして適し、マトリックスウレタンとの接着性が良好で且つ耐久性にも優れたアラミド繊維コードの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アラミド繊維コードは一般に優れた強力、弾性率、寸法安定性、耐熱性などの特性を有するために、苛酷な条件下で使用されるタイヤ、ベルト、ホースなどの構造体の補強用繊維として優れており、既に適用されている。
【0003】
ゴムをマトリックスとする場合は、一般的には、エポキシを含む処理剤で処理、熱キュアーした後、RFL接着剤で処理することにより、使用に耐え得るレベルの接着性能を発現させることができる。
【0004】
しかし、ウレタンなどの樹脂をマトリックスとする場合には十分な接着性能を得るのが困難である。ウレタンベルトなどの複合体用補強繊維は、撚糸コード状で使用されるが、このコードにとって重要な特性は、マトリックスとの接着性能、コード強力、荷重伸度と乾熱収縮率のバランス、熱収縮応力などである。これらの特性のうち接着性能及びコード強力は、でき上がったベルトの耐負荷や耐久性に大きく関与し、また荷重伸度と乾熱収縮率のバランスは、ベルト成形時の寸法安定性(ベルトの長さ)に影響する。さらに熱収縮応力は、ベルト走行時の寸法変化に影響し、ベルトの伝動効率と深い係りを有する。そして、これらの特性は相互に複雑に関連しているため、バランスが取れた接着技術及び接着処理条件が望まれている。
【0005】
アラミド繊維コードとウレタンマトリックスとの接着に関しては、接着剤の提案は少なく、マトリックスウレタンを溶剤で溶かしたものを塗布する方法などが一般的である。しかし、これらの接着技術では、アラミド繊維表面と処理剤の親和性が考慮されておらず、単純に繊維中へのウレタン樹脂の含浸によるアンカー効果のみで接着しており、特に多数のプーリーで屈曲運動を行う動力伝達ベルトの補強繊維コードとしての動的な接着性能は不十分であり、充分な耐久性能が得られていないのが現実である。そのため、接着性能の向上を目的に、イソシアネート基を有する化合物を含む溶剤系処理剤で、更に処理を行うことがなされている。しかしながら、かかる溶剤系処理は、イソシアネート基が処理液中あるいは処理コード表面で、空気中の湿気と反応し易いなど、処理液や処理コードのポットライフの点に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的は、マトリックスウレタンとの接着性に優れ、且つ耐久性も良好な動力伝達ベルトを得るに適したアラミド繊維コードを提供することにあり、特に生産時における、処理液や処理コードのポットライフを改善したアラミド繊維コードの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、「末端NCO基を有するポリウレタンのプレポリマーを主成分とし、該プレポリマーに対しポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを固形分比率で20〜50重量%含有する有機溶剤溶液の処理液にて処理することを特徴とする、ポリウレタン樹脂接着用アラミド繊維コードの製造方法」により達成される。この時「処理液のNCO含量が0.5〜5.0重量%」であることが望ましい。
【0008】
また、処理液を付着させたアラミド繊維コードの熱処理条件は「温度120〜160℃で60〜120秒間熱処理し、次いで温度200〜220℃で60〜120秒間熱処理を行う」ことが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるアラミド繊維とは、芳香族ポリアミド繊維である、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリ−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド/ポリパラフェニレンテレフタルアミド共重合体などからなる繊維を意味し、少量の第3成分が共重合されていても良い。なかでも、耐屈曲疲労性に優れたポリ−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド/ポリパラフェニレンテレフタルアミド共重合体からなる繊維が好適である。
【0010】
アラミド繊維コードとは、上記アラミド繊維を加撚して得られるものであり、本発明の接着処理は、加撚後の生コード、加撚前の無撚糸のいづれの状態で行っても良い。加撚は、上記アラミド繊維からなる糸条を所望の本数引き揃え、これに下撚りをかける。次いで下撚りのかかった繊維を所望の本数合わせ、下撚りとは逆方向の上撚りを与えてコードとする。この場合撚り数は任意であるが、下撚りは上撚りよりも多い撚り数をかけるのが一般的である。
【0011】
本発明の接着処理には、末端NCO基を有するポリウレタンのプレポリマーが主成分として用いられ、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコールなどのポリエステルジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルグリコール類、ポリカーボネートジオール(PCG)類などのポリオールと、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート(H12−MDI)等の脂環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等の脂肪族ジイソシアレート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのポリイソシアネートとから得た、末端にNCO基を有するプレポリマーである。特に耐熱性、耐加水分解性の面から、PPG、PTMG等のポリエーテルグリコールとHMDI、H12−MDI等から得られるポリエーテル系の無黄変ポリウレタンプレポリマー、あるいはポリカーボネート系の無黄変ポリウレタンプレポリマーが好ましい。またこのプレポリマーは、固型分濃度を25重量%に調整した時、NCO含量が1.5〜5.0重量%で、25℃における粘度が1000〜1600mPa・sであることが好ましい。粘度がこれよりも高くなると、アラミド繊維への含浸性が低下し、ウレタンとの接着が低下する傾向にある。同時にベルトに成形された際、ベルトの端面で補強芯線コードがほつれたり、毛羽立ったりし、走行時の耐久性を低下させる傾向にある。
【0012】
また、本発明の処理液に含有されるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、下記式(化1)で表されるものである。
【0013】
【化1】
Figure 0004212750
【0014】
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの重合度に関しては特に制約はない。ただし、n=0のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネートの含有率が多い場合には、処理液や処理コードのポットライフが短くなる傾向にあるため、n=1以上のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの含有率が、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であることが望ましい。また、液状物としての取り扱い性に優れることが必要なため、NCO含量(NCO基の重量濃度)を30〜33重量%に調整した原液の25℃における粘度が、150〜250mPa・sであるものが好ましい。
【0015】
本発明の処理液では、ポリウレタンのプレポリマーの凝集力を高めるため、固形分重量比率でプレポリマーに対し20〜50重量%のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを添加配合することが必要である。このポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの配合量が20重量%未満では、アラミド繊維処理コード上の接着剤皮膜の性状は殆ど変化しないが20〜50重量%の範囲では、アラミド繊維コードに処理、熱セット後の接着剤皮膜の曲げに対する形態保持性、皮膜の硬さがバランス良く保たれている。50%を超えると、処理液の粘度が上がり繊維を浸漬処理する際の取り扱い性が悪くなり、また浸漬処理、熱処理後の接着剤皮膜の硬化が進み、硬い皮膜を形成し、アラミド繊維処理コードの物性は大きく低下する。
【0016】
また、本発明の接着処理で用いられる処理液は、有機溶剤溶液である。有機溶剤としては酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンおよびキシレンなどが用いられるが、防爆性、作業性の点からはキシレンが好ましい。また希釈後の処理液中のNCO含量は0.5〜5.0重量%であることが好ましい。NCO含量が高すぎると、繊維に処理した際、高濃度で処理液付着量が少なくまた高粘度でもあるので、付着むらが生じやすいため、マトリックスとの接着性は良好であるが繊維補強複合体の疲労性は悪化する。逆にNCO含量が低すぎると、接着性が不十分になる。
【0017】
繊維への剤付着量は、剤中のNCO含量にもよるが、乾燥後で4〜8重量%が望ましい。剤付着量が多すぎると、一般的にはコードが硬くなり、逆に剤付着量が低すぎるとコードは柔らかいものの接着性を満足しない。
【0018】
処理液を付着させたアラミド繊維は、温度120〜160℃で60〜120秒間熱処理し、次いで温度200〜220℃で60〜120秒間熱処理を施すことが好ましい。熱処理条件が低い場合には、接着剤の皮膜形成性が低い傾向にあり、逆に高い場合には接着剤皮膜の劣化が進む傾向にある。接着処理を施したアラミド繊維は、生コードを処理した場合にはそのまま、無撚糸の場合には所望の撚りを施し、樹脂接着用アラミド繊維コードとする。
【0019】
得られるアラミド繊維コードは、強力利用率も高く、ポリウレタン樹脂との接着性に優れたものとなる。また、本発明の方法では、ウレタンのプレポリマーと高分子量化させたポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを接着処理剤として使用するため柔軟なコードとなり、疲労性(強力保持率)が向上する。また従来の反応性の高いイソシアネート化合物を使用する場合と比べ、処理液のポットライフが向上し、処理コードの空気中の水分による劣化も大幅に抑えられ、接着処理液の加工時間や処理コードの保管時間の制約が減少し、処理コードを極めて安定的にかつ低コストにて生産できる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例、比較例における各測定値は、次の方法により求めたものである。
【0021】
<コード強力>
インストロン5565型引張り試験機(インストロン社製)を用い、4Dエアーチャックを使用して、試長(コード長)250mmをとり、引張速度100mm/分とし、その破断強力を求めた。10回測定し、その平均値をコード強力とした。
【0022】
<引抜き接着力>
処理コードとポリウレタン樹脂とのせん断接着力を示すものである。モールドにあらかじめウレタン樹脂シート状物を敷き込んでおき、予熱によりウレタンを柔らかくする。その後コードをウレタンシート間に挟み、490N/cm2のプレス圧力加圧下、温度170℃で10分間熱処理し、所定時間経過後、モールドを空冷し、モールドが60℃以下になった付近で、アラミド繊維コードを挟み込んだウレタン複合体をモールドより取り出す。ついでコードがウレタンシート中に1cm挟み込まれているように、カットし、コードをウレタンシートブロックから200mm/分の速度で引抜き、引抜きに要した力を測定し、N/cmで表示した。
【0023】
<疲労性(強力保持率)>
耐疲労性を表す尺度で、ベルト式疲労テスターを用い、厚さ2mmのウレタンシート2枚の間にコードをはさみ、490N/cm2のプレス圧力加圧下、温度170℃で10分間熱処理成形する。得られたシートを50mm幅×500mm長のベルト形状に切断し、該サンプルに荷重245Nをかけて直径20mmのローラーに取り付け、120℃の雰囲気下で、120rpmで往復運動させ、50万回繰り返した後、コードを取り出し残強力を測定し、疲労時の強力保持率を求めた。
【0024】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
まず、接着処理液を次のように調整した。すなわち、無黄変ポリウレタンプレポリマー(NCO含量2.7重量%、固形分濃度25重量%;日本ポリウレタン株式会社製;コロネート2226)400gに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、NCO含量31.0重量%;日本ポリウレタン株式会社製;ミリオネートMR−200)20g、キシレン(試薬1級;キシダ化学株式会社製)780gを加え良く攪拌して、NCO含量が1.4重量%である接着処理液を得た。またアラミド繊維(帝人株式会社製テクノーラ)1670dtexヤーンを先ず下撚りとしてZ方向に160回/m撚りを掛け、ついで該下撚り糸を3本合わせてS方向に100回/mの上撚りを掛けて1670dtex/1×3の撚糸コードを得た。該コードを防爆型コード処理機を用い、先程の接着処理液に浸漬処理し、引き続き150℃で120秒間乾燥し、さらに200℃で120秒間熱処理を行って処理コードを得た。なお、処理後の繊維に対する剤付着量は6.0重量%となるように調整した。得られたアラミド繊維処理コードを、ポリウレタン樹脂を用い、170℃で10分間、プレス機で熱処理を行ってポリウレタン樹脂複合体を得た。(実施例1)
【0025】
上記実験を表1に示すとおり、処理液のウレタンプレポリマーとポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの比率を種々変更し、処理液中の固型分濃度をキシレンの添加量にて10重量%に調整し、実験を繰り返した。なお、比較例3は、処理剤中のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート含量をゼロ、即ちウレタンプレポリマーのみで処理した場合を示す。これらについて、コード強力、引抜き接着力、疲労後コード強力保持率を測定した結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004212750
【0027】
また実施例2において、処理コードを種々の時間経時させた後に、上記と同様にプレス機で熱処理を行ってポリウレタン樹脂複合体を得た。経時毎の引抜き接着力を測定した結果を、表2に示す。
【0028】
[比較例4]
処理液として、実施例2で用いたポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートに替えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、純度98%以上;住友バイエルウレタン株式会社製)を用いた以外は、実施例2と同様に処理をした。
経時毎の引抜き接着力を測定した結果を、表2にあわせて示す。
【0029】
[比較例5]
処理液として、実施例2で用いたポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートに替えて、湿気硬化型イソシアネート(NCO含量15.0重量%;日本ポリウレタン株式会社製;コロネート2041)を用いた以外は、実施例2と同様に処理をした。経時毎の引抜き接着力を測定した結果を、表2にあわせて示す。
【0030】
【表2】
Figure 0004212750
【0031】
【発明の効果】
本発明の方法により得られるポリウレタン樹脂接着用アラミド繊維コードは、強力などのアラミド繊維が有する優れた力学的特性を維持すると共に、ポリウレタン樹脂との接着性に優れ、しかも柔軟である。該繊維コードで補強されたベルトなどの樹脂複合体は寸法安定性に優れ、優れた動力伝達性、耐疲労性を有する。また、本発明の方法により、生産時の処理液や処理コードのポットライフが伸びるため、接着処理液の加工時間や処理コードの保管時間の制約が減少し、ポリウレタン樹脂接着用アラミド繊維コードを極めて安定的に低コストで生産できるようになる。

Claims (4)

  1. 末端NCO基を有するポリウレタンのプレポリマーを主成分とし、該プレポリマーに対しポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを固形分比率で20〜50重量%含有する有機溶剤溶液の処理液にて処理することを特徴とする、ポリウレタン樹脂接着用アラミド繊維コードの製造方法。
  2. 処理液のNCO含量が0.5〜5.0重量%である請求項1に記載のアラミド繊維コードの製造方法。
  3. 処理液を付着させた後、温度120〜160℃で60〜120秒間熱処理し、次いで温度200〜220℃で60〜120秒間熱処理を行う請求項1または2に記載のアラミド繊維コードの製造方法。
  4. アラミド繊維がポリ−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド/ポリパラフェニレンテレフタルアミド共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアラミド繊維コードの製造方法。
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