JP4211472B2 - 脈波測定装置および脈波測定装置制御プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は脈波測定装置および脈波測定装置制御プログラムに関し、特に、容易な位置決めで精度のよい測定結果を得られる脈波測定装置および脈波測定装置制御プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、脈波測定装置としては、トノメトリ方式を利用した脈波測定装置がある。
【0003】
トノメトリ方式の原理については、図7を用いて説明される。すなわち、図7を参照して、体表面から平板で動脈を押圧して、動脈を平坦に変形させる。そのとき、平坦につぶれた動脈直上は、図7において点線矢印で示される血管張力が左右でつりあうため、血管内圧への血管張力の影響が最も小さい。そこで、平坦につぶれた動脈直上で平坦につぶれた部分に比べてサイズの小さなセンサエレメントで計測した圧力は動脈内圧に一致し、体表面から動脈内波形を測定できるという原理である。
【0004】
このトノメトリ方式を利用するため、従来の脈波測定装置としては、動脈直上に位置決めして押圧し脈波を測定する圧力センサとして、微小な単一のセンサエレメントを動脈直上に位置決めして押圧して脈波を測定する脈波測定装置と、微小なセンサエレメントを複数個配列し、動脈直上にあるセンサエレメントで脈波を測定する脈波測定装置とがある。たとえば特許文献1や特許文献2などに、後者のようなトノメトリ方式を利用した血圧測定装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2776961号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−320594号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の微小な単一のセンサエレメントを備える脈波測定装置では、動脈直上にセンサを位置決めすることが非常に難しく、高度な手技が必要とされるという問題があった。また、位置決め再現性がよくないことから、測定の再現性もよくないという問題もあった。
【0008】
また、上述の微小なセンサエレメントを複数個配列した脈波測定装置では、いずれかのセンサエレメントが動脈直上に位置する可能性が高いため、位置決めは上述の単一のセンサエレメントを備える脈波測定装置に比べて容易である。複数個配列されたセンサエレメントにおける位置決めについては、たとえば、本願出願人が先に出願して公開されている特許文献2などに開示されている。しかし、微細な(たとえば0.2〜0.3mm幅)のセンサエレメントを多数配列しなければならないため、センサエレメントから十分な出力信号が得られない場合が発生し、信号/ノイズ比(S/N)が低下して脈波計測不能もしくは波形解析が不能となる場合があるなどの問題が発生してしまう。
【0009】
さらに、センサエレメントからの出力信号確保するためにセンサエレメントのサイズを大きくすると、上述のトノメトリ方式を利用するための条件を満たさなくなる場合があり、得られるセンサ信号が歪むという問題や、位置決め分解能が低下するなどの問題が発生してしまう。
【0010】
同様に、センサエレメントからの出力信号確保するために、脈波測定装置の構成として同じセンサエレメントに対応するチャンネルから出力されるデータを高速に複数回収集し平均する構成も考えられる。しかしながら、脈波測定装置をこのような構成にした場合には、脈波測定装置において処理するデータ量が増加し、A/D変換装置、CPU、データ通信装置などの処理能力としてより高性能な能力が要求され、メモリ搭載量も増やす必要があるため、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、位置決め分解能を低下させることなくS/Nを改善し、センサ信号の歪みの効果を低減することが可能な脈波測定装置および脈波測定装置制御プログラムを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、脈波測定装置は、動脈内圧波形を体表から検出する、複数のセンサエレメントを含む圧脈波センサと、圧脈波センサで検出される脈波波形に基づいて、複数のセンサエレメントのうち、動脈の直上にあるセンサエレメントを選択する選択手段と、選択されたセンサエレメントからの出力信号と、選択されたセンサエレメントの周辺の所定数のセンサエレメントからの出力信号とを加算する信号加算手段と、加算された出力信号に基づいて、脈波の特徴量を算出する特徴量算出手段とを備える。
【0013】
また、脈波測定装置は、選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいて脈波の振幅値を取得する脈波振幅取得手段と、選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいてノイズの振幅を検出するノイズ振幅検出手段と、取得された脈波振幅値と、検出されたノイズ振幅とから、信号ノイズ比(S/N)を算出するS/N算出手段と、特徴量を算出するために必要な所定のS/N値と、算出されたS/N値とに基づいて、加算するセンサエレメントの個数を決定する加算個数決定手段とをさらに備えることが望ましい。
【0014】
また、脈波測定装置は、加算するセンサエレメントの個数に応じて、加算された出力信号を補正する信号補正手段をさらに備えることが望ましい。
【0015】
さらに、上述の特徴量は、AI(Augmentation Index)値であることが望ましい。
【0016】
本発明の他の局面に従うと、脈波測定装置制御プログラムは、動脈内圧波形を体表から検出する、複数のセンサエレメントを含む圧脈波センサを備える脈波測定装置の制御を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、圧脈波センサで検出される脈波波形に基づいて、複数のセンサエレメントのうち、動脈の直上にあるセンサエレメントを選択する選択ステップと、選択されたセンサエレメントからの出力信号と、選択されたセンサエレメントの周辺の所定数のセンサエレメントからの出力信号とを加算する信号加算ステップと、加算された出力信号に基づいて、脈波の特徴量を算出する特徴量算出ステップとを実行させる。
【0017】
また、脈波測定装置制御プログラムは、選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいて脈波の振幅値を取得する脈波振幅取得ステップと、選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいてノイズの振幅を検出するノイズ振幅検出ステップと、取得された脈波振幅値と、検出されたノイズ振幅とから、信号ノイズ比(S/N)を算出するS/N算出ステップと、特徴量を算出するために必要な所定のS/N値と、算出されたS/N値とに基づいて、加算するセンサエレメントの個数を決定する加算個数決定ステップとをさらに実行させることが望ましい。
【0018】
また、脈波測定装置制御プログラムは、加算するセンサエレメントの個数に応じて、加算された出力信号を補正する信号補正ステップをさらに実行させることが望ましい。
【0019】
さらに、上述の特徴量は、AI(Augmentation Index)値であることが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
図1に、本実施の形態における脈波測定装置の構成の具体例を示す。図1を参照して、本実施の形態における脈波測定装置は、大きくは、本体部10とセンサ部20とを含んで構成され、本体部10は外部の血圧計30と接続される。本体部10と血圧計30との接続は、専用ケーブルや通信回線などを介した接続や、非接触の無線通信も含むものとする。なお、図1においては、本脈波測定装置が本体部10に通信機能を備えて血圧計30と連携して必要に応じて血圧測定可能な構成が示されているが、いうまでもなく、本脈波測定装置が血圧計30を含み、血圧測定可能であってもよい。
【0022】
本体部10はCPU(Central Processing Unit)101を備え、電源110からエネルギを供給されて動作する。CPU101は、メモリ108などの記憶装置にアクセスしてプログラムを読出して実行し、当該脈波測定装置全体の制御を行なう。
【0023】
また、CPU101は、操作スイッチ109からユーザからの操作信号を受取り、その操作信号に基づいて脈波測定装置全体の制御処理を行なう。すなわち、CPU101は、操作スイッチ109から入力された操作信号に基づいて、ポンプ102、弁103および血圧計30に対して制御信号を送出する。そして、血圧計30から測定結果を受取る。
【0024】
ポンプ102および弁103は、CPU101から入力された制御信号に基づいて、センサ部20に含まれる空気袋21を加圧あるいは空気袋21内の空気の排気を行なう。圧力センサ104は、空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出し、圧力信号をA/D変換器106に入力する。
【0025】
センサ部20に含まれる圧脈波センサ22は、所定間隔に並んだ複数のセンサエレメントを含んで構成され、空気袋21の圧力によって測定中の被験者の手首などの測定部位に押圧される。その状態でセンサ部20は被験者の脈波を検出する。圧脈波センサ22は、検出した脈波信号を各センサエレメントのチャネルごとにマルチプレクサ23に入力し、マルチプレクサ23からアンプ105に入力される。
【0026】
アンプ105は、マルチプレクサ23から入力された各チャネルの脈波信号を所定レベルまで増幅させ、A/D変換器106に入力する。A/D変換器106は、圧力センサ104から入力されたアナログ信号である圧力信号と、アンプ105から入力されたアナログ信号である動脈信号とをデジタル情報に変換して、CPU101に入力する。そして、CPU101は、デジタル信号を表示器107やメモリ108に出力する。
【0027】
本発明にかかる脈波測定装置は測定された脈波を用いて脈波の特徴量を算出するものであり、本実施の形態においては、脈波の特徴量としてAI(Augmentation Index)値を算出するものとする。
【0028】
ここで、AIとは、公知の指標であって、主に中枢血管の動脈硬化に対応する脈波の反射強度を反映する特徴量を指標化したものである。AIは、特に循環器系疾患の早期発見のために有効な指標と言われており、血圧とは異なった挙動を示すことが知られている。
【0029】
図2および図3に、測定される脈波の時間経過に従う変化の具体例を示す。たとえば、図2に示される脈波が測定された場合には、AI値はAI=P1/P2(もしくはAI(%)=(P2−P1)/P1×100)として得られ、図3に示される脈波が測定された場合には、AI値はAI=P1/P2(もしくは、AI(%)=(P2−P1)/P2×100)として得られる。ここで、時間T1におけるレベルP1は、心臓の心拍による血液の駆出波による値を示し、時間T2におけるレベルP2は、心拍による駆出波についての反射波による値を示す。この反射波は、血管の硬化に対応して強度と出現時相とが変化する。なお、P1,P2を決定する方法としては、脈波波形に微分等の演算操作を行なって求めることができる。一般的に、被験者の年齢が若い方が、図2に示されるようにレベルP2<レベルP1となり、被験者の年齢が高い方が図3に示されるようにレベルP2>レベルP1となる。これは、被験者の年齢が高くなるほど血管内壁の硬化(動脈硬化)が進行しているために、駆出波を血管壁で十分に吸収できずレベルの高い反射が短時間のうちに検出されることによる。
【0030】
なお、言うまでもなく、本発明にかかる脈波測定装置で算出される脈波の特徴量はAI値に限定されるものではなく、たとえば脈波一周期の面積と脈波の立ち上がり点から大動脈弁閉鎖痕までの面積の比(心機能評価に活用できる)なども同様の効果を得ることができる。
【0031】
ところで、すでに述べたトノメトリ方式での脈波の測定は、センサエレメントの位置が動脈の平坦部分よりも外になるとセンサ信号に血管壁の張力が影響を及ぼし、センサエレメントで測定される動脈内圧とセンサ信号とが線形性を示さなくなって歪みが発生する。すなわち、センサエレメントの動脈に対する位置と、センサエレメントで測定される脈波の波形との関係を示した図4からわかるように、平坦につぶれている動脈直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントで測定した場合の脈波の振幅に比べて、完全に平坦にはつぶれていない動脈中央から離れた位置のセンサエレメントで測定した場合の脈波の振幅は、全体的に低い傾向にある。このため、センサエレメントのサイズは、動脈の平坦部分よりも小さな幅(0.2〜0.3mm程度)のセンサエレメントで脈波を検出することが必須である。本発明にかかる脈波測定装置の圧力センサ104も、このような0.2〜0.3mm程度の幅のセンサエレメントを複数個配列して構成されることが好ましい。
【0032】
しかしながら、圧力センサ104にこのような微細なセンサエレメントを多数配列すると、センサエレメントから十分な出力信号が得られない場合が発生し、S/N(センサ信号/ノイズ比)が低下してしまうなどの問題が発生してしまう。たとえば、脈圧が非常に小さい場合や、動脈が手首の深くに位置する場合や、動脈が非常に細い場合などでは、得られるセンサ信号のS/Nが不十分になることがある。
【0033】
上述のように、AI値などの微妙な波形の特徴量を算出する際には高次の微分処理が必要となり、良好な(適切な高さの)S/Nが要求される。そのため、本発明の脈波測定装置では、次のような処理を実行することを特徴とする。すなわち、図5に示すフローチャートを用いて、本実施の形態の脈波測定装置における処理について説明する。図5のフローチャートに示される処理は、脈波測定装置のCPU101が、メモリ108などの記憶装置にアクセスしてプログラムを読出して実行することによって実現される。
【0034】
図5を参照して、始めに、脈波の測定を開始するには、センサ部20を被験者の手首などの測定部位に、図示しない装着ベルトにて装着する(S101)。そして、CPU101は血圧計30に対して制御信号を送出し、血圧の測定の開始を指示する(S103)。血圧計30で被験者の血圧が測定されると(S105)、次に、CPU101は、脈波の測定を開始するため、弁103を開き、A/D変換器106を介して圧力センサ104から入力される空気袋21内の圧力を検知しながら、空気袋21内の圧力が所定の圧力勾配となるようにポンプ102に加圧を行なうよう制御信号を送出し、空気袋21内の圧力を高めて圧脈波センサ22の押圧を開始する(S107)。
【0035】
圧脈波センサ22を構成する各センサエレメントは、被験者の測定部位に押し当てられ、動脈の拍動をそれぞれ検出する(S109)。そのときの押圧力を適正な押圧力にするために、CPU101は、空気袋21内の圧力をいったん被験者の最低血圧以上まで高めた後に(S111でYES)、適正な押圧力を決定する(S113)。
【0036】
ステップS111における空気袋21内の圧力が最低血圧を超えたか否かの判定方法については、本発明において限定されるものではない。たとえば、圧脈波センサ22で検出される脈波の立上がり点直前に平坦部があれば、空気袋21内の圧力が最低血圧を超えているという判定ができる。
【0037】
また、ステップS113における適正押圧力の決定方法についてもまた、本発明において限定されるものではなく、既存の方法を用いることができる。たとえば、最低血圧以下の押圧力の範囲において、圧力変化に対して脈波振幅の変化が少ない領域を適正押圧力と決定するなどの方法がある。
【0038】
そして、空気袋21内の圧力がステップS113で決定された適正押圧となるよう、CPU101は、弁103およびポンプ102を制御する(S115)。すなわち、いったん空気袋21内の圧力が適正押圧に達すると、CPU101は弁103を閉じ、適正押圧を維持する。なお、漏気や体動によって押圧が適正値からずれた場合、CPU101は、そのことを圧力センサ104からA/D変換器106を介してを介して入力される圧力値を関しすることによって検知でき、その検知に応じて適応的に弁103およびポンプ102を制御して適正押圧を維持してもよい。
【0039】
圧脈波センサ22の押圧が適正になると、CPU101は、被験者の動脈の直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントを決定する(S117)。ステップS117におけるセンサエレメントの決定方法については、本発明において限定されるものではなく、たとえば、本願出願人が先に出願し、特願2002−320594号公報においてすでに開示している方法などを用いることができる。
【0040】
次に、CPU101は、ステップS117で決定されたセンサエレメントによって測定された脈波信号からノイズを低減するノイズ低減処理を実行し、特徴量であるAI値を算出する(S119)。なお、ここでの処理については、後にフローチャートを挙げて詳細に説明する。そして、CPU101は、ステップS119のノイズ低減処理を、測定終了条件が成立するまで繰返す(S121でYES)。ステップS121で測定を終了するための条件は、予め設定された所定時間の経過であってもよいし、ユーザからの中断指示などであってもよい。
【0041】
脈波の測定が終了すると、CPU101は、圧力センサ104の押圧を解除するため、弁103を開放し、空気袋21を排気するためにポンプ102を作動させる(S123)。そして、圧力センサ104の押圧が解除されると、ユーザはセンサ部20を測定部位から取外し(S125)、一連の脈波計測処理を終了する。
【0042】
さらに、上述のステップS119で実行されるノイズ低減処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。すなわち、図6に示されるように、始めに、CPU101は、ステップS117で決定されたセンサエレメントに該当するチャネルから入力された脈波信号から、ノイズ振幅の計測を行なう(S201)。ステップS201におけるノイズ計測の具体例としては、たとえば、除去対象のノイズの周波数帯域が脈波波形の周波数帯域以上である場合には、30Hz以下の成分を除去するハイパスフィルタをアナログフィルタもしくはデジタルフィルタで構成し、当該センサエレメントから入力された脈波信号をそのフィルタに通して、脈波成分除去後の信号の最大値および最小値を求めるなどしてノイズ振幅の計測を行なうことができる。またたとえば、除去対象のノイズの周波数帯域が脈波波形の周波数帯域と重なる場合には、脈波センサの押圧を開始する前の脈波が発生していない時点で当該センサエレメントから入力された脈波信号の最大値および最小値を求めるなどしてノイズ振幅の計測を行なうような構成としてもよい。
【0043】
次に、CPU101は、ステップS117で決定されたセンサエレメントに該当するチャネルから入力された脈波信号の脈波振幅を計測する(S203)。ステップS203において、脈波の振幅を厳密に計測するには、脈波の立上がり点と脈波の最大点とを求める必要があるが、脈波信号がノイズを含んでいる場合には困難となる。しかしながら、ステップS203においては、厳密に脈波の振幅を計測するのではなく、S/Nのおおよその目安が得られる程度の精度で脈波の振幅を計測すればよい。そのため、ステップS203においてCPU101は、想定される脈波の1周期(たとえば2秒程度期間)における脈波の最大値−最小値で脈波の振幅を算出する。
【0044】
次に、CPU101は、ステップS201で計測されたノイズの振幅と、ステップS203で計測された脈波の振幅とに基づいて、ノイズの低減目標量を算出する(S205)。上述のように、AI値など高次の微分処理が必要となるような微妙な波形の特徴量を算出する処理には良好なS/Nが必要であって、たとえばAI値を算出する処理には32dB程度は必要である。したがって、必要なS/Nは、行なう処理(AI値算出処理など)のうち最も良好なS/Nを必要とする処理によって決定される。そこで、ステップS205において、CPU101は、ステップS201で計測されたノイズの振幅と、ステップS203で計測された脈波の振幅とに基づいて現状のS/Nを算出し、ノイズの低減目標量Kを、(必要とするS/N)/(現状のS/N)で得る。あるいは、dB単位で表示すると、ノイズの低減目標量KdBは、(必要とするS/N)−(現状のS/N)[dB]となる。
【0045】
次に、CPU101は、ステップS205で算出された目標量Kだけノイズを低減させるために必要なセンサエレメントの加算個数を算出する(S209)。加算するセンサエレメントの数を増やせば増やすほどセンサ信号に含まれるノイズは低減できるが、一方、脈波を測定するセンサエレメントの幅が広がることと等価なためトノメトリ原理からは離れることとなる。そこで、ステップS209では、適切なセンサエレメントの加算個数を算出する。
【0046】
一般的に、情報理論ではn個のセンサ信号の平均によってノイズは1/√nになることが知られている。したがって、ステップS209においてこの原理を利用すると、ノイズの低減目標量Kは
K>1/(1/√n)
であるから、上の関係式を変形して
n>1/K2
となり、加算する必要のあるセンサエレメントの個数は1/K2個以上と算出される。
【0047】
次に、CPU101は、ステップS209で算出された加算センサエレメントの数に基づいて動脈直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントを中心にして、センサエレメントの信号を加算平均する(S209)。そして、ステップS209で加算平均後のセンサ信号から得られる脈波を用いてAI値などの脈波特徴量を算出する(S211)。ステップS209で加算平均後のセンサ信号から得られる脈波は必要なS/Nが確保されているため、ステップS211では、必要な精度で脈波特徴量の演算処理を行なうことが可能である。
【0048】
なお、ステップS211で得られる脈波特徴量は、加算された数のセンサエレメントからのセンサ信号を加算しているため、上述のように、幅の広いセンサエレメントから得られたセンサ信号より脈波特徴量を算出した場合と等価である。すなわち、幅の広いセンサエレメントで脈波が測定されることで、動脈内圧とセンサ信号とが線形性を示さなくなる場合があり得る。なお、幅の広いセンサエレメントからセンサ信号を得たときの歪みの発生については、本願出願人が、先に出願した特願2003−101602号の中に詳細に述べている。
【0049】
そこで、CPU101は、ステップS211で得られた脈波特徴量に対して歪み補正処理を行ない、脈波特徴量を補正する(S213)。ステップS213での補正方法については、本発明において限定されるものではないが、たとえば、本願出願人が先に特願2003−101602号において述べているような波形の歪み補正処理を適用することができる。
【0050】
より具体的には、ステップS211で算出された脈波特徴量であるAI値をAIcとし、動脈直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントから所定の距離にある複数(たとえば2つ)のセンサエレメントに該当するチャネルから入力された脈波信号に基づいて、それぞれのAI値AIa,AIbを算出する。なお、上述の、動脈直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントからの所定の距離は、ステップS209で加算されたセンサエレメントの個数に応じた距離であることが好ましい。
【0051】
次に、α=AIa−AIc,β=AIb−AIcと定義し、CPU101は、α,βを算出して、歪み度合いを表わすパラメータα2+β2あるいはα+βを算出する。さらに、算出された歪み度合いを表わすパラメータを補正パラメータとして、回帰式であるAI値補正量算出式Y=NX+Mを用い、AI値補正量(ΔAI)を算出する。なお、ここで、N,Mは予め決定されている係数である。そして、算出されたAI値補正量(ΔAI)を用いて演算(AIc−ΔAI)を行なって、ステップS211で算出された脈波特徴量であるAI値を補正することができる。
【0052】
以上で、ノイズ低減処理を終了し、図5に示されるメインルーチンに処理を戻す。
【0053】
このように、本発明にかかる脈波測定装置が微細な圧力センサであるセンサエレメントを複数個配列した圧脈波センサ22を備えて、動脈直上の位置をセンサの検知領域内に含むセンサエレメントからのセンサ信号を用いて脈波計測もしくは波形解析を行なうことで、従来の微細な単一のセンサエレメントからなる圧力センサを備える脈波測定装置に比べて、センサの位置決めが容易になる。また、再位置決めの必要な場合を低減させることができる。
【0054】
さらに、センサ信号がセンササイズの大きなセンサエレメントからのセンサ信号に比べて十分に得られない場合であって、従来の微細なセンサエレメントを複数個配列した圧力センサを備える脈波測定装置では脈波計測不能もしくは波形解析が不能となるような場合であっても、本発明にかかる脈波測定装置で上述の処理が実行されることによって、S/Nを適切に確保でき、脈波計測もしくは波形解析を可能とすることができる。
【0055】
なお、上述の脈波測定装置におけるノイズ低減方法を、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0056】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態における脈波測定装置の構成の具体例を示す図である。
【図2】 脈波の時間経過に従う変化の具体例を示す図である。
【図3】 脈波の時間経過に従う変化の具体例を示す図である。
【図4】 センサエレメントの動脈に対する位置と、センサエレメントで測定される脈波の波形との関係を示す図である。
【図5】 本実施の形態の脈波測定装置における処理を示すフローチャートである。
【図6】 ステップS119のノイズ低減処理を示すフローチャートである。
【図7】 トノメトリ方式の原理を説明する図である。
【符号の説明】
10 本体部、20 センサ部、30 血圧計、21 空気袋、22 圧脈波センサ、23 マルチプレクサ、101 CPU、102 ポンプ、103 弁、104 圧力センサ、105 アンプ、106 A/D変換器、107 表示器、108 メモリ、109 操作スイッチ、110 電源。
Claims (6)
- 動脈内圧波形を体表から検出する、複数のセンサエレメントを含む圧脈波センサと、
前記圧脈波センサで検出される脈波波形に基づいて、前記複数のセンサエレメントのうち、前記動脈の直上にあるセンサエレメントを選択する選択手段と、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号と、前記選択されたセンサエレメントの周辺の所定数のセンサエレメントからの出力信号とを加算する信号加算手段と、
前記加算された出力信号に基づいて、前記脈波の特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいて脈波の振幅値を取得する脈波振幅取得手段と、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいてノイズの振幅を検出するノイズ振幅検出手段と、
前記取得された脈波振幅値と、前記検出されたノイズ振幅とから、信号ノイズ比(S/N)を算出するS/N算出手段と、
前記特徴量を算出するために必要な所定のS/N値と、前記算出されたS/N値とに基づいて、前記加算するセンサエレメントの個数を決定する加算個数決定手段とを備える、脈波測定装置。 - 前記加算するセンサエレメントの個数に応じて、前記加算された出力信号を補正する信号補正手段をさらに備える、請求項1に記載の脈波測定装置。
- 前記特徴量は、AI(Augmentation Index)値である、請求項1または2に記載の脈波測定装置。
- 動脈内圧波形を体表から検出する、複数のセンサエレメントを含む圧脈波センサを備える脈波測定装置の制御を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記圧脈波センサで検出される脈波波形に基づいて、前記複数のセンサエレメントのうち、前記動脈の直上にあるセンサエレメントを選択する選択ステップと、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号と、前記選択されたセンサエレメントの周辺の所定数のセンサエレメントからの出力信号とを加算する信号加算ステップと、
前記加算された出力信号に基づいて、前記脈波の特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいて脈波の振幅値を取得する脈波振幅取得ステップと、
前記選択されたセンサエレメントからの出力信号に基づいてノイズの振幅を検出するノイズ振幅検出ステップと、
前記取得された脈波振幅値と、前記検出されたノイズ振幅とから、信号ノイズ比(S/N)を算出するS/N算出ステップと、
前記特徴量を算出するために必要な所定のS/N値と、前記算出されたS/N値とに基づいて、前記加算するセンサエレメントの個数を決定する加算個数決定ステップとを実行させる、脈波測定装置制御プログラム。 - 前記加算するセンサエレメントの個数に応じて、前記加算された出力信号を補正する信号補正ステップをさらに実行させる、請求項4に記載の脈波測定装置制御プログラム。
- 前記特徴量は、AI(Augmentation Index)値である、請求項4または5に記載の脈波測定装置制御プログラム。
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