JP4211050B2 - 自動車の操舵フィーリング設定装置 - Google Patents
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Description
このような電動パワーステアリング装置においては、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得るために、トーションバーやパワーアシストなどの特性をチューニングして、操舵角に対する操舵力の特性(以下「操舵力特性」という)を所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定している。
一方、本発明者らは、ドライバが、例えば、50km/h以上の高速度域において、直進状態からハンドルを切り込む場合、車速の変化に伴って操舵力特性も変化するので、操舵フィーリングが悪化するという問題を見出し、さらに、このような速度域で、操舵力特性をほぼ一定にすることにより、所望の操舵フィーリングを得ることができるという新たな課題を見い出した。
さらに、各自動車メーカにおいて、そのメーカが望ましいと考える所望の操舵フィーリングを自社の各種の自動車に適用でき、車種が異なってもほぼ同一の操舵フィーリングを設定することができれば、その所望の操舵フィーリングが、そのメーカのDNA操舵フィーリングとなり、ドライバに対し、自動車メーカの操舵フィーリングに関する良いイメージを付与することが可能となる。
上記の新たに見出した課題を解決するためには、所望の操舵フィーリングを定量化し、その定量化されたフィーリング値をハード的(機械的)に又は制御的に作り込むようにすれば良いが、そのような操舵フィーリングを定量化することは未だに試みられていない。
本発明は、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
本発明は、安全性を向上させ且つ不安感のない所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
本発明は、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化することにより所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
このように構成された本発明においては、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、車速が変化しても常に、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。その結果、本発明によれば、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化して所望の操舵フィーリングを設定することができ、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができ、さらに、安全性が向上し且つ不安感のない操舵フィーリングを提供することができる。
このように構成された本発明によれば、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速が増加することにより手応えの知覚しきい値は遅いタイミングで発生するが、強制的にその手応えの知覚しきい値を早いタイミングで発生させるようにしているので、ドライバは、車速が増加しても、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
このように構成された本発明においては、操舵速度が変化する場合も、上述した車速が変化した場合と同様に、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、操舵速度の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
このように構成された本発明においては、車両応答(Y)の発生初期の変化率から車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、これにより、応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に手応えの知覚しきい値(FA)が発生するようにしているので、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
このように構成された本発明においては、車両応答(Y)の発生初期の変化率から車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に所定の操舵力を強制的に付与して手応えの知覚しきい値(FA)が発生するようにしているので、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
このように構成された本発明によれば、車両重量及び路面状態の少なくとも一方が変化する場合も、上述した車速又は操舵速度が変化する場合と同様に、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車両重量及び路面状態の少なくとも一方の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
このように構成された本発明においては、所望の操舵フィーリングを設定するために、予め、操舵力特性設定手段が所定の目標操舵力特性を設定し、車両応答特性設定手段が所定の目標車両応答特性を設定することにより、具体的に言えば、機械的に作り込むことにより、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の少なくとも1つの変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、操舵力/車両応答の遊び感の良い操舵フィーリングを感じることができる。その結果、本発明によれば、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化して所望の操舵フィーリングを設定することができ、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができ、さらに、安全性が向上し且つ不安感のない操舵フィーリングを提供することができる。
本実施形態では、車両応答可変機構として、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置8を使用しているが、その他、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置、SBW(ステアバイワイヤ装置)、ACS(アクティブサスペンション)、SDS(スカイフックダンピングサスペンション)、BBW(ブレーキバイワイヤ)装置等を使用しても良い。
ステアリングギヤボックス12には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ18が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト10の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのものである。
この制御ユニット20は、詳細は後述するように、第1制御部(通常のアシスト制御部)22、第2制御部(センターフィール制御部)24、モータ電流制御部26、第3制御部(車両応答制御部)28から構成されており、第1制御部22、第2制御部24及びモータ電流制御部26により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための目標操舵力特性を実現するように電動モータ18が制御され、更に、第3制御部28により、車速及び操舵角等に基づき、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させると共に所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための目標車両応答特性を実現するようにステッピングモータ30(図2参照)が制御されるようになっている。
VGR装置8は、中間軸10と同一軸線上に対向配置された入力軸34を有し、この入力軸34に、中間シャフト6の回転が一体の入力ギヤ35,36を介して入力されるようになっている。
このキャリヤ42に一体的にセクタギヤ43が設けられ、このセクタギヤ43にステッピングモータ30の回転軸30aに固着されたピニオンギヤ45が噛み合されている。
この操舵力特性モデルは、操舵力を操舵角の関数モデルとして表現したものであり、この操舵力特性モデルにより、簡便かつ精度よく、所望の操舵フィーリングを設定するための目標操舵力特性を得ることができる。
先ず、操舵力特性モデルは、高車速且つほぼ直進状態の走行時に適用可能である。具体的には、高車速とは、50km/h程度以上の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hz以下の周波数でハンドルを繰り返し操作し横加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定しており、以下、このような走行状態を「センターフィール感応域」と呼ぶ。
操舵力特性モデルは、図5に示すように、ばね成分、粘性成分、及び、摩擦成分からなるモデルである。なお、本発明は、センターフィール感応域における所望の操舵フィーリングを設定するためのものであるため、ハンドルは、上述したようにゆっくりと操舵される(0.2Hzの周波数)ため、慣性成分は含まないモデルとなっている。
このように、ばね成分は、操舵角を含む非線形の関数で表されるものと定義される。
このように、摩擦成分は、操舵角速度を含む非線形関数として定義される。
目標車両応答特性を設定するために、ヨーレートrを所望の特性になるように制御するのであれば(横Gは制御対象としない)、ヨーレートrを目標に一致させるような制御入力δfを設定すれば良いし、また、横Gを所望の特性になるように制御するのであれば(ヨーレートは制御対象としない)、横すべり角βを目標に一致させるような制御入力δfを設定すれば良い。ここで、4WSを採用する場合には、ヨーレートと横Gを同時に制御することができる。
また、本実施形態の自動車の操舵フィーリング設定装置は、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのトルクセンサ50、横加速度(横G)を検出する横Gセンサ52、車速を検出する車速センサ54、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ56、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ58、車両重量を検出する車両重量センサ60、路面状態又は路面摩擦係数を検出する路面μセンサ62を備えており、これらの各センサの出力値が制御ユニット20に入力されるようになっている。
このようにして演算された電動モータ18に供給される目標電流Iは、以下の式(数7)により表される。
また、遷移領域IIは、自動車の走行状態がセンターフィール領域から非センターフィール感応域に変化する際に適用される領域である。この遷移領域IIにおいて、補正係数αは、1→0に変化し、補正係数βは、0→1に変化する。
出力信号発生部76は、センターフィール感応域において、所望の操舵フィーリングを得るために、目標車両応答演算部74で演算された伝達比Rに基づく駆動信号をステッピングモータ30に出力し、その結果、所望の車輪舵角θwが得られるようになっている。
なお、非センターフィール感応域では、図9に示すように、伝達比Rは、車速が大きくなるに従って高くなるように設定されている。
本実施形態によれば、この7つの指標又は各指標により、所望の操舵フィーリングを定量化するようにしたので、「車速」、「操舵速度」、「車両重量」及び/又は「路面状態」の変化に関わらず、ほぼ一定の所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を制御的又は機械的に設定することが可能となる。
なお、この所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)は、上述したセンターフィール感応域に適用するのが好ましく、一方、旋回中(非センターフィール感応域)における操舵フィーリングは、センターフィール感応域とは異なり、同じ操舵フィーリングではなく、車種固有の特性(操舵フィーリング)を持たせることが好ましい。
具体的には、目標操舵力特性を実現するように上記操舵力特性モデルの各成分のパラメータの値を設定すると共に、目標車両応答特性を実現するように車両応答可変機構の伝達比Rを設定する。
このようにして、本実施形態では、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性となるように電動モータ18及びステッピングモータ30が制御され、その結果、センターフィール感応域において、ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両応答との関係が予め設定した一定の関係となるようにして、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定することができる。
図10に示すように、先ず、S1において、各センサ値を入力する。具体的には、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ54、操舵角センサ56、ヨーレートセンサ58、車両重量センサ60、路面μセンサ62により検出されたトルク、横加速度(横G)、車速、操舵角、ヨーレート、車両重量、路面状態(路面摩擦係数)である。
「操舵力/車両応答の遊び感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの手応えを感じ、その後、車両応答を感じるときの操舵フィーリングを意味している。ドライバがハンドルの手応えを感じるタイミングと、車両応答を感じるタイミングに適切な関係があれば、ドライバは、ハンドルを無駄なく切っていると感じるので、操舵力/車両応答の遊び感の良い、良好な操舵フィーリングとなる。
一方、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、ハンドルを切った手応えを感じているのに車両が動き出さないように感じたり、ハンドルを切った感触がなくても車両が動き出すように感じたりすると、操舵力/車両応答の遊び感が悪い即ちハンドルを無駄に切っていると感じることになる。ドライバは、このような場合に、ハンドルを操作しても車両がそれに応答してくれないと感じるので、狙ったコースを走行できずにコーナーで車線を逸脱したり、ハンドルの切り過ぎなどの不適切な操作を生じる要因となる。
図11に示すように、ドライバが直進状態から操舵を開始すると、まず操舵力Fが立上がり、次に操舵角θが遅れて立上がり、続いてヨーレートYが立ち上がる。なお、操舵角θが操舵力Fより遅れて立ち上がるのは、ステアリング装置のフリクション等の影響であり、ヨーレートYがさらに遅れて立ち上がるのは、タイヤのたわみ等の影響に起因する。
本実施形態では、このような「操舵力/車両応答の遊び感」を達成できるように、図11に示す操舵力F及びヨーレートYを、上述した図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74により算出している。
このように、本実施形態では、「操舵力(手応え)の不感帯の大きさθA」、「手応えの知覚しきい値」、「車両応答の知覚しきい値」及び「応答遅れ時間(TD)」を所定の範囲又は値(θA=0.8〜1.2deg、手応えの知覚しきい値=6N、車両応答の知覚しきい値=0.4deg/s及びtD=0.15〜0.20s(=TD))に設定することにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標である操舵力/車両応答の遊び感を定量化している。
図12において、F,θ,Yは、それぞれ、図11に示したベースの車速における操舵力、操舵角、ヨーレートを示している。図12において、操舵力F、操舵角θ、ヨーレートY、時間tにおける添字「1」は、本実施形態による制御前を示し、添字「2」は制御後を示している。
具体的には、図12に示すように、操舵力が全体的に増加するような操舵力F2にして、それにより、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)を時間tA1からtA2へと早めている。このとき、操舵力(手応え)の不感帯の大きさが、0.8〜1.2degの範囲内となるようにする。さらに、ヨーレートを少しだけ減少させて、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)を、時間tB1から時間tB2へと遅くする。このように、目標操舵力特性及び目標車両応答特性の両方を制御することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA2)及び応答遅れ時間(tD2=tB2−tA2)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、車速が増大しても、同様な所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
また、車速が低下した場合には、車速が増大する場合とは逆に、操舵力は増加し、一方、ヨーレートは減少するので、同様に、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ及び応答遅れ時間が一定となるようにすれば良い。
図13において、F、θ、Yは、それぞれ、図11に示したベースの車速における操舵力、操舵角、ヨーレートを示し、操舵力F、操舵角θ、ヨーレートY、時間tにおける添字「1」は、本実施形態による制御前を示し、添字「2」は制御後を示している。
具体的には、図13に示すように、操舵力が全体的に減少するような操舵力F2にして、それにより、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)を時間tA1からtA2へと遅くしている。このとき、操舵力(手応え)の不感帯の大きさが、0.8〜1.2degの範囲内となるようにする。さらに、ヨーレートを少しだけ増加させて、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)を、時間tB1から時間tB2へと早めている。このように、目標操舵力特性及び目標車両応答特性の両方を制御することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA2)及び応答遅れ時間(tD2=tB2−tA2)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、操舵速度が増大しても、同様な所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
また、操舵速度が低下した場合には、操舵速度が増大する場合とは逆に、操舵力は減少し、一方、ヨーレートはそれよりも遅れたタイミングで減少するので、同様に、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ及び応答遅れ時間が一定となるようにすれば良い。
先ず、S1において、ハンドルの操舵角θ(deg)を入力し、次に、S2に進み、操舵角θから操舵速度θ’(deg/s)を演算する。次に、S3において、ヨーレートY(deg/s)を入力し、S4に進み、ヨーレートYからヨー加速度Y’(deg/s2)を演算する。
S7において操舵角がこの範囲内でないと判定された場合には、S8に進み、操舵角θAが0.8deg未満であるか否かを判定する。操舵角θAが0.8deg未満である場合にはS9に進み、操舵角θが0.8degとなる時間をtAとし、一方、操舵角θAが1.2degを越える場合には、S10に進み、操舵角θが1.2degとなる時間をtAとする。S9とS10の後、S11に進み、時間tAから応答遅れ時間TD(0.15乃至0.20s)後の時間において、ヨーレートYが0.4deg/sとなるように、図11に示すベースの目標車両応答特性を補正する(図7参照)。
また、時間tAの操舵角θAが操舵角0.8乃至1.2degの範囲外となった場合においても、車両応答はの制御量(補正量)は少ない方が望ましいので、操舵角θAが0.8deg未満である場合には、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθAの所定範囲(=0.8乃至1.2deg)の下限値である操舵角θ=0.8degとなる時間をtAとし、操舵角θAが1.2degを越える場合には、その所定範囲(=0.8乃至1.2deg)の上限値である操舵角θ=1.2degとなる時間をtAとすることで、目標車両応答特性の制御量がなるべく小さくなるようにしている。
このように、本実施形態では、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθA及び応答遅れ時間(tD=tB−tA)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、「操舵力/車両応答の遊び感」に関し、同様な(一定の)所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
「剛性感」は、「たわまない感じ」と「硬い感じ」の2つの指標を持ち、ドライバが直進状態からハンドルを切り込んだときに、たわまない感じを受け、ある硬さを感じることにより、車両が遅れずに応答していると感じる操舵フィーリングである。換言すれば、「剛性感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込んだとき、ハンドルからタイヤまで途中に介在物がなく、ハンドルからタイヤまでダイレクトにつながっているように感じる操舵フィーリングである。
一方、直進状態からハンドルを切り込んだときに、ドライバが受けるハンドルの手応えと車両応答のバランスが良い、即ち、「剛性感」が良好であると、ドライバは、たわまずにダイレクトにハンドルを操作していると感じることができ、その結果、安全性が向上し、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
ここで、本実施形態においても、ハンドルの手応えを感じるのは操舵力が6N、車両応答を感じるのはヨーレートが0.4deg/s、ハンドルの手応えを感じる操舵角である操舵力(手応え)の不感帯の大きさを操舵角(θA=0.8〜1.2deg)、車両応答を感じる操舵角である車両応答の不感帯の大きさを操舵角(θB=4.0〜5.0deg)に設定することにより、ドライバが良好な「剛性感(たわまない感じ)」を感じるとしているのである。
本実施形態では、このような「剛性感(たわまない感じ)」を達成できるように、図11に示す操舵力F及びヨーレートYを、上述した図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74により算出している。
具体的には、図11に示すように、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、操舵力F(=FA)が6N(手応えの知覚しきい値)を越えたときの操舵角θ(=θA)即ち操舵力の不感帯の大きさは、0.8〜1.2degの範囲内となっている。次に、ヨーレートY(=YB)が0.4deg/s(車両応答の知覚しきい値)を越えたときの操舵角θ(=θB)即ち車両応答の不感帯の大きさが4.0〜5.0degとなっている。本実施形態では、この操舵力(手応え)の不感帯の大きさである操舵角θAの値、及び、車両応答の不感帯の大きさである操舵角θBの値を、車両の速度、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、常に、一定の値(一定の範囲でも良い)に設定している。
本実施形態では、この操舵力(手応え)の不感帯である操舵角θAの値、及び、車両応答の不感帯である操舵角θBの値を、車両の速度、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、常に、一定の値(一定の範囲でも良い)に設定することにより、「剛性感」の「たわまない感じ」を持つ所望の操舵フィーリングを設定することできる。
図15に示すように、車両応答である横加速度(横G)が0.1GとなるC点において、操舵力は、操舵力F0.1Gとなり、このC点から、横Gが0.2GとなるD点までの操舵力の増加量は、操舵力増加量ΔF0.1-0.2Gとなる。さらに、この操舵力F0.1Gの値は、上述した手応えの知覚しきい値(6N)よりも、大きな値(=12〜13N)に設定し、操舵力増加量ΔF0.1-0.2Gの値は、操舵力F0.1Gの値よりも小さい値(=3〜4N)に設定している。
なお、車両応答の大きさの基準として、横Gではなく、ヨーレートを用いても良い。
「ばね感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後ハンドルを戻すとき、ハンドル自身の戻ろうとする力によりハンドルが戻されるときに感じる操舵フィーリングである。
例えば、ドライバがハンドルを戻そうとしてハンドルにかけていた力を抜いたとき、ハンドル自身の戻ろうとする力が大きいと、ドライバが操舵力の変化を感じるまでに、ハンドルが大きく戻され(操舵角の戻り量が大きい)、ドライバは、戻される感じ(ばね感)が大きいと感じる。一方、ドライバがハンドルを戻そうとするとき、ハンドル自身の戻ろうとする力によるハンドルが戻される感じとドライバ自身が期待する操舵角の戻り量が適切にバランスしていると、ドライバは、自己が期待する操舵角の戻り量と、ハンドルから受ける戻される感じが一致し、ばね感が良好であると感じる。
また、最大操舵角が変化しても、最大操舵角に対する戻り量である所定の操舵角値の比である操舵角戻り比は、一定の比(10〜20%)であることが望ましい。
本実施形態によれば、操舵力と操舵角との関係は、図16に示すようになり、操舵角θがE点において最大となり、このE点において操舵力FE及び操舵角θEとなり、さらに、操舵力FEが所定の操舵力値である6Nだけ減少したF点において、操舵力FF及び操舵角をθFとなる。
また、本実施形態では、最大操舵角が変化しても、最大操舵角に対する戻り量である所定の操舵角値の比である操舵角戻り比(Δθ/θE)は、一定の比(10〜20%)としている。
上述したように、ドライバが感じる操舵力変化の最小値が6Nであるので、ドライバは、最大操舵角の舵角位置から操舵力が6N減少する位置ではじめて操舵力変化を感じるので、このとき操舵角の減少量が、ドライバの期待した減少量であれば、良好な「ばね感」をドライバは感じることができる。それゆえ、本実施形態では、操舵角の減少量を、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態に関係なく、一定としているので、ドライバは、良好な「ばね感」を感じることができる。
「切り込み時の抜け感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、操舵力が抜けるように感じる操舵フィーリングである。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の操舵力増加割合)/(オンセンタ領域の操舵力増加割合)である操舵力増加割合比が、0.3〜0.5となるように設定している。
本実施形態によれば、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、操舵力増加割合比をこのように所定の比率の範囲に設定することにより、「切り込み時の抜け感」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
「戻し時の抜け感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、操舵力が抜けるように感じる操舵フィーリングである。
具体的には、ドライバが直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始から操舵力は減少し、操舵力が所定値以下となったとき、操舵力の減少の割合をそれ以前よりも大きくするようにしているが、その操舵力の減少の割合を大きくしすぎると、ドライバはハンドルをすでに十分なだけ戻したと感じてハンドルを戻すのが遅れたり、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、この操舵力の減少の割合の大きさが適切であれば、操舵力が抜ける感じが良好となり、良好なハンドル操舵を行うことができる。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の操舵力減少割合)/(オンセンタ領域の操舵力減少割合)である操舵力減少割合比が、0.5〜0.7となるように設定している。
「車両応答の伸び」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、操舵力の増加に伴ってヨーレート等の車両応答が増加するときに感じる操舵フィーリングである。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の車両応答増加割合)/(オンセンタ領域の車両応答増加割合)である車両応答増加割合比が、2.0〜5.0となるように設定している。
ここで、本実施形態では、オンセンタ領域とオフセンタ領域との境界である所定の操舵力(図19のG点)の値を9Nとし、「抜け感(切り込み)」における所定の操舵力(図17のG点)の値(9N)と同じ値としている。これにより、ドライバは、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、「抜け感(切り込み)」と同じタイミングで、「車両応答の伸び」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。なお、本実施形態では、図17のG点と図19のG点とを異なるタイミングとなるように設定しても良い。
なお、図19では、車両応答として、ヨーレートの値を使用しているが、横加速度(横G)を使用しても良い。
「車両応答の追従性」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始時から操舵力は減少するが車両応答が増加するとき、及び、次に操舵力の減少に伴って車両応答が減少するときに感じる操舵フィーリングである。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の車両応答減少割合)/(オンセンタ領域の車両応答減少割合)である車両応答減少割合比が、1.5〜2.5となるように設定している。
ここで、本実施形態では、オンセンタ領域とオフセンタ領域との境界である所定の操舵力(図20のH点)の値を6Nとし、「抜け感(戻し)」における所定の操舵力(図18のH点)の値(6N)と同じ値としている。これにより、ドライバは、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、「抜け感(戻し)」と同じタイミングで、「車両応答の追従性」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。なお、本実施形態では、図18のH点と図20のH点とを異なるタイミングとなるように設定しても良い。
なお、図20では、車両応答として、ヨーレートの値を使用しているが、横加速度(横G)を使用しても良い。
具体的には、目標操舵力特性を設定する際には、電動パワーステアリング装置の制御特性を設定し、さらに、目標車両応答特性を設定する際には、VGR装置の伝達比Rを所望値に設定し、さらに、タイヤ特性及び車輪のサスペンション装置のアライメント変化特性を所望値に設定するようにすれば良い。
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
8 VGR装置
16 タイヤ(車輪)
18 電動モータ
20 制御ユニット
22 第1制御部(通常のアシスト制御部)
24 第2制御部(センターフィール制御部)
26 モータ電流制御部
28 第3制御部(車両応答制御部)
30 ステッピングモータ
50 トルクセンサ
52 横Gセンサ
54 車速センサ
56 操舵角センサ
58 ヨーレートセンサ
60 車両重量センサ
62 路面μセンサ
66 目標操舵力演算部
74 目標車両応答演算部
76 出力信号発生部
78 モータ回転角センサ
Claims (7)
- 操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、
車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、
所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、
上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、少なくとも上記操舵力特性制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。 - 上記操舵フィーリング設定手段は、上記操舵力特性制御手段を制御することにより、車速が増加するほど上記手応えの知覚しきい値を早いタイミングで発生させる請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
- 上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、操舵速度の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、少なくとも上記操舵力特性制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御し、さらに、上記操舵フィーリング設定手段は、操舵速度が増加するほど上記手応えの知覚しきい値(FA)を遅いタイミングで発生させるように、上記車両応答特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
- 上記操舵フィーリング設定手段は、上記車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して上記車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも上記応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に上記手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、上記操舵力特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
- 上記操舵フィーリング設定手段は、上記車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して上記車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも上記応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に所定の操舵力を強制的に付与して上記手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、上記操舵力特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
- 操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、
車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、
所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、
上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車両重量及び路面状態の少なくとも一方の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、上記操舵力制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。 - 所望の操舵フィーリングを設定する自動車の操舵フィーリング設定装置であって、所定の目標操舵力特性を設定する操舵力特性設定手段と、所定の目標車両応答特性を設定する車両応答特性設定手段と、を有し、これらの操舵力特性設定手段及び車両応答特性設定手段は、上記目標操舵力特性及び目標車両応答特性を、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の少なくとも1つの変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように設定していることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。
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