JP4211050B2 - 自動車の操舵フィーリング設定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の操舵フィーリング設定装置に係わり、特に、操舵力特性及び車両応答特性を所望の操舵フィーリングに設定する自動車の操舵フィーリング設定装置に関する。
最近、例えば、特開平8−332964号公報等に示されているような、電動機の動力をステアリング系に作用させて操作力の低減を図るようにした電動パワーステアリング装置が使用されるようになってきている。この電動パワーステアリング装置は、操舵力検出手段を備え、この操舵力検出手段により運転者の操舵力(操舵トルク)を検出すると共に、同時に車速に基づき所定補正トルクを発生させるように電動機への駆動電流を制御し、運転者の操舵力の軽減を図っている。
このような電動パワーステアリング装置においては、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得るために、トーションバーやパワーアシストなどの特性をチューニングして、操舵角に対する操舵力の特性(以下「操舵力特性」という)を所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定している。
特開平8−332964号公報
しかしながら、従来の電動パワーステアリング装置は、車種毎に、設計者が望ましいと考えている所望の操舵力特性となるように作り込まれたものであるが、車速が変化した場合には、車両の持つ固有の特性から操舵力特性も変化するため、限られた運転状態のときのみ所望の操舵力特性を奏するものであった。
一方、本発明者らは、ドライバが、例えば、50km/h以上の高速度域において、直進状態からハンドルを切り込む場合、車速の変化に伴って操舵力特性も変化するので、操舵フィーリングが悪化するという問題を見出し、さらに、このような速度域で、操舵力特性をほぼ一定にすることにより、所望の操舵フィーリングを得ることができるという新たな課題を見い出した。
また、操舵速度、車両重量、又は、路面状態等が変化しても、同様に、操舵力特性をほぼ一定にすることができれば、所望の操舵フィーリングを得ることができるという課題も見い出した。
さらに、各自動車メーカにおいて、そのメーカが望ましいと考える所望の操舵フィーリングを自社の各種の自動車に適用でき、車種が異なってもほぼ同一の操舵フィーリングを設定することができれば、その所望の操舵フィーリングが、そのメーカのDNA操舵フィーリングとなり、ドライバに対し、自動車メーカの操舵フィーリングに関する良いイメージを付与することが可能となる。
上記の新たに見出した課題を解決するためには、所望の操舵フィーリングを定量化し、その定量化されたフィーリング値をハード的(機械的)に又は制御的に作り込むようにすれば良いが、そのような操舵フィーリングを定量化することは未だに試みられていない。
そこで、本発明は、上述した新たな課題を解決するためになされたものであり、所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
本発明は、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
本発明は、安全性を向上させ且つ不安感のない所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
本発明は、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化することにより所望の操舵フィーリングを設定することができる自動車の操舵フィーリング設定装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の自動車の操舵フィーリング設定装置は、操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、操舵力制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、車速が変化しても常に、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。その結果、本発明によれば、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化して所望の操舵フィーリングを設定することができ、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができ、さらに、安全性が向上し且つ不安感のない操舵フィーリングを提供することができる。
本発明において、好ましくは、操舵フィーリング設定手段は、操舵力特性制御手段を制御することにより、車速が増加するほど手応えの知覚しきい値を早いタイミングで発生させる。
このように構成された本発明によれば、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速が増加することにより手応えの知覚しきい値は遅いタイミングで発生するが、強制的にその手応えの知覚しきい値を早いタイミングで発生させるようにしているので、ドライバは、車速が増加しても、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
本発明において、好ましくは、操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、操舵速度の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、操舵力制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御し、さらに、操舵フィーリング設定手段は、操舵速度が増加するほど手応えの知覚しきい値(FA)を遅いタイミングで発生させるように、車両応答特性制御手段を制御する。
このように構成された本発明においては、操舵速度が変化する場合も、上述した車速が変化した場合と同様に、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、操舵速度の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
本発明において、好ましくは、操舵フィーリング設定手段は、車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、操舵力特性制御手段を制御する。
このように構成された本発明においては、車両応答(Y)の発生初期の変化率から車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、これにより、応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に手応えの知覚しきい値(FA)が発生するようにしているので、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
本発明において、好ましくは、操舵フィーリング設定手段は、車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して上記車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に所定の操舵力を強制的に付与して手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、操舵力特性制御手段を制御する。
このように構成された本発明においては、車両応答(Y)の発生初期の変化率から車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に所定の操舵力を強制的に付与して手応えの知覚しきい値(FA)が発生するようにしているので、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
本発明の自動車の操舵フィーリング設定装置は、操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車両重量及び路面μの少なくとも一方の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、操舵力制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、車両重量及び路面状態の少なくとも一方が変化する場合も、上述した車速又は操舵速度が変化する場合と同様に、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車両重量及び路面状態の少なくとも一方の変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、「操舵力/車両応答の遊び感」の良い操舵フィーリングを感じることができる。
本発明は、所望の操舵フィーリングを設定する自動車の操舵フィーリング設定装置であって、所定の目標操舵力特性を設定する操舵力特性設定手段と、所定の目標車両応答特性を設定する車両応答特性設定手段と、を有し、これらの操舵力特性設定手段及び車両応答特性設定手段は、目標操舵力特性及び目標車両応答特性を、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の少なくとも1つの変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように設定していることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、所望の操舵フィーリングを設定するために、予め、操舵力特性設定手段が所定の目標操舵力特性を設定し、車両応答特性設定手段が所定の目標車両応答特性を設定することにより、具体的に言えば、機械的に作り込むことにより、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の少なくとも1つの変化に関係なく常に、ドライバは、操舵力を感じた後の所定の応答遅れ時間(TD)に車両応答を感じるので、操舵力を感じるタイミングと車両応答を感じるタイミングが常に適切な関係となり、ドライバは、操舵力/車両応答の遊び感の良い操舵フィーリングを感じることができる。その結果、本発明によれば、操舵フィーリングを「操舵力/車両応答の遊び感」により定量化して所望の操舵フィーリングを設定することができ、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができ、さらに、安全性が向上し且つ不安感のない操舵フィーリングを提供することができる。
本発明の自動車の操舵フィーリング設定装置によれば、所望の操舵フィーリングを設定することができ、特に、車種が異なっても、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定することができ、また、安全性を向上させ且つ不安感のない所望の操舵フィーリングを設定することができ、さらに、操舵フィーリングを定量化することにより所望の操舵フィーリングを設定することができる。
図1は、本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。図1に示すように、自動車の電動パワーステアリング装置1は、ハンドル(ステアリングホィール)2を備え、このハンドル2は、ステアリングシャフト4の上端に連結されており、ハンドル2を操作する操舵力がステアリングシャフト4に伝達されるようになっている。このステアリングシャフト4の下端部には自在継手を介して中間シャフト6の上端が連結され、この中間シャフト6の下端部には車両応答可変機構であるVGR装置8が連結され、ハンドル舵角に対する前輪操舵の伝達比を変化させることができるようになっている。このVGR装置8の下端部には、中間シャフト10が連結され、この中間シャフト10の下端部には、ステアリングギヤボックス12が設けられている。このステアリングギヤボックス12の両側にはタイロッド14が連結されており、これらの各タイロッド14にはタイヤ(車輪)16が取り付けられている。
本実施形態では、車両応答可変機構として、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置8を使用しているが、その他、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置、SBW(ステアバイワイヤ装置)、ACS(アクティブサスペンション)、SDS(スカイフックダンピングサスペンション)、BBW(ブレーキバイワイヤ)装置等を使用しても良い。
上述したステアリングギヤボックス12の内部には、ラック・ピニオン機構(図示せず)が設けられており、このピニオンには、中間シャフト10の下端が連結されている。一方、ラックの両側部には上述したようにタイロッド14を介してタイヤ16が連結されている。
ステアリングギヤボックス12には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ18が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト10の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのものである。
これらのVGR装置8、電動モータ18及びトルクセンサは、それぞれ制御ユニット20に接続されている。
この制御ユニット20は、詳細は後述するように、第1制御部(通常のアシスト制御部)22、第2制御部(センターフィール制御部)24、モータ電流制御部26、第3制御部(車両応答制御部)28から構成されており、第1制御部22、第2制御部24及びモータ電流制御部26により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための目標操舵力特性を実現するように電動モータ18が制御され、更に、第3制御部28により、車速及び操舵角等に基づき、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させると共に所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための目標車両応答特性を実現するようにステッピングモータ30(図2参照)が制御されるようになっている。
次に、図2乃至図4により、車両応答可変機構であるVGR装置8を説明する。このVGR装置8は、ハンドル2の操舵角(θ)と車輪16の車輪舵角(θw)の比(伝達比:R=θ/θw)を変化させるためのものである。
VGR装置8は、中間軸10と同一軸線上に対向配置された入力軸34を有し、この入力軸34に、中間シャフト6の回転が一体の入力ギヤ35,36を介して入力されるようになっている。
この入力軸34と中間軸10との間には遊星歯車機構37が設けられており、この遊星歯車機構37は、入力軸34上に固着されたサンギヤ38と、このサンギヤ38上に配置された複数のピニオンギヤ39と、これらのピニオンギヤ39の外側に配置され且つ中間軸10に固着されたリングギヤ40と、入力軸34上に相対回転自在に嵌合支持されて、ピニオンシャフト41を介して各ピニオンギヤ39を支持するキャリヤ42とで構成されている。
このキャリヤ42に一体的にセクタギヤ43が設けられ、このセクタギヤ43にステッピングモータ30の回転軸30aに固着されたピニオンギヤ45が噛み合されている。
ハンドル2の操舵時に、ステッピングモータ30が制御ユニット20からの出力信号に応じて回転駆動されることにより、遊星歯車機構37においてはサンギヤ38が操舵角θに対応する量だけ回転されると同時に、キャリヤ42がステッピングモータ30の回転に応じて回転され、これにより車輪舵角θwに対応するリングギヤ40ないし中間軸10の回転量が増減されて、車輪舵角θwに対する操舵角θの伝達比Rが可変制御されるようになっている。
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の自動車の操舵フィーリング設定装置に適用される操舵力特性モデルを説明する。
この操舵力特性モデルは、操舵力を操舵角の関数モデルとして表現したものであり、この操舵力特性モデルにより、簡便かつ精度よく、所望の操舵フィーリングを設定するための目標操舵力特性を得ることができる。
先ず、操舵力特性モデルは、高車速且つほぼ直進状態の走行時に適用可能である。具体的には、高車速とは、50km/h程度以上の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hz以下の周波数でハンドルを繰り返し操作し横加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定しており、以下、このような走行状態を「センターフィール感応域」と呼ぶ。
このような高速直進時の操舵力特性を、ばね成分(操舵角を含む非線形の関数で表される)、粘性成分(操舵角速度に比例する)、摩擦成分(操舵角速度を含む非線形関数で表される)とに分解することにより、操舵力特性モデル(操舵力を操舵角の関数モデルとして表現したもの)を設定した。
次に、図5及び図6により、操舵力特性モデルの内容を詳細に説明する。図5は、操舵力特性モデルを示す図であり、図6は、この操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。
操舵力特性モデルは、図5に示すように、ばね成分、粘性成分、及び、摩擦成分からなるモデルである。なお、本発明は、センターフィール感応域における所望の操舵フィーリングを設定するためのものであるため、ハンドルは、上述したようにゆっくりと操舵される(0.2Hzの周波数)ため、慣性成分は含まないモデルとなっている。
ばね成分は、以下の式(数1)に示す指数関数として設定する。この式(数1)において、θは操舵角であり、Kp及びTpは、ばね成分の特性パラメータである。ばね成分は、基本的には、操舵角にほぼ比例するが、所定の操舵角以上となると飽和状態となるため、特性パラメータKpはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTpは、指数関数の時定数を示している。このように、ばね成分を示す式(数1)は、非線形関数となっている。
このように、ばね成分は、操舵角を含む非線形の関数で表されるものと定義される。
Figure 0004211050
粘性成分は、操舵角速度に比例した力であり、以下の式(数2)により示されている。この式(数2)において、Kdは、粘性成分の特性パラメータである。このように粘性成分は、操舵角速度に比例するものとして定義される。
Figure 0004211050
摩擦成分は、操舵角速度が小さいときは操舵角速度にほぼ比例した力であり、操舵角速度が大きくなると一定の大きさの摩擦力(飽和状態)となる。この摩擦成分は、以下の式(数3)に示す指数関数として設定する。この式(数3)において、Kf及びTfが摩擦成分の特性パラメータである。特性パラメータKfはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTfは、指数関数の時定数を示している。このように、ばね成分を示す式(数3)は、非線形関数となっている。
このように、摩擦成分は、操舵角速度を含む非線形関数として定義される。
Figure 0004211050
このようにして、操舵力特性モデルにおいて、ばね成分、粘性成分、摩擦成分が設定され、操舵力(操舵トルク)はこれらの各成分の合計値として設定される。即ち、操舵力特性モデルは、以下の式(数4)となる。
Figure 0004211050
次に、本実施形態の自動車の操舵フィーリング設定装置は、以下に示す車両の運動方程式である(数5)及び(数6)の連立方程式を解くことにより、目標車両応答特性を設定(算出)するようにしている。
Figure 0004211050

Figure 0004211050
ただし、mは車両質量、Vは車速、Iは車両のヨー慣性モーメント、lfは車両重心から前車軸までの距離、lrは車両重心から後車軸までの距離、βは車両重心位置での横すべり角、rはヨーレート、Kfは前輪のコーナリングパワー、Krは後輪のコーナリングパワー、δfは前輪の車輪舵角(=ハンドル操舵角θ/VGRの伝達比R=前輪の車輪舵角θw)、δrは後輪の車輪舵角(ただし、4WSの場合のみであり、2WSではδr=0となる)である。
目標車両応答特性を設定するために、ヨーレートrを所望の特性になるように制御するのであれば(横Gは制御対象としない)、ヨーレートrを目標に一致させるような制御入力δfを設定すれば良いし、また、横Gを所望の特性になるように制御するのであれば(ヨーレートは制御対象としない)、横すべり角βを目標に一致させるような制御入力δfを設定すれば良い。ここで、4WSを採用する場合には、ヨーレートと横Gを同時に制御することができる。
図7は、本実施形態による自動車の操舵フィーリング設定装置の制御ユニットを示すブロック図である。この図7に示すように、制御ユニット20は、第1制御部(通常のアシスト制御部)22、第2制御部(センターフィール制御部)24、モータ電流制御部26及び第3制御部(車両応答制御部)28から構成されている。
また、本実施形態の自動車の操舵フィーリング設定装置は、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのトルクセンサ50、横加速度(横G)を検出する横Gセンサ52、車速を検出する車速センサ54、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ56、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ58、車両重量を検出する車両重量センサ60、路面状態又は路面摩擦係数を検出する路面μセンサ62を備えており、これらの各センサの出力値が制御ユニット20に入力されるようになっている。
第1制御部22は、通常のアシスト制御を行なう制御部であり、トルクセンサ50の出力値を小さくするように、即ち、操舵力を軽減する方向のアシスト力を発生させるように、電動モータ18を制御するための制御部である。この第1制御部22には、トルクセンサ50からのトルクセンサ値が入力され、フィルタ64によりノイズがカットされ、制御ゲインK1により基準目標電流I0が演算されるようになっている。この第1制御部の制御ゲインK1は、後述するように、横Gセンサ52及び車速センサ54の値に基づいて設定され(図8参照)、その結果、第1制御部による制御は、センタフィール感応域では、抑制又は禁止されるようになっている。
第2制御部24は、センターフィール補償制御部であり、センターフィール感応域(上述したように50km/h以上の高車速で、例えば、0.2Hzの正弦波で横Gが0.2G以下の走行時)に、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得るために設定した目標操舵力となるように電動モータ18を制御するための制御部である。
第2制御部24は、目標操舵力演算部66を有し、この目標操舵力演算部66には、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ54、操舵角センサ56、ヨーレートセンサ58、車両重量センサ60、路面μセンサ62の出力値が入力される。目標操舵力演算部66は、上述した操舵角により表現された操舵力特性モデルを用いて、これらの各センサからの出力値から、その操舵力特性モデルの各成分の特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf、Tf)の値を設定し、目標操舵力特性を実現することにより、所望の操舵フィーリングを得るようになっている。
第2制御部24は、ローパスフィルタであるフィルタ68を有し、フィルタ68により、センターフィール感応域に対応した帯域(例えば、0.2Hzを含む帯域)のトルクセンサ50の値のみを入手できるようになっている。
次に、目標操舵力演算部66で算出された目標操舵力とフィルタ処理されたトルクセンサ値である実操舵力(Ts2)との偏差が制御ゲインK3により物理量変換される。ここで、この制御ゲインK3は、後述するように、横Gセンサ52及び車速センサ54の値に基づいて設定され、その結果、第2制御部による制御は、非センターフィール感応域では、抑制又は禁止されるようになっている(図8参照)。
次に、第1制御部22から出力された基準目標電流I0と補償目標電流Ifとが加算され、目標電流Iが算出される。具体的には、符号を、操舵力を減少させるためにアシスト力を増大する場合には(+)、操舵力を増大させるためにアシスト力を減少させる場合には(−)としているため、基準目標電流I0に対して補償目標電流Ifを減算する演算が行なわれる。
モータ電流制御部26は、電動モータ18に供給される電流が目標電流Iとなるようにするためのフィードバック制御を行なうための制御部である。このため、モータ電流制御部26は、制御ゲインK2、比例積分制御を行なうPI制御部70、モータ特性補償部72を有している。
このようにして演算された電動モータ18に供給される目標電流Iは、以下の式(数7)により表される。
Figure 0004211050
ここで、式(数7)において、(I)は目標電流、(Ts1)はフィルタ64を通ったトルクセンサ値、(K1)は第1制御部の制御ゲイン、(f(θ))は式(数4)により表現された操舵力特性モデル出力、(Ts2)はフィルタ68を通ったトルクセンサ値、(K3)は第2制御部の制御ゲインである。
次に図8は、第1制御部及び第2制御部の比例ゲインの補正マップである。図8に示された補正マップは、センターフィール感応域、遷移領域I、遷移領域II、非センターフィール感応域の4つの領域を有し、それぞれの領域において、制御ゲインK1(K1=K1*β),K3(K3=K3*α)の値が補正されるようになっている。ここで、α及びβは補正係数であり、0〜1の範囲で変化する。
先ず、センタフィール感応域においては、補正係数は、α=1、β=0と設定される。このため、第1制御部の制御ゲインK1は0となり、第1制御部による電動モータの電流制御は禁止される。一方、第2制御部の制御ゲインK3はそのまま使用されるので、第2制御部24により、上述した操舵力特性モデルに基づいて予め設定された目標操舵力が発生するように、補償電流Ifが設定される。この結果、センターフィール感応域においては、所望の操舵力特性が得られ、操安性能が向上する。また、第1制御部22と第2制御部24が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
次に、非センターフィール感応域においては、補正係数は、α=0、β=1と設定される。このため、第2制御部の制御ゲインK3は0となり、第2制御部による電動モータの電流制御は禁止される。一方、第1制御部の制御ゲインK1はそのまま使用されるので、第1制御部22により、トルクセンサ値が小さくなるように基準目標電流I0が設定される。この結果、非センターフィール感応域においては、通常のアシスト制御が行なわれ、ステアリングの取り回し性能が向上する。また、第1制御部22と第2制御部24が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
次に、遷移領域Iは、自動車の走行状態が非センターフィール領域からセンターフィール感応域に変化する際に適用される領域である。この遷移領域Iにおいて、補正係数αは、0→1に変化し、補正係数βは、1→0に変化する。
また、遷移領域IIは、自動車の走行状態がセンターフィール領域から非センターフィール感応域に変化する際に適用される領域である。この遷移領域IIにおいて、補正係数αは、1→0に変化し、補正係数βは、0→1に変化する。
これらの遷移領域I,IIにおいては、第1制御部において補正された制御ゲインK1に基づき基準目標電流I0が設定され、第2制御部において補正された制御ゲインK3に基づき補償電流Ifが設定され、これらの電流が加算され、目標電流Iが算出される。この結果、これらの遷移領域I,II においては、通常のアシスト制御を行なうと共に併せて目標操舵力を得ることができ、これにより、操安性能が向上する。また、自動車の走行状態が、非センターフィール領域とセンターフィール感応域との間を移行する場合には、その移行方向により、異なる遷移領域を適用するようにしているので、第1制御部22と第2制御部24が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
再び、図7に示すように、第3制御部28は、所望の操舵フィーリングを設定するための車両応答制御部であり、VGR装置8により車輪舵角に対する操舵角の伝達比を変更するために、ステッピングモータ30を制御するための制御部である。車両応答制御部は、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ54、操舵角センサ56、ヨーレートセンサ58、車両重量センサ60、路面μセンサ62の各出力値が入力される目標車両応答演算部74と、この目標車両応答演算部74で得られた演算値に応じた出力信号を発生させる出力信号発生部76とを有し、この出力信号発生部76から出力される信号がステッピングモータ30に印加されると共に、このステッピングモータ30の回転量がモータ回転角センサ78により検出され、フィードバック信号として出力信号発生部76に戻されるようになっている。
目標車両応答演算部74は、センターフィール感応域において、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ54、操舵角センサ56、ヨーレートセンサ58、車両重量センサ60、路面μセンサ62の各出力値に基づいて、所望の操舵フィーリングを得るための目標車両応答特性を設定し、この目標車両応答特性を実現するように車輪舵角θwに対する操舵角θの伝達比Rを演算するようになっている。
出力信号発生部76は、センターフィール感応域において、所望の操舵フィーリングを得るために、目標車両応答演算部74で演算された伝達比Rに基づく駆動信号をステッピングモータ30に出力し、その結果、所望の車輪舵角θwが得られるようになっている。
なお、非センターフィール感応域では、図9に示すように、伝達比Rは、車速が大きくなるに従って高くなるように設定されている。
本実施形態は、操舵力及び操舵に伴って発生する車両応答(ヨーレート及び/又は横Gによる車両挙動)によってドライバが感じる「操舵力/車両応答の遊び感」、「剛性感」、「ばね感」、「切り込み時の抜け感」、「戻し時の抜け感」、及び、「車両応答の伸び」及び「車両応答の追従性」という7つの指標、又は、これらの各指標毎若しくは各指標の組合せにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を定量化し、それにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するようにしている。
本実施形態によれば、この7つの指標又は各指標により、所望の操舵フィーリングを定量化するようにしたので、「車速」、「操舵速度」、「車両重量」及び/又は「路面状態」の変化に関わらず、ほぼ一定の所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を制御的又は機械的に設定することが可能となる。
このように、本実施形態によれば、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を定量化することができるので、自動車メーカは、必要に応じて、車種に係らず、同一の所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定することができ、ドライバに対し、自動車メーカの操舵フィーリングに関する良いイメージを付与することが可能となる。
なお、この所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)は、上述したセンターフィール感応域に適用するのが好ましく、一方、旋回中(非センターフィール感応域)における操舵フィーリングは、センターフィール感応域とは異なり、同じ操舵フィーリングではなく、車種固有の特性(操舵フィーリング)を持たせることが好ましい。
本実施形態では、詳細は後述するように、操舵力特性及び/又は車両応答特性を制御することにより、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を実現し、それにより、ドライバが、センターフィール感応域において、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面μの変化に関係なく、常に、ほぼ一定の所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を感じることが出来るようになっている。
具体的には、目標操舵力特性を実現するように上記操舵力特性モデルの各成分のパラメータの値を設定すると共に、目標車両応答特性を実現するように車両応答可変機構の伝達比Rを設定する。
このようにして、本実施形態では、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性となるように電動モータ18及びステッピングモータ30が制御され、その結果、センターフィール感応域において、ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両応答との関係が予め設定した一定の関係となるようにして、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定することができる。
次に、図10により、本実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための制御フローを説明する。なお、図10において、Sは各ステップを示している。
図10に示すように、先ず、S1において、各センサ値を入力する。具体的には、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ54、操舵角センサ56、ヨーレートセンサ58、車両重量センサ60、路面μセンサ62により検出されたトルク、横加速度(横G)、車速、操舵角、ヨーレート、車両重量、路面状態(路面摩擦係数)である。
次に、S2において、入力された各センサ値に基づいて、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための「操舵力/車両応答の遊び感」、「剛性感」、「ばね感」、「切り込み時の抜け感」、「戻し時の抜け感」、「車両応答の伸び」及び「車両応答の追従性」という7つの指標を満たす「目標操舵力」及び「目標車両応答」を設定する。具体的には、上述した図7に示す第2制御部24により目標操舵力を演算し、第3制御部28により目標車両応答を演算する。
次に、S3において、S2で設定した目標操舵力を実現するように電動パワーステアリング装置(具体的には図7の電動モータ18)を制御し、S4において、S2で設定した目標車両応答を実現するようにVGR装置(具合的には図7のステッピングモータ30)を制御し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を実現(設定)する。
次に、図11乃至14により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「操舵力/車両応答の遊び感」を説明する。
「操舵力/車両応答の遊び感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの手応えを感じ、その後、車両応答を感じるときの操舵フィーリングを意味している。ドライバがハンドルの手応えを感じるタイミングと、車両応答を感じるタイミングに適切な関係があれば、ドライバは、ハンドルを無駄なく切っていると感じるので、操舵力/車両応答の遊び感の良い、良好な操舵フィーリングとなる。
一方、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、ハンドルを切った手応えを感じているのに車両が動き出さないように感じたり、ハンドルを切った感触がなくても車両が動き出すように感じたりすると、操舵力/車両応答の遊び感が悪い即ちハンドルを無駄に切っていると感じることになる。ドライバは、このような場合に、ハンドルを操作しても車両がそれに応答してくれないと感じるので、狙ったコースを走行できずにコーナーで車線を逸脱したり、ハンドルの切り過ぎなどの不適切な操作を生じる要因となる。
本実施形態のように、操舵力/車両応答の遊び感が良い操舵フィーリングを設定した場合には、ハンドルの手応え(手応えの知覚しきい値)を感じるタイミングと車両応答(車両応答の知覚しきい値)を感じるタイミングとの関係が適切であるため、ドライバは、ハンドルを無駄なく切っているように感じ、それゆえ、安全性が向上し、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
図11により、上述した「操舵力/車両応答の遊び感」を具体的に説明する。図11は、本実施形態により設定されたベースの所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)における操舵力F、操舵角θ及びヨーレートYを示す線図である。ここで、ベースとは、標準的な、車速(100km/h)、操舵速度(10deg/s)、車両重量(乗員2人のときの車重)、路面状態(高μ路)の走行状態を意味している。
図11に示すように、ドライバが直進状態から操舵を開始すると、まず操舵力Fが立上がり、次に操舵角θが遅れて立上がり、続いてヨーレートYが立ち上がる。なお、操舵角θが操舵力Fより遅れて立ち上がるのは、ステアリング装置のフリクション等の影響であり、ヨーレートYがさらに遅れて立ち上がるのは、タイヤのたわみ等の影響に起因する。
ここで、本実施形態では、良好な「操舵力/車両応答の遊び感」をドライバが感じるように、ドライバが、直進状態からハンドルの操舵を開始したとき、ハンドルの手応えを感じるのは操舵力が6N(手応えの知覚しきい値)のときであり、車両応答を感じるのはヨーレートが0.4deg/s(車両応答の知覚しきい値)のとき(又は横加速度(横G)が0.05gのとき)であると設定し、さらに、ハンドルの手応えを感じる操舵角である操舵力(手応え)の不感帯の大きさを操舵角(θ=0.8〜1.2deg)に設定すると共に、ハンドルの手応えを感じるタイミングから車両応答を感じるタイミングまでの手応えに対する車両応答の遅れ時間(応答遅れ時間)をTD=0.15〜0.20sに設定している。
本実施形態では、このような「操舵力/車両応答の遊び感」を達成できるように、図11に示す操舵力F及びヨーレートYを、上述した図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74により算出している。
図11に示すように、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、時間tAにおいて、操舵力F(=FA)は、6N(手応えの知覚しきい値)を越えており、このとき、操舵角θ(=θA)即ち操舵力の不感帯の大きさは、0.8〜1.2degの範囲内となっている。次に、応答遅れ時間(TD)後の時間tBにおいて、ヨーレートY(=YB)は、0.4deg/s(車両応答の知覚しきい値)を越えており、このときの操舵角θ(=θB)が車両応答の不感帯の大きさとなる。また、「車両応答の不感帯の大きさθB」と「操舵力(手応え)の不感帯の大きさθA」との差が「手応えに対する応答の遅れ角(=θB−θA)」となる。
このように、本実施形態では、「操舵力(手応え)の不感帯の大きさθA」、「手応えの知覚しきい値」、「車両応答の知覚しきい値」及び「応答遅れ時間(TD)」を所定の範囲又は値(θA=0.8〜1.2deg、手応えの知覚しきい値=6N、車両応答の知覚しきい値=0.4deg/s及びtD=0.15〜0.20s(=TD))に設定することにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標である操舵力/車両応答の遊び感を定量化している。
図11に示すようなベースの所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定しても、車速、操舵速度、車両重量及び/又は路面状態が変化すると、その変化に伴い、操舵力F、操舵角θ及びヨーレートYも変化するため、上述した図11に示す所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることが出来なくなる。以下、車速が変化した場合を図12により、操舵速度が変化した場合を図13により、それぞれ説明する。
次に、図12により、車速が上述したベースよりも増加した場合の本実施形態による操舵フィーリングの設定について説明する。なお、車速以外は、上述したベースの場合と同じである。
図12において、F,θ,Yは、それぞれ、図11に示したベースの車速における操舵力、操舵角、ヨーレートを示している。図12において、操舵力F、操舵角θ、ヨーレートY、時間tにおける添字「1」は、本実施形態による制御前を示し、添字「2」は制御後を示している。
図12に示すように、ベースに対して車速が増加した場合には、操舵力は、ベースの操舵力Fに対してわずかに減少し、操舵力F1となり、ヨーレート(車両応答)は、ベースのヨーレートYに対してわずかに増大してヨーレートY1となる。このため、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)が時間tAから時間tA1へと遅くなり、一方、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)は、時間tBから時間tB1へと早くなる。その結果、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθAは、ベースの場合よりも大きくなり、また、手応えに対する応答の遅れ時間(tD1=tB1−tA1)は、ベースの場合よりも、短くなり、一定とならないので、上述した「操舵力/車両応答の遊び感」に関し所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができなくなる。
そこで、本実施実施形態では、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、応答遅れ時間が一定となるようにしている。
具体的には、図12に示すように、操舵力が全体的に増加するような操舵力F2にして、それにより、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)を時間tA1からtA2へと早めている。このとき、操舵力(手応え)の不感帯の大きさが、0.8〜1.2degの範囲内となるようにする。さらに、ヨーレートを少しだけ減少させて、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)を、時間tB1から時間tB2へと遅くする。このように、目標操舵力特性及び目標車両応答特性の両方を制御することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA2)及び応答遅れ時間(tD2=tB2−tA2)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、車速が増大しても、同様な所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
なお、図12は、操舵力及びヨーレートの両方を制御する場合の例であるが、車両応答は出来るだけ制御しない方が望ましいため、操舵力のみを制御して一定の操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA)及び一定の応答遅れ時間(TD)を設定することが出来る場合には、車両応答を制御(補正)することなく、操舵力のみを制御することが好ましい。
また、車速が低下した場合には、車速が増大する場合とは逆に、操舵力は増加し、一方、ヨーレートは減少するので、同様に、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ及び応答遅れ時間が一定となるようにすれば良い。
次に、図13により、操舵速度が上述したベースよりも増加した場合の本実施形態による操舵フィーリングの設定について説明する。なお、操舵速度以外は、上述したベースの場合と同じである。
図13において、F、θ、Yは、それぞれ、図11に示したベースの車速における操舵力、操舵角、ヨーレートを示し、操舵力F、操舵角θ、ヨーレートY、時間tにおける添字「1」は、本実施形態による制御前を示し、添字「2」は制御後を示している。
図13に示すように、ベースに対して操舵速度が増加した場合には、操舵力は、ベースの操舵力Fに対して早いタイミングで増大し、操舵力F1となり、ヨーレート(車両応答)は、ベースのヨーレートYに対してタイミングがわずかに早くなりヨーレートY1となる。このため、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)が時間tAから時間tA1へと早くなり、一方、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)も、時間tBから時間tB1へとわずかに早くなる。その結果、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθAは、ベースの場合よりも小さくなり、また、手応えに対する応答の遅れ時間(tD1=tB1−tA1)は、ベースの場合よりも、長くなり、一定とならないので、上述した「操舵力/車両応答の遊び感」に関し所望の操舵フィーリング(DNAフィーリング)を得ることができなくなる。
そこで、本実施形態では、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、応答遅れ時間が一定となるようにしている。
具体的には、図13に示すように、操舵力が全体的に減少するような操舵力F2にして、それにより、ハンドルの手応えを感じるタイミング(手応えの知覚しきい値6N)を時間tA1からtA2へと遅くしている。このとき、操舵力(手応え)の不感帯の大きさが、0.8〜1.2degの範囲内となるようにする。さらに、ヨーレートを少しだけ増加させて、車両応答を感じるタイミング(車両応答の知覚しきい値0.4deg/s)を、時間tB1から時間tB2へと早めている。このように、目標操舵力特性及び目標車両応答特性の両方を制御することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA2)及び応答遅れ時間(tD2=tB2−tA2)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、操舵速度が増大しても、同様な所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
なお、操舵速度が増大した場合(図13)も、車速が増大した場合(図12)と同様に、操舵力及びヨーレートの両方を制御する場合以外に、操舵力のみを制御して一定の操舵力(手応え)の不感帯の大きさ(θA)及び一定の応答遅れ時間(TD)を設定することが出来る場合には、車両応答を制御(補正)することなく、操舵力のみを制御することが好ましい。
また、操舵速度が低下した場合には、操舵速度が増大する場合とは逆に、操舵力は減少し、一方、ヨーレートはそれよりも遅れたタイミングで減少するので、同様に、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ及び応答遅れ時間が一定となるようにすれば良い。
本実施形態では、車両重量や路面状態が変化した場合も、上述した車速や操舵速度が変化した場合と同様に、ベースにおいて設定した目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力(手応え)の不感帯の大きさ及び応答遅れ時間が一定となるようにしている。
次に、図14により、本実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)の「操舵力/車両応答の遊び感」に関する設定の仕方を説明する。図14において、Sは各ステップを示している。
先ず、S1において、ハンドルの操舵角θ(deg)を入力し、次に、S2に進み、操舵角θから操舵速度θ’(deg/s)を演算する。次に、S3において、ヨーレートY(deg/s)を入力し、S4に進み、ヨーレートYからヨー加速度Y’(deg/s2)を演算する。
次に、S5において、ヨー加速度Y’から、ヨーレートYが0.4deg/sとなる時間tBを推定する。次に、S6において、時間tBから応答遅れ時間TD(=0.15乃至0.20s)に相当する時間前の時間tA(=tB−TD)における操舵角θAを推定する。次に、S7において、操舵角θA即ち操舵力の不感帯の大きさが、操舵角0.8乃至1.2degの範囲内であるか否かを判定する。
S7において操舵角がこの範囲内でないと判定された場合には、S8に進み、操舵角θAが0.8deg未満であるか否かを判定する。操舵角θAが0.8deg未満である場合にはS9に進み、操舵角θが0.8degとなる時間をtAとし、一方、操舵角θAが1.2degを越える場合には、S10に進み、操舵角θが1.2degとなる時間をtAとする。S9とS10の後、S11に進み、時間tAから応答遅れ時間TD(0.15乃至0.20s)後の時間において、ヨーレートYが0.4deg/sとなるように、図11に示すベースの目標車両応答特性を補正する(図7参照)。
一方、S7において、操舵角θAが操舵角0.8〜1.2degの範囲内であると判定された場合には、S11を実行しない、即ち、目標車両応答特性の補正は行わず、S12に進み、時間tAにおける操舵力FAを推定する。次に、S13に進み、S9において推定された操舵力FAがほぼ6Nであるか否かを判定する。S13において、操舵力FAがほぼ6Nでないと判定された場合には、S14に進み、時間tAおいて操舵力Fが6Nとなるように、図11に示すベースの目標操舵力特性を補正する(図7参照)。S13において、ほぼ6Nであると判定された場合には、目標操舵力特性の補正は行わない。
このように、本実施形態では、時間tAの操舵角θAが操舵角0.8乃至1.2degの範囲内の場合には、車両応答は出来るだけ制御しないのが望ましいので、目標操舵力特性のみを制御し(操舵力FAがほぼ6Nの場合には制御は行わない)、一方、時間tAの操舵角θAが操舵角0.8乃至1.2degの範囲外となった場合には、目標車両応答特性のみ、又は、目標車両応答特性及び目標操舵力特性の両方を制御している。しかしながら、この他に、時間tAの操舵角θAが操舵角0.8乃至1.2degの範囲内の場合であっても、目標車両応答特性及び目標操舵力特性の両方を制御しても良い。
また、時間tAの操舵角θAが操舵角0.8乃至1.2degの範囲外となった場合においても、車両応答はの制御量(補正量)は少ない方が望ましいので、操舵角θAが0.8deg未満である場合には、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθAの所定範囲(=0.8乃至1.2deg)の下限値である操舵角θ=0.8degとなる時間をtAとし、操舵角θAが1.2degを越える場合には、その所定範囲(=0.8乃至1.2deg)の上限値である操舵角θ=1.2degとなる時間をtAとすることで、目標車両応答特性の制御量がなるべく小さくなるようにしている。
また、本実施形態では、図14のS14において、ベースの目標操舵力特性を補正するのではなく、時間tAで所定の操舵力を強制的に付与し、時間tAで操舵力が6Nを越えるようにしても良い。
このように、本実施形態では、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)することにより、操舵力(手応え)の不感帯の大きさθA及び応答遅れ時間(tD=tB−tA)を図11に示すベースの場合と同じ(一定)とすることができ、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、「操舵力/車両応答の遊び感」に関し、同様な(一定の)所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
次に、図11及び図15により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「剛性感」を説明する。
「剛性感」は、「たわまない感じ」と「硬い感じ」の2つの指標を持ち、ドライバが直進状態からハンドルを切り込んだときに、たわまない感じを受け、ある硬さを感じることにより、車両が遅れずに応答していると感じる操舵フィーリングである。換言すれば、「剛性感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込んだとき、ハンドルからタイヤまで途中に介在物がなく、ハンドルからタイヤまでダイレクトにつながっているように感じる操舵フィーリングである。
例えば、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、ハンドルの手応えを感じているが車両応答を感じない場合に、ハンドルをさらに多く切らなければ車両応答を感じることができず、この場合には、剛性感が悪い、即ち、「たわむ感じ」を感じる。このような場合に、ドライバは、ハンドル操作に不安を感じたり、車線移行やコーナリング時に狙い通りのコースを通れずに、さらに、コーナーで車線を逸脱したり、ハンドルを適切に操作することが出来なくなる。
一方、直進状態からハンドルを切り込んだときに、ドライバが受けるハンドルの手応えと車両応答のバランスが良い、即ち、「剛性感」が良好であると、ドライバは、たわまずにダイレクトにハンドルを操作していると感じることができ、その結果、安全性が向上し、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
「剛性感」の「たわまない感じ」は、ドライバが直進状態からハンドルを切り込んだ後に、操舵力(手応え)を感じるときの操舵角の値(操舵力の不感帯)と、その後、ドライバが車両応答(ヨーレート又は横G)を感じるときの操舵角の値(車両応答の不感帯)が、それぞれ一定の値となったときに良好となる。
ここで、本実施形態においても、ハンドルの手応えを感じるのは操舵力が6N、車両応答を感じるのはヨーレートが0.4deg/s、ハンドルの手応えを感じる操舵角である操舵力(手応え)の不感帯の大きさを操舵角(θA=0.8〜1.2deg)、車両応答を感じる操舵角である車両応答の不感帯の大きさを操舵角(θB=4.0〜5.0deg)に設定することにより、ドライバが良好な「剛性感(たわまない感じ)」を感じるとしているのである。
本実施形態では、このような「剛性感(たわまない感じ)」を達成できるように、図11に示す操舵力F及びヨーレートYを、上述した図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74により算出している。
具体的には、図11に示すように、ドライバが直進状態から操舵を開始した後、操舵力F(=FA)が6N(手応えの知覚しきい値)を越えたときの操舵角θ(=θA)即ち操舵力の不感帯の大きさは、0.8〜1.2degの範囲内となっている。次に、ヨーレートY(=YB)が0.4deg/s(車両応答の知覚しきい値)を越えたときの操舵角θ(=θB)即ち車両応答の不感帯の大きさが4.0〜5.0degとなっている。本実施形態では、この操舵力(手応え)の不感帯の大きさである操舵角θAの値、及び、車両応答の不感帯の大きさである操舵角θBの値を、車両の速度、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、常に、一定の値(一定の範囲でも良い)に設定している。
本実施形態においても、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御(補正)して、操舵力の不感帯θA及び車両応答の不感帯θBが得られるようにしている。
本実施形態では、この操舵力(手応え)の不感帯である操舵角θAの値、及び、車両応答の不感帯である操舵角θBの値を、車両の速度、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、常に、一定の値(一定の範囲でも良い)に設定することにより、「剛性感」の「たわまない感じ」を持つ所望の操舵フィーリングを設定することできる。
「剛性感」の「硬い感じ」は、ドライバがハンドルを直進状態から切り込んだとき、車両の横Gが例えば0.1Gとなったときの操舵力と、横Gが例えば0.1Gから0.2Gまで増加したときの操舵力の増加量とが、それぞれ一定の値となったときに良好となる操舵フィーリングである。
図15に示すように、車両応答である横加速度(横G)が0.1GとなるC点において、操舵力は、操舵力F0.1Gとなり、このC点から、横Gが0.2GとなるD点までの操舵力の増加量は、操舵力増加量ΔF0.1-0.2Gとなる。さらに、この操舵力F0.1Gの値は、上述した手応えの知覚しきい値(6N)よりも、大きな値(=12〜13N)に設定し、操舵力増加量ΔF0.1-0.2Gの値は、操舵力F0.1Gの値よりも小さい値(=3〜4N)に設定している。
なお、車両応答の大きさの基準として、横Gではなく、ヨーレートを用いても良い。
本実施形態では、これらの「操舵力F0.1G」及び「操舵力増加量ΔF0.1-0.2G」のそれぞれ値を、車両の速度、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態が変化しても、常に、一定の値(一定の範囲でも良い)に設定することにより、「剛性感」の「硬い感じ」を持つ所望の操舵フィーリングを設定することできる。
次に、図17により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「ばね感」を説明する。
「ばね感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後ハンドルを戻すとき、ハンドル自身の戻ろうとする力によりハンドルが戻されるときに感じる操舵フィーリングである。
例えば、ドライバがハンドルを戻そうとしてハンドルにかけていた力を抜いたとき、ハンドル自身の戻ろうとする力が大きいと、ドライバが操舵力の変化を感じるまでに、ハンドルが大きく戻され(操舵角の戻り量が大きい)、ドライバは、戻される感じ(ばね感)が大きいと感じる。一方、ドライバがハンドルを戻そうとするとき、ハンドル自身の戻ろうとする力によるハンドルが戻される感じとドライバ自身が期待する操舵角の戻り量が適切にバランスしていると、ドライバは、自己が期待する操舵角の戻り量と、ハンドルから受ける戻される感じが一致し、ばね感が良好であると感じる。
本実施形態によれば、「ばね感」は、ドライバが直進状態からハンドルを切り込み、その後ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく、操舵力が、ハンドルを戻すときの操舵力から所定の操舵力値(6N)だけ減少したとき、操舵角がハンドルを戻すときの操舵角である最大操舵角から所定の操舵角値だけ戻るとき、良好な操舵フィーリングとなる。
また、最大操舵角が変化しても、最大操舵角に対する戻り量である所定の操舵角値の比である操舵角戻り比は、一定の比(10〜20%)であることが望ましい。
本実施形態によれば、操舵力と操舵角との関係は、図16に示すようになり、操舵角θがE点において最大となり、このE点において操舵力FE及び操舵角θEとなり、さらに、操舵力FEが所定の操舵力値である6Nだけ減少したF点において、操舵力FF及び操舵角をθFとなる。
所定の操舵力値である6Nは、人間が感じることができる(コントロールすることができる)最少の力の値であり、ハンドルが戻るとき、ドライバは、操舵力が操舵力FEから6Nだけ減少したとき、はじめて、操舵力に変化があったと感じるのである。本実施形態では、このハンドルが戻るときの操舵角の戻り量Δθ(=θE−θF)は、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく、常に、一定としている。
また、本実施形態では、最大操舵角が変化しても、最大操舵角に対する戻り量である所定の操舵角値の比である操舵角戻り比(Δθ/θE)は、一定の比(10〜20%)としている。
本実施形態では、図7に示す第2制御部24の目標操舵力演算部66により、図16に示す目標操舵力特性を設定している。
上述したように、ドライバが感じる操舵力変化の最小値が6Nであるので、ドライバは、最大操舵角の舵角位置から操舵力が6N減少する位置ではじめて操舵力変化を感じるので、このとき操舵角の減少量が、ドライバの期待した減少量であれば、良好な「ばね感」をドライバは感じることができる。それゆえ、本実施形態では、操舵角の減少量を、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態に関係なく、一定としているので、ドライバは、良好な「ばね感」を感じることができる。
次に、図17により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「切り込み時の抜け感」を説明する。図17は、本実施形態により設定された操舵フィーリングの「切り込み時の抜け感」を説明するための操舵角に対する操舵力の特性を示す線図である。
「切り込み時の抜け感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、操舵力が抜けるように感じる操舵フィーリングである。
具体的には、ドライバが直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から操舵力は増大し、操舵力が所定値以上となったとき、ドライバの負担を軽減するために、操舵力の増加の割合がそれ以前よりも小さくなるようにしているが、その操舵力の増加の割合が小さくなりすぎると、ドライバはハンドルの切込量(操舵量)が十分でないと感じてハンドルを切りすぎたり、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、この操舵力の増加の割合の減少量が適切であれば、操舵力が抜ける感じが良好となり、安全性が向上し、ドライバは、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
このため、本実施形態においては、ドライバが良好な「切り込み時の抜け感」を感じるために、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、ハンドルの切り込みの開始から所定の操舵力となるまでのオンセンタ領域における操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合と、所定の操舵力以上となるオフセンタ領域における操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合とが、所定の比率の範囲(0.3〜0.5)となるように、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御するようにしている。
具体的に説明すると、図17に示すように、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から図17においてG点として示す所定の操舵力(9N)となるまでのオンセンタ領域においては、操舵角に対する操舵力の増加の割合(オンセンタ領域の操舵力増加割合)は、所定の大きさでほぼリニアに増大し、所定の操舵力(9N)以上となるオフセンタ領域においては、操舵角に対する操舵力の増加の割合(オフセンタ領域の操舵力増加割合)も、ほぼリニアに増大するが、オンセンタ領域に比べて小さくなっている。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の操舵力増加割合)/(オンセンタ領域の操舵力増加割合)である操舵力増加割合比が、0.3〜0.5となるように設定している。
本実施形態では、図17に示す目標操舵力特性、即ち、オンセンタ領域の操舵力増加割合、オフセンタ領域の操舵力増加割合、所定の操舵力(9N)、所定の操舵力増加割合比(0.3〜0.5)を、図7に示す第2制御部24の目標操舵力演算部66により設定するようにしているが、図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74の両方により、目標操舵力特性及び目標車両応答特性を設定し、これらから、図17の目標操舵力特性を設定するようにしても良い。
本実施形態によれば、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、操舵力増加割合比をこのように所定の比率の範囲に設定することにより、「切り込み時の抜け感」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
次に、図18により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「戻し時の抜け感」を説明する。図18は、本実施形態により設定された操舵フィーリングの「戻し時の抜け感」を説明するための操舵角に対する操舵力の特性を示す線図である。
「戻し時の抜け感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、操舵力が抜けるように感じる操舵フィーリングである。
具体的には、ドライバが直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始から操舵力は減少し、操舵力が所定値以下となったとき、操舵力の減少の割合をそれ以前よりも大きくするようにしているが、その操舵力の減少の割合を大きくしすぎると、ドライバはハンドルをすでに十分なだけ戻したと感じてハンドルを戻すのが遅れたり、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、この操舵力の減少の割合の大きさが適切であれば、操舵力が抜ける感じが良好となり、良好なハンドル操舵を行うことができる。
このため、本実施形態においては、ドライバが良好な「戻し時の抜け感」を感じるために、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、ハンドルの戻しの開始から所定の操舵力となるまでのオフセンタ領域における操舵角の減少に対する操舵力の減少の割合と、所定の操舵力以下となるオンセンタ領域における操舵角の減少に対する操舵力の減少の割合とが、所定の比率の範囲(0.5〜0.7)となるように、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御するようにしている。
具体的に説明すると、図18に示すように、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始から図18においてH点として示す所定の操舵力(6N)となるまでのオフセンタ領域においては、操舵角に対する操舵力の減少の割合(オフセンタ領域の操舵力減少割合)は、所定の大きさでほぼリニアに減少し、所定の操舵力(6N)以下となるオンセンタ領域においては、操舵角の減少に対する操舵力の減少の割合(オンセンタ領域の操舵力減少割合)も、ほぼリニアに減少するが、オフセンタ領域の操舵力の減少の割合に比べて、大きくなっている。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の操舵力減少割合)/(オンセンタ領域の操舵力減少割合)である操舵力減少割合比が、0.5〜0.7となるように設定している。
本実施形態では、図18に示す目標操舵力特性、即ち、オフセンタ領域の操舵力減少割合、オンセンタ領域の操舵力減少割合、所定の操舵力(6N)、所定の操舵力減少割合比(0.5〜0.7)を、図7に示す第2制御部24の目標操舵力演算部66により設定するようにしているが、図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74の両方により、目標操舵力特性及び目標車両応答特性を設定し、これらから、図18の目標操舵力特性を設定するようにしても良い。
本実施形態によれば、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、操舵力減少割合比をこのように所定の比率の範囲に設定することにより、「戻し時の抜け感」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
次に、図19により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「車両応答の伸び」を説明する。図19は、本実施形態により設定された操舵フィーリングの「車両応答の伸び」を説明するための操舵力に対する車両応答(ヨーレート)の特性を示す線図である。
「車両応答の伸び」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、操舵力の増加に伴ってヨーレート等の車両応答が増加するときに感じる操舵フィーリングである。
具体的には、ドライバが直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から操舵力及びヨーレート等の車両応答は増大し、操舵力が所定値以上となったとき、ドライバの負担を軽減するために操舵力の増加の割合はそれ以前よりも小さくなるが、操舵力の増加の割合に対するヨーレート等の車両応答の増加の割合は増加する。このとき、車両応答の増加の割合が、ドライバの期待値よりも大きかったり小さかったり、操舵力と無関係に車両応答が増加すると、ドライバは意図したハンドル操舵が出来ず、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、車両応答の増加の割合が適切であれば、ドライバの期待値と合致し、良好な車両応答の伸びを感じ、安全性が向上し、ドライバは、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
このため、本実施形態においては、ドライバが良好な「車両応答の伸び」を感じるために、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、ハンドルの切り込みの開始から所定の操舵力となるまでのオンセンタ領域における操舵力の増加に対するヨーレート等の車両応答の増加の割合と、所定の操舵力以上となるオフセンタ領域における操舵力の増加に対する車両応答の増加の割合とが、所定の比率の範囲(2.0〜5.0)となるように、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御するようにしている。
具体的に説明すると、図19に示すように、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から図19においてG点として示す所定の操舵力(9N)となるまでのオンセンタ領域においては、操舵力に対するヨーレート(車両応答)の増加の割合(オンセンタ領域の車両応答増加割合)は、所定の大きさでほぼリニアに増大し、所定の操舵力(9N)以上となるオフセンタ領域においては、操舵力に対するヨーレート(車両応答)の増加の割合(オフセンタ領域の車両応答増加割合)も、ほぼリニアに増大するが、オンセンタ領域に比べて大きくなっている。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の車両応答増加割合)/(オンセンタ領域の車両応答増加割合)である車両応答増加割合比が、2.0〜5.0となるように設定している。
本実施形態では、図19に示す目標操舵力特性、即ち、オンセンタ領域の車両応答増加割合、オフセンタ領域の車両応答増加割合、所定の操舵力(9N)、所定の車両応答増加割合比(2.0〜5.0)を、図7に示す第2制御部24の目標操舵力演算部66及び/又は第3制御部28の目標車両応答演算部74により、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を設定し、これらから、図19の目標操舵力特性を設定している。
ここで、本実施形態では、オンセンタ領域とオフセンタ領域との境界である所定の操舵力(図19のG点)の値を9Nとし、「抜け感(切り込み)」における所定の操舵力(図17のG点)の値(9N)と同じ値としている。これにより、ドライバは、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、「抜け感(切り込み)」と同じタイミングで、「車両応答の伸び」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。なお、本実施形態では、図17のG点と図19のG点とを異なるタイミングとなるように設定しても良い。
なお、図19では、車両応答として、ヨーレートの値を使用しているが、横加速度(横G)を使用しても良い。
本実施形態によれば、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込むとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、車両応答増加割合比をこのように所定の比率の範囲に設定することにより、「車両応答の伸び」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
次に、図20により、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「車両応答の追従性」を説明する。図20は、本実施形態により設定された操舵フィーリングの「車両応答の追従性」を説明するための操舵力に対するヨーレート(車両応答)の特性を示す線図である。
「車両応答の追従性」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始時から操舵力は減少するが車両応答が増加するとき、及び、次に操舵力の減少に伴って車両応答が減少するときに感じる操舵フィーリングである。
具体的には、ドライバが直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始時から操舵力は減少するが車両応答が増加するとき、操舵力と車両応答が逆の関係となるため、ドライバは、車両応答(ヨー又は横G)の追従性が悪いと感じる。さらに、操舵力が減少し、操舵力が所定値以下となったとき、車両応答の減少の割合をそれ以前よりも小さくするようにしているが、その車両応答の減少の割合が、ドライバの期待値よりも大きかったり小さかったりすると、ドライバは意図したハンドル操舵が出来ず、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、操舵力と車両応答が逆の関係となる時間が短ければ、良好な操舵フィーリングとなり、さらに、車両応答の減少の割合が適切であれば、ドライバの期待値と合致し、良好な車両応答の追従性を感じ、その結果、安全性が向上し、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
このため、本実施形態においては、ドライバが良好な「車両応答の追従性」を感じるために、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、ハンドルの操舵の半サイクル(ハンドルを中立位置から切り込み、その後切り戻して中立位置まで戻るまで)において、ハンドルの戻しの開始時から操舵力は減少するが車両応答が増加する時間が、ハンドルの操舵の半サイクルの時間に対し、所定の割合の範囲(20%)内となるように、次に、ハンドルの戻しの開始から所定の操舵力となるまでのオフセンタ領域における操舵力の減少に対する車両応答の減少の割合と、所定の操舵力以下となるオンセンタ領域における操舵力の減少に対する車両応答の減少の割合とが、所定の比率の範囲(1.5〜2.5)となるように、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御するようにしている。
具体的に説明すると、図20に示すように、先ず、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、ハンドルの戻しの開始時(図20のI点)から操舵力は減少するが車両応答は増加する領域(ハンドル戻し後のヨーレート増加領域)の時間(ハンドル戻し後のヨーレート増加時間)は、操舵フィーリングが悪い領域であるため、短い方が望ましい。よって、本実施形態では、このハンドル戻し後のヨーレート増加時間をハンドルの操舵の半サイクルの時間に対し、所定の割合(20%)以下となるように、目標操舵力特性及び/又は目標車両応答特性を制御している。次に、図20においてH点として示す所定の操舵力(6N)となるまでのオフセンタ領域においては、操舵力に対する車両応答の減少の割合(オフセンタ領域の車両応答減少割合)は、所定の大きさでほぼリニアに減少し、所定の操舵力(6N)以下となるオンセンタ領域においては、操舵力の減少に対する車両応答の減少の割合(オンセンタ領域の車両応答減少割合)も、ほぼリニアに減少するが、オフセンタ領域の操舵力の減少の割合に比べて、小さくなっている。
ここで、本実施形態では、(オフセンタ領域の車両応答減少割合)/(オンセンタ領域の車両応答減少割合)である車両応答減少割合比が、1.5〜2.5となるように設定している。
本実施形態では、図20に示す目標操舵力特性、即ち、ハンドル戻し後のヨーレート増加時間、オフセンタ領域の車両応答減少割合、オンセンタ領域の車両応答減少割合、所定の操舵力(6N)、所定の車両応答減少割合比(1.5〜2.5)を、図7に示す第2制御部24の目標操舵力演算部66により設定するようにしているが、図7の第2制御部24の目標操舵力演算部66及び第3制御部28の目標車両応答演算部74の両方により、目標操舵力特性及び目標車両応答特性を設定し、これらから、図20の目標操舵力特性を設定するようにしても良い。
ここで、本実施形態では、オンセンタ領域とオフセンタ領域との境界である所定の操舵力(図20のH点)の値を6Nとし、「抜け感(戻し)」における所定の操舵力(図18のH点)の値(6N)と同じ値としている。これにより、ドライバは、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、「抜け感(戻し)」と同じタイミングで、「車両応答の追従性」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。なお、本実施形態では、図18のH点と図20のH点とを異なるタイミングとなるように設定しても良い。
なお、図20では、車両応答として、ヨーレートの値を使用しているが、横加速度(横G)を使用しても良い。
本実施形態によれば、ドライバが所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込み、その後、ハンドルを戻すとき、車速、操舵速度、車両重量、及び/又は、路面状態の変化に関係なく常に、車両応答減少割合比をこのように所定の比率の範囲に設定することにより、「車両応答の追従性」に関し、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得ることができる。
上述したように、本実施形態では、「操舵力/車両応答の遊び感」、「剛性感」、「ばね感」、「切り込み時の抜け感」、「戻し時の抜け感」、「車両応答の伸び」及び「車両応答の追従性」という7つの指標、又は、これらの各指標毎若しくは各指標の組合せにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を定量化し、それにより、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するようにしているが、これらの7つの指標の内、所望の操舵フィーリングを設定する際に最も重要なのは「剛性感」であり、次に重要なのは「操舵力/車両応答の遊び感」である。
そのため、本実施形態において、「車速」、「操舵速度」、「車両重量」及び/又は「路面状態」の変化に関わらず、ほぼ一定の所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を制御的又は機械的に設定するとき、制御が複雑となったり、機械的な設定が困難な場合には、少なくとも「剛性感」の1つの指標に基づき、若しくは、少なくとも「剛性感」及び「操舵力/車両応答の遊び感」の2つの指標に基づき、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するようにしても良い。
上述した本実施形態においては、所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を得るための目標操舵力特性及び目標車両応答特性を図7に示す第2制御部24及び第3制御部28によりそれぞれ演算して算出するようにしているが、本実施形態は、このように制御的に所望の操舵フィーリングを作り込むものに限らず、所望の操舵フィーリングを機械的に作り込むようにしても良い。
具体的には、目標操舵力特性を設定する際には、電動パワーステアリング装置の制御特性を設定し、さらに、目標車両応答特性を設定する際には、VGR装置の伝達比Rを所望値に設定し、さらに、タイヤ特性及び車輪のサスペンション装置のアライメント変化特性を所望値に設定するようにすれば良い。
このように、所望の操舵フィーリングを機械的に作り込む場合には、上述した7つの指標を全て満たすのは、困難であるため、この場合には、最も重要な「剛性感」の指標のみを満たすようにしても良く、さらに、可能な場合には、「剛性感」及び「操舵力/車両応答の遊び感」の2つの指標を満たすようにすることが好ましい。
さらに、所望の操舵フィーリングを機械的に作り込む場合には、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の全ての変化に対して、ほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定するのが困難な場合には、少なくとも、車速の変化に対してのみほぼ同一の所望の操舵フィーリングを設定するようにしてもよい。また、可能な限り、車速以外の操舵速度、車両重量、又は、路面状態の何れか1つ又は複数の変化に対して同一の所望の操舵フィーリングを設定するようにしても良い。
本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。 本発明の実施形態によるVGR装置を示す全体構成図である。 図2のIII−III線に沿って見た部分側面図である。 図2のIV−IV線に沿って見た部分側面図である。 操舵力特性モデルを示す図である。 図5の操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。 本発明の実施形態による自動車の操舵フィーリング設定装置の制御ユニットを示すブロック図である。 図7に示す制御ユニットの第1制御部及び第2制御部の比例ゲインの補正マップである。 VGR装置の非センターフィール感応域における伝達比Rを示す線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための制御フローである。 本発明の実施形態により設定されたベースの所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)における操舵力F、操舵角θ及びヨーレートYを示す線図である。 車速がベースよりも増加した場合の本実施形態による操舵フィーリングの設定を説明するための線図である。 操舵速度がベースよりも増加した場合の本実施形態による操舵フィーリングの設定を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)の「操舵力/車両応答の遊び感」に関する設定をするための制御フローを示す。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「剛性感」を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「ばね感」を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「切り込み時の抜け感」を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「戻し時の抜け感」を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「車両応答の伸び」を説明するための線図である。 本発明の実施形態による所望の操舵フィーリング(DNA操舵フィーリング)を設定するための指標の1つである「車両応答の追従性」を説明するための線図である。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
8 VGR装置
16 タイヤ(車輪)
18 電動モータ
20 制御ユニット
22 第1制御部(通常のアシスト制御部)
24 第2制御部(センターフィール制御部)
26 モータ電流制御部
28 第3制御部(車両応答制御部)
30 ステッピングモータ
50 トルクセンサ
52 横Gセンサ
54 車速センサ
56 操舵角センサ
58 ヨーレートセンサ
60 車両重量センサ
62 路面μセンサ
66 目標操舵力演算部
74 目標車両応答演算部
76 出力信号発生部
78 モータ回転角センサ

Claims (7)

  1. 操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、
    車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、
    所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、
    上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、少なくとも上記操舵力特性制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。
  2. 上記操舵フィーリング設定手段は、上記操舵力特性制御手段を制御することにより、車速が増加するほど上記手応えの知覚しきい値を早いタイミングで発生させる請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
  3. 上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、操舵速度の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、少なくとも上記操舵力特性制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御し、さらに、上記操舵フィーリング設定手段は、操舵速度が増加するほど上記手応えの知覚しきい値(FA)を遅いタイミングで発生させるように、上記車両応答特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
  4. 上記操舵フィーリング設定手段は、上記車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して上記車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも上記応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に上記手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、上記操舵力特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
  5. 上記操舵フィーリング設定手段は、上記車両応答(Y)の発生初期の変化率を算出して上記車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングを推定し、この推定した車両応答の知覚しきい値(YB)の発生タイミングよりも上記応答遅れ時間(TD)に相当する時間前に所定の操舵力を強制的に付与して上記手応えの知覚しきい値(FA)が発生するように、上記操舵力特性制御手段を制御する請求項1記載の自動車の操舵フィーリング設定装置。
  6. 操舵力特性を制御する操舵力特性制御手段と、
    車両の車両応答特性を制御する車両応答特性制御手段と、
    所望の操舵フィーリングを設定する操舵フィーリング設定手段と、を有し、
    上記操舵フィーリング設定手段は、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車両重量及び路面状態の少なくとも一方の変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように、上記操舵力制御手段及び車両応答特性制御手段の少なくとも一方を制御するように構成されていることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。
  7. 所望の操舵フィーリングを設定する自動車の操舵フィーリング設定装置であって、所定の目標操舵力特性を設定する操舵力特性設定手段と、所定の目標車両応答特性を設定する車両応答特性設定手段と、を有し、これらの操舵力特性設定手段及び車両応答特性設定手段は、上記目標操舵力特性及び目標車両応答特性を、所定車速以上の直進状態からハンドルを切り込んだとき、車速、操舵速度、車両重量、及び、路面状態の少なくとも1つの変化に関係なく常に、操舵力(F)が所定の手応えの知覚しきい値(F A )を越えてドライバがハンドルの手応えを感じるタイミング(t A )から、車両応答(Y)が所定の車両応答の知覚しきい値(Y B )を越えてドライバが車両応答を感じるタイミング(T B )までの時間が、所定の応答遅れ時間(T D )となるように設定していることを特徴とする自動車の操舵フィーリング設定装置。
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