JP4210966B2 - 電気抵抗の平均温度係数の大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

電気抵抗の平均温度係数の大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気抵抗の平均温度係数が大きく、十分な耐酸化性を有するディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気抵抗の平均温度係数が大きい材料は、例えばディーゼルエンジンの吸気加熱用のヒーター用材料などに必要とされている。電気抵抗の平均温度係数αとはJIS C2526によればα=(Ra-Rb)/Ra/(Ta-Tb)で定義される。ここで、Ta,Tb:抵抗を測定した温度(但Ta<Tb)、Ra:温度Taでの抵抗値、Rb:温度Tbでの抵抗値である。
従来、これらの電気抵抗の平均温度係数が大きい材料としてはNiまたは低C鋼などが用いられていた。さらにFe−Co系合金を用いることにより電気抵抗の平均温度係数の向上または耐酸化性を改良することが提案されている。
例えば特開昭57−115623号には、ディーゼルエンジン用予熱栓加熱抵抗体としてFe−Co系合金が提案されている。この合金は電気抵抗の平均温度係数が大きいという点で優れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特開昭57−115623号に開示される合金は、電気抵抗の平均温度係数の点では有利であるものの、1000℃付近で使用する場合には耐酸化性が不足し、また、高価であるという問題があった。
本発明の目的は、十分な電気抵抗の平均温度係数と、1000℃を超える温度領域でも優れた耐酸化性を同時に実現させ、更に安価なディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上述の問題に対し種々の検討を行い本発明に到達した。まず、ベースとなる金属としてFeを選択した。この理由は一般に純金属の中でFeの電気抵抗の平均温度係数は比較的高く、かつ安価であるからである。但し、Feは耐酸化性が不十分であるためFe単体では高温までの使用に耐えない。そのためCrなどを添加して耐酸化性を向上させる必要があるが、一般には合金化することにより電気抵抗の平均温度係数は小さくなる。従って、合金元素を過度に多く添加せずに耐酸化性を向上させることが肝要である。
【0005】
一方Fe−Cr合金は、一般にフェライト相からなるが、高温になるとオーステナイト相に変態する。この際収縮を伴うのでこの変態点が使用温度内にあると安定性に問題が生じるため変態点は少なくとも900℃以上になることが必要であり、望ましくは1000℃以上である。
以上の点を鑑み、本発明者等はFeへの適正なCrの添加量を決定した。しかしながら、Crのみの添加では耐酸化性が不足しているのでさらに微量添加で耐酸化性を向上させ、かつ電気抵抗の平均温度係数にほとんど影響しない元素について検討し、希土類元素、Y、Hf、Zrのうち1種または2種以上の添加が大きな効果を有することを見出し本発明の到達した。
【0006】
すなわち本発明は、重量%でC0.2%以下、Si2%以下、Mn1%以下、Ni1%以下(0を含む)、Cr10〜25%および希土類元素0.2%以下、Y0.5%以下、Hf0.5%以下、Zr1%以下の1種または2種以上を含み且つそれらの合計が1%以下であり、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、室温から1000℃における電気抵抗の平均温度係数が6.0×10 −4 /℃以上である電気抵抗の平均温度係数の大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼である。
【0008】
好ましくは、重量%でC0.1%以下、Si1%以下、Mn1%以下、Ni0を含み1%以下、Cr15〜23%およびLa0.1%以下、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物からなる電気抵抗の平均温度係数が大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼である。
【0009】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の重要な特徴は十分な電気抵抗の平均温度係数と、1000℃程度の高温下でも優れた耐酸化性を同時に付与可能なベストの化学組成にある。
以下に本発明における成分限定理由につて述べる。
Crは本発明において高温での耐酸化性を付与させるために重要な元素である。Crは材料表面にCr23被膜を形成し耐酸化性を向上させ、1000℃での十分な耐酸化性を付与させるためには、下限を10%以上とすることが必要である。また、Cr10%以下では900℃以下に変態点があり、高温での使用に問題がある。これらの理由からCrの下限は10%であり、望ましくは下限15%である。また、常温から1000℃までにおける電気抵抗の平均温度係数を6.0×10-4/℃以上に保つためにCrの上限は25%までとする。望ましくは23%以下である。
【0010】
CはCrと結びつくことにより耐酸化性に有効なCr量を減少させる。また、C量を減らすと変態点が上昇する効果もある。従って、Cは0.2%以下に限定する。望ましくは0.1%以下である。
【0011】
Siは溶湯に対して強力な脱酸作用を発揮するほか、鋳造性を向上させる作用がある。また、SiO2被膜はCr23被膜と母材の中間に形成され、Cr23被膜の剥離を阻止する。これらの理由でSiを添加するが、過度の添加は耐酸化性の低下および電気抵抗の平均温度係数の低下を招くためSiの上限は2%である。望ましくは1%以下である。
【0012】
MnはSiと同じく脱酸作用を発揮するほか、鋳造性を向上させる作用があるが、過度の添加は耐酸化性の低下および電気抵抗の平均温度係数の低下を招くためMnの上限は1%である。
【0013】
希土類元素、Y、Hf、Zrは少量添加により耐酸化性を大幅に改善する効果を有する。特に適量のSi、Mnと組み合わせた場合の耐酸化性向上効果が大きく、これは膜の密着性を改善することによると考えられる。本発明においては主にCr2O3被膜により耐酸化性をもたせているが、この被膜の密着性を向上させるために希土類元素、Y、Hf、Zrの単独または複合添加は不可欠である。しかしながら、過度の添加は熱間加工性を劣化させるので各元素は希土類元素0.2%以下、Y0.5%以下、Hf0.5%以下、Zr1%以下に限定し、それらの添加量の合計は1%以下である。
【0014】
希土類元素、Y、Hf、Zrのなかでも、特に希土類元素であるLaは被膜の密着性を向上させる効果が大きい。しかしながら、過度の添加は熱間加工性を劣化させるのでLaは0.2%以下である。望ましくはLa0.01〜0.1%の単独添加が有効である。
【0015】
Niは靭性を向上させるために少量を添加しても良い。しかし、Niの過度の添加は常温または高温でオーステナイトを生成する可能性があり、また、電気抵抗の平均温度係数を低下させる。従って、Niの上限は1%である。望ましくは上限0.5%である。
【0016】
以下の元素は下記の範囲内で本発明鋼に含まれても良い。
Mo≦1、W≦1、Al≦0.5、Ti≦0.5、Nb≦0.5、P≦0.04、S≦0.03、Cu≦0.30、V≦0.5、Ta≦0.5、
Mg≦0.02、Ca≦0.02、Co≦2
【0017】
次に、本発明で規定する室温から1000℃における電気抵抗の平均温度係数の数値限定理由について述べる。
電気抵抗の平均温度係数が大きい材料としては、ディーゼルエンジンの吸気加熱用のヒーター材料に必要とされている。電気抵抗の平均温度係数が大きい材料に通電加熱すると高温になったときに自動的に通電電流が減少するので過昇温を防ぐといった利点がある。これらの特性を発揮するには常温から1000℃において電気抵抗の平均温度係数が6.0×10-4/℃以上必要であるためである。
【0018】
【実施例】
以下に実施例として本発明を詳しく説明する。
真空溶解により、表1に示す組成のディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼の10kgインゴットを溶製し、このインゴットを30mm角の棒材に鍛伸した。この棒材に900℃×1hr空冷なる焼鈍を施した。表1でNo.1〜No.15は本発明鋼であり、No.16〜No.19は比較鋼である。
【0019】
【表1】
Figure 0004210966
【0020】
表1に示すディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼から試料を切り出し、高温電気抵抗測定、耐酸化試験および変態点測定を行った。高温電気抵抗測定は4mm×4mm×50mmの試験片を用いて常温から1000℃までの電気抵抗を測定し、その結果より常温から1000℃における電気抵抗の平均温度係数を算出した。
耐酸化試験はΦ10mm×20mmの各2個ずつの試験片を1000℃×100hr加熱後、平均酸化減量を求めた。
また、変態点測定はΦ5mm×19.5mmの試験片を用いて常温から1000℃まで加熱したときの伸びを測定し、1000℃以下の温度での変態点の有無および変態する場合はその温度を求めた。
【0021】
表2に本発明鋼および比較鋼について電気抵抗の平均温度係数(室温から1000℃)、1000℃×100hrの耐酸化試験による酸化減量および変態点測定結果を示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004210966
【0023】
本発明鋼は常温から1000℃における電気抵抗の平均温度係数が6.0×10-4/℃以上と良好であった。また、1000℃×100hrの耐酸化試験でも酸化減量つまりスケールの剥離がほとんどなく、非常に良好な耐酸化性を示した。また、変態点は900℃以上、特にCrが15%以上の場合は1000℃以上であった。
【0024】
一方、比較鋼はCrが10%より少なくなると(No.16)耐酸化性が不足のため1000℃ではスケールの剥離が発生し、さらには900℃以下で変態するので高温での使用に耐えられない。
また、Crが25%より多くなると(No.17)電気抵抗の平均温度係数が6.0×10-4/℃以下になり、電気抵抗の平均温度係数が不足する。
希土類元素、Y、Hf、Zrが含まれないと(No.18)これも耐酸化性不足のため1000℃ではスケールの剥離が発生し、高温での使用に耐えられない。
Cが0.2%を超えると(No.19)CrがCと結合し、耐酸化性が不足するため1000℃ではスケールの剥離が発生し、さらには1000℃以下で変態するので高温での使用に耐えられない。
このように各々の元素が本発明の範囲内に含まれて初めて、十分な電気抵抗の平均温度係数有し、1000℃での使用に耐えられる特定組成のディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼ができることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、十分な電気抵抗の平均温度係数と1000℃でも優れた耐酸化性を同時に付与した低コストのフェライト系ステンレス鋼を作製することができ、ディーゼルエンジンの吸気加熱用ヒータ材として用いたときその性能を向上させることができる。

Claims (2)

  1. 重量%でC0.2%以下、Si2%以下、Mn1%以下、Ni1%以下(0を含む)、Cr10〜25%および希土類元素0.2%以下、Y0.5%以下、Hf0.5%以下、Zr1%以下の1種または2種以上を含み且つそれらの合計が1%以下であり、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、室温から1000℃における電気抵抗の平均温度係数が6.0×10 −4 /℃以上であることを特徴とする電気抵抗の平均温度係数が大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼。
  2. 重量%でC0.1%以下、Si1%以下、Mn1%以下、Ni1%以下(0を含む)、Cr15〜23%およびLa0.1%以下、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の電気抵抗の平均温度係数が大きいディーゼルエンジン吸気加熱ヒーター用フェライト系ステンレス鋼。
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