JP4210384B2 - 汚泥処理剤および汚泥処理方法 - Google Patents

汚泥処理剤および汚泥処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥処理剤および汚泥処理方法に関する。さらに詳しくは、土木工事、建設工事、浚渫工事などにおいて発生する汚泥を、再利用または廃棄が容易な形態に改質することができる汚泥処理剤、および植物系粉体と該汚泥処理剤とを併用する汚泥処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油井、ガス井、地熱井、トンネル工事、浚渫工事、建設工事、その他の工事現場で発生する掘削泥土、特に排水処理施設で発生するヘドロや砕石場などの工場で発生するスラッジ類などの汚泥、ダム底に堆積した土や海や川に流入した土などは、含水率が高く流動性に富むため、通常のダンプカーやトラックなどによる運搬作業が困難なものである。このため、従来はこれらの汚泥に、石灰あるいはセメント系固化剤を混合して処理したり、水溶性高分子化合物または高吸水性樹脂を混合して処理している。
【0003】
しかし、石灰あるいはセメント系固化剤を用いて、汚泥、特に含水率の高い汚泥を処理する場合には、処理後の汚泥を、取り扱いが容易な状態に達するまでには通常数十時間を要する上、大量の固化剤を汚泥に添加しなければならないという問題がある。
【0004】
一方、水溶性高分子化合物または高吸水性樹脂を用いて、汚泥を処理する場合には、添加後数分程度で汚泥が流動性を失うものの、汚泥の含水率が非常に高い場合や、汚泥が粘性土または有機性土である場合には、処理汚泥の強度が十分には高くならないという欠点があった。
【0005】
このような欠点を解決するための方法の一つとして、汚泥に植物系粉体を添加する方法が知られている。たとえば、特開平7−232148号公報には、水性高分子と天然有機物粉末とを混合してなる残土処理用固化剤が開示され、特開平10−36839号公報には、椰子屑と多糖類系の水溶性高分子物質を含有する掘削泥土の改質剤が開示されている。
【0006】
しかし、特開平7−232148号公報に開示の技術は、天然有機物粉末を水性高分子の増量分散剤として添加しているため、天然有機物粉末の汚泥への添加量は少ない。その結果、天然有機物粉末のもつ吸水効果による汚泥固化の機能は十分発揮されない。一方、特開平10−36839号公報に開示の技術は、椰子殻のもつ吸水効果を利用して掘削泥土を固化させているが、植物系粉体を椰子殻に限定するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、含水汚泥に、添加して混合することにより、短時間でその流動性を失わせ、しかも優れた強度を有する処理汚泥に改質することができる汚泥処理剤、および植物系粉体と該汚泥処理剤と併用する汚泥処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩と無機粉体とを含む汚泥処理剤について鋭意検討した結果、含水汚泥に、所定量の上記汚泥処理剤と所定量の植物系粉体とを添加することにより、含水汚泥を、取り扱いが可能な強度を有する処理汚泥に短時間で改質できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、汚泥100重量部に対して、先ず、植物系粉体1〜100重量部を添加して混合し、次いで、100重量部のカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩と5〜2000重量部の無機粉体を含む汚泥処理剤0.1〜5重量部を添加して混合することを特徴とする汚泥処理方法を提供するものである。また、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩は、その1重量%水溶液の25℃における粘度が、10〜15000mPa・sであり、置換度が0.4〜1.6であることを特徴とする上記の汚泥処理方法を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、汚泥処理剤の添加量は、0.2〜4重量部または2.5〜4重量部であることを特徴とする上記の汚泥処理方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の汚泥処理剤および該汚泥処理剤を用いる汚泥処理方法を詳細に説明する。
【0012】
(汚泥処理剤)
(i)カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩
本発明の汚泥処理剤で用いるカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩(以下、単にCMCともいう。)は、カルボキシセルロースのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩およびこれらの混合塩のいずれでもよいが、好ましくはナトリウム塩である。これらのCMCは、単独にまたは混合して用いることができる。
【0013】
本発明で用いるCMCは、CMCの1重量%水溶液の25℃における粘度(以下、単に1重量%粘度ともいう。)を、10〜15000mPa・s、好ましくは100〜12000mPa・s、さらに好ましくは1000〜10000mPa・sとするものである。1重量%粘度が10mPa・s未満の場合は、処理汚泥の強度が不充分となり、汚泥の再利用や廃棄が困難となる。また、15000mPa・sを超える場合は、汚泥に添加した際に、CMCを汚泥粒子間に均一に分散させることが困難となる。
【0014】
また、本発明で使用するCMCは、エーテル化度(以下、DSともいう。)を、0.4〜1.6、好ましくは0.6〜1.3の範囲とするものである。エーテル化度が0.4未満の場合は、CMCは水に殆ど溶解しないために汚泥を改質することができず、1.6を超える場合は、CMCのコストが高くなり好ましくない。
【0015】
(ii)無機粉体
本発明の汚泥処理剤で用いる無機粉体としては、半水石膏、無水石膏、ポルトランドセメント、アルミナセメント、カルシウムセメント、フライアッシュやポゾランを含有するセメント類、生石灰、消石灰、石灰系の土壌改質剤などの無機水硬性物質、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、籾殻灰、珪藻土焼成物、粘土鉱物多孔質焼成物、ケイ酸カルシウム焼成物などの無機多孔性物質、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、膨潤性雲母などの膨潤性粘土鉱物などを挙げることができる。これらの無機粉体は、単独にまたは混合して用いることができる。
【0016】
(iii)汚泥処理剤
本発明の汚泥処理剤は、上記したCMCと無機粉体とを含むものである。CMCと無機粉体の配合割合は、CMC100重量部に対して、無機粉体5〜2000重量部である。好ましくは10〜1000である。無機粉体の添加量が5重量部未満および/または2000重量部を超える場合には、処理汚泥の強度が不充分となる。
【0017】
本発明の汚泥処理剤は、所望によりその性能を阻害しない範囲で、他の多糖類系の水溶性高分子物質(天然高分子物質および半合成高分子物質)や、水溶性合成高分子物質を含むことができる。多糖類系の水溶性高分子物質や水溶性合成高分子物質は、増粘効果、吸水効果などを有し、処理汚泥の強度をさらに大きくする効果がある。
【0018】
天然高分子物質としては、たとえば、デンプン、マンナン、トロロアオイ粘質物、アラビアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、デキストラン、キサンタンガム、ペクチンなどを挙げることができる。
【0019】
半合成高分子物質としては、たとえば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、α−デンプン、デキストリン、ブリティシュガム、カルボキシルデンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒドデンプン、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、アニオン化グアーガム、メチルグリコールキトサン、アルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0020】
水溶性合成高分子物質としては、たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリ2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0021】
(汚泥処理方法)
本発明の汚泥処理方法は、汚泥に、植物系粉体を添加して混合し、次いで上記の汚泥処理剤を添加して混合するものである。
(i)汚泥
本発明の汚泥処理剤によって処理できる汚泥は、石油井、ガス井、地熱井、トンネル工事、浚渫工事、建設工事、その他の工事現場で発生する掘削泥土である。特に、排水処理施設で発生するヘドロや採石場などの工場で発生するスラッジ類、ダム底に堆積した土や海や川に流入した土などの含水汚泥は、好ましく処理されることができる。汚泥中の含水率は、特に限定するものはないが、含水率15〜95重量%のものを挙げることができる。
【0022】
(ii)植物系粉体
本発明の汚泥処理方法で用いる植物系粉末としては、籾殻粉末、椰子殻粉末、綿花の削り屑、胡桃粉末、木屑、食品製造において発生する廃棄物の乾燥物(たとえば、ビール粕、サトウキビの絞り粕などの乾燥物)を挙げることができる。これらは、単独にまたは混合して用いることができる。これらの植物系粉体は、汚泥中の水分を吸収して、汚泥処理剤が添加された際に、汚泥処理剤の性能を十分に発揮させる効果を有する。また、処理汚泥を補強する効果を有する。
【0023】
(iii)混合方法
本発明の汚泥処理方法においては、汚泥に植物系粉体を添加して混合した後、さらに汚泥処理剤を添加して混合するか、または汚泥に植物系粉体および汚泥処理剤を添加して混合することができる。混合方法は、特に限定するものではなく、ミキサーなどの公知の方法を採用することができる。
【0024】
汚泥と植物系粉体の混合割合は、汚泥の土質、含水率、植物系粉体の種類や性状などにより適宜選択することができるが、汚泥100重量部に対して、植物系粉体1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。植物系粉体の添加量が1重量部未満の場合は、汚泥中の水分の吸収が不充分となり、処理汚泥の強度が不充分となる。また、100重量部を超える場合は、水分の吸収に寄与しない植物系粉体の割合が増えるため経済的でない。
【0025】
また、汚泥、植物系粉体、汚泥処理剤の混合割合は、混合物の土質、含水率、汚泥処理剤の種類や性状などにより適宜選択することができるが、汚泥100重量部に対して、植物系粉体1〜100重量部、汚泥処理剤0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜4重量部、さらに好ましくは2.5〜4重量部である。汚泥処理剤の添加量が0.1重量部未満の場合は、処理汚泥を固化することができず、5重量部を超える場合は、CMCによる粘着性が強くなりすぎ好ましくない。また、汚泥に対するCMCおよび無機粉体の配合割合は、汚泥100重量部に対して、CMC0.005〜4.75重量部、無機粉体0.005〜4.75重量部である。
【0026】
本発明の汚泥処理方法においては、植物系粉体および汚泥処理剤は、未粉砕または1mm以上の粒径のものを使用することができるが、ミルなどを用いて粉砕し、粒径を1mm以下であることが望ましい。粒径が1mm以下である場合には、汚泥の処理時間が短くなり効果的である。
【0027】
また、植物系粉体および汚泥処理剤は、両成分が乾燥状態であるとき最も高い効果が示すが、スラリー状でも使用することができる。スラリー状の場合は、高粘性液体用ポンプで輸送することが可能となる。
【0028】
本発明の汚泥処理方法においては、上記したとおり、汚泥に、特定量の上記植物系粉体と、特定量の上記汚泥処理剤を添加して混合することによってのみ、短時間でその流動性を失わせ、取り扱いが容易で、しかも優れた強度を有する処理汚泥に改質することができるものである。
【0029】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
実施例および比較例で用いた汚泥、植物系粉体、CMC、無機粉体およびその他の成分は、次のとおりである。
(1)汚泥
排水処理施設(ダイセル化学工業株式会社網干工場)より採取した液状汚泥を用いた。固形分は0.16重量%(含水率は99.84重量%)であった。
(2)植物系粉体
木粉((株)島田商会製)および綿花の削り屑((株)テルナイト製「テルストップP」)を用いた。
(3)CMC
1重量%粘度1300mPa・sおよび置換度0.68のCMC(ダイセル化学工業株式会社製CMCダイセル<1190>)、および1重量%粘度9000mPa・sおよび置換度0.75のCMC(ダイセル化学工業株式会社製CMCダイセル<2280>)を用いた。
(4)無機粉体
パーライト(三井金属工業株式会社製パ−ライトネニサンソ防散3号)およびフライアッシュ(石炭ボイラーで発生したもの)を用いた。
(5)その他の成分
ポリアクリル酸ナトリウム(日本化薬(株)製パナカヤクF)およびアルギン酸ナトリウム(君津化学(株)製アルギテックスM−1)を用いた。
【0031】
CMCの粘度は、CMCの1重量%水溶液の粘度を表し、JIS K7117に準拠して測定した。B型粘度計を用いて、25℃および回転数60rpmで測定した。
【0032】
(実施例1)
汚泥としての液状汚泥100重量部に、植物系粉体として木粉30重量部を添加し、撹拌モーターで5分間撹拌しながら混合した。次いで、CMCとしてCMCダイセル<1190>と、無機粉体としてパーライトを混合して得た汚泥処理剤を1重量部添加し、5分間撹拌しながら混合して、団粒状の処理汚泥を得た。表1に、液状汚泥、木粉および汚泥処理剤の配合割合(重量部)、および汚泥処理剤の配合割合(重量部)とを示した。
【0033】
【表1】
Figure 0004210384
【0034】
次に、調製した処理汚泥について、圧縮強度を測定した。表2に測定装置および主な測定条件を示した。また、表1に測定結果を示した。
【0035】
【表2】
Figure 0004210384
【0036】
(実施例2)
実施例1において、木粉の代わりに綿花の削り屑を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、団粒状の処理汚泥を調製し、その圧縮強度を測定した。表1にその結果を示した。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、パーライトの代わりにフライアッシュを用いて汚泥処理剤を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、団粒状の処理汚泥を調製し、その圧縮強度を測定した。表1にその測定結果を示した。
【0038】
(実施例4)
実施例1において、CMCダイセル<1190>の代わりにCMCダイセル<2280>を用いて汚泥処理剤を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、団粒状の処理汚泥を調製し、その圧縮強度を測定した。表1にその測定結果を示した。
【0039】
(比較例1)
実施例4において、CMCダイセル<2280>の代わりにポリアクリル酸ナトリウムを用いて汚泥処理剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、団粒状の処理汚泥を調製し、その圧縮強度を測定した。表1にその測定結果を示した。
【0040】
(比較例2)
実施例3において、CMCダイセル<1190>の代わりにアルギン酸ナトリウムを用いて汚泥処理剤を調製したこと以外は、実施例3と同様にして、団粒状の処理汚泥を調製し、その圧縮強度を測定した。表1にその測定結果を示した。
【0041】
表1に示した結果から明らかなように、CMCと無機粉体を含む汚泥処理剤を用いて調製した実施例1〜4の処理汚泥は、優れた圧縮強度を示した。しかし、CMCを含まない汚泥処理剤を用いて調製した比較例1および2の処理汚泥の圧縮強度は劣るものであった。
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的に説明したように、汚泥処理剤を、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩100重量部と、無機粉体5〜2000重量部の混合物とし、また汚泥100重量部に対して、植物系粉体1〜100重量部と上記の汚泥処理剤0.1〜5重量部とを添加して混合したことよって、汚泥に含まれる水分が植物系粉体中に吸収され、かつ植物系粉体により汚泥が補強され、さらに汚泥処理剤中のCMCによる増粘効果、吸水効果、さらにCMCと無機粉体との相乗作用により、取り扱いの容易な処理汚泥に改質することができ、その再利用または廃棄が容易となるという効果を奏する。

Claims (4)

  1. 汚泥100重量部に対して、先ず、植物系粉体1〜100重量部を添加して混合し、次いで、100重量部のカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩と5〜2000重量部の無機粉体を含む汚泥処理剤0.1〜5重量部を添加して混合することを特徴とする汚泥処理方法
  2. カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩は、その1重量%水溶液の25℃における粘度が、10〜15000mPa・sであり、置換度が0.4〜1.6であることを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法
  3. 汚泥処理剤の添加量は、0.2〜4重量部であることを特徴とする請求項記載の汚泥処理方法。
  4. 汚泥処理剤の添加量は、2.5〜4重量部であることを特徴とする請求項記載の汚泥処理方法。
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