JP4209619B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性半導体で活性層を形成した薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)を用いた半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(従来技術1)
従来のトップゲート型の多結晶シリコンNチャネルTFT作製工程例について、図8(A)〜図8(E)を用いて説明する。基板上に下地絶縁膜1と活性層となる結晶性シリコン層を形成した後、結晶性シリコン層を、フォトリソグラフィとエッチング工程によって、島状結晶性シリコン膜2に形成する。島状結晶性シリコン層2上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3上にゲート電極膜4を形成する。(図8(A))
【0003】
ゲート電極膜4を、フォトリソグラフィとエッチング工程によって、ゲート電極5を形成する。次に低濃度ドレイン(LDD)領域を形成するために、イオンシャワー法やイオンドーピング法を用いて、N-ドーピングする。このとき、ゲート電極がドーピングマスクになるためにセルフアラインでN-ドーピング領域が形成できる。(図8(B))
【0004】
フォトリソグラフィによってN+ドーピング領域のパターニングをおこない、イオンシャワー法やイオンドーピング法を用いて、N+ドーピングする。ただし、LDD領域を形成しない場合には、このフォトリソグラフィ工程は必要としない(基板全面にN+ドープして、シングルドレイン構造TFTとすればよい)が、通常、多結晶シリコンTFTをアクティブマトリクス型の液晶表示装置の画素部素子として用いる場合はオフリーク電流低減のためにLDD領域を形成することが必要である。ゲート電極5およびゲート絶縁膜3上に層間絶縁膜8を成膜する。(図8(C))
【0005】
層間絶縁膜に、フォトリソグラフィとエッチング工程によって、コンタクトホールを形成する。そして、ソース及びドレイン電極層9を成膜する。これによって、コンタクトホール底部の島状結晶性シリコン層2のソース及びドレイン領域とソース及びドレイン電極層がコンタクトすることになる。(図8(D))
【0006】
ソース及びドレイン電極層9をフォトリソグラフィとエッチング工程によって、ソース及びドレイン電極10に形成する。以上のように、LDD領域を有するトップゲート型の多結晶シリコンNチャネルTFT作製工程において、ソース及びドレイン電極を形成するまでに、必要なフォトマスク枚数は5枚である。(図8(E))
【0007】
(従来技術2)
次に、特開平9−45925号公報に開示されているように、ソース及びドレイン電極からの不純物注入をすることで、従来技術1と比較して、マスク枚数が1枚削減される一例を図9(A)〜図9(E)を用いて説明する。
【0008】
基板上に下地絶縁膜11と活性層となる結晶性シリコン層を形成した後、結晶性シリコン層を、フォトリソグラフィとエッチング工程によって、島状結晶性シリコン膜12に形成する。島状結晶性シリコン層12上にゲート絶縁膜13を形成する。ゲート絶縁膜13上にゲート電極膜14を形成する。(図9(A))
【0009】
ゲート電極膜14を、フォトリソグラフィとエッチング工程によって、ゲート電極15を形成する。(図9(B))
【0010】
ゲート電極15およびゲート絶縁膜13上に層間絶縁膜16を成膜する。(図9(C))
【0011】
層間絶縁膜にフォトリソグラフィとエッチング工程によって、コンタクトホールを形成する。そして、アルミニウムからなる導電体層17を成膜する。これによって、コンタクトホール底部の島状結晶性シリコン層12のソース及びドレイン領域と導電体層17がコンタクトすることになる。(図9(D))
【0012】
所望の形状にパターニングすることで、ソース及びドレイン電極18を形成する。続いて、透明絶縁基板の裏面からRTA法を用いてランプ光を照射する。すると、アルミニウム膜からなるソース及びドレイン電極18がランプ光を吸収して加熱されソース及びドレイン電極18中のアルミニウムが多結晶シリコン膜12中へ固相拡散する。その結果、シリコンに対してはp型不純物となるアルミによって多結晶シリコン膜2中にp型のソース及びドレイン領域19が形成される。(図9(E))
【0013】
上記従来技術1に対する利点としては、ソース及びドレイン電極に対してソース及びドレイン領域を自己整合的に形成できること、および、ソース及びドレイン領域への不純物注入のためのマスク枚数を1枚削減できる点がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
半導体装置の作製においては、各工程処理での不良品発生率が有限の値で存在し、半導体装置における不良品発生の確率は、工程数の増加に伴い累積して増加するため、製品の歩留まりは減少することになる。従って、工程数を減少させることは製品の歩留まりを上げるために、非常に重要な課題である。
【0015】
例えば、従来技術2では、従来技術1と比較してソース及びドレイン領域のドープパターンマスクを1枚削減できる。このようにドープパターンマスクを1枚削減することで、洗浄工程、レジスト塗布工程、レジストベーキング工程、露光工程、現像工程、基板乾燥工程、ドーピング工程、レジストアッシング、剥離工程、基板乾燥工程を全て無くすことができる。
【0016】
さらに従来技術2では、従来技術1と比較して1回分のマスクパターニング工程を無くし、ソース及びドレイン電極に対してソース及びドレイン領域を自己整合的に形成することができる。半導体装置作製においては、工程終了までに使用する複数のマスク間の重ね合わせずれ量(マスク設計時の理想的な設計パターンからのずれ量)が、その半導体装置構造を決定する要因の一つである。重ね合わせずれ量が大きすぎる場合には、目的とする半導体装置構造ができなくなるということであり、必要な半導体装置の電気特性が得られなくなる場合がある。従って、自己整合的に半導体装置構造を作製できることは大変に望ましいことである。
【0017】
このように、最終的に作製する半導体装置構造を変えることなく、マスク枚数を1枚減少させるプロセス方法を見いだすということは、それに伴う多くの工程を削減できること、および半導体装置構造を自己整合的に作製できることである。
【0018】
一方で、従来技術2の問題点としては、ソース及びドレイン電極主材料のAlを活性層に拡散させているが、この方法では、安定したプロセスにはなり得ない。SiとAlは低温で合金層を形成し、合金化によって界面を通して原子の移動が起こり、"alloy penetration"と呼ばれる有名なトラブルを引き起こすことは「“表面・界面の分析と評価、応用物理学会編、平木昭夫 成沢忠 共著、オーム社、pp4-6”」にも示されている。これは、Al中のSi原子の固溶度が高いことやAl中のSiの拡散係数が高いことが原因であると思われる。"alloy penetration"は全ての素子のコンタクト界面で均一に起こる現象ではなく、局所的に発生するので、これでは、ロット間、基板間、素子間においてばらついたTFT構造となり、安定した制御性のあるプロセス方法とはいえない。
【0019】
特に、プロジェクターなどの用途で、高温プロセスで作製される、画素部TFTでは、縮小化の傾向にある。例えば、対角0.7インチ型の液晶表示装置で、XGA(1024×768画素)という高精細な表示を実現するためには、画素のひとつひとつのサイズが、14μm×14μmと言う極めて小さな面積となっている。従って、開口率を下げないために、コンタクトホールの面積も1μm角程度にする。このようにトランジスタサイズが縮小化してくると、コンタクトホールとチャネル領域間の距離も数μm以下になるので、"alloy penetration"などがおこると、チャネル領域にまで不純物が拡散して、目的とするデバイス構造を破壊してしまう。
【0020】
本発明は従来技術と比較して、マスク枚数を削減することで工程数を削減し、不良品発生の確率を減少させることができる半導体装置構造の作製方法を提供することを課題とする。更に、本発明では、ソース(ドレイン)領域に対するソース(ドレイン)電極パターン位置を自己整合的に決めることができ、かつ、LDD領域を自己整合的に決めることでマスク重ね合わせ誤差に起因するLDD長ばらつきを減少することができる半導体装置構造の作製方法を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は、絶縁基板上にTFTの活性層となる結晶性半導体層を形成する第1工程、結晶性半導体層を島状に形成する第2工程、島状結晶性半導体層を覆うようにゲート絶縁膜を形成する第3工程、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上のゲート絶縁膜をエッチング加工してコンタクトホールを形成する第4工程、ゲート絶縁膜上および島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上に不純物をドーピングした導電体層を成膜する第5工程、導電体層をエッチング加工して、ソース及びドレイン電極およびゲート電極を同時に形成する第6工程、熱処理によってソース及びドレイン電極から島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域にドーパント不純物を熱拡散させてオーミックのコンタクト接合を形成し島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする第7工程を備えるものである。
【0022】
また他の構成は、絶縁基板上に結晶性半導体層を形成する第1工程、結晶性半導体層を島状に形成する第2工程、島状結晶性半導体層を覆うようにゲート絶縁膜を形成する第3工程、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上のゲート絶縁膜をエッチング加工してコンタクトホールを形成する第4工程、ゲート絶縁膜上および島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上に不純物をドーピングした導電体層を成膜する第5工程、導電対層をエッチング加工してソース及びドレイン電極およびゲート電極を同時に形成する第6工程、ソース及びドレイン電極およびゲート電極をマスクにしてソース及びドレイン電極およびゲート電極が直上に存在しない領域の島状結晶性半導体層に選択的に第一導電型となる不純物をイオンドーピングまたはイオン注入する第7工程、熱処理によってソース及びドレイン電極から島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域にドーパント不純物を熱拡散させて、オーミックなコンタクト接合を形成し島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする第8工程とを備えるものである。
【0023】
また他の構成は、絶縁基板上にTFTの活性層となる結晶性半導体層を形成する第1工程、結晶性半導体層を島状に形成する第2工程、島状結晶性半導体層を覆うようにゲート絶縁膜を形成する第3工程、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上のゲート絶縁膜をエッチング加工してコンタクトホールを形成する第4工程、ゲート絶縁膜上および島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上に不純物をドーピングした導電体層を成膜する第5工程、導電体層をエッチング加工してソース及びドレイン電極およびゲート電極を同時に形成する第6工程、熱処理によってソース及びドレイン電極から島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域にドーパント不純物を熱拡散させてオーミックなコンタクト接合を形成し島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする第7工程、熱処理によって島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域から島状結晶性半導体層のチャネル領域方向にドーパント不純物を熱拡散させてLDD領域を形成する第8工程とを備えるものである。
【0024】
上記発明の構成において、電体層はドープドシリコン層またはドープドシリコンゲルマニウム層を適用することができる。また、導電体層は積層構造であり、かつ、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域と接合する層をドープドシリコン層またはドープドシリコンゲルマニウム層で形成しても良い。ここで積層構造を構成する膜のうち、少なくとも1層がシリサイド層で形成することができる。当該シリサイド層は、モリブデンシリサイド、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、白金シリサイド、パラジウムシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイドのいずれか一つを適用することができる。
【0025】
導電体層には、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域と接合する領域にP、As、Sb、B、Al、Ga、Inの少なくともいずれか一種が1×1019cm-3以上の濃度で含ませても良い。
【0026】
本発明の構成は、第一導電型とはNチャネル型であり、かつ、基板上に作製した全てのトランジスタがNチャネル型で構成された単極性の半導体装置の作製に適用することができる。
【0027】
本発明の構成は、第一導電型とはPチャネル型であり、かつ、基板上に作製した全てのトランジスタがPチャネル型で構成された単極性の半導体装置の作製に適用することができる。
【0028】
上記本発明の構成について図10と図11とを用いて説明する。基板上に薄膜トランジスタの活性層となる島状結晶性半導体層104およびゲート絶縁膜105を形成し(図10(B))、配線と半導体層とが接触する領域となるソース及びドレイン領域上のゲート絶縁膜を部分的にエッチングしてコンタクトホールを形成し(図10(C))、ソース及びドレイン配線材料のドープドシリコン層106を成膜する(図10(D))。
【0029】
次に、ドープドシリコン層をフォトリソグラフィ法でエッチング加工して、ソース電極108、ドレイン電極107およびゲート電極109を同時に形成する(図10(E))。これにより、自己整合的にソース及びドレイン電極とゲート電極の位置関係が定まることになる。
【0030】
そして、熱処理によって、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域に、ソース及びドレイン電極から、ドーパント不純物を熱拡散させて、オーム性のコンタクト接合を形成し、かつ、ソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする。これにより、自己整合的にソース電極とソース領域との位置関係、ドレイン電極とドレイン領域との位置関係それぞれが自己整合的に定まることになる。ここで、第一導電型とは、Nチャネル型またはPチャネル型のことを示し、Nチャネル型の場合のドーパントはリンや砒素であり、Pチャネル型の場合はボロン、ガリウム、インジウムなどである。
【0031】
以上でオフセットゲート型TFTが作製できる。従来技術1で同じ構造のTFTを作製するために必要なパターニングマスク枚数は5枚であったが、本発明の方法では▲1▼島状半導体層形成、▲2▼コンタクトホール形成、▲3▼ソース及びドレイン電極およびゲート電極形成の3枚である。
【0032】
さらに、上記構成に加えて、LDD領域を形成する場合には、以下の2つの方法どちらかでおこなうことが好ましい。
【0033】
まず、方法Aは、ソース及びドレイン電極およびゲート電極を同時に形成した後、これらの電極をマスクにして、イオン注入装置もしくはイオンドーピング装置を用いて、第一導電型となる不純物をドーピングする方法である(図11(F))。その後、熱処理によってソース及びドレイン電極から、ドーパント不純物を熱拡散させて、オーム性のコンタクト接合を形成させる。このとき、ソース及びドレイン領域の高濃度不純物領域からLDD領域にかけての不純物濃度勾配が単調減少する必要がある。なぜならば、それらの間に高シート抵抗領域があると高電界緩和を目的とするLDD領域としての意味がなくなるからである。つまり、図11(G)のΔで示す領域はソース及びドレイン電極から、ドーパント不純物を熱拡散させなくてはならない。従って、熱処理温度と時間は、ソース及びドレイン領域からLDD領域にかけた第1導電型不純物濃度勾配が単調減少するように、不純物が熱拡散できる温度・時間条件で決定される。図11(H)は不純物濃度が30、31、32、33の順番に連続的に減少している状態を示したものである。
【0034】
方法Bは、熱処理によって、ソース及びドレイン領域から、半導体層のチャネル領域方向に、ドーパント不純物を熱拡散させてLDD領域を形成する方法である。このとき、ドーパント不純物の濃度分布は熱拡散によってのみ決まる。従って、方法Aと比較して、LDD領域へのイオン注入もしくはイオンドーピング工程は削減できる。
【0035】
方法Aと方法Bのどちらの方法であっても、従来技術2でLDD領域を作製する場合よりも、LDD領域長のばらつきは減少できる。なぜならば、ソース及びドレイン電極とゲート電極は同時にパターニング加工しているため、従来技術2では問題になるようなマスク重ね合わせ誤差に起因するパターン間の相対位置ずれはない。つまり、従来技術2の作製プロセスで、LDD領域を形成する場合には、マスク重ね合わせ誤差に起因したソース及びドレイン電極とゲート電極間距離のばらつき要因が存在するが、本発明では、マスク重ね合わせ誤差に起因したLDD領域長のばらつき要因はなくなるからである。また、ドープドシリコン中のPまたはB不純物を、活性層中に拡散させる場合には、アルミニウムのようにシリコンと合金化することがないために、不純物領域および濃度の制御性がよいという利点がある。
【0036】
従来技術と比較して、本発明の有効点をまとめると、(1)ソース(ドレイン)領域とソース(ドレイン)電極パターンのマスク重ね合わせ精度を必要としない(自己整合に形成できる)。(2)ソース及びドレイン電極およびゲート電極形成(成膜・露光・ドライエッチング)を一括処理しているため、工程削減になる。また、ゲート電極パターンとソース及びドレイン電極パターンのマスク重ね合わせ誤差がなくなる。(3)熱処理によって、ドープドシリコン配線中のドーパントをソース及びドレイン領域のシリコン層に拡散させることで低シート抵抗を実現する。N+ドーピング領域のパターニングとドーピング装置を用いたドーピング処理を必要としない。(4)熱処理による不純物拡散距離は、ドープドシリコン中の不純物濃度と活性層の不純物濃度、結晶性、および熱処理温度・時間で決まる。このとき、ゲート電極パターンとソース及びドレイン電極パターンが自己整合的に形成できているので、従来技術2と比較して、LDD領域長の基板間ばらつきを減少できる。
【0037】
以上の構成により、本発明では、マスク枚数を2枚減らすことができるため、工程数を削減することができ、不良品発生の確率を減少させて、製品の歩留まり改善が可能である半導体装置の作製方法を提供することができる。更に、本発明では、ソース(ドレイン)領域に対するソース(ドレイン)電極パターン位置を自己整合的に決めることができ、かつ、LDD領域を自己整合的に決めることでマスク重ね合わせ誤差に起因するLDD長ばらつきを減少することができる半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様について図面を参照して詳細に説明する。図10(A)に示すように、基板101上に膜厚10nm〜1000nmの下地絶縁膜102と膜厚30nm〜800nmの半導体膜103を成膜する。基板101は、石英基板、シリコン基板、ステンレス基板を使うことができる。下地絶縁膜102としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜のいずれでもよく、これらの膜の中から、2種類以上組み合わせて積層構造にしてもよい。シリコン基板またはステンレス基板上にTFT構造を作製する場合には下地絶縁膜は必須である。下地絶縁膜は、プロセス中の熱処理によって、基板中の不純物(アルカリ金属、重金属)が活性層の半導体層にまで熱拡散するのを防ぐため、あるいは、基板が変形(反り、うねり)することによって発生する活性層へはたらく応力を緩和するなどの効果もある。一方、石英基板を用いる場合には、もともと基板中の不純物濃度が低く、かつ、1000℃程度の耐熱性もあるため、下地絶縁膜を成膜することなく、基板上に直接に半導体膜を成膜してもよい。成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法、LPCVD法など公知の方法で成膜すればよい。
【0039】
半導体膜103としては、シリコン膜、ゲルマニウム膜、およびシリコンゲルマニウム膜のいずれでもよく、スパッタ法、プラズマCVD法、LPCVD法など公知の方法で成膜すればよい。これらを成膜した段階では、非晶質構造、多結晶構造、または微結晶構造のいずれかである。
【0040】
次に、半導体膜103を公知の方法で結晶化(または再結晶化)する。結晶化の方法としては、電気炉またはRTAで加熱処理することによる固相結晶成長、パルス発振または連続発振の気体レーザーまたは固体レーザーを照射するレーザー結晶化が代表的な方法である。また、触媒元素を利用した固相結晶成長方法もある。
【0041】
触媒元素を用いる場合、特開平7−130652号公報、特開平8−78329号公報で開示された技術を用いることが望ましい。この方法では半導体膜103を形成後にNiを用いて固相結晶化させる。例えば特開平7−130652号公報に開示されている技術を用いる場合、重量換算で5〜100ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピンコート法で非晶質半導体膜に塗布して、ニッケル含有層を形成し、500℃、1時間の脱水素工程の後、500〜650℃で4〜12時間、例えば550℃、8時間の熱処理を行い結晶化する。尚、使用可能な触媒元素は、ニッケル(Ni)の以外にも、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、といった元素を用いても良い。
【0042】
ただし、触媒元素を用いた結晶化により得られた多結晶半導体膜は触媒元素を含んでおり、このままTFTの活性層とすると、オフリーク電流を増大させる可能性がある。そのため、結晶化後にその触媒元素を結晶質半導体膜から除去する工程(ゲッタリング)を行う必要がある。ゲッタリングは特開平10−135468号、特開平10−135469号、または特開平10−270363号公報に開示している方法を用いることができる。
【0043】
以上に示した結晶化後、半導体膜の結晶性を向上させるために、半導体膜上に絶縁膜を形成した後、熱処理を行って、半導体層の上部を熱酸化させるのが望ましい。例えば、減圧CVD装置で20nmの酸化珪素膜を成膜した後、ファーネスアニール炉で熱処理を行う。この処理により、半導体層の上部は酸化される。そして、酸化珪素膜および半導体層の酸化した部分をフッ酸系の薬液でウエットエッチングすると、結晶性の向上した半導体層が得られる。
【0044】
そして、半導体膜を、フォトリソグラフィによるパターニングとドライエッチングによって島状半導体層104に形成する。
【0045】
次に、トランジスタのゲート絶縁膜105を形成する。ゲート絶縁膜105は、LPCVD法、プラズマCVD法、または、スパッタ法などの公知の方法で成膜した、膜厚20〜150nmの珪素を含む絶縁膜である。この珪素を含む絶縁膜としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜があり、また、これらの中の2種類以上の積層構造としてもよい。(図10(B))
【0046】
さらに、ゲート絶縁膜としての電気特性を向上させるために、ゲート絶縁膜105を成膜後に、不活性雰囲気または酸素を含む雰囲気中で700℃〜1100℃の高温熱処理をしてもよい。これにより、ゲート絶縁膜の絶縁耐性が高められ、膜中の固定電荷が低減し、半導体膜との界面における界面準位密度の低減が期待できる。
【0047】
そして、フォトリソグラフィによるパターニング後、半導体層のソース及びドレイン領域上のゲート絶縁膜105をエッチングして、コンタクトホールを形成する(図10(C))。次に、膜厚100〜500nmの耐熱性を有する導電膜106を成膜する(図10(D))。導電膜としては結晶性のドープドシリコン膜またはドープドシリコンゲルマニウム膜を使う。これらの膜はLPCVD法によって成膜することができる。また、ドープドシリコン膜(またはドープドシリコンゲルマニウム膜)と積層して、ドープドシリコンゲルマニウム膜、シリサイド膜、Ta、W、Ti、Al、Mo、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素を主成分とする膜などを成膜したものを導電膜とすることもできる。ただし、少なくとも、ソース及びドレイン領域と直接接合する層は結晶性のドープドシリコン層またはドープドシリコンゲルマニウム層であることが必要である。また、ドープドシリコン膜またはドープドシリコンゲルマニウム膜中の不純物は、Nチャネルトランジスタを作製する場合には、リンや砒素などの15族元素であり、
Pチャネルトランジスタを作製する場合には、ボロンやガリウムなどの13族元素であり、濃度は1×1019cm-3以上の濃度で含まれていることが必要である。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストマスクを形成後、エッチングによってソース電極108、ドレイン電極107及びゲート電極109を同時に形成する。これにより、自己整合的にソース及びドレイン電極とゲート電極の位置関係が定まることになる(図10(E))。
【0049】
ここで、LDD領域を形成する場合には、イオンドーピングまたはイオン注入で不純物ドーピングすることができる。ソース及びドレイン電極とゲート電極がドーピングマスクになるために、LDD領域にのみ選択的にドーピングされ、低濃度不純物領域110と111を作製できる(図11(F))。LDD領域を形成する必要がなければこの工程はなくてよい。その場合には、オフセットゲート構造のTFTとなる。
【0050】
次に、電極および配線107〜109を覆って、第1の層間絶縁膜112を形成する。この第1の層間絶縁膜112としては、プラズマCVD法、スパッタ法またはLPCVD法などの公知の成膜方法で、厚さを50〜200nmとして珪素を含む絶縁膜で形成すればよい。この層間絶縁膜は、次工程の熱処理時に、ゲート配線およびソース及びドレイン配線の表面が酸化されて配線抵抗が高くなるのを防ぐために成膜している。
【0051】
そして、熱処理をおこない、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域に、ソース及びドレイン電極から、ドーパント不純物を熱拡散させて、オーム性のコンタクト接合を形成し、かつ、ソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする(図11(H))。これにより、自己整合的にソース電極とソース領域との位置関係、および、ドレイン電極とドレイン領域との位置関係それぞれが自己整合的に定まることになる
【0052】
熱処理方法としては、電気炉で、窒素などの不活性雰囲気中で、800℃〜1050℃で30分〜6時間でおこなえばよい。
【0053】
目的とする不純物濃度勾配(熱拡散長)を得るための熱処理温度と時間は、活性層の結晶性、電極のドープドシリコンの不純物濃度などによって条件が変わるため、最適な条件出しをする必要がある。本発明では、自己整合的にソース及びドレイン電極とゲート電極の位置関係が定まった状態で、かつ、不純物の熱拡散長を制御しているため、一度、最適な条件を出せば、不純物導入領域を制御性よく定めることが可能である。また、熱拡散のみでLDD領域を作製することも可能である。また、このときの熱処理によって、不純物の活性化も同時におこなうことができる。
【0054】
【実施例】
[実施例1]
本実施例では、アクティブマトリクス基板の作製方法について図1〜図7を用いて説明する。本明細書では、画素部TFT、保持容量および、画素部周辺に設ける駆動回路TFTとを同一基板上に形成された基板を、便宜上アクティブマトリクス基板と呼ぶ。
【0055】
基板501としては、石英基板や単結晶シリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いる。本実施例では液晶表示装置の一種であるプロジェクターに組み込むための、アクティブマトリクス基板を石英ガラス基板を用いて作製する場合を示す。
【0056】
石英基板501上に下部遮光膜を形成する。下部遮光膜は、Ta、W、Cr、Mo、Si等を主元素とする導電性材料、シリサイドを用いた単層構造またはそれらの積層構造により300nm程度の膜厚で形成する。この下部遮光膜はゲート配線としての機能も有する。本実施例では、LPCVD法で成膜した、膜厚75nmの多結晶シリコン膜を形成し、続いてスパッタ法で膜厚150nmのWSix(x=2.0〜2.8)を積層成膜した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、不要な部分をエッチングして、図1(A)の502と503に示すように下部遮光膜を形成する。
【0057】
そして基板501および下部遮光膜503上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る膜厚10〜650nm(好ましくは50〜600nm)の下地膜504を形成する。また、下地膜504は単層構造でなく、絶縁膜を2層以上積層させた構造を用いても良い。本実施例では、下地膜504として、プラズマCVD法を用い、SiH4、N2Oを反応ガスとして成膜される膜厚580nmの酸化窒化珪素膜504(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成する。
【0058】
次いで、下地膜504上に半導体膜505を形成する。半導体膜505は、非晶質シリコン膜または非晶質シリコンゲルマニウム膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により、25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで形成する。本実施例では、LPCVD法で非晶質シリコン膜を53nmの膜厚で成膜した
【0059】
そして、結晶化をおこなう。実施例ではニッケルなどの金属触媒を用いた結晶化法を行って、半導体膜を結晶化する。また、ニッケルなどの触媒を用いた結晶化法の他に、公知の結晶化処理であるレーザ結晶化法、熱結晶化法でもよい。また、これらの結晶化方法を組み合わせて行ってもよい。本実施例では、特開平7−130652号公報に開示されている技術を用いる。重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液を非晶質半導体膜に塗布してニッケル含有層を形成し、500℃、1時間の脱水素工程の後、500〜650℃で4〜12時間、例えば550℃、8時間の熱処理を行い結晶化する。尚、使用可能な触媒元素は、ニッケル(Ni)の以外にも、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、といった元素を用いても良い。
【0060】
また、レーザ結晶化法も適用する場合には、パルス発振型または連続発光型のエキシマレーザやYAGレーザ、YVO4レーザ等を用いることができる。これらのレーザを用いる場合には、レーザ発振器から放射されたレーザ光を光学系で線状に集光し半導体膜に照射する方法を用いると良い。結晶化の条件は実施者が適宣選択するものであるが、エキシマレーザを用いる場合はパルス発振周波数300Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜800mJ/cm2(代表的には300〜600mJ/cm2)とする。また、YAGレーザを用いる場合にはその第2高調波を用いパルス発振周波数1〜300Hzとし、レーザーエネルギー密度を300〜1000mJ/cm2(代表的には350〜800mJ/cm2)とすると良い。そして幅100〜1000μm、例えば400μmで線状に集光したレーザ光を基板全面に渡って照射し、この時の線状ビームの重ね合わせ率(オーバーラップ率)を50〜98%として行ってもよい。
【0061】
続いて、トランジスタのチャネル領域として利用する半導体層から、結晶化を助長するために用いた金属元素を除去または低減するために、ゲッタリングを行う。ゲッタリングについては特開平10−135468号公報、特開平10−135469号公報、または特開平10−270363号公報等に開示している方法を適用すればよい。本実施例では、マスクとして、膜厚50nmの酸化珪素膜を形成し、パターニングを行って、所望の形状の酸化珪素膜507a〜507cを得る。そして、半導体膜に選択的に15族に属する元素(代表的にはP(リン))を導入して不純物領域508a〜508eを形成する。なお、不純物元素の導入の方法は、プラズマドーピング法、イオン注入法、イオンシャワードーピング法から選ばれた一種または複数種の方法により導入すればよい。
【0062】
そして、窒素雰囲気中で550〜800℃、5〜24時間、例えば600℃、12時間の熱処理を行う。すると、多結晶半導体膜のリンが添加された領域508a〜508eは、非添加の領域と比較して、触媒金属の固溶度の高い領域であるため、ゲッタリングサイトとして働く。熱処理によって、多結晶半導体膜中に存在する触媒金属をリンが添加された領域にまで、熱拡散させて、偏析させることができる。これにより、TFTのチャネル領域の触媒元素の濃度を1×1017atoms/cm3以下好ましくは1×1016atoms/cm3程度にまで低減された半導体膜を得ることができる。このようにして作製したTFTは結晶性が良いことから高い電界効果移動度が得られ、オフ電流値が下がり、良好なトランジスタ特性を達成することができる。
【0063】
以上に示した、結晶化後、半導体膜の結晶性を向上させるために犠牲酸化をおこなうことが望ましい。半導体膜上に絶縁膜を形成した後、熱処理を行って、半導体層の上部を熱酸化させる。例えば、減圧CVD装置で20nmの酸化珪素膜を成膜した後、電気炉で熱処理を行う。この処理により、半導体層の上部は酸化される。そして、酸化珪素膜および半導体層の酸化した部分をフッ酸系の薬液でウエットエッチングすると、結晶性の向上した半導体層が得られる。
【0064】
また、TFTのしきい値を制御するために不純物元素(ボロンまたはリン)をチャネル領域にドーピングしてもよい。その場合、ドーピング処理工程位置は、半導体膜成膜後からゲート電極膜形成前までの工程ならばどの工程でもドーピングすることが可能である。また、PCVD法やLPCVD法で半導体膜の成膜時にB26やPH3のドーパントガスを導入して成膜することも可能である。
【0065】
そして、結晶性半導体膜をフォトリソグラフィ法でパターニング後、エッチング加工して、島状半導体層509〜511を形成する。(図2(A))
【0066】
次いで、半導体層509〜511を覆うゲート絶縁膜512を形成する。ゲート絶縁膜512はプラズマCVD法、LPCVD法、またはスパッタ法を用い、厚さを20〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、LPCVD法により80nmの厚さで酸化珪素膜で形成した。もちろん、ゲート絶縁膜は酸化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を用いても良い。例えば、SiH4、N2Oを反応ガスとしてプラズマCVD法により酸化窒化珪素膜を成膜することができる。
【0067】
そして、導電膜と半導体層のソース及びドレイン領域とを接続するためのコンタクトホール513a〜513f、および導電膜と下部遮光膜503とを接続するためのコンタクトホール513gを形成する。次に、膜厚100〜500nmの導電膜514を形成する。本実施例では、成膜温度を640℃、圧力0.15Torr、SiH4流量200sccm、PH3流量80sccmの条件で成膜することで、1.5×1020cm-3のリンの含まれる多結晶性のドープドシリコン膜を成膜する。
【0068】
なお、本実施例では、導電膜514をリンドープドシリコンとしているが、リンドープドシリコンゲルマニウム膜でもよい。また、2層以上の積層構造でもよく、その場合には、リンドープドシリコン(またはリンドープドシリコンゲルマニウム)膜上に、シリサイド膜、または、Ta、W、Ti、Mo、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または当該元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、積層成膜する。また、AgPdCu合金を用いてもよい。また、Al等の耐熱性の低い導電膜を耐熱性の高い導電膜で挟んだ3層構造としてもよい。
【0069】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストマスクをパターニングして、電極及び配線を形成するためのエッチング処理を行う。本実施例ではエッチング条件として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25:25:10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。こうしてゲート電極515、516、517、ソース及びドレイン電極518〜522を同時に形成する。
【0070】
図5にここまで作製された状態の上面図を示す。なお、図1〜図2において対応する部分には同じ符号を用いている。図2(C)中の鎖線A−A’は図5中の鎖線A―A’で切断した断面図に対応している。
【0071】
ここでLDD領域を有するTFTを作製する場合、n型の不純物元素となるリンまたは砒素をイオンドーピング法またはイオン注入法でドーピングする。不純物元素を導入するときのドーズ量は1×1013〜5×1014/cm2とし、加速電圧を5〜80keVとして行う。本実施例ではドーズ量を4.6×1013/cm2とし、加速電圧を60keVとして行う。このとき、ゲート電極とソース及びドレイン電極がドーピングマスクとなるため、選択的に低濃度不純物領域524a〜524dが形成され、この領域には1×1018〜1×1020/cm3の濃度範囲でリン原子がドーピングされることになる。
【0072】
次に、電極および配線515〜523を覆って、第1の層間絶縁膜525を形成する。この第1の層間絶縁膜525としては、プラズマCVD法で成膜した、厚さを100nmとした酸化窒化珪素膜とする。この層間絶縁膜は、次工程の熱処理時に、ゲート配線、ソース及びドレイン配線の表面が酸化されるのを防ぐために成膜する。
【0073】
そして、熱処理をおこない、島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域に、ソース及びドレイン電極から、ドーパント不純物を熱拡散させて、オーム性のコンタクト接合を形成し、かつ、ソース及びドレイン領域526〜531を第一導電型の低シート抵抗とする(図3(A))。これにより、自己整合的にソース電極とソース領域との位置関係、および、ドレイン電極とドレイン領域との位置関係それぞれが自己整合的に定まることになる。
【0074】
本実施例での熱処理条件は、縦型拡散炉で、酸素濃度が1ppm以下の窒素雰囲気中において、950℃で30分間とした。本処理条件は、ソース及びドレイン電極からLDD領域の間に高抵抗領域がなくなるまで不純物が拡散するように決定する必要がある。図15は、熱処理条件および、コンタクト端とLDD領域までの距離(図11(G)のΔに相当する距離)を変えて作製したTFTのドレイン電流を示したものである。ソース及びドレイン電極からLDD領域の間に高抵抗領域があると、直列抵抗となるので、ドレイン電流は減少することになる。図15のデータから、コンタクト端とLDD間距離が0.8μm以下では、950℃で30分間の熱処理をすることで、充分なドレイン電流が得られており、ソース及びドレイン電極からLDD領域の間に高抵抗領域が存在していないことを示している。
【0075】
目的とする不純物濃度勾配(熱拡散長)を得るための熱処理温度と時間は、活性層の結晶性、電極のドープドシリコンの不純物濃度などによって条件が変わるため、最適な条件出しをする必要がある。本発明では、自己整合的にソース及びドレイン電極とゲート電極の位置関係が定まった状態で、かつ、不純物の熱拡散長を制御しているため、一度、最適な条件を出せば、不純物導入領域を制御性よく定めることが可能である。また、熱拡散のみでLDD領域を作製することも可能である。また、このときの熱処理によって、不純物の活性化も同時におこなうことができる。
【0076】
さらに、3%の水素を含む雰囲気中で350℃1hrの熱処理を行う。この水素化処理は、多結晶シリコン層の粒界や粒内欠陥、およびゲート絶縁膜との界面におけるダングリングボンドを終端すると考えられる。水素化処理をすることで、サブスレッショルド係数の低減や、オフリーク電流の低減など、TFT特性は大きく改善することがわかっている。水素化の手段としては、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)や、3〜100%の水素を含む雰囲気中で300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行えばよい。
【0077】
次いで、第1の層間絶縁膜525上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜532を形成する。このとき、保持容量を構成する、ドレイン配線と後工程で形成される上部遮光膜とが平行に形成される方が保持容量が大きくなるため望ましい。そのため、第2の層間絶縁膜532はできるだけ表面が平坦性の良い膜を用いるのが望ましい。また、表面の平坦性を向上させる公知の技術、例えばCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)と呼ばれる研磨工程を用いてもよい。さらに、保持容量を構成する一方の電極と他方の電極との距離が近い方が、容量を大きくすることができる。そのため、平坦性を有する絶縁膜を形成した後、さらにエッチバックや研磨工程等を行って、第2の絶縁膜の表面と、ドレイン配線との距離とをできるだけ近付けることが望ましい。このとき、ドレイン配線上に形成されている第1の層間絶縁膜525を露呈させるのが望ましい。また、容量は誘電体の誘電率にも比例して大きくなる。そのため、第1の層間絶縁膜が第2の層間絶縁膜より高い誘電率を有する膜により形成されていれば、ドレイン配線、層間絶縁膜および上部遮光膜により形成される保持容量をさらに大きくすることが可能である。本実施例では、第2の層間絶縁膜532として膜厚1μmのアクリル樹脂膜を形成し、エッチングを行って、ゲート電極、ソース配線およびドレイン配線上に形成されている第1の層間絶縁膜525の一部を露呈させ、第1の層間絶縁膜および第2の層間絶縁膜とにより表面が平坦化している。
【0078】
なお、本実施例では、第1の層間絶縁膜および第2の層間絶縁膜を形成しているが、もちろん、単層構造としてもよい。この場合においても、表面が平坦化する膜を用いるのが望ましい。
【0079】
そして、第2の層間絶縁膜532上にAl、Ti、W、Cr、または黒色樹脂等の高い遮光性を持つ膜を所望の形状にパターニングして上部遮光膜533を形成する。この遮光膜533は画素の開口部以外を遮光するように網目状に配置する。(図3(B))
【0080】
図6にここまで作製された状態の上面図を示す。なお、図1〜図3において対応する部分には同じ符号を用いている。図3(B)中の鎖線A−A’は図6中の鎖線A―A’で切断した断面図に対応している。
【0081】
さらに、この上部遮光膜533を覆うように第3の層間絶縁膜534を無機絶縁材料や有機絶縁材料により形成する。上部遮光膜と、第3の層間絶縁膜と、後工程で形成される画素電極とにより構成される保持容量を十分なものとするため、第3の層間絶縁膜534は表面が平坦化する膜を用いるのが望ましい。また、絶縁膜を形成した後エッチバックや研磨工程を行って表面を平坦化させて第3の層間絶縁膜534を形成してもよい。さらに、容量を大きくするため、誘電率の高い膜を用いてできるだけ薄く形成するのが望ましい。
【0082】
そして、ドレイン配線522に通じるコンタクトホールを形成し、ITO等の透明導電膜を厚さ100nmで形成し、所望の形状にパターニングすることで画素電極535を形成する。
【0083】
なお、保持容量は2種類あり、1つは上部遮光膜533と画素電極535を電極とし、第3の層間絶縁膜534を誘電体とする容量536であり、もう一つは上部遮光膜533とドレイン配線522を電極とし、第1の層間絶縁膜525を誘電体とする容量537である。本実施例では工程数を増やすことなく、十分な容量を確保することができる方法を示している。
【0084】
図7にここまで作製された状態の上面図を示す。なお、図1〜図4に対応する部分には同じ符号を用いている。図4中の鎖線A−A’は図7中の鎖線A―A’で切断した断面図に対応している。
【0085】
以上の様にして、nチャネル型TFTの駆動回路555と、nチャネル型画素TFT553、保持容量536、537とが同一基板上に形成されたアクティブマトリクス基板が完成する。
【0086】
[実施例2]
実施例1では下部遮光膜をゲート線としていたが、本実施例では、下部遮光膜はなく、上部遮光膜をゲート線とする場合の作製方法について図14を用いて説明する。本実施例で作製するアクティブマトリックス基板は、遮光性が実施例1と比較して劣るため、ビューファインダーなどの液晶表示装置に組み込むことが望ましい。
【0087】
基板601としては、石英基板や単結晶シリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いる。そして基板601上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る膜厚10〜650nm(好ましくは50〜600nm)の下地膜602を形成する。
【0088】
次いで、下地膜602上に半導体膜を形成する。半導体膜505は、非晶質シリコン膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により、25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで形成する。
【0089】
非晶質シリコン形成後、第2の層間絶縁膜平坦化後までの工程は、実施例1と同じなので省略する。(図14(A))
【0090】
第2の層間絶縁膜621をパターニングおよびエッチング加工して、ゲート配線620に通じるコンタクトホールを形成し、遮光性導電膜を厚さ100nmで成膜する。この遮光性導電膜としてはAl、Ti、W、Cr等の高い遮光性と導電性を持つ膜を使う。遮光性導電膜を所望の形状にパターニングして上部遮光膜およびゲート線614とする。
【0091】
さらに、この上部遮光膜614を覆うように第3の層間絶縁膜615を無機絶縁材料や有機絶縁材料により形成する。上部遮光膜と、第3の層間絶縁膜と、後工程で形成される画素電極とにより構成される保持容量を十分なものとするため、第3の層間絶縁膜615は表面が平坦化する膜を用いるのが望ましい。また、絶縁膜を形成した後エッチバックや研磨工程を行って表面を平坦化してもよい。さらに、容量を大きくするため、誘電率の高い膜を用いたり、できるだけ薄く形成するのが望ましい。
【0092】
そして、ドレイン配線607に通じるコンタクトホールを形成し、ITO等の透明導電膜を厚さ100nmで形成し、所望の形状にパターニングすることで画素電極616を形成する。
【0093】
なお、保持容量は上部遮光膜(ゲート線)614と画素電極616を電極とし、第3の層間絶縁膜615を誘電体とする容量617である。
【0094】
以上の様にして、nチャネル型TFTの駆動回路666と、nチャネル型画素TFTと保持容量とを有する画素部663が同一基板上に形成されたアクティブマトリクス基板が完成する。
【0095】
[実施例3]
本実施例では、実施例1で作製したアクティブマトリクス基板から、透過型液晶表示装置を作製する工程を以下に説明する。説明には図12を用いる。
【0096】
まず、実施例1に従い、図4の状態のアクティブマトリクス基板を得た後、アクティブマトリクス基板上、少なくとも画素電極535上に配向膜567を形成しラビング処理を行う。なお、本実施例では配向膜567を形成する前に、アクリル樹脂膜等の有機樹脂膜をパターニングすることによって基板間隔を保持するための柱状のスペーサ(図示せず)を所望の位置に形成する。また、柱状のスペーサに代えて、球状のスペーサを基板全面に散布してもよい。
【0097】
次いで、対向基板569を用意する。次いで、対向基板569上に着色層570、平坦化膜573を形成する。平坦化膜573上には透明導電膜からなる対向電極576を少なくとも画素部に形成し、対向基板の全面に配向膜574を形成し、ラビング処理を施す。
【0098】
そして、画素部と駆動回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とをシール材568で貼り合わせる。シール材568にはフィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサによって均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられる。その後、両基板の間に液晶材料575を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料575には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして図12に示す透過型液晶表示装置が完成する。そして、必要があれば、アクティブマトリクス基板または対向基板を所望の形状に分断する。さらに、対向基板のみに偏光板(図示しない)を貼りつけた。そして、公知の技術を用いてFPCを貼りつけた。以上のようにして作製される液晶表示装置が作製できる。
【0099】
なお、本実施例は実施例1乃至2のいずれか一と自由に組み合わせることが可能である。
【0100】
[実施例4]
本発明を適用して作製した、駆動回路や画素部トランジスタは、アクティブマトリクス型液晶表示装置に代表される電気光学装置に用いることが出来る。即ち、それら電気光学装置を表示部に組み込んだ電子機器全てに本発明を実施出来る。
【0101】
その様な電子機器としては、プロジェクターなどが挙げられる。例として、図13に示す。
【0102】
図13(A)はフロント型プロジェクターであり、投射装置3601、スクリーン3602等を含む。本発明は投射装置3601の一部を構成する液晶表示装置3808やその他の駆動回路に適用することができる。
【0103】
図13(B)はリア型プロジェクターであり、本体3701、投射装置3702、ミラー3703、スクリーン3704等を含む。本発明は投射装置2702の一部を構成する液晶表示装置3808やその他の駆動回路に適用することができる。
【0104】
なお、図13(C)は、図13(A)及び図13(B)中における投射装置3601、3702の構造の一例を示した図である。投射装置3601、3702は、光源光学系3801、ミラー3802、3804〜3806、ダイクロイックミラー3803、プリズム3807、液晶表示装置3808、位相差板3809、投射光学系3810で構成される。投射光学系2810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図13(C)中において矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0105】
また、図13(D)は、図13(C)中における光源光学系3801の構造の一例を示した図である。本実施例では、光源光学系3801は、リフレクター3811、光源3812、レンズアレイ3813、3814、偏光変換素子3815、集光レンズ3816で構成される。なお、図13(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明の構成を採用することにより、以下に示すような有意な効果を得ることが出来る。(a)工程数を削減することを可能とする。(b)ソース(ドレイン)領域とソース(ドレイン)電極パターンのマスク重ね合わせ精度を必要としない(自己整合に形成できる)。(c)ソース及びドレイン電極およびゲート電極形成(成膜・露光・ドライエッチング)を一括処理しているため、工程削減になる。また、ゲート電極パターンとソース及びドレイン電極パターンのマスク重ね合わせ誤差がなくなる。それに伴い、LDD領域長のばらつきを低減できる。(d)熱処理によって、ドープドシリコン配線中のドーパントをソース及びドレイン領域のシリコン層に拡散させることで低シート抵抗を実現する。高濃度不純物ドーピング領域のパターニングとドーピング装置を用いたドーピング処理を必要としない。(e)以上の利点を満たした上で、アクティブマトリクス型の液晶表示装置に代表される半導体装置において、半導体装置の動作特性および信頼性を向上させ、歩留まりの向上を実現することができる。さらに、半導体装置の製造コストを低減することを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に示すTFTの作製工程を示す断面図。
【図2】 実施例1に示すTFTの作製工程を示す断面図。
【図3】 実施例1に示すTFTの作製工程を示す断面図。
【図4】 実施例1に示すTFTの作製工程を示す断面図。
【図5】 画素TFTの構成を示す上面図。
【図6】 画素TFTの構成を示す上面図。
【図7】 画素TFTの構成を示す上面図。
【図8】 従来技術1のTFT作製工程を示す断面図。
【図9】 従来技術2のTFT作製工程を示す断面図。
【図10】 本発明のTFT作製工程を示す断面図。
【図11】 本発明のTFT作製工程を示す断面図。
【図12】 実施例3に示すアクティブマトリクス型液晶表示装置を示す断面図。
【図13】 実施例4に示すプロジェクターを示す断面図。
【図14】 実施例2に示すTFTの作製工程を示す断面図。
【図15】 熱処理条件とドレイン電流との関係を示すグラフ。

Claims (9)

  1. 絶縁性を有する基板上に形成された半導体装置の作製方法であって
    記絶縁性を有する基板上に薄膜トランジスタの活性層となる結晶性半導体層を形成する第1工程と
    記結晶性半導体層をエッチング加工して島状結晶性半導体層を形成する第2工程と
    記島状結晶性半導体層を覆うようにゲート絶縁膜を形成する第3工程と
    記島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上の前記ゲート絶縁膜をエッチング加工してコンタクトホールを形成する第4工程と
    記ゲート絶縁膜上および前記島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域上に、不純物をドーピングした導電体層を成膜する第5工程と
    記導電体層をエッチング加工して、ソース及びドレイン電極およびゲート電極を同時に形成する第6工程と
    処理によって、前記ソース及びドレイン電極から、前記島状結晶性半導体層の前記ソース及びドレイン領域に、ドーパント不純物を熱拡散させて、オーミックなコンタクト接合を形成し、かつ、前記島状結晶性半導体層の前記ソース及びドレイン領域を第一導電型の低シート抵抗とする第7工程と、
    記熱処理によって、前記島状結晶性半導体層の前記ソース及びドレイン領域から、前記島状結晶性半導体層のチャネル領域方向に、ドーパント不純物を熱拡散させてLDD領域を形成する第8工程とを備えた半導体装置の作製方法。
  2. 請求項1において、前記導電体層はドープドシリコン層またはドープドシリコンゲルマニウム層で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  3. 請求項1において、前記導電体層を積層構造で形成し、かつ、前記島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域と接合する層がドープドシリコン層またはドープドシリコンゲルマニウム層で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  4. 請求項において、前記積層構造を構成する膜のうち、少なくとも1層がシリサイド層で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  5. 請求項において、前記シリサイド層は、モリブデンシリサイド、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、白金シリサイド、パラジウムシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイドのいずれか一で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  6. 請求項1又は請求項2において、前記導電体層のうち、前記島状結晶性半導体層のソース及びドレイン領域と接合する領域にはP、As、Sb、B、Al、Ga、Inの少なくともいずれか一種、1×1019cm−3以上の濃度で含有させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  7. 請求項1において、前記第一導電型とはN型であり、かつ、前記基板上に作製した全てのトランジスタNチャネル型で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  8. 請求項1にのいずれか一項において、前記第一導電型とはP型であり、かつ、前記基板上に作製した全てのトランジスタPチャネル型で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれか一項において、前記半導体装置は、フロントプロジェクターまたはリアプロジェクターまたはビューファインダーに用いられることを特徴とする半導体装置の作製方法。
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