JP4208047B2 - 藺草含有紙の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、藺草を原料とした紙の製造方法に関し、とくに紙漉工程前の原料藺草の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙原料として藺草を用いた紙およびその製造方法は従来公知である。たとえば、特許文献1には、藺草を綿状化した藺草繊維を水に分散し漉いてなる藺草紙、および、50〜100mm長さに切断した藺草をアルカリ水溶液中に浸漬して蒸解した後中和し、中和した藺草を叩解して繊維となし、この繊維を水に分散し漉いて紙にする製造方法が記載されている。また、特許文献2には、藺草を粉砕機に通して紛状体または線状体の藺草材とし、この藺草材だけまたは藺草材とパルプを混合して紙を製造する方法が記載されている。また、特許文献3には、0.3〜20mm長さに切断した藺草を叩解し、パルプと混合して紙を製造する方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−13090号公報(段落番号0038−0042、0063−0069)
【特許文献2】
特開2002−67006号公報(段落番号0024、0026、0043−0045)
【特許文献3】
特開平5−295698号公報(0011−0022)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような製造方法によって、外観および風合いに優れるとともに、藺草のもつ特性である吸放湿作用、人体に有害な揮発性化学物質の吸着作用、酸化防止作用、抗菌作用などを備えた紙が得られるとされている。
【0005】
しかしながら、本発明者が従来の製造方法によって得られた紙について調査したところ、吸放湿作用および揮発性化学物質の吸着作用が十分に発揮されているとはいえないことがわかった。このことについて本発明者は原料藺草の処理方法にまで遡って種々研究を重ねた結果、従来の原料藺草の処理方法に問題があることが判明した。
【0006】
藺草は、筒状の外皮と空隙を内包する粒状体が集合した髄とからなっているが、藺草のもつ特性である吸放湿作用および揮発性化学物質の吸着作用は、髄の中にある微小な空隙によって得られるものである。ところが、従来の製造方法における原料藺草の処理方法によれば、処理工程において藺草のなかの髄が取り除かれるか、髄が粉末状になって空隙が失われてしまうかして、吸放湿作用や吸着能力が低下していることが判明した。
【0007】
前述の特許文献1に記載の製造方法においては、藺草の髄を取り除きやすくするためのアルカリ溶液内での煮熟の後、棒または杵で叩解することによって藺草の繊維組織から髄が取り除かれる(同文献の段落番号0039〜0041参照)。このため、紙に含まれる藺草繊維は藺草の外皮のみとなるので、藺草の髄がもつ機能は失われてしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の製造法においては、乾燥した藺草を粉砕機で粉砕するので、髄は微細粉になる(同文献の段落番号0024参照)。このため、髄のなかの空隙が消失し、吸放湿作用や吸着能力の低いものとなる。
【0009】
また、特許文献3に記載の製造方法においては、ダブルディスクレファイナー、デラックスレファイナー、ジョルダンなどの叩解度の高い叩解機を使用し、フリーネス(叩解度を表す、叩解機の歯と歯の間隔)を小さくして藺草を叩解するので、特許文献2に記載の製造方法の場合と同様に髄は微細粉となり、髄のなかの空隙が消失し、吸放湿作用や吸着能力の低いものとなる。
【0010】
本発明が解決すべき課題は、紙に漉かれた後においても藺草の髄のなかの空隙が維持された状態を得る原料藺草の処理方法を確立することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る藺草含有紙の製造方法は、乾燥した藺草を切断する切断工程と、切断後の藺草を水中で叩解する叩解工程と、叩解後の藺草をパルプと混合する混合工程と、藺草とパルプの混合原料を用いて紙を漉く紙漉工程とを含む藺草含有紙の製造方法において、前記叩解工程における藺草の叩解度を、藺草の外皮と髄が分離され、外皮は裂かれた状態の繊維となり、髄は細胞自体がばらばらになることなく細胞間の空隙が保たれた状態の粒状体となる叩解度とすることを特徴とする。
【0012】
前記切断工程における藺草の切断長さは5〜15mmの範囲が好ましい。切断長さが5mmより短いと叩解度が上がりすぎ、藺草のなかの髄が小さくなりすぎて製紙後の紙の吸放湿作用や吸着能力が低くなり、切断長さが15mmより長いと叩解工程で叩解されにくくなるので、切断長さは上記の範囲が望ましい。
【0013】
切断後の叩解工程では、低い叩解度が得られるホーレンダービーターなどの叩解機を使用する。一般に、ホーレンダービーター、各種リファイナー、ジョルダンなどの叩解機は硬く短い繊維を叩解するための機械であり、長刀ビーターは和紙原料などの柔らかく長い繊維を叩解するための機械である。乾燥した藺草は比較的硬く短い材料である。このためアルカリ水溶液で蒸解していない藺草は長刀ビーターではまったく叩解されない。また、切断しただけの藺草を水と共に、高い叩解度を得るための機械であるリファイナーやジョルダンなどにかけると、叩解度が上がり過ぎて、藺草の髄の細胞は粉砕機を使用した場合と同様に微粉末状になってしまう。
【0014】
本発明では叩解度の高い叩解機を使用せず、叩解度の低い叩解機を使用する。この叩解工程では、乾燥した藺草は水の中で浮かび、叩解機にかかりにくいので、環状の水流の中に切断後の藺草を投入し、藺草を強制的に叩解機に送り込むことを40分程度繰り返す。この叩解により、藺草を揉みほぐす状態がつくりだされ、乾燥状態では水が浸透しにくい髄の部分に水を浸透させることができる。これにより、外皮は水分が少なく硬いままで、髄は十分に水分を有し柔らかい状態にすることができる。さらに1時間半程度叩解を続けることによって、藺草の外皮と髄は分離され、筒状の外皮は裂かれた状態の繊維となり、髄は細胞がばらばらになることなく、乾燥すると細胞間の空隙が保たれる状態の粒状体となる。したがって、紙に漉かれた後も髄には空隙がそのまま残っており、高い吸放湿作用と吸着能力が発揮される。
【0015】
叩解後の混合工程では、叩解後の藺草と製紙用パルプを混合する。混合割合はとくに限定されるものではなく、たとえば藺草55重量%、パルプ45重量%程度とする。ただし、製紙後の紙に藺草が混じっていると紙の強度(紙力)が低下するので、藺草と混合するパルプは通常の製紙用パルプをさらに叩解したものを使用して、紙力低下を防ぐようにする。
その後は通常の紙漉工程を経て紙となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態における藺草含有紙の製造工程を示す図である。
〔乾燥工程〕
藺草の乾燥方法は、畳表製造のための藺草の乾燥方法と基本的には同じである。具体的には、温風発生機からの約70℃の温風を藺草に吹き付けて、12時間程度乾燥する。
〔切断工程〕
乾燥後の藺草を長さ5〜15mmに切断する。
【0017】
〔叩解工程〕
叩解機としてホーレンダービーターを使用し、切断後の藺草を叩解する。この叩解工程では、叩解機の出側から入側につながる環状の水流を設け、この水流のなかに切断後の藺草を投入する。乾燥した藺草を切断しただけのものは水の中で浮かび、叩解機にかかりにくいので、環状の水流のなかの藺草を強制的に叩解機に送り込むことを40分程度繰り返す。この叩解により、藺草を揉みほぐし、乾燥状態では水が浸透しにくい髄の部分に水を浸透させる。これにより、外皮は水分が少なく硬いままで、髄は十分に水分を有し柔らかい状態になる。さらに1時間半程度叩解を続けることによって、藺草の外皮と髄は分離され、筒状の外皮は裂かれた状態の繊維となり、髄は細胞自体がばらばらになることなく、乾燥すると細胞間の空隙が保たれる状態の粒状体となる。
【0018】
〔混合工程〕
叩解後の混合工程では、叩解後の藺草と製紙用パルプを混合する。混合割合は藺草55重量%、パルプ45重量%で、パルプは通常の製紙用パルプをさらに叩解したものである。
〔紙漉工程〕
その後は通常の紙漉工程を経て紙となる。叩解工程で分離された外皮と髄は、紙のなかにそれぞれ分散した形で存在し、外皮は細い繊維となって散在することで紙の見栄えを良くし、髄は細胞間の空隙が保たれた状態のスポンジ状の粒状体となって散在して、高い吸放湿作用と吸着能力を発揮する。
【0019】
【発明の効果】
本発明による藺草含有紙の製造方法においては、切断した藺草の叩解工程において、藺草の叩解度を、藺草の外皮と髄が分離され、外皮は裂かれた状態の繊維となり、髄は細胞自体がばらばらになることなく細胞間の空隙が保たれた状態の粒状体となる叩解度とすることにより、製紙後の紙のなかに空隙が保たれた状態の藺草の髄が含まれているので、藺草含有紙の優れた外観および風合いとともに、藺草のもつ特性である吸放湿作用と人体に有害な揮発性化学物質の吸着作用を十分に発揮する紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における藺草含有紙の製造工程を示す図である。

Claims (1)

  1. 乾燥した藺草を切断する切断工程と、切断後の藺草を水中で叩解する叩解工程と、叩解後の藺草をパルプと混合する混合工程と、藺草とパルプの混合原料を用いて紙を漉く紙漉工程とを含む藺草含有紙の製造方法において、前記叩解工程における藺草の叩解度を、藺草の外皮と髄が分離され、外皮は裂かれた状態の繊維となり、髄は細胞自体がばらばらになることなく乾燥後に細胞間の空隙が保たれる状態の粒状体となる叩解度とすることを特徴とする藺草含有紙の製造方法。
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