JP4207640B2 - 交流き電システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新幹線などの電気鉄道における交流き電システムに係り、特にセクション切替区間の交流き電方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
新幹線などの交流電気車は単相のため、電力会社から交流電源を三相で受電して、3相−2相変換用スコット変圧器やウッドブリッジ変圧器を利用して単相二相電源のT座とM座(またはA座とB座)に区分けし、両座のき電で電気車に給電している。
【0003】
これら異電源突き合わせ区間の電気車の走行には、電気車のパンタグラフが異電源間を短絡させるのを避けるため、在来線では図3に示すように、M座とT座の異電源のトロリー線1M,1T間に約8mのFRPやウッド等の絶縁材料を介挿させたデッドセクション2を設け、電気車3の運転員はデッドセクション2の手前に設けられるデッドセクション標識4Mの確認でノッチオフにして電気車を惰行走行させ、デッドセクション2を通過したことをデッドセクション標識4Tで確認した後にノッチオンとしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
新幹線の場合には、図4に示すように、遮断器等で構成されるセクション切替器を使用して、以下の制御方式で運用している(例えば、特許文献1参照)。なお、同図の説明は電気車がM座からT座に向って走行する場合である。
【0005】
・電気車5がM座電源側に位置するときはM座側のセクション切替器6Mを閉、T座側のセクション切替器6Tを開としておき、スコット変圧器7のM座から電気車に電力を供給する。
【0006】
・電気車が一対のエアセクションで形成する中セクション8の区間(約1000m)に完全に入ると、セクション切替器6Mを開、6Tは開のままとし、この間の電気車は無電圧となり、惰行走行させる。
【0007】
・その後、電気車がT座に入る直前にセクション切替器6Mを開のまま、6Tを閉じ、スコット変圧器7のT座から電気車に電力を供給する。
【0008】
・電気車がT座区間に入るとセクション切替器6Tを開、セクション切替器6Mを閉とし、初期状態に戻す。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−125409(図3、図4)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(1)従来の在来線の交流き電方式では、デッドセクションを設けるための条件に制約があるため、本来、変電所直下に設けるのが最良であるが、トロリー線を引き回しているケースが多いため、設備費がかさむ。また、デッドセクション付近ではノッチオフ操作することは、運転員の負担になるし、高速運転には適さない。また、ノッチオフ時にも電気車の補機電力等はオン状態のままであるため、トロリー線からデッドセクションに移るときにある程度のアークが発生するため、デッドセクションの定期的な点検および交換が必要となる。
【0011】
(2)新幹線等における交流き電方式では、運転員によるノッチオフを不要にするが、セクション切替で以下の問題がある。
【0012】
・電気車がセクションを通過するときに電気車には瞬時停電が発生するため、電気車に瞬時停電対策装置などが必要となり、また走行速度も低下する。また、セクション通過の復電時(図4のセクション切替器6Tが閉となったとき)に電気車およびセクション切替器に過大な突入電流が発生し、過渡電流対策が必要になる。
【0013】
・セクション切替設備としては遮断器、電気車の位置検出装置等が必要になり、設備費用が増大し、それらの設置場所確保が必要となる。さらに、遮断器には動作回数に制限があり、数年間周期での定期交換部品となっていてメンテナンス費用がかさむ。
【0014】
(3)在来線および新幹線での共通の問題点としては、T座とM座の負荷をバランスすることが困難なため、以下の問題がある。
【0015】
・交流受電系統の電圧変動が大きく、また三相系統に不平衡電力が流れ、電力会社の設備を有効に利用できない。
【0016】
・スコット変圧器等のインピーダンスによって、き電電圧が低下し、電気車走行に支障をきたす場合がある。
【0017】
この問題を解決するために、最近は各座に、互いの直流側で接続した一対のインバータとトランスを備えた補償装置を設けて、以下に説明する有効電力融通や無効電力補償等の制御機能(以下RPC装置と呼ぶ)で対策をしている。このRPC装置の主回路構成図を図5に示す。
【0018】
(a)有効電力融通制御…各座の有効電力Pを検出し、この差電力の1/2をM,T座インバータ9M,9Tが融通しあい、スコット変圧器7のT、M座巻線の電流を等しくする。
【0019】
(b)無効電力補償…各座の無効電力Qを検出して、この無効電力をインバータ9M,9Tを通して供給し、スコット変圧器7の無効電力成分を零とする。
【0020】
仮に、図5において、M座負荷の有効電力をP、無効電力をQとし、T座負荷が無負荷であったとしたら、これらの制御でM座インバータ9Mは(P/2+Q)、T座インバータ9TはP/2の電力を供給し、この結果スコット変圧器7のT座、M座の負荷はP/2となり、無効電力が零になり、更に両インバータ9M,9Tは電気車負荷の有効電力の半分のみを供給すれば良いことになる。
【0021】
(c)高調波吸収制御…電気車負荷が発生する高調波電流Ihを、き電母線から検出し、この電流をインバータ9M,9Tから供給し、系統に流出する高調波電流を低減する。
【0022】
このような補償装置を設けることで、受電系統やき電母線の電圧品質の問題(電圧変動、不平衡電力、高調波電流)は解決できるが、セクション切替の問題を解決していないのが現状である。
【0023】
本発明の目的は、セクション切替器を不要とした交流き電を可能とし、さらに電源系統の電圧品質改善が可能となり、また従来の変電所を経済的に構築することも可能とした交流き電システムを提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、単相二相変圧器の片座を交流き電母線負荷に1/2の有効電力を供給するための電源とし、他の片座を補償装置に専用の電源とし、補償装置からは交流き電母線負荷の1/2の有効電力を供給することで従来のセクション切替器を不要にした片座による交流き電システムとする。
【0025】
また、本発明は、き電用三相配電線の各相間にそれぞれ単相トランスを設け、1つの単相トランスを交流き電母線負荷に1/3の有効電力を供給するための電源とし、残りの2つの単相トランスを補償装置に専用の単相電源とし、補償装置からは交流き電母線負荷の2/3の有効電力を供給することで従来のセクション切替器を不要にした片座による交流き電システムとする。
【0026】
さらに、本発明は、交流き電母線に現れる無効電力と高調波電流を補償装置で補償する交流き電システムとする。
【0027】
以上のことから、本発明は以下の構成を特徴とする。
【0028】
(1)単相二相変圧器から得る二相電源から交流電気車に電力供給する交流き電システムであって、
前記単相二相変圧器の片座を交流き電母線負荷に1/2の有効電力を供給するための電源とし、他の片座を補償装置に専用の電源とし、
前記補償装置は、前記他の片座との間で1/2の有効電力を出し入れするための第1のインバータと、このインバータから直流電力が融通され、前記交流き電母線に1/2の有効電力を供給する第2のインバータとを備えたことを特徴とする。
【0029】
(2)き電用三相配電系統から得る三相電源から交流電気車に電力供給する交流き電システムであって、
前記三相配電系統の各相間にそれぞれ単相トランスを設け、1つの単相トランスを交流き電母線負荷に1/3の有効電力を供給するための電源とし、残りの2つの単相トランスを補償装置に専用の単相電源とし、
前記補償装置は、2つの単相トランスとの間でそれぞれ1/3の有効電力を出し入れするための第1と第2のインバータと、これら両インバータから直流電力が融通され、前記交流き電母線に2/3の有効電力を供給する第3のインバータとを備えたことを特徴とする。
【0030】
(3)前記交流き電母線側に接続されるインバータは、交流き電母線に現れる無効電力と高調波電流を補償する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
(4)前記交流き電母線側に接続されるインバータは、決められた電流耐量以内の出力に制限するリミッタ制御手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態を示す交流き電システムの主回路構成図であり、異電源突き合わせのためのセクション切替器を設けることなく、スコット変圧器の一方の座から交流き電母線に1/2の有効電力供給を行い、他方の座は補償装置専用の電源とし、補償装置を介して交流き電母線に1/2の有効電力融通を行う。また、補償装置は電圧品質補償機能を備える。
【0033】
図1の構成では、スコット変圧器7のM座をき電母線として使用し、T座を変圧器とするT座インバータ9Tと、このインバータ9Tとは直流側で接続され、交流側が出力用変圧器10を介してき電母線に接続されるM座インバータ9Mとからなる補償装置を設ける。
【0034】
なお、補償装置は、リアクトルとインバータからなる装置、または変圧器・リアクトル・インバータからなる装置とすることもできる。
【0035】
図1の主回路構成における両インバータの制御方式を説明する。
【0036】
(1)き電母線側に接続したM座インバータ9Mの制御
き電母線負荷の有効電力P、無効電力Q、高調波電流Ih等を検出し、以下の制御を行う。
【0037】
・有効電力制御:き電母線の負荷の有効電力Pの1/2を分担するように制御する。残りの1/2の有効電力はスコット変圧器7のM座から供給する。
【0038】
・無効電力制御:き電母線の負荷の無効電力Qを補償するように制御する。
【0039】
・高調波電流制御:き電母線の負荷に含まれる高調波電流Ihを分担するように制御する。
【0040】
(2)スコット変圧器のT座に接続したインバータ9Tの制御
き電母線側に接続したインバータ9Mの有効電力に対応して、スコット変圧器のT座から有効電力Pの1/2の出し入れ制御を行う。
【0041】
すなわち、電気車負荷が力行状態ならば有効電力をT座から取り込むように制御し、電気車負荷が回生状態ならば有効電力をT座に戻すように制御する。
【0042】
以上の制御方式により、有効電力制御は、M座インバータ9MはM座負荷の有効電力を検出し、この有効電力Pの1/2を出力するようにして、T座インバータ9Tはこの有効電力Pの1/2をスコット変圧器TRSのT座巻線から出し入れ制御する。また、無効電力制御では、M座インバータ9MはM座の無効電力を検出して、これを補償するように制御する。また、高調波吸収制御は、M座に流れる電流から高調波成分Ihを検出し、この電流成分がM座インバータ9Mから供給するように制御する。
【0043】
なお、き電母線側のインバータ9Mには、インバータ出力が決められた電流耐量以内の出力に制限する出力リミッタ制御手段を設けるのが好ましい。すなわち、M座インバータ9Mは常に負荷に接続されているため、他変電所から当変電所に電気車が入るときに過大な突入電流が流れたり、また、き電線の短絡事故等で過大な短絡電流が流れることがある。M座インバータはM座き電母線に接続されているためにこの影響を受けやすい。この影響でインバータは過負荷耐量が増大する。この対策としてインバータ出力に電流リミッタを設けることにより、過負荷耐量を不要とし、設備容量の小型化を可能にする。
【0044】
本実施形態によれば、新幹線におけるセクション切替設備が不要となり、これに関する大幅な経済性、信頼性の向上ができ、変電所も小型化ができる。また、変電所の種々な設備である遮断器、断路器、AT変圧器等で、き電形態が片座き電で済むため、従来の両座き電(T,M座)設備の半分で済み、大幅な経済性の向上と小型化ができる。また、補償装置の導入で系統の電圧品質改善(電圧変動、不平衡電流、高調波障害等の改善)ができ、さらにスコット変圧器のインピーダンス電圧降下が低減し、安定なき電電圧が確保できる。また、補償装置の専用変圧器がスコット変圧器のT座巻線と兼用でき、更にT座インバータは無効電力補償をする必要が無いため、インバータ容量の低減も可能となり大幅なコストダウンと小型化ができる。また、スコット変圧器T、M座巻線も負荷が平準化され利用率が向上し、更に負荷の有効電力半分を供給する容量で済むため、大幅なコストダウンと小型ができる。また、インバータは過負荷耐量が不要となり、インバータそのものを小型化できる。また、インバータの制御機能もT座は有効電力制御のみの制御で済み、従来のRPC装置に比べて回路の簡易化ができて信頼性の向上に繋がる。
【0045】
また、交流き電方式として、三相系統から直接に単相インバータを使用して交流き電母線に電力供給を行うインバータによる電力変換方式も考えられるが、この方式はインバータで直接に電気車を駆動するため、インバータ自体の容量は負荷と同じ容量を必要とし、更に大きな過負荷耐量も必要となる。この点、本実施形態では、スコット変圧器の一方の座からき電母線に電力供給を行い、他方の座からは補償装置(インバータと出力変圧器等)によってき電母線に有効電力融通と電圧品質補償を行うため、インバータの容量は負荷容量のほぼ半分で済み、さらに過負荷耐量も必要としない。また、インバータによる電力変換方式では、インバータによる直接の電気車運転のため、インバータに故障等が発生すると電気車が走行不能となる。この点、本実施形態では、インバータを補償装置として使用しているため、インバータに故障が発生しても電気車の低速走行は可能となる。
【0046】
なお、実施形態では、スコット変圧器を使用す場合を示すが、これに代えて、ウッドブリッジ変圧器を利用して単相二相電源とすることができる。
【0047】
(実施形態2)
実施形態1では、従来のスコット変圧器のT座巻線を電力融通電源として利用した交流き電方式を示すが、本実施形態は、実施形態1の技術思想を通常の単相変圧器で構成した交流き電システムとするものであり、その主回路構成を図2に示す。
【0048】
交流き電用変圧器11は、き電用三相配電線の相間(VW相、UV相、UW相)にそれぞれ単相のき電用トランス11U,11V,11Wの一次側巻線を接続し、トランス11Uの二次側巻線を交流き電母線として使用し、トランス11V,11Wの二次側巻線は電力融通用インバータ用電源として使用する。
【0049】
補償装置は、き電母線には出力用変圧器12を介してき電インバータ13の交流側を接続し、この直流側にはトランス11V,11Wの二次出力を電源とする二組のUV相インバータ14とVW相インバータ15の直流側に接続する。
【0050】
このうち、き電インバータ13は、負荷の有効電力をP、無効電力をQ、高調波電流をIhとすると、2P/3+Q+Ihの容量をもつものとする。また、二組のインバータ14,15の容量はそれぞれP/3とする。
【0051】
以上の構成における制御方式は、実施形態1とほぼ同じであるが、以下の点で異なる。
【0052】
き電インバータ13は、き電母線側に負荷の有効電力Pの2/3と無効電力Q、高調波電流成分Ihを供給し、他の二組のインバータ14、15はP/3の有効電力をトランス11V,11Wを介して取り組むように制御する。
【0053】
本実施形態においては、実施形態1に比べてインバータが3台必要となるが、実施形態1と同じ機能をもち、その効果も同等になる。
【0054】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、単相二相変圧器の片座を交流き電母線負荷に1/2の有効電力を供給するための電源とし、他の片座を補償装置に専用の電源とし、補償装置からは交流き電母線負荷の1/2の有効電力を供給する交流き電システム、またはき電用三相配電線の各相間にそれぞれ単相トランスを設け、1つの単相トランスを交流き電母線負荷に1/3の有効電力を供給するための電源とし、残りの2つの単相トランスを補償装置に専用の単相電源とし、補償装置からは交流き電母線負荷の2/3の有効電力を供給する交流き電システムとするため、従来のセクション切替器が不要になり、セクション切換器を必要とする従来の種々の課題を解決することができる。
【0055】
また、本発明は、補償装置を利用して交流き電母線に現れる無効電力と高調波電流を補償することができ、電源系統の電圧品質改善が可能となり、また従来の変電所を経済的に構築することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1を示す交流き電システムの主回路構成図。
【図2】本発明の実施形態2を示す交流き電システムの主回路構成図。
【図3】在来線の異電源突き合わせ区間の構成図(従来)。
【図4】新幹線の異電源突き合わせ区間の構成図(従来)。
【図5】RPC装置を設けた異電源突き合わせ区間の構成図(従来)。
【符号の説明】
5…電気車
6T,6M…セクション切換器
7…スコット変圧器
8…中セクション
9T…T座インバータ
9M…M座インバータ
10…出力用変圧器
11…交流き電用変圧器
12…出力用変圧器
13…き電インバータ
14…UV相インバータ
15…VW相インバータ

Claims (4)

  1. 単相二相変圧器から得る二相電源から交流電気車に電力供給する交流き電システムであって、
    前記単相二相変圧器の片座を交流き電母線負荷に1/2の有効電力を供給するための電源とし、他の片座を補償装置に専用の電源とし、
    前記補償装置は、前記他の片座との間で1/2の有効電力を出し入れするための第1のインバータと、このインバータから直流電力が融通され、前記交流き電母線に1/2の有効電力を供給する第2のインバータとを備えたことを特徴とする交流き電システム。
  2. き電用三相配電系統から得る三相電源から交流電気車に電力供給する交流き電システムであって、
    前記三相配電系統の各相間にそれぞれ単相トランスを設け、1つの単相トランスを交流き電母線負荷に1/3の有効電力を供給するための電源とし、残りの2つの単相トランスを補償装置に専用の単相電源とし、
    前記補償装置は、2つの単相トランスとの間でそれぞれ1/3の有効電力を出し入れするための第1と第2のインバータと、これら両インバータから直流電力が融通され、前記交流き電母線に2/3の有効電力を供給する第3のインバータとを備えたことを特徴とする交流き電システム。
  3. 前記交流き電母線側に接続されるインバータは、交流き電母線に現れる無効電力と高調波電流を補償する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の交流き電システム。
  4. 前記交流き電母線側に接続されるインバータは、決められた電流耐量以内の出力に制限するリミッタ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の交流き電システム。
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