JP4207324B2 - オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法に関し、とくに連続鋳造で製造するオーステナイト系ステンレス鋼鋳片の成分組成に工夫を加えることによって、ステンレス鋼板における光沢むらや表面欠陥の発生を効果的に防止し、もって表面性状に優れたステンレス鋼板を安定して得ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼の薄板は、外装材として使用されることが多いため、鋼板表面の性状など見た目の綺麗さが品質上の重要な要件である。
しかしながら、かかる薄鋼板の製造工程中、特に冷間圧延後の焼鈍−酸洗工程において、鋼板表面に一定幅で光沢の異なる部分が発生し、見た目が光沢むらとなる場合があり、品質上重大な問題となっていた。
【0003】
そこで、従来から、かような光沢むらを解決するための方法が種々提案されている。
例えば、特開平8-90180号公報には、特定のモールドパウダーを用い、かつ鋳造速度を制御することによって、モールド内における凝固シェルの冷却速度のばらつきを低減させる方法が提案されている。
また、同公報中には、冷間圧延−焼鈍後の再結晶粒の成長を阻害するデルタフェライトの残存量を低減するために、Ni量を増加させる方法が開示され、さらに熱間圧延温度の上昇や加熱炉時間の延長が有効である旨が記載されている。
しかしながら、上記の方法はコストの上昇を招くので望ましくない。
【0004】
一方、ステンレス鋼を連続鋳造で製造する場合、連続鋳造から熱間圧延までの間における欠陥を低減することが製造コスト上の重要な課題である。
ステンレス鋼では、加熱炉を出た後の鋼板表面にヘゲと呼ばれる線状の欠陥が発生し易いが、かかるヘゲの発生は熱間圧延温度や加熱時間と関係があると言われており、この点では、上に述べた対策はこのような欠陥の是正には逆効果になる場合がある。
従って、光沢むらは勿論のこと、製鋼−熱間圧延間で発生するヘゲ欠陥を併せて低減することができる方法の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、冷間圧延−焼鈍後にステンレス鋼板の表面に発生する光沢むらを解消すると共に、製鋼−熱間圧延間に発生するヘゲ欠陥を大幅に低減して、美麗な表面を呈するステンレス鋼板を安定して得ることができるステンレス鋼の製造技術を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、光沢むらの発生を防止するには連続鋳造鋳片中における硫黄量と固溶酸素量との比を所定の範囲に制限することが、またヘゲ欠陥の発生を抑制するには鋳片中における酸化物系介在物の量を低減することが、それぞれ有効であることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】
すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼中の硫黄含有量〔S〕と固溶酸素量〔O〕f の比が下記式の範囲を満足するオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延および冷間圧延して得られた、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板

1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
〔S〕:単位mass%
〔O〕f :単位mass%
【0008】
2.上記1において、鋼中の硫黄含有量〔S〕が0.005 mass%以上、0.015 mass%以下であることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板
【0009】
3.上記1または2において、鋼中の酸化物系介在物の量が酸素濃度換算で 60 ppm 以下であることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板
【0011】
.溶鋼中の硫黄含有量〔S〕と溶存酸素量〔O〕f の比を下記式の範囲に調整したオーステナイト系ステンレス溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とし、得られたオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延、ついで冷間圧延により薄鋼板とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。

1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
〔S〕:単位mass%
〔O〕f :単位mass%
【0012】
.溶鋼中の硫黄含有量〔S〕と予め設定した鋳造温度における脱酸平衡から推定される鋳造時の溶存酸素量〔O〕f の比が下記式の範囲になるように成分を調整したオーステナイト系ステンレス溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とし、得られたオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延、ついで冷間圧延により薄鋼板とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。

1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
〔S〕:単位mass%
〔O〕f :単位mass%
【0013】
.上記またはにおいて、溶鋼中の硫黄含有量〔S〕を0.005 mass%以上、0.015 mass%以下とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0014】
.上記4,5または6において、溶鋼中の酸化物の量を酸素濃度換算で60ppm 以下とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、まず、光沢むらが発生する原因について調査した。その結果、光沢むらは、スケール残りが原因で生じる場合もあるが、大半は鋼板の結晶粒径が不均一となることが、その発生原因であることを突き止めた。
【0018】
そこで、次に、結晶粒径が不均一となる理由について考察した。
その結果、連続鋳造時における鋳片の局所的な冷却速度の不均一により鋳片表面における酸化物の個数や粒径が異なること、さらにはメタル相に固溶する酸素や硫黄の濃度に差異が生じるため、次の熱間圧延時に現れる表面近傍での酸化物−硫化物系複合介在物の成長が異なることが、結晶粒径が不均一となる原因であることが解明された。
【0019】
すなわち、図1に示すように、熱間圧延時のスラブを再加熱する段階で表面近傍に酸化物−硫化物系複合介在物が新たに析出する。
その際、連続鋳造鋳片における冷却速度が大きい部位では固溶S量が多いだけでなく、表面にある酸化物の数、換言すれば熱間圧延前のスラブの再加熱時に生じる析出物の核生成サイトの数が多いので、加熱保持後の複合介在物(酸化物+CuS, MnS)の粒径は小さく、その数も多い。
その結果、これらの介在物がその後の熱延・焼鈍後のステンレス鋼の結晶粒のピニングサイトとして有効に働き、結果としてステンレス鋼の結晶粒径が小さくなる。
【0020】
一方、連続鋳造鋳片における冷却速度が小さい部分では固溶S量も少なく、また表面にある酸化物の数すなわち析出物の核生成サイトの数も少ないので、加熱保持後の複合介在物(酸化物+CuS, MnS)の粒径は比較的大きく,またその数も少ない。
従って、結晶粒径は比較的大きくなる。
このように、連続鋳造鋳片の冷却過程における冷却速度の差に起因して、結晶粒径の不均一、ひいては光沢むらが発生するわけである。
【0021】
そこで、発明者らは、この結晶粒径が小さくなる現象に酸化物−硫化物径複合介在物が大きく影響を与えている点に着目して、固溶O量に応じて鋼中のS量を増加させることに想到した。
すなわち、鋼中のSを高めることにより再加熱時の硫化物 (CuS, MnS) を析出し易くし、ステンレス鋼の結晶粒径を全体に小さくすることを試みた。この試みにより、全体の結晶粒径が細かくなり、連続鋳造における冷却速度に局所的な違いがあってもそれによるステンレス鋼の結晶粒径の違いが目立たなくなるものと予想した。
【0022】
図2に、固溶酸素〔O〕f と鋼中〔S〕を種々に変化させて、光沢むらに及ぼす影響について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、〔S〕と〔O〕f の比〔S〕/〔O〕f を 1.5以上に制御すると、光沢むらを効果的に抑制できることが判明した。
また、この条件下では、図3に示すように、連続鋳造鋳片の部位の違いによる冷却速度の大、小に関係なしに、微細な複合介在物が形成され、その結果、結晶粒径が全体に8〜10μm と細かくなることが確認された。
【0023】
ただし、〔S〕と〔O〕f の比が 4.0を超えるとヘゲが発生し易くなった。
この原因は、Sが必要以上に含有されると粒界にSが偏析し易くなるためと考えられる。
従って、〔S〕と〔O〕f の比は 1.5以上、4.0 以下の範囲に制御することが重要である。
【0024】
また、〔S〕濃度は 0.005mass%(以下、単に%で示す)以上、 0.015%以下とすることが好ましい。というのは、〔S〕濃度が0.005 %未満では、〔S〕/〔O〕f を適正値にするための〔O〕f 範囲が狭くなって成分調整が難かしくなり、一方〔S〕濃度が 0.015%を超えると脆性や耐食性の面で鋼の性質が損なわれるからである。
【0025】
さらに、〔O〕f 濃度については、特に上限はないが、その値は主として脱酸元素であるSi濃度によって決定される。
表1は、通常の2次精錬で規定される精錬スラグ組成( CaO:52.6%、SiO2:31.6%、 Al2O3:5.3 %、 MgO:10.5%)における、1504℃での溶鋼中Si濃度と〔O〕f との関係を示したものであるが、〔%Si〕が0.10%未満になると〔O〕f が急激に増加することが判る。
【0026】
ここで、固溶酸素濃度に関しては、鋳造前の溶鋼中の溶存酸素濃度にほぼ等しく、溶鋼中の溶存酸素濃度は酸素濃淡電池により直接測定することはできるが、常時測定することは事実上困難である。
従って、この場合には、下式(1) に示す計算式で求めた値を使えば良い。
なお、本発明において調査した〔O〕f と〔Si〕の関係は、連続鋳造のタンディッシュにおいて測定した温度から計算した値である。
【数1】
Figure 0004207324
【0027】
【表1】
Figure 0004207324
【0028】
このような〔O〕f が急激に増加する領域では、脱酸力が弱いのでスラグ中の酸化物を還元することができない。このような条件においては、二次精錬以降、タンディッシュに至るまでの間にスラグの再酸化が生じ易く、その結果介在物酸素が増加し、結果的に鋼板品質の劣化を招く。
従って、〔Si〕≧0.10%、〔O〕f ≦50 ppmとすることが望ましい。
【0029】
一方、製鋼−熱間圧延時における欠陥は、鋳造時の溶鋼中の酸化物の含有量すなわち鋳片内の酸化物系介在物の含有量と強い相関がある。
図4に、ヘゲの発生率と酸化物含有量との関係について調べた結果を示すが、同図から明らかなように、ヘゲの発生を抑制するには、酸化物含有量を酸素濃度換算で〔O〕≦60 ppmとなるまで低減する必要がある。
ここで、酸化物含有量の酸素換算値は、全酸素化学分析値から上で述べた固溶酸素濃度を除いた値であり、酸化物として溶鉄中に存在する酸素を示す。このような酸化物として存在する酸素濃度値を低下するためには、二次精錬において溶鋼中に脱酸元素を投入するだけでなく、同時にスラグの還元処理を行うことが重要である。
なお、酸化物として存在する酸素すなわち〔O〕oxide と〔O〕f との関係は次のとおりである。
〔O〕oxide =〔O〕total −〔O〕f
ここに、〔O〕f はタンディッシュにおいて測定した温度における固溶酸素量である。また、〔O〕total は分析によって得られる鋼中の全酸素である。
【0030】
そして、上記したように、硫黄含有量〔S〕および固溶酸素量〔O〕f 、さらには〔O〕oxide を好適範囲に成分調整した鋳片を、常法に従い熱間圧延、ついで冷間圧延することにより、光沢むらのない薄鋼板を得ることができるのである。
【0031】
次に、本発明に従うオーステナイト系ステンレス鋼鋳片の具体的製造要領について説明する。
さて、一般に、ステンレス鋼を溶製する際には、転炉あるいはAOD炉において酸化精錬を行う。その後、合金鉄の添加等の成分調整を行ったのち、鋳造される。
本発明の特長は、転炉における酸化精錬、および引き続き行われる還元精錬に加えて、二次精錬処理を行う点にある。
さらに、この際、肝要な点の第一は、二次精錬において還元処理を行い、該溶鋼中の酸化物を酸素濃度換算で好ましくは 60ppm以下になるまでスラグとメタルの還元処理を行う点にある。これにより、加熱炉を出た後にヘゲ欠陥の発生を低減することができる。
【0032】
次に、肝要な点の第二は、それと同時に上記の二次精錬において還元処理を行うことにより不可避的に除去され、低下する溶鋼中のSを、二次精錬において制御する点にある。すなわち、固溶酸素とSとの比を一定の範囲に制御することである。
【0033】
さらに、鋳造時の温度は、鋳造速度により変化するが、凝固温度と鋳造温度の差(以下ΔTと称す)は20℃以上、70℃以下、望ましくは30℃以上、60℃以下とすることが好ましい。
というのは、ΔTが20℃未満では、低温による鋳込み時のパウダーやスラグ等の巻き込みによる欠陥が増加し、一方ΔTが70℃を超えると、鋳造速度が制約されるだけでなく、ブレークアウトの発生率が増加するからである。
従って、鋳造時のタンディッシュにおける温度がΔT=20〜70℃となるように二次精錬終了時の温度を制御する。
具体的には、例えば二次精錬終了から連続鋳造までの経過予定時間と、この間の溶鋼の温度降下速度(過去の実績値に基づいて推定)から、溶鋼温度の降下量を推定し、この量と上記ΔTを凝固温度に加えたものを二次精錬の終了目標温度とする。
【0034】
また、タンディッシュにおける想定鋳造温度および成分(主としてSi濃度)によって規定される溶存酸素濃度を推定する。そして、この溶存酸素濃度〔O〕f と溶鋼中〔S〕の比が前述した範囲に入るように、成分(主としてSi,Sの濃度)を制御する。
なお、二次精錬終了後と鋳造時とでは、溶鋼中の〔S〕が変化する可能性はあるが、以下に述べるような通常の二次精錬操業ではほとんど変化しない。
【0035】
ここに、溶存酸素濃度〔O〕f の推定を行う際には、タンディッシュにおける想定鋳造温度と溶鋼中のSi濃度以外にスラグ中のaSiO2を決定する必要がある。そこで、二次精錬終了後のスラグを迅速に分析して、(1) 式中に示すaSiO2を計算し、このaSiO2を用いてVOD終了後およびタンディッシュにおける〔O〕f を計算したところ、酸素濃淡電池で測定した酸素活量値から求めた〔O〕f と一致した。
このように、〔O〕f は、VODのスラグを分析し、(1) 式からaSiO2を計算することによって求めることができる。なお、操業条件が決まっていれば、スラグの計算塩基度から簡易にaSiO2を推定することも可能である。
【0036】
図5に、本発明に係る方法を実施するのに好適な設備の一例を模式的に示す。反応容器として転炉1を用い、その中に、ステンレス鋼成分を有する溶湯または予備処理した溶銑とスクラップ等を予め装入し、該転炉の上方に配置した上吹きランスおよび/または底吹きもしくは横吹き羽口から酸素ガスを高速で吹き付けおよび/または吹き込むことによって酸化精錬を行う。また、この際、酸素ガスと共に不活性ガスを吹き込み、クロムの酸化を低減することも周知の技術である。
【0037】
ついで、酸化精錬で生じた酸化クロムを回収するために、通常、転炉内の溶鋼中にFe−SiやAl等の還元剤を添加することにより、スラグを還元処理し、スラグ中からクロムや鉄などの有価金属を回収する。
転炉におけるスラグの塩基度( CaO/SiO2)をどの程度に設定するかによって、還元処理中の溶鋼中S濃度は変化するが、いずれにせよこの還元処理で低下する。通常、転炉の耐火物の溶損を小さくするため、塩基度は 2.0以上とする。従って、Sは転炉出鋼後に通常 0.005%以下程度まで低下する。
【0038】
さらに、二次精錬において、上に述べたように、酸化物が充分低減できるまでスラグとメタルの還元処理を行う。ここで、熱間圧延時に発生するヘゲ欠陥を防止するためには、溶鋼中の酸化物が酸素濃度換算で60 ppm程度に低下するまで還元処理を行うことが好ましい。その際、二次精錬設備としてはVODに代表される真空下でガスを底吹きし、強撹拌条件で脱酸処理とそれに伴うスラグの還元処理を行える設備が好適である。
この還元時にスラグの塩基度をどの程度に設定するかは、耐火物が塩基性であることと、スラグへの酸化物の吸収能を高める観点から、高めに設定した方が望ましいが、一方でスラグ中のアルミナからのアルミの還元が生じるので、通常は1.3 〜2.2 程度に設定する。この際、上記の還元処理を十分行うと、溶鋼中のSは 0.003%程度まで低下する。
【0039】
そこで、二次精錬終了前または処理後に、予め設定した鋳造温度における溶存酸素量を想定して溶鋼中にSやS含有物質を添加し、鋳片中の〔S〕/〔O〕f 比が所定の範囲におさまるように、溶鋼中のS量を調整するのが、本発明の肝要な点である。
ここに、処理後にSを調整する方がSについては正確に制御できるが、処理後にSを投入すると添加方法によってはCaS等の欠陥原因が生じるため、処理前に二次精錬の脱S分を見込んで調整する方法を採ることもあり得る。肝要な点は、鋳造時点で固溶S濃度と固溶Oの比を所定の範囲に納めることである。
【0040】
なお、本発明で対象とするオーステナイト系ステンレス鋼として最も代表的なものはSUS 304 であるが、本法の適用はこのSUS 304 だけに限定されるものではなく、いわゆるオーステナイト系ステンレス鋼であれば、全ての鋼種に対して適用することができる。
【0041】
【実施例】
180 t上底吹き転炉において〔%C〕=0.15%まで脱炭を行った後、Fe−Siを投入して還元・Cr回収を行う処理を行った。この際、脱炭時の溶鋼温度は1700〜1730℃、還元処理後で1680〜1700℃であった。Fe−Si投入量は〔%C〕=0.2 〜0.3 %で採取したサンプルの分析よりCrの酸化を推定して行った。還元期の底吹きガスはN2ガスとし 120 Nm3/minで5〜7分間撹拌処理を行った。
還元処理が終了した時点で直ちに出鋼し、取鍋でNi量等を事前に投入した後、VODにて脱炭処理を行った。上吹きランスからO2ガスを25〜35 Nm3/min供給し〔%C〕=0.04〜0.06%となるまで脱炭した。脱炭終了時の判断は、主として排ガス中のCO, CO2 発生量を見て行い、サンプルを採取した。上吹きO2ガスの吹き付けを終了した後、Fe−Siを投入して還元を開始した。脱酸・還元処理は主として全酸素濃度〔O〕total が充分に低下するまで行ったが、底吹きガス量が 600 Nl/min 程度であれば15〜25分程度の撹拌時間を要する。〔O〕total は40〜70ppm であった。また、脱酸、還元処理後の温度は1500〜1590℃であった。
【0042】
この時のVODにおけるスラグ中の( CaO/SiO2)は、 1.3以上 2.2以下程度が最適である。
というのは(CaO/SiO2)<1.3 では、耐火物の溶損が大きくなると共に、SiO2の活量が高くなるので平衡する〔O〕f が高くなり、結果的にはスラグの酸化度が高くなり、一方、(CaO/SiO2)>2.2 ではSiO2の活量が低くなるため、次式
Si+2(Al2O3) =4Al+3(SiO2)
の反応が進行して、Alが微量鋼中に存在し、その後の再酸化によりノズル詰まりを生じ、製鋼過程でのトラブルとなるからである。
【0043】
上記の二次精錬によって、図6に示すように脱Oが進行する。ここに、図6は処理時間と鋼中O濃度(〔O〕total ,〔O〕f )との関係を示したものである。
この時、〔S〕の挙動については、転炉出鋼時に〔S〕=0.003 〜0.006 %であり、VOD脱O処理時に〔S〕=0.003 〜0.005 %であった。
そこで、VODによる脱O処理終了後にFeSワイヤを用いてS量を増加した。FeS添加後の〔S〕=0.006 〜0.012 %、平均 0.009%であり、〔O〕total =50〜80 ppm、〔O〕f =30〜50 ppmであり、〔S〕/〔O〕f を 2.0から 3.8の範囲に納めた。
その他の成分については〔%C〕=0.04〜0.06%、〔%Si〕=0.25〜0.35%、〔Mn〕=1.0 〜1.1 %、〔P〕=0.028 〜0.035 %、〔Cr〕=18.10 〜18.20 %、〔Ni〕=8.1 〜8.3 %、〔N〕=350 〜500 ppm であった。
【0044】
二次精錬終了後、直ちにタンディッシュを経て連続鋳造を行った。鋳造速度は1.2 〜1.4 m/min 、また溶鋼温度はタンディッシュで1489〜1524℃(ΔT=25〜60℃)であった。
この際のタンディッシュにおける成分は、〔%Si〕=0.24〜0.35%、〔S〕=0.006 〜0.012 %、〔O〕total =40〜70 ppm、〔O〕f =20〜40 ppmであり、〔S〕/〔O〕f =1.5 〜4.0 の範囲に納めるべく、鋳造温度に従って〔S〕を制御した。
その他の成分はVODにおける成分と変わりなかった。
【0045】
かくして得られた連鋳片に、特開平5− 98346号公報に記載される水靱処理およびショットブラスト処理を行い酸化スケールが生成し易い条件にした後に、熱間圧延処理を行った。熱間圧延前の加熱炉処理温度は1240〜1280℃であった。
熱間圧延後、焼なまし(1050〜1150℃, 30〜60秒)、酸洗−焼鈍し、さらに冷間圧延を施した後、焼鈍(1100℃)−酸洗処理を行った。
なお、鋳片の分析結果では、〔O〕total =30〜60 ppmとなった以外、他の成分はタンディッシュにおける分析結果と同じであった。
また、比較のため、二次精錬処理時にFeS添加を行わない連鋳片を用い、同様にして、ステンレス鋼板を製造した。
【0046】
かくして得られた、ステンレス鋼板の光沢むらについて調査したところ、本発明に従い得られたものの不良率(光沢不良率) は0.15%にすぎなかったのに対し、比較材では 4.5%と著しく高い不良率を呈した。
【0047】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼板の表面における光沢むらの発生を効果的に防止することができるだけでなく、製鋼−熱間圧延のプロセスで発生するヘゲ欠陥も低位に抑制することができ、製品品質の向上および歩留り向上という、工業上極めて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来法に従う、オーステナイト系ステンレス鋼の製造過程における介在物の挙動を示す模式図である。
【図2】 鋼中〔S〕および〔O〕f が光沢むらに及ぼす影響を示したグラフである。
【図3】 本発明法に従う、オーステナイト系ステンレス鋼の製造過程における介在物の挙動を示す模式図である。
【図4】 鋼中酸化物量とヘゲ発生率との関係を示したグラフである。
【図5】 本発明法の実施に用いて好適な設備の一例を示す模式図である。
【図6】 脱酸・還元処理時間と鋼中O濃度との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 転炉
2 VOD

Claims (7)

  1. 鋼中の硫黄含有量〔S〕と固溶酸素量〔O〕f の比が下記式の範囲を満足するオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延および冷間圧延して得られた、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板

    1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
    〔S〕:単位mass%
    〔O〕f :単位mass%
  2. 請求項1において、鋼中の硫黄含有量〔S〕が0.005 mass%以上、0.015 mass%以下であることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板
  3. 請求項1または2において、鋼中の酸化物系介在物の量が酸素濃度換算で60 ppm以下であることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板
  4. 溶鋼中の硫黄含有量〔S〕と溶存酸素量〔O〕f の比を下記式の範囲に調整したオーステナイト系ステンレス溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とし、得られたオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延、ついで冷間圧延により薄鋼板とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。

    1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
    〔S〕:単位mass%
    〔O〕f :単位mass%
  5. 溶鋼中の硫黄含有量〔S〕と予め設定した鋳造温度における脱酸平衡から推定される鋳造時の溶存酸素量〔O〕f の比が下記式の範囲になるように成分を調整したオーステナイト系ステンレス溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とし、得られたオーステナイト系ステンレス鋼鋳片を、熱間圧延、ついで冷間圧延により薄鋼板とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。

    1.5 ≦〔S〕/〔O〕f ≦ 4.0
    〔S〕:単位mass%
    〔O〕f :単位mass%
  6. 請求項またはにおいて、溶鋼中の硫黄含有量〔S〕を 0.005mass%以上、0.015 mass%以下とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
  7. 請求項4,5または6において、溶鋼中の酸化物の量を、酸素濃度換算で60 ppm以下とすることを特徴とする、光沢むらの少ないオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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