JP4206513B2 - 抗菌性人工大理石 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キッチンカウンター、洗面台、トイレ用品、バス用品等に用いられる抗菌性人工大理石に関する。更に詳しくは、熱硬化性樹脂を主成分とする人工大理石において、加工時、保存時及び使用時に経時的に変色が極めて少なく、安定して抗菌効果を示す抗菌性を付与させた抗菌性人工大理石に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工大理石は、耐熱性、耐水性、耐摩耗性などが優れるため、キッチンカウンター、洗面台、トイレ用品、バス用品等に広く用いられている。これら用途はほとんどが水周りで使用されるため細菌や黴が繁殖しやすい条件となっている。特に不特定多数の人たちが使用する病院、学校、公共施設等では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の院内感染、大腸菌O−157による集団食中毒等の問題があり、人工大理石の抗菌化が強く望まれている。
【0003】
これらの問題を解決するため、抗菌剤を人工大理石に添加したり表面層に塗布する試みがなされている。抗菌剤は有機系抗菌剤と無機系抗菌剤に大別できるが、前者は安全性、腐食性、抗菌効果の持続性に疑問がある。一方、無機系抗菌剤は安全性、腐食性、効果の持続性に優れる。しかし、無機系抗菌剤の大部分は、抗菌効果を有する銀を含有するものが大部分であるため、加工時、保存時あるいは使用時に経時的に変色が起こるという問題がある。
【0004】
人工大理石は、水、熱水、各種食材、各種洗浄剤、熱等にさらされる機会が多いため、非常に変色が起こりやすい。変色を防止するため、特定担体に銀イオンを担持させたを抗菌剤を使用する方法があるが、銀を有しているいる以上、変色を十分に抑制することが出来ない。さらに、抗菌剤そのものをマイクロカプセル化する方法も提案されているが、抗菌効果が低下するという問題がある。
【0005】
また、銀を含まない抗菌剤として、亜鉛を含有する抗菌剤用ガラスが特開平7−257938号が提案されている。この抗菌剤用ガラスは、溶出する亜鉛により抗菌効果を発現させるものであるため、初期の抗菌性は高いが、抗菌効果の持続性が十分ではない。更に耐水性が低いため、これを添加した人工大理石は温水により白化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、キッチンカウンター、洗面台、トイレ用品、バス用品等に用いられる熱硬化性樹脂を主成分とする人工大理石において、加工時、保存時及び使用時に経時的に変色が極めて少なく、安定して抗菌効果を示す抗菌性人工大理石を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ZnOを極めて高濃度で含有させ、逆にアルカリ金属酸化物の含有割合を極めて低濃度とした特定のガラス質抗菌剤を熱硬化性樹脂に含有させた人工大理石は、上記課題を解決した極めて優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、ZnOを50〜80モル%、B23および/またはP25を20〜50モル%含有し、アルカリ金属酸化物の含有割合が0〜1モル%であるガラスを有効成分とする抗菌剤及び熱硬化性樹脂からなることを特徴とする抗菌性人工大理石である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
○抗菌剤
本発明における抗菌剤(以下、ガラス質抗菌剤と略称する)は、ZnOを50〜80モル%と、B23および/またはP25を20〜50モル%含有し、アルカリ金属酸化物の含有割合が0〜1モル%であるガラスを有効成分とするものである。
【0009】
好ましいZnOの含有割合は、55〜75モル%であり、より好ましくは、60〜70モル%である。ZnOを80モル%より多く配合すると、安定してガラス化させにくいという問題があり、50モル%未満では本発明のガラスの抗菌性が不十分となる。
【0010】
好ましいB23および/またはP25の含有割合は、25〜45モル%であり、より好ましくは30〜40モル%である。B23および/またはP25を50モル%より多く配合すると、本発明のガラスの水溶解性が大きくなってしまい、本発明のガラスが有する優れた抗菌性、耐変色性が損なわれるという問題があり、20モル%未満では安定してガラス化させにくいという問題がある。B23とP25の配合は両方又はどちらか一方のみであっても良い。
【0011】
本発明におけるガラス質抗菌剤において、アルカリ金属酸化物の含有割合は0〜1モル%であり、このことは本発明の人工大理石において優れた抗菌性、耐変色性を発揮させる上で極めて重要である。即ち、アルカリ金属酸化物の含有割合が1モル%より大きいと、本発明におけるガラス質抗菌剤の水溶解性が極めて大きくなってしまい、本発明の人工大理石における持続性のある抗菌性、耐変色性が損なわれてしまう。
【0012】
本発明における必須のガラス形成成分は、B23又はP25であるが、所望によりその他のガラス形成成分を追加することができる。その他のガラス形成成分の好ましい例として、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2等がある。その他のガラス形成成分の好ましい含有割合は、20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下である。
【0013】
又、所望により、MgO、CaO及びCaF2等を適宜含有させることができる。これらの所謂「修飾成分」は、ガラスの溶融や成形性を容易にするのに有効であるが、多量に含有させると、ガラスの耐水性が低下する恐れがあるので、多くとも3モル%以下とするのが好ましく、より好ましくは1モル%以下である。
【0014】
本発明におけるガラス質抗菌剤を製造する方法に制限はなく、既知の製造方法を採用できる。一般には、ガラスの原料調合物を溶融釜で1000〜2000℃で溶解した後、溶解物を急冷して、ガラスを調製後、得られた塊状ガラスを粉砕することにより粉末状のガラスを容易に得ることができる。
【0015】
本発明におけるガラス質抗菌剤の有効成分であるガラスは、従来と比較して格段に優れた抗菌性を発揮させるために、酸化亜鉛(融点:約2000℃)の濃度が従来の抗菌剤用ガラスに比較して高いので、ガラス化が難しいと考えられるかもしれないが、これは思い過ごしである。酸化亜鉛自体はガラスの網目を形成する能力を有しているので、適当な溶融温度で溶解し、溶融物の冷却特性に合った急冷手段を用いれば、本発明における任意の組成を有するガラスを容易に得ることができる。
【0016】
急冷効果を高めるには、溶解物と冷却体との接触面積を大きくすることが有効であり、例えば水等の冷媒で冷却された2個の回転する金属ローラー間にガラスの溶解物を高速で通すことにより、極めて大きな冷却効果が得られ、この冷却方法を用いれば、ガラス化は極めて容易である。又、この方法により冷却すると、ローラー間から出たガラスは薄い板状に成形されているので、粉末状に粉砕することも極めて容易に行うことができる。
【0017】
○4価金属リン酸塩系抗菌剤
本発明におけるガラス質抗菌剤は、4価金属リン酸塩系抗菌剤を併用すると、その抗菌性を一層高めることができる。これはガラス中の亜鉛イオンと4価金属リン酸塩系抗菌剤中の抗菌性金属イオンの2種の異なる抗菌成分による相乗効果が得られるためである。
【0018】
また、本発明におけるガラス質抗菌剤は、その耐変色防止効果が極めて優れているので、4価金属リン酸塩系抗菌剤を併用することで樹脂製品の着色、変色が起こることはない。
本発明における4価金属リン酸塩系抗菌剤は、下記一般式〔1〕で示される。
1aAbM2c(PO4d・nH2O 〔1〕
(M1は銀、銅、亜鉛、錫、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、砒素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム及びクロムから選ばれる少なくとも1種のl価(lは正の整数)の金属イオンであり、Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン及び水素イオンから選ばれる少なくとも1種のm価(mは正の整数)のイオンであり、M2は4価金属イオンであり、nは0≦n≦6を満たす数であり、a及びbはいずれもla+mb=1又はla+mb=2を満たす正数であり、c及びdはla+mb=1の時、c=2、d=3であり、la+mb=2の時c=1,d=2である。)
【0019】
上記一般式〔1〕で示される化合物は、層状構造又は空間群R3 Cに属する3次元編目状構造を有する結晶性化合物又はアモルファスである。
本発明における4価金属リン酸塩系抗菌剤は、物性変化が少ないことから3次元網目状構造を有する結晶性化合物が好ましい。
上記一般式〔1〕におけるM1は、いずれも防かび、抗菌性及び防藻性を示す金属として知られたものであり、これらの中で銀は、安全性の他、防かび、抗菌性及び防藻性を高めることができる金属として特に有効である。
【0020】
上記一般式〔1〕におけるAは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン又は水素イオンから選ばれる少なくとも1種のイオンであり、好ましい具体例には、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム又はカルシウム等のアルカリ土類金属イオン又は水素イオンがあり、これらの中では、化合物の安定性及び安価に入手できる点からカリウム、ナトリウム及び水素イオンが好ましいイオンである。
【0021】
上記一般式〔1〕におけるM2は、4価金属イオンであり、好ましい具体例には、ジルコニウム、チタン又は錫があり、化合物の安全性を考慮すると、ジルコニウム及びチタンは、特に好ましい4価金属イオンである。
【0022】
防かび、抗菌性及び防藻性を発揮させるには、一般式〔1〕におけるaの値は大きい方がよいが、aの値が0. 001以上であれば、充分に防かび、抗菌性及び防藻性を発揮させることができる。しかし、aの値が0. 001未満であると、防かび、抗菌性及び防藻性を長時間発揮させることが困難となる恐れがあるので、aの値を0. 01以上の値とすることが好ましい。また、少量の添加で効果を得るためにはaの値は0.1以上とすることがより好ましい。
【0023】
上記一般式〔1〕の抗菌剤の好ましい具体例として、以下のものがある。
Ag0.001Li1.999Zr(PO42
Ag0.01Na1.99Zr(PO42
Ag0.011.99Sn(PO42・1.2H2
Ag0.1 (NH41.9 Ti(PO42・4H2
及び化合物1モル当たりの銀イオンの電荷量と同じ電荷量になるようにしながら、上記各式におけるAgをZn、Mn、Ni、Pb、Hg、Sn、又はCuと置換した化合物である。
又、以下の抗菌剤も好ましいものである。
Ag0.005 Li0.995 Zr2(PO43
Ag0.01(NH40.99Zr2(PO43
Ag0.05Na0.95Zr2(PO43
Ag0.20.8Ti2(PO43
Ag0.10.9Zr2(PO43
Ag0.400.15Na0.45Zr2 (PO43
Ag0.600.10Na0.30Zr2 (PO43
及び化合物1モル当たりの銀イオンの電荷量と同じ電荷量になるようにしながら、上記各式におけるAgをZn、Mn、Ni、Pb、Hg、Sn、又はCuと置換した化合物等である。
【0024】
本発明における4価金属リン酸塩系抗菌剤は、抗菌性金属イオンをリン酸塩系化合物に担持させたものであり、リン酸塩系化合物を合成する方法には、焼成法、湿式法及び水熱法等があり、公知の製造方法により容易に得ることができる。
【0025】
4価金属リン酸塩系化合物に抗菌性金属イオンを担持させる方法には特に制限はない。しかし、イオン交換反応により担持させる方法が一般的である。
【0026】
○ガラス質抗菌剤と4価金属リン酸塩系抗菌剤の配合割合
本発明における4価金属リン酸塩系抗菌剤の好ましい配合割合は、本発明におけるガラス質抗菌剤との合計重量100重量部(以下、部と略す)当たり0〜70部であり、より好ましくは0〜50部である。70部より多くしても、ガラス質抗菌剤との併用効果の大きな向上が望めず、一方樹脂に添加した際に、4価金属リン酸塩系抗菌剤による変色が起こる恐れがある。
【0027】
また、本発明における抗菌性人工大理石には、ガラス質抗菌剤又はこれに4価金属リン酸塩系抗菌剤を配合した抗菌剤組成物以外に、その他の物性を改善するために、必要に応じて種々の他の添加剤を混合することもできる。具体例としては、酸化防止剤、耐光安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤などがある。
【0028】
○抗菌剤組成物の調製方法
本発明におけるガラス質抗菌剤と4価金属リン酸塩系抗菌剤の混合方法は特に制限はない。例えば、ヘンシェルミキサ−を用いての混合が挙げられ、混合条件は混合量により適宜、回転数(800〜3000rpm)と混合時間(数分〜数十分)のみで調整を行えばよく、常温常圧で行うことが可能である。
【0029】
○熱硬化性樹脂
本発明の抗菌性人工大理石は、人工大理石の全体に抗菌剤を含有させたものと人工大理石の表面を構成するゲルコート層に抗菌剤を含有させたものがある。
ゲルコート層を有する場合と有しない場合の何れの場合も人工大理石基材及びゲルコート層は熱硬化性樹脂からなる。
【0030】
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、硬化して人工大理石基材又はゲルコート層を形成できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、イソフタル酸系不飽和ポリエステル、テレフタル酸系不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミンアクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートなどのポリマー、オリゴマーあるいはこれらの重合体を形成する重合性単量体の少なくとも1種を主成分とするもの等がある。
【0031】
又、必要に応じ、架橋剤、硬化剤、硬化促進剤、着色剤等を添加することができる。
架橋剤として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。硬化剤として、ターシャリーブチルパーオキシマレイン酸、過酸化ベンゾイル、メチルエトルケトンパーオキサイド等が挙げられる。硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0032】
ガラス質抗菌剤又はこれと4価金属リン酸塩系抗菌剤を配合した抗菌剤組成物を人工大理石用組成物に配合する方法は公知の方法をどれも採用できる。例えば、人工大理石用組成物にガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物を所定量添加し、ニーダー、ミキサー、ロールミル、押し出し機等で混練、混合すればよい。
ガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物の人工大理石又はゲルコート層における好ましい配合割合は、人工大理石又はゲルコート層100部当たり0.05〜10部であり、より好ましくは0.5〜5部である。0.05部より少ないと抗菌性人工大理石の抗菌性が不充分となる恐れがあり、一方10部より多く配合しても抗菌効果の向上が殆どない。
【0033】
○抗菌性人工大理石の作製方法
抗菌性人工大理石は、次のようにして作製される。熱硬化性樹脂、硬化触媒、ガラス質抗菌剤またはこれと4価金属リン酸塩系抗菌剤を配合した抗菌剤組成物を混合する。必要に応じ、ガラス繊維や水酸化アルミニウム等の無機質充填材、架橋剤、硬化促進剤、顔料等を添加、混合すればよい。この混合物を型に注入し、室温または加熱により硬化させることにより人工大理石が得られる。注入成型以外にも、射出成型、プレス成型等、他の成型方法を用いることも可能であるが、注入成型が最も好ましい。
【0034】
又、ゲルコート層を基材樹脂の表面に有する人工大理石の場合は、一般に次のようにして作製される。成型用の型に、ゲルコート層作製用塗料組成物をスプレーアップ法等により塗装、硬化させる。次に基材樹脂用組成物を型に注入し、硬化させる。ゲルコート層と基材樹脂の積層品を脱型することにより、人工大理石が得られる。
【0035】
【作用】
本発明におけるガラス質抗菌剤が優れた抗菌性、耐変色性を有する機構について以下のように推定される。即ち、本発明におけるガラス質抗菌剤は高濃度のZnOを含有し、且つアルカリ金属の含有割合が極めて低濃度であることから、水溶解性が極めて小さく、先ず耐水性に優れる。ガラス質抗菌剤を構成するガラスの表面層はZnの溶出が少ないので、ガラス表面層には常に高濃度のZnが存在し、Znによる抗菌性を長期間持続させることができる。また、ガラス質抗菌剤の水溶解性が小さいので変色要因となるZnイオンやアルカリ金属イオンの溶出が少なく、耐変色性が優れる。
上記のガラス質抗菌剤と本特許に使用される4価金属リン酸塩系抗菌剤を併用すると、各々が単独の場合より抗菌性が向上するのは、複数の抗菌剤を共存させるとそれぞれの抗菌剤の相乗効果が発揮されるものと推定される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
合成例1(4価金属リン酸塩系抗菌剤)
硫酸ジルコニウムの水溶液及びリン酸の水溶液をジルコニウムとリンの比が2:3になるように混合することにより沈澱物を生じさせ、水酸化ナトリウムの水溶液を用いてpHを2に調整したのち、水熱状態下で130℃、12時間加熱することにより結晶性リン酸ジルコニウム〔NaZr2(PO43〕を得た。
上記で得たリン酸塩系化合物をよく水洗後、硝酸銀及び1Nの硝酸水溶液に添加し、60℃で4時間撹拌した後、充分に水洗、乾燥した。これを焼成炉にて750℃で4時間焼成した後、粉砕することにより銀系無機抗菌剤Ag0.50Na0.230.27Zr2(PO43を得た。得られた銀系無機抗菌剤は平均粒径が0.92μである白色粉末である。
【0037】
合成例2(ゼオライト系抗菌剤の調製)
合成例1で合成した結晶性リン酸ジルコニウムに代えて、市販のゼオライト4Aを用いた以外は参考例1と同様にして、銀の含有割合が4重量%である抗菌性ゼオライトを得た。
【0038】
参考例1(ガラス質抗菌剤の調製)
表1において試料No.1〜No.3で示した組成の原料調合物を1000〜1400℃で溶解してガラスを作製後、得られたガラスをボ−ルミルにて湿式粉砕して平均粒径約10μmのガラス質抗菌剤を得た。
【0039】
比較参考例1(ガラス質抗菌剤の調製)
表1において試料No.4〜No.6で示した組成の原料調合物を用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径約10μmのガラス質抗菌剤を得た。
【0040】
参考例2(抗菌剤組成物の調製)
合成例1にて調製した4価金属リン酸塩系抗菌剤とガラス質抗菌剤試料No.1または3を、表2に示した割合で配合して抗菌剤組成物(試料No.7〜試料No.10)を得た。
【0041】
【表1】
Figure 0004206513
【0042】
【表2】
Figure 0004206513
【0043】
実施例1
ポリメチルメタアクリレート/メチルメタアクリレート100部に対して、水酸化アルミニウム150部を添加し、さらに硬化剤、硬化促進剤を加えた人工大理石樹脂組成物100部に対して、参考例1及び参考例2にて調製した各種ガラス質抗菌剤(試料No.1〜No.3)又は抗菌剤組成物(試料No.7〜10)を1.0部添加、混合した。この組成物を型内に注入、室温で硬化、脱型させることにより抗菌性人工大理石を得た(試作No.1〜No.3、試作No.7〜10。但し、試作No.Kの人工大理石は試料No.Kのガラス質抗菌剤、抗菌剤組成物又は抗菌剤を用いて作製したものである(Kは正の整数)。以下、比較例1において同様に表示した)。
【0044】
比較例1
実施例1におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物に代えて、参考例2で調製した試料No.4〜No.6のガラス質抗菌剤を用いた以外は実施例1と同様にして抗菌性人工大理石を得た(試作No.4〜No.6)。
【0045】
比較例2
実施例1におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物に代えて、合成例1で調製した抗菌剤を用いた以外は実施例1と同様にして抗菌性人工大理石を得た(試作No.11)。
【0046】
比較例3
実施例1におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物に代えて、合成例2で調製した抗菌剤を用いた以外は実施例1と同様にして抗菌性人工大理石を得た(試作No.12)。
【0047】
比較例4
抗菌剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして人工大理石を得た(試作No.13)。
【0048】
評価試験1
実施例1及び比較例1〜4にて作製した抗菌性人工大理石の色彩を目視で確認することで変色性評価とした。
また、作製した成型体の抗菌力を、以下の方法により評価した。
被検菌には大腸菌を用い、抗菌性人工大理石を5cm×5cm×2mmのプレートに切断し、プレート表面1枚当りの菌数が105〜106個となるように菌液0.5mlを表面に滴下した。その上から4.5cm×4.5cmのポリエチレン製フィルムを被せ、菌液を表面に一様に接触させ、温度35℃、湿度95RH%で24時間保存した。保存開始直後(理論添加菌数)及び24時間保存した後に、菌数測定用培地(SCDLP液体培地)でプレート上の生残菌を洗い出し、この洗液について、普通寒天培地を用いる混釈平板培養法(37℃2日間)により生菌数を測定して、プレートの5cm×5cm当りの生菌数に換算した。なお、初発菌数は1.4×105であり、サンプルを用いずに同様の操作を行った対照の菌数は9.5×106であった。
さらに、プレートを、80℃の温水に500時間浸漬させた後の色彩、及び抗菌力を評価し、その結果を表3に合わせて示した。
【0049】
【表3】
Figure 0004206513
【0050】
本発明におけるガラス質抗菌剤または抗菌剤組成物を配合した抗菌性人工大理石(試作No.1〜3、及び7〜10)は抗菌性、耐変色性、耐温水性とも優れた性能を有していることが確認された。
一方、 ZnOの含有割合は大きいが、アルカリ金属酸化物の含有割合が1モル%より大きいガラス質抗菌剤を配合したプレート(試作No.4)は、耐変色性に劣り、ZnOの配合モル比の小さい抗菌剤用ガラスを配合したプレート(試作No.5)は抗菌性に劣る結果となった。また、ガラス中に亜鉛と共に銀を含有させたプレート(試作No.6)は耐変色性に劣る結果となった。
【0051】
実施例2
イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂100部に対して、参考例1にて調製した各種ガラス質抗菌剤(試料No.1〜No.3)又は抗菌剤組成物(試料No.7〜10)を1.0部添加、混合した。
硬化剤としてメチルエトルケトンパーオキサイド、および硬化促進剤としてナフテン酸コバルトを所定量添加し、ゲルコート層作製用塗料組成物を得た。成型型の内側にスプレーガンにより塗料組成物を厚さが約0.5mmとなるように塗布し、室温で硬化させた。引き続き水酸化アルミニウムを50重量%含有するイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする基材樹脂組成物を型内に注入、室温で硬化、脱型させることにより人工大理石成型体を得た(試作No.G1〜No.G3、試作No.G7〜G10。但し、試作No.GKの人工大理石は試料No.Kのガラス質抗菌剤、抗菌剤組成物又は抗菌剤を用いて作製したものである(Kは正の整数)。以下、比較例5において同様に表示した)。
【0052】
比較例5
実施例2におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物に代えて、合成例1で調製した抗菌剤を用いた以外は実施例2と同様にして抗菌性人工大理石を得た(試作No.G11)。
【0053】
比較例6
実施例2におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物に代えて、合成例2で調製した抗菌剤を用いた以外は実施例2と同様にして抗菌性人工大理石を得た(試作No.G12)。
【0054】
比較例7
抗菌剤を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして人工大理石を得た(試作No.G13)。
【0055】
評価試験2
実施例1及び比較例1〜4にて作製した抗菌性人工大理石について行った方法と同様にして、実施例2、比較例5〜7にて作製した抗菌性人工大理石について、抗菌性、耐変色性、耐温水性を評価した。
【0056】
【表4】
Figure 0004206513
【0057】
本発明におけるガラス質抗菌剤又は抗菌剤組成物を配合した抗菌性人工大理石(試作No.G1〜G3、及びG7〜G10)は抗菌性、耐変色性、耐温水性とも優れた性能を有していることが確認された。
一方、 ZnOの含有割合は大きいが、アルカリ金属酸化物の含有割合が1モル%より大きい抗菌剤用ガラスを配合した抗菌性プレート(試作No.G4)は、耐変色性に劣り、ZnOの配合モル比の小さい抗菌剤用ガラスを配合した抗菌性プレート(試作No.G5)は抗菌性に劣る結果となった。また、ガラス中に亜鉛と共に銀を含有させた抗菌性プレート(試作No.G6)は耐変色性に劣る結果となった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の抗菌性人工大理石は、加工時、保存時及び使用時に経時的に変色が極めて少なく、安定して抗菌効果を示す優れた抗菌性を有している。
又、本発明の抗菌性人工大理石は、耐温水性、及び耐変色性をも有しており、キッチンカウンター、洗面台、トイレ用品、バス用品等に用いられる人工大理石として極めて有用である。

Claims (2)

  1. ZnOを50〜80モル%、B23および/またはP25を20〜50モル%含有し、アルカリ金属酸化物の含有割合が0〜1モル%であるガラスを有効成分とする耐水性に優れる抗菌剤及び熱硬化性樹脂からなることを特徴とする抗菌性人工大理石。
  2. ゲルコート層を基材樹脂の表面に有する人工大理石において、ゲルコート層が請求項1記載の抗菌剤及び熱硬化性樹脂からなることを特徴とする抗菌性人工大理石。
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