JP4206243B2 - 新規のガラクタナーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラクタナーゼ活性を有する新規のポリペプチド、すなわち、新規のガラクタナーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
柑橘類、馬鈴薯、又はダイズ等の植物由来の繊維に多く含まれるガラクタン類は、β−1,4−ガラクトシド結合を有する主鎖を含む多糖である。これらの多糖を分解する酵素として、β−1,4−ガラクタナーゼ(以下、単に「ガラクタナーゼ」と称することがある)が知られている。これまで、種々の菌〔例えば、Penicillium citrinum[「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1985年,第49巻,p.3445−3454(非特許文献1)]、Bacillus subtilis[「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1972年,第36巻,p.1945−1954(非特許文献2)]、Aspergillus niger、Aspergillus aculeatus[「カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)」,(オランダ),エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science),1991年,第16巻,p.167−187(非特許文献3)]、Myceliophthora thermophilum[特表2000−505303号公報(特許文献1)]、又はHumicola insolens(特表2000−505303号公報)等〕の生産するエンド型ガラクタナーゼや、枯草菌(Bacillus subtilis)の生産するエキソ型ガラクタナーゼ[特許第2989217号明細書(特許文献2)]が報告されている。
【0003】
ガラクタナーゼの各分野への応用例として、飼料分野としては、動物飼料に添加することにより、飼料の消化不良の原因解消[特公昭55−40238号公報(特許文献3)]、あるいは、飼料転換割合の改良[特表平11−514528号公報(特許文献4)]等に利用することが開示されている。ここで、飼料に添加されたガラクタナーゼが家畜消化管において有効に作用するためには、比較的低いpHにおいて安定でなければならない。例えば、ブロイラーでは、腺胃や筋胃でのpHは2付近まで低下することが知られている[小野寺良次ら著,「畜産栄養学」,(有)川島書店,1989年,第73頁(非特許文献4)]が、このように低いpHで安定であるガラクタナーゼはこれまで知られていない。例えば、低pHで安定であることが知られている、特表平6−505154号公報に記載のガラクタナーゼ(Aspergillus aculeatus由来)でも、pH2.0では60%以下に、pH1.5では20%まで酵素活性が低下する(室温で1時間処理した場合)。
食品分野では、植物抽出物の濁り安定性向上[特表平10−501412号公報(特許文献5)]、あるいは、ワイン又はジュースの加工における脱ペクチン化及び粘度低下[特表平6−505154号公報(特許文献6)]のために用いることが開示されている。
【0004】
また、ガラクタナーゼをガラクタン類に作用させてガラクトオリゴ糖を得ることができる。ガラクトオリゴ糖は、整腸作用及びカルシウム吸収促進作用[特開平4−134031号公報(特許文献7)]等が注目され、骨粗鬆症の予防又は治療[特開平7−252156号公報(特許文献8)]、炎症性腸疾患の予防又は治療の目的で、食品及び医薬品分野に応用されている。また、下痢若しくは軟便の発生抑制又は体重増加率の向上[特公平2−579202号公報(特許文献9)]、腸内菌叢改善効果[特開平6−178654号公報(特許文献10)]、豚用便秘の予防又は治療[特許第2571702号明細書(特許文献11)]、牛乳脂肪率の上昇[特許第2525638号明細書(特許文献12)]、体内脂肪の蓄積抑制[特開平6−178654号公報(特許文献13)]、卵の品質向上[特許第3124409号明細書(特許文献14)]、あるいは、サルモネラ菌の増殖阻害[特開平5−208912号公報(特許文献15)]の目的で、飼料分野に応用されている。
【0005】
ガラクトオリゴ糖の製造方法に関しては、種々の報告がなされている。従来、多く用いられている方法は、乳糖又は乳糖含有物にβ−ガラクトシダーゼ又はガラクタナーゼを作用させ、糖転移により、式:
Gal−(Gal)n−Glc
(式中、「Gal」はガラクトースを表わし、「Glc」はグルコースを表わし、「n」は0以上の整数を表わす)
で表されるガラクトオリゴ糖を得る方法である[特公平2−53033号公報(特許文献16)、特公平3−54559号公報(特許文献17)、又は特開平9−117297号公報(特許文献18)]。
また、特許第2615236号明細書(特許文献19)、特許第2894292号明細書(特許文献20)、特許第2894293号明細書(特許文献21)、又は特許第2989217号明細書(特許文献22)には、オカラ、又はダイズ由来のアラビノガラクタンにガラクタナーゼを作用させて、式:
(Gal)p
(式中、「Gal」はガラクトースを表わし、「p」は2〜4の整数を表わす)で表されるオリゴ糖を製造する方法が開示されている。しかし、特許第2615236号明細書又は特許第2894292号明細書に記載の各方法では、ガラクトトリオース(Gal3)及びガラクトテトラオース(Gal4)が同程度、主に生成され、特許第2894293号明細書に記載の方法では、ガラクトトリオース(Gal3)が主に生成され、特許第2989217号明細書に記載の方法では、ガラクトビオース(Gal2)の他にガラクトテトラオース(Gal4)が生成する。
従って、これまでの方法で製造したガラクトオリゴ糖は、種々のオリゴ糖及び単糖の混合物であることから、結晶化しにくいという難点があった。これに対し、ガラクタナーゼによりガラクトビオースを高濃度に生成することができれば、容易に結晶化することができる可能性がある。
ガラクタナーゼの作用により最終生成物がガラクトース及びガラクトビオースになるとする知見もある[「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1985年,第49巻,p.3445−3454;「カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)」,(オランダ),エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science),1991年,第15巻,p.431−444(非特許文献5);及び「カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)」,(オランダ),エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science),1991年,第16巻,p.167−187]が、いずれも長時間反応後の結果であり、より短時間での純度の向上が望まれる。
このような反応特性を有し、しかも、高い比活性を有するガラクタナーゼが待ち望まれていた。
【0006】
糸状菌の一種であるアクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)の生産する酵素に関しては、セルラーゼ、ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ)、及びキシラナーゼに関しては多くの報告がなされており[「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1988年,第52巻,p.2493−2501(非特許文献6);「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1989年,第53巻,p.3359−3360(非特許文献7);「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1990年,第54巻,p.309−317(非特許文献8);及び国際公開WO98/39423号パンフレット(特許文献22)]、これらの酵素が飼料用途やサイレージ用途において有効であることが示されている[特開平4−117244号公報(特許文献23)、又は特開平7−236431号公報(特許文献24)]。しかしながら、ガラクタナーゼに関しては未だ詳細な報告は無く、前記アクレモニウム・セルロリティカス由来の酵素又は酵素組成物を産業上、更に有効利用するためにも、ガラクタナーゼの詳細な酵素的又はタンパク質的諸性質の解明、及び前記酵素をコードする遺伝子の単離が待ち望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特表2000−505303号公報
【特許文献2】
特許第2989217号明細書
【特許文献3】
特公昭55−40238号公報
【特許文献4】
特表平11−514528号公報
【特許文献5】
特表平6−505154号公報
【特許文献6】
特表平10−501412号公報
【特許文献7】
特開平4−134031号公報
【特許文献8】
特開平7−252156号公報
【特許文献9】
特公平2−579202号公報
【特許文献10】
特開平6−178654号公報
【特許文献11】
特許第2571702号明細書
【特許文献12】
特許第2525638号明細書
【特許文献13】
特開平6−178654号公報
【特許文献14】
特許第3124409号明細書
【特許文献15】
特開平5−208912号公報
【特許文献16】
特公平2−53033号公報
【特許文献17】
特公平3−54559号公報
【特許文献18】
特開平9−117297号公報
【特許文献19】
特許第2615236号明細書
【特許文献20】
特許第2894292号明細書
【特許文献21】
特許第2894293号明細書
【特許文献22】
国際公開WO98/39423号パンフレット
【特許文献23】
特開平4−117244号公報
【特許文献24】
特開平7−236431号公報
【非特許文献1】
「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1985年,第49巻,p.3445−3454
【非特許文献2】
「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1972年,第36巻,p.1945−1954
【非特許文献3】
「カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)」,(オランダ),エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science),1991年,第16巻,p.167−187
【非特許文献4】
小野寺良次ら著,「畜産栄養学」,(有)川島書店,1989年,第73頁
【非特許文献5】
「カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)」,(オランダ),エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science),1991年,第15巻,p.431−444
【非特許文献6】
「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1988年,第52巻,p.2493−2501
【非特許文献7】
「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1989年,第53巻,p.3359−3360
【非特許文献8】
「アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural and Biological Chemistry)」,1990年,第54巻,p.309−317
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ガラクタナーゼを産業上、有効利用するためには、高い比活性を有する酵素を単離及び精製し、酵素的及び物理的性質を明らかにすることが不可欠である。また、前記酵素の発現増強及び大量生産を可能にするには、前記酵素をコードする遺伝子を単離及び解析することが必要となる。
また、飼料添加用酵素としては、低いpH(好ましくはpH3以下、より好ましくはpH2以下)で安定でなくてはならない。更に、ガラクトビオース製造用酵素としては、ガラクトビオースを高濃度で生成する酵素であることが必要となる。
【0009】
本発明者らは、このような状況下、アクレモニウム・セルロリティカスの種々の酵素を分画及び精製して鋭意検討したところ、これら酵素群の中からこれまで知られていたガラクタナーゼに比べて顕著に高い比活性を示し、しかも、広いpH範囲で安定である、新規なガラクタナーゼを見出し、前記酵素をコードする遺伝子を単離した。更に、種々の植物材料に対する前記ガラクタナーゼの作用効果を検討したところ、ガラクトビオースを高濃度で生成する酵素であることが判明した。本発明は、このような知見に基づくものである。
従って、本発明の課題は、新規なガラクタナーゼ、前記ガラクタナーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを用いたガラクタナーゼの発現方法、ガラクタナーゼを含む酵素組成物、並びに前記酵素組成物による植物材料の処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、下記の理化学的性質(a)〜(f)を有し、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドによって解決することができる:
(a)作用及び基質特異性:β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型に加水分解する。
(b)安定pH範囲:pH2〜10の範囲で安定である。
(c)分子量:40,000(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(d)等電点:4.5(等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(e)至適pH:5〜6である。
(f)作用最適温度:50℃である。
【0011】
また、本発明は、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列1又は複数個の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドに関する。
【0012】
また、本発明は、(a)配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列1又は複数個の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;あるいは、
(e)配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0013】
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド構築物に関する。
また、本発明は、前記ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド構築物を含む、発現ベクターに関する。
また、本発明は、前記ポリヌクレオチド構築物又は発現ベクターで形質転換された、形質転換細胞に関する。
また、本発明は、前記形質転換細胞を培養する工程;及び
前記培養工程で得られた形質転換細胞及び/又は培養液から、前記ポリペプチドを採取する工程
を含む、前記ポリペプチドの製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、前記ポリペプチドを含む、酵素組成物に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド又は酵素組成物を含む、飼料添加物に関する。
また、本発明は、前記飼料添加物を含む、飼料に関する。
また、本発明は、飼料原料に、前記飼料添加物を添加する、前記飼料の調製方法に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチド又は酵素組成物を含む、食品加工用及び/又は食品添加用の酵素剤に関する。
また、本発明は、前記食品加工用酵素剤を用いる、食品の加工方法に関する。
更に、本発明は、前記ポリペプチド又は酵素組成物を用いて、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を分解することを特徴とする、ガラクトビオースの製造方法に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリペプチドは、エンド−β−1,4−ガラクタナーゼ活性を有する。エンド−β−1,4−ガラクタナーゼ活性を示す酵素(すなわち、Arabinogalactan 4−β−D−galactanohydrolase EC3.2.1.89)とは、具体的には、β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖(例えば、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖)のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型に加水分解する酵素を意味し、エンド−β−1,4−ガラクタナーゼ、ガラクタナーゼ、又はアラビノガラクタナーゼとも呼ばれる。
【0016】
ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖とは、主鎖が主にガラクトースからなる多糖又はオリゴ糖の総称であり、側鎖の有無や、側鎖の糖の種類には限定されない。本発明のポリペプチド(すなわち、ガラクタナーゼ)は、β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖、例えば、主鎖にβ−1,4−ガラクトシド結合を有するガラクタン類又はガラクトオリゴ糖に作用する。
主鎖にβ−1,4−ガラクトシド結合を有するガラクタン類としては、側鎖にアラビノース、グルコース、マンノース、キシロース、及び/又はウロン酸等を有するガラクタンがあり、具体的には、例えば、ダイズに含まれるアラビノガラクタンを挙げることができる。
主鎖にβ−1,4−ガラクトシド結合を有するガラクトオリゴ糖としては、例えば、式:
(Gal)m
(式中、「Gal」はガラクトースを表わし、「m」は2以上の整数を表わす)で表されるガラクトオリゴ糖[例えば、ガラクトビオース(Gal2)、ガラクトトリオース(Gal3)、又はガラクトテトラオース(Gal4)]、式:
(Gal)n−Glc
(式中、「Gal」はガラクトースを表わし、「Glc」はグルコースを表わし、「n」は2以上の整数を表わす)
で表されるガラクトオリゴ糖、又はアラビノガラクトオリゴ糖などを挙げることができる。
【0017】
本発明のポリペプチドは、以下の理化学的性質を有し、ガラクタナーゼ活性を有する。
(a)作用及び基質特異性
β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖、例えば、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型で加水分解する。基質としては、主鎖にβ−1,4−ガラクトシド結合を有するガラクタン類又はガラクトオリゴ糖に対して高い活性を示す。
また、ダイズに含まれるアラビノガラクタンは、β−1,4結合からなることが知られているが、本発明のポリペプチドは、ダイズ繊維質に作用し、主にガラクトビオース及びガラクトースを生成する。
(b)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量は、約40,000である。
(c)等電点
等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動による等電点(pI)は、約4.5である。
(d)至適pH
ガラクタン分解活性における至適pHは、5〜6、特には5.5である。
(e)至適温度
ガラクタン分解活性における至適温度は、約50℃である。
(f)安定pH範囲
室温(22℃)での5時間処理においては、pH2〜10の範囲で安定である。なお、pH1.5〜2の範囲においても、高い活性を保持している。なお、本明細書において、或るpHにおいて「安定である」とは、22℃で5時間処理した後の残存酵素活性が80%以上であることを意味する。
(g)温度安定性
pH5.5での24時間処理においては、50℃以下で安定である。
(h)比活性
ガラクタン分解活性における比活性は、約3000単位/mgタンパク質である。
【0018】
なお、本明細書において「ガラクタン分解活性」とは、pH5.5及び37℃の条件下で、0.5%ルピン(Lupin)由来ガラクタン溶液に酵素を作用させ、この測定系において、1分間に1μmolの還元ガラクタン末端を生成する酵素量を「1単位」と定義する。
【0019】
本発明のポリペプチドは、例えば、糸状菌から得ることができる。前記糸状菌としては、アクレモニウム属に属する微生物が好ましく、アクレモニウム・セルロリティカスがより好ましく、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)又はアクレモニウム・セルロリティカスTN株(FERM BP−685)が更に好ましい。なお、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)は昭和58年1月12日に、アクレモニウム・セルロリティカスTN株(FERM BP−685)は昭和59年10月13日に、それぞれ、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター[(旧)工業技術院生命工学工業技術研究所]に寄託されたものである。
【0020】
本発明のポリペプチドを生産する微生物から、本発明のポリペプチドを取得するには、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順に従って調製することができる。
まず、微生物の培養を、それ自体公知の培養方法により実施する。例えば、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)又はアクレモニウム・セルロリティカスTN株(FERM BP−685)を用いる場合には、例えば、特公昭60−43954号公報又は特公昭63−63197号公報に記載の方法に従って培養を行なうことができる。
微生物の培養終了後、得られた培養物を、適当な分離手段(例えば、遠心分離等)により菌体を除去して得られる上清液を、そのまま、本発明のポリペプチドの粗酵素として用いることができる。通常は、更に、前記上清液を、適当な濃縮手段(例えば、限外濾過法など)により濃縮し、所望により防腐剤などを加えて、濃縮酵素として、あるいは、前記濃縮後、適当な粉末化手段(例えば、スプレードライ法)によって粉末酵素として、本発明のポリペプチドを得ることができる。
更に、これらの濃縮酵素又は粉末酵素を、必要に応じて、部分精製又は高度に精製することにより、より純粋な状態で、本発明のポリペプチドを得ることができる。
前記精製方法としては、タンパク質精製のための常法、例えば、硫安などによる塩析法;アルコールなどによる有機溶媒沈殿法;膜分離法;あるいは、イオン交換体、疎水クロマトグラフ用担体、及び/又はゲル濾過用担体などを用いるクロマト分離法などを、単独で、あるいは、適宜組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明のポリペプチドには、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列1又は複数個(好ましくは1又は数個)の箇所において、1又は複数個(好ましくは1又は数個)のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド(以下、機能的等価改変体と称する);あるいは、
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド(以下、相同ポリペプチドと称する)
が含まれる。
なお、本明細書において「ガラクタナーゼ活性」とは、β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖、例えば、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型で加水分解する活性を意味する。
【0022】
本発明のポリペプチドの1つである、「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド」は、334個のアミノ酸残基からなるアクレモニウム・セルロリティカス由来の新規ガラクタナーゼである。前記「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド」は、「配列番号2で表されるアミノ酸配列(すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1番目〜354番目のアミノ酸配列)からなるポリペプチド」として翻訳された前駆体から、N末端側のシグナルペプチド(すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1番目〜20番目のアミノ酸からなるペプチド)が切断除去された成熟体であると考えられる。
【0023】
本発明の「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド」には、例えば、
(b1)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加したアミノ酸配列からなり、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド;
(b2)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列のN末端に、シグナル配列(好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1番目〜20番目のアミノ酸配列、あるいは、その部分配列であって、しかも、シグナル配列としての機能を有するアミノ酸配列)を付加したアミノ酸配列からなり、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド;あるいは、
(b3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列のN末端に、シグナル配列を付加したアミノ酸配列において、更に、そのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加したアミノ酸配列からなり、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド
を挙げることができる。
【0024】
本発明において用いることのできるマーカー配列としては、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGエピトープ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。
【0025】
本発明のポリペプチドの起源は、アクレモニウム・セルロリティカスに限定されない。例えば、本発明の機能的等価改変体には、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのアクレモニウム・セルロリティカスにおける天然の変異体(但し、ガラクタナーゼ活性を有する)が含まれるだけでなく、アクレモニウム・セルロリティカス以外の微生物[例えば、糸状菌(好ましくは、アクレモニウム・セルロリティカスを除く、アクレモニウム属に属する微生物)]由来の天然に存在する機能的等価改変体(但し、ガラクタナーゼ活性を有する)が含まれる。また、これらの天然のポリペプチド、特には、配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を基にして遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチド(但し、ガラクタナーゼ活性を有する)などが含まれる。
【0026】
本発明の相同ポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドである限り、特に限定されるものではないが、本発明の相同ポリペプチドとしては、配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列との相同性が、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上であるアミノ酸配列を有し、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドが好ましい。
なお、本明細書における「相同性」とは、BLAST(Basic local alignment search tool)により得られた値を意味する。
【0027】
本発明のポリペプチドとしては、「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド」又は「配列番号2で表されるアミノ酸配列(すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1番目〜354番目のアミノ酸配列)からなるポリペプチド」が好ましい。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
本発明のポリヌクレオチドには、具体的には、
(a)配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードするポリヌクレオチド;
(c)「配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド」をコードするポリヌクレオチド;
(d)「機能的改変体」をコードするポリヌクレオチド;あるいは、
(e)「相同ポリペプチド」をコードするポリヌクレオチド
が含まれる。
【0029】
また、本発明のポリヌクレオチドには、「配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド」が含まれる。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、プローブとして、標識化した、配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるDNAを有するものを用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング検出システム(アマシャム社製)に添付のプロトコールに従って、1時間のプレハイブリダイゼーション(42℃)の後、前記プローブを添加し、15時間(42℃)ハイブリダイゼーションを行なった後、0.4%SDS及び6mol/L尿素含有の1×SSC(SSC;15mmol/Lクエン酸三ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム)により42℃で20分間の洗浄を2回繰り返し、次に5×SSCで室温にて10分間の洗浄を2回行なう条件である。
【0030】
本発明によるポリヌクレオチドは、例えば、天然由来のものであることもできるし、あるいは、全合成したものであることもできる。更には、天然由来のものの一部を利用して合成を行なったものであることもできる。
本発明によるポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば、アクレモニウム・セルロリティカス由来の染色体ライブラリー又はcDNAライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば、部分アミノ酸配列の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
【0031】
本発明のポリヌクレオチドとしては、「配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド」又は「配列番号1で表される塩基配列(すなわち、配列番号1で表される塩基配列の1番目〜1065番目の塩基配列)からなるポリヌクレオチド」が好ましい。
配列番号1で表される塩基配列は、1番目〜3番目のATGで始まり、1063番目〜1065番目のTGAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、61番目〜63番目の塩基配列は、334残基からなる成熟タンパク質(すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるガラクタナーゼ)のN末端アミノ酸に対応する。
【0032】
本発明のポリヌクレオチド構築物は、本発明のポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドがコードする本発明のポリペプチドを発現させるのに必要な塩基配列を含むポリヌクレオチドとを、前記ポリペプチドが発現可能な順序で含む限り、特に限定されるものではない。前記ポリペプチドを発現させるのに必要な塩基配列としては、特に限定されるものではないが、例えば、発現対象であるポリヌクレオチドの上流に配置するプロモーター配列、発現対象であるポリヌクレオチドの下流に配置するターミネーター配列、あるいは、シグナルペプチドをコードする塩基配列などを挙げることができる。
【0033】
本発明の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド構築物を含み、しかも、宿主細胞内で複製可能で、かつそのポリヌクレオチドがコードするガラクタナーゼを宿主細胞内で発現可能である限り、特に限定されるものではない。
本発明の発現ベクターは、例えば、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しないDNA(例えば、プラスミド)を基本に構築することができる。あるいは、本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであることもできる。
本発明によるベクター構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているものを用いることができる。
【0034】
本発明の発現ベクターは、これを実際に宿主細胞に導入して所望の活性を有するタンパク質を発現させるために、本発明のポリヌクレオチドの他に、その発現を制御する塩基配列、あるいは、微生物を選択するための遺伝子マーカー等を含んでいるのが好ましい。発現を制御する塩基配列としては、プロモーター配列、ターミネーター配列、あるいは、シグナルペプチドをコードする塩基配列等を挙げることができる。
前記プロモーター配列は、宿主細胞において転写活性を示すものであれば特に限定されず、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。また、前記ターミネーター配列は、宿主細胞において転写終結活性を示すものであれば特に限定されず、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。更に、シグナルペプチドは、宿主細胞において、タンパク質の分泌に寄与するものであれば特に限定されず、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。 また、前記遺伝子マーカーは、形質転換体の選択の方法に応じて適宜選択することができるが、例えば、薬剤耐性をコードする遺伝子、あるいは、栄養要求性を相補する遺伝子を用いることができる。
【0035】
本発明の形質転換細胞は、適当な宿主細胞を、本発明のポリヌクレオチド構築物又は発現ベクターで形質転換することにより得ることができる。本発明において用いることのできる宿主−ベクター系は特に限定されず、例えば、大腸菌、放線菌、酵母、糸状菌、植物細胞、又は動物細胞(例えば、哺乳動物細胞又は昆虫細胞)などを用いた系(他のタンパク質との融合タンパク質発現系を含む)を用いることができる。
本発明の発現ベクターによる宿主細胞の形質転換も、この分野で慣用されている方法に従って実施することができる。
【0036】
本発明において宿主として用いる酵母としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、又はピキア(Pichia)属に属する微生物、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等を挙げることができる。
また、宿主として使用する、不完全菌類に属する糸状菌としては、例えば、アクレモニウム(Acremonium)属、フミコーラ(Humicola)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、又はフザリウム(Fusarium)属に属する微生物を挙げることができ、好ましくは、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、又はフザリウム・オキシスポーラス(Fusarium oxysporus)等を挙げることができる。
【0037】
本発明による、本発明ポリペプチドの製造方法では、本発明の形質転換細胞を適当な培地で培養し、得られた形質転換細胞及び/又は培養液から、本発明のポリペプチドを回収することにより、本発明のポリペプチドを得ることができる。
形質転換細胞の培養は、宿主として使用する微生物の培養と本質的に同等の方法により実施することができる。また、形質転換細胞及び/又は培養液から目的のポリペプチドを回収する方法は、この分野で慣用されている方法を用いることができる。
【0038】
例えば、糸状菌アクレモニウム・セルロリティカスを用いて本発明のポリペプチドを製造する場合には、例えば、特開2001−17180号公報に記載の方法に準じて実施することができる。
すなわち、アクレモニウム・セルロリティカスにおいて最も高発現しているCBH(セロビオヒドロラーゼ)1遺伝子のプロモーターの下流に、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を連結した遺伝子発現用の組換えベクターを作製し、このベクターをアクレモニウム・セルロリティカスに導入することにより、前記ポリペプチドを大量に発現させることができる。
【0039】
本発明の酵素組成物は、本発明のポリペプチドと、酵素組成物に通常用いることのできる担体又は希釈剤とを含む。本発明の酵素組成物は、例えば、本発明のポリペプチドを、酵素組成物に一般的に用いることのできる担体又は希釈剤、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、塩化ナトリウム、又はソルビトール等)、界面活性剤、又は防腐剤等とともに混合して製造することができる。
また、本発明における酵素組成物の形状は任意であり、適当な形状、例えば、粉末又は液体状に調製することができる。
【0040】
本発明の酵素組成物は、本発明のポリペプチドに加え、更に、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ガラクトシダーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンリアーゼ、又はポリガラクツロン酸リアーゼの少なくとも1つを含むことができる。本発明のポリペプチド(すなわち、ガラクタナーゼ)以外の酵素を併用することにより、ガラクタナーゼを単独で含む酵素組成物に比べて、植物材料の利用及び/又は加工効率をより一層向上させることが期待できる。
【0041】
本発明のポリペプチドは、β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖、例えば、ガラクタン類及びガラクトオリゴ糖の分解能に優れており、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を含有する植物材料の加工や利用性向上に適している。すなわち、本発明のポリペプチド又は酵素組成物で、植物材料を処理することにより、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を加水分解することができ、植物材料の加工及び/又は利用効率を向上させることができる。
【0042】
本発明のポリペプチド又は酵素組成物で処理することのできる植物材料としては、収穫した植物、あるいは、その処理物(例えば、乾燥物、切断物、抽出物、又は精製物など)を挙げることができ、具体的には、例えば、ガラクタン類若しくはガラクトオリゴ糖を含む全ての植物、その切断物、植物組織(例えば、細胞壁又は表皮組織等)、植物組織由来物、細胞内容物、又は抽出成分などを挙げることができる。
より具体的には、飼料分野又は食品分野では、例えば、穀類、豆類、牧草、野菜、果実、いも類、又は樹木などが対象となり、これらを加工した果汁、ピューレ、ペースト、絞り粕、又は抽出粕にも適用することができる。
【0043】
また、本発明のポリペプチド又は酵素組成物を、ガラクタン類と同時に、あるいは、本発明のポリペプチド又は酵素組成物とガラクタン類とが消化器官内に同時に存在するように、動物(例えば、ヒトを除く動物)に摂取させることにより、前記動物の体内で基質であるガラクタン類を分解し、ガラクトオリゴ糖を生成させることができる。ガラクトオリゴ糖は、腸内菌叢改善効果、整腸作用、及びカルシウム吸収促進作用等が注目されており、食品又は飼料から適量のガラクトオリゴ糖を遊離させることにより、下痢及び/又は軟便を予防することができ、更には、これらの効果により、家畜の成長速度及び/又は飼料転換割合を改良することができる。また、カルシウム吸収促進による骨密度の向上、骨粗鬆症予防及び治療、骨折予防、あるいは、脚弱予防を期待することができる。対象となる動物としては、例えば、ヒト、家畜動物(例えば、牛、豚、馬、鶏、羊、又はヤギ等)、又は愛玩動物(例えば、犬、猫、又はウサギ等)を挙げることができる。
【0044】
本発明の飼料添加物は、本発明のポリペプチド又は酵素組成物を含む。また、本発明の飼料は、本発明の飼料添加物を含む。
本発明のポリペプチド又は酵素組成物を動物飼料中で用いることにより、飼料中のガラクタン類を分解し、あるいは、酵素組成物中に含まれる種々の酵素との相乗作用により飼料中の繊維質を効率的に分解し、これら飼料中の繊維質の消化能を改善することができる。あるいは、ガラクタン類を分解することにより、あるいは、酵素組成物中に含まれる種々の酵素との相乗作用により、飼料中の繊維質を効率的に分解することができ、従って、飼料作物の細胞内に蓄積されるタンパク質等の利用を促進させることができる。
【0045】
また、本発明の飼料添加物は、家禽の産卵率及び/又は卵殻強度を向上させることができ、更には、家禽の産卵期間を延長することができる。すなわち、本発明のポリペプチド又は酵素組成物を家禽用飼料に添加することにより、家禽の産卵率及び/又は卵殻強度を向上させることができ、更には、家禽の産卵期間を延長することができる。前記家禽としては、卵を食用とする鳥類、例えば、鶏、うずら、あひる、又はかも等を挙げることができる。
【0046】
本発明の飼料調製方法では、飼料原料に、本発明の飼料添加物を添加する。前記飼料原料は、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を含む飼料原料である限り、特に限定されるものではないが、例えば、ダイズ、トウモロコシ、マイロ、コムギ、エンバク、ライムギ、オオムギ又はシュガービートを挙げることができる。
【0047】
本発明の食品加工用又は食品添加用の酵素剤は、本発明のポリペプチド又は酵素組成物を含む。本発明の食品加工方法では、食品原料を、本発明の食品加工用酵素剤で処理する。
本発明のポリペプチド又は酵素組成物を食品の加工に用いることにより、例えば、ジュース又はワイン等の収量増加又は芳香改善、果汁の清澄化、色味の改善、醸造における醗酵歩合の向上、あるいは、ジュース又はジャムの粘度調整などの効果が得られる。
本発明の食品加工方法により処理することのできる食品原料は、β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖(例えば、ガラクタン類若しくはガラクトオリゴ糖、又はペクチン)を含む食品原料である限り、特に限定されるものではないが、例えば、ダイズ、ジャガイモ、柑橘類、リンゴ、シュガービート、ブドウ、又はベリー類を挙げることができる。
【0048】
本発明のガラクトビオース製造方法では、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を、本発明のポリペプチド又は酵素組成物で処理する。
本発明のポリペプチドをダイズ繊維質又はルピン由来ガラクタンに作用させると、反応生成物として主にガラクトビオースとガラクトースとを蓄積し、その重量比は約2:1であり、そして、反応後期においてはガラクトトリオース又はガラクトテトラオース等のオリゴ糖はほとんど蓄積されない。更に、本発明のガラクタナーゼは、従来知られているエンド型ガラクタナーゼよりも顕著に高い比活性を示し、効率的にガラクトビオースを製造することが可能である。
ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を本発明のポリペプチド又は酵素組成物で処理して得られる反応生成物中から、ガラクトビオースを精製するには、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーや活性炭を用いたカラムクロマトグラフィーなどを用いて容易に行なうことが可能である。
【0049】
本発明のポリペプチド又は酵素組成物の使用方法としては、各利用分野で通常行われる反応条件(例えば、pH、温度、時間、又は酵素使用量など)を、使用する原料又はガラクタナーゼの種類などに応じて適宜決定することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ガラクタナーゼ酵素の精製》
(1)酵素原末の調製
アクレモニウム属微生物由来のガラクタナーゼ原末を得るため、以下の手順に従って微生物の培養を行なった。培地としては、綿実油粕2%、セルロース2%、リン酸水素二カリウム1.2%、バクトペプトン1%、硝酸カリウム0.6%、尿素0.2%、塩化カリウム0.16%、硫酸マグネシウム・七水塩0.001%、及び硫酸銅・五水塩0.001%(pH4.0)からなる培地を常法により加熱滅菌したものを用いた。
【0051】
前記培地500mLに、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)を接種し、30℃で48時間攪拌しながら培養した。次に、この培養液をシードとして15Lにスケールアップし、更にスケールアップを続け、最終的に600L容タンク中の培養液量を300Lとし、通気攪拌培養を7日間行なった。
得られた培養液をフィルタープレスで濾過した後、限外濾過により15Lまで濃縮し、乳糖2kgを添加してスプレードライにより粉末化した。この方法で得られたガラクタナーゼ原末は5.0kgであった。
【0052】
(2)ガラクタナーゼ酵素の精製
実施例1(1)で得られた原末を酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解し、不純物を高速冷却遠心分離により除去した。得られた上清を酵素精製の出発材料として、以下に示した方法で精製した。
始めに、前記上清を、弱塩基性陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE Sepharose FF;ファルマシア社製)にトリス−塩酸緩衝液(0.01mol/L、pH7.5)で吸着させた後、トリス−塩酸緩衝液(0.01mol/L、pH7.5)中にNaClを各0mol/L、0.1mol/L、0.15mol/L、0.2mol/L、0.5mol/L、又は0.8mol/Lの濃度になるように含有させた各溶液で、ステップワイズ溶出を行ない、NaCl濃度が0.5mol/Lの場合に溶出されるガラクタナーゼ活性画分を分取した。
続いて、得られたガラクタナーゼ活性画分を、強塩基性イオン交換クロマトグラフィー[Mono Q(10/10);ファルマシア社製]にトリス−塩酸緩衝液(0.05mol/L、pH7.5)で吸着させた後、トリス−塩酸緩衝液(0.05mol/L、pH7.5)中にNaClを0mol/L〜0.3mol/Lの濃度になるように含有させた溶液で、リニアグラジェント溶出を行ない、ガラクタナーゼ活性を示した画分を分取した。
この分取したガラクタナーゼ活性画分を、ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 75;ファルマシア社製)に0.1mol/L−NaClを含むリン酸緩衝液(0.05mol/L、pH7.0)で通過させ、ガラクタナーゼ活性を示した画分を分取することにより、精製ガラクタナーゼ酵素を得た。
【0053】
【実施例2】
《ガラクタナーゼ酵素の酵素的及びタンパク質的諸性質》
(1)基質特異性及び作用特性
実施例1で得た精製ガラクタナーゼ酵素を、ルピン由来のガラクタン(Megazyme社製)に作用させ、反応生成物を経時的に調べた結果、反応初期に2糖以上のオリゴ糖の生成が認められることから、本酵素はエンド機作で作用することが明らかとなった。また、反応後期には、ガラクトースとガラクトビオースとを蓄積するが、単糖のガラクトースよりも2糖のガラクトビオースをより多く蓄積する傾向が見られた。
また、本酵素をダイズ(ダイズに含まれるアラビノガラクタンは、β−1,4結合からなることが知られている)から調製した繊維質に作用させ、反応生成物を経時的に調べた結果、これをエンド機作で加水分解することを確認した。
更に、本酵素は、ガラクトビオースを単糖にする活性がほとんど無く、カラマツ由来のアラビノガラクタン(シグマ社製)には全く作用しなかった。カラマツ由来のアラビノガラクタンはβ−1,3結合からなり、本酵素はβ−1,3結合には作用しないことを確認した。
以上の結果から、本酵素は、エンド−β−1,4−D−ガラクタナーゼと結論した。
本酵素のガラクタナーゼ活性における比活性は、約3000単位/mgタンパク質であった。
なお、ガラクタナーゼ活性は、pH5.5及び37℃の条件下で、0.5%ルピン由来ガラクタン溶液に酵素を作用させて測定し、1分間に1μmolの還元ガラクタン末端を生成する酵素量を1単位と定義した。
【0054】
(2)至適pH
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素の37℃における至適pHを、図1に示す。図1において、記号「□」は、酢酸緩衝液(0.025mol/L、pH3.5〜6)を用いた場合の結果を示し、記号「△」は、リン酸緩衝液(0.025mol/L、pH6〜8)を用いた場合の結果を示す。
本酵素は、酢酸緩衝液又はリン酸緩衝液で、pH5〜6の範囲で最大の活性を示し、pH3.5〜7において高い活性を有していた。
【0055】
(3)至適温度
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素の作用最適温度を調べるため、酢酸緩衝液(0.025mol/L、pH5.5)にてガラクタン分解活性を測定した結果を、図2に示す。
至適温度は50℃であり、40〜60℃において高い活性を有していた。また、35〜60℃においても比較的高い活性を有していた。
【0056】
(4)安定pH範囲
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素の室温(22℃)で5時間処理した場合のpH安定性を、図3に示す。図3において、記号「◇」は、グリシン−塩酸緩衝液(0.025mol/L、pH1〜3.5)を用いた場合の結果を示し、記号「□」は、酢酸緩衝液(0.025mol/L、pH3.5〜6)を用いた場合の結果を示し、記号「△」は、リン酸緩衝液(0.025mol/L、pH6〜8)を用いた場合の結果を示し、記号「○」は、トリス−塩酸緩衝液(0.025mol/L、pH8〜9)を用いた場合の結果を示し、記号「×」は、CHES緩衝液(0.025mol/L、pH9〜10)を用いた場合の結果を示す。
本酵素はpH2〜10の範囲で安定であったが、pH1.5〜2の範囲においても60%以上の高い活性を保持していた。
【0057】
(5)温度安定性
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素のpH5.5で24時間処理した場合の温度安定性を図4に示す。本酵素は50℃以下で安定であった。
【0058】
(6)分子量
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素の分子量を決定するため、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%ゲル;テフコ社製)を行なった。
その結果、ガラクタナーゼの分子量は約40,000(還元条件下)と算出された。
なお、この試験に用いた標準サンプル(BIO−RAD社製)の分子量を、表1に示す。
【0059】
《表1》
タンパク質 分子量
ホスホリラーゼB 97,400
血清アルブミン 66,200
オボアルブミン 45,000
カルボニックアンヒドラーゼ 31,000
トリプシンインヒビター 21,500
リゾチーム 14,400
【0060】
(7)等電点
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素の等電点(pI)を決定するために、ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動を行なった。
その結果、ガラクタナーゼの等電点は約4.5と算出された。
なお、この試験に用いた標準サンプル(シグマ社製)の等電点を、表2に示す。
【0061】
《表2》
タンパク質 等電点
トリプシノーゲン 9.30
レンチルレクチン−塩基性バンド 8.65
レンチルレクチン−中性バンド 8.45
レンチルレクチン−酸性バンド 8.15
ウマ・ミオグロビン−塩基性バンド 7.35
ウマ・ミオグロビン−酸性バンド 6.85
ヒト・カルボニックアンヒドラーゼB 6.55
ウシ・カルボニックアンヒドラーゼB 5.80
β−ラクトグロブリンA 5.20
ダイズ・トリプシンインヒビター 4.55
アミログルコシダーゼ 3.50
【0062】
【実施例3】
《アクレモニウム・セルロリティカス由来ガラクタナーゼ遺伝子の単離》
(1)精製したガラクタナーゼの部分アミノ酸配列の決定
実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素を、電気泳動システム(テフコ社製)と12%ポリアクリルアミドゲルとを用い、電気泳動[Sodium Dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)]した。SDS−PAGE後のポリアクリルアミドゲル中のタンパク質を、転写装置(マルチフォーII;ファルマシアバイオテク社製)にて、添付のプロトコールに従い、ポリビニリデンジフルオライド膜(Immobilon−PSQ;ミリポア社製)に転写した。この膜をクーマシー・ブリリアント・ブルーR−250(ナカライテスク社製)で染色した後、約40kDaのタンパク質がブロットされている部分を切り出した。N末端アミノ酸配列の決定は、プロテインシークエンサー(Model492;パーキンエルマー社製)を用い、添付のプロトコールに従って行なった。その結果、N末端アミノ酸配列は、配列番号3で表されるアミノ酸配列であることが明らかとなった。
【0063】
一方、内部アミノ酸配列の決定は、以下のようにして実施した。すなわち、実施例1で精製したガラクタナーゼ酵素を凍結乾燥した後、0.1mol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)に溶解した。ガラクタナーゼ酵素に対して1/100モル量のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬社製)を添加し、37℃にて48時間反応させた。得られた分解産物を、プレパラティブHPLCシステム(Model172μ;PEアプライドバイオシステムズ社製)を用いて、カラムクロマトグラフィー[カラム=C18、カラムサイズ=220mm×2.1mm、グラジエント=0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)及び5%アセトニトリル〜0.085%TFA及び35%アセトニトリル]を行ない、3種のペプチドを分取した。得られたペプチド断片のアミノ酸配列は、前記プロテインシークエンサーにより決定した。
その結果、内部アミノ酸配列として、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列が明らかとなった。
【0064】
(2)ゲノムDNAの単離
アクレモニウム・セルロリティカスY−94株(FERM BP−5826)を、(S)培地(2%ブイヨン、0.5%イーストエキス、及び2%グルコース)で30℃にて2日間培養し、遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体を液体窒素で凍結した後、乳鉢及び乳棒を用いて磨砕した。この磨砕した菌体から、市販のDNA調製キット(ISOPLANT;ニッポンジーン社製)により、添付のプロトコールに従い、ゲノムDNAを単離した。
【0065】
(3)ガラクタナーゼのDNA断片の単離
実施例3(1)で得られたガラクタナーゼ酵素の部分アミノ酸配列に基づいて、1組のプライマーを合成した。具体的には、配列番号3で表されるアミノ酸配列の22番目〜28番目のアミノ酸配列を元に、配列番号7で表される塩基配列からなるセンスプライマーを合成した。また、配列番号6で表されるアミノ酸配列を元に、配列番号8で表される塩基配列からなるアンチセンスプライマーを合成した。
これらのプライマーを用い、実施例3(2)で得られた、アクレモニウム・セルロリティカスY−94株から単離したゲノムDNAを鋳型として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行なった。PCRは、50μLの反応液中、ゲノムDNA50ngを鋳型とし、1.25ユニットTaq DNAポリメラーゼ(ExTaq DNAポリメラーゼ;宝酒造社製)、添付のバッファー、dNTP混合物、及び10μmol/Lの前記プライマーを用いて、94℃(3分間)で反応させた後、94℃(1分間)、42℃(1分間)、及び72℃(45秒間)からなるサイクルを30回繰り返し、更に72℃(3分間)で反応させることにより実施した。この反応により、約500bpのDNA断片が増幅し、このDNA断片をpT7 Blueベクター(ストラタジーン社製)に挿入した。
【0066】
このようにしてクローニングしたDNA断片の塩基配列の決定は、市販のDNAシークエンスキット(DNA Sequencing Kit dRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction;パーキンエルマー社製)とDNAシークエンサー(ABI PRISM 310 Genetic Analyzer;パーキンエルマー社製)とを用いて、添付のプロトコールに従って行なった。その結果、単離したDNA断片の塩基配列は、アスペルギルス・アキュリータスのガラクタナーゼ遺伝子(GenBank:L34599)と相同性を示し、目的とするガラクタナーゼをコードする遺伝子の一部であることが明らかとなった。
【0067】
(4)mRNAの単離とcDNAライブラリーの作製
アクレモニウム・セルロリティカスY−94株をセルラーゼ誘導培地[4%セルロース、1%バクトペプトン、0.6%硝酸カリウム、0.2%尿素、0.16%塩化カリウム、0.12%硫酸マグネシウム、1.2%リン酸一カリウム、0.001%硫酸亜鉛、0.001%硫酸マンガン、及び0.001%硫酸銅(pH4.0)]で32℃にて4日間培養し、遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体を液体窒素で凍結した後、乳鉢及び乳棒を用いて磨砕した。磨砕した菌体から、市販のRNA調製キットISOGEN(ニッポンジーン社製)により、添付のプロトコールに従い、全RNAを単離した。更に、全RNAから、市販のmRNA精製キット(mRNA Purification Kit;ファルマシア社製)により、添付のプロトコールに従い、mRNAを精製した。
【0068】
こうして得られたmRNAから、cDNA合成キット(TimeSaver cDNA Synthesis Kit;ファルマシア社製)により、添付のプロトコールに従い、cDNAを合成した。このcDNAをファージベクター(Lambda ZAP II;ストラタジーン社製)に挿入した。このようにして作製した組換えファージベクターについて、パッケージングキット(Gigapack III Gold Packaging Extract;ストラタジーン社製)により、添付のマニュアルに従って、イン・ビトロ(in vitro)パッケージングを行なった。続いて、この組換えファージを大腸菌XL1-Blue MRF’株に感染させ、プレートにて培養し、プラークを形成させた。このようにして作製したcDNAライブラリーは、5.5×105pfu(plaque forming units)であった。更に、このcDNAライブラリーを、前記ファージベクター(Lambda ZAP II)に添付のプロトコールに従い、増幅した。この増幅したcDNAライブラリー中の組換えファージを、大腸菌XL1−Blue MRF’株に感染させ、プレートにて培養し、プラークを形成させた。
【0069】
(5)ガラクタナーゼ遺伝子の単離
プラークの形成されたプレート上に、メンブレン(Hybond−N+メンブレン;アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)をのせ、プラークを付着させた。このメンブレンをアルカリ処理し、メンブレン上の組換えファージDNAを1本鎖に変性し、メンブレンに吸着させた。こうして作製したメンブレンと、実施例3(3)においてPCRにより増幅したガラクタナーゼ遺伝子のDNA断片をプローブとして用い、市販の標識及び検出システム(ECL directnucleic acid labelling and detection systems;アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)により、添付のプロトコールに従って、スクリーニングを行なった。 前記スクリーニングにより選抜した陽性クローンについて、前記ファージベクター(Lambda ZAP II)に添付のプロトコールに従い、プラスミドベクターpBluescript SK(−)へのイン・ビボ切り出し(in vivo excision)を実施した。
【0070】
プラスミドベクターpBluescript SK(−)中のガラクタナーゼcDNAの塩基配列の決定は、pBluescript SK(−)のマルチクローニングサイト近傍のシークエンス用プライマー、あるいは、解析された塩基配列を元に作製したプライマーを用い、DNAシークエンスキット(DNA Sequencing Kit dRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction;パーキンエルマー社製)と、DNAシークエンサー(ABI PRISM 310 Genetic Analyzer;パーキンエルマー社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、行なった。この結果、アクレモニウム・セルロリティカスのガラクタナーゼcDNAの1199bpの塩基配列が得られた。
このcDNAは、1065bpの塩基配列(配列番号1で表される塩基配列)からなる1個のオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、38kDaのタンパク質をコードすることが明らかとなった。前記ORFから予測されるタンパク質に関して、BLAST(Basic local alignment search tool)にてホモロジー検索を行なったところ、本ガラクタナーゼは、アスペルギルス・アキュリータスのガラクタナーゼ(L34599)に最も高い相同性(68%)を示した。
なお、このようにして得られたガラクタナーゼcDNAを含むプラスミドベクターpgalで形質転換された大腸菌(JM109)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2001年3月5日付けで寄託されており、その受託番号はFERM P−18242である。
【0071】
【実施例4】
《アクレモニウム・セルロリティカス由来ガラクタナーゼ遺伝子の過剰発現》
(1)ガラクタナーゼ遺伝子発現用の組換えベクターの作製
本実施例の工程の概略を図5に示す。
前記実施例3で得られた、ガラクタナーゼcDNAの挿入されたプラスミドpgalを鋳型とし、配列番号9で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号10で表される塩基配列からなるプライマーとを用いて、PCRを行なった。PCRは、50μLの反応液中、1.25ユニットTaq DNAポリメラーゼ(LA Taq DNAポリメラーゼ;宝酒造社製)、添付のバッファー、dNTP混合物、20ngプラスミドDNA、及び1μmol/Lの前記プライマーを用いて、94℃(3分間)で反応させた後、94℃(30秒間)、52℃(30秒間)、及び72℃(75秒間)からなるサイクルを30回繰り返し、更に72℃(3分間)で反応させることにより実施した。
こうして得られたPCR反応液をエタノール沈殿し、PCR産物を回収した後、制限酵素HpaI及びSphIで切断し、これを、デストマイシン耐性カセット(DtR)を含むプラスミドpCBHEX/DtR2(特開2001−17180号公報)のHpaI部位とSphI部位との間に挿入し、プラスミドpGAL−Dtを作製した。
【0072】
プラスミドpUC118(宝酒造社製)のBamHI部位を切断し、この切断部位を平滑化した後に再度連結して、BamHI部位を欠失したプラスミドpUC118を作製した。このプラスミドのXbaI部位に、プラスミドpDHBAR(Watanabe,M.ら,Appl.Environ.Microbiol.,65,1036−1044,1999)から制限酵素XbaIにより切り出したビアラホス耐性カセットを挿入した。このプラスミドを制限酵素BamHIで切断し、切断部位を平滑化した後に再度連結し、BamHI部位を欠失したビアラホス耐性カセットを含むプラスミドを作製した。このプラスミドから、制限酵素XbaIによりビアラホス耐性カセットを切り出し、これを、先に作成したプラスミドpGAL−DtのXbaI部位のデストマイシン耐性カセットと置き換え、タンパク質発現用プラスミドpGAL−barを作製した。
【0073】
(2)ガラクタナーゼ遺伝子の宿主への導入
アクレモニウム・セルロリティカスY−94株を(S)培地において30℃で16時間培養し、3500rpmで10分間遠心することにより集菌した。得られた菌体を0.5mol/Lシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(10mg/mLキチナーゼ、10mg/mLザイモリアーゼ、30mg/mLβ−グルクロニダーゼ、及び0.5mol/Lシュークロース)に懸濁した。30℃で60分〜90分間振盪し、菌糸をプロトプラスト化させた。脱脂綿によりこの懸濁液を濾過した後、2500rpmで10分間遠心してプロトプラストを回収し、SUTCバッファー[0.5mol/Lシュークロース、10mmol/L塩化カルシウム、及び10mmol/Lトリス−塩酸(pH7.5)]で洗浄した。
【0074】
以上のようにして調製したプロトプラストをSUTCバッファー100μLに懸濁し、これに、実施例4(1)で作成したプラスミドpGAL−bar溶液10μg(10μL)を加え、氷上に5分間静置した。次に、PEG(ポリエチレングリコール)溶液[60%PEG4000、10mmol/L塩化カルシウム、及び10mmol/Lトリス−塩酸(pH7.5)]400μLを加え、氷中に20分間静置した後、SUTCバッファー10mLを加え、2500rpmで10分間遠心した。遠心分離したプロトプラストをSUTCバッファー1mLに懸濁した後、4000rpmで5分間遠心して、最終的にSUTCバッファー100μLに懸濁した。
以上の処理をしたプロトプラストを、ビアラホス(1000μg/mL)添加(A)寒天培地[3.9%ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬社製)、及び17.1%シュークロース]上に、(A)軟寒天培地[1.3%ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬社製)、及び17.1%シュークロース]と共に重層し、30℃で5〜9日間培養した後、形成したコロニーを形質転換体とした。
【0075】
(3)アクレモニウム・セルロリティカス形質転換体におけるガラクタナーゼの発現と酵素活性の測定
ビアラホスに対する耐性度の高い上位4株をセルラーゼ誘導培地で培養した。培養上清をSDS−PAGEにより解析したところ、図6に示すように、ガラクタナーゼ酵素は親株より分泌量が向上していた。
ガラクタナーゼ活性は、実施例2(1)に記載の方法により測定し、培養上清1mL当りの活性(U/mL)として表した。その結果を表3に示す。形質転換体は、親株の約27倍の比活性を示した。
【0076】
最も比活性の高かった「形質転換体3」株を、実施例1(1)と同様の方法で培養し、「形質転換体3」株の酵素原末(以下、ガラクタナーゼ増強原末と称する)を調製した。
【0077】
【実施例5】
《イン・ビトロにおけるガラクタナーゼ酵素の鶏飼料への作用》
鶏消化管内でのガラクタナーゼの作用を模擬的に調べるために、実施例1(1)で調製したガラクタナーゼ原末(以下、親株原末と称する)、実施例1(2)で調製した精製ガラクタナーゼ酵素、あるいは、実施例4(3)で調製したガラクタナーゼ増強原末を用いて、ダイズ繊維質、鶏飼料繊維質、及びルピン由来ガラクタンに対する作用を調べた。
ダイズ繊維質及び鶏飼料繊維質は、ダイズ粕(オカラ)及び鶏飼料(全植タイプブロイラー後期用飼料;伊藤忠飼料社製)を、それぞれ、8mol/L尿素溶液に懸濁し、5分間煮沸した後、水洗及びエタノール洗し、乾燥させたものを基質として用いた。
反応液は、20mg/mL基質、25μg/mL酵素原末(親株原末又はガラクタナーゼ増強原末)又は0.5μg/mLガラクタナーゼ酵素、及び25mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)からなり、37℃で1時間反応させた後、5分間煮沸して反応を停止させた。反応生成物は、TLC(薄層クロマトグラフィー)により分析した。
【0078】
結果を図7に示す。
図7において、試験区1〜3は、基質として、ダイズ繊維質を用いた場合の結果であり、同様に、試験区4〜6は、基質として鶏飼料繊維質を、試験区7〜9は、基質としてガラクタンを、それぞれ用いた場合の結果である。また、試験区1、4、及び7は、酵素として、親株原末を用いた場合の結果であり、同様に、試験区2、5、及び8は、酵素としてガラクタナーゼ増強原末を、試験区3、6、及び9は、酵素としてガラクタナーゼ酵素を、それぞれ用いた場合の結果である。
図7に示すように、いずれの基質からも、ガラクタナーゼ増強原末及びガラクタナーゼ酵素によりガラクトビオース及びガラクトースが生成され、鶏消化管モデルにおいて、前記酵素の作用により鶏飼料からガラクトビオースが生成されることが確認された。
【0079】
【実施例6】
《ガラクタナーゼ酵素によるガラクトビオースの製造》
(1)ダイズ繊維質の糖組成分析
ガラクタナーゼ酵素によるガラクトビオース製造の基質として用いたダイズ繊維質の糖組成を調べた。ダイズ繊維質を12mol/L又は9mol/L硫酸に懸濁した後、硫酸濃度が0.36mol/Lになるように純水にて希釈した。反応容器内を窒素で置換した後、脱気し、121℃で30分間反応させて加水分解を行なった。反応終了後、炭酸バリウムにて中和し、遠心分離した後、上清をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)に供した。
その分析結果を表4に示す。表4において、記号「Glc」は、グルコースであり、記号「Gal」は、ガラクトースであり、記号「Xyl」は、キシロースであり、記号「Ara」は、アラビノースであり、記号「UA」は、ウロン酸である。
【0080】
【0081】
(2)ガラクトビオースの製造
実施例1(2)で精製したガラクタナーゼ酵素、あるいは、実施例4(3)で調製したガラクタナーゼ増強原末を用いて、ダイズ繊維質、あるいは、ルピン由来ガラクタンに、それぞれ作用させた。反応は、実施例5と同様の方法で行ない、反応停止後の反応液をウルトラフリー−15遠心式フィルターユニット・バイオマックス−5メンブレン装着ユニット(ミリポア社製)に供してタンパク質を除去した後、HPLCにて反応生成物の分析を行なった。
ダイズ繊維質及びルピン由来ガラクタンに対する反応生成物の収率を表5に示す。また、実施例6(1)で調べたダイズ繊維質中のガラクトース残基に対する収率(重量%)を括弧内に示した。表5において、記号「Glc2」は、セロビオースであり、記号「Glc」は、グルコースであり、記号「Glc2」は、ガラクトビオースであり、記号「Gal」は、ガラクトースである。
【0082】
表5に示すように、ガラクタナーゼ酵素又はガラクタナーゼ増強原末の作用により、ダイズ繊維質又はルピン由来ガラクタンから遊離される糖は、主にガラクトビオース及びガラクトースであり、その重量比は約2:1であった。また、ダイズ繊維質中のガラクトース残基の大半がガラクトビオースとして遊離されることが明らかとなった。本分析の結果、グルコース及びガラクトース以外の単糖は見出されなかった。
このようにして得られたガラクトビオース及びガラクトースを含む反応液を、ゲルろ過クロマトグラフィー(TSKgelトヨパールHW40−S;東ソー社製)により、ガラクトビオースを精製した。精製したガラクトビオースは、TLCにより単一であることを確認した。
【0083】
【発明の効果】
本発明のポリペプチドは、高い比活性を有するだけでなく、低いpHでも安定であり、しかも、ガラクトビオースを高濃度で生成する酵素である。従って、本発明のポリペプチド又は酵素組成物によれば、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖等のβ−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖を含む植物材料の消化促進や、その加工又は利用効率の向上が可能であり、食品分野、飼料分野、又は医療分野等の様々な用途での利用が期待される。更に、本発明のポリペプチド又は酵素組成物によれば、ガラクトビオースを高濃度で製造することができる。
【0084】
【配列表フリーテキスト】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号7〜10の配列で表される各塩基配列は、合成DNA配列である。
【0085】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリペプチドの37℃における至適pHを示すグラフである。
【図2】本発明のポリペプチドのpH5.5における至適温度を示すグラフである。
【図3】本発明のポリペプチドの22℃での5時間処理におけるpH安定性を示すグラフである。
【図4】本発明のポリペプチドのpH5.5での24時間処理における温度安定性を示すグラフである。
【図5】本発明のプラスミドpGAL−barの作製方法を示す説明図である。
【図6】アクレモニウム・セルロリティカス形質転換体におけるガラクタナーゼの発現を示す電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。
【図7】本発明のポリペプチド酵素又はガラクタナーゼ増強原末による各種基質からの反応生成物を示す薄層クロマトグラフの結果を示す、図面に代わる写真である。
Claims (36)
- 下記の理化学的性質を有し、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド。
(a)作用及び基質特異性:β−1,4−ガラクトシド結合を有する多糖又はオリゴ糖のβ−1,4−ガラクトシド結合をエンド型に加水分解する。
(b)安定pH範囲:pH2〜10の範囲で安定である。
(c)分子量:40,000(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(d)等電点:4.5(等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(e)至適pH:5〜6である。
(f)作用最適温度:50℃である。 - 糸状菌由来である、請求項1に記載のポリペプチド。
- 糸状菌が、アクレモニウム属に属する微生物である、請求項2に記載のポリペプチド。
- アクレモニウム属に属する微生物が、アクレモニウム・セルロリティカスである、請求項3に記載のポリペプチド。
- (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列1又は複数個の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチド。 - 糸状菌由来である、請求項5に記載のポリペプチド。
- 糸状菌が、アクレモニウム属に属する微生物である、請求項6に記載のポリペプチド。
- アクレモニウム属に属する微生物が、アクレモニウム・セルロリティカスである、請求項7に記載のポリペプチド。
- (a)配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列の21番目〜354番目のアミノ酸配列1又は複数個の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;あるいは、
(e)配列番号1で表される塩基配列の61番目〜1065番目の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ガラクタナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - 糸状菌由来である、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
- 糸状菌が、アクレモニウム属に属する微生物である、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
- アクレモニウム属に属する微生物が、アクレモニウム・セルロリティカスである、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド構築物。
- 請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、あるいは、請求項13に記載のポリヌクレオチド構築物を含む、発現ベクター。
- 請求項13に記載のポリヌクレオチド構築物、あるいは、請求項1 4に記載の発現ベクターで形質転換された、形質転換細胞。
- 宿主が、大腸菌、酵母、放線菌、又は糸状菌である、請求項15に記載の形質転換細胞。
- 酵母が、サッカロミセス属、ハンゼヌラ属、又はピキア属に属する微生物である、請求項16に記載の形質転換細胞。
- 酵母が、サッカロミセス・セレビジエである、請求項17に記載の形質転換細胞。
- 糸状菌が、アクレモニウム属、フミコーラ属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、又はフザリウム属に属する微生物である、請求項16に記載の形質転換細胞。
- 糸状菌が、アクレモニウム・セルロリティカス、フミコーラ・インソレンス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼ、トリコデルマ・ビリデ、トリコデルマ・リーセイ、又はフザリウム・オキシスポーラスである請求項19に記載の形質転換細胞。
- 請求項15〜20のいずれか一項に記載の形質転換細胞を培養する工程;及び
前記培養工程で得られた形質転換細胞及び/又は培養液から、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドを採取する工程
を含む、前記ポリペプチドの製造方法。 - 請求項21に記載の方法で生産された、ポリペプチド。
- 請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、酵素組成物。
- セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ガラクトシダーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、マンナナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンリアーゼ、又はポリガラクツロン酸リアーゼの少なくとも1つを更に含む、請求項23に記載の酵素組成物。
- 植物材料処理用の、請求項23又は24に記載の酵素組成物。
- 植物材料を、請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23又は24に記載の酵素組成物で処理することを特徴とする、前記植物材料の加工効率及び/又は利用効率を向上させる方法。
- 動物への投与用の、請求項23又は24に記載の酵素組成物。
- 請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23又は24に記載の酵素組成物を、ガラクタン類と共に、動物(但し、ヒトを除く)に直接摂取させることを特徴とする、動物の消化器官内でガラクトオリゴ糖を遊離させる方法。
- 請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23〜25又は27のいずれか一項に記載の酵素組成物を含む、飼料添加物。
- 家禽用の、請求項29に記載の飼料添加物。
- 家禽用飼料に、請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23〜25又は27のいずれか一項に記載の酵素組成物を添加することを特徴とする、家禽の産卵率向上、卵殻強度向上、及び/又は産卵期間延長のための方法。
- 請求項29又は30に記載の飼料添加物を含む、飼料。
- 飼料原料に、請求項29又は30に記載の飼料添加物を添加する、請求項33に記載の飼料の調製方法。
- 請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23〜25又は27のいずれか一項に記載の酵素組成物を含む、食品加工用及び/又は食品添加用の酵素剤。
- 請求項34に記載の食品加工用酵素剤を用いる、食品の加工方法。
- 請求項1〜8又は22のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは、請求項23〜25又は27のいずれか一項に記載の酵素組成物を用いて、ガラクタン類又はガラクトオリゴ糖を分解することを特徴とする、ガラクトビオースの製造方法。
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