JP4206000B2 - ラジカル消去活性を有する糖質系食品とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物体を構成するヘミセルロースを加水分解し、活性酸素に代表されるようなフリーラジカルを消去する健康食品として有用なラジカル消去活性を有する糖質系食品とその製造方法に関する。更に詳しくは、腸内ビフィズス菌増殖活性が高く整腸作用を有するオリゴ糖や、コレステロールや胆汁酸あるいは大腸癌の原因物質とされるフカペンテン等の有害物質と結合する作用を有する食物繊維をバランス良く含む水溶性糖類であり、しかもフリーラジカル消去活性を有する糖質系食品とそのの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェノールは植物の葉や花、花粉、木、樹皮、茎などに多く含まれている物質の総称であるが、分子内に水酸基を複数個含みかつ分子式の構造が似ている化合物をまとめて呼ばれている。フラボノイド、カテキン、エピカテキン、タンニン等もポリフェノールの仲間であり、いずれも活性酸素から体を守る抗酸化の機能が注目されている。フリーラジカルの代表である活性酸素は、本来なら安定した形をしている酸素が、電子を奪われ不安定な状態になってしまったものを言う。体内に取り込まれた酸素は、その98ないし99%はエネルギー生産に用いられているが、残り1ないし2%が金属イオンや酵素の作用で活性酸素になると言われている。
【0003】
そのため、生体内ではスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの抗酸化酵素や尿酸などの抗酸化物質群によりその消去を行っているが、これらの抗酸化成分だけでは充分でなく、食餌により摂取されるビタミンEやCなどの抗酸化ビタミンやフラボノイド化合物などが相補的に働き、活性酸素・フリーラジカルの消去に大変重要な働きをしている。
【0004】
活性酸素やフリーラジカルは、過剰に発生すると細胞を傷つけ、ガンや動脈硬化などの病気を引き起こすと言われている。抗酸化物質は、体内で過剰に発生した活性酸素の働きを弱めたり抑える機能をもつ物質である。
【0005】
一方、オリゴ糖は単糖が複数個、一般には2〜6個結合したものを言い、それ以上、頻繁には10個以上結合した多糖類を食物繊維と言う。オリゴ糖には、それを構成する単糖の種類によりガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖など種々のオリゴ糖があり、ビフィズス菌増殖作用を有する特定保健用食品として市販されている。しかしこれらオリゴ糖には食物繊維としての生理活性作用はない。他方、単糖の結合数が多く、特に10分子以上になると、血清コレステロールの上昇抑制作用、肝障害軽減作用、大腸癌発生抑制作用などの食物繊維としての生理活性を発現する。
【0006】
オリゴ糖類の製造法としては、大豆オリゴ糖製造の際の抽出法以外は、デンプンやヘミセルロース等の多糖原料に酵素を作用させて作る方法が一般的であり、また蒸煮・爆砕法と酵素分解法を組み合わせた方法も提案されている(特許文献1等)。他方食物繊維は、野菜、果実、糖類、芋類、海草類など多くの食品に含まれる多糖類であるが、高度に枝分かれした構造を持つ一部の多糖類以外は大部分非水溶性であり、このままでは腸内での有害物質との結合効率が低い。
【0007】
この非水溶性多糖類を水溶性とするためには、酸、アルカリ、触媒あるいは酵素を利用して各種糖原料を加水分解する方法があるが、酸やアルカリを用いた場合、その触媒の除去や反応器の腐食の問題、また酵素を用いた場合は、酵素が高価な事や反応速度が遅い事など問題が多い。更に加水分解反応の制御自体も困難で、分子量分布的には大部分がオリゴ糖(二〜六糖類)となることが多く、食物繊維の含量は少なくなる。
【0008】
本発明者等は、加圧熱水のみでバイオマスからヘミセルロース等を分解する技術を提案した(特許文献2)が、この提案はこれらの分解物を丸ごと飲食物として利用するものではなかった。また、これによって製造された水溶性糖類のラジカル消去活性について着目したものではなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−248153号公報
【特許文献2】
特開2002−59118号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
【0011】
本発明の目的は、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び高重合度のキシランオリゴ糖を含むラジカル消去活性を有する糖質系食品とその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、ヘミセルロースを含む植物から、健康食品として有用な食物繊維からオリゴ糖、単糖までをバランス良く含む水溶性糖類を、水のみを使用して安全かつ効率良く製造するラジカル消去活性を有する糖質系食品とその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段を採る。
【0014】
本発明1のラジカル消去活性を有する糖質系食品は、ヘミセルロースを含む植物から作られた糖質系食品であって、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類において、
前記植物に、140〜230℃の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水を接触させ、前記ヘミセルロースを含む前記植物を加水分解することにより、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類が抽出されたものであり、
前記水溶性糖類は、前記加水分解の前に温度が常温〜140℃未満で、この常温〜140℃未満の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水により前記植物中の不要な可溶性物質を流去した後に行ったものであることを特徴とする。
【0015】
本発明2のラジカル消去活性を有する糖質系食品は、本発明1において、
前記加圧熱水による前記可溶性物質の前記流去は、前記常温〜140℃未満では10〜30分間であり、前記水溶性糖類の前記抽出は、前記140〜230℃では0.5〜30分であることを特徴とする。
【0016】
本発明3のラジカル消去活性を有する糖質系食品の製造方法は、ヘミセルロースを含む植物から糖質系食品の製造方法において、
前記植物に、140〜230℃の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水を接触させ、前記ヘミセルロースを含む前記植物を加水分解することにより、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類が抽出されたものであり、
前記水溶性糖類は、前記加水分解の前に温度が常温〜140℃未満で、この常温〜140℃未満の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水により前記植物中の不要な可溶性物質を流去した後に行ったものであることを特徴とする。
【0017】
本発明4のラジカル消去活性を有する糖質系食品の製造方法は、本発明3において、
前記加圧熱水による前記可溶性物質の前記流去は、前記常温〜140℃未満では10〜30分間であり、前記水溶性糖類の前記抽出は、前記140〜230℃では0.5〜30分であることを特徴とする。
【0022】
植物
本発明でいう植物とは、針葉樹や広葉樹などの木質、もみ殻や麦わらなどの農産廃棄物、又はケナフ、茶葉(引用緑茶の抽出後の茶葉も含む。)等の草木類を意味する。加圧熱水は、植物からラジカル消去活性を有する水溶性糖類を抽出するための加水分解のための反応場(液)として用いるものである。従って、加水分解反応速度は水分子との接触頻度に直接関係するので、12メッシュ程度に粉砕した粒子が好ましい。ただし、籾殻、茶葉等のように粉砕せずにそのまま加圧熱水で加水分解しても良い。
【0023】
加圧熱水
本発明の加圧熱水は、植物からラジカル消去活性を有する水溶性糖類を加水分解により抽出するための反応場として用いるものである。従って、この前後の処理で酸、アルカリ、酵素等による前処理、後処理を否定するものではない。また、前記加圧熱水の140〜230℃の意味は、温度が140℃より低いとヘミセルロースの分解が起こらず、また230℃より高いとセルロースの分解が始まり、かつ得られた糖類の二次分解も起こるため好ましくないめにこの範囲に限定した。140℃付近は、ヘミセルロースの加水分解の遷移領域で、分解しても少量であり、非常に時間がかかる曖昧な温度領域である。
【0024】
厳密な分解の開始温度は、その植物に由来するヘミセルロースの構成糖や立体構造によって異なる。前記加圧熱水の圧力は、その温度での飽和蒸気圧の1.0〜3.0に限定されるものではなく、それ以上の圧力でも製造可能であるが、製造装置の耐圧強度、ポンプの加圧能力で決まる実用的な数値である。
【0025】
処理時間
前記加圧熱水による前記植物の可溶性物質の流去する時間は、前記常温〜140℃未満では10〜30分間であり、前記140〜230℃では0.5〜30分であるとした。この時間は、一般的な目安である。例えば常温の場合は、生産効率は低くなるが30分以上であっても良い。また、前記140〜230℃での抽出の場合は、分解物の濃度はピーク値がありそれを過ぎると濃度が急速に低下する。従って、前記植物の可溶性物質の流去する時間は、システムの形状、構造、容量等によって最適な数値は決められるべき性質のものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水溶性糖類の製造に用いる製造装置の実施の形態を説明する。図1は水溶性糖類の製造装置の概要を示すものであり、熱水の流れを示すフロー図である。加圧熱水を作る水は、水道水等が水供給パイプ1から供給される。供給された水は、イオン交換器、フィルター等からなりカートリッジタイプの純水器2に通水される。
【0027】
純水器2で濾過された純水は、純水タンク3に供給され貯蔵される。ポリエチレン製の純水タンク3に貯蔵された純水は、ステンレス製のポンプ4で吸引されステンレス製の容器であるバッファタンク5に送られる。ポンプ4の能力は、本例では6.5Mpaまで加圧可能である。バッファタンク5は、反応器10に供給する純水の圧力と流量を安定化するためのものである。バッファタンク5には、3.0Mpaで作動する安全弁6、及び窒素ボンベ7が接続されている。
【0028】
この窒素ボンベ7内の窒素は、系内の空気を置換し、リークがないかをチェックする目的のものである。バッファタンク5からの水は、パイプ8から熱交換器9に供給される。熱交換器9には、加熱した熱媒体油が供給されているのでこの熱媒体油の熱により水が加熱され加圧熱水となる。加圧熱水は、バルブ等を通り反応器10に供給される。反応器10は、本発明の水溶性糖類を抽出するための一種の圧力釜である。反応器10は、ステンレス製であり内部が空洞の円筒型であり、本例では縦方向に設置されている。
【0029】
反応器10の上下端面には、ステンレス製の焼結フィルタ14が固定配置されている。焼結フィルタ14は平均20μmの孔が開いている。この孔径は特定のでなくても良いが、平均5〜30ミクロンが好ましい。平均30ミクロン以上では微細試料の流出が起こり、また平均5ミクロン未満では熱水を供給する際の抵抗が大きくなる。
【0030】
反応器10に投入された原料植物は、この孔径以上のものは流出することはない。反応器10の外周には、反応器10を加熱するための熱媒体油を循環するための加熱回路11が管接続されている。加熱回路11は、本実施の形態では300℃又は230℃で加熱するものである。即ち、熱交換器9で純水を加熱した後、反応器10の外周面に配置された外部ジャケット13に送られる。
【0031】
外部ジャケット13は、反応器10を外部から熱媒体油で加熱するための熱交換器である。熱交換器9に熱媒体油を送る熱媒体油加熱器15には電熱ヒーター16が設置されている。熱媒体油加熱器15には熱媒体油を循環させるためのポンプ(図示せず)が接続されている。ポンプは、熱媒体油を熱交換器9、反応器10及び熱媒体油加熱器15の間を循環させる。
【0032】
反応器10から出た熱水は、吐出管20から出て冷却器21で冷却されて、その後に平均5μのステンレス製の焼結フィルタであるラインフィルタ22を通り、更に保圧弁23を通り排出され回収される。ラインフィルタ22、及び反応器10の焼結フィルタ14は、目詰まりを起こす場合があるために熱交換器9から出た加圧熱水を、逆流洗浄ライン24を通してラインフィルター22側から流すことにより目詰まりを解消する配管が配置したものである。
【0033】
[水溶性糖類の製造方法]
以下、前述した製造装置を用いて水溶性糖類を製造する製造方法の好適な例について説明する。本発明方法において用いられる原料としては、ヘミセルロースを含む植物、例えば針葉樹や広葉樹などの木質、もみ殻や麦わらなどの農産廃棄物、あるいはケナフ、茶葉(茶を抽出した抽出残渣を含む。)などの草木類が利用できる。これら原料の形状は特に限定しないが、抽出を効率よく行うためには、12メッシュ篩通過程度にまでは粉砕することが好ましい。これらの原料は乾燥する必要がなく、粉砕後そのままあるいは水とのスラリーとして反応器10に投入する。反応器10は試料が流出しないように入口と出口を前述した焼結フィルタ14でキャップされている。
【0034】
試料の充填された反応器10に加圧熱水を通水して糖類の分解抽出を行うが、その際の温度は140〜230℃の範囲であり、またその時の圧力は、その時の温度の飽和水蒸気圧以上、すなわち0.4〜2.8MPa以上に加圧されて熱水が液体状態で試料と接触する必要がある。加圧熱水温度が140℃より低いとヘミセルロースの分解が起こらず、また230℃より高いとセルロースの分解が始まり、かつ得られた糖類の二次分解も起こるため好ましくない。
【0035】
圧力がその時の飽和水蒸気圧以下であると、熱水は蒸気状態で試料と接触するため、加水分解反応より熱分解反応が優勢となり、生成物は糖以外のガスあるいは芳香族系の成分となるので好ましくない。圧力は極度に高くする必要はなく、熱水を安定に液体状態に保つためには飽和水蒸気圧の1.0〜3.0倍、好ましくは1.1〜1.5倍の圧力を維持するのが好ましい。
【0036】
上記加圧熱水の流速は、熱水の反応器10内での通過時間が通常30秒以上15分以内、好ましくは2分以上8分以内となるように設定する。30秒未満では低分子糖の含量が少なく、15分を超えると生成した糖の二次分解が進む。熱水処理時間は流出液中の溶質がほとんど認められなくなるまで続ける方が州立は向上するが、運転効率を考慮して実用上は通常15〜30分である。
【0037】
反応器10から流出した熱水は、その中に含まれる水溶性糖類の二次分解を抑制するために直ちに冷却するのが望ましい。また運転開始時の加圧熱水温度が140℃に達するまでに得られる流出液は、糖以外の水溶性成分を含んでいるため、除去するのが好ましい。またこうした糖以外の細胞内含有成分を予め除去する方法として、常温〜140℃未満、好ましくは110〜130℃の加圧熱水を10〜30分間、好ましくは15〜20分間流通しておく事も純度の高い水溶性糖類を得るために有効である。
【0038】
上記の方法で得られた水溶液は、必要があれば活性炭やイオン交換樹脂による通常の脱色や脱塩処理を行えば、精製した水溶性糖液として用いることもできる。また更に乾燥して、易水溶性粉末糖としても用いる事ができる。
【0039】
【実施例1】
次に、前述した製造装置を用いた本発明の実施例を詳細に具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。容積1.2Lのステンレス製反応容器10にケナフ芯部の粉砕物約100gを仕込み、孔径20ミクロンのステンレス製焼結フィルターでキャップした後、反応器10下部より温度制御された加圧熱水を高圧ポンプを用いて、圧力3MPa、流量300cc/minで通水した。反応器10より流出した水溶液は冷却器21で40℃以下まで冷却された後、保圧弁16を通って大気圧下の受器に導かれた。
【0040】
120℃の熱水を20分間流して糖以外の成分(第1画分)を除去した後、200℃の熱水を25分間流して得たヘミセルロース分解物(第2画分)のダイオネクス社(米国)製の糖分析装置によるイオンクロマトグラムを図2(A)に、また同様に、180℃の熱水で25分間処理した時の第2画分のイオンクロマトグラムを図2(B)に示す。いずれの温度で得た分解抽出物も、そのピークはキシロース、及びキシロースが2−10個結合したオリゴ糖のピーク、更に長時間側で見られる一団のピークより成る事が示された。
【0041】
この45分ないし50分付近のピークの成分は、硫酸加水分解法により、キシロースを単位とする多糖である事が確認された。これによりケナフ芯部の第2画分中の水溶性糖は、単糖のキシロース、及びキシロースが複数個結合したキシロオリゴ糖、及びキシロ多糖であることが確認された。
【0042】
【実施例2】
実施例1と同様にケナフ芯部の粉砕物を試料とし、操作圧力3.0MPaにて、120℃の熱水で20分間第1画分を抽出除去した後、167℃、185℃、193℃、204℃、でそれぞれ25分間の分解抽出を行った時の第2画分の収率、及び第2画分の組成を表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0004206000
ここで単糖から5糖までの量は、標準物質を用いた検量線法によるイオンクロマトグラフ分析法より求め、リグニン量は第2画分の3%硫酸不溶分量として求めた。また、多糖量は第2画分量から単糖から5糖までの量、及びリグニン量を差し引いた値として求めた。加圧熱水温度が低いほど高分子多糖の割合が多くなるが、混入リグニン量の割合は低下することが示された。このように水溶性食物繊維に相当する成分の割合が多いのが本法の特徴である。また熱水温度が高いほど第2画分収率は高くなるが、これはリグニンの分解も進み、その結果、低分子化されたリグニンが糖類と共に流出してくるためである。
【0044】
【実施例3】
試料として、ケナフ、イナワラ、麦ワラ、もみ殻を用い、操作圧力3.0MPaにて120℃で20分間第1画分を抽出除去した後、198℃付近で25分間第2画分の分解抽出を行った。その時の第2画分の収率、及び第2画分中における単糖から5糖(単−5糖)のそれぞれの濃度を表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0004206000
イナワラ、麦ワラ、もみ殻の場合、糖成分としてアラビノースも得られた。ケナフやワラ類の場合、第2画分収率は40%台と高いが、単糖−5糖の割合が10−15%と比較的低いのに対し、もみ殻では第2画分収率は32%と低いが、単糖−5糖の割合は約25%と非常に高いことが特徴的であった。
【0046】
【実施例4】
次に前述した第2画分のラジカル活性消失能を測定するために次のようなデータを計測した。測定対象として、H14年に佐賀県内で産したもみ殻及び麦藁(大麦)を用いた。 もみ殻及び麦藁を最初に1.5φのスクリーンを有するハンマーミル式の衝撃式粉砕機(槇野産業製DD−2型)で粉砕し、佐藤式振動篩機5000D−3Sにて分級して12−41mesh(1400−355μm)の画分を水熱分解用試料とした。このとき、大麦についてはあらかじめ家庭用の剪定枝粉砕器にて粗砕後に上記の粉砕を行った。この粉砕試料は、図1で説明した1.5リットル容量の反応器10で加圧熱水処理した。
【0047】
このときの焼結フィルター14は20μmである。反応容器10内に、粉砕試料を充填後、300mL/minの速度で熱水を通水した。熱水により低分子化し可溶となった分解物は、焼結フィルター14を通って反応器10から流出し、直ちに冷却後に保圧弁23から排出される。
【0048】
水熱分解時の温度条件は、まず、130℃まで昇温後約10分間の通水を行い原料中の可溶性物質を流去し(第1画分)、その後200℃に昇温する2段階昇温とした。この時、昇温に要する所要時間は約10分である。200℃に到達後流出する分解液を約25分間(7.5L)回収し、第2画分とした。ヘミセルロースは130℃以下では加水分解しないこと、また、セルロースは240℃以上でなければ加水分解しないことをこれまでの実験で確認済みであり、目的とするヘミセルロース由来の物質のほとんどはこの第2画分として回収される。なお、装置内圧力は、130℃のとき2MPa、200℃では3MPaとなるように保圧弁23でコントロールした。
【0049】
得られた第2画分をエバポレータで濃縮後凍結乾燥して製品とした。もみ殻を処理して得られた第2画分の組成を図3に示す。得られた製品について以下のような測定方法でラジカル消去活性を調べた。もみ殻第2画分0.1gを試験管内で蒸留水2mlに溶解後、1.0×10-4MのDPPH(2,2-diphenyl-β-picrylhydrazy)メタノール溶液2mlを加え、25℃の反応温度条件下での515nmの吸光度を変化を測定した。この測定結果を図4に示す。図4のように、化学ラジカルであるDPPHの吸収は時間とともに低下し、もみ殻第2画分がラジカル消去活性を有することが示された。なお、図4中のControlは、蒸留水中でのラジカル消去活性を示す。
【0050】
同様の試験を麦わらの第2画分についても行った結果を図5に示す。この図5は、麦わらの第2画分のDPPHラジカル消去活性の時間変化を示すグラフである。麦わら第2画分においてももみ殻第2画分と同様にDPPHの515nmの吸収が低下し、ラジカルが消去されることが判明した。続いて、合成ラジカル消去剤であるBHA(butylated hydroxyanisole)、BHT(butylated hydroxytoluene) を用いて同様の測定を行った。結果を図6ないし図7に示す。これら3者のラジカル消去活性の強さを比較するために、単位重量(mg)当たりの反応60分後におけるcontrolとの吸光度差、即ち、ΔA515/mgをラジカル消去活性と定義し、その比較を行った。
【0051】
【表3】
Figure 0004206000
その結果、表3に示すように、最も活性の強かったBHAに対して約1/100のラジカル消去活性を有していた。もみ殻第2画分は図3に示したように、アラビノース、キシロース、キシロオリゴ糖及び高重合度のキシランオリゴ糖そして水溶化リグニンとSiを中心とする灰分からなる。そこで、アラビノース、キシロース、キシロビオースについてラジカル消去活性を調べたが、これらには活性が認められなかった。
【0052】
以上のデータ及び考察から、図4及び図5で観察されたラジカル消去活性は含有する水溶化リグニンあるいは高重合度のキシランオリゴ糖によるものと考えられる。特に、含まれる水溶化リグニンは加圧熱水処理による加水分解の過程で多くのフェノール性水酸基を形成した可能性が大きく、ラジカル消去活性の中心はポリフェノール様水酸基を有するようになった水溶化リグニンに起因することが強く示唆された。そこで、IRスペクトルを測定したところ、試薬リグニンにみられるようなフェノール性水酸基の存在が認められ、ラジカル消去活性の主体は水溶化したリグニンによるものと考えられる(図8参照)。
【0053】
【発明の効果】
本発明の水溶性糖類とその製造方法は、ヘミセルロースを含む植物に加熱された加圧熱水を接触させてヘミセルロースを加水分解するのみで、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む安全な機能性食品を作ることができる。また、本発明の加圧熱水を用いた水溶性糖類とその製造方法は、酸、アルカリ、酵素等を使用することなくヘミセルロースを含む植物に加熱された加圧熱水を接触させてヘミセルロースを加水分解するのみで、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む安全な機能性食品を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、水溶性糖類の製造装置の概要を示すものであり、熱水のフロー図である。
【図2】図2(A)は、ケナフ芯部の200℃熱水抽出物のイオンクロマトグラムであり、図2(B)は、ケナフ芯部の180℃熱水抽出物のイオンクロマトグラムである。
【図3】図3は、もみ殻を処理して得られた第2画分の組成の割合を示すグラフである。
【図4】図4は、吸光度による化学ラジカルであるDPPHの吸収と時間の関係を示すグラフである。
【図5】図5は、麦わらの第2画分のDPPHラジカル消去活性の時間変化を示すグラフである。
【図6】図6は、合成ラジカル消去剤であるBHAのDPPHラジカル消去活性の時間変化を示すグラフである。
【図7】図7は、合成ラジカル消去剤であるBHTのDPPHラジカル消去活性の時間変化を示すグラフである。
【図8】図8は、水溶化リグニンのIRスペクトルを測定したデータである。
【符号の説明】
2…純水器
3…純水タンク
5…バッファタンク
7…窒素ボンベ
9…熱交換器
10…反応器
11…加熱回路
13…外部ジャケット
15…熱媒体油加熱器
16…電熱ヒーター
22…ラインフィルタ
23…保圧弁

Claims (4)

  1. ヘミセルロースを含む植物から作られた糖質系食品であって、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類において、
    前記植物に、140〜230℃の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水を接触させ、前記ヘミセルロースを含む前記植物を加水分解することにより、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類が抽出されたものであり、
    前記水溶性糖類は、前記加水分解の前に温度が常温〜140℃未満で、この常温〜140℃未満の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水により前記植物中の不要な可溶性物質を流去した後に行ったものである
    ことを特徴とするラジカル消去活性を有する糖質系食品。
  2. 請求項において、
    前記加圧熱水による前記可溶性物質の前記流去は、前記常温〜140℃未満では10〜30分間であり、前記水溶性糖類の前記抽出は、前記140〜230℃では0.5〜30分である
    ことを特徴とするラジカル消去活性を有する糖質系食品。
  3. ヘミセルロースを含む植物から糖質系食品の製造方法において、
    前記植物に、140〜230℃の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水を接触させ、前記ヘミセルロースを含む前記植物を加水分解することにより、ラジカル消去能を備えた水溶性リグニン及び/又は高重合度のキシランオリゴ糖を含む水溶性糖類が抽出されたものであり、
    前記水溶性糖類は、前記加水分解の前に温度が常温〜140℃未満で、この常温〜140℃未満の飽和蒸気圧の1.0〜3.0倍の圧力の加圧熱水により前記植物中の不要な可溶性物質を流去した後に行ったものである
    ことを特徴とするラジカル消去活性を有する糖質系食品の製造方法。
  4. 請求項において、
    前記加圧熱水による前記可溶性物質の前記流去は、前記常温〜140℃未満では10〜30分間であり、前記水溶性糖類の前記抽出は、前記140〜230℃では0.5〜30分である
    ことを特徴とするラジカル消去活性を有する糖質系食品の製造方法。
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