JP4205485B2 - 植物に由来する異物の同定方法及びこれに用いるプライマーセット - Google Patents

植物に由来する異物の同定方法及びこれに用いるプライマーセット Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物に由来する異物の同定方法及びこれに用いるためのプライマーセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品等に混入した異物の同定や、警察の鑑識捜査においては、微量のサンプルをを同定する必要がある。微量のサンプルが植物や昆虫に由来する場合、形態的な特徴を指標にした同定方法が現在は主流であるが、こうした同定方法は、熟練された解析技術を必要とするため、簡便に正確で詳細な同定を行い難い問題がある。同時に、異物は極微量であったり、断片化及び変形していたり、加熱等で変性したりしている場合が多いため、これらを同定することは至極困難である。
【0003】
一方、近年DNAの塩基配列情報を客観的な指標とする同定方法が提案されている。
(1)DNAの塩基配列情報を用いる同定方法として、特開平7−59568号公報には、植物の遺伝子の可変領域のDNAに隣接する不変領域を構成する塩基配列を有する任意のオリゴヌクレオチドの一種をプライマーとして用い、これを植物のDNAにおける当該不変領域に結合させ、これを延長及び増幅させ1本鎖DNAを得ることを特徴とする、植物DNAの可変領域における塩基配列を有する1本鎖DNAプローブの製造方法及びこれを用いた植物の遺伝的同一性の検定方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この方法では、上記特定の植物の可変領域における塩基配列を含む1本鎖DNAプローブを調製し、これを当該植物と同一の属若しくは種に含まれる他の植物のDNAとハイブリダイズさせ、当該植物同士のバンドパターンを比較して、当該可変領域における塩基配列の差異を検定することで、植物の遺伝的同一性を検定する(段落番号0025)。
【0005】
この文献には、rDNAを2個のプライマーを設定してPCR法で増幅することが至極困難であることが記載され(段落番号0007及び0008)、この方法は、PCRによる1本鎖DNAの増幅法であるため、2本鎖DNAの増幅法に比べて、増幅効率は低い(段落番号0028)。この方法は、ある程度まで同定されている植物間の遺伝的同一性を検定するためのもので、如何なる植物のものであるか判らない異物等のサンプルについて増幅した可変領域を調べて、如何なる植物のものかを同定する方法ではない。なお、本明細書中で「非保存領域」と「可変領域」は同義であり、「保存領域」と「不変領域」は同義である。
【0006】
(2)(1)に示した方法とは別に、PCRで特定の塩基配列を増幅させる方法が知られている。一例として、『日本食品衛生学会第76回学術講演会 講演要旨集,第52頁,塩基配列の解析による食品内生物系異物の同定』には、全ての昆虫において保存されているミトコンドリア16S rDNA領域、及び植物において保存されているRubisco遺伝子領域を利用して、保存されている塩基配列からプライマーを設計し、生物の同定を行った研究が報告されている(非特許文献1)。
【0007】
しかしながら、上記のプライマーセットにより増幅される領域は、多くの生物において保存され、類似している塩基配列を含むことから、例えば種又は属などの詳細なレベルまで正確に同定するのは難しい。したがって、より詳細な同定を行なうためには同定に用いる塩基配列の長さを長くする必要があるが、加熱等によって、DNAが損傷しているサンプルの場合には、PCR産物が増幅されにくい。更に、Rubisco遺伝子は、色素体ゲノムにコードされた緑色植物特異的遺伝子であり、植物の同定に使いやすいという利点がある反面、サンプルが色素体含量が少ない植物の組織や部位である場合には、PCR産物が得られ難いという問題がある。
【0008】
(3)『Mol Ecol 2000 Oct;9(10):1549−1559』には、米国テキサス洲のエドワーズ高原の洞窟から採集した植物の根(重量200mg)について、18S rRNAとlarge subunit rRNA上に設計された植物ユニバーサルプライマーを用いて、ITS1、5.8S rRNA、ITS2またがる長い領域をPCRし、得られたPCR産物の塩基配列情報を、予め準備した洞窟の上の地上部から採取した植物組織の該当領域の塩基配列データベースと比較して、根を属・種レベルまで同定している。(非特許文献2)
【0009】
rRNA遺伝子の塩基配列は、植物とカビ・コウボのような真菌類の間で強く保存されており、この文献で用いられている植物ユニバーサルプライマーを用いてPCR産物を得た場合には、カビ・コウボ等(被検サンプル表面に付着した黴・酵母等のDNA)から得られるPCR産物と区別することができないことが危惧された。しかし、上記の危惧に拘らず、同方法では、結果的に植物のPCR産物を得ることに成功しているが、これは、サンプルが200mgという多くの量であり、また生きている植物根を冷凍したものであり、そこから抽出されたDNAは、ほとんどがその植物由来のものであったために、純粋な植物のPCR産物を得ることができたものと考えられる。
【0010】
しかしながら、前記のような異物の同定においては、サンプルが極微量であり、(食品に混入した異物の場合は通常数mg程度)、かつ、加熱によるDNAの損傷も激しいため、その表面にカビ・コウボが付着した場合、サンプルから抽出されたDNA中のカビ・コウボ由来DNAの占める割合が高くなり、それらのDNAの混入は無視できるものでないことが予想される。また、異物には、人に触れられる等で人や動物のDNAが混入する場合もある。このため、繰り返しとなるが、非特許文献2に記載されたような方法では、カビ・コウボなどの他の生物由来DNAの混入への対処が行なわれていないので、植物異物を詳細かつ正確に同定することはできない。
以上のような理由から、詳細かつ正確に、熟練した技術を用いることなく異物を同定するための手段が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−59568号公報
【非特許文献1】
日本食品衛生学会第76回学術講演会 講演要旨集,第52頁
【非特許文献2】
Mol Ecol 2000 Oct;9(10):1549−1559
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便かつ正確、詳細に植物に由来する異物を同定するための方法及びツールを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、次の知見を得た。
即ち、内部転写スペーサー領域1(ITS1)及び内部転写スペーサー領域2(ITS2)は、植物種ごとに特異的な非保存領域であり、比較的塩基長の短い塩基配列からなり、
これらの両側に隣接する塩基配列、つまりITS1の場合は18SrRNA及び5.8SrRNA、ITS2の場合は5.8SrRNA及びlarge subunit rRNA(25S rRNA或いは28S rRNA)は、広く植物全般において保存され、かつ、植物と他の生物種を画する塩基配列の領域を有しており、
したがって、各々の2つの保存領域に、植物全般に対するユニバーサルプライマーセットを構成し、これらより上記非保存領域を含む核酸断片を増幅すれば、上記非保存領域を含む核酸断片が得られる。
同時に、これらの両側に隣接する保存領域中のできるだけ非保存領域に近い領域の塩基配列には、植物とカビ・コウボ等とを明確に区別し得る塩基配列が含まれており、上記技術思想に沿って、核酸断片を増幅すれば、植物の非保存領域を含み、その両側に塩基長の短い配列を繋げた、全体として塩基長の短い核酸断片が得られる。
【0014】
これにより、異物が微量であったり、変形や変性したものであっても、当該異物から調製したDNAを使って、上記植物種ごとに特異的な非保存領域を含む核酸断片を確実に増幅でき、これより当該異物を構成する植物種を正確かつ詳細に同定することが可能となる。つまり、異物に含まれる植物種のDNAがある程度損傷を受けていても、増幅されるDNA断片のサイズが小さいので、その異物中に残存するDNAから、その植物種の非保存領域を確実に増幅でき、同定に供することができる。
【0015】
更に、ITS1及びITS2の塩基配列は、植物と哺乳類で塩基長が異なるため、増幅された核酸断片の塩基長から両者を正確に判別でき、植物のものと判別した核酸断片の塩基配列決定を行うことで、植物由来のものから正確、詳細に同定することが可能となる。そして、以上の同定は、DNAを操作する比較的簡便な方法によって達成される。
【0016】
本発明者らは、以上の知見を得、これに基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)植物に特異的な塩基配列を有する非保存領域として、内部転写スペーサー領域1(ITS1)又は内部転写スペーサー領域2(ITS2)をターゲットとし、
(b)上記ITS1又はITS2の各々の両側に存在する2つの保存領域の塩基配列中の植物で保存されている配列に基づいて設計された2つの植物ユニバーサルプライマーを含み、これらのプライマーの少なくとも一方は、植物で保存されていて、かつカビ・コウボとは異なっている塩基配列を含んでいる、プライマーセットを構成し、
(c)上記プライマーセットを用いて、異物から調製したDNAを鋳型とした増幅反応を行い、
(d)増幅された上記非保存領域を含む核酸断片の塩基配列から異物を同定することを特徴とする植物に由来する異物の同定方法である。
また、本発明は、上記同定方法に用いるためのプライマーセットである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.定義
図1で示すように、植物細胞の染色体上にあるリボゾームRNA遺伝子クラスターは、保存領域である18SrRNA、5.8SrRNA及びlarge subunit rRNA(25S rRNA或いは28S rRNA)がこの順で並び、各rRNAの間に、非保存領域(内部転写スペーサー領域)であるITS1及びITS2が存在する構造となっている。
【0018】
本発明において「保存領域」とは、生物の長い進化の過程でその領域の塩基配列が変化せずに、ほぼ保存されている配列を有するゲノム領域を指す。保存領域は、全ての生物において保存されている領域でもよいし、特定の生物集団において保存されているものでもよい。一方、「非保存領域」とは、生物の進化の過程でその領域内の塩基配列の変化が起こりやすく、特定の生物集団に特異的な配列を有するゲノム領域を指す。非保存領域は、特定の生物集団では共通する配列を有するが、他の生物集団のものとは異なるため、その生物集団に特異的なものであればよい。
なお、本発明では、図1において、18SrRNA側を上流、large subunit rRNA側を下流と定義する。
【0019】
2.概要
本発明に係る異物の同定方法は、2つの保存領域の塩基配列に基づいて作製されたプライマーセットを用いて、この2つの保存領域に挟まれて存在する非保存領域を含む核酸断片を増幅し、得られる核酸断片から被検サンプルを同定することを特徴とするものである。プライマーセットを用いた被検サンプルの同定について、図2を参照しながら説明する。
【0020】
図2では、2つの異なる生物集団のゲノム、例えば、種の異なる植物である「タマネギ」(図2A)と「リンゴ」(図2B)において、上流から順に、保存領域1、非保存領域、及び保存領域2が配置されている場合について説明する。
図2Aにおいては、ある特定の種の植物「タマネギ」のゲノムを示し、非保存領域の塩基配列は「タマネギ」に特異的な配列を有している。また図2Bにおいては、他の種の植物「リンゴ」のゲノムを示し、非保存領域の塩基配列は「リンゴ」に特異的な配列を有している。図2A及びBにおいては、非保存領域をドット(A)と縦線(B)で区別して示している。
【0021】
本発明において、「保存領域」は植物全般において保存されているものであり、「非保存領域」は、例えば、植物の属レベル又は種レベルで共通するが、他の属や種では異なり、その属や種の植物に特異的なものであればよい。
プライマーセットは、この非保存領域を含む核酸断片を増幅するために、非保存領域の両側に存在する保存領域1及び保存領域2の塩基配列に基づいて作製する。「保存領域の塩基配列に基づいて」とは、プライマーを設計する際に、保存領域をコードする塩基配列からなるDNAを鋳型として、という意味であり、プライマーの種類、採用する増幅法などにより「基づく」という意味は異なる。例えばPCR法を採用して増幅反応を行う場合、設計するプライマーの配列は、鋳型DNAに対し相同的な場合と相補的な場合があり、一般にフォワードプライマーの場合は鋳型DNAに対し相同配列となり、リバースプライマーの場合は鋳型DNAに対し相補配列となる。例えば、図2において、フォーワードプライマーL及びMは、保存領域1の塩基配列に対し相同的になるよう設計し、リバースプライマーN及びOは、保存領域2の塩基配列に対し相補的になるよう設計する。
【0022】
プライマーは、保存領域1又は保存領域2の塩基配列内であればどの部分の塩基配列に基づいて設計してもよい。例えば、図2においては、フォーワードプライマー(L及びM)並びにリバースプライマー(N及びO)をそれぞれ2つの異なる部分の配列に基づいて設計している。好ましくは、増幅される核酸断片の長さが長くならないように、非保存領域からできる限り近い部分の塩基配列に基づいてプライマーを設計する。
【0023】
このようにして設計したプライマーセットを用いて増幅反応を行った場合には、保存領域1及び保存領域2をゲノム上に有する全ての生物又は特定の生物集団から核酸断片を増幅することができる。また、増幅される核酸断片は、非保存領域を含むこととなる。従って、1組のプライマーセットにより、全ての生物又は特定の生物集団から核酸断片を増幅することができるため、対象とする生物ごとに種々のプライマーを用いて複数回増幅反応を行う必要はない。
【0024】
例えば、図2A及びBに示すように、フォーワードプライマーL又はMと、リバースプライマーN又はOとが組み合わされたものを1つのプライマーセットとして使用する。フォーワードプライマーLとリバースプライマーNとを組み合わせた場合には核酸断片L−Nが増幅され、フォーワードプライマーLとリバースプライマーOとを組み合わせた場合には核酸断片L−Oが増幅され、フォーワードプライマーMとリバースプライマーNとを組み合わせた場合には核酸断片M−Nが増幅され、フォーワードプライマーMとリバースプライマーOとを組み合わせた場合には核酸断片M−Oが増幅される。図2A及びBに示す非保存領域の塩基配列はそれぞれ異なるが、同じプライマーセットを用いてそれぞれの非保存領域を含む核酸断片を増幅することができる。
【0025】
このようにして増幅される核酸断片は、特定の生物集団に特異的な塩基配列を有する非保存領域を含むため、この非保存領域の塩基配列により、その生物を特定することが可能となる。以上、プライマーセットの設計及びプライマーセットを用いて増幅反応を行う場合の一般論について説明したが、プライマーセットの具体的な設計については後述する。
【0026】
2.保存領域と非保存領域の決定
本発明において、増幅ターゲットとなる非保存領域と、プライマーを設計する際の鋳型とする2つの保存領域は、以下に記載するようにして決定する。
(1)非保存領域
非保存領域は、特定の生物集団に特異的な塩基配列を有するゲノム領域である。非保存領域は、更に、例えば、いずれの生物種のいずれの部位又は組織においてもコピー数が多いこと、種々の生物種に関してデータベースに登録されていること等の条件を満たすものが好ましい。
【0027】
本発明においては、非保存領域は、特に内部転写スペーサー領域1(ITS1)又は内部転写スペーサー領域2(ITS2)とする。特に、非保存領域をITS1とすることが望ましい。これは、ITS1は、植物種ごとに特異的な塩基配列を有すると共に、これに隣接する保存領域中のITS1に近い領域に、植物とカビ・コウボ等とを明確に区別し得る塩基配列を有し、核酸断片を増幅した場合に、植物のITS1を含む塩基長の短い核酸断片が確実に得られ、これに基づいて正確で詳細な植物異物の同定を実施することが可能となるためである。また、ITS1は、哺乳類においては配列が長く、植物においては短いことが知られているため、異物サンプル由来のDNAにヒトDNAが混入し、ヒト由来の増幅産物が得られた場合でも、増幅された核酸断片の長さから、被検サンプルが動物由来か植物由来かを判定することができるためである。
【0028】
(2)保存領域
保存領域は、上記非保存領域に隣接して存在する2つの領域であり、特定の生物集団内において保存されている。このような保存領域は、更に、例えば、いずれの生物種のいずれの部位又は組織においてもコピー数が多いこと、種々の生物種に関してデータベースに登録されていることなどの条件を満たすものが好ましい。
本発明において、上記非保存領域に隣接して存在する2つの保存領域は、ITS1に隣接する18S rRNA及び5.8S rRNA、又はITS2に隣接する5.8S rRNA及びlarge subunit rRNA(25S rRNA或いは28S rRNA)とする。
【0029】
3.プライマーの設計
本発明に係るプライマーセットは、上記「2.保存領域と非保存領域の決定」の項に記載のようにして決定された2つの保存領域の塩基配列に基づいて設計する。
プライマーセットは、ITS1又はITS2の各々の両側に存在する2つの保存領域の塩基配列中の植物で保存されている配列に基づいて設計された2つの植物ユニバーサルプライマーを含み、これらの内の少なくとも一方が、植物で保存されていて、かつカビ・コウボとは異なっている塩基配列を含むように設計する。
【0030】
プライマーは、保存領域内であればいずれの部分に基づいて設計してもよいが、加熱等によってDNAが損傷を受けているサンプルであっても、増幅産物が得られやすいように、できる限り非保存領域に近い部分に基づいて設計し、増幅産物のサイズ、即ち塩基数を出来る限り小さくすることが好ましい。
プライマーを設計する際の条件は、採用する増幅法に応じて異なる。例えば増幅法としてPCR法を採用する場合には、プライマー設計の条件としては、プライマーの長さ、プライマーセットに含まれる複数のプライマー間の相補性、GC含量、Tm値、プライマーの濃度などが挙げられる。
【0031】
プライマーを設計する際の条件は当技術分野で公知であり、例えば、「PCR法最前線−基礎技術から応用まで(蛋白質 核酸 酵素 臨時増刊号)」,関谷及び藤永編,共立出版株式会社,1996年、「バイオ実験イラストレイテッド3本当にふえるPCR(細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)」,中山広樹著,株式会社秀潤社,1996年、並びにその他のプライマー設計に関する文献及びマニュアルなどを参照されたい。
【0032】
設計するプライマーの長さは、採用する増幅反応により異なるが、例えばPCR法により増幅を行う場合には、約15〜35塩基長、好ましくは20〜25塩基長である。
設計するプライマーは、DNA又はDNA/RNAのキメラ配列であってもよい。また、プライマーの配列中に、イノシンなどのリボヌクレオシドが含まれてもよい。
【0033】
本発明において、プライマーの設計には、公知のプライマー設計用ソフトウエアを利用することができ、このようなソフトウエアを利用することによって、容易に、プライマーとしての機能を有するプライマーを確認し、設計することができる。本発明で利用可能なプライマー設計用ソフトウエアとしては、例えばOligo 5.0(National Biosciences社)、HYBstimulator version4(Advanced Gene Computing Technologies, Inc.)などが挙げられる。
【0034】
プライマーの合成法は当技術分野で周知である。例えば、ホスホロアミダイト法などの一般的なオリゴヌクレオチド合成法を用いることができる。
上記「2.保存領域と非保存領域の決定」の項において、2つの保存領域を5.8S rRNA及び18S rRNAとした場合、5.8S rRNA及び18S rRNAの塩基配列に基づいて作製したプライマーセットは、その保存領域に挟まれる非保存領域(ITS1)を増幅することができるものである。
【0035】
このようなプライマーセットを構成する2つの植物ユニバーサルプライマーとして、具体的には、次のものが挙げられる。
即ち、上流側のforwardプライマーとしては、塩基配列が5'-GAC GTC GCG AGA AGT CCA YTG-3'(配列番号1に示す)のもの、下流側のreverse プライマーとしては、塩基配列が5'-TCG CAT TTC GCT ACG TTC TTC ATC G-3'(配列番号2に示す)のものが挙げられる。
【0036】
これらの植物ユニバーサルプライマーの設計の基礎となったデータの一例として、14種の植物、コウボの18S rRNA内の下流域塩基配列のアライメント結果を図3に示し、また、12種の植物、コウボの5.8S rRNA内の上流域の塩基配列のアライメント結果を図4に示す。
また、ITS1を増幅するためのforwardプライマーとして、配列番号1に示す塩基配列のうち、連続した15塩基以上の塩基配列を含むプライマー、又は、そのプライマーに対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAの逆相補鎖に相当する塩基配列を含むプライマーを採用することができる。また、reverse プライマーとして、配列番号2に示す塩基配列のうち、連続した15塩基以上の塩基配列を含むプライマー、又は、そのプライマーに対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAの逆相補鎖に相当する塩基配列を含むプライマーを採用することができる。
【0037】
なお、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、2つのDNA断片がSambrook Jらによって記載されたような標準的なハイブリダイゼーション条件下で、相互にハイブリダイズすることを意味する(Expression of cloned genes in E. coli(Molecular Cloning:A laboratory manual(1989))Cold Spring harbor Laboratory Press, New York, USA, 9. 47-9. 62及び11.45-11.61)。より具体的には、例えば3×SSC、37℃でハイブリダイズを行ない、0.5×SSC、0.1% SDS 37℃で洗浄を行なう条件が挙げられる。ハイブリダイズする塩基配列等に応じて適宜ハイブリダイゼーション及び洗浄に適切な「ストリンジェントな条件」を選択することは、当技術分野では周知事項である。
【0038】
以上の植物ユニバーサルプライマーを含むプライマーセットを用いることにより、カビ・コウボ等のDNAに存在するITS1領域が増幅されることを回避して、植物に特異的なITS1領域のみを含む核酸断片を確実に増幅することが可能となる。つまり、図2に示すような、非保存領域の塩基配列がそれぞれ異なる植物の核酸断片(即ち、「タマネギ」(図1A)や「リンゴ」(図1B)等の核酸断片)を増幅することができる。
【0039】
4.異物からの核酸調製
本発明の同定方法は、異物(被検サンプル)から調製したDNAを鋳型とし、上記「3.プライマーの設計」の項で記載のようにして設計したプライマーセットを用いて核酸断片を増幅し、その核酸断片から、被検サンプルを同定するものである。
ここで、異物とは、例えば、本来その製品中にあってはならないものが混入していたものを指し、食品等では、使用原料以外に当該食品中に混入した物質を指す。本発明において、同定の対象となる異物は、植物由来のサンプルであれば特に限定されず、例えば、食品に含まれる異物等、様々な製品に含まれる異物、犯罪捜査上の証拠品を例示することができる。
【0040】
本発明の同定方法においては、微量サンプル、例えば10mg以下程度のサンプル、更に1mg程度のサンプルであっても、被検サンプルとして用いることができる。本発明の同定方法によれば、植物の非保存領域を含む塩基長の短い核酸断片を確実に増幅できるためである。
被検サンプルからのDNAの調製は、当技術分野で周知の方法を適宜使用して行うことができる。例えば、DNAを調製する場合には、フェノール抽出及びエタノール沈殿を行う方法、ガラスビーズを用いる方法、市販のDNA抽出キット等を利用することができる。
【0041】
5.増幅反応
本発明の同定方法においては、次いで、上記「3.プライマーの設計」の項に記載のように設計したプライマーセットを用いて、非保存領域の塩基配列を含むDNA断片を増幅する。本発明において、DNA断片を増幅する工程においては、当技術分野で周知のあらゆる増幅法を用いることができる。
核酸断片を増幅する手法としては、特に限定されないが、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の原理を利用した公知の方法を挙げることができる。PCR法の原理は、まず、鋳型となるDNA2本鎖を加熱して変性させて1本鎖にし(変性)、次に、増幅したい特定部位のDNA鎖の両方の鎖に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを反応系に過剰に加えた状態で温度を下げて、プライマーとDNA鎖の相補的な部位とが2本鎖を形成するようにし(アニーリング)、そしてこの状態でDNA合成基質であるデオキシヌクレオシド三リン酸とDNAポリメラーゼとを作用させると、ポリメラーゼがプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(伸長)という、3段階からなるDNA合成反応を繰り返して行うことにある。
【0042】
DNAを鋳型として核酸断片を増幅する場合は、PCR法、LAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification)、ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)、RCA法(Rolling Circle Amplification)、LCR法(Ligase Chain Reaction)、SDA法(Standard Displacement Amplification)などを挙げることができる。
PCR法では、被検サンプルから調製したDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼにより、プライマーセットに含まれる一対のプライマー間の塩基配列を合成するものである。PCR法によれば、変性、アニーリング及び合成からなるサイクルを繰り返すことによって、核酸断片を指数関数的に増幅させることができる。PCRの最適条件は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0043】
LAMP法では、被検サンプルから調製したDNAを鋳型として、その鋳型の6カ所の領域に対して4種類のプライマーを設計して用い、鎖置換反応を利用して一定の温度で反応させることによって、核酸を15分〜1時間で10〜1010倍に増幅することができる(栄研化学株式会社、Eiken GENOME SITEホームページ、http://loopamp.eiken.co.jp/参照)。
またICAN法では、被検サンプルから調製したDNAを鋳型として、RNA(3´側)とDNA(5´側)からなるキメラプライマーを用い、鎖置換型DNA合成酵素及びDNA−RNAハイブリッド部位を切断するリボヌクレアーゼにより、鎖伸長反応、鋳型交換反応及び切れ目導入反応を繰り返すことにより、キメラプライマーに挟まれた領域を特異的に増幅することができる(タカラバイオ株式会社ホームページ、http://www.takara-bio.co.jp/index.htm参照)。
【0044】
RCA法では、被検サンプルから調製したDNAを環状の一本鎖DNAとして、DNAポリメラーゼにより相補鎖DNAを合成することができる。この方法では、鋳型DNAを環状とすることによって、一本鎖DNAの合成が何周にもわたって起こり、90分間で10倍程度に増幅することができる(SNP遺伝子多型の戦略・ゲノムの多様性と21世紀のオーダーメイド医療,松原謙一ら監修,中村祐輔編,中山書店,2000年参照)。
LCR法では、被検サンプルから調製したDNAを鋳型として、その鋳型のセンス鎖及びアンチセンス鎖にそれぞれアニーリングする2種類の隣り合ったオリゴヌクレオチドプローブを用いて、DNAリガーゼによりその隣り合うプローブを連結する反応を繰り返すことによって、核酸断片を指数関数的に増幅することができる(Barany, F., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 88: 189-193, 1991参照)。
【0045】
SDA法では、被検サンプルから調製したDNAを、制限酵素が認識する塩基配列を有するプライマーを用いて、制限酵素とポリメラーゼとを組み合わせることにより、DNA合成、制限酵素による切断、及び切断部位の修復のサイクルを繰り返すことにより核酸断片を増幅することができる(Walker, G.T., et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 89: 392-396, 1992;Walker, G.T., et al., Nucleic Acids Res, 20: 1691-1696, 1992参照)。
上述したような公知の増幅反応により、上記「3.プライマーの設計」の項に記載のようにして設計したプライマーセットを用いて、非保存領域の塩基配列を含む核酸断片を、非常に効率よく増幅することができる。増幅は、その後、核酸断片を同定可能なレベルになるまで行う。
【0046】
6.被検サンプルの同定
本発明の同定方法においては、次いで、上記「5.増幅反応」の項で増幅された核酸断片から被検サンプルを同定する。本発明において「同定」とは、被検サンプルとなる植物由来のサンプルにおいて、その植物がどの生物分類群に属するかを判定することを指す。本発明において「生物分類群」とは、一般的な生物分野において生物の分類に使用されている分類群を指し、例えば、岩波 生物学辞典 第4版,八杉龍一ら編,株式会社岩波書店,1996年などの文献には生物の分類に関して詳細な説明が記載されている。生物分類群としては、例えば界、門、綱、目、科、属、種、亜種等の群が挙げられ、科にはマメ科やウリ科、属にはダイズ属やカボチャ属が含まれる。本発明の同定方法は、植物がどの属又は種に属するかを判定する場合に特に有用である。
【0047】
更に、本発明の同定方法において、上述した増幅工程において増幅された核酸断片は、植物の属又は種ごとに特異的な非保存領域のITS1又はITS2の塩基配列を有するため、その塩基配列から、被検サンプルが由来する植物の属又は種を判定することができる。増幅された核酸断片から被検サンプルを同定する方法としては、核酸断片の塩基配列決定を行い、その塩基配列から生物を特定する方法がある。しかしながら、増幅された核酸断片に基づいて生物を同定する方法であればこの方法に限定されるものではない。
【0048】
核酸断片の塩基配列の決定は、ダイ・ターミネーター法などの周知の手法により行うことができるが、通常は自動塩基配列決定機(例えばABI製 310 Genetic Analyzerなど)を用いて配列決定を行う。塩基配列決定反応を行うためのキットとしては、例えば BigDyeTM Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems製)などが市販されている。
核酸断片の塩基配列を決定した後、その塩基配列を、例えば公知のデータベースで検索し、最も相同性の高い塩基配列を有する植物を特定することによって、被検サンプルを同定することができる。公知のデータベースとしては、特に限定されるものではないが、GenBankが挙げられる。
例えば、ITS1の塩基配列は、多数の植物由来のものがGenBankに登録されており、決定した塩基配列をGenBank、DDBJ、EMBLで検索することにより、最も同一性の高い塩基配列を有する植物種を特定することが可能である。
【0049】
本発明に係る被検サンプルの同定方法は、あらゆる植物に由来する異物のサンプルから、同定に利用する核酸断片を増幅することが可能であるため、微量にしか存在しないサンプルであっても同定可能である。また、本方法の好ましい態様である、ITS1領域を利用した場合には、その同定能が非常に高い。従って、食品に混入した異物の同定、警察の鑑識等において、微量なサンプルの同定及び特定に有用である。
【0050】
7.同定用キット
本発明の同定方法は、同定用キットを用いて非常に容易に実施することができる。ここで、同定用キットは、少なくとも本発明のプライマーセットを含んでいる。また、同定用キットは、さらに、反応液を構成するバッファー、dNTP混合物、酵素類等を含んでもよい。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕
[プライマーの設計]
(保存領域及び非保存領域の決定)
全ての植物由来の異物に対して、1種類のプライマーセットで対応できるようにするために、以下の条件を満たす塩基配列を検索した。
▲1▼ 植物のどのような部位・組織でもコピー数が多い。
▲2▼ 植物ユニバーサルプライマーが設計できる程度に保存された領域がある。
▲3▼ 植物以外の生物のDNAからはPCR産物が得られない。或いは、植物DNA由来の産物と非植物DNAからの産物が容易に区別できる。
▲4▼ 植物由来の異物の同定に使用できる程度に種々の植物の遺伝子配列がGenBankに登録されている。
これらの条件を満たす塩基配列として、植物の核ゲノムにコードされた18S rRNA-ITS1-5.8S rRNA領域をターゲットとして選択した。
【0052】
すなわち、保存性の高い18SrRNA配列の3'末端と5.8SrRNA配列の5'末端に、それぞれforwardプライマーとreverseプライマーを設計し、18SrRNA遺伝子と5.8SrRNA遺伝子に挟まれた保存性が極端に低いITS1領域(約210bp)の配列情報を用いて、同定を行なうこととした。
(プライマーの設計)
決定した2つの各保存領域の塩基配列に基づいて、2つのプライマーを設計した。植物異物の同定を目的としているので、植物以外の生物からは増幅産物が得られないようにプライマーを設計した。
【0053】
以下に具体的な手順を示した。
(1)植物ユニバーサル領域の検索
植物全般で保存されている配列を見つけるために、12種類の植物(エンドウマメ(マメ科)、ダイズ(マメ科)、トマト(ナス科)、ジャガイモ(ナス科)、コメ(イネ科)、トウモロコシ(イネ科)、ココヤシ(ヤシ科)、ペポカボチャ(ウリ科)、アカナラ(ブナ科)、オレンジ(ミカン科)、ニンニク(ユリ科)、マツの一種)について、18SrRNA配列と5.8SrRNA配列を入手し、それぞれから保存性の高い領域を抽出し、植物ユニバーサルプライマー候補領域とした。
【0054】
(2)植物以外の生物由来DNAを鋳型としてPCR産物が得られないことのチェック
標的遺伝子は植物特異的な遺伝子ではないので、植物以外の生物から産物が得られないことを以下のように調べた。
被検サンプルとなる食品に混入した異物等は、人が触れていることが多く、サンプルから抽出したDNAにヒトDNAが混入することが懸念された。しかし、プライマー候補領域の塩基配列を用いたBLAST検索の結果、(1)で選んだ植物ユニバーサルプライマー候補配列と相同性のある塩基配列は、ヒトDNA中にはないことがわかった。さらに、哺乳類のITS1は植物に比べて数100bp長く、ヒト由来DNAからPCR産物が得られたとしても、植物DNAからの産物(推定サイズ約350bp)と容易に区別がつくことが判明した。
また、バクテリアのような原核生物には5.8Sリボゾームが存在しないことから、異物由来のDNAに原核生物のDNAが混入していても原核生物DNA由来の産物は得られないことが判明した。
更に、カビ・コウボDNAについては、forwardプライマーを(1)で選んだ18S rRNA3'末端領域中のプライマー候補領域から、カビ・コウボの配列とは異なる配列を含む領域から選び、産物が得られないことをコンピュータによるPCRシミュレーション(Amplify 1.0)によって検証した。
【0055】
(3)ITS1領域に近い場所へのプライマーの設計
本同定法の対象とするサンプルでは加熱等により、DNAが損傷を受けていることも予想され、その場合でも増幅産物が得られやすいようにするためには、PCRによって得られる増幅産物のサイズを出来るだけ小さくする必要がある。このため、forwardプライマーを18SrRNAのできるだけ3'末端に近く、reverseプライマーを5.8SrRNAのできるだけ5'末端近くの配列から設計した。
以上のようにして、PCRプライマー配列を以下のように決定し、合成した。
<植物核DNA(18S rRNA-ITS1-5.8S rRNA領域) プライマーセット>
Figure 0004205485
【0056】
〔実施例2〕
[異物サンプルの同定]
(食品に混入する可能性のあるモデル異物サンプルからのDNA抽出)
食品に混入する可能性のある異物のモデルサンプルとして、以下の植物サンプルを選択した。
(1)モデルサンプルとその選択基準
塩基配列による本同定方法と前記のプライマーが、食品中に混入した植物片の異物同定に適用可能であることを検証するために、異物のモデルサンプルを調製して、同定実験を行った。
モデルサンプルは、以下の要領で選択した。第一に、モデルサンプルとして、混入の報告のある植物を用い、その大きさを1mgと10mgとした。この大きさは、食品中の異物として見つかる植物片の多くが数mg程度であることから決定した。第二に、以下の▲1▼〜▲3▼の基準に照らして調製した。
▲1▼ 加工食品はレトルト加熱や炒煎処理を経ているものが多く、したがって、加熱を経た植物片をモデルサンプルとした。
▲2▼ 加工食品の多くは、植物原料の混合物であるため、混入異物の表面には種々の植物組織が付着していると考えられるため、表面に種々の植物組織が付着した植物片をモデルサンプルとした。
▲3▼ 本来、食品原料として用いられる植物の非可食部をモデルサンプルとした。これらは、植物由来原料加工時の選別工程が不充分であったり、調理時に誤って混入する場合を想定した。
上記の基準に照らして調製したモデルサンプルを以下に示す。
【0057】
A.焦げたタマネギの皮
105℃に調温した恒温槽中に16hrs置いた乾燥したタマネギの皮(それぞれ1mg、10mg)をモデルサンプルとした(サンプルA)。105℃、16hrs処理後の乾燥タマネギ皮は、真っ黒に焦げた内部組織の外表面に白い皮をかぶった形態であった。このサンプルにより、炒煎等によって焦げた植物組織への検査法としての適用性を検証する。
B.表面に他の植物組織が付着したタマネギの皮
表面に種々の植物組織が付着しているモデルサンプルとして、カレーパウダー中に2ヶ月置き、表面が黄色く着色された乾燥したタマネギの皮(それぞれ1mg、10mg)(サンプルB1)と、レトルトソース中の具材であるタマネギ(乾重量1mg、10mgに相当する湿重量10mg、100mg)(サンプルB2)を用いた。
C.原料や野菜の非可食部
リンゴ(Malus domestica)の果柄、カボチャ(Cucurbita moschata)のヘタ、及びラッカセイ(Arachis hypogaea)の種皮それぞれ1mgと10mgを異物サンプルとして選んだ。[リンゴ(サンプルC1)、カボチャ(サンプルC2)、ラッカセイ(サンプルC3)]。
【0058】
(2)DNA抽出
(1)で選択したモデル異物サンプルのそれぞれについて、乾熱滅菌したメスとピンセットを使って、1.5mlエッペンドルフチューブに入れた。エッペンドルフチューブにNucleospin Food Purification Kit(Macherey-Nagel社 Cat. No. 740945.50)のLysis buffer(CF buffer)を所定量(550ml)加えてから、エッペンドルフチューブ用のホモジナイザー(Micropestles(エッペンドルフ 0030 120.973)を用いて、サンプルを粉砕した。
その後、Nucleospin Food Purification Kit(Macherey-Nagel社)のLysis bufferでのインキュベート時間以外はプロトコールに従って抽出を行なった。
Nucleospin Food Purification Kitのプロトコールでは、Lysis buffer CF添加後、ただちにproteinase K溶液を加えてから30min(at 65℃)のインキュベーションとなっていた。今回は、Lysis buffer添加後、60min(at 65℃)インキュベート後にproteinase Kを加え、さらに30min(at 65℃)インキュベートするように改変し、組織の分解がより進むようにした。得られたDNA抽出液を使用まで4℃で冷蔵保管した。
【0059】
(3)モデル異物サンプルから抽出したDNAを鋳型としたPCRによるITS領域の増幅とRubisco遺伝子領域の増幅
(2)で得られた植物異物モデルからのDNA抽出液は、そのUVスペクトルからDNA量を見積もることが出来ない場合があったので、DNA抽出液の原液、10倍希釈液(1/10)、100倍希釈液(1/100)、1000倍希釈液(1/1000)をPCRに供する鋳型とした。(希釈には滅菌超純水を用いた。)
PCRに用いるプライマーはITS1領域を増幅するPCR(ITS1 PCR)では、実施例1に示したプライマーセットを用いた。
また、ITS1領域を増幅するように実施例1で設計したプライマーセットとは別に、クロロプラストゲノムにコードされており、植物異物の同定に用いられた例もあるRubisco(rbcL)遺伝子をターゲットとした植物ユニバーサルプライマーを設計し、ITS1領域による同定との優位性を比較するためにPCR(rbcL PCR)を行なった。
なお、rbcL植物ユニバーサルプライマーの設計には、17種類の植物(アカマツ(マツ科)、コナラ属(ブナ・ナラの仲間)(ブナ科)、アブラナ属(キャベツ・カリフラワーの仲間)(アブラナ科)、ズッキーニ(ウリ科)、カキ(カキ科)、ダイズ(マメ科)、エンドウ(マメ科)、グレープフルーツ(ミカン科)、ニンジン(セリ科)、ジャガイモ(ナス科)、トマト(ナス科)、コーヒー(アカネ科)、タマネギ(ユリ科)、ココヤシ(ヤシ科)、マダケ(イネ科)、イネ(イネ科)、トウモロコシ(イネ科)) rbcL遺伝子配列を用いた。rbcL遺伝子配列は植物の生存に必須なタンパク質をコードした構造遺伝子であるため、植物全般で塩基配列の保存性が高いため、その塩基配列から植物を同定するためには、増幅領域を長くする(塩基数を多くする)必要があった。その結果、設計したユニバーサルプライマーセットを用いた場合のPCR産物のサイズは約600bpとなった。用いたプライマー配列を以下に示した。
Figure 0004205485
【0060】
ITS1のPCR、rbcL PCRのいずれも、以下の反応液組成とPCRサイクルにより実施した。
Figure 0004205485
<PCRサイクル>
▲1▼ 94℃×9分
▲2▼ 94℃×1分
▲3▼ 58℃×1分
▲4▼ 72℃×1分
▲5▼ 72℃×5分
▲6▼ 4℃:保持 ▲2▼〜▲4▼を35cycles繰り返し
増幅反応後のそれぞれのPCR反応液の一部を2%アガロースゲル電気泳動に供した結果を以下に示す。
【0061】
<異物モデルサンプル由来のDNAを鋳型としたPCRの結果>
Figure 0004205485
注)レトルトソースからのサンプルだけは、湿重量で示した。タマネギは水分含量が90%程度であり、約10分の1の乾重量サンプルと同等のサンプルサイズとなる。
【0062】
この結果より、本発明の方法に係るITS1のPCRによれば、混入した異物が焦げていても、その組織に、わずかでも焦げていない部分が残っていれば、サンプル重量1mgからPCR産物を得ることが出来ることを示された。
また、レトルト具材のタマネギでは、rbcL PCRでは産物が得られなかったが、本発明の方法に係るITS1のPCRでは産物が得られた。DNA抽出からの実験を独立して2回実施したが、2回ともrbcL PCR産物は得られなかった。このことから、レトルト処理によるDNAの断片化のために、約600bpと産物サイズが大きいrbcL PCRの産物が得られなかったことが推測された。
(4)モデル異物サンプル由来のPCR産物の塩基配列解析
(3)において、予想された大きさの増幅産物が検出されたPCR反応液からキアゲン社のMinElute PCR purification Kit (50)を用いてPCR産物を精製した。
得られたPCR産物を鋳型として、PE Applied Biosystems社のDNA Sequencing Ready Reaction Kit を用いて、Dye Terminator法による塩基配列解析のためのPCRを行なった。PCR反応液の組成とPCRサイクル条件はKitに付属のマニュアルに従った。
PCR終了後の反応液からAmersham Biosciences社のAutoSeq G-50を用いてPCR産物を回収した。回収したPCR産物の全量をABI Prism GeneticAnalyzer 310の専用サンプルチューブに移し、ABI Prism GeneticAnalyzer 310を用いて塩基配列解析を行なった。
両プライマーから得られた塩基配列データをassembleして塩基の解析を行ない、PCR産物全体のシークエンスを決定した。
【0063】
(5)モデル異物サンプル由来のPCR産物の塩基配列を用いた相同性検索(ITS1配列とrbcL配列による同定能力の比較)
プライマー領域を除いたシークエンスデータをquery配列として、BLASTを使ってGenBankから塩基配列の類似性の高い配列を検索した。
(URL:BLAST:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)
得られた検索結果から、植物片の同定した。その内容を以下に示す。
[種々のタマネギ(Allium cepa)由来サンプルについて]
焦げたタマネギ(サンプルA)、カレーパウダー中に置いたタマネギ(サンプルB1)、レトルト具材タマネギ(サンプルB2)の3つは、塩基配列が全て一致したので、そのうちの1つのデータを用いてBLAST検索を行なった。
その結果、rbcL PCR産物のデータからは、最も近いデータはタマネギの属するAllium属だったが、2番目以下はAllium属のデータ(3種)とネギ科データ(2種)だけでなく、ネギ科に属さない植物のデータが混在した。これに対して、ITS1のPCR産物のデータを用いた場合には、最も近いデータから7つがAllium属のデータとなった。
【0064】
[カボチャのヘタ(Cucurbita moschata)(サンプルC1)](図5を参照)
<18S rRNA-ITS1-5.8S rRNAPCR>
カボチャ属に分類される植物のデータが並んだ。
<rbcLPCR>
ウリ科内の複数の属に分類される植物のデータが並んだ。
[ラッカセイの種皮(Arachis hypogaea)(サンプルC2)](図6を参照)
<18S rRNA-ITS1-5.8S rRNAPCR>
Arachis hypogaeaが最も近いデータとなり、2番目以下もArachis属に分類される植物のデータが上位に並んだ。
<rbcLPCR>
Arachis hypogaeaが最も近いデータとなるが、2番目以下はマメ亜科に属する複数の属の植物のデータが並んだ。
[リンゴの果柄(Malus domestica)(サンプルC3)](図7を参照)
<18S rRNA-ITS1-5.8S rRNAPCR>
Malus属に分類される植物のデータが上位に並んだ。
<rbcLPCR>
リンゴ亜科に属する複数の属の植物のデータが上位に並んだ。
【0065】
(6)実験の結果
今回の同定実験の結果から、rbcL遺伝子をターゲットに選んだ場合よりも、ITS1領域を用いて同定を行った方が、より詳細に植物異物サンプルを同定することができることが明らかである。
なお、上記のようにカボチャのヘタ、ラッカセイの種皮、リンゴの果柄から得られたITS1配列とrbcL配列のそれぞれを用いて実施したBLAST検索の結果を図5〜図7に示す。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、植物に由来する異物の同定方法及びこれに用いるプライマーセットが提供される。本発明の同定手段及びプライマーセットは、植物に由来する異物の被検サンプルが微量にしか存在しない場合であっても非常に高い同定能で被検サンプルを同定することができる。従って、食品に混入した異物の同定、警察の鑑識等に有用である。
【0067】
【配列表】
Figure 0004205485
Figure 0004205485
Figure 0004205485

【図面の簡単な説明】
【図1】植物細胞の染色体上にあるリボゾームRNA遺伝子クラスターを示す。
【図2】ゲノム中の非保存領域及び保存領域とプライマーの配置を示す。
【図3】14種の植物、コウボの18S rRNA内の下流域塩基配列のアライメント結果を示す。
【図4】12種の植物、コウボの5.8S rRNA内の上流域の塩基配列のアライメント結果を示す。
【図5】カボチャのヘタから得られたITS1配列とrbcL配列を用いて実施したBLAST検索の結果を示す。
【図6】ラッカセイの種皮から得られたITS1配列とrbcL配列を用いて実施したBLAST検索の結果を示す。
【図7】リンゴの果柄から得られたITS1配列とrbcL配列を用いて実施したBLAST検索の結果を示す。

Claims (2)

  1. (a)植物に特異的な塩基配列を有する非保存領域として、内部転写スペーサー領域1(ITS1)をターゲットとし、
    (b)上記ITS1の両側に存在する2つの保存領域の塩基配列中の次の塩基配列を有する2つの植物ユニバーサルプライマーからなるプライマーセットを構成し、
    5’−GAC GTC GCG AGA AGT CCA YTG−3’(配列番号1に示す塩基配列)
    5’−TCG CAT TTC GCT ACG TTC TTC ATC G−3’(配列番号2に示す塩基配列)
    (c)上記プライマーセットを用いて、異物から調製したDNAを鋳型とした増幅反応を行い、
    (d)増幅された上記非保存領域を含む核酸断片の塩基配列から異物を同定することを特徴とする植物に由来する異物の同定方法。
  2. 次の塩基配列を有するものである請求項1に記載の同定方法に用いるためのプライマーセット。
    5’−GAC GTC GCG AGA AGT CCA YTG−3’(配列番号1に示す塩基配列)
    5’−TCG CAT TTC GCT ACG TTC TTC ATC G−3’(配列番号2に示す塩基配列)
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