JP4204843B2 - 高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2−フェノキシエタノールの製造において、フェノール含有量が100ppm以下で、且つ、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール含有量も5%以下と少ない、高純度2−フェノキシエタノール反応液を高収率で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2−フェノキシエタノールは、化粧品の防腐剤、医農薬、洗浄剤、香料及びUV硬化剤の中間体の原料として、また、酢酸ビニル系ポリマーエマルジョンの造膜温度調整剤として広く用いられている。従来の製造方法としては、アルカリ金属水酸化物(東独特許第282448号明細書参照)、イオン交換樹脂(米特許第2852566号明細書参照)といった塩基性触媒の存在下で、フェノールをエチレンオキシドと反応させて、得られた反応液を乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸といった有機酸、または硫酸、塩酸、燐酸といった無機酸で中和し、製品としている。求められる製品の品質に応じて、脱塩及び/又は精留といった操作を施し、製品の2−フェノキシエタノールの純度を高めている。
【0003】
近年、ユーザーの安全への意識向上から、より低フェノール含有量の製品が求められている。単に製品中のフェノール含有量を低下させることだけを目的とするのであれば、フェノールに対するエチレンオキシドの付加反応モル比を上げて付加反応/精留すれば良いが、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノールのようなフェノールにエチレンオキシドが複数モル付加反応した高モル付加体が多く生成し、製品が蒸留精製を必要としない場合には製品の機能低下の問題を、一方、蒸留精製する必要がある場合には蒸留時に製品の歩留まり低下、ボトム量の増加といった問題を引き起こす。
【0004】
従来技術の問題点を解決するために、フェノールとエチレンオキシドとの反応において、触媒の変更、溶媒の選定により、フェノールへのエチレンオキシド付加モル分布を狭くしようとする検討がなされている。
【0005】
特公昭39−30272号公報にはフェノールのグリコールエーテルの工業的製造方法として、水相中で少量の水溶性中性アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の存在下に20ないし130℃の温度及び10気圧以下の圧力下で攪拌しつつフェノールとアルキレンオキシドを反応させる方法が開示されている。
【0006】
この反応では、溶媒の水とアルキレンオキシドとが反応して(ポリ)アルキレングリコールを副生する等、アルキレンオキシドを浪費し、バッチ当りの製品収量が低下するため好ましくない。また、アルキレンオキシド付加反応後に水層、油層の分離操作が必要であり、さらにフェノールへ2モル以上のアルキレンオキシドが付加した水溶性が高いポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルが副生するため、COD負荷の高い排水を処理する必要があるといった問題がある。
【0007】
特公昭50−17976号公報にはフェノール類とアルキレンオキサイドとの反応をエーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素及びニトロ芳香族化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒で、3級アミン、3級アルシン及び3級スチビンからなる群から選ばれた何れかの触媒の存在下に反応させることを特徴とする方法が開示されている。
【0008】
この方法では、有機溶媒を用いるため、バッチ当りの製品収量の低下、溶媒の回収、リサイクルといった問題がある。また、アミン触媒を用いると反応液が着臭し、反応液を蒸留精製する場合でも、その臭気は製品に残り、その様な臭気が残った製品は、特に、香料分野、化粧品分野では使用できない。さらに、ヒ素化合物、アンチモン化合物を触媒に用いることは、製品を香料分野、化粧品分野等、人と接触する用途で使用する場合には好ましくない。
【0009】
独国特許第2609475号、英国特許第1485598号、加国特許第1091690号、米国特許第4302574号明細書には該反応の触媒として、各種ホスホニウム塩を用いることが記されている。
【0010】
ホスホニウム塩触媒を用いると反応液の色相は良好で、2−フェノキシエタノールの純度は高いが、反応液にホスホニウム化合物が分解した臭気がある。その臭気は精留しても製品に残り、その様な臭気が残った製品は、特に、香料分野、化粧品分野では使用できない。
【0011】
特開平03−041045号公報には水性媒体中でアルカリ性触媒の存在下アルキレンオキシドとビスフェノールAを反応させ、ビスフェノールAジオキシアルキレンエーテル組成物を製造するにあたり、ビスフェノールA1モル当り1〜2.2モルのアルキレンオキシドを付加した段階でアルカリ性触媒を部分的に中和し、さらにアルキレンオキシドを付加することを特徴とするビスフェノールAジオキシアルキレンエーテルの製造方法が開示されている。
【0012】
この方法では、水性媒体を使用するため、水とアルキレンオキシドが反応して(ポリ)アルキレングリコールを副生し、アルキレンオキシドを浪費するため好ましくない。また、バッチ当りの製品収量が低下する。さらに、溶媒の回収、リサイクルといった問題がある。
【0013】
独国特許第3312684号、米国特許第4533759号明細書には、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属硼水素化物を用いる、芳香品質のエチレングリコールモノアリールエーテルの製造方法が記されている。
【0014】
この方法では得られる反応液は色相、臭気共に優れているが、フェノール含有量が数百ppmと多いため、フェノール含有量を100ppm以下にするためには、フェノールを除去する工程が必要になる。さらに製品を蒸留精製する必要がある場合には、前記フェノール除去工程を実施しないと、蒸留精製時にフェノール除去の負荷が高く、また製品の収率が低くなるといった問題があった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような従来の技術の状況に鑑み、塩基性触媒の変更を伴わず、かつ、溶媒を使用しない、高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、無溶媒、塩基性触媒の存在下でフェノールとエチレンオキシドとを反応させて、2−フェノキシエタノール反応液を製造するにあたり、エチレンオキシドをフェノールに対するモル比で0.90〜1.02に達するまで供給して付加反応を行った段階で、塩基性触媒を部分的に中和し、さらにエチレンオキシドをフェノールに対するモル比で1.04〜1.08に達するまで追加供給して付加反応を行った後、残存する触媒を後処理すれば、フェノール含有量が100ppm以下で、かつ、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール含有量も5%以下と少ない、高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法の提供に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
エチレンオキシド付加工程1
反応器に原料のフェノール及び塩基性触媒を仕込み、反応器内の雰囲気を窒素、ヘリウム等の不活性ガスで置換し、120〜180℃、好ましくは140〜170℃に加熱し、同温度範囲でエチレンオキシドをフェノール(仕込量)に対しモル比で0.90〜1.02、好ましくは0.95〜1.00、最も好ましくは1.00に達するまで供給し、付加反応させる。エチレンオキシド供給後、未反応エチレンオキシドが検出されなくなるまで、反応混合物を、同温度で熟成する。
反応器内の雰囲気を不活性ガスに置換する操作は、反応液の着色防止と安全性確保のために行う必要がある。この操作は温度40〜70℃の範囲内で行うことが好ましい。40℃よりも低いとフェノールが凝固する恐れがあり、逆に、70℃を超えると、反応液が着色し、また反応液からアルカリ焼けにより異臭がする恐れもある。
【0018】
塩基性触媒としては、強アルカリが好適であり、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであるが、他の弱アルカリ、例えば水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムもまた使用することができる。反応性、工業的入手の容易さ等から、特に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0019】
塩基性触媒の使用量(仕込量)は、フェノール(仕込量)に対して0.1〜1.0重量%であり、好ましくは0.2〜0.5重量%である。1.0重量%より多くても、上記熟成後の反応液中のフェノール含有量は変わらず、部分中和に使用する無機酸が多くなるだけ、経済的に不利である。逆に、0.1重量%より少ないと、反応速度が低下し、反応に長時間がかかる。また、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール等のフェノールにエチレンオキシドが複数モル付加した副生物の生成量が増加する。
【0020】
このエチレンオキシド付加工程1での反応温度は120〜180℃であり、好ましくは150〜170℃である。反応温度が120℃よりも低いと、反応が遅く、反応に長時間を要する。逆に180℃よりも高いと、無触媒(フェノールの自触媒)反応が進行し、フェノールが多く残存し、また2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール等のフェノールにエチレンオキシドが複数モル付加した副生物の生成量が増加する。
【0021】
この工程でのエチレンオキシドの供給量は、フェノール(仕込量)に対するモル比で、0.90〜1.02であり、好ましくは0.95〜1.00であり、最も好ましくは1.00である。塩基性触媒の部分的中和を、エチレンオキシドの供給量がフェノールに対するモル比で0.90未満の段階で行うと、部分中和後の残存触媒量に比しフェノール残存量が多いために無触媒反応が進行し、フェノールが多く残存する。また、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール等のフェノールにエチレンオキシドが複数モル付加した副生物の生成量も増加する。逆に、エチレンオキシドの供給量がフェノールに対するモル比で1.02より過剰の段階で触媒の部分中和を行うと、部分中和後のエチレンオキシド追加供給量が極端に少なくなり、最終的反応モル比の調整が困難になる。また触媒の部分中和の意味が小さくなるため好ましくない。
【0022】
部分中和工程
塩基性触媒の部分中和率は、触媒仕込量の50〜95モル%であり、好ましくは60〜90モル%である。部分中和率が95モル%を超えると、エチレンオキシドを追加供給する次工程(エチレンオキシド付加工程2)で有効な触媒量が減少し、次工程におけるエチレンオキシド追加供給後の熟成時間が長くなり、好ましくない。逆に、50モル%未満では、本発明による未反応フェノール含有量低減効果が低くなり、好ましくない。
【0023】
中和温度は50〜100℃であり、好ましくは50〜70℃である。50℃より低くても大きな問題はないが、あまり低くしすぎると、冷却に要する時間が長くなり、反応液の粘度増加や、次工程のための昇温に長時間がかかり効率的でない、といった不都合が生じる。逆に100℃を超えると、加えた中和剤の多くが製品である2−フェノキシエタノールと反応して硫酸エステル(中和剤が硫酸の場合)を生成するのに消費され、所望の部分中和率を達成するには過剰の中和剤が必要になる。
【0024】
塩基性触媒の部分中和に用いる中和剤は、特に制限なく、作業性や製品の要望される品質に応じて適当なものを用いることができる。例えば、硫酸、リン酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、乳酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられ、必要に応じ、固体酸や吸着剤等を用いることもできる。
【0025】
エチレンオキシド付加工程2
触媒を部分中和した後、再度、反応器内の雰囲気を窒素、ヘリウム等の不活性ガスで置換し、90〜150℃に加熱し、同温度範囲で、エチレンオキシドを総供給量がフェノールに対するモル比で1.04〜1.08、好ましくは1.05〜1.07に達するまで追加供給し、付加反応させる。エチレンオキシド供給後、未反応エチレンオキシドが検出されなくなるまで反応混合物を同温度で熟成する。熟成を長くしすぎると、2−フェノキシエタノールがアルカリ存在下で熱分解し、フェノール含有量が増大するため、未反応エチレンオキシドが検出されなくなった時点で、すみやかに次工程に移るのがよい。
【0026】
このエチレンオキシド付加工程2での反応温度が90℃より低いと、エチレンオキシド付加反応、熟成に要する時間が長くなり、経済的でない。逆に、150℃より高いと、熟成後期に2−フェノキシエタノールがアルカリ存在下で熱分解し、フェノール含有量が増大する傾向にある。
【0027】
この工程でのエチレンオキシドの追加供給量は、エチレンオキシド付加工程1での供給量を加えた総供給量として、フェノール(仕込量)に対するモル比で1.04〜1.08であり、好ましくは1.05〜1.07である。このモル比で1.04未満では、エチレンオキシドの追加供給量が極端に少なくなり、最終的反応モル比の調整が困難になる。また、残存する未反応フェノール含有量が多くなり、本発明の効果が十分得られない。逆に、上記モル比で1.08を超えると、残存する未反応フェノールはほとんどなくなるが、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール等のフェノールにエチレンオキシドが複数モル付加した副生物の生成量が増加し、製品の純度が低下する。また得られた反応液を蒸留精製して、よりフェノール含有量の少ない2−フェノキシエタノールを取得する場合には、製品の収率が低下する。
【0028】
触媒後処理工程
残存する塩基性触媒の後処理工程では、通常、当量の酸による中和が行われる。中和剤には、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸を使用することができる。これらの酸の中では、硫酸が好ましい。また、この後処理工程で、吸着剤により触媒等を除去することもできる。例えば、キョーワード−600及びキョーワード−700(協和化学工業社製)のようなアルカリ吸着剤で処理して、処理液を濾過、遠心分離等の固液分離操作を施すこともできる。さらに塩基性触媒に対して過剰量の硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸で中和し、キョーワード−500(協和化学工業社製)のような酸吸着剤で処理して、処理液に濾過、遠心分離等の固液分離操作を施してもよい。
【0029】
この処理工程の温度は50〜100℃であり、好ましくは50〜70℃である。50℃より低くても大きな問題はないが、あまり低くしすぎると冷却に要する時間が長くなり、反応液の粘度が増加し、中和に要する時間が延びる傾向にある。逆に100℃を超えると、仕込み作業上危険である。
【0030】
得られた反応液を蒸留精製して、よりフェノール含有量の少ない高純度2−フェノキシエタノールを取得する場合には、硫酸、塩酸を使用する中和又は吸着剤による触媒等除去による後処理が好ましい。リン酸、有機酸を使用する中和では、蒸留精製時に、溶解した中和塩が分解し異臭が生ずる可能性があるため好ましくない。
【0031】
【分析方法】
ガスクロマトグラフィー分析
製品の純度、各成分の含有量はガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件の一例を以下に示す。
機種: (株)島津製作所製GC−12A
カラム: ガラス製、長さ1.6m×内径3.2mm
充填剤: Silicone OV−1 10%
担体: Uniport HP 60/80
カラム温度: 145℃(4分間保持)→220℃(5℃/分の昇温)
窒素流量: 50mL/分
各成分の含有量: 表−1に示す保持時間の面積%を求めた。
【0032】
【表−1】
【0033】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における部及び%は重量基準で示す。
【0034】
【実施例1】
3.5L容SUS製オートクレーブに約70℃に加熱したフェノール1012.8部、触媒のフレーク状KOH2.53部を仕込み、空気による着色防止のために、攪拌しながら反応器内の雰囲気を窒素に置換した。窒素置換後、マントルヒーターにて165℃まで加熱し、エチレンオキシドの導入を開始した。温度が169±3℃、圧力が0.2MPa以下を保つようにエチレンオキシド479.4部(モル比=1.01)を41分間かけて導入した。エチレンオキシドの導入終了後、同温度で30分間熟成した。熟成後、70℃まで冷却し、濃硫酸1.67部を添加し、中和を行った(実中和率=75.0%)。再び、反応器内の雰囲気を窒素に置換し、マントルヒーターにて115℃まで加熱した。115℃に達したら残量のエチレンオキシドの導入を開始した。温度が120±2℃、反応圧力が0.2MPa以下を保つようにエチレンオキシド24.5部(最終モル比=1.06)を2分間かけて導入した。エチレンオキシドの導入終了後、反応温度を保ちながら、未反応エチレンオキシドが残存しなくなるまで300分間熟成を行った。熟成終了後、70℃まで冷却した。冷却後、濃硫酸を添加し、中和を行った。中和後の反応液組成を表−2に示す。
【0035】
【実施例2】
3.5L容SUS製オートクレーブに約70℃に加熱したフェノール1014.1部、触媒のフレーク状KOH2.54部を仕込み、空気による着色防止のために、攪拌しながら反応器内の雰囲気を窒素に置換した。窒素置換後、マントルヒーターにて165℃まで加熱し、エチレンオキシドの導入を開始した。温度が170±2℃、反応圧力が0.2MPa以下を保つようにエチレンオキシド473.3部(モル比=1.00)を42分間かけて導入した。エチレンオキシドの導入終了後、同温度で30分間熟成した。熟成後、50℃まで冷却し、濃硫酸1.73部を添加し、中和を行った(実中和率=77.7%)。再び、反応器内の雰囲気を窒素に置換し、マントルヒーターにて90℃まで加熱した。90℃に達したら残量のエチレンオキシドの導入を開始した。温度が90〜107℃、反応圧力が0.2MPa以下を保つようにエチレンオキシド31.3部(最終モル比=1.06)を10分間かけて導入した。エチレンオキシドの導入終了後、反応温度を保ちながら、未反応エチレンオキシドが残存しなくなるまで180分間熟成を行った。熟成終了後、70℃まで冷却した。冷却後、濃硫酸を添加し、中和を行った。中和後の反応液組成を表−2に示す。
【0036】
【実施例3】
さらに実施例1と同様にして得られた、純度94.0%の2−フェノキシエタノール(反応液)2400部を3L容のガラス製蒸留フラスコに仕込み、段数15段のオルダーショー型蒸留塔を用いて、トップ圧力絶対圧4kPa、ボトム温度151〜202℃で蒸留を行い、143℃/絶対圧4kPaの2−フェノキシエタノール留分1931部が得られた(蒸留収率80.5%、純度99.9%:精製液)。
【0037】
【比較例1】
1.5L容SUS製オートクレーブに約70℃に加熱したフェノール720.9部、触媒のフレーク状KOH1.80部を仕込み、空気による着色防止のために、反応器内の窒素置換を十分行った。窒素置換後、反応器内をフル減圧にした。攪拌を開始し、マントルヒーターにて165℃まで加熱した。液温が165℃に達したらエチレンオキシドの導入を開始した。温度が170±5℃、反応圧力が0.2MPa以下を保つようにエチレンオキシド358部(モル比=1.06)を導入した。エチレンオキシドの導入終了後、反応温度を保ちながら、未反応エチレンオキシドが残存しなくなるまで30分間熟成を行った。熟成終了後、70℃まで冷却した。冷却後、濃硫酸を添加し、中和を行った。中和後の反応液組成を表−2に示す。
【0038】
【比較例2】
部分中和するときのモル比を0.80に変更した以外は実施例1と同様に行った。反応液組成を表−2に示す。
【0039】
【比較例3】
さらに比較例1と同様にして得られた、純度94.1%の2−フェノキシエタノール(反応液)2400部を3L容のガラス製蒸留フラスコに仕込み、段数15段のオルダーショー型蒸留塔を用いて、トップ圧力絶対圧4kPa、ボトム温度151〜202℃で蒸留を行い、143℃/絶対圧4kPaの2−フェノキシエタノール留分1668部が得られた(蒸留収率69.5%、純度99.9%:精製液)。
【0040】
【表−2】
【0041】
表−2から次のことがわかる。
実施例1及び実施例2と比較例1の比較より、触媒を部分中和すると残存フェノール量が少ない2−フェノキシエタノール反応液が得られることがわかる。
実施例1と比較例2の比較より、触媒を部分中和するときのモル比が小さいと残存フェノール量が多くなることがわかる。
実施例3と比較例3の比較から、触媒を部分中和すると、反応液を蒸留してより高純度な2−フェノキシエタノールを取得する場合の蒸留収率が上がることがわかる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、フェノール含有量が100ppm以下で、且つ、2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール含有量が5%以下と少ない、高純度な2−フェノキシエタノール反応液を高収率で製造することができる。
Claims (11)
- 無溶媒、塩基性触媒の存在下でフェノールとエチレンオキシドとを反応させて、2−フェノキシエタノール反応液を製造するにあたり、エチレンオキシドをフェノールに対するモル比で0.90〜1.02に達するまで供給して付加反応を行った段階で、塩基性触媒を部分的に中和し、さらにエチレンオキシドをフェノールに対するモル比で1.04〜1.08に達するまで追加供給して付加反応を行った後、残存する触媒を後処理することを特徴とする高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 塩基性触媒の使用量が、フェノールに対して0.1〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 塩基性触媒の50〜95モル%が部分的に中和されることを特徴とする請求項1または2記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 部分中和の温度が、50〜100℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 部分中和を、フェノールに対するモル比で0.95〜1.00に達するまでエチレンオキシドを供給して反応を行った段階で、行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 部分中和を、フェノールに対するモル比で1.00に達するまでエチレンオキシドを供給して反応を行った段階で、行うことを特徴とする請求項5に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- エチレンオキシドを追加供給して行う付加反応の温度が90〜150℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- エチレンオキシドを追加供給した後に、反応混合物を熟成する温度が90〜150℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 触媒を後処理する方法が中和であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 触媒を中和する酸が硫酸であることを特徴とする請求項9に記載の高純度2−フェノキシエタノール反応液の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で得られた反応液を蒸留精製することを特徴とする高純度2−フェノキシエタノールの製造方法。
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