JP4203980B2 - データ処理方法及び装置、並びに記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、データ処理の分野に係り、特に、画像の鮮明化及び平滑化のためのデータ処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鮮明化と平滑化は画像の画質向上及び復元のための基本技術である。画像の画質向上は、エッジ、境界、コントラストなど、画像の特徴を強調することであり、ノイズ低減、エッジの尖鋭化及び鮮明化、フィルタ処理、その他の周知の処理を含む。画像復元は、観察された画像の劣化を最小限にするためのフィルタ処理を含むことが多い。「A.K. Jain ,”Fundamentals of Digital Image Processing”」及び「 W. Pratt,”Digital Image Processing”」を参照されたい。鮮明化と平滑化は、デジタル写真技術や科学・医療映像技術によく利用される技術である。
【0003】
ポピュラーな鮮明化方式はアンシャープマスキングと呼ばれ、特殊なハイパスフィルタを用いて画像をフィルタ処理する。アンシャープマスキングの1つの欠点は、画像中のノイズまでも鮮明化されてしまい、適切な鮮明化度合の選択が容易でないため得られる出力がしばしば「不自然」に見えることである。
【0004】
画像処理のための多くの鮮明化フィルタがある。それらの鮮明化フィルタは、一般にオリジナル画像のハイパスフィルタ処理によって画像中のエッジを強調する。一般的な方法がアンシャープマスキングで、例えば「 A.K. Jain,”Fundamentals of Digital Image Processing”,Prentice Hall, 1989 」に解説されている。
【0005】
アンシャープマスキングでは、ある画像f(x)の鮮明化画像fsharp(x)は、その画像の平滑化画像(「アンシャープ後画像」)に勾配を強調した画像を加算することによって得られる。すなわち、
sharp(x):=fsmooth(x)+λfgradient(x) (1)
ただし、λ>1は鮮明度パラメータである。λが増加するにつれて鮮明度が増す。画像f(x)を、ローパスフィルタ処理画像flowとハイパスフィルタ処理画像fhighの和として記述できるならば、(1)式を次のように表すことができる。
sharp(x)=flow(x)+(λ−1)fhigh(x) (2)
このアプローチにおけるローパスフィルタとハイパスフィルタは固定フィルタである。このアプローチの1つの問題は、どのようなフィルタサイズ、フィルタ係数、λの値が適切であるかが先験的には分からないことである。λが大きすぎると、画像は不自然に見える。この問題を解決するため、いくつかのフィルタを適用して最も「自然」に見える出力を選ぶアプローチもある「 D. Blatner, S. Roth,”Real World Scanning and Halftones”,Peachpit Press,Inc.,Berkeley, 1993 」を参照)。
【0006】
「本来の」エッジだけでなくノイズ画素までも鮮明化してしまうという問題を解決するため、「Proceedings of the 1997 International Conference on Image Processing (ICIP '97)」のpp. 267-270 に掲載の A. Polesel,G. Rampoui と V.J. Mathews の論文”Adaptive Unsharp Masking for Contrast Enhancement”に述べられているアプローチでは、画素ドメインにおいて、エッジの強さ及び方向に依存する鮮明化パラメータを変更する適応的な方向成分をアンシャープマスキング・フィルタに加える。このアンシャープマスキング・フィルタは2次元のラプラシアンフィルタである。
【0007】
以上に述べたように、アンシャープマスキング法には、画像の最適な鮮明化度合を決定するという課題がある。この課題に対する1つの解答が、1999年2月2日に交付され、Hewlett-Packard 社(Palo Alto, California)に譲渡された”Apparatus and Method for Determining the Appropriate Amount of Sharpening for an Image”なる表題の米国特許第 5,867,606 号に述べられており、これはアンシャープマスキング法でラプラシアンフィルタを利用するためのものである。1つの解決法として、鮮明化後の画像のフーリエ・スペクトルをオリジナル画像の低解像度画像のスペクトルと比較することによって、鮮明化パラメータλの大きさが決定される。これには、アンシャープマスキング・フィルタのほかに、離散ウェーブレット変換に比べ複雑な計算を伴うオリジナル画像に対するフーリエ変換が必要である。また、この手法に反映されるのは、1つの低解像度画像のみである。
【0008】
スキャン画像のJPEGドメインでの鮮明化のようなスキャン文書の鮮明化に関する問題は、「Proceedings of the 1997 International Conference on Image Processing (ICIP '97)」のpp. 326-329 に記載された論文”Text and Image Sharpening of Scanned Images in the JPEG Domain”で論じられている。提案された1つの解決策は、エンコード用量子化テーブルを高い周波数を強調するようにスケーリングするというものである。そのスケーリング量は、対応したDCT係数に含まれるエネルギーによって決まる。DCT関数はL2(R)の基底を生じるだけで、より高度な平滑度空間、例えばHoelder 空間Cα(R)の基底を生じないので、JPEG圧縮は、JPEG圧縮画像における周知の問題点であるブロック歪みを生じる。これらの歪みは、DCT係数のスケーリングにより、さらに強まることがある。
【0009】
画像のコントラストを向上させる目的で、平均二乗誤差を最小にするなどの基準によってウェーブレット係数が修正された。しかし、これらのアプローチは、局所的規則性に関し画像の理論的平滑度特性を考慮していないため、計算はさらに複雑である。
【0010】
従来技術では、画像のディテール画像が処理された。このようなアプローチは、1998年9月8日に交付されAgfa-Gevaert(Belgium)に譲渡された、”Method and Apparatus for Contrast Enhancement”なる表題の米国特許第 5,805,721号に記載されている。このアプローチにおいては、画像は、様々な解像度のディテール画像と1つのローパス画像とに分解される。この分解はサブバンド分解ではなくラプラシアン・ピラミッド分解であり、その再構成プロセスはディテール画像とローパス画像を単に加算することだけである。そのディテール係数にウェーブレット係数の大きさに依存した因子が乗じられる。この乗算は、ある単調関数の値を求めることで説明することができる。この関数は、べき乗則特性を有するがスケールによって変化しない。再正規化ステップで、ディテール画像の画素は最初に同画像中の画素の最大値によってまず正規化される。上記単調関数に含まれるパラメータの選び方については全く論じられていない。
【0011】
ウェーブレット係数の修正は、エネルギー基準に基づいて行われた。例えば、エネルギー基準に基づいたウェーブレット係数の修正による画像のコントラスト向上が、「Proceedings of the SPIE, Vol. 2762, Orlando, Florida,1996」の pp. 566-574 に記載の X. Zong, A.F. Laine, E.A. Geiser 及び D.C. Wilson の論文”De-Noising and Contrast Enhancement Via Wavelet Shrinkage and Nonlinear Adaptive Gain”に記載されている。このアプローチの1つの問題は、個々のウェーブレット係数毎に局所エネルギーの比較が実行されるため、多くの計算が必要とされることである。また、修正は臨界標本化ウェーブレット変換にしか適用されない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、以上に述べた従来技術の問題点の1つ以上を回避あるいは解決できる、鮮明化又は平滑化のためのデータ処理方法及び装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の1つの特徴は、画像データなどの入力データにウェーブレット変換を適用して入力データを複数の分解レベルに分解し、それら分解レベル中の少なくとも一つの分解レベルの係数に対してノイズ低減を行い、ノイズが低減された、それら分解レベル中の少なくとも2つの分解レベルにおける係数を、各分解レベル毎に別々のスケール依存パラメータを用いてスケーリングすることによって修正することである。
【0014】
本発明のこのような特徴及びその他の多くの特徴について、添付図面を参照し以下に詳細に説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】
ウェーブレットによる多重スケールの鮮明化・平滑化手法について述べる。以下の記述中に、特定のフィルタなど様々な具体例が提示される。しかし、当業者には、そのような具体例によることなく本発明を実施し得ることは明白であろう。一方、本発明を分かりにくくしないため、周知の構造や装置はブロック図の形で表され、詳細は示されない。
【0016】
以下の詳細な説明には、コンピュータ・メモリ内のデータビットに対する操作のアルゴリズム及び記号表現によって表された部分がある。このようなアルゴリズム記述及び表現は、データ処理技術分野において、当業者が研究内容を他の当業者に最も効率的に伝えるために用いる手段である。あるアルゴリズムがあり、それが概して期待した結果に至る筋の通ったステップの系列だと理解されるとする。これらステップは、物理量の物理的処理を要するステップである。必ずという訳ではないが、これらの物理量は記憶、転送、結合、比較、その他処理が可能な電気的または磁気的信号の形をとるのが普通である。これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、数等で表わすのが、主に慣用上の理由から便利な場合があることが分かっている。
【0017】
しかしながら、このような用語や同様の用語はすべて適切な物理量に関連付けられるべきであり、また、それら物理量に付けた便宜上のラベルに過ぎないということに留意すべきである。以下の説明から明らかなように、特に断わらない限り、”処理”、”演算”、”計算”、”判定”、”表示”等の用語によって論じられることは、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリの内部の物理的(電子的)な量として表現されたデータを処理して、コンピュータシステムのメモリやレジスタ、その他同様の情報記憶装置、情報伝送装置又は表示装置の内部の同様に物理量として表現された他のデータへ変換する、コンピュータシステムや同様の電子演算装置の作用及びプロセスを意味する。
【0018】
本発明は、ここに述べる処理を実行するための装置にも関係するものである。このような装置は、所要目的のために専用に作られてもよいし、内蔵のコンピュータ・プログラムによって選択駆動もしくは再構成された汎用コンピュータであってもよい。そのようなコンピュータ・プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体、限定するわけではないが例えば、フロッピーディスク、光ディスク、CD−ROM、光磁気ディスクなどの任意の種類のディスク、リードオンリーメモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード又は光カードなど、すなわち電子的命令の記憶に適したコンピュータのシステムバスに接続された任意種類の媒体に格納してもよい。
【0019】
ここに提示するアルゴリズム及び表示は、本質的に、いかなる特定のコンピュータ、その他の装置とも関わりがない。様々な汎用マシンを、ここに述べる内容に従ったプログラムで使用し得るが、所要の方法のステップの実行のために、より特化した装置を作るほうが好都合であるかもしれない。これら多様なシステムに要求される構造は以下の説明から明らかになろう。さらに、どのような特定のプログラミング言語とも関連付けることなく本発明を説明する。ここに述べる本発明の内容を実現するために様々なプログラミング言語を使用し得ることが理解されよう。
【0020】
《概要》
画像データなどのデータのウェーブレットによる多重スケールの鮮明化及び平滑化のための手法をここに述べる。ここに述べる多重スケール鮮明化・平滑化手法は、多重スケール・アンシャープマスキングと呼ばれるが、前述した従来方法にとって代わる方法となるものであり、実施が容易である。このアプローチは、ウェーブレット系の平滑度特性を利用して鮮明化及び平滑化を実現する。
【0021】
すなわち、ここに述べる手法は、新たな鮮明化/平滑化パラメータを用いて、画像を様々な解像度レベルについて鮮明化しまた平滑化する。一実施例においては、ウェーブレット係数にスケール依存パラメータを乗ずることにより、ウェーブレット分解で多重スケールの鮮明化・平滑化が実現される。図1は、画像データ処理方法の一実施例を示す。この方法は処理ロジックによって実行されるが、この処理ロジックはハードウェアでも、ソフトウェアでも、あるいはハードウェアとソフトウェアの組み合わせでもよい。図1を参照すると、プロセスの最初で、画像データを多重分解レベルに分解するため、画像データにウェーブレット変換を適用する(処理ブロック101)。この画像データに適用されるウェーブレット変換は、例えば、臨界標本化離散ウェーブレット変換、超完備離散ウェーブレット変換、複素ウェーブレット変換、臨界標本化ウェーブレット・パケット変換、あるいは超完備ウェーブレット・パケット変換である。一実施例では、選択されたサブバンドについては臨界標本化変換によって、それ以外のサブバンドについては超完備変換によって、画像データは多重分解レベルに変換される。
【0022】
そして、この分解の実行後、プロセスは多重分解レベルの係数を修正するため、それら分解レベルの係数を、その各レベル毎に別々のスケール/レベル依存パラメータを用いてスケーリングする(処理ブロック102)。例えば、2レベルのスケーリングの場合、2分解レベル中の1つの分解レベルの各係数は第1のスケール依存パラメータを乗じられ、もう1つの分解レベルの各係数は第2のスケール依存パラメータを乗じられる。
【0023】
一実施例では、上記別々のスケール依存パラメータはそれぞれ次式により決定される。
μj=2j α (3)
ここで、αの値(正値又は負値)によって係数に鮮明化が適用されるか平滑化が適用されるかを指示し、jは特定のスケール(レベル)を示す。一実施例では、αが0より小さいときに係数に鮮明化が適用され、αが0より大きいときに係数に平滑化が適用される。すなわち、μjが1より大きいときにはスケーリング操作の結果は平滑化であり、μjが1より小さいときにはスケーリング操作の結果は鮮明化である。再スケーリングは、スケーリング係数ではなくウェーブレット(ディテール)係数にのみ施される。画像の総エネルギーを保存するため、ウェーブレット係数の再正規化が必要なこともある。
【0024】
一実施例では、スケール依存パラメータは画像データに関する情報(知識)に基づいて選ばれる。すなわち、画像から直接抽出された情報を、鮮明化パラメータ又は平滑化パラメータの選択に利用することができる。例えば、入力データがステップ・エッジを表しているという情報を、鮮明度パラメータ又は平滑化パラメータの選択に用いることができる。画像のソース、例えばスキャナに関する情報を、鮮明化パラメータ又は平滑化パラメータの選択のための基準とすることもできる。例えば、この情報はスキャナや他の画像ソースの点広がり関数の情報であろう。別の実施例では、ある単調関数に基づいてスケール依存パラメータを選ぶことができる。ウェーブレット係数のスケール間減衰の推定値に基づいてスケール依存パラメータを選んでもよい。
【0025】
再び図1を参照すると、多重スケールの鮮明化及び/又は平滑化を行った後、処理ロジックはスケーリングされた(及びスケーリングされなかった)係数に対し逆変換を行う(処理ブロック103)。
【0026】
この手法を、例えばノイズ低減のような他のウェーブレット・ベースの画像処理方法と組み合わせることができる。すなわち、多重スケール鮮明化・平滑化をウェーブレット領域での他の画像処理ステップと組み合わせることができる。エッジはシャープなまま保存されるが平滑領域のノイズは除去されるということで、ウェーブレット・ノイズ低減が有効であることが多くの応用分野で明らかになっている。このノイズ低減は、ウェーブレット係数の閾値処理によって簡単に行うことができる。適切な閾値処理方法としてハードな閾値処理とソフトな閾値処理がある。例えば、「Donoho, D.L.,”De-noising by Soft-Thresholding”, IEEE Trans. Inform. Theory, 41(3):613-627, 1995 」を参照されたい。
【0027】
一実施例では、所定の閾値以上の全係数にあるスケーリング・パラメータを乗じ、かつ、同じ分解レベルのある閾値以下の全係数を0又は0に近い値にセットすることによって、ノイズ低減と鮮明化を同時に行うことができる。一実施例では、係数の値がすべて所定量だけ減らされるが、その所定量を単調関数によって得ることもできる。その結果として得られた係数は、次にスケール依存パラメータを乗じられる。
【0028】
ランダムな白色ガウス雑音がある場合、ノイズ低減と鮮明化/平滑化を組み合わせた方法の1つの利点は、ノイズ低減用閾値が、ウェーブレット係数及び入力データ量から直接的に計算でき、実際の信号には左右されないことである。従来の鮮明化では「本来の」エッジだけでなくノイズ画素まで鮮明化してしまうという問題が生じるのに対し、ウェーブレット鮮明化・ノイズ低減は、例えば、閾値を選び、この閾値以上の全係数にμj=2j αを乗じ、かつ、ある閾値以下の全係数を0にセットすることによって行うことができる。その結果、例えばデジタル複写機で必要とされる信号に適応した平滑化・鮮明化を容易に実現できる。
【0029】
データ中のノイズの一般的モデルは適応的な白色ガウス雑音である。 Donoho と Johnstone によって開発されたウェーブレットによるノイズ低減方法は、最新のノイズ低減方法である。このノイズ低減は、ウェーブレット係数を単に閾値処理することで行われる。その閾値は、データのサイズNすなわち標本数(画像の場合、標本数は画素数である)とノイズの標準偏差σのみに依存して決まり、
σ√(2 log N)
である。後者のパラメータは、第1レベルのウェーブレット係数の標準偏差から推定することができる。漸近的には、Nが無限大に近づけば、この方法によって全てのノイズが除去されるはずである。しかしながら、実際的には、データの有限であること又は閾値選択の違いにより、多少のノイズがデータに残ることがある。人間の視覚系が、例えば画像中に存在するある種のノイズに強く反応することも知られている。ここに述べたウェーブレット係数の再スケーリング(鮮明化又は平滑化)の後に、逆変換で残留白色雑音を色つきノイズに変換する(例えば、残留ノイズに着色する)。
【0030】
同様に、ウェーブレット係数を再正規化する必要があるかもしれない。この再正規化は、特に、以下に詳述するように修正後のウェーブレット係数と元のスケーリング係数のバランスを維持するためである。この再正規化は、全レベル又はその一部レベルの係数にスカラーを適用することによって行うことができる。一実施例では、1つ以上の分解レベルの全係数に、再正規化と鮮明化/平滑化を達成するように選んだスケール依存パラメータを乗ずることによって、再正規化を鮮明化又は平滑化と兼ねさせることができる。別の実施例では、再正規化を実行するために、再スケーリング前のウエーブレット係数の範囲(例えば係数の最小値と最大値)を計算してから再スケーリング(鮮明化又は平滑化)を行う。それから、修正後の係数全体に、再スケーリング前の元の範囲へ戻すスケーリングを行う(例えば、最小係数値及び最大係数値で指定される元の範囲へ、平滑化後の係数又は鮮明化後の係数を再マッピングする)。
【0031】
図2は、画像データ処理方法のもう1つの実施例を示す。この方法は処理ロジックによって実行されるが、この処理ロジックはハードウェアでも、ソフトウェアでも、あるいはハードウェアとソフトウェアの組み合わせでもよい。図2を参照すると、プロセスの最初で、処理ロジックは、画像データを多重分解レベルに分解するため、画像データにウェーブレット変換を適用する(処理ブロック201)。
【0032】
この分解を終了すると、処理ロジックは様々な分解レベル及び帯域の係数を分類する(処理ブロック202)。この分類は省略可能である。一実施例では、所定の基準によって、係数は「テキスト」と「背景」に分類される。その分類結果を、処理対象データの種類を補償するように平滑化又は鮮明化を適応化させるために利用できる。
【0033】
次に、処理ロジックは1つ以上の分解レベルの係数に対するノイズ削減を行う(処理ブロック203)。
【0034】
分解及び分類の後、処理ロジックは多重分解レベルの係数を修正するため、それら分解レベルの分類された係数を、その各レベル毎に別々のスケール(レベル)依存パラメータを用いてスケーリングする(処理ブロック204)。一実施例では、それらパラメータを帯域依存パラメータとすることができる。1次元変換の場合、各スケール(レベル)毎に1つの帯域(サブバンド)がある。2次元以上の変換の場合には、各帯域は1の特定のスケール(レベル)及び方向である。例えば、2次元変換では、第1スケール(レベル)、垂直方向ディテール(ハイパス)、水平方向スムーズ(ローパス)の帯域がある。
【0035】
鮮明化又は平滑化を行った後、処理ロジックは全レベル又は一部レベルの係数に対する再正規化を行う(処理ブロック205)。再正規化を行った後、処理ロジックは、スケーリングされた係数(及びスケーリングされなかった係数)の逆変換を行う(処理ブロック206)。
【0036】
ここに述べた鮮明化及び平滑化の手法は、「本来の」エッジは様々なスケールでノイズ画素よりも強調され、かつ平滑領域は様々なスケールで平滑化されるという利点がある。また、これらの手法は、処理後の画像の品質の点で従来のアンシャープマスキングより優れている。
【0037】
《鮮明化/平滑化の原理》
本発明の鮮明化・平滑化手法の原理について以下に説明する。以上の成果を離散ウェーブレット分解による多重スケール・アンシャープマスキングを導き出すためにどのように利用できるか以下に説明する。
【0038】
{H,H*,G,G*}を4つの双直交ウェーブレットフィルタとする(H=ローパス、G=ハイパス)。ここで、HとGは順方向変換に用いられ、H*とG*は逆方向変換に用いられる。Z−変換領域において、2チャネルの完全再構成フィルタバンクは次の条件を満たすものと考えられる(例えば、「G. Straug, T. Nguyen, ”Wavelets and Filter Banks”,Wellesley-Cambridge Press, 1996 」参照)。
H*(z) H(z) + G*(z) G(z) = 2 z -m (4)
H*(z) H(-z) + G*(z) G(-z) = 0. (5)
【0039】
その結果、完全再構成特性としても知られている次式が任意の信号Xに対し成り立つ。
zmX(z) =1/2 [H*(z)H(z)X(z) + H*(z)H(-z)X(-z)]
+1/2 [G*(z)G(z)X(z) + G*(z)G(-z)X(-z)].
【0040】
次の表記を導入する。
Fo[X](z):= 1/2 [H*(z)H(z)X(z) + H*(z)H(-z)X(-z)] (ローパス出力)
F1[X](z):= 1/2 [G*(z)G(z)X(z) + G*(z)G(-z)X(-z)] (ハイパス出力)
そうすると、完全再構成特性を次のように書き換えることができる。
mX(z) = F0 [X](z) + F1 [X](z). (6)
フィルタH,Gが対称で0を中心としているならば、遅延は0である。すなわちm=0である。
【0041】
0はローパスフィルタ、F1はハイパスフィルタであるから、鮮明化された画像Fdwt-s(x)の定義は次のように定式化される。
Xdwt-s[z] := F0[x](z) + μF1[x](Z). (7)
ここで、ウェーブレット鮮明化パラメータμは、従来の鮮明化方法の(1)式中のパラメータλと等しい。
【0042】
大きな分割レベルでのスケーリング及びウェーブレット係数を計算する場合、入力データXは特定スケールjのスケーリング係数sjである。ウェーブレット鮮明化パラメータμは、スケール毎に(つまりレベル毎に)異ならせることができる。例えば「 Y. Meyer, ”Wavelets and Operators”,Cambridge University Press, Cambridge, WC, 1992」に記載されている平滑度空間理論の結論から当然に導かれるのは、スケール依存鮮明化パラメータを次のように選ぶことによって多重スケール鮮明化を定義することである。
μj=2j α (α<O) (8)
パラメータαは、 Hoelder レギュラリティとしての信号の全体的平滑度を変化させる。
【0043】
そして、スケールjの「鮮明化された」スケーリング係数sj dwt-sは次のように定義される。
j dwt-s=F0[sj]+μjF1[sj] (9)
平滑度特性に関する理論的結論と同様、α<0にパラメータを選べば画像が鮮明化される。αの範囲は、選ばれたウェーブレット系で決まる制約条件によって制限される。本方法のフィルタバンク構成の第1段のブロック図を図3に示す。図3を参照すると、入力信号Xはローパス(H)ウェーブレット・フィルタ301とハイパス(G)ウェーブレット・フィルタ302に入力される。フィルタ301,302の出力は間引きユニット303,304にそれぞれ結合され、間引きユニット303,304はフィルタ301,302より入力する信号を2分の1に間引く(臨界サブサンプルされる)。線305は図3に示す系の分析部と合成部の境界を示す。図示しないが、ローパス信号をフィルタ301,302に繰り返し入力することにより、パラメータmμjを用いて、それ以上の分解レベルを生成することができる。このプロセスを繰り返して任意数(例えば、2,3,4,5など)の分解レベルを生成することができる。
【0044】
分析部と合成部の間に、符号器と復号器を挿入することができる(本発明を分かりにくくしないため図示しない)。この符号器と復号器に、変換領域で実行される全ての処理ロジック及び/又はルーチン(例えば、予測、量子化、符号化など)を含めることができる。
【0045】
間引きユニット304から出力される臨界サブサンプルされた信号は(何らかの符号化と復号化の後に)スケーリング・ユニット306に入力される。スケーリング・ユニット306は、多重分解レベルの変換信号に対し別々のスケール依存パラメータμを適用する。
【0046】
間引きユニット303から出力されるサブサンプルされた変換信号と、スケーリング・ユニット306のスケーリング出力信号は、アップサンプリング・ユニット307,308にそれぞれ入力され、これらアップサンプリング・ユニットはそれら変換信号を2倍にアップサンプリングし(例えば各項の後に1つの0を挿入する)、そして、それら信号をローパス逆ウェーブレット変換フィルタ309とハイパス逆ウェーブレット変換フィルタ310へそれぞれ送る。フィルタ309,310の出力を加算ユニット311によって合成することにより、出力信号X1を生成する。加算ユニット311は、その2つの入力を加算する。別の実施例では、加算ユニット311は、メモリ(例えばフレームバッファ)の互い違いのロケーションに情報を書き込む、すなわち、合成出力が得られるように選ばれたアドレスを用いて情報を格納する。
【0047】
画像の総エネルギーを保存し、かつ、修正されたウェーブレット係数と元のスケーリング係数のバランスを維持するため、ウェーブレット係数の再正規化を利用することができる。一実施例では、この再正規化は、修正された係数を
√(nαγ)で除することによって行われる。ここで、
【数1】
Figure 0004203980
【数2】
Figure 0004203980
γはウェーブレット系の Hoelder レギュラリティの範囲の上限、αは選ばれた鮮明化パラメータである。次数4の Daubechies-8 ウェーブレット系(フィルタ長=8、γ= 1.596、α= -1.596 )の場合、正規化因子は
【数3】
Figure 0004203980
となる。
書籍「 Ingrid Daubechies, ”Ten Lectures on Wavelets”,SIAM, Philadelphia, PA, 1992 」より引用した様々な Daubechies ウェーブレット系の Hoelder レギュラリティとバニシング・モーメントを下記表1に示す。
【表1】
Figure 0004203980
パラメータγは、バニシング・モーメントと Hoelder レギュラリティのうちの小さい方の値である。別の再正規化手法を使用することもできる。
【0048】
臨界標本化DWTにシフト不変性が無いことは、ノイズ低減のような画像処理ステップにとって不利であり、また、多重スケール平滑化・鮮明化にとっても、同じエッジが、そのウェーブレット木における位置関係によって違ったふうに平滑化又は鮮明化されることがあるため不利である。この不利な点を克服するため、超完備(冗長)DWT(RDWTと記す)が選ばれ、これは臨界標本化DWTより優れている。
【0049】
画像の鮮明化のためにRDWTを選んだ場合でも、以上に述べたアプローチと同じアプローチにより多重スケールのアンシャープマスキングを定義することができる。主たる相違点は、フィルタバンクのダウンサンプリングとアップサンプリングのステップが省かれる点である。
【0050】
スケール1でのRDWTの完全再構成特性は次式で与えられる。
x(z) = 1/2 (H* H[x](z) + G* G[x](Z)). (13)
図4に概略図を示す。図4を参照すると、入力信号Xは、ローパス・ウェーブレット変換フィルタ401とハイパス・ウェーブレット変換フィルタ402に入力される。フィルタ401の出力は偶数係数403と奇数係数404に分けられ、また、フィルタ402の出力は偶数係数405と奇数係数406に分けられる。間引きは行われないことに注意されたい。図3の線305と同様、線407は分析部と合成部の境界を表し、前述のように符号化処理と復号化処理を含めることができる。また、ローパス・フィルタ401から出力される係数をフィルタ401,402に繰り返しフィードバックして多くの分解レベルを生成することができる。
【0051】
スケーリング・ユニット408,409は、多重分解レベルの偶数係数及び奇数係数に対し、同じスケール依存係数を適用する。スケーリング・ユニット408,409の出力とフィルタ401から出力される偶数係数及び奇数係数は、アップサンプリング・ユニット410〜413でアップサンプリングされる。アップサンプリング・ユニット410,411の出力はローパス逆変換フィルタ414,415の入力にそれぞれ接続され、アップサンプリング・ユニット412,413の出力はハイパス逆変換フィルタ416,417の入力にそれぞれ接続される。逆変換フィルタ414〜417の出力は除算ユニット418〜421に接続され、除算ユニット418〜421は、それら出力を2で除して2数の平均をとることにより超完備DWTの使用の補償をする。再正規化はDWTの場合と同じラインに沿って実行されるが、ウェーブレット系のγの値をおおよそ2倍にする(表を参照)。
【0052】
加算ユニット422は除算ユニット418,419の出力を加算し、加算ユニット423は除算ユニット420,421の出力を加算する。加算ユニット424は、加算ユニット422,423の出力を加算してX1信号を生成する。加算ユニット422〜424は、例えば上に述べたように周知の作用させればよい。
【0053】
フィルタH,Gが直交フィルタならば、フィルタバンクの第1段のフィルタ
H*H,G*GはHとGの自己相関フィルタにすぎない。
【0054】
スケールj>1については、完全再構成特性は、元のフィルタ H,H*,G,G*ではなく、それらの累次形(Hj,H*j,Gj,G*jで表記)を用いて下記のように表される。
j-1 (z) = 1/2 (H*jHj[sj-1] (z) + G*jGj [sj-1] (z)).
臨界標本化の場合と同様、鮮明化画像xrdwt-sを次式のように定義できる。
rdwt-s:=1/2 (H* H [x] +μG*G [X]). (14)
μj = 2j αに選ぶことによって、スケールj=1では、鮮明化(α<0)後のスケーリング係数は次式により求めることができる。
1 rdwt-s=1/2 (H* H [S1] +μ1 G*G [S1]). (15)
スケールj>1では、鮮明化後のスケーリング係数は次式で定義される。
j rdwt-s= 1 / (2j+1) (H*jHj [Sj] +μjG*jG j[Sj]). (16)
超完備多重スケール鮮明化のためのフィルタバンク構成が図4に示されている。図3に示した最大間引きのフィルタバンクの構成と比較すれば、2分の1のダウンサンプリングが省かれている。しかし、図3におけると同様、ディテール係数はμjを乗じられる。臨界標本化DWTに比べ、指数のとり得る範囲が拡大する。
【0055】
臨界標本化DWTの場合と同じように、修正されたウェーブレット係数の正規化を行うことができる。再正規化はDWTと同じラインに沿って実行されるが、ウェーブレット系のσの値をおおよそ2倍にする。超完備変換の場合、各値は下記の表2に示すように変わる。
【表2】
Figure 0004203980
【0056】
臨界標本化・超完備ウェーブレット変換のための多重スケール鮮明化と同じように、パラメータαを0より大きな値に選ぶことによって、臨界標本化・超完備ウェーブレット変換のための多重スケール鮮明化が可能である。
【0057】
オリジナルデータと処理後の入力データの平滑度が分かると、いくつか利点がある。入力データが、直交DWTを適用して得られたウェーブレット係数の再スケーリングによるオリジナルデータの平滑化データであるとすれば、ここに述べる手法でオリジナルデータを正確に復元できる。このことは、例えば、処理後の入力データ中の平滑化されたステップエッジを元のステップエッジに戻すことができるということである。
【0058】
直交ウェーブレットのDWTによる多重スケール平滑化・鮮明化は可逆的であるのに対し、RDWTは可逆的でない。その理由は、RDWTが直交変換でないこと、すなわち一般的には
1/2H(H*G[x] +μG*G[x]) +1/2G(H* H[x] +μG* G[x]) ≠H[x] +μG[x] (17)
であるからである。
【0059】
図5は、ウェーブレットによる多重スケール鮮明化・平滑化を行うプロセスの一実施例のフローチャートを示す。図5を参照すると、このプロセスは、処理ロジックが入力パラメータを取り込むことから始まる(処理ブロック501)。一実施例では、この入力パラメータには、ウェーブレット系の種類、分解レベル数、鮮明化/平滑化パラメータ、ノイズ低減方法が含まれる。ノイズ低減方法に関しては、ノイズ低減方法のための閾値が入力パラメータに含まれる。
【0060】
入力パラメータが取り込まれると、処理ロジックは、選ばれたウェーブレット系のための平滑度値γを捜し(処理ブロック502)、前記式によって再正規化因子を計算する(処理ブロック503)。γの値は、各エントリーが別々のウェーブレット系に割り当てられたルックアップ・テーブルに格納しておくことができる。処理ブロック501〜503はプロセスの初期化部分である。これらのステップは一度だけ実行され、それ以外のステップは各画像毎に実行される。
【0061】
初期化後に、処理ロジックは第1レベルのウェーブレット変換を実行する(処理ブロック504)。処理ロジックは、次に、ノイズ低減用の閾値を設定する
(処理ブロック505)。一実施例では、 Donoho - Johnstone の閾値がノイズ低減に用いられる場合には、処理ロジックはウェーブレット係数の標準偏差を計算し、閾値を
σ√(21ogN)
に設定する。ここで、Nはデータの行と列のサイズ中の最大値であり、σは第1レベルのウェーブレット係数の標準偏差である。
【0062】
次に、処理ロジックは、その係数に対する第2レベルのウェーブレット変換を実行する(処理ロジック5072)。処理ロジックは、第Lレベルのウェーブレット変換まで、残りのウェーブレット変換を実行する(処理ブロック507L)。
【0063】
ウェーブレット変換を行った後、処理ロジックは閾値処理(ノイズ低減)及び再スケーリング(鮮明化又は平滑化)を行うために、レベルjのウェーブレット係数に
2 j α
を乗じる(処理ブロック508)。その後、処理ロジックはLレベルの逆変換を実行する(処理ブロック509)。
【0064】
図6乃至図9は、順方向変換と逆方向変換の説明図である。図6及び図7は、順方向と逆方向の離散ウェーブレット変換(DWT)のための構成要素をそれぞれ示している。これらの構成要素は、図3中の同様名称の要素と同様のものであることに注意されたい。図8は、Lレベル分解の場合の順方向DWTの一実施例である。図8を参照すると、入力Xは第1レベルの順方向DWTブロック601に入力される。第1レベルの順方向DWTブロック601の出力は、第2レベルの順方向DWTブロック602に入力される。以下同様に、第Lレベルまでの他のレベルの分解が繰り返される。図9は、Lレベル分解の場合の逆方向DWTと再スケーリング(鮮明化/平滑化)を示す。図9を参照するが、各レベルの逆方向DWT毎に1つの鮮明化/平滑化パラメータがあることに注意されたい。すなわち、同一レベルに対し実行される全変換ステップのための鮮明化/平滑化パラメータは同一である。
【0065】
図10乃至図13は、RDWTへの鮮明化/平滑化の適用を示す。図10及び図11は、順方向及び逆方向の冗長DWT(RDWT)のための構成要素をそれぞれ示す。図12は、Lレベル分解の場合の順方向RDWTを示す。図13は、Lレベル分解の場合の全分解レベルの逆方向RDWTと再スケーリング(鮮明化/平滑化)を示している。図13を参照すると、各レベルにおける処理要素各々のための再スケーリング・パラメータは同一である。しかし、再スケーリング・パラメータはレベル毎に異ならせることができる。
【0066】
《鮮明化/平滑化パラメータの選択》
入力データと出力データの平滑度に関する情報に応じて、パラメータαを決定する色々な方法をとり得る。4つの異なった方法を以下に述べるが、それ以外の方法を用いてもよい。第1に、利用できる入力データがスキャナなどの入力装置よりオリジナル・データを送出することによって得られたデータならば、データの Hoelder レギュラリティはその入力装置の Hoelder レギュラリティである。スキャナの場合、レギュラリティは点関数の平滑度によって与えられる。オリジナル・データの平滑度がβでスキャンされた入力データの平滑度がεであるときには、鮮明化パラメータは −(ε−β)とするのが妥当な選択であろう。しかし、|ε−β|の値は、ウェーブレット系の Hoelder レギュラリティγを超えることは許されない。よって、鮮明化パラメータは、β>γかつε>γならば
α=0、β≦γならば α=min(γ,ε)−β 、でなければならない。
【0067】
入力データの平滑度の情報がない場合は、対応する Hoelder レギュラリティεをウェーブレット係数のスケール間減衰から推定することができる。 Hoelderレギュラリティεは、定数C>0、スケールj、位置kで
【数4】
Figure 0004203980
のような最小値でなければならない。例えばテキスト領域に見られるようなステップ・エッジがオリジナル・データに含まれている場合には、そのオリジナルの平滑度βは0に等しい。オリジナル・データの平滑度βが与えられたとすると、鮮明化/平滑化パラメータαを常に 0≦β+α≦γ に選ぶ必要がある。
【0068】
スキャン画像を処理する場合には指数α=−1を使用することができ、これには理論的根拠がある。画像は、平滑領域とステップ・エッジからなる関数でモデル化することができる。この画像をスキャンすることにより、そのステップ・エッジがぼける。このぼけは、ガウス積分核や同様な性質の積分核を用いた畳み込みでモデル化することができる。結果として、 Haar 系の超完備ウェーブレット分解は、指数1で表されるウェーブレット係数の減衰を招く。スキャン画像を鮮明化するため、すなわち、エッジの平滑化を打ち消すため、指数α=−1が鮮明化パラメータ中の指数として選ばれる。前記(10)式中の正規化定数のパラメータγはγ=1である。この場合、全体の分解レベルL=3では、ウェーブレット係数を以下のように修正する必要がある。
・第1レベルのウェーブレット係数に
(2-1)/√(9/(28−4))=2.6458
を乗じる。
・第2レベルのウェーブレット係数に
(2-2)/√(9/(28−4))=1.3229
を乗じる。
・第3レベルのウェーブレット係数に
(2-3)/√(9/(28−4))=0.6614
を乗じる。
【0069】
以上、スキャン文書に関係する応用分野、例えばデジタル複写機、デジタルカメラ、ファクシミリ装置、プリンタなどにおける鮮明化パラメータを選ぶ一般的方法について説明した。
【0070】
多重スケール鮮明化・平滑化のもう1つの応用は、ウェーブレット係数に応じて適応的な平滑化又は鮮明化を行うことである。すなわち、超完備 Haar 系で、選択された係数だけが2j α(α<0)を乗じられることにより鮮明化され、平滑領域の係数が2j β(β>0)を乗じられることにより平滑化される。
【0071】
デジタル複写機の一実施例を図14に示す。図14を参照すると、スキャナ801又は他の中間調画像ソース802が画像を分類ユニット803へ供給し、この分類ユニットはその画像データをテキストと背景に分類する。分類ユニット803の出力はスケーリング・ユニット804に取り込まれ、同ユニットは分類された画素に応じた平滑化又は鮮明化を行う。分類を使用し、その分類結果を鮮明化/平滑化の基準とすることは必須ではないことに注意されたい。スケーリング・ユニット804の出力は、他の処理(例えば、ダウンサンプリング、ガンマ補正、中間調処理など)を実行する処理ユニット805に接続される。処理ユニット805の出力はプリンタ806に取り込まれ、プリンタ806は画像を印刷する。
【0072】
以上の説明を読むことによって当業者には本発明の多くの変更及び修正が明白になるであろうから、説明のために図示及び記述したいずれの実施例も決して限定を意図したものではないと理解すべきである。
【0073】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、画像などの鮮明化/平滑化のための従来技術の問題点の1つ以上を解決することができる等の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像データ処理方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図2】画像データ処理方法のも1つの実施例を示すフローチャートである。
【図3】離散ウェーブレット変換による多重スケール・アンシャープマスキングの第1レベルのフィルタバンク構成を示すブロック図である。
【図4】超完備離散ウェーブレット変換による多重スケール・アンシャープマスキングの第1レベルのフィルタ構成を示すブロック図である。
【図5】ウェーブレットによる多重スケール鮮明化・平滑化のプロセスの一実施例を示すフローチャートである。
【図6】順方向DWTのための構成要素の説明図である。
【図7】逆方向DWTのための構成要素の説明図である。
【図8】Lレベル分解のための順方向DWTの説明図である。
【図9】Lレベル分解の逆方向DWTと再スケーリング(鮮明化/平滑化)の説明図である。
【図10】順方向RDWTのための構成要素の説明図である。
【図11】逆方向RDWTのための構成要素の説明図である。
【図12】順方向のLレベルRDWTの説明図である。
【図13】逆方向のLレベルRDWTの説明図である。
【図14】デジタル複写機の一実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
301 ローパス・ウェーブレット変換フィルタ
302 ハイパス・ウェーブレット変換フィルタ
303 間引きユニット
304 間引きユニット
306 スケーリング・ユニット
307 アップサンプリング・ユニット
308 アップサンプリング・ユニット
309 ローパス逆ウェーブレット変換フィルタ
310 ハイパス逆ウェーブレット変換フィルタ
311 加算ユニット
401 ローパス・ウェーブレット変換フィルタ
402 ハイパス・ウェーブレット変換フィルタ
403 偶数係数
404 奇数係数
405 偶数係数
406 奇数係数
408 スケーリング・ユニット
409 スケーリング・ユニット
410 アップサンプリング・ユニット
411 アップサンプリング・ユニット
412 アップサンプリング・ユニット
413 アップサンプリング・ユニット
414 ローパス逆ウェーブレット変換フィルタ
415 ローパス逆ウェーブレット変換フィルタ
416 ハイパス逆ウェーブレット変換フィルタ
417 ハイパス逆ウェーブレット変換フィルタ
418 除算ユニット
419 除算ユニット
420 除算ユニット
421 除算ユニット
422 加算ユニット
423 加算ユニット
424 加算ユニット
801 スキャナ
802 中間調画像ソース
803 分類ユニット
804 スケーリング・ユニット
805 処理ユニット
806 プリンタ

Claims (53)

  1. 入力データを処理する方法であって、
    前記入力データにウェーブレット変換を適用して、前記入力データを複数の分解レベルに分解するステップと、
    前記複数の分解レベル中の少なくとも1つの分解レベルの係数に対するノイズ低減を行うステップと、
    前記ノイズ低減を行うステップにてノイズが低減された、前記複数の分解レベル中の少なくとも2つの分解レベルの係数に対して、それら各分解レベル毎に別々のスケール依存パラメータを使ってスケーリングして、前記少なくとも2つの分解レベルの係数を修正するステップと、
    係数に対する再正規化を行うステップと、
    係数を逆変換するステップとを有し
    前記ノイズ低減を行うステップは、前記複数の分解レベル中の少なくとも1つの分解レベルにおける所定閾値以上の全ての係数を増大させ、かつ、それ以外の係数を0又は0に近い値に設定することを特徴とするデータ処理方法。
  2. 前記入力データは画像データであることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  3. 前記係数を修正するステップにおいてスケーリングされる前記2つの分解レベルの係数は、ウェーブレット係数である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理方法
  4. 前記係数を修正するステップは、
    前記複数の分解レベル中の1つの分解レベルの各係数に第1のスケール依存パラメータを乗じ、
    前記複数の分解レベル中のもう1つの分解レベルの各係数に第2のスケール依存パラメータを乗じることからなる、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  5. 前記別々のスケール依存パラメータはそれぞれ次式により決定される、
    μj=2jα
    式中、αの値は鮮明化と平滑化のいずれが係数に適用されるか指示し、jはスケールを示す、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  6. αが0より小さいとき、係数に鮮明化が適用され、
    αが0より大きいとき、係数に平滑化が適用される、
    ことを特徴とする請求項5に記載のデータ処理方法。
  7. 前記係数を修正するステップにて、
    前記スケール依存パラメータがある遷移値より大きい場合には係数が平滑化され、
    スケール依存パラメータが前記遷移値より小さい場合には係数が鮮明化される、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  8. 前記遷移値は1である、
    ことを特徴とする請求項7に記載のデータ処理方法。
  9. 前記ウェーブレット変換は、臨界標本化離散ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  10. 前記ウェーブレット変換は、超完備離散ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  11. 前記ウェーブレット変換は、複素ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  12. 前記ウェーブレット変換は、臨界標本化ウェーブレット・パケット 変換である、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  13. 前記ウェーブレット変換は、超完備ウェーブレット・パケット変換である、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  14. 前記分解するステップは、入力データに変換を適用することからなり、前記変換は選ばれたサブバンドに対して超完備変換である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  15. 入力データに関する情報及び画像ソースに関する情報に基づいて前記スケール依存パラメータを選択する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  16. 前記画像ソースに関する情報は前記画像ソースのモデル点広がり関数である、
    ことを特徴とする請求項15に記載のデータ処理方法。
  17. 前記データに関する情報は前記データにステップ・エッジが含まれていることを示すものである、
    ことを特徴とする請求項15に記載のデータ処理方法。
  18. 前記スケール依存パラメータの選択は、ウェーブレット係数のスケール間減衰の推定値に基づいてなされる、
    ことを特徴とする請求項15に記載のデータ処理方法。
  19. 前記修正するステップは、
    前記スケーリングされた係数に対して、当該係数のスケーリング後に残留しているノイズに着色する、
    ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  20. 前記別々のスケール依存パラメータは所要の平滑度及び鮮明度に基づくものである、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  21. 前記再正規化を行うステップは、少なくとも1つの分解レベルの係数にスカラーを適用することからなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  22. 前記再正規化を行うステップは、
    前記複数の分解レベル中の1つの分解レベルの全係数に、再正規化を達成するために選ばれたスケール依存パラメータを乗じることからなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  23. 前記再正規化を行うステップは、
    再スケーリング前のウェーブレット係数の範囲を計算して再スケーリングを行い、修正された係数を再スケーリング前の範囲へ戻すようにスケーリングすることからなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  24. 前記スケール依存パラメータは単調関数からなる、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理方法。
  25. 前記データ処理方法はさらに、
    ウェーブレット係数を複数の種類に分類するステップを有する、
    ことを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1に記載のデータ処理方法。
  26. 前記種類はテキストと背景であることを特徴とする請求項25に記載のデータ処理方法。
  27. 入力データを処理する装置であって、
    前記入力データにウェーブレット変換を適用して、前記入力データを複数の分解レベルに分解する手段と、
    前記複数の分解レベル中の少なくとも1つの分解レベルの係数に対するノイズ低減を行う手段と、
    前記ノイズ低減を行うステップにてノイズが低減された、前記複数の分解レベル中の少なくとも2つの分解レベルの係数に対して、それら各分解レベル毎に別々のスケール依存パラメータを使ってスケーリングして、前記少なくとも2つの分解レベルの係数を修正する手段と、
    係数に対する再正規化を行う手段と、
    係数を逆変換する手段とを有し、
    前記ノイズ低減を行う手段は、前記複数の分解レベル中の少なくとも1つの分解レベルにおける所定閾値以上の全ての係数を増大させ、かつ、それ以外の係数を0又は0に近い値に設定することを特徴とするデータ処理装置。
  28. 前記入力データは画像データであることを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  29. 前記係数を修正する手段においてスケーリングされる前記2つの分解レベルの係数は、ウェーブレット係数である、
    ことを特徴とする請求項27又は28に記載のデータ処理装置
  30. 前記係数を修正する手段は、
    前記複数の分解レベル中の1つの分解レベルの各係数に第1のスケール依存パラメータを乗じ、
    前記複数の分解レベル中のもう1つの分解レベルの各係数に第2のスケール依存パラメータを乗じる、
    ことを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  31. 前記別々のスケール依存パラメータはそれぞれ次式により決定される、
    μj=2jα
    式中、αの値は鮮明化と平滑化のいずれが係数に適用されるか指示し、jはスケールを示す、
    ことを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  32. αが0より小さいとき、係数に鮮明化が適用され、
    αが0より大きいとき、係数に平滑化が適用される、
    ことを特徴とする請求項31に記載のデータ処理装置。
  33. 前記係数を修正する手段にて、
    前記スケール依存パラメータがある遷移値より大きい場合には係数が平滑化され、
    スケール依存パラメータが前記遷移値より小さい場合には係数が鮮明化される、
    ことを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  34. 前記遷移値は1である、
    ことを特徴とする請求項33に記載のデータ処理装置。
  35. 前記ウェーブレット変換は、臨界標本化離散ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項27乃至34のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  36. 前記ウェーブレット変換は、超完備離散ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項27乃至34のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  37. 前記ウェーブレット変換は、複素ウェーブレット変換である、
    ことを特徴とする請求項27乃至34のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  38. 前記ウェーブレット変換は、臨界標本化ウェーブレット・パケット変換である、
    ことを特徴とする請求項27乃至34のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  39. 前記ウェーブレット変換は、超完備ウェーブレット・パケット変換である、
    ことを特徴とする請求項27乃至34のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  40. 前記分解する手段は、入力データに変換を適用することからなり、 前記変換は選ばれたサブバンドに対して超完備変換である、
    ことを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  41. 入力データに関する情報及び画像ソースに関する情報に基づいて前記スケール依存パラメータを選択する、
    ことを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  42. 前記画像ソースに関する情報は前記画像ソースのモデル点広がり関数である、
    ことを特徴とする請求項41に記載のデータ処理装置。
  43. 前記データに関する情報は前記データにステップ・エッジが含まれていることを示すものである、
    ことを特徴とする請求項41に記載のデータ処理装置。
  44. 前記スケール依存パラメータの選択は、ウェーブレット係数のスケール間減衰の推定値に基づいてなされる、
    ことを特徴とする請求項41に記載のデータ処理装置。
  45. 前記修正する手段は、
    前記スケーリングされた係数に対して、当該係数のスケーリング後に残留しているノイズに着色する、
    ことを特徴とする請求項27乃至44のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  46. 前記別々のスケール依存パラメータは所要の平滑度及び鮮明度に基づくものである、
    ことを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  47. 前記再正規化を行う手段は、少なくとも1つの分解レベルの係数にスカラーを適用することからなる、
    ことを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  48. 前記再正規化を行う手段は、
    前記複数の分解レベル中の1つの分解レベルの全係数に、再正規化を達成するために選ばれたスケール依存パラメータを乗じる、
    ことを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  49. 前記再正規化を行う手段は、
    再スケーリング前のウェーブレット係数の範囲を計算して再スケーリングを行い、修正された係数を再スケーリング前の範囲へ戻すようにスケーリングする、
    ことからなることを特徴とする請求項27に記載のデータ処理装置。
  50. 前記スケール依存パラメータは単調関数からなる、
    ことを特徴とする請求項27又は28に記載のデータ処理装置。
  51. 前記データ処理装置はさらに、
    ウェーブレット係数を複数の種類に分類する手段を有する、
    ことを特徴とする請求項27乃至50のいずれか1に記載のデータ処理装置。
  52. 前記種類はテキストと背景である、
    ことを特徴とする請求項51に記載のデータ処理装置。
  53. 請求項1乃至26のいずれか1に記載のデータ処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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