JP4202400B1 - き裂進展予測方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】試験体に発生したき裂長さを複数の検査者または/及び複数の検査方法により測定し、該測定によって得られたデータと実際のき裂の状態との相関情報を求める相関情報作成工程と、被検査体の検査時において検査者によって測定されたき裂長さと前記相関情報とに基づいて、前記被検査体に発生した実際のき裂長さを推定するき裂長さ推定工程と、き裂長さ推定工程で推定したき裂長さを起点とする前記被検査体におけるき裂進展曲線を推定するき裂進展曲線推定工程とを含むき裂進展予測方法を提供する。
【選択図】 図2
Description
一つ目の問題点は、高温部品のき裂進展挙動が大きくばらつくことである。この原因は、多数の影響因子が実用上不可避なばらつきを有しているためと考えられる。影響因子としては、高温部品の環境因子として高温燃焼ガスや冷却空気の温度や熱伝達率など、材料特性因子として熱伝導率や熱膨張係数など、また特に材料強度特性因子として、疲労き裂発生寿命(繰返し数とき裂発生寿命の関係)やき裂進展速度を規定する材料パラメータなど、さらに形状因子として壁厚などの寸法公差がある。それゆえにあるガスタービンの運転で使用した高温部品で実測された最大き裂長さあるいは最大き裂進展速度のデータは、他の異なる仕様の高温部品運転時若しくは運転条件変更時のき裂進展挙動の予測には使えない。
本発明は、試験体に発生したき裂長さを複数の検査者または/及び複数の検査方法により測定し、該測定によって得られたデータと実際のき裂の状態との相関情報を求める相関情報作成工程と、被検査体の検査時において検査者によって測定されたき裂長さと前記相関情報とに基づいて、前記被検査体に発生した実際のき裂長さを推定するき裂長さ推定工程と、き裂長さ推定工程で推定したき裂長さを起点とする前記被検査体におけるき裂進展曲線を推定するき裂進展曲線推定工程とを含むき裂進展予測方法を提供する。
上記試験体としては、例えば、被検査体と同じ材質等で作成された試験片、或いは、試験用の実物等が一例として挙げられる。この試験体は、試験体に生じたき裂の様子が検査者または/及び検査方法の違いによって、どの程度の誤差をもって測定されるかというような相関情報を得るために用いられるものであればよく、形状や大きさ等は特に限定されない。
このように、本発明によれば、検査者の違いによる測定誤差や検査方法の違いによる測定誤差を加味して測定予測値を推定するので、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。また、上記補修基準を変化させたときのき裂進展の様子や補修コスト等を算出することにより、コストを最小限に抑えることのできる補修基準を決定することが可能となる。
また、本発明のき裂進展予測方法及びプログラムは、例えば、き裂が発生する部品に利用可能なものであり、例えば、ガスタービン等の高温環境下で利用される機械構造物の部品に発生したき裂の進展を予測するのに利用されて好適なものである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るき裂進展予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るき裂進展予測装置は、コンピュータシステムであり、CPU(中央演算処理装置)1、メモリ2、ハードディスク3、入力デバイス4、モニタ5、及びCDD(CD−ROMドライブ)6を備えている。これら各構成要素は、バスライン7を介して接続されている。CPU1は、ハードディスク3に記憶された各プログラムに従いバスライン7を介して各部を制御する。
なお、以下に示すき裂進展予測方法は、き裂進展予測装置が備えるCPU1がハードディスク3に記憶された上記き裂進展予測プログラムをメモリに読み出し、実行することにより、実現されるものである。
ここで、相関情報としては、以下に説明するような、測定によって得られたき裂長さと実際のき裂長さとの相関関係、或いは、測定によって得られたき裂の長さとそのき裂が検出される確率との関係等が一例として挙げられる。
以下、各工程について詳しく説明する。
例えば、この工程では、まず実際の検査とは別に模擬検査を行い、この模擬検査において得られた測定結果に基づいて上記相関情報を求める。
まず、模擬検査で用いられる試験体を用意する(図3のステップSB1)。試験体は、実際の検査時の障害、困難さ、測定誤差を与える要因などが再現されるよう、検査対象となる部位の局所的な形状や表面性状をできるだけ忠実に模擬した試験片等が好ましい。これらには実機での使用・運転またはその他の手法(例えば機械的又は熱応力を繰返し負荷する)により事前にき裂を導入しておく必要がある。このとき模擬検査の目的から、き裂深さ、き裂長さ及びき裂開口部の性状等の各種形態を有するき裂を多数導入しておくことが好ましい。ここで、き裂開口部の性状とは、例えば、黒皮、スケール、加工による粗さなどである。
また試験片の代わりに、実際の運転に供しその結果き裂が発生した実部品またはその実部品から切り出した試験片を上記試験体として用いてもよい。
例えば、実際の検査を数名の検査者が交代で行うような場合には、検査を実施するこれら全ての検査者によるき裂測定を行うことが望ましい。このように、検査に携わる可能性のある全ての検査者がき裂測定を行うことにより、各検査者の測定誤差をデータとして取得することが可能となる。また、検査者は、実際の検査に適用され得る検査方法によって試験体のき裂測定を行う。例えば、目視、磁粉探傷、超音波探傷、染色浸透探傷、蛍光浸透探傷などにより実際の検査時と同様に表面洗浄などの事前処理を行った後に、き裂の検出およびき裂長さの測定を行う。
ここで、「実際のき裂長さ」とは、理想的には検査・測定手段に依存しない真実の長さであるが、実用的には、例えば、以下の方法により取得される。例えば、試験体からき裂発生部を切り出して又はレプリカ等に転写して、光学顕微鏡または走査電子顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡等により高い倍率でき裂長さを測定する。または、試験体から破面出しを行い、破面形状を上記顕微鏡によって測定することでき裂長さを得る。このように、当該工程では、実際のプラントの現場にて適用される前者の検査・測定方法の測定精度よりも高い測定精度が可能な測定方法でき裂長さを測定する。
「実際のき裂長さ」は、力学的に有効な、即ち、き裂進展の計算に適切なK値又はJ積分等のパラメータを導き出せる長さに相当するものである。なお、実際の長さと測定値が異なる原因については、多くの要因があるが、主としてき裂の先端部の開口量が小さいこと、及び表面性状(表面のスケール、加工きずなど)に依存してき裂の先端が特定しにくいことが多い。
入力されたこれらのデータは、ハードディスク3等の記憶装置に保存される。
図4には、相関図の一例が示されている。図4において、横軸は実際のき裂長さ、縦軸は測定されたき裂長さであり、分布aは検査者Xが検査方法Aを採用して測定したき裂長さに対応しており、分布bは検査者Yが検査方法Aを採用して測定したき裂長さに対応しており、分布cは検査者Xが検査方法Bを採用して測定したき裂長さに対応している。ここでは、3つの例しか示していないが、上記模擬検査において行われた検査者と検査方法の組み合わせの数について上述した分布が作成される。
次に、き裂長さ推定工程について説明する。
定期検査の時期が到来し、実際の検査時が行われると、実際の検査時における測定値、検査者及び検査方法の情報が入力デバイス3(図1参照)を介して入力される。これら情報は対応付けられてハードディスク3に保存されるとともに、当該検査者及び検査方法に対応付けられた相関図がハードディスク3から読み出される。
続いて、読み出した相関図を用いて実際のき裂長さを推定する。具体的には、相関図から測定値に対する実際のき裂長さの相関関係がわかるので、この相関に基づいて今回の検査で得られた測定値を補正することにより、実際のき裂長さを推定する。或いは、相関図からある測定値に対する実際のき裂長さの確率分布を求め、この確率分布を用いて実際のき裂長さの確率分布を推定する(図5参照)。ここで、図5は、検査時に測定したき裂長さが実際のき裂長さよりも長く測定される場合を示している。また推定された実際のき裂長さは、図4を元に計算される確率分布に対応して分布するが、説明を容易にするために図5では1点(確定値)として表現している。
この工程では、き裂長さ推定工程において推定された実際のき裂長さを起点として、当該検査時以降におけるき裂進展曲線を算出する。
このとき、き裂進展に及ぼす影響因子及びき裂進展速度については、モンテカルロ法によりき裂進展曲線の確率分布を求める。例えば、材料特性及びそのパラメータ、環境因子及び部材の形状パラメータ等の疲労特性に影響を及ぼす因子全てまたはその一部を影響因子とし、これらの影響因子の統計的データに基づいて影響因子の値を決定し、それらの影響因子を組み合わせて多数の組み合わせ(例えば図9に示すN組の組合せ)を作成し、各組み合わせのデータを用いて、き裂進展曲線を計算する。なお、上記組み合わせの数(例えば図9ではN組)は、できるだけ多いほうが好ましい。
この結果、例えば、図5に示されるように、様々な影響因子が考慮された多数のき裂進展曲線が得られることとなる。
この工程では、き裂進展曲線推定工程で得られた多数のき裂進展曲線を統計処理してき裂長さの確率分布を求め、この確率分布に基づいて補修基準を決定する。補修基準とは検査にて検出された欠陥をどのように処置するかを定める基準であり、具体的には欠陥の削除や溶接補修等何らかの処置を行わなければならないと判断できる寸法の下限値である。本発明においては補修基準の具体例として、許容き裂長さAcrを取り上げる。
次に、本発明の第2の実施形態に係るき裂進展予測方法及びプログラムについて図を参照して説明する。
本実施形態に係るき裂進展予測装置は、上述した第1の実施形態と同様、図1に示したハードウェア構成を備え、CPU1がハードディスク3に格納されているき裂進展予測プログラムを読み出して実行することにより以下に示すき裂進展予測方法を実現させる。
本実施形態に係るき裂進展予測方法は、高温環境下で使用される高温部品の状態を使用開始時からシミュレーションすることにより、高温部品に発生するき裂長さの時系列変化を予測するものである。より具体的には、ガスタービン高温部品が新品の時からガスタービンの起動停止を伴う運転によってき裂が発生し、定期検査にてき裂長さが測定され、その結果に基づいて補修等の処置の必要性を判断し、補修が必要と判断されたものは補修が行われ、その後再び運転が行われるという一連の時系列変化をシミュレートするものであり、き裂進展曲線、換言すると、き裂長さの起動停止回数に対する変化の確率分布を計算シミュレーションで予測するものである。
この工程は、対象部位における疲労特性すなわちき裂の発生および進展挙動に影響を及ぼす因子に関して、モンテカルロ法による確率論的手法を行うためのデータを準備する工程である。対象部位及びその近傍の温度及び応力を予測するために必要なパラメータの統計処理を行う。必要なパラメータとして、材料特性因子、境界条件因子及び形状因子がある。材料特性因子として熱伝導率、熱膨張率、弾性係数などが、境界条件因子として、燃焼ガスのガス圧、ガス温度、燃焼ガスと部品表面との熱伝達率並びに冷却空気のガス圧、ガス温度、冷却空気と部品表面との熱伝達率などが、形状因子としては対象部位の壁厚などがある。これらのデータは当該発明方法の実施のためだけに得た実験若しくは解析データのみならず、従来蓄積されたデータ及び公知の文献から入手したものをも含んでいてもよい。また、後述する統計処理をするのにデータの数は多い方がよい。
この工程では、対象部品の疲労特性を予測するためのパラメータについて処理が行われる。疲労特性とは、き裂発生に関する特性と、き裂進展に関する特性とからなる。これらの特性を予測するためには疲労き裂発生寿命及び疲労き裂進展寿命を求める必要があり、前者に対しては応力範囲若しくはひずみ範囲と疲労き裂発生寿命との関係式、後者に対しては、応力拡大係数範囲(若しくは繰返しJ積分範囲)とき裂進展速度との関係式が適用される。これらの式は、実際の部品又は実際の部品と同等の金属組織を有する材料素材から採取した小型試験体による疲労試験データを基に決定される。
Δεp×Nf^α=Ci (1)
上記(1)式において、Δεpは塑性ひずみ範囲、Nfは小型試験体の破断寿命である。ここでα及びCiは温度に依存する材料定数であり、疲労き裂発生寿命を予測するためのパラメータである。α及びCiを温度の関数として定式化し、この式の定数を疲労き裂発生寿命を予測するためのパラメータとしてもよい。なお小型試験体の破断寿命Nfは、実部品のき裂発生寿命に相当するとみなされるのが一般的である(例えば、日本材料学会、”高温強度の基礎”p.61、1999年10月20日発行参照。)。また、ひずみの代わりに応力を用いた関係式も公知である。
da/dN=Cp×ΔK^m (2)
上記(2)式において、da/dNはき裂進展速度、ΔKは応力拡大係数範囲である。ここでCp及びmは材料定数であり、温度のみならず応力(若しくはひずみ)波形に依存する。
この工程は、想定する検査方法及び検査者の違いによるき裂長さの測定値と実際のき裂長さとの関係および実際のき裂長さと欠陥検出確率との関係のうちの少なくとも一方を得る工程である。この工程において、検査方法及び検査者の違いによるき裂長さの測定値と実際のき裂長さとの相関関係を得るための手順については、上述した第1の実施形態のステップSA1(図2参照)と同様であるので説明を省略し、欠陥検出確率と実際のき裂長さとの関係について以下に説明する。
このように、測定能力の異なる複数の検査者によって試験体の測定を行わせ、これらの測定値をデータとして取得することで、後段で行われる確率分布等の統計処理の信頼性を向上させることが可能となる。なお、測定されたき裂長さが0の場合、き裂が存在する可能性は必ずしも0であるとは言えない。この場合、実際のき裂長さとき裂検出確率の関係をベースに確率論的にあるき裂長さを有するき裂の存在を仮定しても良い。
この工程では、上述した各工程(図7のステップSC1〜SC3)で求められた各パラメータの統計処理結果をもとに、モンテカルロ法を適用してき裂進展曲線を得るためのデータを作成する。モンテカルロ法とは、乱数などの偶発的な確率変数を用いて試行錯誤的に問題を解いていく数値計算法のことであり、本発明のようにばらつきを含む統計的なデータを予測する手段として使われることもある(例えば、特開2005−26250号公報等参照)。
パラメータである高温ガス圧、熱伝導率などには、上記データ準備工程(図6のステップSC1)及び準備統計工程(図6のステップSC2)にて作成された各パラメータの確率分布を基に数値がランダムに割り振られており、N組の組み合わせ全てで見れば、その確率分布はデータ準備工程及び準備統計工程にて作成された各パラメータの確率分布(ここでは例として正規分布)とほぼ一致するようになる。
この工程では、データ組み合わせ工程で作成したN組のデータの組み合わせを入力してN個のき裂進展曲線を求める。具体的は、第1組目の組み合わせにおける材料特性因子、境界条件因子及び形状因子のデータを入力しもしくは読み取らせ、熱・応力解析を行い、部品の対象部位における温度分布及び応力分布を求める。得られた温度分布と応力分布を用い、疲労特性を予測するためのパラメータを入力しもしくは読み取らせ、まず始めにき裂が発生する起動停止回数を例えば前述のManson−Coffinの式より求める。
次に、得られた温度分布と応力分布と、ガスタービンの運転条件とを入力し、準備統計工程で求めた応力、温度及び材料定数などのパラメータを前述のき裂進展速度の式に代入し、このき裂進展速度式により、例えば差分法によりき裂発生後の起動停止回数とき裂長さの関係を求める。
ただし、限界き裂長さAmaxが例えば共振による低応力高サイクル疲労き裂進展開始限界で決まるとの考えで定義している場合には、共振による振動応力及びき裂進展下限界応力拡大係数(ΔKth)を確率変数のパラメータとし、これらをもとに破損限界き裂長さをパラメータとして求めてもよい。
この工程では、第1き裂進展曲線算出工程で求めたN個のき裂進展曲線を用いて統計処理を行い、疲労き裂長さの確率分布を求める。ここで言う確率分布とは、き裂が特定の長さに達する起動停止回数の確率分布若しくは特定の起動停止回数におけるき裂長さの確率分布であり、特定のき裂長さ及び特定の起動停止回数は用途に応じて定めればよい。ここでは、本実施形態に係る目的から定期検査時に相当する起動停止回数時の長さを対象としている。
この工程では、最初の定期検査時に相当する起動停止回数時(図11におけるT1)におけるき裂長さを、上記相関情報作成工程(図7のステップSC3)で作成した相関関係を用いて補正することにより測定予測値を算出する。例えば、上述した第1き裂進展曲線推定工程で求められる各き裂進展曲線は、実際のき裂長さであるとみなしている。つまり、検査者や検査方法等による測定誤差を含まない値であり、高温部品が破損するか否かは実際のき裂長さによって決まる。
この工程は、測定予測値算出工程で算出された測定予測値が、予め設定されている補修基準以内か否かを判定し、この判定結果に応じて実際のき裂長さを変更させる。例えば、これはシミュレーションを実際の検査にできるだけ近づけるための工程である。例えば、実際の検査においては、検査者によって測定されたき裂長さが補修基準(許容き裂長さ)よりも大きかった場合には、そのき裂を溶接、グラインダーがけ等によって除去する補修作業が行われることとなる。補修作業が行われることにより、今までそこに存在していたき裂は小さく或いは除去されることとなる。
また、測定予測値P2が補修基準Acr以下であった場合には、実際のき裂長さの値にかかわらず測定予測値P2の変更は行わず、現在の値、つまり実際のき裂長さP1に基づいて以降の工程が実行される。図16及び図17に代表的なケースを示す。
また、実際のき裂長さ変更工程では、相関情報作成工程で作成された実際のき裂長さと欠陥検出率との相関に基づいて、実際のき裂長さを変更するか否かを決定することとしてもよい。例えば、検査者等によっては、大きな傷であっても見逃すことが考えられる。例えば、図8に示されたグラフにおいて、2mmのき裂が発生していた場合、検査者Aであれば、55%の割合でこの傷を発見し、45%の割合で見逃すこととなる。このように、検査者及び実際のき裂長さに応じてその傷が検出されるのか、また、検出されても測定値にどのくらいの誤差が含まれるのかを確率分布等によって判断し、測定予測値を決定することとしてもよい。
この工程では、測定予測値変更工程によって実際のき裂長さが変更されなかった場合には現在の値P1を起点としてき裂進展曲線を算出する(図14参照)。この算出方法は、上述した第1き裂進展曲線推定工程と同様である。このとき、溶接補修を模擬して材質を変更してもよい。具体的には、き裂進展速度のパラメータ及び疲労き裂発生寿命の式のパラメータを変更することとしてもよい。き裂進展計算は、次の定期検査に相当する起動停止回数に達するまで行われ、検査時に達した時点で上述した測定予測値算出工程に戻り、それ以降の処理を繰り返し行う。または、これに代えて、き裂長さが限界き裂長さAmaxに達するまで行うこととしてもよい。
上記測定予測値算出工程、測定予測値変更工程、第2き裂進展曲線推定工程については、実際のき裂長さP1を一例に挙げて説明してきたが、N個のき裂長さ(図11参照)のそれぞれについて上記工程が行われることにより、様々な要因を考慮したき裂進展の状況を予測することが可能となる。
この工程では、破損及び補修による全体のコスト(リスク)を最小にするように補修基準を適正化することを目的とする。全体のコストは図18に示されるもので後述する。
上述した全ての工程を終え、各組合せにおけるき裂進展曲線を求めることにより次回定期検査前に破損に至る(き裂長さが限界き裂長さに達する)ものを決定し、そのようなき裂進展曲線の比率を求めることで次回定期検査相当時までに破損する確率(破損率)を決定する。補修基準とその補修基準に基づく破損率が求まれば全体としてのコストを算出することができる。そこで補修基準を変えてそのときの全体のコストを求めることにより、全体としてのコストが最小となる補修基準を決定することができる。具体的には、測定予測値算出工程で参照される補修基準(許容き裂長さ)を再設定し、図14から図17にしたがって必要なものはき裂長さを修正し(SC8)、第2き裂進展曲線推定工程(SC9)を行うという処理を繰り返し実行する。このような処理を何度か繰り返すことにより、補修基準と破損率との関係を求め、補修基準と全体のコストとの関係を求める。
このように、検査者の違いによる測定誤差や検査方法の違いによる測定誤差を加味して測定予測値を推定するので、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。また、高い精度でシミュレートされた結果を用いて補修コスト等を算出することにより、コストを最小限に抑えることのできる補修基準を精度よく決定することが可能となる。
例えば、上述してきた各種工程は、図1に示したように、大型計算機の端末若しくはパーソナルコンピュータなどの計算機を用いて手作業で実行することも可能であるが、あらかじめ人の判断に頼らざるを得ない各種コスト若しくはコスト計算式等の入力を行うことで、バッチ処理等によって自動的に最終的に補修基準を得ることが可能となる。
また、上述したき裂進展予測装置と社内LAN又はインターネット回線をつなげ、各種の実験データベースや他機関のデータベースからデータを入手できるようにしておけば効率的である。
また実施形態では高温環境下で使用されるガスタービン部品等の高温機器を対象に説明したが、通常の室温又は低温環境下で使用される構造体や部品に関するき裂進展挙動およびその検査員による結果の処理に対しても本発明を適用できることは言うまでもない。
2 メモリ
3 ハードディスク
4 入力デバイス
5 モニタ
6 CDD
7 バスライン
Claims (9)
- 試験体に発生したき裂長さを複数の検査者または/及び複数の検査方法により測定し、該測定によって得られたデータと実際のき裂の状態との相関情報を求める相関情報作成工程と、
被検査体の検査時において検査者によって測定されたき裂長さと前記相関情報とに基づいて、前記被検査体に発生した実際のき裂長さを推定するき裂長さ推定工程と、
き裂長さ推定工程で推定したき裂長さを起点とする前記被検査体におけるき裂進展曲線を推定するき裂進展曲線推定工程と
を含むき裂進展予測方法。 - 前記き裂進展曲線推定工程は、前記検査時以降の起動停止回数とき裂長さとの関係を求めるためのき裂発生寿命及びき裂進展速度を決定するパラメータの一部もしくは全てを確率変数とし、モンテカルロ法を適用して前記き裂進展曲線を確率的に予測する請求項1に記載のき裂進展予測方法。
- 前記相関情報作成工程では、前記相関情報を前記検査方法毎または/及び前記検査者の測定能力毎に作成し、
前記き裂長さ推定工程では、検査時に適用した前記検査方法または/及び検査時に測定を行った検査者の測定能力に対応する前記相関情報を用いて前記実際のき裂長さを推定する請求項1または請求項2に記載のき裂進展予測方法。 - 被検査体の状態を使用開始時からシミュレーションすることにより、前記被検査体に発生するき裂長さの時系列変化を予測するき裂進展予測方法であって、
前記被検査体の使用開始時からのき裂進展曲線を推定する第1き裂進展曲線推定工程と、
試験体に発生したき裂長さを複数の検査者または複数の検査方法により測定し、該測定によって得られたデータと実際のき裂の状態との相関情報を求める相関情報作成工程と、
前記第1き裂進展曲線推定工程において予測された検査時における実際のき裂長さを前記相関情報を用いて補正することにより測定予測値を算出する測定予測値算出工程と、
前記測定予測値が予め設定されている補修基準以内か否かを判定し、判定結果に応じて検査時における実際のき裂長さを変更する実際のき裂長さ変更工程と
を含むき裂進展予測方法。 - 前記実際のき裂長さ変更工程は、前記検査時における測定予測値が前記補修基準を超えていた場合に、当該き裂が補修されるとみなして前記実際のき裂長さをゼロまたはより小さな値に変更する請求項4に記載のき裂進展予測方法。
- 前記測定予測値が前記補修基準以内であった場合に、前記実際のき裂長さを起点とするき裂進展曲線を推定する第2き裂進展曲線推定工程を備える請求項4または請求項5に記載のき裂進展予測方法。
- 前記第1き裂進展曲線推定工程及び前記第2き裂進展曲線推定工程の少なくとも一方は、起動停止回数とき裂長さとの関係を求めるためのき裂発生寿命及びき裂進展速度を決定するパラメータの一部もしくは全てを確率変数とし、モンテカルロ法を適用して前記き裂進展曲線を確率的に予測する請求項6に記載のき裂進展予測方法。
- 複数の検査者または/及び複数の検査方法により測定された、試験体に発生したき裂長さのデータと実際のき裂長さとの相関情報を求めるステップと、
被検査体の検査時において検査者によって測定されたき裂長さと前記相関情報とに基づいて前記被検査体に発生した実際のき裂長さを推定するステップと、
推定した前記き裂長さを起点とする前記被検査体におけるき裂進展曲線を推定するステップと
をコンピュータに実行させるき裂進展予測プログラム。 - 被検査体の状態を使用開始時からシミュレーションすることにより、前記被検査体に発生するき裂長さの時系列変化を予測するためのき裂進展予測プログラムであって、
前記被検査体の使用開始時からのき裂進展曲線を推定するステップと、
複数の検査者または複数の検査方法により測定された、試験体に発生したき裂長さのデータと実際のき裂長さとの相関情報を求めるステップと、
前記き裂進展曲線を推定するステップにおいて予測された検査時における前記被検査体に発生した実際のき裂長さを前記相関情報を用いて補正することにより測定予測値を算出するステップと、
前記測定予測値が予め設定されている補修基準以内か否かを判定し、判定結果に応じて検査時における実際のき裂長さを変更するステップと
をコンピュータに実行させるき裂進展予測プログラム。
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