JP4202115B2 - 新規ベンゾトリアゾール化合物、その製造方法及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1分子中に2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール構造を2ヶ以上有する新規ベンゾトリアゾール化合物、その製造方法及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、需要度の多いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の化学修飾に関する報告の中に、1分子中に2ヶ以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール構造を有するものが提供されている。これは、近年になってポリマー等の使用条件がより過酷になり、添加してある紫外線吸収剤もその過酷な条件に耐えうることが必要になってきたからである。すなわち、紫外線吸収剤により高度な耐熱性(高温安定性)、対蒸散性、対浸出性等があるけれども、溶剤には依然として溶けやすい、添加対象物質と混合しやすい、水中に分散しやすい等の性質も同時に保持されているようなことが要求されてきたからである。
【0003】
そのような目的を達成する紫外線吸収剤として、1,3−ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル]−2−イミダゾリジノン(V)、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]メタン(VI)、1,2−ビス{[3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−フェニル]ベンゾトリアゾール−5−イルチオ}エタン(VII)、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル]スベラート(VIII)、ビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,4−フェニレンジアクリラート(IX)、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]テレフタラート(X)、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]−3,3’−ジチオジプロピオナート(XI)、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]アジパート(XII)等が挙げられる(文献1参照)。
【0004】
【文献1】
谷本,染料と薬品,41,295(1996)
【0005】
また、トリス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(XIII)、トリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(XIV)等も報告されている(文献2)。
【0006】
【文献2】
特開2000−178276号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記化合物のうち、実際に市販されているのはビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]メタンだけである。
【0008】
1,3−ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル]−2−イミダゾリジノン、1,2−ビス{[3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−フェニル]ベンゾトリアゾール−5−イルチオ}エタン、トリス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン及びトリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジンは、合成に用いる原料が高価で経済性に乏しい、あるいは合成に熟練を要する、あるいは使用しやすい結晶状態で得ることが難しい等の理由で市販されていない。
【0009】
ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル]スベラート、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]テレフタラート、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]−3,3’−ジチオジプロピオナート、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジル]アジパートは、反応の原料に用いている2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ヒドロキシメチル−4−メチルフェノールおよび2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ヒドロキシメチル−4−メトキシフェノールの合成が一般的に知られていない等の理由でこれらが上市されているのはそれなりの理由があるからである。
【0010】
また、ビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,4−フェニレンジアクリラートは、高温安定性に疑問がある。すなわち、合成しやすい、外観上美しい結晶としてえられる、経済性が比較的良い(安く出来る)、紫外線吸収能力が大きい等のことを満足する紫外線吸収剤を合成することは容易ではない。
【0011】
しかし、添加対象物の種類が多くなればなる程、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]メタン以外に市販されうる紫外線吸収剤も必要となるであろう。
【0012】
本発明の課題は、ビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]メタンと同様に実際に市場に提供することができ、高度な耐熱性、対蒸散性等を有し、合成しやすくしかも分子量の大きい割合には溶剤溶解性がよい、1分子中に2ヶ以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール構造を有する新規ベンゾトリアゾール化合物、その製造方法及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明者らは、4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールおよび4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールに注目した。すなわち、同各化合物のC1−位のOH基は、C3−位のOH基より反応しやすく、明らかに反応性に差異があることである。このようなOH基とカルボン酸クロリドとの脱塩酸反応はベンゼン等の溶媒中でトリエチルアミン等の第3アミンを用いて円滑に進行する。この方法を用いて4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール、あるいは4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールと、4数種の芳香族ジカルボン酸ジクロリドを、そして代わりの1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリクロリドを脱塩酸縮合させたものである。この方法で1分子中に2ヶ以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール構造を有する新規ベンゾトリアゾール化合物乃を容易に一段階で合成することができる。
【0014】
本発明は、次式で示されるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラート及びビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラートのいずれかの化合物で特定される新規ベンゾトリアゾール化合物又は次のいずれかの化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0015】
【化9】
【0016】
(但し、上記式中、XはH又はClを示し、Arは
【化10】
(a)〜(d) のいずれかの基であることを示す。)
【0017】
すなわち、本発明は、次のいずれかの化合物からなる新規ベンゾトリアゾール化合物又は次のいずれかの化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia):前記式中、XがH、Arが(a)構造の化合物であるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]イソフタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(Ib):前記式中、XがH、Arが(b)構造の化合物であるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]テレフタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(Ic):前記式中、XがH、Arが(c)構造の化合物であるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]フタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(Id):前記式中、XがH、Arが(d)構造の化合物であるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−2,6−ナフタレンジカルボキシラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(IIa):前記式中、XがCl、Arが(a)構造の化合物であるビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]イソフタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(IIb):前記式中、XがCl、Arが(b)構造の化合物であるビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]テレフタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(IIc):前記式中、XがCl、Arが(c)構造の化合物であるビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]フタラート、
新規ベンゾトリアゾール化合物(IId):前記式中、XがCl、Arが(d)構造の化合物であるビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−2,6−ナフタレンジカルボキシラート
【0018】
また本発明は、次式で示されるトリス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート及びトリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラートのいずれかの化合物で特定される新規ベンゾトリアゾール化合物又は次のいずれかの化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0019】
【化11】
(但し、上記式中、XはH又はClを示す。)
【0020】
すなわち、本発明は、次のいずれかの化合物からなる新規ベンゾトリアゾール化合物又は次のいずれかの化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
新規ベンゾトリアゾール(III):トリス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート
新規ベンゾトリアゾール(IV):トリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート
【0021】
これらの各新規ベンゾトリアゾール化合物は、従来のビス[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]メタンと同様に実際に市場に提供することができるものであり、また高度な耐熱性、対蒸散性等を有し、合成しやすくしかも分子量の大きい割合には溶剤溶解性がよい効果を発揮する。
【0022】
さらにまた、特にこれらの各新規ベンゾトリアゾール化合物は、フリース反応を起こすことが可能であり、これにより経時的に紫外線吸収能力が増大するフリース反応物質を生み出し、紫外線吸収特性が増大する特異的な作用効果を発揮する。
【0023】
例えば、前記化合物(Ia)及び前記化合物(IIa)についてそれぞれ、無水塩化アルミニウムを用いてのフリース反応を試みると、次式の反応を起こし、式中、前記化合物(Ia)ではXがHである新規ベンゾトリアゾール化合物(V)、前記化合物(IIa)ではXがClである新規ベンゾトリアゾール化合物(VI)が生成する。なお、下式でXはH又はClを示している。
【0024】
【化12】
【0025】
得られた前記化合物(V)および前記化合物(VI)については多量のN,N−ジメチルホルムアミドで再晶析しうるが、精製効果はあまり認められないことから、未精製のままで紫外吸収スペクトルを測定した。その結果、前記化合物(Ia)を前記化合物(V)と、そして前記化合物(IIa)を前記化合物(VI)と比較した場合に紫外吸収スペクトルにおいて明らかな改善が認められた。このことから無水塩化アルミニウムを用いてのフリース反応が認定できた。
【0026】
従って、前記化合物(Ia)および前記化合物(IIa)は、添加対象物中において光フリース反応を起こす可能性を保有しているもので、他の前記新規ベンゾトリアゾール化合物も含め、本発明の化合物又は紫外線吸収剤は紫外線吸収特性が更に優れたフリース反応物を生み出すことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の前記化合物(Ia)〜(Id)、前記化合物(IIa)〜(IId)でそれぞれ示されるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラート及びビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラートは、次式で示される6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール及び6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールのいずれかの化合物で特定されるベンゾトリアゾール誘導体と、
【化13】
(但し、上記式中、XはH又はClを示す。)
次式で示される芳香族ジカルボン酸ジクロリドの第3アミンを用いて、脱塩酸縮合によって合成される。
【化14】
(但し、上記式中、XはH又はClを示し、Arは
【化15】
(a)〜(d) のいずれかの基であることを示す。)
【0028】
反応式は下記の通りである。
【化16】
(但し、上記式中、XはH又はClを示し、Arは前記の(a)〜(d)に示されるいずれかの構造である。
【0029】
上記脱塩酸反応はベンゼン等の溶媒中でトリエチルアミン等の第3アミンを用いて進行することができる。溶媒はベンゼンに限定されず、例えばトルエン、キシレン等を用いることができる。また、第3アミンも上記のトリエチルアミン(NEt3)に限定されず、N,N―ジメチルアニリン、2,4,6−コリジン等を用いることができる。
【0030】
また本発明の前記化合物(III)でそれぞれ示されるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラート、及び前記化合物(IV)で示されるビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラートも、次式で示される6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール及び6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールのいずれかの化合物で特定されるベンゾトリアゾール誘導体と、
【化17】
(但し、上記式中、XはH又はClを示す。)
次式で示される1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリクロリドの第3アミンを用いて、脱塩酸縮合によって合成することができる。
【化18】
【0031】
反応式は下記の通りである。
【化19】
(但し、上記式中、XはH又はClを示す。)
【0032】
上記脱塩酸反応も、前記と同様に、ベンゼン等の溶媒中でトリエチルアミン等の第3アミンを用いて進行することができる。かかる場合も、溶媒はベンゼンに限定されず、例えばトルエン、キシレン等を用いることができる。また、第3アミンも上記のトリエチルアミン(NEt3)に限定されず、N,N―ジメチルアニリン、2,4,6−コリジン等を用いることができる。
【0033】
なお、本発明の新規ベンゾトリアゾール化合物は、光安定化を必要とする有機材料等の各種材料に用いることができる。特に限定されるものどはないが、それらを若干例示すると、オレフィンポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、これらの各共重合体である。これらの材料に対しては、例えば溶融混合するという方法により主として添加することができる。勿論、適当な溶剤に溶かして添加することもできる。添加の割合は、添加対象物に0.01〜3部、好ましくは0.05〜1部の割合での使用が好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に係る各ベンゾトリアゾール誘導体は、元素分析により確認したものである。元素分析は、柳本社製の商品名「MT−3型」の装置を用いた。
(実施例1)
還流冷却器、温度計を備え付けた1000mlの四つ口フラスコに、ベンゼン750mlを加え、撹拌しながら室温で4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール45.4g(0.2モル)を加えて分散させた。次いで、トリエチルアミン20.2g(0.2モル)を加えてレモンイエローの縣濁液となった内容物中に、20℃〜30℃でイソフタル酸ジクロリド20.1gを5倍量のベンゼンに溶解させて溶液としたものを、圧力平衡型滴下ロートを使用して一時間で滴下した。
【0035】
20〜30℃の反応温度を維持しながら8時間撹拌した後、生成したスラリー状の結晶と液層部をサンプリングして薄層クロマトグラフィーにより未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールがわずかであることを確認し、ブフナーロートにて結晶を濾過し取った。約500mlのベンゼンで良く洗浄した後1000mlの四つ口フラスコにウエットケーキを入れ、500mlのメタノールで50〜60℃で分散させ、そのスラリー液から未反応の2−(2,4ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを抽出し、再度ブフナーロートにて微黄白色の結晶を濾過し取り、乾燥させて目的物である前記新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)を収率71%で得た。
【0036】
この結晶は微黄白色粉末状であり融点264.4〜266.4℃であった。単離した結晶5gとN,N−ジメチルホルムアミド100mlを500mlの四つ口フラスコに入れ約130℃まで加熱して溶解させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過し、約80%量のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧回収して析出した微黄白色の結晶を含む残溜を5℃で濾過し取った。
【0037】
N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、メタノールで洗浄し、乾燥させ、精製した淡黄色の粉末状結晶3.9gを得た。精製収率39%、融点は、269.4〜271.1℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H20N6O6としての計算値 C(%) 65.75;H(%) 3.45;N(%) 14.38
実測値C(%) 65.49;H(%)3.38;N(%) 14.23
【0038】
(実施例2)
還流冷却器、温度計を備え付けた1000mlの四つ口フラスコに、ベンゼン750mlを加え、撹拌しながら室温で4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール45.4g(0.2モル)を加えて分散させた。次いで、トリエチルアミン20.2g(0.2モル)を加えてレモンイエローの縣濁液となった内容物中に20℃〜30℃でテレフタル酸ジクロリド20.1gを5倍量のベンゼンに溶解させて溶液としたものを、圧力平衡型滴下ロートを使用して1時間で滴下した。
【0039】
20〜30℃の反応温度を維持しながら8時間撹拌した後、生成したスラリー状の結晶と液層部をサンプリングして薄層クロマトグラフィーにより未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールがわずかであることを確認し、ブフナーロートにて結晶を濾過し取った。
【0040】
実施例1と同様にメタノールで洗浄処理して未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを除去した後、乾燥して目的物である微灰白色の前記新規ベンゾトリアゾール化合物(Ib)を収率70%で得た。単離した結晶5gとN,N−ジメチルホルムアミド100mlを500mlの四つ口フラスコに入れ約130℃まで加熱して溶解させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過し、約80%量のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧回収して析出した微黄白色の結晶を含む残溜を5℃で濾過し取った。
【0041】
N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、メタノールで洗浄し、乾燥させ、精製した微黄白色の粉末状結晶3.9gを得た。精製収率39%、融点>300℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H20N6O6としての計算値 C(%) 65.75;H(%) 3.45;N(%) 14.38
実測値 C(%) 65.57;H(%)3.42;N(%) 14.29
【0042】
(実施例3)
還流冷却器、温度計を備え付けた1000mlの四つ口フラスコに、ベンゼン750mlを加え、撹拌しながら室温で4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール45.4g(0.2モル)を加えて分散させた。
【0043】
次いでトリエチルアミン20.2g(0.2モル)を加えてレモンイエローの縣濁液となった内容物中に20℃〜30℃でフタル酸ジクロリド20.1gを5倍量のベンゼンに溶解させて溶液としたものを、圧力平衡型滴下ロートを使用して1時間で滴下した。
【0044】
20〜30℃の反応温度を維持しながら8時間撹拌した後、生成したスラリー状の結晶と液層部をサンプリングして薄層クロマトグラフィーにより未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールがわずかであることを確認し、ブフナーロートにて結晶を濾過し取った。
【0045】
実施例1と同様にメタノールで洗浄処理して未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを除去した後、乾燥して目的物である前記新規ベンゾトリアゾール化合物(Ic)を収率70%で得た。
【0046】
この結晶は微灰黄色粉末状であり融点278.4〜286.5℃であった。次に、単離した結晶5gとN,N−ジメチルホルムアミド100mlを500mlの四つ口フラスコに入れ約130℃まで加熱して溶解させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過し、約80%量のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧回収して析出した微黄白色の結晶を含む残溜を5℃で濾過し取った。
【0047】
N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、メタノールで洗浄し、乾燥させ、精製した微黄色の粉末状結晶3.9gを得た。精製収率39%、融点>300℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H20N6O6としての計算値 C(%)65.75;H(%)3.45;N(%) 14.38
実測値 C(%)65.70;H(%)3.36 ;N(%)14.12
【0048】
(実施例4)
還流冷却器、温度計を備え付けた1000mlの四つ口フラスコに、ベンゼン500mlを加え、撹拌しながら室温で4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール22.7g(0.1モル)を加えて分散させた。
【0049】
次いでトリエチルアミン10.1g(0.1モル)を加えてレモンイエローの縣濁液となった内容物中に20℃〜30℃で2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド12.65g(0.05モル)を5倍量のベンゼンに溶解させて溶液としたものを、圧力平衡型滴下ロートを使用して1時間で滴下した。
【0050】
20〜30℃の反応温度を維持しながら8時間撹拌した後、生成したスラリー状の結晶と液層部をサンプリングして薄層クロマトグラフィーにより未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールがわずかであることを確認し、ブフナーロートにて結晶を濾過し取った。
【0051】
実施例1と同様にメタノールで洗浄処理して未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを除去した後、乾燥して目的物である前記新規ベンゾトリアゾール化合物(Id)を収率46%で得た。
【0052】
次に、単離した結晶5gとN,N−ジメチルホルムアミド100mlを500mlの四つ口フラスコに入れ約130℃まで加熱して溶解させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過し、約80%量のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧回収して析出した微黄白色の結晶を5℃において濾過し取った。
【0053】
N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、メタノールで洗浄し、乾燥させ、精製した微赤黄色の粉末状結晶3.9gを得た。精製収率39%、融点>300℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C36H22N6O6としての計算値 C(%) 68.14;H(%) 3.49;N(%) 13.24
実測値 C(%) 68.45;H(%)3.53;N(%) 13.54
【0054】
(実施例5)
原料として4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを使用したこと以外は実施例1と同様におこない、目的物の前記新規ベンゾトリアゾール化合物(IIa)を収率70%で得た。
【0055】
得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、融点>300℃の微黄白色粉末状であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H18N6O6Cl2としての計算値 C(%) 58.82;H(%)2.78;N(%) 12.86
実測値 C(%)58.85;H(%)2.68;N(%)12.71
【0056】
(実施例6)
原料として4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを使用したこと以外は実施例2と同様におこない、目的物の新規ベンゾトリアゾール化合物(IIb)を収率87%で得た。
【0057】
得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、融点>300℃の微黄白色粉末状であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H18N6O6Cl2としての計算値 C(%) 58.82;H(%)2.78;N(%)12.86
実測値 C(%)58.56;H(%)2.73;N(%)12.90
【0058】
(実施例7)
原料として4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを使用したこと以外は実施例3と同様に行った。目的物の新規ベンゾトリアゾール化合物(IIc)を収率98%で得た。
【0059】
得られた結晶はN,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、融点266.9〜268.1℃の微黄白色粉末状であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C32H18N6O6Cl2としての計算値 C(%) 58.82;H(%)2.78;N(%)12.86
実測値 C(%)59.07;H(%)2.74;N(%)12.99
【0060】
(実施例8)
反応試薬は2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリドを使用し、原料として4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを使用したこと以外は実施例4と同様に行った。目的物の新規ベンゾトリアゾール化合物(IId)を収率34%で得た。
【0061】
N,N−ジメチルホルムアミドで再結晶し、融点>300℃の微黄白色粉末状の結晶を得た。このものの元素分析データはつぎのとおりである。
C36H20N6O6Cl2としての計算値 C(%)61.46;H(%) 2.87;N(%)11.95
実測値 C(%)61.22;H(%)2.86;N(%)11.69
【0062】
(実施例9)
還流冷却器、温度計を備え付けた1000mlの四つ口フラスコに、ベンゼン750mlを加え、撹拌しながら室温で4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール64.2g(0.28モル)を加えて分散させた。
【0063】
次いでトリエチルアミン28.6g(0.28モル)を加えてレモンイエローの縣濁液となった内容物中に20℃〜30℃で1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリクロリド25.0g(0.094モル)を5倍量のベンゼンに溶解させて溶液としたものを、圧力平衡型滴下ロートを使用して1時間で滴下した。
【0064】
20〜30℃の反応温度を維持しながら8時間撹拌した後、生成したスラリー状の結晶と液層部をサンプリングして薄層クロマトグラフィーにより未反応の2−(2,4ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールがわずかであることを確認し、ブフナーロートにて結晶を濾過し取った。
【0065】
実施例1と同様にメタノールで洗浄処理して未反応の4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを除去した後、乾燥して目的物である新規ベンゾトリアゾール化合物(III)を収率70%で得た。単離した結晶5gとN,N−ジメチルホルムアミド100mlを500mlの四つ口フラスコに入れ約130℃まで加熱して溶解させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過し、約80%量のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧回収して析出した微黄白色の結晶を含む残溜を5℃で濾過し取った。
【0066】
N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、メタノールで洗浄し、乾燥させ、精製した淡黄色の粉末状結晶3.9gを得た。精製収率39%、融点>300℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。C45H27N9O9としての計算値 C(%) 64.52;H(%) 3.25;N(%)15.05
実測値 C(%)64.80;H(%)3.15;N(%)14.98
【0067】
(実施例10)
原料として4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノールを使用したこと以外は実施例9と同様に行った。目的物の新規ベンゾトリアゾール化合物(IV)を収率72.1%で得た。
【0068】
この結晶は灰白色粉末状であり融点276〜277℃であった。このものの元素分析データはつぎのとおりである。C45H24N9O9Cl3としての計算値 C(%) 57.43;H(%) 2.57;N(%)13.39
実測値 C(%)57.13;H(%)2.44;N(%)13.26
【0069】
(実施例11)
実施例1で合成した新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)6.0g(0.01モル)、ニトロベンゼン50ml、無水塩化アルミニウム4.6g(0.035モル)を還流冷却器と温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに入れ、65℃で8時間撹拌した後、無水塩化アルミニウム4.6g(0.035モル)を追加して120℃まで温度を上げた後、さらに8時間反応させた。反応した油状物を80℃まで冷却した後、水100mlを加えて撹拌し、析出した結晶を濾過し取った。
【0070】
ニトロベンゼンと水で良く洗浄した後、乾燥させ、収率72%で融点が204℃の微褐黄色粉末状結晶を得た。
【0071】
前記化合物(Ia)と上記結晶の生成物についてそれぞれ紫外吸収スペクトルを測定した。その結果を、図1及び図2に示す。図1は前記化合物(Ia)のスペクトルであり、図2は上記結晶の生成物即ち化合物(V)のスペクトルである。
【0072】
図1及び図2より、化合物(V)は前記化合物(Ia)と比較して紫外吸収スペクトルのλmax、εmax共に改善されており、この化合物(V)は不純ではあるが大きい紫外線吸収能力を有する前記新規ベンゾトリアゾール化合物(V)を主成分とするものであると判断した。
【0073】
(実施例12)
実施例11における新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)の代わりに実施例5で合成した新規ベンゾトリアゾール化合物(IIa)を用いて合成した化合物を使用し、実施例11と同様にして収率75%で融点140〜142℃の微褐黄色粉末状結晶を得た。
【0074】
前記化合物(IIa)と上記結晶の生成物についてそれぞれ紫外吸収スペクトルを測定した。その結果を、図1及び図2に示す。図1は前記化合物(IIa)のスペクトルであり、図2は上記結晶の生成物即ち化合物(VI)のスペクトルである。
【0075】
図1及び図2より、化合物(V)は前記化合物(Ia)と比較して紫外吸収スペクトルのλmax、εmax共に改善されw6l、生成物は不純ではあるが大きい紫外線吸収能力を有する新規ベンゾトリアゾール化合物(VI)を主成分とするものであると判断した。融点が比較的低いのは前記化合物(V)と比較して前記化合物(VI)がより不純であることを示すと考えられる。
【0076】
(評価)
実施例1で合成した新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)の1.00gをヒーティングブロックにて240℃に加熱し、この状態で3時間保持した後、物性の変化について測定した。
【0077】
その結果を表1に示す。また新規ベンゾトリアゾール化合物(IIa)についても同様に測定し、その結果を表2に示す。
【0078】
いずれも外観色として若干の着色は見られるが加熱後の紫外線吸収データ(UVデータ)、融点に関してもほとんど変化が見られなかった。
【0079】
またこれだけの加熱条件下でも減量はわずかであった。これらの試験結果から非常に優れた対蒸散性、耐熱性を有する化合物であることがわかる。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
実施例1にて合成した新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)は、実施例13で述べたように対蒸散性、耐光性に優れており高温下での成型時においても従来品に比べて大幅にその使用量を減量化でき、低コスト化が可能である。また水、有機溶媒に対しても溶解性が非常に低く、その浸出性が極めて少ないことから、環境汚染の低減、使用用途の拡大が見込まれる。またフリース反応により紫外吸収能力が改善されることから効果が長期にわたり持続し、結果として性能の良いプラスチック材料を提供することが可能となり得ると考えられる。また実施例1以外の化合物も同様であるが、特に高温成形を必要とするプラスチックに好適に用いることができる。
【0083】
今回合成した本発明の種々の新規ビス型紫外線吸収剤は、フリース反応によりεmaxのより大きい、あるいは吸収範囲の大きい紫外線吸収剤として元のビス型構造から予想されるよりも大きい紫外吸収能力を添加対象物中において実際に示すものであると考えられる。
【0084】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の前記各新規ベンゾトリアゾール化合物は、従来のものと異なり、実際に市場に提供することができるもので、高度な耐熱性、対蒸散性等を有し、合成しやすくしかも分子量の大きい割合には溶剤溶解性がよく、特に紫外線吸収剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は新規ベンゾトリアゾール化合物(Ia)の紫外吸収スペクトルを示す。
【図2】は同化合物(Ia)がフリース転移して得られた化合物(V)の紫外吸収スペクトルを示す。
【図3】は新規ベンゾトリアゾール化合物(IIa)の紫外吸収スペクトルを示す。
【図4】は同化合物がフリース転移して得られた化合物(VI)の紫外吸収スペクトルを示す。
Claims (4)
- 次式で示されるビス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラート及びビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]アリレンジカルボキシラートのいずれかの化合物で特定される新規ベンゾトリアゾール化合物。
- 次式で示されるトリス[4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート及びトリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,3,5−ベンゼントリカルボキシラートのいずれかの化合物で特定される新規ベンゾトリアゾール化合物。
- 請求項1で特定される化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。
- 請求項2で特定される化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。
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