JP4201829B2 - 発泡樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
発泡樹脂成型品の成型機および成型方法として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。図8は、特許文献1において従来技術として記載された発泡樹脂成型機の模式図である。以下、その発泡樹脂成型機を用いた発泡樹脂成型品の成型工程について説明する。
つまり、従来の発泡樹脂成型品は、軽量であるという特質を確保しながら、強度および防水性などの物性を変えたり、あるいは、新たな物性を加えたりすることが困難である。
を有することを特徴とする発泡樹脂複合構造体の製造方法という技術的手段を用いる。
例えば、触媒を付与しない状態では流動性を示し、触媒を付与すると硬化する樹脂であれば、その樹脂を流動状態に保持した状態で母材の空隙に収容し、空隙内の樹脂に触媒を付与することにより、空隙内の樹脂を硬化させることができる。
つまり、その樹脂を母材の空隙内に収容することにより、母材に導電性を持たせることができる。
例えば、所定温度を超えると硬化する流動性の樹脂、あるいは、触媒を付与すると硬化する流動性の樹脂に導電性材料を混合し、それを母材の空隙内に収容した後に、空隙内の樹脂を硬化させることにより、母材に導電性を持たせることができる。
つまり、その樹脂を母材の空隙内に収容することにより、母材に磁性を持たせることができる。
例えば、所定温度を超えると硬化する流動性の樹脂、あるいは、触媒を付与すると硬化する流動性の樹脂に磁性材料を混合し、それを母材の空隙内に収容した後に、空隙内の樹脂を硬化させることにより、母材に磁性を持たせることができる。
つまり、その樹脂を母材の空隙内に収容することにより、母材に薬剤による効果を持たせることができる。
例えば、抗菌剤を樹脂に含有させることにより、母材に抗菌効果を持たせることができる。また、防カビ剤を樹脂に含有させることにより、母材に防カビ効果を持たせることができる。
つまり、母材の特定の領域に形成された空隙に前記樹脂が収容されているため、母材の特定の領域の物性を変えたり、あるいは、本来の特性に新たな物性を加えることができる。
例えば、母材の特定の領域の強度を他の領域よりも高くしたい場合に、その特定の領域における空隙内に熱硬化性樹脂を収容することにより、その特定の領域の強度を他の領域よりも高くすることができる。
これによれば、母材の一の面からの透水および透湿を防止することができる。また、エポキシ樹脂の膜を母材の一の面に貼着する工程が不要であるため、その分、発泡樹脂複合構造体の製造工程を短縮することができる。
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発泡樹脂複合構造体の製造方法によって製造された発泡樹脂複合構造体は、その母材を組成している発泡セル間に形成された空隙に樹脂が収容されてなるため、発泡樹脂成型体の軽量であるという特質を確保しながら、その物性を変えることができる。
つまり、従来は、一旦成型された発泡樹脂成型体の物性を変えたりすることができなかったが、発泡樹脂成型体の母材を組成している発泡セル間に樹脂を収容することにより、発泡樹脂成型体の軽量であるという特質を確保しながら、その物性を変えることができる。
また、樹脂を母材の空隙内に収容しても、母材の重量から増加の少ない発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
さらに、樹脂は、付加重合により生成され、かつ、母材を溶解しないものであるため、比較的生成が容易であり、母材の空隙内に収容しても母材を変形させるおそれがない。
例えば、請求項6に記載のエポキシ樹脂は、グラフト重合前のプレポリマーと硬化剤を混合することにより付加重合されて生成される。また、エポキシ樹脂は、プレポリマーの組成と硬化剤の種類との組み合わせで物性が多様に変化するため、その組合せを変えることにより、母材の物性を変えることができる。さらに、エポキシ樹脂は、母材を組成している発泡セル間に形成された空隙に収容しても、その空隙を溶解しないため、母材が変形するおそれがない。
さらに、母材の空隙率を0.2〜7%にすることにより、母材の物性をより一層大きく変えることができる。
なお、上記の「物性」とは、物質の示す巨視的性質および微視的性質を含む意味である。例えば、物質の機械的・電気的・光学的・熱的・磁気的などの性質を含む。具体的には、圧縮強度、曲げ強度、引張強度、耐衝撃性などの機械的強度、重量、比重、弾性、あるいは、吸水性、透湿性、防水性、磁性、あるいは、電気抵抗、誘電率などの電気的特性、熱伝導率、熱抵抗、断熱性などの性質を含む。さらには、芳香性、防錆性、防カビ性、防虫性、光の透過率などの性質を含み、光沢、模様、色彩などの意匠的性質をも含む。
母材に塗布された樹脂の表面をフィルムで覆うため、母材の一の面における圧力差を均等にすることができるので、樹脂を均等に各空隙内に収容することができる。
流動性の樹脂は、エポキシ樹脂であるため、そのエポキシ樹脂を母材の空隙内に収容した後に、空隙内のエポキシ樹脂を硬化させることにより、母材の強度よりも機械的強度が高く、かつ、透水性および透湿性が低い発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
また、エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であるため、硬化前の流動状態のエポキシ樹脂を母材の空隙内に収容し、その後、空隙内の物質を加熱して硬化させることができる。
従って、母材の強度よりも強度の高い発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
この発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
図1は、この実施形態に係る発泡樹脂複合構造体の製造装置(以下、製造装置という)の説明図であり、(a)は、製造装置を構成する部材を分解して示す斜視図、(b)は、製造装置の外観を示す斜視図である。
製造装置の構成について説明する。
製造装置90は、真空ポンプ70と、真空ボックス91と、固定枠92と、フィルム93とを備える。真空ボックス91は、箱状に形成されており、その内部は空洞になっている。真空ボックス91の上面91aには、内部の空間に連通する複数の吸引口91bが上下方向に貫通形成されている。吸引口91bは、上面91aの上に密着される発泡樹脂成型体(以下、母材という)50の下面に対して均等に配置されている。真空ボックス91の側面には、内部の空間に連通する排気口91cが貫通形成されている。排気口91cは、接続ホース(図示せず)によって真空ポンプ70と接続されている。
つまり、図1(b)に示すように、真空ボックス91の上に配置された固定枠92に母材50を嵌め込み、母材50の下面を真空ボックス91の上面91aに密着させたときに、母材50の上面54と、固定枠92の上方の開口面92aとの間に空間92bが形成されるようになっている。その空間92bには、母材50に浸透させる流動状態のエポキシ樹脂が注がれる。
この発明は、その連通空隙52に発泡樹脂以外の物質を収容することにより、母材の持っている物性を変えたり、あるいは、新たな物性を加えることを特徴とする。この実施形態では、空隙52にエポキシ樹脂を収容する。
このような熱分解性発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボンアミドエステル等のアゾ化合物;ジニトロソベンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;4,4´−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホアジド等のアジド化合物;p−トルエンスルホセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモン、亜硝酸アンモン等を挙げることができる。さらに、これらの熱分解性発泡剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
均質な発泡セル構造を持つ発泡樹脂複合構造体を得るためには、発泡性ビーズの大きさは、概略揃っているのが望ましい。しかし、厳密に揃っている必要はない。また、あえて発泡性ビーズの大きさに分布を持たせることで、発泡セル膜に特異な3次元構造を持たせることができるので、異なる大きさの発泡性ビーズを混ぜて用いることもある。
次に、発泡樹脂複合構造体の製造方法について説明する。
母材50の空隙52に浸透させるエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂用硬化剤を用意する。また、それらの組合せは、母材50に浸透可能な粘度、十分に浸透するまでに要する時間および硬化後の硬度などを考慮して決定する。つまり、母材50の各空隙52に均一に浸透し、浸透速度が速く、浸透後に硬化するまでに長時間を要せず、さらに、母材50の機械的強度などの物性を良好にすることのできる組合せを決定する。
図1(b)に示すように、母材50を固定枠92に嵌め込み、母材50の下面55を真空ボックス91の上面91aに密着させる(工程1)。次に、母材50の上面54に流動状態のエポキシ樹脂を注ぎ、母材50の上部の空間92bがエポキシ樹脂によって満たされた状態にする(工程2)。次に、真空ポンプ70を作動させ、真空ボックス91の内部を減圧する(工程3)。
そして、エポキシ樹脂が母材50に十分浸透する時間が経過したところで、母材50を固定枠92から取出し、所定時間放置し、母材50に浸透したエポキシ樹脂を硬化させる(工程4)。なお、加熱により硬化が促進される性質のエポキシ樹脂を用いる場合は、母材50を加熱し、空隙内のエポキシ樹脂の硬化時間を短縮することもできる。
エポキシ樹脂を塗布していない母材50を固定枠92に固定し、その母材50の上面54に流動状態のエポキシ樹脂を注ぎ、真空ポンプ70を作動させてエポキシ樹脂を母材50に浸透させることもできる。この製造方法によれば、浸透させるべきエポキシ樹脂の量が多い場合に有効である。また、エポキシ樹脂を浸透させたくない領域に対応する母材50の上面の領域をフィルムなどでマスキングすることにより、母材50の所望の領域にのみエポキシ樹脂を浸透させることができる。この方法によれば、母材50の所望の領域のみ機械的強度などの物性を向上させることができる。
次に、この発明の第2実施形態について説明する。この実施形態の製造装置は、断面凹形状の母材の内壁に予めエポキシ樹脂を塗布しておき、真空引きによってエポキシ樹脂を母材に浸透させることを特徴とする。図2は、この実施形態に係る製造装置の説明図であり、(a)は製造装置の内部構造を示す斜視図、(b)は製造装置の外観を示す斜視図である。
製造装置10は、真空ボックス11、真空ポンプ70および蓋14を備える。真空ボックス11は箱状に形成されており、上面が開口している。真空ボックス11の上面には、枠状のパッキン11aが設けられている。真空ボックス11の底面11bには、母材12を乗せるための受け部材13,13が配置されている。この実施形態では、各受け部材13はレール条に形成されており、長手方向側面を相対向して配置されている。真空ボックス11の側面には、真空ボックス内部の空間に連通する排気口11cが貫通形成されている。排気口11cは、接続ホース(図示せず)によって真空ポンプ70と接続されている。
蓋14のパッキン14aによって囲まれた部分には、窓14bが設けられている。窓14bはガラスなどの透光性材料によって形成されており、母材12に塗布されたエポキシ樹脂の浸透具合を窓14bを通して見ることができる。
第1実施形態で使用したエポキシ樹脂を母材12の内壁12aに均一に塗布する(工程1)。図2(a)において、母材12のハッチングが施された部分が、エポキシ樹脂が塗布された領域である。次に、その母材12を真空ボックス11の受け部材13,13の上に乗せる(工程2)。工程1および工程2は逆でもよい。次に、蓋14を真空ボックス11に被せる(工程3)。このとき、蓋14のパッキン14aが、母材12の上部の周縁とを密着させ、母材12の内部空間を密閉する。次に、真空ポンプ70を作動し、真空ボックス11の内部を減圧する(工程4)。
次に、この発明の第3実施形態について説明する。この実施形態の製造装置は、角柱状の母材の外壁に予めエポキシ樹脂を塗布しておき、真空引きによってエポキシ樹脂を母材に浸透させることを特徴とする。図3は、この実施形態に係る製造装置の説明図であり、(a)は製造装置の内部構造を示す斜視図、(b)は製造装置に母材が収容された状態を示す斜視図である。
製造装置20は、真空ボックス21および真空ポンプ70を備える。真空ボックス21は箱状に形成されており、上面が開口している。真空ボックス21の上面の開口部には、枠状のパッキン21aが設けられている。パッキン21aの内側は、母材22の外形と合致する形状に形成されている。つまり、母材22を真空ボックス21に収容したときに、母材22の外壁とパッキン21aとの間に隙間が形成されないようになっている。
母材22を真空ボックス21に収容し、受け部材23の上に乗せる(工程1)。次に、第1実施形態で使用したエポキシ樹脂を、真空ボックス21から露出した母材22の外壁に均一に塗布する(工程2)。図3(b)においてハッチングが施された部分が、エポキシ樹脂を塗布した領域である。次に、真空ポンプ70を作動し、真空ボックス21の内部を減圧する(工程3)。
すると、母材22のうち、真空ボックス21に収容されている部分と真空ボックス21との間に形成されている空間が減圧され、母材22の外壁に塗布されていたエポキシ樹脂が母材22の連通空隙の内部に収容される。つまり、エポキシ樹脂が母材22の内部に浸透する。また、エポキシ樹脂は、毛細管現象によって一部の非連通空隙にも浸透する。
そして、エポキシ樹脂が母材22に十分浸透する時間が経過したところで、母材22を真空ボックス21から取出し、所定時間放置し、母材22に浸透したエポキシ樹脂を硬化させる(工程4)。なお、加熱により硬化が促進される性質のエポキシ樹脂を用いる場合は、母材22を加熱し、空隙内のエポキシ樹脂の硬化時間を短縮することもできる。
次に、この発明の第4実施形態について説明する。この実施形態の製造装置は、円柱形状の母材の外壁に予めエポキシ樹脂を塗布しておき、真空引きによってエポキシ樹脂を母材に浸透させることを特徴とする。図4は、この実施形態に係る製造装置の説明図であり、(a)は製造装置の構造を示す斜視図、(b)は製造装置が母材に装填された状態を示す斜視図である。
製造装置30は、筒状部材34と、パッキン31と、真空ポンプ70とを備える。筒状部材34の周面には、筒状部材34の内部空間と連通する複数の吸気口34aが貫通形成されている。パッキン31には、排気口31cが貫通形成されており、その排気口31cに筒状部材34の一端が挿入されている。つまり、筒状部材34の内部空間はパッキン31の排気口31cと連通している。排気口31cは、接続ホース(図示せず)によって真空ポンプ70と接続されている。
第1実施形態で使用したエポキシ樹脂を母材32の外壁(周面32bおよび両端面)に均一に塗布する(工程1)。次に、その母材32の挿入口32dへ筒状部材34の他端を挿入する(工程2)。次に、真空ポンプ70を作動し、母材32の挿入口32dの内部を減圧する(工程3)。すると、母材22の外壁に塗布されていたエポキシ樹脂が母材32の連通空隙の内部に収容される。つまり、エポキシ樹脂が母材32の内部に浸透する。また、エポキシ樹脂は、毛細管現象によって一部の非連通空隙にも浸透する。
次に、参考例1について説明する。この参考例1の製造装置は、エアポンプを用いてエポキシ樹脂を加圧することにより、エポキシ樹脂を母材に浸透させることを特徴とする。図5は、この参考例1に係る製造装置の説明図であり、(a)は製造装置の構造を示す斜視図、(b)は製造装置の縦断面図である。
製造装置40は、排気部材41と、収容部材43と、蓋44と、エアポンプ80とを備える。排気部材41には、複数の排気口41aが上下方向に貫通形成されている。図5(b)に示すように、排気部材41の上に母材42が配置される。各排気口41aは、排気部材41の上に配置される母材42の裏面に対して均等に分布している。各排気口41aは、エアポンプ80から送出され、母材42の連通空隙などを通過した空気を外部へ排気する。
図5(b)に示すように、収容部材43は、母材42の上面42aに配置され、収容部材43の内側に形成された空間43aには、流動状態のエポキシ樹脂53が注がれる。このとき、注がれたエポキシ樹脂53の上方には、エアポンプ80から送出された空気を充填するための空間が形成される。
排気部材41の上面に母材42を乗せる(工程1)。次に、その母材42の上面42aに収容部材43を乗せる(工程2)。次に、第1実施形態で使用したエポキシ樹脂を収容部材43の空間43aに注ぐ(工程3)。次に、収容部材43の上を蓋44で覆う(工程4)。次に、エアポンプ80と接続された接続ホース(図示せず)を蓋44の吸気口44bに接続し、エアポンプ80を作動する(工程5)。予め接続ホースを吸気口44bに接続した蓋44を収容部材43に被せてもよい。
母材を流動状態のエポキシ樹脂に浸漬し、毛管現象を利用してエポキシ樹脂を母材の空隙に浸透させることもできる。例えば、図1に示した製造装置を使用し、固定枠92に充填されたエポキシ樹脂の中に母材50を浸漬する。そして、エポキシ樹脂が母材50の空隙内に充分浸透した時間になったときに母材50を固定枠92から取出して所定時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させる。なお、加熱により硬化が促進される性質のエポキシ樹脂を用いる場合は、母材50を加熱し、空隙内のエポキシ樹脂の硬化時間を短縮することもできる。
次に、本願発明者らが行った実験について説明する。
<準備1>
最初に、本願発明者らは、母材の空隙に浸透可能な液体の粘度について調べた。ここでは、水にBASF社製のラテコールD(ラテコールはBASF社の登録商標)を混合した水溶液を着色したもの(以下、着色溶液という)を使用した。ラテコールDは、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体であり、カルボキシル基を多く含有するポリマーディスパージョンで、アルカリ中和により、可溶化し、透明な高粘度水溶液となる。この実験では、500mPa・s、1000mPa・s、1500mPa・sおよび2000mPa・sの計4種類の粘度を示す着色溶液を使用した。
母材50を固定枠92に固定し、その母材50の上面に上記の着色溶液の1つを充填した。そして、真空ポンプ70を作動させてから、着色溶液が母材50の下面に到達するまでの時間を計測した。このときの真空ボックス91の内部の真空度は、約-50kPaである。
上記より、母材の空隙にエポキシ樹脂が収容されてなる発泡樹脂複合構造体を製造する効率を高める観点から、粘度が2000mPa・sを超えないエポキシ樹脂を使用することが好ましいことが分かった。
次に、本願発明者らは、上記の準備1の結果をエポキシ樹脂に適用できるかを調べた。
ここでは、エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン株式会社製のjER811NおよびjERキュアFL240を混合したものを使用した(jERおよびjERキュアは、ジャパンエポキシレジン株式会社の登録商標)。jER811Nの一般名は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂および反応性希釈剤の混合物であり、それぞれを85%、15%の重量比で混合したものである。また、jERキュアFL240の一般名は、変性脂肪族ポリアミンであり、ビスフェノールAおよび変性脂肪族ポリアミンをそれぞれ20%、80%の重量比で混合したものである。
図10は、各試験片に浸透可能なエポキシ樹脂の粘度に対する評価をまとめた図表である。エポキシ樹脂の浸透量の最小値は、33.1gであり、最大値は40.5gであり、平均値は36.95gであった。
上記の実験結果より、上記のエポキシ樹脂を使用して、そのエポキシ樹脂が空隙に収容された発泡樹脂複合構造体の機械的強度などの各実験を行うことにした。
本願発明者らが行った実験の種類を図11に示す。本願発明者らは、発泡樹脂複合構造体の圧縮強度を調べるための圧縮試験、曲げ強度を調べるための曲げ試験、引張強度を調べるための引張試験、応力を繰返し加えたときの残留歪みを調べるための繰返し残留歪み試験、緩衝能力を調べるための緩衝係数算出試験、透湿性を調べるための透湿試験、吸水性を調べるための吸水試験および耐衝撃性を調べるための落球試験などを行った。
また、上記の各試験は、それぞれ日本工業規格(JIS)に規定された試験方法に従って行った。また、全試験で使用した試験片は、EPS(発泡ポリスチレン)製であり、厚さ25mmのものは、原反をそのまま切断して使用した。厚さ25mm以外の試験片は、原反をバンドソーによって切断して採取したものであり、スキン層(成型によって発泡樹脂成型体の表面にできる平滑な層)またはエポキシ樹脂コーティングのないものである。
(準備)
最初に、実験に使用する試験片を作成した。軟性エポキシ樹脂を浸透させた試験片および剛性エポキシ樹脂を浸透させた試験片の2種類の試験片を作成した。ここで、軟性エポキシ樹脂とは、前述の準備2で使用したjER811NおよびjERキュアFL240を混合したものであり、硬化してもゴムのような性質を有し、可使時間は約30分である。剛性エポキシ樹脂とは、前述のjER811NとjERキュアST12とを混合したものであり、硬化後の硬度は鉛筆硬度Hであり、可使時間は約110分である。また、混合直後の粘度は、1500mPa・sである。
jERキュアST12の一般名は、変性脂肪族ポリアミンであり、メタキシリレンジアミンおよびその他をそれぞれ6%、94%の重量比で混合したものである。
圧縮強度の測定は、日本工業規格に定められているJIS K 7220に従って行った。この測定方法は、国際標準化機構(ISO)の規定ISO844の一部を変更したものである。圧縮試験機は、試験片を圧縮する圧縮ジグと、荷重指示計と、変形指示計とを備える。圧縮ジグは、発生する加重の範囲及び圧縮変形量に適し、平滑平行な2枚の正方形または円形の押圧板を有する。押圧板は表面が研磨されており、荷重によって変形しないものである。加圧板の大きさは、1辺または直径が10cm以上である。加圧板は、一方を固定板とし、他方を可動板としている。可動板は、一定の速度で移動可能なものであり、加圧面の面積は、試験片の断面積よりも大きい。荷重指示計は、試験片に加わる全圧縮荷重を示すことができるものであり、設定した試験速度において指示値の±1%またはそれ以上の精度で荷重値を示すことができるものである。変形指示計は、試験中の任意の時間における圧縮ジグの2つの圧縮面の間の距離を測定するたものものである。変形指示計は、その距離を試験片に加わる荷重の関数として、もしくは、試験開始から経過した時間の関数として、または、その荷重と時間の関数として記録できるものである。また、変形指示計は、設定した試験速度において指示値の±1%またはそれ以上の精度を有する。
圧縮強度は、材料が圧縮力を受けて変形や破壊するときの圧縮荷重を材料の断面積で除して表す。この実験では、エポキシ樹脂が浸透していない母材単体、軟性エポキシ樹脂が浸透した軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂が浸透した剛性エポキシ樹脂浸透体の3種類の試験片について圧縮強度を測定した。また、発泡倍率が20倍、38倍および60倍の3種類の試験片をそれぞれ3個(A、BおよびC)ずつ使用した。つまり、計6種類の試験片を使用した。各試験片のおおよその大きさは、長さ(L)50mm×幅(W)50mm×厚さ(H)25mmである。
図15は、エポキシ樹脂の浸透していない母材単体の圧縮強度の測定結果を示す図表である。図16は、軟性エポキシ樹脂が浸透した軟性エポキシ樹脂浸透体の圧縮強度の測定結果を示す図表である。図17は、剛性エポキシ樹脂が浸透した剛性エポキシ樹脂浸透体の圧縮強度の測定結果を示す図表である。各図において、各試験片に対応する歪み率(%)の下段の2つの数値は、上段が測定強度を示し、下段が圧縮強度を示す。ここで、測定強度とは、試験片の上下面に掛かる力(N)である。また、圧縮強度とは、測定強度を単位平方mm当たりの応力(N/mm2)であり、それをkPaに換算して表してある。
つまり、母材にエポキシ樹脂を浸透させ、母材内部の空隙内に硬化したエポキシ樹脂が収容された状態となることにより、母材単体の圧縮強度を高めることができることが分かった。さらに、軟性エポキシ樹脂よりも剛性エポキシ樹脂を浸透させた試験片の方が圧縮応力値が高くなっていることから、硬化後の硬度が高いエポキシ樹脂を母材に浸透させれば、より一段と圧縮強度を高めることができることも分かった。
曲げ強度の測定は、日本工業規格に定められているJIS K 7221に従って行った。この測定方法は、国際標準化機構(ISO)の規定ISO1209に準じたものである。測定の原理として、2点で支持する試験片の中央に、加圧くさびによって一定速度で垂直方向に加圧する(N/cm2)原理を用いた。規定のたわみ(mm)または破壊発生時の最大荷重(N)を測定した。曲げ試験機は、クロスヘッド(荷重を加える部分)の移動速度を一定に保つことができるものである。また、試験機の荷重指示は、試験片に加わる荷重を±1%の精度で測定することができる機構によって行う。試験片支持台は、先端部が円柱状の2つの支持台を同一水平面上に平行に設置される。先端部は、半径5mm±0.2mmであり、支持台は、試験片の幅以上の長さである。
この実験で使用した試験機は、前述の株式会社島津製作所製のオートグラフであり、上記の測定規定を満足するものである。
図22は、図19,20,21に示す測定結果のうち、各発泡倍率の試験片の比重と曲げ応力との関係を示すグラフである。各グラフにマークされた3つのポイントは、左から60倍、38倍、20倍の発泡倍率の試験片であることを示す。図22において、軟性エポキシ(EPS)比重とは、軟性エポキシ樹脂を浸透させる前の母材(EPS)の比重のことであり、剛性エポキシ(EPS)比重とは、剛性エポキシ樹脂を浸透させる前の母材(EPS)の比重のことである。
引張り強さの測定は、日本工業規格に定められているJIS K 6400-5に従って行った。この測定方法は、国際標準化機構(ISO)の規定ISO 1798 1997の一部を変更したものである。この試験では、試験片の引張強さおよび伸び率を測定した。ここで、引張強さとは、試験片が破断するまで一定速度で引張り、試験片が破断するまでの間に示した最大力(破断最大力)を試験片の断面積で除した値である。伸び率とは、試験片が破断したときの伸び率である。
この実験で使用した試験機は、前述の株式会社島津製作所製のオートグラフであり、上記の測定規定を満足するものである。
試験片の厚さの平均値を求め、試験片の幅から試験片の平均断面積を計算した。そして、引張強さTb(kPa)を次式(1)により算出した。
Tb=(F/A)×103 ・・・(1)
ここで、Fは、破断時の最大力(N)であり、Aは、試験片の平均断面積(mm2)である。
また、試験片の伸び率Ebを次式(2)により算出した。
Eb=((L-L1)/L1)×100 ・・・(2)
ここで、Lは、破断時の標線間距離(mm)であり、L1は、破断前の標線間距離(mm)である。
このグラフから、母材にエポキシ樹脂を浸透させると、母材単体よりも伸び率が約2倍に大きくなることが分かった。また、母材に剛性エポキシ樹脂を浸透させたものよりも軟性エポキシ樹脂を浸透させたものの方が伸び率をより一段と大きくできることが分かった。
この実験では、母材単体、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体に対する吸水量を測定した。この実験で使用した試験片の外寸は、長さ(L)約100mm×幅(W)約70mm×厚さ(H)約10mmであり、発泡樹脂ブロックをバンドソーにより切断して作成した。また、母材単体、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の各試験片は、発泡倍率20倍、38倍および60倍の各倍率毎にA,Bの2個ずつ作成した。
吸水量(g/100cm2)は、最終吸水後の質量(g)から基準質量(g)を減算した値を試験片の表面積(cm2)で除した値に100を乗じることにより算出した。
図29,30に示す測定結果から、母材にエポキシ樹脂を浸透させた試験片の方が、母材単体よりも吸水量が少なかった。また、軟性エポキシ樹脂浸透体の方が剛性エポキシ樹脂浸透体よりも吸水量がより一段と少なかった。
また、剛性エポキシ樹脂浸透体の方が軟性エポキシ樹脂浸透体よりも吸水性が高いのは、バンドソーによる切断時に剛性エポキシ樹脂の硬さで切断面が荒れたためであると推定される。
吸湿試験は、日本工業規格に定められているJIS K 7225に従って行った。この測定方法は、国際標準化機構(ISO)の規定ISO 1663の一部を変更したものである。
試験片の大きさは、直径75mm×厚さ25mmの円板である。また、発泡倍率20倍、38倍および60倍の試験片を作成した。
この実験では、試験容器として、開口部が円形で、水蒸気に対して不透過性の材料、例えばガラス製または金属製で内径が65mm以上で、かつ、上部は封蝋剤を収容できるように僅かに外側に開いた容器を使用した。また、試験片の端部での水蒸気の回り込みによる影響を減らすために試験片を嵌め込む円形の型枠を使用した。また、封蝋剤を溶かすための皿(ポットでもよい)と、試験片を精度0.1mgで秤量できる化学秤を使用した。また、設定温度の±1℃および相対湿度の±2%に制御でき、連続的に監視できる恒温恒湿糟を使用した。また、23℃で溶解していない過剰の塩化物を含む塩化物溶液を使用した。封蝋剤は、試験条件によって影響を受けない微結晶ワックス90%と可塑剤(例えば、低分子量ポリイソブチレン)10%との混合物を使用した。吸湿剤として使用した無水塩化カルシウム吸湿剤は、30番(60μm)のふるいを通過させ、微粉末を含まない直径約5mmのものを使用した。
そして、恒温恒湿糟の中に容器を配置し、試験片を24時間状態調節し、試験片を24時間単位で秤量した。その読取単位は、100μgである。また、単位時間当たりの質量変化を5回連続して測定し、その平均値が±2%で一定となるまで秤量を継続した。測定条件は、温度23℃湿度60%である。
G=(m2-m1)/(t2-t1) ・・・(3)
ここで、(m2-m1)は、試験片を2回連続して量った質量の差(μg)であり、(t2-t1)は、試験片を2回連続して秤量した時間の間隔(h)である。
そして、次式(4)により、水蒸気透過速度g(μg/(m2・s))を算出した。
g=(G/A)×(100/3600) ・・・(4)
ここで、Aは湿気に暴露した側の試験片の面積(m2)である。
そして、次式(5)により、水蒸気透過度Wp(ng/(m2・s・Pa))を算出した。
Wp=(G/Aρ)×(105/36) ・・・(5)
ここで、ρは、水蒸気圧の差2390(Pa)である。
そして、次式(6)により、水蒸気透過係数δ(ng/(m・s・Pa))を算出した。
δ=(Wp×s)/103 ・・・(6)
ここで、sは試験片の厚さ(mm)である。
図31に示すように、水蒸気透過係数(図中では透過係数)は、発泡倍率60倍の母材単体(60倍品)では、125.4(ng/(m・s・Pa))であり、同倍率の軟性エポキシ樹脂浸透体では、43.2(ng/(m・s・Pa))であり、同倍率の剛性エポキシ樹脂浸透体では、48.2(ng/(m・s・Pa))であった。つまり、母材単体にエポキシ樹脂を浸透させることにより、水蒸気の透過性(透湿性)が2〜4割程度低くなることが分かった。また、剛性エポキシ樹脂浸透体よりも軟性エポキシ樹脂浸透体の方が、少し水蒸気の透過性が低いことも分かった。このことから、母材内の空隙が完全にエポキシ樹脂によって充填されていないことが推定された。
従って、水蒸気の透過能力を0にするためには、エポキシ樹脂浸透体の表面にエポキシ樹脂を成膜し、水蒸気の透過を遮断すれば良いことが分かった。
この実験では、試験片を繰返し圧縮したときの試験片に残留している歪みの大きさを測定した。実験内容は、基本的に実験1の圧縮試験と同じである。母材(EPS)単体、母材(EPP)単体、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の計4種類の試験片を使用した。また、発泡倍率が20倍、38倍および60倍の3種類の試験片をそれぞれ3個(A、BおよびC)ずつ使用した。母材(EPP)単体では、発泡倍率が15倍、30倍および45倍の3種類の試験片をそれぞれ3個(A、BおよびC)ずつ使用した。各試験片のおおよその大きさは、長さ(L)50mm×幅(W)50mm×厚さ(H)25mmである。
そして、実験1で使用した装置(オートグラフ)により、試験片を20mm/secの速度で試験片の中央を圧縮した。試験片の厚さが75%(18.75mm)になるまで圧縮した。
各発泡倍率の試験片A,B,Cに対してそれぞれ行った。圧縮は、30分間隔で計5回行った。圧縮を開放後、30分間自然放置し、試験片の厚さが回復したところで試験片の厚さを測定した。
そして、試験片の厚さの低下率C(%)を次式(7)により算出した。
C=((d0-dr)/d0)×100 ・・・(7)
この実験では、試験片の上に重錘を落下させ、試験片のエネルギー吸収力(緩衝能力)を測定した。測定は、日本工業規格(JIS)のJIS K 7211に従って行った。母材(EPS)単体、母材(EPP)単体、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の計4種類の試験片を使用した。また、発泡倍率が20倍、38倍および60倍の3種類の試験片をそれぞれ5個ずつ使用した。母材(EPP)単体では、発泡倍率が30倍および45倍の2種類の試験片をそれぞれ5個ずつ使用した。各試験片のおおよその大きさは、長さ(L)140mm×幅(W)50mm×厚さ(H)25mmである。
50%破壊高さ(cm)Hは次式(8)により算出した。
H=Hi+d[(A(i・ni)/N)±1/2] ・・・(8)
ここで、Hiは高さ水準(i)が0のときの試験高さであって、試験片が破壊されることが予測される高さである。dは試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)であり、この実験では2cmである。Aは、数列の総和を表す記号である。iは高さ水準のときを0とし、1つずつ増減する高さ水準(i=・・-3,-2,-1,0,1,2,3・・)であり、この実験では、i=-2,-1,0,1,2である。niは各水準において破壊したまたは破壊しなかった試験片の総数であり、いずれも多い方のデータを使用する。なお、同数の場合はどちらを使用してもよい。±1/2は、破壊した試験片の総数を使用した倍は負号を、破壊しなかった試験片の総数を使用した場合は正号をとる。
E=m×g×H ・・・(9)
ここで、mは重錘の質量(kg)であり、この実験では0.5kgである。gは重力加速度(9.80619920m/s2 )であり、Hは上記(8)により算出した50%破壊高さであり、メートル(m)に換算した値である。
図38に示すように、発泡倍率60倍の母材単体(EPS)の50%破壊高さは、6.33cmであり、50%破壊エネルギは0.31(J)であった。また、発泡倍率45倍の母材単体(EPP)の50%破壊高さは、25.67cmであり、50%破壊エネルギは1.26(J)であった。また、図39に示すように、発泡倍率60倍の軟性エポキシ樹脂浸透体の50%破壊高さは、10.33cmであり、50%破壊エネルギは0.51(J)であった。発泡倍率60倍の剛性エポキシ樹脂浸透体の50%破壊高さは、10.33cmであり、50%破壊エネルギは0.51(J)で、それぞれ軟性エポキシ樹脂浸透体と同じ値であった。
静的緩衝係数の算出は、日本工業規格(JIS)のJIS Z 0235に従って行った。実験1の圧縮試験において得た図18の各歪み率に対する圧縮応力値のグラフを使用した。ここで使用する圧縮歪みは、静的緩衝係数の計算を行うためにパーセントではなく、比率の値で扱う。
図41は、算出した静的緩衝係数を示す図表である。図42は、図41に示すデータに基いて作成した、静的緩衝係数と圧縮応力との関係を示すグラフである。
図41,42より、剛性エポキシ樹脂浸透体は、母材(EPS)単体よりも静的緩衝係数が約1割高いことが分かった。また、軟性エポキシ樹脂浸透体は、母材(EPS)単体と殆ど差のないことが分かった。
t=C×G/H ・・・(10)
ここで、Cは、静的緩衝係数、Gは、製品許容G値、Hは、落下高さである。この式により、例えば静的緩衝係数Cが1から2に増加した場合は、緩衝肉厚tは2倍になる。上記の実験8の算出結果から、剛性エポキシ樹脂浸透体の静的緩衝係数は母材(EPS)単体よりも最大で1割(10%)増加することが分かった。従って、上記の式(10)より、緩衝肉厚も1割増加することになる。このように、静的緩衝係数の1割程度の増加であれば、緩衝材として使用する発泡樹脂成型体の衝撃を受ける面積を減らし、緩衝しやすく工夫することで必要な緩衝能力を十分達成することができる。
この実験は、おおよそ日本工業規格(JIS)のJIS A 9511に規定の平板比較法に従って行った。試験片のおおよその外寸は、長さ(L)200mm×幅(W)200mm×厚さ(H)25mmである。また、母材単体(EPS)および軟性エポキシ樹脂浸透体のそれぞれについて発泡倍率20倍、38倍および60倍の試験片を作成した。
熱伝導率λ(W/m・k)は、次式(11)により算出した。
λ=d/R ・・・(11)
ここで、dは、試験片の厚さ(m)であり、Rは、熱抵抗(m2・k/W)である。
最初に、軟性エポキシ樹脂および剛性エポキシ樹脂の浸透量を実験した。試験片は発泡倍率36倍で、おおよその外寸は、長さ(L)200mm×幅(W)200mm×厚さ(H)25mmである。また、A〜D,Zの計5個の試験片を使用した。試験片A〜Dは新たに作成した。試験片Zは、前述の準備2において作成した試験片Aであり、前述の実験1〜9にて使用したものである。
図45は、軟性エポキシ樹脂および剛性エポキシ樹脂の浸透実験の結果をまとめた図表である。図46(a)は、36倍品と38倍品(Z)のエポキシ樹脂の浸透量差を示す図表であり、図46(b)は、エポキシ樹脂の浸透量と母材単体(EPS)の比重との関係を示すグラフである。
前述の圧縮試験1と同じ試験装置および測定方法により圧縮試験を行った。この試験に使用した試験片は、母材単体(EPS)、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体であり、母材単体については発泡倍率38倍の試験片A,B,Cおよび20倍の試験片A,B,Cを新たに作成した。また、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体については、それぞれ発泡倍率38倍の試験片A,B,Cの試験片を新たに作成した。母材単体の発泡倍率20倍の各試験片は、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の発泡倍率38倍の試験片と比重が同等となるものとして作成した。
前述の曲げ試験1と同じ試験装置および測定方法により圧縮試験を行った。この試験に使用した試験片は、母材単体(EPS)、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体であり、母材単体については発泡倍率38倍の試験片A,B,Cおよび20倍の試験片A,B,Cを新たに作成した。また、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体については、それぞれ発泡倍率38倍の試験片A,B,Cの試験片を新たに作成した。母材単体の発泡倍率20倍の各試験片は、軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の発泡倍率38倍の試験片と比重が同等となるものとして作成した。
また、エポキシ樹脂の浸透量の変化に対して曲げ応力値の変化が微少であった。これは、曲げ応力値は、母材破壊による数値と考えられ、エポキシ樹脂のアンカー効果およびエポキシ樹脂自体の曲げ強度による力が微少であることが原因であると推定された。エポキシ樹脂の浸透量の違いによる応力の差が微少であることも同じ原因であると推定された。
母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた試験片の防水効果について実験した。図1に示した製造装置を利用し、固定枠92に固定した試験片の表面に水を充填し、真空ポンプ70を作動させ、所定の真空度になってから所定時間経過後に試験片の下面から水が漏れるかどうかを観察した。この実験で使用した水は、真水と、界面活性剤を0.1%混合した水と、界面活性剤を1.0%混合した水の3種類である。また、真空ボックス内の真空度を-10kPaおおび-40kPaの2つの値に制御し、制御開始から5分後および15分後に水漏れを観察した。試験片として、発泡倍率38倍の母材単体(EPS)と、軟性エポキシ樹脂浸透体とを使用した。
つまり、軟性エポキシ樹脂浸透体は、防水効果が100%であることが分かった。
図56,57は、実験1〜9における測定結果(第1試験結果)をまとめた図表である。図58(a)は、実験10〜12における測定結果(第2試験結果)をまとめた図表であり、図58(b)は、母材単体(EPS)とエポキシ樹脂浸透体との比較を示す図表である。
1.1(圧縮強度)
圧縮強度は、母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合体の方が、母材単体よりも1.1〜1.2倍の圧縮強度を向上させることができた。また、上記の発泡樹脂複合構造体の方が、母材単体よりも圧縮後の復元率が高く、EPP製の母材相当の復元率を達成することができた。
曲げ強度は、母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合体の方が、母材単体よりも1.4倍向上させることができた。また、引張強度は、母材に軟性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合構造体の方が、母材単体よりも1.2〜1.5倍向上させることができた。
また、上記の発泡樹脂複合構造体は、母材単体と比較して、割れ、欠けおよび摩擦などに強く、耐久性および耐摩擦性に優れている。
エネルギ吸収率は、母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合体の方が、母材単体よりも1.5〜2.4倍向上させることができた。また、たわみ量および伸び率は、母材に軟性エポキシ樹脂浸を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合構造体の方が、母材単体よりも1.5〜2倍向上させることができた。また、静的緩衝係数では、上記発泡樹脂複合構造体は、母材単体と比較して略同等値であることから、発泡樹脂複合構造体は、緩衝能力は母材単体と同等であるが、エネルギ吸収率は1.5〜2.4倍高いことが分かった。
母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた発泡樹脂複合体は、母材の空隙内で硬化したエポキシ樹脂が空隙を閉塞するため、水蒸気の透過も抑制することができた。また、上記の発泡樹脂複合構造体は、吸水の抑制効果も高く、表面にエポキシ樹脂などで被膜すれば、抑制効果は100%になる。また、防水(水が表面から裏面へ通過しない)効果という点では、表面をエポキシ樹脂などで被膜しなくても100%の防水効果を達成できる。
(1)図57(b)に示すように、母材単体(EPS)とエポキシ樹脂浸透体とを比較すると、比重16g/lで発泡倍率60倍の母材単体は、エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させることにより、比重20g/lで発泡倍率50倍の母材単体に相当する物性を持たせることができる。また、比重26g/lで発泡倍率38倍の母材単体は、エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させることにより、比重33g/lで発泡倍率30倍の母材単体に相当する物性を持たせることができる。また、比重50g/lで発泡倍率20倍の母材単体は、エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させることにより、比重50〜66g/lで発泡倍率20〜15倍の母材単体に相当する物性を持たせることができる。
つまり、発泡樹脂製品の比重を変えることなく、エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させることにより、発泡倍率60倍、38倍、20倍の発泡樹脂製品をそれぞれ発泡倍率50倍、30倍、20〜15倍の発泡樹脂製品相当の圧縮強度を出すことができる。
従って、母材の空隙率および浸透時間の少なくとも一方を制御することにより、エポキシ樹脂の浸透量を制御することができるため、用途に応じた発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
<実験14:部分圧縮試験>
母材にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた試験片の防水効果について実験した。この実験で使用した装置および実験方法は、基本的に実験1と同じであるが、実験1のように試験片の表面全体を圧縮するのではなく、試験片の一部を圧縮した。実験1で使用した可動板よりも下面の面積が小さい可動板を使用した。また、エポキシ樹脂浸透体の試験片と、母材(EPS)にエポキシ樹脂をコーティングした試験片と、エポキシ樹脂浸透体にエポキシ樹脂をコーティングした試験片とを使用し、それぞれの部分圧縮強度を測定した。また、エポキシ樹脂浸透体として軟性エポキシ樹脂浸透体および剛性エポキシ樹脂浸透体の2種類を作成した。軟性エポキシ樹脂浸透体には軟性エポキシ樹脂をコーティングして硬化させ、剛性エポキシ樹脂浸透体には剛性エポキシ樹脂をコーティングして硬化させた。いずれの試験片も発泡倍率38倍である。また、EPS製の母材と比較するために発泡倍率15倍および30倍のEPP製の試験片も作成した。エポキシ樹脂のコーティング層の厚さは、約0.02mmである。
図59は、軟性エポキシ樹脂を使用した試験片の測定結果をまとめた図表であり、図60は、剛性エポキシ樹脂を使用した試験片の測定結果をまとめた図表である。図61は、発泡倍率15倍および30倍のEPP製の試験片の測定結果をまとめた図表である。図62は、図59〜61に示す測定結果に基づいて作成した、圧縮応力と歪み率との関係を示すグラフである。
剛性エポキシ樹脂浸透体の表面に剛性エポキシ樹脂を被膜した試験片および母材単体(EPS)の表面に剛性エポキシ樹脂を被膜した試験片は、それぞれ剛性エポキシ樹脂の被膜により僅かに圧縮応力の向上が見られた。
実験14の部分圧縮試験において使用した同じ種類の試験片を使用して曲げ試験を行った。この実験で使用した装置および実験方法は、実験2と同じである。図63は、軟性エポキシ樹脂を使用した試験片の測定結果をまとめた図表であり、図64は、剛性エポキシ樹脂を使用した試験片の測定結果をまとめた図表である。図65は、発泡倍率15倍および30倍の母材単体(EPP)の試験片の測定結果をまとめた図表である。図66は、図63〜図65に示す測定結果に基づいて作成した、曲げ応力値の対比を示すグラフである。図67は、たわみ量の対比を示すグラフである。図68は、発泡倍率38倍の母材単体(EPS)を基準とした場合のエネルギ吸収率の比較表である。図69は、10%圧縮強度、曲げ強度およびたわみ量の測定結果をまとめた図表である。
この実験では、母材(EPS)にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた場合の耐熱性の変化を実験した。この実験で使用した試験片は、発泡倍率38倍の母材単体(EPS)と、発泡倍率40倍のヒートポール(ヒートポールは、株式会社ジェイエスピーの登録商標である)と、剛性エポキシ樹脂浸透体と、剛性エポキシ樹脂浸透体に剛性エポキシ樹脂をコーティングしたものとである。ヒートポールの材質は、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系樹脂)の発泡樹脂成型体である。ヒートポールは、耐熱性発泡樹脂製品として使用されており、EPS製の発泡樹脂成型体よりも耐熱性に優れていることから、耐熱性能の比較対象として使用した。
また、90℃の環境下の剛性エポキシ樹脂浸透体の試験片と、100℃の環境下の剛性エポキシ樹脂浸透体を剛性エポキシ樹脂でコーティングした試験片とは、収縮率がマイナスとなり、収縮ではなく若干の膨張を確認した。これは、3次発泡もしくは試験片内部の空気の膨張が原因であると推定される。
しかし、母材に剛性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させるだけでは、試験片表面で母材(EPS)が露出しているためにヒートポールよりも耐熱性が劣った。
従って、剛性エポキシ樹脂の浸透およびコーティングの両方を行うことにより、ヒートポールと同等(100℃以上の耐熱性)を得られることが分かった。
次に、本願発明者らは、釘の引抜き強度を測定する実験を行った。実験装置は、試験片の両端下面を支持する支持台と、その支持台に支持された試験片の両端上面を押さえる押さえ板と、ねじと、試験片にねじ込まれたねじを引き抜くための引抜き板と、その引抜き板を所定速度で垂直方向に上昇させる上昇装置とで構成される。上昇装置には、引抜き板上部のリングに引っ掛けるフックと、木用ねじに掛かる力を測定する機能とが備えられている。
試験片として、発泡倍率20倍および38倍の2種類の母材単体(EPS)と、発泡倍率38倍の母材に軟性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた軟性エポキシ樹脂浸透体と、同母材に剛性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた剛性エポキシ樹脂浸透体とを使用した。また、各種の試験片は、それぞれA〜Eの計5個ずつ作成した。
ところで、釘を使用して釘引抜き試験を行うと、引抜くときの力が小さく、計測値が微小になる。また、試験片を試験機にセットする際に試験片に小さな衝撃を与えてしまうだけで計測値にバラツキが生じてしまい、正確な計測を行うことができない。そこで、この実験では、釘よりも試験片を噛みながら食い込む木用ねじを使用し、計測誤差を抑え、母材単体(EPS)とエポキシ樹脂浸透体との明確な計測値の違いを出すようにした。直径5mm×全長40mmの木用ねじを使用した。
<実験18:緩衝能力試験>
この実験は、実験8の静的緩衝係数測定試験と同じ方法で行った。また、重錘には、Gセンサを取付け、重錘を1個の試験片に対して5箇所に落下させ、G値を測定した。試験片は、空隙率の異なる試験片を採取するために、発泡セルの融着度合いで分けて4種類作成した。図80は、試験片を採取した場所を示す説明図である。試験片は、発泡倍率80〜90倍の円柱形状の発泡樹脂成型体を円板形状に切断し、それを正方形に加工することにより作成した。発泡セル同士の融着状態が限界になっている試験片(融着限界品)A,Bは、発泡樹脂成型体の両端近傍から採取した。発泡セル同士の融着状態が良好な試験片(融着良品)A〜Dは、発泡樹脂成型体の中心軸に沿って均等間隔に4箇所を切断して採取した。発泡セル同士の融着状態が不良な試験片(融着不良品)A〜Dも同じく4箇所から採取した。表面部分の発泡セル同士の融着状態が良好な試験片(融着良品表面部分)A,Bは、融着限界品よりも端部寄りの発泡樹脂成型体から採取した。
図82は緩衝能力の測定結果を示す図表であり、図83は図82に示す測定結果に基づいて作成した、G値と空隙率との関係を示すグラフである。図84は各試験片毎に空隙率と緩衝能力評価との関係をまとめた図表である。
その結果、図84に示すように、空隙率2〜5%の試験片が良好な緩衝能力を有し、空隙率6%の試験片が若干緩衝能力に劣るものの実用面では問題がなく、空隙率9%の試験片は、緩衝能力が無く実用的でないという評価になった。
従って、安全率の観点からは、46.9Gから25%増加の範囲内に収まっている空隙率2%の軟性エポキシ樹脂浸透体が好ましいと考えられる。
また、今回の実験で使用した軟性エポキシ樹脂よりも軟性の高いエポキシ樹脂などを母材に収容することにより、G値の増加を抑制できるものと推定される。
実験18で作成した各試験片を使用して圧縮試験を行い、試験片の母材の空隙率と圧縮強度と静的緩衝係数との関係を調べた。図85は各試験片の測定結果をまとめた図表である。図86は図85に示す測定結果に基づいて作成した、圧縮応力と歪み率との関係を示すグラフである。図87は、歪み率が10%のときの圧縮応力と空隙率との関係を示すグラフである。図88は各試験片毎に空隙率に対する圧縮応力を評価した結果を示す図表である。
従って、エポキシ樹脂浸透体を緩衝材として設計する場合は、母材の肉厚を変更しないで衝撃を受ける受け面積を減らすことができる。ただし、母材単体(EPS)の圧縮応力よりも3倍以上の圧縮応力になる空隙率6%以上のエポキシ樹脂浸透体は、その分、受け面積が極端に減るため、実用性が低い。
そこで、図88に示すように、空隙率が6%までのエポキシ樹脂浸透体に対する圧縮応力の評価を良好(○)とし、空隙率が7%のエポキシ樹脂浸透体(融着不良品A)の評価をやや劣る(△)とし、空隙率が9%のエポキシ樹脂浸透体の評価を実用性無し(×)とした。なお、同じ空隙率6%でも融着良品Dの評価が○であるのは、融着良品は融着不良品よりも発泡セル同士の融着率が高く、緩衝能力が高いからである。
母材の空隙率の小さい試験片に対するエポキシ樹脂の浸透性について実験した。この実験は、図1に示した製造装置を使用して行った。また、表面に軟性エポキシ樹脂を塗布した試験片を固定枠92に固定し、真空ポンプ70によって真空引きを所定時間行い、エポキシ樹脂の浸透を観察した。試験片は、発泡倍率30倍の母材を使用した。
上記の測定結果より、空隙率0.5%の母材では、25mmの肉厚に対して真空度-0.8kg/cm2を保持した状態で15分以上で軟性エポキシ樹脂を浸透させることができることが分かった。
また、空隙率1.5%の母材では、浸透時間は5分以上であった。さらに、空隙率3%の母材では、浸透時間は30秒程度であり、空隙率5%および9%では、浸透時間は一瞬であった。そこで、図90に示すように、浸透時間が5分以上必要な空隙率0.5%および1.5%以下の母材に対して、やや劣る(△)と評価し、浸透時間が30秒程度以下である空隙率3%、5%および9%の母材に対して良好(○)と評価した。
実験の結果、図91(b)に示すように、空隙率が0.2%の試験片Cでは、真空度-0.8kg/cm2 を10分間保持すれば、着色水が試験片の一部裏面まで浸透することが分かった。その裏面に到達した着色水の面積は約10%であった。また、空隙率が0.1%の試験片Bでは、10分間経過しても着色水は試験片の裏面に到達しなかった。浸透深さは、試験片の表面から約10mmであった。また、空隙率が0.1%の試験片Dでは、30分経過すると着色水が試験片の一部裏面まで到達したが、殆ど浸透深さ約15mmまでしか浸透しなかった。
そこで、図92に示すように、10分以下で着色水が一部裏面まで浸透した空隙率0.2%の試験片および空隙率0.5%の試験片は、低粘度の水を一部浸透させることができるため、浸透性がやや劣る(△)と評価し、着色水が裏面まで浸透しなかったり、一部裏面まで浸透したが、長時間を必要とする空隙率0.1%の試験片は浸透性が劣る(×)と評価した。
以上より、空隙率0.5〜7%の範囲の母材にエポキシ樹脂を浸透させたエポキシ樹脂浸透体が総合的に優れていることが分かった。
母材の空隙率の大きい試験片に対する曲げ強度について実験した。この実験は、前述の実験2の曲げ試験と同じ試験装置および試験方法により行った。チップドレン(チップドレンは、株式会社ジェイエスピーの登録商標)を切断した試験片と、チップドレンにエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させたものを切断した試験片とを作成した。また、チップドレンの母材に軟性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた試験片と、剛性エポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた試験片の2種類を作成した。チップドレンは、チップ状またはストロー状の発泡樹脂成型体を凝縮して再度発泡成型した発泡樹脂成型体である。
母材の空隙率の大きい試験片に対する圧縮強度について実験した。この実験は、前述の実験1の圧縮試験と同じ試験装置および試験方法により行った。試験片は、外寸以外は実験21で使用した試験片と同じものを使用した。
図101,102は測定結果を示す図表である。図103は、図101,102に示す測定結果に基いて作成した、各試験片毎の圧縮応力と歪み率との関係を示すグラフである。
(1)エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水メチルCD酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン無水コハク酸等の酸無水物系硬化剤;エチレンアミン類、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、脂肪族アミン変成体等の脂肪族アミン系硬化剤;m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、芳香族アミン変成体等の芳香族アミン系硬化剤;また、その他硬化剤として、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、ピペリジン、ポリアミド樹脂、フェノール系樹脂、ポリチオール樹脂、メルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール系化合物などを用いることができる。
例えば、マイクロカプセルの外殻を構成するシェル(壁材)として、外気温度が所定温度を超えると亀裂の入る性質のシェルを使用し、そのシェルに芳香剤をコア(芯物質)として内包する。そして、そのマイクロカプセルを母材の空隙内に収容することにより、外気温度が所定温度を超えると空隙内のマイクロカプセルに亀裂が入り、芳香剤を外気中に放出することができる。
また、シェルにエポキシオリゴマーを内包することにより、マイクロカプセルからなる物質を低粘度の水系エマルションとして取り扱うことができる。そして、その物質を母材の空隙内に収容してから加熱してマイクロカプセルのシェルを溶解し、シェル内のエポキシオリゴマーをバインダー樹脂などと架橋反応させることもできる。
この製造方法によれば、反応硬化物はエポキシオリゴマーの特長を活かした密着性、硬度、耐水性に優れた物性を示すため、母材の物性を優れた物性に変化させることができる。また、空気に触れてからの経過時間が所定時間を超えると割れたり溶解するシェルに芳香剤をコアとして収容したマイクロカプセルを母材の空隙内に収容することもできる。この製造方法によれば、母材に芳香性を持たせることができる。
また、シェルに内包する物質は、抗菌剤、防カビ剤などの薬剤でもよい。
12,22,32,42,50・・母材、14,44・・蓋、41a・・排気口、
51・・発泡セル、52・・空隙、53・・エポキシ樹脂、70・・真空ポンプ、
80・・エアポンプ、91b・・吸引口。
Claims (6)
- 発泡ビーズを加熱発泡させて成型され、かつ、発泡セル間の空隙率が0.2〜7%の発泡樹脂成型体からなる母材と、
粘度が2000mPa・s以下であり、かつ、前記母材の一の面と他の面とに連通している空隙に充填可能であり、かつ、付加重合により生成され、かつ、前記母材を溶解しない流動性の樹脂と、
排気口が設けられ、前記母材を収容する容器と、
前記排気口に接続された真空ポンプとを用意し、
前記母材に前記樹脂を塗布する工程と、
前記母材を前記容器に収容する工程と、
前記樹脂が塗布された母材が前記容器に収容された状態で前記真空ポンプを作動させ、前記塗布された樹脂を前記母材の空隙に浸透させる工程と、
前記母材に浸透した樹脂を硬化させる工程と、
を有することを特徴とする発泡樹脂複合構造体の製造方法。 - 発泡ビーズを加熱発泡させて成型され、かつ、発泡セル間の空隙率が0.2〜7%の発泡樹脂成型体からなる円柱形状の母材であって、一方の端面から中心軸に沿って内部まで達し、他方の端面には貫通していない挿入口が形成された母材と、
粘度が2000mPa・s以下であり、かつ、前記母材の一の面と他の面とに連通している空隙に充填可能であり、かつ、付加重合により生成され、かつ、前記母材を溶解しない流動性の樹脂と、
前記挿入口に挿入する筒状部材であって、その内部空間と連通する複数の吸気口が貫通形成された筒状部材と、
前記筒状部材の一端に接続された真空ポンプとを用意し、
前記母材の外壁に前記樹脂を塗布する工程と、
前記筒状部材の他端を前記母材の挿入口に挿入する工程と、
前記真空ポンプを作動させ、前記塗布された樹脂を前記母材の空隙に浸透させる工程と、
前記母材に浸透した樹脂を硬化させる工程と、
を有することを特徴とする発泡樹脂複合構造体の製造方法。 - 透光性材料によって形成された窓が前記容器に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
- 前記母材に塗布された樹脂の表面をフィルムで覆う工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
- 前記流動性の樹脂は溶剤を含まないものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
- 前記流動性の樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
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