JP4201733B2 - 断熱部材とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材とその断熱部材の製造方法に関する。
この種の断熱部材は、例えば、高温流体通流用の金属製パイプの外表面に接触させて取り付け、パイプ内を通流する高温流体を保温するために使用されるものである。
ところで、この断熱部材の使用において、断熱部材と金属製パイプとの間に雨水などが侵入すると、パイプが錆びて腐食することになり、たとえ雨水などが浸入しなくても、高温流体の通流停止に伴ってパイプの外表面に結露が発生するため、やはりパイプが錆びて腐食する可能性がある。さらに、周囲の雰囲気中や断熱部材に塩分が含まれている場合には、パイプの腐食も一層顕著となる。
このようなパイプの腐食を防止するため、従来、金属製パイプの外表面を防錆用塗料で塗装した後に断熱部材を取り付けていたのであるが、防錆用塗料の塗装作業に手間がかかり、施工性が悪いという欠点があった。
そこで、燐片状の亜鉛粉末、有機防錆剤、および、天然水飴を主成分とする防錆剤を使用し、断熱部材のうち、金属製パイプの表面に接触する面などに前記防錆剤を塗布し、断熱部材を金属製パイプの表面に接触させて取り付けることにより、金属製パイプに対し防錆機能を発揮するように構成した断熱部材が提案された(例えば、特許文献1参照)。
特開平7−269784号公報
しかし、上記特許文献に記載の断熱部材では、防錆剤が亜鉛粉末を含んでいるため、例えば、パイプの外表面が60℃以上になると、亜鉛が酸化して所望の防錆機能を発揮することができず、また、塩分が存在すると、亜鉛の消耗が顕著となって所望の防錆機能を長期間にわたって維持し得ないという欠点もあった。
さらに、パイプの外表面がより一層高温になると、有機防錆剤や天然水飴が分解して亜鉛粉末が剥がれるため、その場合にも所望の防錆機能を発揮することができず、結論として、上記特許文献に記載の断熱部材は、60℃以上の流体が通流するパイプ用としては実質的に使用不可能であり、ましてや塩分の存在下においては、防錆効果の持続についても改良の余地があった。
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえ60℃以上の高温下においても、また、塩分の存在下においても、金属製の被断熱体用として所望の防錆機能を長期間にわたって発揮し得る断熱部材とその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の特徴構成は、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材であって、珪酸カルシウム断熱材を主材とし、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を含むところにある。
本発明の第1の特徴によれば、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を含んでいるので、後述する実験結果から明らかなように、たとえ60℃以上の高温下においても、また、塩分の存在下においても、所望の防錆機能を比較的長時間にわたって発揮して金属製被断熱体の腐食を抑制することができる。
したがって、金属製被断熱体の外表面を防錆用塗料で塗装する必要もなく、たとえ60℃以上にまで昇温する環境下においても、また、塩分の存在下においても、所望どおりの腐食抑制効果と断熱効果を長期間にわったて発揮して金属製被断熱体を保護することができる。
本発明の第2の特徴構成は、前記防錆剤が、更に防錆顔料を含有するところにある。
本発明の第2の特徴構成によれば、防錆剤が、更に防錆顔料を含有するので、防錆剤による腐食抑制効果を更に向上させることができる。
本発明の第3の特徴構成は、前記防錆顔料が、亜リン酸カルシウムである。
本発明の第3の特徴構成によれば、防錆剤に含有される防錆顔料が、亜リン酸カルシウムであるから、例えば、金属製の被断熱体が鉄製の場合、鉄の不動態化するpHが10以上であることを考慮すると、pH10以上の亜リン酸カルシウムは、鉄を容易に防錆領域にもたらして確実な腐食抑制効果を発揮することができる。
本発明の第の特徴構成は、上記断熱部材において、前記防錆剤を含む防錆層が、前記断熱部材のうちの少なくとも前記被断熱体への接触面に設けられているところにある。
本発明の第の特徴構成によれば、前記防錆剤を含む防錆層が、断熱部材のうちの少なくとも被断熱体への接触面に設けられているので、防錆剤の使用量を少量に抑えながら金属製被断熱体の腐食を確実に抑制することができる。
本発明の第の特徴構成は、上記断熱部材において、前記防錆剤が、前記断熱部材内に混入されているところにある。
本発明の第の特徴構成によれば、前記防錆剤が、断熱部材内に混入されているので、例えば、断熱部材の成形前または成形時に混入することによって、断熱部材の成形後に防錆剤を塗布する手間が不用で、断熱部材の生産性の向上を図ることができる。
本発明の第の特徴構成は、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、珪酸カルシウム断熱材を主材として前記断熱部材を成形した後に、その断熱部材のうちの少なくとも前記被断熱体への接触面に、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を塗布して製造するところにある。
本発明の第の特徴構成によれば、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を使用するので、第1の特徴構成に関連して述べたように、たとえ60℃以上にまで昇温する環境下においても、また、塩分の存在下においても、所望どおりの腐食抑制効果と断熱効果を長期間にわたって発揮するとともに、断熱部材を成形した後に、その断熱部材のうちの少なくとも被断熱体への接触面に前記防錆剤を塗布して製造するので、第の特徴構成に関連して述べたように、防錆剤の使用量を少量に抑えて金属製被断熱体の腐食を確実に抑制する断熱部材を提供することができる。
本発明の第の特徴構成は、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、珪酸カルシウム断熱材を主材として前記断熱部材を成形する際に、その断熱部材の成形材料に、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を混入して製造するところにある。
本発明の第の特徴構成によれば、金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を使用するので、この場合にも、60℃以上の環境下で、また、塩分の存在下で所望どおりの腐食抑制効果と断熱効果を長期間にわたり発揮することができ、さらに、断熱部材を成形する際に、その断熱部材の成形材料に前記防錆剤を混入して製造するので、第の特徴構成に関連して述べたように、断熱部材の成形後に防錆剤を塗布する手間が不用となって、断熱部材の生産性の向上を図ることができる。
本発明による断熱部材とその製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この断熱部材は、主に保温を目的として複数を互いに接続して使用するもので、各断熱部材1は、珪酸カルシウム断熱材を主材とし、図1および図3に示すように、高温流体通流用の金属製の被断熱体としてのパイプPの外表面Sに合致するように、その断面形状がほぼ半割り円環状の半円筒体の成形品で構成されている。
そして、図1に示す第1の実施形態では、断熱部材1に防錆剤2を含む防錆層3が設けられ、図3に示す第2の実施形態では、断熱部材1に防錆剤2が混入されている。
その防錆剤2は、ハイドロカルマイトを主成分として含有しており、ハイドロカルマイトとしては、亜硝酸置換型ハイドロカルマイトが好ましく、そのハイドロカルマイトの配合量は、パイプPの外表面Sへの接触面積1m2当たり5〜300g、好ましくは10〜150gが適切である。
防錆剤2には、ハイドロカルマイトに加えて防錆顔料を含有させて、防錆顔料を併用して用いると更に腐食抑制効果を向上させることができる。
その防錆顔料としては、Mg、Ca、Ba、Sr、ZnまたはAlから選ばれた1種または2種以上の金属のリンのオキシ酸塩を主成分とするものが好ましい。
リンのオキシ酸塩とは、Mg、Ca、Ba、Sr、ZnまたはAlから選ばれた1種または2種以上の亜リン酸塩、リン酸塩および/またはポリリン酸塩であって、亜リン酸塩としては、例えば、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸亜鉛カリウムなどが挙げられ、正塩または塩基性塩のいずれであってもよく、また、含水または無水物のいずれであってもよい。
リン酸塩としては、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛カリウムなどが挙げられる。ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
このような防錆顔料は、ハイドロカルマイト100重量部に対して10〜4000重量部、好ましくは500〜2000重量部含有させるのが適切である。
防錆剤2には、更に無機系または有機系の結合剤を含有させるのが好ましく、その結合剤としては、水ガラスと称される水溶性珪酸塩、変性水溶液珪酸塩、アルキルシリケート、アルコキシシリケート、カップリング剤、コロイダルシリカなどが挙げられる。
水溶性珪酸塩は、一般式がM2O・xSiO2・yH2Oで表され、式中のMはナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属、N(C24OH)2、N(CH2OH)4、N(C24OH)4、C(NH23NHを示し、式中のxおよびびyは整数を示し、具体的な化合物としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどの珪酸アルカリ金属塩、珪酸トリエタノールアミン、珪酸テトラメタノールアンモニウム、珪酸テトラエタノールアンモニウムなどが挙げられる。
変性水溶性珪酸塩としては、前記水溶性珪酸塩をアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、ジルコニウム、バナジウムから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、弗化物、珪弗化物の1種または2種以上で変性させたもの、あるいは、珪弗化ナトリウム、トリ珪弗化亜鉛酸カリウム、フルオロアルミニウム錯塩、フルオロ亜鉛錯塩などで変性させたもの(特開昭53−18636号参照)などが挙げられる。
アルキルシリケートは、一般式がSiR4またはSiXR3で表され、式中のRはアルキル基を示し、Xはアルコキシ基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物としては、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケートなどが挙げられる。
アルコキシシランは、一般式がSi(OR)4またはSiX(OR)3、SiR(OR)3で表され、式中のRはアルキル基を示し、Xはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物としては、例えば、テトラメチルキシシリケート、テトラエトキシシリケート、テトラプロポキシシリケート、テトラブトキシシリケートなどが挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートや、テトラオクチルビス(ジドデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネートなどのチタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤などが挙げられる。
コロイダルシリカとしては、粒径が通常2〜100nm程度のもので、固形分20〜40%程度で0.7%以下のNa2Oを含むもので、特に好ましくはpH8〜10のアルカリで安定化されたコロイダルシリカを用いることができる。
ただし、結合剤としては、以上列挙した結合剤中、特に、無機系結合剤で水ガラスの一例である珪酸ナトリウムが、安価で耐久性に優れる点で好ましい。
(第1の実施形態)
第1の実施形態による断熱部材1は、図1に示すように、珪酸カルシウム断熱材を主材とする断熱部材1のうち、少なくともパイプPの外表面Sに接触する面、つまり、半円筒体の内周面1aに防錆剤2からなる防錆層3が設けられ、必要に応じて、半円筒体の長手方向に沿う端面1bと長手方向に直交する端面1cにも、同じ防錆剤2からなる防錆層3が設けられている。
その防錆層3は、水ガラス、例えば、珪酸ナトリウム(Na2SiO3)と、ハイドロカルマイト(日本化学工業社製:[3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O])と、亜リン酸カルシウム(CaHPO3)を主成分とする防錆剤2からなり、ハイドロカルマイトと亜リン酸カルシウムは、図5の(イ)に示すように、両者が化学的に結合されて複合化されたもの、そして/または、図5の(ロ)に示すように、両者が混合化されたものである。
なお、パイプPの外表面Sへの接触面積1m2当たり、防錆層3の各成分の配合量は、水ガラス1500g、ハイドロカルマイト20g、亜リン酸カルシウム180gである。
つぎに、この第1の実施形態による断熱部材1の製造方法について説明する。
図2に示すように、断熱部材1の主材である珪酸カルシウムの成形材料となる酸化カルシウム(CaO)と酸化珪素(SiO2)に水を加え、混合機により混合してゲル化する(ステップ1)。必要に応じて、補強用のガラス繊維や撥水剤を加え(ステップ2)、所定の形状にプレス成形し(ステップ3)、オートクレーブにより焼成して結晶化する(ステップ4)。その後、乾燥して(ステップ5)、図示のような半円筒体の母体1Aを成形し、少なくともその内周面1aに、必要な場合には、長手方向に沿う端面1bと長手方向に直交する端面1cにも、上述した防錆剤2をローラーや刷毛により塗るか、あるいは、吹き付けて防錆層3を形成するのである。
(第2の実施形態)
第2の実施形態による断熱部材1は、図3に示すように、珪酸カルシウム断熱材を主材とする断熱部材1内にほぼ均一に防錆剤2が混入されている。
防錆剤2は、第1の実施形態と同じ防錆剤で、水ガラス、ハイドロカルマイト、および、亜リン酸カルシウムを主成分とし、ハイドロカルマイトと亜リン酸カルシウムは、図5の(イ)に示す複合化されたもの、そして/または、図5の(ロ)に示す混合化されたものが使用可能である。
第2の実施形態による断熱部材1の製造方法は、図4に示すように、断熱部材1の主材である珪酸カルシウムの成形材料となる酸化カルシウム(CaO)と酸化ケイ素(SiO2)に水を加え、混合機により混合してゲル化し(ステップ1)、必要に応じて、補強用のガラス繊維や撥水剤を加える(ステップ2)。
以上は第1の実施形態と同じであるが、第2の実施形態では、ステップ2において、ガラス繊維や撥水剤に加えて、さらに、上述した防錆剤2を混入し、その後、所定の形状にプレス成形し(ステップ3)、オートクレーブにより焼成して結晶化し(ステップ4)、乾燥して(ステップ5)、図示のような断熱部材1を形成するのである。
なお、防錆層3の各成分の固形分としての配合割合は、酸化カルシウム50重量部、酸化珪素50重量部、ハイドロカルマイト1重量部、亜リン酸カルシウム9重量部、ガラス繊維2重量部、撥水剤6重量部である。
本発明による断熱部材1の効果を確認するため、種々の性能試験を行ったので、つぎに、その試験方法と結果について言及する。
(試験方法)
試験は、図6に示すように、ホットプレート4を使用して、ホットプレート4上に仮保温材5(厚さ5mmの珪酸カルシウム板)を設置し、その上に一辺が100mmの正方形で厚さ5mmのみがき鋼板6を設置し、さらに、その上に一辺が75mmの正方形で厚さ10mmの試供体7を設置した。試供体7の周囲をシリコンシーリング材8で密封して、試供体7の上面に液体収容空間を形成し、みがき鋼板6の腐食を促進するため、その空間内に塩化ナトリウム(NaCl)を含むイオン交換水9を収容し、みがき鋼板6と仮保温材5の間に熱電対10を配置した。
そして、熱電対10による検出温度が80℃になるようにホットプレート4を温度制御し、その80℃に維持した加熱状態を10時間継続し、その後、常温状態で14時間継続するとともに、この加熱状態と常温状態を1サイクルとして3日間継続した。3日後に解体して、みがき鋼板6の腐食面積を測定した。
なお、試供体7としては、珪酸カルシウム板の下面(みがき鋼板側)に本発明による防錆剤を塗布または混合したもの(実施例1〜6)と、防錆剤を塗布または混合しないもの(比較例1〜5)を準備してそれぞれについて種々の試験を行った。
(第1の実施形態における試験結果)
(試験1:塩分の影響)
みがき鋼板6との接触面積1m2当たり、珪酸カルシウム板の表面に本発明による防錆剤(ハイドロカルマイト20g、亜リン酸カルシウム180g)200gを塗布した試供体7を準備し、試供体7の上面空間内のイオン交換水中に添加する塩化ナトリウムの量を変えて、具体的には、0.5g、1.0g、1.5gの3種類の量に対してサイクル試験を行い、塩分量に対する防錆効果について確認した(実施例1〜3と比較例1〜3)。
なお、塩化ナトリウム添加量が0.5gの場合、換算すると、1m3のイオン交換水中に9kgの塩化ナトリウムが含まれていることになる。
(試験1の結果)
図7に示す試験結果から明らかなように、防錆剤を塗布しない比較例では、39〜58%程度の腐食面積を示したのに対し、防錆剤を塗布した実施例では、わずか3〜8%程度の腐食面積であり、本発明の断熱部材によれば、たとえ塩分の存在下においても顕著な腐食抑制効果のあることが確認できた。
(試験2:温度の影響)
みがき鋼板6との接触面積1m2当たり、珪酸カルシウム板の表面に本発明による防錆剤200gを塗布した試供体7を650℃の電気炉内で10時間の加熱を行ったもの(実施例4)と加熱を行っていないもの(実施例5)を準備し、更に、防錆剤を塗布せず、かつ、加熱も行っていないもの(比較例4)も準備して、それぞれサイクル試験を行い、高温の温度履歴がある場合での防錆効果について確認した。
なお、試供体7の上面空間内のイオン交換水中に添加する塩化ナトリウムの量は、0.1gとした。
(試験2の結果)
図8の試験結果から明らかなように、650℃に加熱した実施例4では9%の腐食面積で、加熱を行わない実施例5とほぼ同等な腐食面積であり、防錆剤を塗布していない比較例4より大きな防錆効果が見られ、たとえ650℃の高温下に曝されても顕著な腐食抑制効果があり、本発明の断熱材によれば、たとえ高温下で、かつ、塩分の存在下においても顕著な腐食抑制効果のあることが確認できた。
(第2の実施形態における試験結果)
(試験3:防錆成分の配合)
試供体7としては、珪酸カルシウム断熱材100重量部に本発明による防錆剤10重量部を配合したもの(実施例6)と珪酸カルシウム断熱材に防錆剤を配合しないもの(比較例5)とを準備して、それぞれに対してサイクル試験を行い、防錆成分を配合した場合での防錆効果について確認した。
なお、試供体7の上面空間内のイオン交換水中に添加する塩化ナトリウムの量は、0.1gとした。
(試験3の結果)
図9の試験結果から明らかなように、防錆剤を配合しない比較例5では41%の腐食面積を示したのに対し、防錆剤を配合した実施例6では、わずか5%の腐食面積であり、防錆剤を配合した場合でも、塩分の存在下において顕著な腐食抑制効果のあることが確認できた。
〔別実施形態〕
)先の実施形態では、金属製の被断熱体の一例としてパイプPを示したが、パイプP以外にも、例えば、高温の流体や固体などを収納するタンクや各種の容器などにも適用することができる。
したがって、断熱部材1の形状も、これまでの実施形態のような半円筒形状に限るものではなく、被断熱体の形状に応じて種々の形状に形成することができる。
第1の実施形態による断熱部材のパイプへの取り付け工程を示す斜視図 第1の実施形態による断熱部材の製造方法を示すフローチャート 第2の実施形態による断熱部材のパイプへの取り付け工程を示す斜視図 第2の実施形態による断熱部材の製造方法を示すフローチャート ハイドロカルマイトと亜リン酸カルシウムの形態を示す模式図 試験に使用した装置の概略構成図 試験1の結果を示す図表 試験2の結果を示す図表 試験3の結果を示す図表
符号の説明
1 断熱部材
1a 断熱部材の被断熱体への接触面
1b 断熱部材の長手方向に沿う端面
1c 断熱部材の長手方向に直交する端面
2 防錆剤
3 防錆層
P 金属製の被断熱体
S 被断熱体の表面

Claims (7)

  1. 金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材であって、
    珪酸カルシウム断熱材を主材とし、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を含む断熱部材。
  2. 前記防錆剤が、更に防錆顔料を含有する請求項1に記載の断熱部材。
  3. 前記防錆顔料が、亜リン酸カルシウムである請求項2記載の断熱部材。
  4. 前記防錆剤を含む防錆層が、前記断熱部材のうち少なくとも前記被断熱体への接触面に設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱部材。
  5. 前記防錆剤が、前記断熱部材内に混入されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱部材。
  6. 金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、珪酸カルシウム断熱材を主材として前記断熱部材を成形した後に、その断熱部材のうちの少なくとも前記被断熱体への接触面に、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を塗布して製造する断熱部材の製造方法。
  7. 金属製の被断熱体の表面に接触させて設ける断熱部材の製造方法であって、
    珪酸カルシウム断熱材を主材として前記断熱部材を成形する際に、その断熱部材の成形に、ハイドロカルマイトと水ガラスを含有成分とする防錆剤を混入して製造する断熱部材の製造方法。
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