JP4201163B2 - 画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイル境界歪みを抑制した画像処理装置に関し、例えば携帯電話、デジタルカメラ、インターネット、医療用画像、衛星通信用画像などの画像を扱う機器、アプリケーションプログラム、プリンタドライバ等のデバイスドライバに好適な技術である。
【0002】
【従来の技術】
高精細画像の取扱いを容易にする画像圧縮方式の一つとして、高圧縮率でも高画質な画像を復元可能なJPEG2000がある。JPEG2000では、画像を矩形領域(タイル) に分割することにより、少ないメモリ環境下で圧縮伸張処理を行うことが可能である。すなわち、個々のタイルが圧縮伸長プロセスを実行する際の基本単位となり、圧縮伸長動作をタイル毎に独立に行うことができる。
【0003】
このような分割処理は、タイリングと呼ばれ、省メモリ化・高速化に有効な手法であるが、「J. X. Wei, M. R. Pickering, M. R. Frater and J. F. Arnold, "A New Method for Reducing Boundary Artifacts in Block-Based Wavelet Image Compression," in VCIP 2000, K. N. Ngan, T. Sikora, M-T Sun Eds., Proc. of SPIE Vol. 4067, pp. 1290-1295, 20-23 June 2000, Perth, Australia」にも記載されているように、圧縮率の高い条件で圧縮伸長処理を行った場合、伸長後の画像においてタイルの境界が不連続となるという問題がある。
【0004】
そこで、従来、このタイル境界歪みを解決するために、隣接するタイル同士で境界を互いにオーバーラップさせて処理する手法が提案されている。ただし、JPEG2000の基本仕様では、隣接するタイル境界を重複させないよう規定されている。
【0005】
また、他の方法として、タイル境界の画素にローパスフィルタをかけて平滑化する方法がある。さらに、本出願人によって、タイル境界からの距離に応じてローパスフィルタの平滑化度を制御する手法、タイル境界からの距離が大きくなるにつれてローパスフィルタの平滑化度を徐々に弱くする手法、タイル境界の近傍の画素に対してエッジ量を算出し、エッジ量に応じてローパスフィルタの平滑化度を制御する手法、エッジ量が大きくなるにつれてローパスフィルタの平滑化度を徐々に弱くする手法、さらに、タイル境界からの距離とその画素でのエッジ量に応じてローパスフィルタを制御する手法、つまり、タイル境界から離れるにつれて、また、エッジ量が大きくなるにつれてローパスフィルタの平滑化度を弱くする手法が提案されている。
【0006】
これらの処理により、タイル境界歪みが抑制される。また、タイル境界にローパスフィルタをかけると画像のエッジ部がタイル境界をまたぐような場合に、帯状の劣化(つまり、タイル境界付近が帯状に平滑化されることによるエッジ画像の帯状のぼやけ)が発生してしまうが、上記したようにエッジ量に応じてローパスフィルタの平滑化度を制御することにより、エッジ量が大きい場合でも帯状のぼやけた画像の発生を抑制することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、利用者によっては、多少のタイル境界歪みがあっても復号画像の表示時間を短縮したいという人や、表示に多少の時間がかかっても高画質の復号画像を得たいという人もいる。上記した従来技術では、高画質を追求するあまり、処理時間については考慮していなかった。
【0008】
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、タイル境界歪み抑制方法として、画質を優先した方法と、処理速度を優先した方法を用い、利用者がその何れかを選択できる構成を採ることにより、多数の利用者が満足できるタイル境界歪み方式を実現した画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、復号画像の表示速度を優先する利用者のために、タイル境界歪み抑制機能のON/OFFを利用者が指定できる構成にした画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【0010】
また、利用者によっては、画質調整操作が煩わしくても高画質の伸張画像を望む人もいるし、細かな調整操作が面倒な人もいる。そこで、本発明の他の目的は、画質調整機能が豊富な適応的ポストフィルタ方式と画質調整操作が不要な方式を搭載した画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、ROI領域内のみに適応的ローパスフィルタを施すことにより、タイル境界歪み抑制に要する処理時間を短縮した画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明では、画質優先のタイル境界歪み抑制方法としてタイル境界からの距離とエッジ量に応じた適応的ポストフィルタ方式を用い、処理速度優先のタイル境界歪み抑制方法として、一様なポストフィルタ方式を用い、利用者が何れかの方式を選択できる構成を採ることにより、より幅広い利用者が満足するタイル境界歪み方式を実現する。
【0013】
本発明では、画像をブロックに分割し、ブロック毎に圧縮・伸張を行う手段と、2つ以上のブロック歪み抑制手段を有し、どのブロック歪み抑制手段を用いるかを選択でき、また、ブロック歪み抑制手段を用いるか否かを選択(デタイルのON/OFFを利用者が指定)できる。
【0014】
本発明では、ブロック歪み抑制手段として、画質優先のブロック歪み抑制手段と処理速度優先のブロック歪み抑制手段を有し、画質優先デタイルか速度優先デタイルかを選択する。
【0015】
本発明の画質優先のブロック歪み抑制手段は、伸張後の画像のブロック境界近傍画素にローパスフィルタをかける方式であり、該画素のブロック境界からの距離と該画素におけるエッジ量に応じてローパスフィルタの強度を適応的に制御する。
【0016】
本発明の速度優先のブロック歪み抑制手段は、伸張後の画像のブロック境界近傍画素に一様なローパスフィルタをかける方式である。
【0017】
本発明では、画質の高いブロック歪み抑制手段(画質の高いデタイル)と画質の低いブロック歪み抑制手段(画質の低いデタイル)を有し、画質の高いデタイルか画質の低いデタイルかを選択する。
【0018】
本発明では、高速なブロック歪み抑制手段(高速なデタイル)と低速なブロック歪み抑制手段(低速なデタイル)を有し、高速なデタイルか低速なデタイルかを選択する。
【0019】
本発明では、画像信号を輝度と色差に分けた場合、高速なデタイル方式は輝度のみにブロック歪み除去手段を施すのに対し、低速なデタイル方式は輝度と色差にブロック歪み除去手段を施す。
【0020】
本発明では、どのブロック歪み抑制手段を用いるかを利用者が指定できる(選択主体は利用者である)。
【0021】
本発明では、領域毎にタイル境界歪み抑制のためのローパスフィルタのON/OFFを指定する。
【0022】
本発明では、ブロック境界の近傍で適応的ローパスフィルタを施す領域はROI領域内部である。
【0023】
本発明では、ROI領域の境界からの距離に応じてROI領域の境界近傍にかけるローパスフィルタの強度を制御する。
【0024】
本発明では、ROI領域の境界からの距離とROI境界近傍の画素におけるエッジ量に応じてROI領域の境界近傍の画素にかけるローパスフィルタの強度を制御する。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を用いて具体的に説明する。
本発明を説明する前に、JPEG2000についてその概要を説明する。
【0026】
図1は、JPEG2000アルゴリズムの基本を説明するための図である。JPEG2000アルゴリズムは、色空間変換・逆変換部111、2次元ウエーブレット変換・逆変換部112、量子化・逆量子化部113、エントロピー符号化・復号化部114、タグ処理部115で構成されている。
【0027】
図2は、タイル分割されたカラー画像の各コンポーネントの例を示す。カラー画像は、一般に、図2に示すように、原画像の各コンポーネント201、202、203(ここではRGB原色系)が、矩形領域(タイル)に分割される。そして、個々のタイル、例えば、R00,R01,…,R15/G00,G01,…,G15/B00,B01,…,B15が、圧縮伸長プロセスを実行する際の基本単位となる。従って、圧縮伸長動作は、コンポーネント毎、そしてタイル毎に、独立に行なわれる。
【0028】
符号化時には、各コンポーネントの各タイルのデータが、図1の色空間変換部111に入力され、色空間変換を施されたのち、2次元ウェーブレット変換部112で2次元ウェーブレット変換(順変換)が適用されて周波数帯に空間分割される。
【0029】
図3は、デコンポジション・レベル数が3の場合の、各デコンポジション・レベルにおけるサブ・バンドを示している。すなわち、原画像のタイル分割によって得られたタイル原画像(0LL)(デコンポジション・レベル0(300))に対して、2次元ウェーブレット変換を施し、デコンポジション・レベル1(301)に示すサブ・バンド(1LL,1HL,1LH,1HH)を分離する。そして引き続き、この階層における低周波成分1LLに対して、2次元ウェーブレット変換を施し、デコンポジション・レベル2(302)に示すサブ・バンド(2LL,2HL,2LH,2HH)を分離する。順次同様に、低周波成分2LLに対しても、2次元ウェーブレット変換を施し、デコンポジション・レベル3(303)に示すサブ・バンド(3LL,3HL,3LH,3HH)を分離する。更に図3では、各デコンポジション・レベルにおいて符号化の対象となるサブ・バンドを、グレーで表してある。例えば、デコンポジション・レベル数を3とした時、グレーで示したサブ・バンド(3HL,3LH,3HH,2HL,2LH,2HH,1HL,1LH,1HH)が符号化対象となり、3LLサブ・バンドは符号化されない。
【0030】
次いで、指定した符号化の順番で符号化の対象となるビットが定められ、図1の量子化部113で対象ビット周辺のビットからコンテキストが生成される。
【0031】
量子化処理が終わったウェーブレット係数は、個々のサブバンド毎に、「プレシンクト」と呼ばれる重複しない矩形に分割される。これは、インプリメンテーションでメモリを効率的に使うために導入されたものである。図5に示すように、一つのプレシンクトは、空間的に一致した3つの矩形領域からなっている。更に、個々のプレシンクトは、重複しない矩形の「コード・ブロック」に分けられる。これは、エントロピー・コーディングを行う際の基本単位となる。
【0032】
ウェーブレット変換後の係数値は、そのまま量子化し符号化することも可能であるが、JPEG2000では符号化効率を上げるために、係数値を「ビットプレーン」単位に分解し、画素あるいはコード・ブロック毎に「ビットプレーン」に順位付けを行うことができる。図6は、その手順を簡単に示す。この例では、原画像(32×32画素)を16×16画素のタイル4つで分割した場合で、デコンポジション・レベル1のプレシンクトとコード・ブロックの大きさは、各々8×8画素と4×4画素としている。プレシンクトとコード・ブロックの番号は、ラスター順に付けられる。タイル境界外に対する画素拡張にはミラーリング法を使い、可逆(5,3)フィルタでウェーブレット変換を行い、デコンポジションレベル1のウェーブレット係数値を求めている。また、タイル0/プレシンクト3/コード・ブロック3について、代表的な「レイヤー」についての概念図をも併せて示している。レイヤーの構造は、ウェーブレット係数値を横方向(ビットプレーン方向)から見ると理解し易い。1つのレイヤーは任意の数のビットプレーンから構成される。この例では、レイヤー0、1、2、3は、各々、1、3、1、3つのビットプレーンから成っている。そして、LSBに近いビットプレーンを含むレイヤー程、先に量子化の対象となり、逆に、MSBに近いレイヤーは最後まで量子化されずに残ることになる。LSBに近いレイヤーから破棄する方法はトランケーションと呼ばれ、量子化率を細かく制御することが可能である。
【0033】
エントロピー符号化部114(図1参照)では、コンテキストと対象ビットから確率推定によって、各コンポーネントのタイルに対する符号化を行う。こうして、原画像の全てのコンポーネントについて、タイル単位で符号化処理が行われる。最後にタグ処理部115は、エントロピー符号化部114からの全符号化データを1本のコード・ストリームに結合するとともに、それにタグを付加する処理を行う。
【0034】
図4は、コードストリームの構造を簡単に示す。コード・ストリームの先頭と各タイルを構成する部分タイルの先頭にはヘッダと呼ばれるタグ情報が付加され、その後に、各タイルの符号化データが続く。そして、コード・ストリームの終端には、再びタグが置かれる。
【0035】
一方、復号化時には、符号化時とは逆に、各コンポーネントの各タイルのコード・ストリームから画像データを生成する。図1を用いて簡単に説明する。この場合、タグ処理部115は、外部より入力したコード・ストリームに付加されたタグ情報を解釈し、コード・ストリームを各コンポーネントの各タイルのコード・ストリームに分解し、その各コンポーネントの各タイルのコード・ストリーム毎に復号化処理が行われる。コード・ストリーム内のタグ情報に基づく順番で復号化の対象となるビットの位置が定められるとともに、逆量子化部113で、その対象ビット位置の周辺ビット(既に復号化を終えている)の並びからコンテキストが生成される。エントロピー復号化部114で、このコンテキストとコード・ストリームから確率推定によって復号化を行い対象ビットを生成し、それを対象ビットの位置に書き込む。このようにして復号化されたデータは各周波数帯域毎に空間分割されているため、これを2次元ウェーブレット逆変換部112で2次元ウェーブレット逆変換を行うことにより、画像データの各コンポーネントの各タイルが復元される。復元されたデータは色空間逆変換部111によって元の表色系のデータに変換される。
【0036】
(実施例1)
図7は、本発明の実施例1に係る伸長部の構成を示す。タグ処理部1から色空間逆変換部5までの処理は前述したJPEG2000と同様である。本実施例では、タイル境界歪み除去方式選択部(以下、デタイル方式選択部)6と、画質優先方式のタイル境界平滑化部7と、速度優先方式のタイル境界平滑化部8が設けられている。
【0037】
利用者が、後述する圧縮伸張画像表示ツールを用いてデタイル方式を指定し、指定された情報が図示しないCPUからデタイル方式選択部6に入力される。デタイル方式選択部6では、画質優先方式が指定されたとき、色空間逆変換部5で逆変換されたRGBデータをタイル境界平滑化部7に入力し、タイル境界の近傍の画素に平滑化を行い、処理速度優先方式が指定されたとき、色空間逆変換部5で逆変換されたRGBデータをタイル境界平滑化部8に入力し、タイル境界の近傍の画素に平滑化を行う。
【0038】
図8は、圧縮伸張画像表示ツールを示す。利用者が「表示ツール」のタイル境界を指定すると(a)、「タイル境界」のポップアップウィンドウが現れる(b)。「タイル境界」ポップアップウィンドウ上で、利用者はデタイル方式を選択できる。ここでは、「画質優先モード」と「速度優先モード」と「デタイル(タイル境界歪み除去)OFF」を選択できる構成になっている。「画質優先モード」と「速度優先モード」が選択された場合には、利用者は必要に応じて調整項目で調整できる。調整項目はこの例では、「圧縮率」「階層数」「表示倍率」がある。また、利用者が「デタイルOFF」を選択した場合には、調整項目は非アクティブになる。
【0039】
図9は、タイル境界平滑化部7(画質優先モードのデタイル方式)の具体例を示し、タイル境界の近傍の画素(図9(a)の灰色の領域の画素(例えば境界を挟んだ計8画素))に対してローパスフィルタをかける。
【0040】
図9(b)は、縦方向タイル境界におけるローパスフィルタの一例を示す。(b)に示すように、タイル境界に垂直なローパスフィルタをかけることにより、縦方向のタイル境界歪みを抑制する。本実施例では、1次元の横長のフィルタ(5画素×1画素)の例で説明したが、横方向の周波数成分を除去するような周波数特性を有するローパスフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0041】
図9(c)は、横方向タイル境界におけるローパスフィルタの一例を示す。(c)に示すように、タイル境界に垂直なローパスフィルタをかけることにより、横方向のタイル境界歪みを抑制する。本実施例では、1次元の縦長のフィルタ(1画素×5画素)の例で説明したが、縦方向の周波数成分を除去するような周波数特性を有するローパスフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0042】
図9(d)は、タイル境界とタイル境界の交点の近傍におけるローパスフィルタの一例を示す。(d)に示すように、十字型のローパスフィルタをかけることにより、タイル境界交点付近のタイル境界歪みを抑制する。本実施例では、十字型のフィルタの例で説明したが、縦方向と横方向の周波数成分をともに除去するような周波数特性を有するローパスフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0043】
図10は、タイル境界平滑化部8(処理速度優先モードのデタイル方式)の具体例を示し、タイル境界の近傍の画素(図10(a)の灰色の領域の画素(例えば境界を挟んだ計8画素))に対してローパスフィルタをかける。
【0044】
(b)、(c)、(d)に示すように、タイル境界近傍の画素に均一に十字型のローパスフィルタをかけることにより、タイル境界歪みを抑制する。本実施例では、十字型のフィルタの例で説明したが、縦方向と横方向の周波数成分をともに除去するような周波数特性を有するローパスフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0045】
上記したように、本実施例では、処理速度優先モードが指定された場合に適用されるタイル境界平滑化部8の方が、画質優先モードが指定された場合に適用されるタイル境界平滑化部7よりも計算量が少ない。これは、タイル境界平滑化部8ではタイル境界の方向(縦、横方向)を判定する必要がないためである。なお、タイル境界の方向は符号化データに含まれる情報により取得する。
【0046】
これに対し、画質を優先するタイル境界平滑化部7では、タイル境界の方向毎にきめ細かい制御ができるので、無駄な部分を平滑化することなく、また副作用(帯状のぼやけ)がなく、良好にタイル境界歪みを除去することができる。また、図9(a)、(b)、(c)のフィルタの中央の係数(値4)が、図10(a)、(b)、(c)のフィルタの中央の係数(値8)より小さくなっているが、これは画質優先モードの方が処理速度優先モードよりもローパスフィルタの平滑化度が大きいことを意味し、画質優先モードでは処理速度優先モードよりも一層タイル境界歪みが抑制され、画質が向上する。
【0047】
また、画質優先モードを高画質、処理速度優先モードを低画質にそれぞれ置き換え、タイル境界平滑化部7を高画質用とし、タイル境界平滑化部7を低画質用として上記実施例を変更できる。
【0048】
このように、本実施例では、利用者が好みに応じて上記した2種類のデタイル方式を使い分けることができる。
【0049】
なお、カラー画像における処理速度優先モードの変形例として、カラー画像を輝度信号と色差信号に分離し、輝度信号のみに一様なローパスフィルタをかける、高速処理用のタイル境界平滑化部8aと、輝度信号と色差信号に一様なローパスフィルタをかける、低速処理用のタイル境界平滑化部8bを設け(画質優先のタイル境界平滑化部7を設けない)、選択部6でその何れかを選択する構成にしてもよい。
【0050】
(実施例2)
図11は、本発明の実施例2に係る伸長部の構成を示す。本実施例では、さらに、距離/エッジ量算出部9が設けられている。タイル境界平滑化部8(処理速度優先モード)の構成は、実施例1と同様である。また、タグ処理部1から色空間逆変換部5までの処理は前述したJPEG2000と同様である。
【0051】
まず、本実施例では、タイル境界からの画素間距離に応じてタイル境界平滑化部7(画質優先モード)のローパスフィルタ強度を切り換える。
【0052】
図12は、タイル境界からの距離の算出方法を説明する図である。各画素において、上下左右のタイル境界からの距離が算出される。それらの最小値を該画素におけるタイル境界からの距離とする。なお、タイル境界の位置、タイル境界の方向は符号化データに含まれる情報により取得する。
【0053】
図13に示すように、本実施例では縦方向のタイル境界の近傍の画素に対しては、1次元の横方向のローパスフィルタを用いる(図13(a))。横方向のタイル境界の近傍の画素に対しては、1次元の縦方向のローパスフィルタを用いる(図13(b))。タイル境界の交点の近傍画素に対しては、十字型のローパスフィルタを用いる(図13(c))。実施例1と同様に、これは一例であり、縦方向のタイル境界近傍の画素には横方向の周波数成分を除去するようなフィルタであればいかなるフィルタであってもよいし、同様に、横方向のタイル境界近傍の画素には縦方向の周波数成分を除去するようなフィルタならばいかなるフィルタであってもよいし、タイル境界の交点近傍の画素には縦方向周波数成分と横方向の周波数成分をともに除去するようなフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0054】
本実施例では、タイル境界からの画素間距離を用いて図13のローパスフィルタを適応的に処理する。すなわち、この例では、ローパスフィルタは注目画素の位置の係数(フィルタの中央の係数m)のみ変化させる。画素間距離が大きくなるにつれて、徐々に係数mの値を大きくする。
図13の例では、中央の係数mは、
m=4+64*d
で算出される。ここでdは画素間距離を表す。これは、タイル境界からの画素間距離が大きくなるにつれて施すローパスフィルタの平滑化度を弱くすることを意味する。
【0055】
また、本実施例では、タイル境界からの画素間距離とタイル境界近傍の画素のエッジ量に応じて、タイル境界平滑化部7のローパスフィルタ強度を切り換える処理も行う。図14は、タイル境界からの画素間距離とエッジ量によるローパスフィルタ制御を説明する図である。
【0056】
距離/エッジ量算出部9はタイル境界近傍の画素に対し、
(1)タイル境界からの画素間距離(図14(a))
(2)エッジ量算出フィルタ(図14(b))でエッジ量
を算出する。また、タイル境界の方向は符号化データに含まれる情報により取得する。
【0057】
本実施例では、タイル境界が縦方向の近傍画素ならば、図14(c)に示すような横長のローパスフィルタをかける。タイル境界が横方向の近傍画素ならば、図14(d)に示すような縦長のローパスフィルタをかける。タイル境界の交点近傍の画素ならば、図14(e)に示すような十字型のローパスフィルタをかける。これは一例であり、縦方向のタイル境界近傍の画素には横方向の周波数成分を除去するようなフィルタであればいかなるフィルタであってもよいし、横方向のタイル境界近傍の画素には縦方向の周波数成分を除去するようなフィルタならばいかなるフィルタであってもよいし、タイル境界の交点近傍の画素には縦方向周波数成分と横方向の周波数成分をともに除去するようなフィルタであればいかなるフィルタであってもよい。
【0058】
そして、算出された画素間距離と斜め方向のエッジ量に応じて、タイル境界平滑部7のローパスフィルタ強度を制御する。なお、エッジ量として斜め方向のエッジ量を算出する理由は、縦、横方向のタイル境界をエッジとして検出しないためである。
【0059】
本実施例では、画素間距離が大きいほど、またエッジ量の絶対値が大きいほど、ローパスフィルタの中央値mを大きくする。図14(c)〜(e)に示す適応的ローパスフィルタの例では、中央の係数値をmとし、画素間距離をdとし、上記したエッジ量をEとするとき、
Figure 0004201163
によって、中央の係数値mを算出する。
【0060】
これは、タイル境界からの画素間距離dが大きいほど、タイル境界近傍の画素のエッジ量の絶対値abs(E)が大きいほど、施すローパスフィルタの平滑化度を小さくする、ということを意味する。d=0の場合のみ独立に制御した理由は、タイル境界の最近傍の画素に対してはある程度平滑化度の強いローパスフィルタを施さないと、タイル境界が目立ってしまうからである。
【0061】
上記したように、本実施例においても、実施例1と同様に、処理速度優先モードが指定された場合に適用されるタイル境界平滑化部8の方が、画質優先モードが指定された場合に適用されるタイル境界平滑化部7よりも計算量が少ない。これは、タイル境界平滑化部8ではタイル境界の方向の判定やタイル境界からの距離やタイル境界近傍画素のエッジ量を算出する必要がないためである。これに対し、タイル境界平滑化部7では、タイル境界の距離やタイル境界近傍の画素のエッジ量やタイル境界の方向に応じてきめ細かい平滑化制御ができるので、副作用(帯状のぼやけ)が起こりそうな部分を平滑化することなく、極めて良好にタイル境界歪みを除去することができる。これにより、利用者は好みに応じて上記した2種類のデタイル方式を使い分けることができる。
【0062】
なお、実施例1と同様に、本実施例でも、カラー画像における処理速度優先モードの変形例として、カラー画像を輝度信号と色差信号に分け、輝度信号のみに一様なローパスフィルタをかける高速方式と、輝度信号と色差信号に一様なローパスフィルタをかける低速方式を用いてもよい。
【0063】
(実施例3)
図15は、本発明の実施例3に係る伸長部の構成を示す。タグ処理部1から色空間逆変換部5(5a、5b)までの処理は前述したJPEG2000と同様である。
【0064】
利用者が、後述する圧縮伸張画像表示ツールを用いてデタイル方式を指定し、指定された情報が図示しないCPUからデタイル方式選択部6aに入力される。デタイル方式選択部6aで画質優先方式が指定されたとき、復号化されたデータは2次元ウェーブレット逆変換部4aに入力され、色空間逆変換部5aを経て、タイル境界平滑化部7に送られる。タイル境界平滑化部7は前述した実施例1のタイル境界平滑化部7または実施例2のタイル境界平滑化部7で実現され、タイル境界の近傍の画素に平滑化を行う。
【0065】
デタイル方式選択部6aで汎用性優先モードが指定されたとき、復号化されたデータは2次元ウェーブレット逆変換部4bに入力されてから、色空間逆変換部5bに送られる。汎用性優先モードでは、タイル境界近傍画素の平滑化を行わない。
【0066】
なお、色空間逆変換部5aと色空間逆変換部5bは輝度色差信号をRGB信号に変換する部分であり、動作は同じである。
【0067】
図16は、圧縮伸張画像表示ツールを示す。利用者が「表示ツール」のタイル境界を指定すると(a)、「タイル境界」のポップアップウィンドウが現れる(b)。「タイル境界」ポップアップウィンドウで、利用者はデタイル方式を選択できる。「画質優先モード」を選択した場合には、調整項目がアクティブになる。調整項目には例えば、「圧縮率」「階層数」「表示倍率」などがある。利用者がこれらを調整することにより最適な画質の伸張画像を表示することができる。また、利用者が「汎用性優先モード」を選択した場合、調整項目は非アクティブになる。また、利用者が「デタイルOFF」を選択した場合も、調整項目は非アクティブになる。なお、汎用性優先モードでは、2次元ウェーブレット逆変換部4bのウェーブレット逆変換中に、ポストフィルタリングに相当する処理が行われる。
【0068】
(実施例4)
図17は、本発明の実施例4に係る伸長部の構成を示す。タグ処理部1から色空間逆変換部5までの処理は前述したJPEG2000と同様である。
【0069】
本実施例では、補正タイル境界限定部10を設け、すべてのタイル境界近傍画素にローパスフィルタをかけるのではなく、ローパスフィルタをかけるべきタイル境界を限定して、そのタイル境界近傍画素にのみに、実施例1と同様にして、タイル境界平滑化部11でローパスフィルタをかける。図18、図19はその例を示し、ROI領域内のタイル境界の近傍画素のみにローパスフィルタをかける。ROI領域とは、画像全体から切り出して拡大したり、他の部分に比べて強調したりする場合の、画像全体から見たある一部分である。
【0070】
図18は、ROI領域がタイル境界に沿った領域である場合の例である。図のようにROI境界が設定されたら、ローパスフィルタをかけるタイル境界は図の右側の点線部とする。
【0071】
図19は、ROI領域がタイル境界に沿っていない領域である場合の例である。図のようにROI境界が設定されたら、ローパスフィルタをかけるタイル境界は図の右側の点線部のようにする。タイル境界近傍の画素がROI内部か否かを演算によって算出し、該タイル境界近傍の画素がROI内部であればその画素にローパスフィルタをかける。該タイル境界近傍の画素がROI外部であれば、その画素にはローパスフィルタをかけない構成にする。
【0072】
また、実施例2と同様に、ROI領域の境界からの距離とROI領域のタイル境界近傍画素におけるエッジ量に応じてROI領域内のタイル境界近傍の画素にかけるローパスフィルタの強度を制御する。
【0073】
上記した各実施例ではJPEG2000の圧縮伸長方式を例にして説明したが、圧縮伸長方式はこれに限定されず、圧縮符号にブロック境界位置情報が含まれるような圧縮伸長方式であれば、いかなる圧縮伸長方式を用いても良い。
【0074】
また、上記したように本発明はハードウェアによって実施できるが、汎用のコンピュータシステムを利用し、ソフトウェアによっても実施できることは言うまでもない。ソフトウェアで実施する場合には、本発明の画像処理装置の各手段(ブロック分割、圧縮伸長、ブロック境界歪み抑制など)として、コンピュータを機能(動作)させるためのプログラムが記録媒体などに記録されていて、該記録媒体などからプログラムがコンピュータシステムに読み込まれてCPUによって実行されることにより、本発明が実施される。
【0075】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、以下のような効果が得られる。
(1)画質優先のタイル境界歪み抑制方法として適応的ポストフィルタ方式を用い、処理速度優先のタイル境界歪み抑制方法として一様なポストフィルタ方式を用い、利用者が何れかの方式を選択できるように構成しているので、多数の利用者の要求を満たすタイル境界歪み方式が実現できる。
(2)タイル境界歪み抑制機能のON/OFFを利用者が指定できるので、より処理速度優先の利用者に対しても満足できる表示速度で復号画像を表示することができる。
(3)画質の高低、処理速度の高低によりタイル境界歪み方式を選択できるので、最適なタイル境界歪み抑制を用いることにより、利用者にとって最適な再生画像を得ることができる。
(4)画質調整機能が豊富な適応的ポストフィルタ方式と画質調整操作が不要な方式を搭載することにより、画質調整操作が煩わしくても高画質な伸張画像を望むユーザと、細かな調整操作が面倒なユーザに対しても、満足な復号画像が再生できる。
(5)ROI領域内のみに適応的ローパスフィルタを施すことにより、タイル境界歪み抑制に要する処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】JPEG2000アルゴリズムの基本を説明するための図である。
【図2】タイル分割されたカラー画像の各コンポーネントの例を示す。
【図3】デコンポジション・レベル数が3の場合の、各デコンポジション・レベルにおけるサブ・バンドを示す。
【図4】コードストリームの構造を示す。
【図5】プレシンクトとコード・ブロックの関係を説明する図である。
【図6】ウエーブレット係数値をビットプレーンに順位付けする手順を示す。
【図7】本発明の実施例1に係る伸長部の構成を示す。
【図8】圧縮伸張画像表示ツールを示す。
【図9】タイル境界平滑化部7の具体例を示す。
【図10】タイル境界平滑化部8の具体例を示す。
【図11】本発明の実施例2に係る伸長部の構成を示す。
【図12】タイル境界からの距離の算出方法を説明する図である。
【図13】画素間距離によるローパスフィルタ制御を説明する図である。
【図14】タイル境界からの距離とエッジ量によるローパスフィルタ制御を説明する図である。
【図15】本発明の実施例3に係る伸長部の構成を示す。
【図16】圧縮伸張画像表示ツールの他の例を示す。
【図17】本発明の実施例4に係る伸長部の構成を示す。
【図18】補正タイル境界限定部でローパスフィルタをかけるタイル境界を限定する第1の例を示す。
【図19】補正タイル境界限定部でローパスフィルタをかけるタイル境界を限定する第2の例を示す。
【符号の説明】
1 タグ処理部
2 エントロピー復号化部
3 逆量子化部
4 2次元ウェーブレット逆変換部
5 色空間逆変換部
6 タイル境界歪み除去方式選択部
7 画質優先モードのタイル境界平滑化部
8 処理速度優先モードのタイル境界平滑化部

Claims (6)

  1. 画像をブロックに分割し、ブロック毎に圧縮伸長する手段と、ブロック境界の歪みを抑制する手段とを備え、前記抑制する手段は、所定の領域毎にブロック境界歪み抑制のためのローパスフィルタのオン/オフを制御し、前記ローパスフィルタを施す領域は、ブロック境界近傍のROI領域内部であることを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記ROI領域のブロック境界からの距離に応じてROI領域内のタイル境界近傍の画素にかけるローパスフィルタの強度を制御することを特徴とする請求項記載の画像処理装置。
  3. 前記ROI領域のブロック境界からの距離とROI領域のタイル境界近傍画素におけるエッジ量に応じてROI領域内のタイル境界近傍の画素にかけるローパスフィルタの強度を制御することを特徴とする請求項記載の画像処理装置。
  4. 画像をブロックに分割し、ブロック毎に圧縮伸長する工程と、ブロック境界の歪みを抑制する工程とを備え、前記抑制する工程は、所定の領域毎にブロック境界歪み抑制のためのローパスフィルタのオン/オフを制御し、前記ローパスフィルタを施す領域は、ブロック境界近傍のROI領域内部であることを特徴とする画像処理方法。
  5. 請求項記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
  6. 請求項記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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