JP4200610B2 - 回転電機の部分放電検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電機あるいは電動機等の回転電機の部分放電検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラントの規模の大型化に伴い、発電所等で使用される発電機あるいは電動機等の回転電機は大型化するとともにその設置数も増大している。このような回転電機においては高い信頼性が要求されるので、保守点検を確実に行い、絶縁破壊などの突発事故を未然に防止する必要がある。特に、長期間稼働した回転電機では、突発事故の未然防止を目的として、運転中の絶縁監視技術の必要性が高くなってきている。
さらに、平成8年度の電気事業法の改正に伴う規制緩和により、自主保安への取り組みの強化とともに経営効率化を目指して、従来の定期検査の間隔を1.5倍程度延ばす取り組みが行われている。このため、従来以上に運転中の絶縁状態の監視が重要になってきており、その監視項目として絶縁性状を現す部分放電の監視技術が重要視されてきている。
【0003】
回転電機では、運転ストレスによって固定子巻線の絶縁層に亀裂や剥離などの劣化が生じると、この劣化部に運転中の電圧により、部分放電が発生する。この部分放電を検出することにより、絶縁の劣化状態を把握している。一般に、回転電機の部分放電は、運転に伴う電波雑音(以下、ノイズという)の中に埋もれているため、部分放電とノイズとを識別し、部分放電のみを検出する必要がある。
また、回転電機は3相電圧で運転されており、U,V,W相の固定子巻線には、それぞれ異なる位相の電圧が印加されている。したがって、U,V,W相の固定子巻線で発生する部分放電も、異なる位相で発生する。このため、運転中にU,V,W相ごとに部分放電を検出し、U,V,W相ごとの絶縁劣化状態を把握することが困難となっている。
【0004】
次に、部分放電とノイズとを識別し、絶縁劣化したときの部分放電のみを検出する従来の方法について、例えば、特開平7−234257号公報に示された電気機器の異常検出方法を用いて説明する。
図11は従来の部分放電検出方法による2周波数強度相関を示す説明図で、定格容量600MW、定格電圧19kVの火力タービン発電機の運転中に、1個の部分放電センサで検出した信号を分岐して異なる狭帯域フィルタ回路に入力し、部分放電信号とノイズとを計測した結果を示すグラフである。この異常検出方法では、第1狭帯域フィルタ回路の通過周波数帯域を固定子鉄心長で決まる1次共振周波数である13MHzとし、また、第2狭帯域フィルタ回路の通過帯域周波数を2次共振周波数である24.5MHzとしている。
【0005】
図11において、第1狭帯域フィルタ回路の信号強度(mV)を横軸に、第2狭帯域フィルタ回路の信号強度(mV)を縦軸に示し、●はノイズ、○は部分放電である。図から、例えば傾きが0.16の直線の上側のものが部分放電であり、直線の下側のものがノイズであると識別している。
【0006】
また、その他に、1個の部分放電センサで検出した信号を分岐して異なる狭帯域フィルタ回路に入力し、図12に示されるような信号の周波数スペクトルを計測する。この周波数スペクトルに示された信号の伝播特性の違いから、部分放電とノイズとの識別をしている。即ち、部分放電信号Hの場合は、高周波まで高周波成分を有し、周波数の増加に対する信号強度の低下が緩やかである。一方、ノイズGの場合は、部分放電信号Hより強度が大きいが、高周波成分が少なく、周波数の増加に対する信号強度の低下が急である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
回転電機の部分放電検出方法では、部分放電とノイズとを識別した信号が、確実に部分放電であることを確認でき、放電発生箇所を特定できることが重要である。また、複数の放電源からの信号を、信号源別に識別して、信号源ごとの絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断することが重要である。特に、回転電機は3相電源で運転されており、固定子巻線のU,V,W相には、それぞれ異なる位相の電圧が印加されているので、部分放電発生位相もそれぞれ巻線相ごとに異なり、放電発生の位相特性から部分放電とノイズとを識別する場合の判断基準が不明瞭になる。尚、検出対象となる発電所等の回転電機は多数台が同時に運転されているので、検出対象機以外の運転によるノイズが非常に多く、且つ検出対象機以外で発生する部分放電が、検出対象機にとってはノイズとなっている。
【0008】
しかし、上記のような従来の回転電機の部分放電検出方法では、1個の部分放電センサで検出した信号を分岐して得た2周波数強度相関あるいは周波数スペクトルから、放電発生箇所を特定することが困難であった。
また、複数の放電源からの信号を、信号源別に部分放電とノイズとの識別をして、信号源ごとの部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断することが困難であった。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、1個の部分放電センサで検出した信号を分岐して得たデータから、放電発生箇所を特定することができる部分放電検出方法を得るものである。
また、複数の放電源からの信号を、信号源別に部分放電とノイズとの識別をして、信号源ごとの部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断の精度を向上することができる回転電機の部分放電検出方法を得るものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る回転電機の部分放電検出方法においては、回転電機に設けた部分放電センサで検出した信号を分岐して異なる2つの周波数帯域で同時に計測し、計測した信号の2つの周波数帯域における信号強度の相関関係(以下、2周波数強度相関という。)に基づき前記計測した2つの信号強度の比(以下、2周波強度比という。)が一定範囲にある信号群に分離し、分離した信号群をそれぞれの発生頻度分布に分別し、分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性に各信号群の分布パターンを表したものである。
【0011】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と相関関係を有して分布したものである。
【0012】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と無関係に分布したものである。
【0013】
また、位相特性に表した分布パターンが、正極性パルスと負極性パルスとの検出電圧の大小で比較されたものである。
【0014】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相差を有したものである。
【0015】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、パルス数でなされたものである。
【0016】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、総パルス数の信号強度総和でなされたものである。
【0017】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、パルス数でなされ、パルス数のピークを中心に一定範囲の信号群でなされたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1における回転電機の部分放電検出方法について説明する。図1は、電動機の部分放電検出装置を示す。図1おいて、電動機1はフレーム2の内部の固定子鉄心(図示せず)に挿入して巻回されたU,V,W相の固定子巻線3a,3b,3cで構成され、端子箱4から高圧給電線5を介して電力が供給されている。フレーム2の内部に部分放電センサ6a,6b,6cを設置し、電動機1外へ信号ケーブル7aを配線して、電動機1外で検出素子8を介して信号を検出する。検出された信号は信号ケーブル7bで検出回路9に伝送する。
【0019】
検出回路9では、検出された信号のうちの1つの信号が分岐されて、一方が第1の狭帯域フィルタ回路10aにより1次共振周波数f1の周波数に濾波され、他方が第2の狭帯域フィルタ回路10bにより2次共振周波数f2の周波数に濾波される。各周波数f1,f2でピークホールドされ、アナログ/デジタル変換されて計測部11に伝送される。計測部11ではf1,f2の2つの帯域の信号が同時に計測され、ソフトウエアで演算処理されて、部分放電かノイズかを判定される。部分放電の場合は発生箇所が特定され、部分放電の種類、絶縁劣化の種類と程度、絶縁異常であるか否か等が判定されて結果が出力表示される。
【0020】
図2は、図1の部分放電検出装置を用いて、6.6kV,600kWの高圧電動機の運転中に計測した信号の発生位相−信号強度特性を示す説明図である。図2において、横軸にU相固定子巻線の印加電圧位相を示し、縦軸に部分放電センサで検出した部分放電の検出電圧を示し、0.5秒間に検出した全パルスをプロットしている。図2は、U相固定子巻線3aに設置した部分放電センサ6aで0.5秒間に計測したf1信号の位相特性で、0度,180度付近に検出電圧の高い信号群が見られ、検出電圧が低い1〜2.5mVの信号群が全位相にわたって見られる。
【0021】
図2から、どのパルスが部分放電かノイズなのか判別が困難であるので、図2に示されたデータの信号分離を必要とし、この信号分離を図3に示す方法で行う。図3は、2周波数強度相関を示す説明図で、図2と同じデータの各パルスをf1,f2で同時に計測し、第1の狭帯域フィルタ回路10aで濾波して計測したf1信号強度(10MHz,帯域幅3MHz)を横軸に、第2の狭帯域フィルタ回路10bで濾波して計測したf2信号強度(20MHz,帯域幅3MHz)を縦軸に表示している。図3には、計測した2周波数f1,f2の信号強度相関に基き、2周波信号強度比が一定範囲にある信号群に分類して示されており、f1信号強度とf2信号強度との比が一定値を示すA,B,C,Dの信号群が見られる。
【0022】
図4は、図3の2周波数強度相関特性に示されたA,B,C,D信号群のそれぞれの発生頻度分布を分別したことを示す説明図で、横軸にArctan(f2信号強度/f1信号強度)をとり、縦軸にArctan1度毎に区分した範囲のパルス数を示している。この頻度分布を見ると、Arctan(f2/f1)が15度を中心とするA群と、Arctan(f2/f1)が33度付近を中心とするB群と、Arctan(f2/f1)が0度のC群と、Arctan(f2/f1)が90度のD群とが見られる。このA,B,C,D信号群ごとの分離角度は、信号群間の頻度分布の谷とし、分離角度1は24度、分離角度2は61度である。したがって、A群は1〜24度の範囲にある信号群、B群は25度〜61度の範囲にある信号群、C群は0度にあるf1帯域でのみ検出された信号群、D群は90度にあるf2帯域でのみ検出された信号群である。
【0023】
図5は、図4で分別した発生頻度分布に示された各信号群が、演算処理されて各信号群の特有の分布パターンを表した位相特性を示す説明図で、その(a)はA群の分布パターンを示す位相特性、その(b)はB群の分布パターンを示す位相特性、その(c)はC群の分布パターンを示す位相特性であり、各図の横軸にはU相の印加電圧位相を示している。図5(a),図5(b),図5(c)は、各信号群の分布パターンを示す位相特性が異なるので、部分放電の発生箇所を特定できる。
【0024】
例えば、図5(a)に示すように、A群は、0度および180度にピークを有する検出電圧の高い信号群が見られる。一般に、絶縁物中のボイド放電は電圧変化が大きい位相で発生するので、A群の信号群はU相の部分放電と判別できる。また、図5(b)に示すように、B群は60度および240度にピークを有する信号群を示しているので、W相の部分放電と判別できる。また、120度および300度にピークを持つ弱い信号群が見られるが、この弱い信号はV相の部分放電と判断される。したがって、B群はW相の部分放電とV相の弱い部分放電であると判別できる。
このように、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と関係していることにより、部分放電の発生箇所を特定できる。
【0025】
また、図5(c)に示すように、C群は全位相にわたる信号が検出されており、顕著な位相特性は見られない。且つ、f1のみ検出されていることから、ノイズと判断される。
このように、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と無関係であることにより、ノイズと判断することができる。
【0026】
f1のみに検出される信号がノイズと判断される理由は、次の通りである。一般に、高周波信号は伝播によって減衰し、この減衰は周波数が高くなるにしたがって顕著となる。この発明の実施の形態1における上記定格電動機の場合の部分放電周波数は、5〜40MHzの範囲である。この周波数範囲の部分放電以外の高周波パルスがノイズとなる。電動機の場合、電動機内にノイズ源が無いので、ノイズは電動機1外から高圧給電線5を介して電動機1内に侵入して来る。この場合、電動機1内の部分放電発生点から部分放電センサ6a,6b,6cまでの距離に比し、電動機1外のノイズ誘導点から部分放電センサ6a,6b,6cまでの距離の方が長いので、高周波成分が大きく減衰する。このため、ノイズはf1には検出されるが、高い周波数のf2には検出されにくい特長を有するからである。
【0027】
部分放電とノイズの識別において、ノイズの位相特性は図5(c)に見られるようにランダムに、印可電圧位相と無関係に発生する以外に、サイリスタノイズに代表されるように、ある特定位相で周期的に発生するノイズや、スイッチングノイズのように、印加電圧位相に関係なく間欠的に発生するものなどがある。これらのノイズは、印加電圧位相と関係して発生する部分放電とは、その位相特性パターンから識別することができる。
【0028】
この実施の形態1によれば、電動機1に設けた部分放電センサ6a,6b,6cで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し(図1)、この計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し(図3)、この分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされた発生頻度分布に分別し(図4)、この分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性(図5a,図5b,図5c)に各信号群の分布パターンを表すことにより、放電発生箇所を特定することができ、また、部分放電とノイズとを識別することが可能となる。
【0029】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における回転電機の部分放電検出方法について説明する。この発明の実施の形態2では、実施の形態1に於ける図4の代替となる図6以外は、実施の形態1における図1,図2,図3,図5(a),図5(b),図5(c)と同じなので、その説明を省略する。
【0030】
図6は、図3のA,B,C,D信号群のそれぞれの発生頻度分布を分別したことを示す説明図で、横軸にArctan(f2信号強度/f1信号強度)をとり、縦軸にArctan1度毎に区分した範囲の総パルス数の信号強度総和を示している。この方法では、計測パルスの発生個数が少なくても、信号強度が大きい場合には”大きい値”を示し、信号強度が小さくても計測パルス数が多ければ”大きい値”を示す。
【0031】
この頻度分布を見ると、Arctan(f2/f1)が15度を中心とするA群と、Arctan(f2/f1)が33度付近を中心とするB群と、Arctan(f2/f1)が0度のC群と、Arctan(f2/f1)が90度のD群とが見られる。したがって、A群は1〜24度の範囲にある信号群、B群は25度〜61度の範囲にある信号群、C群は0度にありf1帯域でのみ検出された信号群、D群は90度にありf2帯域でのみ検出された信号群である。
【0032】
この実施の形態2によれば、電動機1に設けた部分放電センサ6a,6b,6cで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し(図1)、この計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し(図3)、この分離した信号群をそれぞれの総パルス数の信号強度総和でなされた発生頻度分布に分別し(図6)、この分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性(図5a,図5b,図5c)に各信号群の分布パターンを表すことにより、放電発生箇所を特定することができ、また、部分放電とノイズとを識別することが可能となる。
【0033】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3における回転電機の部分放電検出方法について説明する。この発明の実施の形態3では、実施の形態1に於ける図5(a),図5(b)の代替となる図7,図8以外は、実施の形態1における図1,図2,図3,図4,図5(c)と同じなので、その説明を省略する。
【0034】
図7,図8は、図4で分別した発生頻度分布に示された各信号群が、演算処理されて各信号群の特有の分布パターンを表した位相特性を示す説明図で、正極性パルスと負極性パルスとの検出電圧の大小を比較して部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断するものである。
【0035】
図7に示すように、正極性優位の非対称性放電を示す分布パターンは、回転電機の絶縁異常において、固定子巻線3a,3b,3cの図示されないスロット挿入部の外部半導電層、あるいは図示されない巻線端の電界制御部に異常が生じた場合に発生し、正極性パルスの検出電圧の方が負極性パルスの検出電圧のよりも大きくなる。これらの絶縁異常の中で、沿面放電などは放電部位の電界が高いときに発生するので、放電発生位相が電圧ピーク側に移る場合がある。
【0036】
一方、図7のような正極性優位の非対称性放電を示す分布パターンと対象的に、負極性優位の非対称性放電は、回転電機の絶縁異常において、固定子巻線3a,3b,3cの図示されない導体部、またはこの導体部と図示されない絶縁体との界面に異常が生じた場合に発生し、負極性パルスの検出電圧の方が正極性パルスの検出電圧よりも大きい分布パターンを示す。
また、図8に示すように、正極性パルスの検出電圧と負極性パルスの検出電圧とが同等レベルの放電示す分布パターンは、回転電機の絶縁異常において、図示されない絶縁体内部に欠陥が生じてボイド(空隙)が大きくなる場合に発生する。
【0037】
このように、位相特性に表した分布パターンから、各相ごとの部分放電パルスにおいて、正極性パルスが負極性パルスよりも優勢である場合は、固定子巻線のスロット挿入部の外部半導電層または巻線端の電界制御部の異常であり、また、負極性パルスが正極性パルスよりも優勢である場合は、固定子巻線の導体部または導体部と絶縁体との結合部の異常であると判定する。さらに、運転中に計測した部分放電が異常監視レベルに達したとき、正極性パルスと負極性パルスとを比較して正負パルスの強度が同等レベルの場合は、絶縁体内部に欠陥が生じる異常であると判定する。
【0038】
尚、運転中に計測した部分放電が異常監視レベルに達したとき、正極性パルスと負極性パルスとを比較することについて説明する。
ガス絶縁開閉装置と異なり、回転電機の場合は対地絶縁にマイカ/エポキシ複合体絶縁を使用しているので、定格運転状態で若干の部分放電の発生を許容している。この理由は、第1に、無機物でアスペクト比の大きいマイカを層状に積層したマイカ/エポキシ複合体絶縁では、無欠陥の絶縁体を形成することが困難であり、微小欠陥を内在するためである。第2に、固定子コイルが複雑な形状をしており、コイル形状に完全にフィットした絶縁体を形成することが困難なためである。
【0039】
定格運転状態で若干の部分放電の発生を許容していることは、マイカが高い耐部分放電特性を有するために可能となっている。絶縁体が健全な状態では、回転電機の停止時に従来の部分放電試験法で実施したときの、運転中と同じ電圧で発生する部分放電最大放電電荷量(60ppsレベル)は、1000〜5000pc程度以下である。部分放電の異常監視レベルは、部分放電の60ppsレベルが通常状態から大きく変化したときとする。その変化度合は、1桁あるいは6ケ月で5倍程度にすることができる。
【0040】
この実施の形態3によれば、電動機1に設けた部分放電センサ6a,6b,6cで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し(図1)、この計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し(図3)、この分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされた発生頻度分布に分別し(図4)、この分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性(図7,図8)に各信号群特有の分布パターンを表す。この位相特性に表した分布パターンが、正極性パルスと負極性パルスとの検出電圧の大小で比較されることにより、放電発生箇所を特定することができる。また、複数の放電源からの信号を、信号源別に部分放電とノイズとを識別して、信号源ごとの部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断の精度を向上することができる。
【0041】
尚、分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされた発生頻度分布に分別する(図4)代わりに、分離した信号群をそれぞれの総パルス数の信号強度総和でなされた発生頻度分布に分別し(図6)てもよく、上記と同様の作用効果を奏する。
【0042】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4における回転電機の部分放電検出方法について説明する。この発明の実施の形態4では、実施の形態1に於ける図5(a),図5(b)の代替となる図9以外は、実施の形態1における図1,図2,図3,図4,図5(c)と同じなので、その説明を省略する。
【0043】
図9は、図4で分別した発生頻度分布に示された各信号群が、演算処理されて各信号群の特有の分布パターンを表した位相特性を示す説明図で、位相特性に表した分布パターンが位相差を有することから、部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断するものである。
【0044】
回転電機の絶縁異常において、固定子巻線3a,3b,3cで部分放電が発生するとき、実施の形態3で述べた絶縁劣化に伴う絶縁異常の発生箇所の他に、絶縁表面汚損等が原因で、巻線相間で部分放電が発生する場合がある。このときの特徴的な放電位相特性が、図9に示されている。U,V,W相で部分放電が生じるときは、各固定子巻線3a,3b,3cと大地間の電界によって部分放電が発生する。したがって、U,V,W相の同極性放電は発生位相がそれぞれ120度づつ異なる。
【0045】
これに対し、異相間放電は当該相間の電界によって部分放電が発生するため、前述した部分放電とは発生位相が異なる。例えば、U相で発生する部分放電に対してU−V相間で発生する部分放電は、90−150度異なる位相で発生する。したがって、同一の部分放電センサで計測したデータから、部分放電発生箇所および絶縁異常の種類を特定できる。また、運転中に部分放電を検出するので、停止中の位相特性と比較することにより、その位相差から放電の種類を特定することができる。特に、異相間放電は運転中特有の放電現象であり、停止中では検出できない。
このように、位相特性に現れたピークを有する信号群が、位相差を有することにより、異相間に現れた部分放電発生箇所および絶縁異常の種類を特定ことができる。
【0046】
この実施の形態4によれば、電動機1に設けた部分放電センサ6a,6b,6cで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し(図1)、この計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し(図3)、この分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされた発生頻度分布に分別し(図4)、この分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性(図9)に各信号群特有の分布パターンを表す。この位相特性に表した分布パターンが位相差を有することにより、異相間に現れた部分放電発生箇所を特定することができる。また、複数の放電源からの信号を、信号源別に部分放電とノイズとを識別して、信号源ごとの部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断の精度を向上することができる。
【0047】
尚、分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされた発生頻度分布に分別する(図4)代わりに、分離した信号群をそれぞれの総パルス数の信号強度総和でなされた発生頻度分布に分別し(図6)てもよく、上記と同様の作用効果を奏する。
【0048】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5における回転電機の部分放電検出方法について説明する。この発明の実施の形態5では、実施の形態1に於ける図4の代替となる図10以外は、実施の形態1における図1,図2,図3,図5(a),図5(b),図5(c)と同じなので、その説明を省略する。
【0049】
図10は、図3の2周波数相関特性に示されたA,B,C,D信号群のそれぞれの発生頻度分布を分別したことを示す説明図で、横軸にArctan(f2信号強度/f1信号強度)をとり、縦軸にArctan1度毎に区分した範囲のパルス数を示している。この頻度分布を見ると、Arctan(f2/f1)が15度を中心とするA群と、Arctan(f2/f1)が33度付近を中心とするB群と、Arctan(f2/f1)が0度のC群と、Arctan(f2/f1)が90度のD群とが見られる。このA,B,C,D信号群ごとの頻度分布のピークを基にした信号群を示している。
【0050】
図10において、頻度分布のピークである15度を中心に+10度から−3度までをA群とし、37度を中心に+5度から−10度の範囲をB群と分別した例について示した。
回転電機の部分放電の異常監視レベルは、60ppsレベルで判断するので、大きい部分放電を主として選別するこの方法でも実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0051】
この実施の形態5によれば、電動機1に設けた部分放電センサ6a,6b,6cで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し(図1)、この計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し(図3)、この分離した信号群をそれぞれのパルス数でなされ、このパルス数のピークを中心に一定範囲の信号群でなされた発生頻度分布に分別し(図10)、この分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性(図5a,図5b,図5c)に各信号群特有の分布パターンを表すことにより、放電発生箇所を特定することができ、また、部分放電とノイズとを識別することが可能となる。
【0052】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したような回転電機の部分放電検出方法であるので、以下に示すような効果を奏する。
【0053】
回転電機に設けた部分放電センサで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測し、計測した信号の2周波数強度相関に基づき2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し、分離した信号群をそれぞれの発生頻度分布に分別し、分別した発生頻度分布に示された各信号群を演算処理して位相特性に各信号群の分布パターンを表すことにより、放電発生箇所を特定することができ、また、部分放電とノイズとを識別することが可能となる。
【0054】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と相関関係を有して分布することにより、放電発生箇所を特定することができる。
【0055】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相特性に示した印可電圧位相と無関係に分布することにより、部分放電とノイズとを識別することができる。
【0056】
また、位相特性に表した分布パターンが、正極性パルスと負極性パルスとの検出電圧の大小で比較することにより、放電発生箇所を特定し、部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断の精度を向上することができる。
【0057】
また、位相特性に表した分布パターンが、位相差を有することにより、異相間に現れた部分放電発生箇所を特定し、部分放電による絶縁異常の状況を把握し、絶縁診断の精度を向上することができる。
【0058】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、パルス数でなされることにより、発生頻度分布の分別をし易くすることができる。
【0059】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、総パルス数の信号強度総和でなされることにより、発生頻度分布の分別をし易くすることができる。
【0060】
また、発生頻度分布の信号群ごとの分別が、パルス数でなされ、パルス数のピークを中心に一定範囲の信号群でなされることにより、発生頻度分布の分別をし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による電動機の部分放電検出装置の構成を示す図である。
【図2】 図1の部分放電検出装置を用いて、電動機の運転中に計測した信号の発生位相−信号強度特性を示す説明図である。
【図3】 本発明の実施の形態1による2周波強度相関を示す説明図である。
【図4】 図3に示された信号群のそれぞれの発生頻度分布を分別したことを示す説明図である。
【図5】 図4で分別した発生頻度分布に示された各信号群の分布パターンを表した位相特性を示す説明図である。
【図6】 本発明の実施の形態2による発生頻度分布を分別したことを示す説明図である。
【図7】 本発明の実施の形態3による各信号群の分布パターンを表した位相特性を示す説明図である。
【図8】 本発明の実施の形態3による各信号群の分布パターンを表した位相特性を示す説明図である。
【図9】 本発明の実施の形態4による各信号群の分布パターンを表した位相特性を示す説明図である。
【図10】 本発明の実施の形態5による各信号群の分布パターンを表した位相特性を示す説明図である。
【図11】 従来の部分放電検出方法による2周波数強度相関を示す説明図である。
【図12】 従来の部分放電検出方法による周波数スペクトルである。
【符号の説明】
1 電動機(回転電機)
6a,6b,6c 部分放電センサ
Claims (7)
- 回転電機に設けた部分放電センサで検出したパルスの異なる2つの周波数帯域での信号強度を同時に計測し、前記2つの信号強度から信号強度比を計算し、前記パルスを前記信号強度比が一定範囲の大きさである前記パルスからなる信号群に分別し、前記信号群毎の前記回転電機に印加した印加電圧位相に対する前記パルスの発生位相特性に基づいて、部分放電の発生箇所の特定、及び部分放電とノイズの判別を行うことを特徴とする回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの発生位相特性が、回転電機に印加した印加電圧位相に対して関係を有する場合に、パルスの分布パターンが有するピークの位相から、部分放電の発生箇所を特定することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの発生位相特性が、回転電機に印加した印加電圧位相に対して無関係であることにより、前記パルスがノイズであると判別することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの発生位相特性における正極性パルスの検出電圧と負極性パルスの検出電圧の大小関係により、前記パルスの発生箇所、及び前記回転電機に発生した絶縁異常の種類を特定することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの信号群への分別は、信号強度比の逆正接関数値を所定の幅で区分したそれぞれの範囲に入る前記パルスのパルス数で表された発生頻度分布において、前記発生頻度分布における谷で分離した所定範囲の前記逆正接関数値を有する前記パルスで前記信号群を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの信号群への分別は、信号強度比の逆正接関数値を所定の幅で区分したそれぞれの範囲に入る前記パルスの信号強度の総和で表された発生頻度分布において、前記発生頻度分布における谷で分離した所定範囲の前記逆正接関数値を有する前記パルスで前記信号群を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転電機の部分放電検出方法。
- パルスの信号群への分別は、信号強度比の逆正接関数値を所定の幅で区分したそれぞれの範囲に入る前記パルスのパルス数で表された発生頻度分布において、前記発生頻度分布におけるパルス数のピーク値を与える信号強度比の逆正接関数値を中心にした所定範囲の前記逆正接関数値を有する前記パルスにより信号群を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転電機の部分放電検出方法。
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