JP4200533B2 - 空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機や車両等に搭載される空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の空調装置として、コンデンサとエバポレータの間を接続する冷媒循環回路と、前記エバポレータの下流に配置され冷媒を圧縮してコンデンサに移送する電動コンプレッサと、前記コンデンサの下流に配置され冷媒を断熱膨脹により自冷してエバポレータに供給する膨脹弁とを具備することによりベーパーサイクルを構成してなるものが知られている。
【0003】
ところで、前記電動コンプレッサにおいては、モータ及び軸受の発熱が不可避である。そこで、従来は、空冷、油冷、水冷等の方式によってモータ及び軸受を冷却するようにしているのが通例である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、かかる従来の対策では、水や油等、メインのベーパーサイクルに使用する冷媒以外の流体を使用するため、その分メンテナンスが必要であり、装置自体も複雑化することが避け難いものとなっている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために、この種の空調装置としての一般的構成を備えてなるものにおいて、コンデンサの下流と電動コンプレッサの上流との間を接続する位置に膨脹弁を有する冷却回路を設け、この冷却回路の膨脹弁を出た冷媒を電動コンプレッサのモータ及び軸受を冷却し得る位置に移送するように構成し、モータ及び軸受を冷却した後の冷媒温度が一定となるように、電動コンプレッサの入口部の温度あるいは圧力を検知しながらその熱負荷量に応じて膨脹弁の開度を制御することを特徴とする。
【0006】
このように構成すれば、ベーパーサイクルを流れる冷媒のうち、コンプレッサで圧縮されコンデンサを出た高圧の冷媒は、膨脹弁を介して断熱膨脹することにより低温低圧の冷媒となり、電動コンプレッサに移送されて、そのモータ及び軸受に供された後、電動コンプレッサに再び吸い込まれる。このように、メインのベーパーサイクルを循環する冷媒の一部を用いることで、モータ及び軸受の冷却のために別途異なる冷媒を用いることを不要にすることができる。
【0007】
以上を前提として、特に、電動コンプレッサの軸受が動圧ガス軸受方式のものである場合には、冷却回路の膨脹弁よりも下流側に熱交換器の1次側入口を接続し、その1次側出口を電動コンプレッサのモータ及び軸受を順次に冷却し得る位置に引き回した後に該熱交換器の2次側入口に接続するとともに、その2次側出口を電動コンプレッサの上流に接続して、冷媒がモータに供給される時点で気液二相状態にあり軸受に供給される時点で気相状態にあるように、軸受入口の冷媒の温度または圧力を検知しながら膨張弁の開度を制御することが有効となる。
【0008】
このように構成すれば、冷媒はモータに移送される際に気液二相状態にあり、冷媒の蒸発潜熱をモータの冷却のために有効利用することができるため、例えば冷媒を気相状態でモータに供給する場合に比べて、冷却効率を効果的に高め、これにより冷却に必要な冷媒流量を極力低減することが可能になる。しかも、モータへの移送前に冷媒を熱交換器を通じて極端に低温とならないように温度調整し、モータを通過して軸受に供給される冷媒が気相状態にあるように設定しているため、動圧ガス軸受に液相状態の冷媒が混入することによる軸受の負荷増大、破損といった不都合も有効に回避することができる。その上、軸受を出た冷媒は熱交換器を通過した後にコンプレッサ入口へ戻され、そのリターン温度が低下するので、冷却に供した後の冷媒をダイレクトにコンプレッサ入口へ戻す場合に比べて、コンプレッサ翼車の負荷動力も有効に低減することが可能となる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
<参考例>
本例に係る空調装置では、冷媒として例えばフロン等が用いられる。その基本構成は、図1に示されるように、コンデンサ1とエバポレータ2の間を接続する冷媒循環回路3と、前記エバポレータ2の下流に配置され冷媒を圧縮してコンデンサ1に移送する電動コンプレッサ4と、前記コンデンサ1の下流に配置され冷媒を断熱膨脹により自冷してエバポレータ2に供給する膨脹弁5とを具備することによりベーパーサイクルを構成しているものである。コンデンサ1は冷媒と外気等を熱交換するためのものであり、エバポレータ2は冷媒と冷却目的、例えば室内空気とを熱交換するためのものである。なお、この例では、コンデンサ1の出口と膨脹弁5の入口との間に、液相状態にある冷媒を内部に貯溜することのできるレシーバタンク6を介設している。
【0010】
ここで、基本的なベーパーサイクルについて説明する。先ず、冷媒を電動コンプレッサ4で80〜90°C、15〜20気圧に圧縮して、コンデンサ1に導入する。このコンデンサ1では、冷媒が外気との熱交換に供され、同一圧力の下に冷媒温度を40〜50°C程度にまで降温させる。冷媒がフロンである場合、この温度で液相状態になる。そして、冷媒はレシーバタンク6に移送されて貯溜される。一方、このレシーバタンク6内の冷媒は、その下流に配置した膨脹弁5が開かれることで導出され、その冷媒は膨脹弁5で断熱膨脹した後、エバポレータ2に供給される。膨脹弁5の開度は必要に応じて可変とされ、冷媒を0〜10°C、4〜5気圧の気液二相状態にすることができる。しかして、この冷媒はエバポレータ2で冷却目的である室内空気等との熱交換に供され、30°C程度に昇温した状態で前記電動コンプレッサ4に再び吸い込まれる。以上のようなベーパーサイクルを繰り返す中で、エバポレータ2で汲み取った熱がコンデンサ1で放熱されるという熱サイクルが営まれる。
【0011】
そして、このような熱サイクルが進行していくと、電動コンプレッサ4を構成するモータ41及び軸受42の発熱が不可避であり、放置すれば冷却効率の低下、電動コンプレッサ4の焼損事故等をひき起こす。
そこで、本例は、前記コンデンサ1の下流と電動コンプレッサ4の上流とを接続する位置に膨脹弁71を有する冷却回路7を設け、この冷却回路7の膨脹弁71を出た冷媒を電動コンプレッサ4のモータ41及び軸受42を冷却し得る位置に移送するようにしている。前記膨脹弁71には開度可変形のものが採用され、コンプレッサ4の入口部4aの温度あるいは圧力を検知しながら、その熱負荷量に応じて電動コンプレッサ4のモータ41及び軸受42の冷却に必要な最適流量の冷媒を供給し得るように膨脹弁71の開度を制御する機能を付与されている。この機能は、電気的制御によっても純機械的制御によっても構成することができる。本例では、膨脹弁71を出た冷媒は例えば0〜10°Cで電動コンプレッサ4のモータ41及び軸受42に供給され、30°C程度に昇温して電動コンプレッサ4に吸い込まれる。
【0012】
以上のように構成すれば、冷媒循環回路3を流れる冷媒のうち、コンプレッサ4で圧縮されコンデンサ1を出て低温高圧の飽和液体となった冷媒の冷熱を一部利用して、モータ41及び軸受42の冷却を有効に行うことができる。このように、メインのベーパーサイクルを循環する冷媒の一部を用いることで、水や油等のような全く別異の冷媒を用いることを不要にすることができ、空調装置のメンテナンスや構造の簡素化を図ることが可能となる。
【0013】
特に、本例はモータ41及び軸受42を冷却した後の冷媒温度が一定となるように膨脹弁71を制御するようにしているため、システムの熱負荷及び電動コンプレッサ4の発熱量に応じてコンプレッサ4の冷却に必要な最適流量を供給することができ、システム全体の効率を最適な状態に保つことが可能となる。
さらに、上記例では、モータ41及び軸受42を通過する間に冷媒が液体から気体に変わるように構成し、冷媒の蒸発潜熱を利用することもできるため、例えば気体のみを供給する場合に比べて、少流量ながら効果的な冷却を行うことも可能となる。
<実施例>
図2は、前記参考例の電動コンプレッサ4の軸受42が動圧ガス軸受方式のものである場合にその冷却回路7の有効な例を示すものである。なお、図1と共通する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
しかして、この空調装置は、冷却回路7の膨脹弁71よりも下流側に熱交換器8の1次側入口8aを接続し、その1次側出口8bを電動コンプレッサ4のモータ41及び軸受42を順次に冷却し得る位置を介して該熱交換器8の2次側入口8cに接続するとともに、2次側出口8dを電動コンプレッサ4の上流に接続して、冷媒がモータ41に供給される時点で気液二相状態にあり、軸受42に供給される時点で気相状態にあるように設定しているものである。この設定は、軸受入口の冷媒の温度あるいは圧力を適当な手段で検知しながら膨脹弁71の開度を制御することにより行うことができる。
【0015】
このように構成すれば、冷媒はモータ41に移送される際に気液二相状態になり、冷媒の蒸発潜熱を冷却のために利用することができるため、例えば冷媒を気相状態でモータ41に供給する場合に比べて、冷却効率を有効に高め、これにより冷却に必要な冷媒流量すなわち本来の冷媒循環回路3からの冷媒バイパス量を極力低減して、適正な空調機能が損なわれることを有効に防止することが可能になる。しかも、モータ41への移送前に冷媒を熱交換器8を通じて極端に低温とならないように温度調整し、モータ41を通過した後、軸受42に供給される冷媒が気相状態にあるように設定しているため、動圧ガス軸受方式の軸受42に液相状態の冷媒が混入することによる軸受の負荷増大、破損といった不都合も有効に回避することができる。その上、軸受42を出た冷媒は熱交換器8を通過した後にコンプレッサ4の入口へ戻され、そのリターン温度が低下するので、冷却に供した後の冷媒をダイレクトにコンプレッサ4の入口へ戻す場合に比べて、コンプレッサ翼車の負荷も有効に低減することが可能となる。
【0016】
なお、各部の具体的な構成は、図示例のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、前記実施例において、モータの発熱量と軸受の発熱量との比率の違いによっては、図3に示すように熱交換器8の1次側入口8aと1次側出口8bの間をバイパスするバイパス系路9を設け、そのバイパス流量をバルブ9aで調節するように構成することも有効である。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、冷媒循環回路のコンデンサ下流と電動コンプレッサ上流との間を接続する位置に膨脹弁を有する冷却回路を設け、この冷却回路に冷媒循環回路を流れる冷媒の一部を導き、膨脹弁で断熱膨脹させるとともに、その低温低圧となった冷媒を電動コンプレッサのモータ及び軸受を冷却し得る位置に移送するように構成したものである。このため、電動コンプレッサの冷却のために水や油等の全く別異の冷媒を用いることを不要にして、空調装置のメンテナンスや構造の簡素化を図ることが可能になる。
【0018】
また、前記電動コンプレッサの軸受が動圧ガス軸受方式のものである場合に、冷却回路の膨脹弁の下流に熱交換器を設け、これにより冷媒を極端に低温とならない気液二相状態でモータに供給し、次段の軸受には気相状態で供給するように構成するとともに、それによって温度上昇した冷媒を前記熱交換器で降温させた後に電動コンプレッサに吸い込ませるように構成することも有効となる。これによれば、冷媒の蒸発潜熱を利用してモータに対する冷却効率を有効に高めることができ、また次段の軸受へ冷媒が液相状態で流入することによる軸受の破損も防ぐことができ、更に電動コンプレッサへのリターン温度も低下させてコンプレッサ翼車の負荷動力の増大も効果的に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例を示す概略的な回路図。
【図2】 本発明の実施例を示す部分的な回路図。
【図3】 図2の変形例を示す部分的な回路図。
【符号の説明】
1…コンデンサ
2…エバポレータ
3…冷媒循環回路
4…電動コンプレッサ
5…膨脹弁
7…冷却回路
71…膨脹弁
8…熱交換器
8a…1次側入口
8b…1次側出口
8c…2次側入口
8d…2次側出口
Claims (1)
- 電動コンプレッサの軸受が動圧ガス軸受方式のものである場合において、
冷却回路の膨脹弁よりも下流側に熱交換器の1次側入口を接続し、その1次側出口を電動コンプレッサのモータ及び軸受を順次に冷却し得る位置を介して該熱交換器の2次側入口に接続するとともに、その2次側出口を電動コンプレッサの上流に接続して、
冷媒がモータに供給される時点で気液二相状態にあり軸受に供給される時点で気相状態にあるように、軸受入口の冷媒の温度または圧力を検知しながら膨張弁の開度を制御することを特徴とする空調装置。
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