JP4196119B2 - アクリル樹脂成形材料を用いた板状成形品 - Google Patents

アクリル樹脂成形材料を用いた板状成形品 Download PDF

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Description

本願発明は、アクリル樹脂成形材料とそれを用いた板状成形品に関するものである。
従来より、建築物においてはフェノール系樹脂やアミノ系樹脂組成物を用いた接着剤や建築板状成形品など多くのホルムアルデヒドを原料に用いた素材が使用されている。また、天井基材、サンシェード基材、ドアトリム基材、リアパッケージ基材、衝撃吸収材、吸音材などの自動車内装部材も同様にフェノール系樹脂が接着剤として用いられるとともに、ガラス繊維を用いた板状成形品類やSMC(シートモールディングコンパウンド)などが使用されている。
しかしながら、環境問題が大きく取上げられる現代社会においては、居住空間におけるホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の存在によるシックハウス症候群の問題からVOC対策が求められており、自動車室内空間においてもホルムアルデヒドの低減が望まれている。ホルムアルデヒドの低減対策としては、熱処理によるホルムアルデヒド除去や各種ホルムアルデヒドキャッチャー剤の添加(例えば、特許文献1参照)などが実施されているものの、その低減には限界があり、いまだ満足できるレベルにまで到っていない。また、自動車内装部材に使用されているガラス繊維についても、焼却炉で焼却の際にガラス繊維が炉内で溶融し炉表面を傷めるなどの問題により、廃棄の際は埋め立て処理されている。しかしながら、埋め立て処理によるコストアップ、埋め立て場所の減少、環境保全のための廃棄量の減量化、不法投棄などの問題によりガラス繊維の他素材への代替検討がなされている。例えば、環境保全の観点から、ガラス繊維に替えて天然繊維を用い、バインダーとしてポリ乳酸系樹脂またはセルロース系生分解性プラスチックを用いた繊維系板状成形品(例えば、特許文献2、3参照)や、木質材料のパーティクルにバインダーを塗布し、この混合物をパーティクルマットにした後、加熱・加圧して成形する木質成形体の製造方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、いずれも、部材の品質、寿命の点で充分満足するものではなく、いまだそのほとんどがガラス繊維を使用しているのが実情である。
特開平10−316867号公報 特開2004−130796号公報 特開2000−127117号公報 特開2004−209660号公報
そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、天然資源の有効活用とともに廃棄時の焼却処理を容易にし、脱ホルムアルデヒドによって、環境への負荷を軽減することができ、自動車内装部材あるいは建材分野などに好適な機械強度を有し、高温高湿下での強度保持率が高い板状成形品を提供することを課題としている。
本願発明の板状成形品は、前記の課題を解決するものとして、第1には、水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなるアクリル樹脂成形材料を加熱・加圧して成形してなることを特徴とする。
そして、第2には、水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなるアクリル樹脂成形材料を芯材とし、水溶性アクリル樹脂を不織布に含浸し乾燥させてなるシート状成形材料を前記芯材の表面に積層し、加熱・加圧して成形されてなることを特徴とする。
また、本願発明の板状成形品は、第3には、上記第2板状成形品において、不織布に対して水溶性アクリル樹脂を50〜250g/m の範囲の樹脂量で含浸させることを特徴とする
そして、本願発明の板状成形品は、第には、上記のいずれかの板状成形品において、天然繊維が一方向に配向しているマット状天然繊維であることを特徴とする。
また、本願発明の板状成形品は、第には、上記のいずれかの板状成形品において、熱膨張性微粒子は、熱可塑性樹脂からなる外皮とその外皮に内包される液状物質とから構成され、熱により外皮が軟化し液状物質がガス化膨張することで微粒子が膨張することを特徴とする。
さらに、本願発明の板状成形品は、第には、上記のいずれかの板状成形品の目付け重量が1800〜2400g/mの範囲であることを特徴とする。
上記第1の発明では、アクリル樹脂成形材料が、水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなることにより、天然資源の有効活用とともに廃棄時の焼却処理を容易にし、脱ホルムアルデヒドによって、環境への負荷を軽減することができる。そして、このアクリル樹脂成形材料を用いて加熱・加圧成形して製造した板状成形品は、加熱・加圧成形時に熱膨張性微粒子が天然繊維間の隙間を埋めるため、自動車内装部材あるいは建材分野などに好適な機械強度を有し、高温高湿下での強度保持率が高い板状成形品とすることができる。
また、上記第2の発明では、水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなるアクリル樹脂成形材料を芯材とし、水溶性アクリル樹脂を不織布に含浸させ乾燥させてなるシート状成形材料を芯材表面に積層し、加熱・加圧して成形されてなることにより、自動車内装部材あるいは建材分野などに好適な機械強度を有し、高温高湿下での強度保持率が高い板状成形品とすることができ、さらに、この板状成形品の表面の強度をより向上させることができる。
上記第3の発明では、水溶性アクリル樹脂を50〜250g/m の範囲の樹脂量で不織布に含浸させることにより、シート状成形材料を芯材表面に、より強固に接着させることができる。
上記第4の発明では、天然繊維が一方向に配向しているマット状天然繊維であることにより、一方向の機械強度を著しく向上させることができる。
上記第5の発明では、熱膨張性微粒子が、熱可塑性樹脂からなる外皮とその外皮に内包される液状物質とから構成され、熱により外皮が軟化し液状物質がガス化膨張することで微粒子が膨張することにより、このアクリル樹脂成形材料の加熱・加圧成形時に天然繊維間の隙間を容易に埋めることができるため、機械強度をより一層向上させ、高温高湿下での強度保持率が高い板状成形品とすることができる。
上記第6の発明では、上記の板状成形品の目付け重量が1800〜2400g/m の範囲であることにより、取扱いが容易で作業性が良好な板状成形品とすることができる。
上記第の発明では、上記の板状成形品の目付け重量が1800〜2400g/mの範囲であることにより、取扱いが容易で作業性が良好な板状成形品とすることができる。
本願発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
本願発明の板状成形品に用いられるアクリル樹脂成形材料は、水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなることを特徴としている。
水溶性アクリル樹脂としては、ヒドロキシ基を架橋成分として有するアクリル酸共重合体を用いることが好ましい。アクリル酸共重合体は、例えば、アクリル酸とマレイン酸の共重合体が挙げられ、アクリル酸とマレイン酸はランダムに結合していてもブロック状に結合していてもよく、ヒドロキシ基の架橋反応によって、その硬化物が機械強度、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができる。
また、この水溶性アクリル樹脂は、作業性の点から適宜の濃度で水で希釈して使用することが好ましい。例えば、10〜50質量%の範囲の濃度に希釈して用いることが好ましい。水溶性アクリル樹脂を天然繊維に含浸させる際に、水溶性アクリル樹脂の濃度が10質量%未満の場合には、乾燥に時間がかかり生産効率が劣ってしまう場合がある。水溶性アクリル樹脂の濃度が50質量%を超える場合には、この水溶液の粘度が高くなってしまい、水溶性アクリル樹脂の天然繊維への含浸・絞りの作業性が低下する場合がある。
天然繊維としては、各種のセルロース系繊維を使用することができる。具体的には、ケナフ、アサ、ジュート、ヘンプなどの表皮繊維や、タケ、アシ、バガス、パピルスなどのイネ科植物が挙げられる。中でも、成長が極めて早く容易に栽培できる植物であり、光合成速度が速くCO2の吸収能力が高いこと、天然資源の有効活用および環境への負荷低減などの点から、一年性植物であるケナフの表皮繊維を使用することが好ましい。
天然繊維は、必要とする長さにカットされ、解繊機を用いて必要な繊維径に解繊される。天然繊維のカット長は、板状成形品において充分な機械強度を得るために20mm以上とすることが好ましく、それより短い場合には充分な機械強度を得られない場合がある。そして、この天然繊維はマット状であり、例えば、マット機(カード機)を用いて天然繊維が綿状にされる。あるいは、熱圧着もしくはニードルパンチなどにより不織マット状にされる。
また、天然繊維が一方向に配向しているマット状天然繊維であってもよい。このようなマット状天然繊維とすることで、一方向の機械強度を著しく向上させることができる。
以上の天然繊維には、軽量化・マットの強度付与などを目的として、PP、PET、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂繊維やポリ乳酸などの植物資源系樹脂繊維を混合していてもよい。
また、本願発明の板状成形品に用いられるアクリル樹脂成形材料は、マット状天然繊維に水溶性アクリル樹脂とともに、補強用バインダーとして熱可塑性樹脂を含浸させたものであってもよい。このようなアクリル樹脂成形材料は、機械強度をさらに向上させたものとすることができる。
本願発明の板状成形品に用いられるアクリル樹脂成形材料における熱膨張性微粒子は、アクリル樹脂成形材料を用いて加熱・加圧成形して板状成形品を製造する際において、加熱・加圧成形時に熱膨張性微粒子が膨張して天然繊維間の隙間を埋めるようなものであれば特に限定されるものではない。このような熱膨張性微粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂からなる外皮とその外皮に内包される液状物質とから構成されるバルーン状微粒子であって、常温から100℃程度までは安定しており、加熱・加圧成形時の熱により外皮が軟化し液状物質がガス化膨張することで微粒子が膨張するような構造のものであることが好ましい。液状物質としては、液状イソブタンが好適なものとして挙げられ、熱可塑性樹脂としては、メチルメタアクリレートやアクリロニトリルなどが好適なものとして挙げられる。これらは、目的とする温度で膨張させるために、適宜に選択して組み合わせて用いる。以上の熱膨張性微粒子は、板状成形品の比重を上げることなく、機械強度を向上させるものである。
そして、以上の熱膨張性微粒子は、水溶性アクリル樹脂に対して2〜10質量%の範囲で配合されている。2質量%未満の場合には、天然繊維間の隙間を充分に埋めることができず、10質量%を超える場合には、水溶性アクリル樹脂に対する熱膨張性微粒子の比率が高くなるため充分な機械強度が得られない。
また、熱膨張性微粒子の大きさとしては、平均粒径が5〜20μmの範囲のものが好ましい。
本願発明の板状成形品に用いられるアクリル樹脂成形材料は、界面活性剤が含有されていてもよい。例えば、ジアルキルサクシネートスルホン酸などのスルホン酸型、アルキルエーテル型などが好適なものとして挙げられる。このような界面活性剤は、水溶性アクリル樹脂を天然繊維に含浸する際に浸透性を向上させることができ、より作業性を向上させることができるものである。この界面活性剤の添加量としては、例えば、水溶性アクリル樹脂に対して0.2〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。0.2質量%未満の場合には、天然繊維への水溶性アクリル樹脂の浸透性の効果が得られにくいため好ましくなく、3質量%を超える場合には、天然繊維への水溶性アクリル樹脂の浸透性にそれ以上の効果が得られない。
さらに、本願発明の板状成形品に用いられるアクリル樹脂成形材料は、必要に応じてアミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、着色剤、離型剤が含有されていてもよい。離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィン、パラフィンなどが挙げられる。また、離型剤は乳化剤などを用いて、エマルジョン化することができる。
以上のアクリル樹脂成形材料は、上記のように水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸させ、乾燥させて得られるものである。例えば、水溶性アクリル樹脂を所定の水で希釈して熱膨張性微粒子を添加し、さらに必要に応じて界面活性剤、離型剤などを加えて、ディスパーで攪拌する。そしてこのアクリル樹脂液を含浸槽に所定量投入し、マット状天然繊維を浸漬させる。次いで、このアクリル樹脂液を含浸させたマット状天然繊維を2軸ロールなどにより所定の重量までアクリル樹脂液を絞り、80〜100℃程度の温度で乾燥機により乾燥して製造することができる。
含浸の方法としては、上記のように含浸槽を用いること以外に、マット状天然繊維に所定量のアクリル樹脂液を塗布し、加圧ロールなどでマット状天然繊維に染込ませるようにしてもよい。
そして、このアクリル樹脂成形材料を1枚もしくは複数枚重ね合わせ、例えば、加熱温度150〜300℃、圧力0.98〜8.0MPa、時間1〜30分間の条件で、金型で加熱・加圧成形し、水溶性アクリル樹脂を架橋させて板状成形品を製造することができる。
別の実施形態として、上記のアクリル樹脂成形材料を芯材とし、水溶性アクリル樹脂を不織布に含浸し乾燥させてなるシート状成形材料を前記芯材の表面に積層し、加熱・加圧成形して板状成形品を製造することができる。この板状成形品は、アクリル樹脂成形材料の表面にシート状成形材料を用いて複合化することで、表面の強度をより向上させている。
加熱・加圧成形時に、アクリル樹脂成形材料の表面にシート状成形材料を充分な強度で接着させるために、水溶性アクリル樹脂を50〜250g/m2の範囲の樹脂量で不織布に含浸させるようにすることが好ましい。50g/m2未満の場合には、接着が充分でなくシート状成形材料が剥がれる場合がある。250g/m2を超える場合には、板状成形品の目付け重量が大きくなり取扱いや作業性が悪くなってしまう場合がある。
不織布への水溶性アクリル樹脂の含浸方法としては、上述したマット状天然繊維の含浸方法と同様に含浸槽を用いる方法や、水溶性アクリル樹脂を塗布し、加圧ロールなどで不織布に染込ませるようにしてもよい。
不織布の材質としては特に限定されないが、例えば、PP、PET、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂繊維やポリ乳酸などの植物資源系樹脂繊維を例示することができる。
また、不織布の目付け重量は、20〜100g/m2の範囲であることが好ましい。20g/m2未満の場合には、成形時に不織布が破れてしまい、充分な機械強度を有する板状成形品を得られない場合がある。100g/m2を超える場合には、板状成形品の目付け重量が大きくなり取扱いや作業性が悪くなってしまう場合がある。
なお、以上の板状成形品については、取扱いの容易さや作業性を考慮すると、板状成形品の目付け重量が1800〜2400g/m2の範囲であることが好ましい。
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されることはない。
<アクリル樹脂液Aの製造>
水溶性アクリル樹脂(45wt%品)に所定量の水、離型剤(ステアリン酸亜鉛1wt%)、熱膨張性微粒子を加え、ディスパーで15分間攪拌する。水溶性アクリル樹脂は、BASF社製「アクロデュア945L」(ヒドロキシ基を架橋成分として有するアクリル酸共重合体)を使用し、熱膨張性微粒子は、日本フィライト(株)製「EXPANCEL 007WUF40」を使用し、水溶性アクリル樹脂の固形分に対し10質量%を添加した。
<アクリル樹脂液Bの製造>
水溶性アクリル樹脂(45wt%品)に所定量の水、離型剤(ステアリン酸亜鉛1wt%)、熱膨張性微粒子を加え、ディスパーで15分間攪拌する。水溶性アクリル樹脂は、BASF社製「アクロデュア945L」(ヒドロキシ基を架橋成分として有するアクリル酸共重合体)を使用し、熱膨張性微粒子は、日本フィライト(株)製「EXPANCEL 007WUF40」を使用し、水溶性アクリル樹脂の固形分に対し5質量%を添加した。
<アクリル樹脂液Cの製造>
水溶性アクリル樹脂(45wt%品)に所定量の水、離型剤(ステアリン酸亜鉛1wt%)、熱膨張性微粒子を加え、ディスパーで15分間攪拌する。水溶性アクリル樹脂は、BASF社製「アクロデュア945L」(ヒドロキシ基を架橋成分として有するアクリル酸共重合体)を使用し、熱膨張性微粒子は、日本フィライト(株)製「EXPANCEL 007WUF40」を使用し、水溶性アクリル樹脂の固形分に対し2質量%を添加した。
<アクリル樹脂液Dの製造>
水溶性アクリル樹脂(45wt%品)に所定量の水、離型剤(ステアリン酸亜鉛1wt%)を加え、ディスパーで15分間攪拌する。水溶性アクリル樹脂は、BASF社製「アクロデュア945L」(ヒドロキシ基を架橋成分として有するアクリル酸共重合体)を使用した。
<ケナフ長繊維マット材(アクリル樹脂成形材料)の製造>
1)上記で得られたアクリル樹脂液(A〜D)をそれぞれ別々に含浸槽に入れ、各々について所定の目付け重量のケナフ長繊維マットを浸漬する。ケナフ長繊維マットは揮発分10%のものを使用した。
2)上記1)でアクリル樹脂液を含浸させたケナフ長繊維マットを、2軸ロールなどにて所定の重量まで樹脂液を絞る。
3)上記2)で得られたアクリル樹脂液が含浸されたケナフ長繊維マットを、100℃の乾燥機にて所定の含有水分を目標に乾燥してケナフ長繊維マット材(アクリル樹脂成形材料)を得た。
<成形加工>
1)アクリル樹脂液(A〜D)を用いて得られたケナフ長繊維マット材各々について2枚重ね合わせたものを準備する。不織布状マットを使用したシート状成形材料を用いる場合は、所定のケナフ長繊維マット材を2枚重ねた合わせたものを芯材とし、その表面にシート状成形材料を積層したものを準備する。
2)200℃に昇温させた金型にて、圧力4.9MPaにて1分間加熱・加圧成形して硬化させ板状の成形品を得た。
<評価>
(1)成形性
平板金型にて、250*200*2.5mmの成形を実施し、膨れ、変形、不織布の剥がれなどの外観異常の有無を目視にて判定した。
(2)臭気
成形品を20mm角に切断して試験片とした。この試験片を密閉した5Lの容器中で120℃*30分加熱し、室温まで冷却した。その後、この密閉容器中のガスをホルムアルデヒド検知管にて臭気測定した。
(3)強度
強度1:成形品を150*50mmに切断した試験片を、オートグラフにてスパン距離100mm、試験速度(ヘッドスピード50mm/min.)の試験条件にて、23℃の雰囲気下にて曲げ破壊強度(N)を測定した。また、曲げタワミ量(mm)も測定した。
強度2:成形品を150*50mmに切断した試験片を、オートグラフにてスパン距離100mm、試験速度(ヘッドスピード50mm/min.)の試験条件にて110℃雰囲気下にて10分間保持後曲げ破壊強度(N)を測定した。
<実施例1>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して10質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液A中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が無いランダムに混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例2>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が無いランダムに混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例3>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して2質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液C中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が無いランダムに混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例4>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に600g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が無いランダムに混抄されたケナフマットを使用した。上記で得られたケナフ長繊維マット材を芯材としその表面に下記のシート状成形材料を重ね合わせて、加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。シート状成形材料は、ポリエステル繊維不織布30g/m2を使用し、水溶性アクリル樹脂を100g/m2塗布、乾燥したものを使用した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例5>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に590g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例6>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例7>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に780g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例8>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に610g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。上記で得られたケナフ長繊維マット材を芯材としその表面に下記のシート状成形材料を重ね合わせて、加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。シート状成形材料は、ポリエステル繊維不織布30g/m2を使用し、水溶性アクリル樹脂を220g/m2塗布、乾燥したものを使用した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例9>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。上記で得られたケナフ長繊維マット材を芯材としその表面に下記のシート状成形材料を重ね合わせて、加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。シート状成形材料は、ポリエステル繊維不織布30g/m2を使用し、水溶性アクリル樹脂を60g/m2塗布、乾燥したものを使用した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<実施例10>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子を水溶性アクリル樹脂に対して5質量%添加し、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液B中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットは繊維の方向性が一定方向に配向する様に混抄されたケナフマットを使用した。上記で得られたケナフ長繊維マット材を芯材としその表面に下記のシート状成形材料を重ね合わせて、加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。シート状成形材料は、ポリエステル繊維不織布30g/m2を使用し、水溶性アクリル樹脂を30g/m2塗布、乾燥したものを使用した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
<比較例>
20質量%に希釈した水溶性アクリル樹脂に、所定の離型剤量を添加後、ディスパーで15分攪拌した。上記で得られたアクリル樹脂液D中の水溶性アクリル樹脂がケナフ長繊維マットの35質量%になるように調整しケナフ長繊維マット材を得た。上記のケナフ長繊維マットは絶乾時に650g/m2のものを使用した。ケナフ長繊維マットの製造方法としては繊維の方向性が無いランダムに混抄されたケナフ長繊維マットを使用した。このケナフ長繊維マット材を加熱・加圧成形して板状成形品を製造した。この板状成形品について成形性、臭気、強度を評価した。この結果を表1に示す。
Figure 0004196119
表1より、水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子が添加されていることで(実施例1〜10)、強度、強度保持率が良好で、ホルムアルデヒドが検知されないことが確認された。また、表面にシート状成形材料を用いて複合化させた板状成形品(実施例4,8,9,10)については、強度、強度保持率が良好であることが確認された。このうち、水溶性アクリル樹脂を50〜250g/m2の範囲の樹脂量で不織布に含浸させたシート状成形材料を用いた板状成形品(実施例4,8,9)は、不織布の剥がれが発生することなく、シート状成形材料が芯材表面に強固に接着されていることが確認された。
一方、水溶性アクリル樹脂に熱膨張性微粒子が添加されていない場合(比較例)には、強度が充分でないことが確認された。

Claims (6)

  1. 水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなるアクリル樹脂成形材料を加熱・加圧して成形してなることを特徴とする板状成形品。
  2. 水溶性アクリル樹脂に対して熱膨張性微粒子を2〜10質量%の範囲で分散・混合したアクリル樹脂液をマット状天然繊維に含浸し、乾燥させてなるアクリル樹脂成形材料を芯材とし、水溶性アクリル樹脂を不織布に含浸し乾燥させてなるシート状成形材料を前記芯材の表面に積層し、加熱・加圧して成形されてなることを特徴とする板状成形品。
  3. 不織布に対して水溶性アクリル樹脂を50〜250g/m の範囲の樹脂量で含浸させることを特徴とする請求項2に記載の板状成形品。
  4. 天然繊維が一方向に配向しているマット状天然繊維であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の板状成形品。
  5. 熱膨張性微粒子は、熱可塑性樹脂からなる外皮とその外皮に内包される液状物質とから構成され、熱により外皮が軟化し液状物質がガス化膨張することで微粒子が膨張することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の板状成形品。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の板状成形品の目付け重量が1800〜2400g/m の範囲であることを特徴とする板状成形品。
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