JP4194743B2 - 高利得光電変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、微弱光の計測装置や光波レーダや光通信における受信装置に用いられる高利得光電変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
天体観測や電子顕微鏡画像、生体光信号計測等に代表されるnWオーダ以下の微弱光を計測する場合、信号処理に必要な信号レベルまで高利得で増幅する必要がある。通常、光電変換素子の出力には暗電流と呼ばれる光入力に比例しない電流がバックグランドとして混在するが、この状態で高利得増幅する場合、暗電流によるバックグランド成分により出力信号が飽和し、正確な信号解析ができない。これまでは光入力を外部から周期的に変調し、その変調に同期して信号を取り出す同期検波法を用いて、暗電流による直流的なバックグランドを除去した後、増幅する方法がとられてきた。しかしながら被測定信号に直流信号が含まれている場合、同期検波法により暗電流バックグランドを取り除くことは本質的に不可能である。一方、空間中にレーザ光を伝播させて通信を行う空間光通信装置や、光波レーダ装置においても、レーザ光の空間伝播距離が大きくなるに従い、大気による散乱や吸収の結果、受信光強度が減衰する。このため通信や信号解析に必要な信号レベルまで暗電流のバックグランドを除いて高利得増幅する必要がある。しかしながらこの場合においても定常的な通信回線を確保するため、可能な限り光強度変調を行わないことが要求されている。
【0003】
光強度変調を用いない暗電流バックグランドの除去方法は、特開昭62−108582号公報および特開昭63−158881号公報に開示されている。これは同一チップに隣接(熱結合)して温度変化における暗電流特性が同一な2個の受光ダイオードの一方の受光面を遮光して配置し、各受光ダイオードの出力を差動増幅することにより暗電流成分をキャンセルする方法である。
一方、受光素子間の温度変化における暗電流特性の違いを解決するための方法は、特開昭52−82376号公報に開示されている。これは2つの受光素子を配置した熱結合板に電子冷却装置(外部温度制御手段)を密着し、一定温度に保つことにより実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の高利得光電変換装置は以上のように構成されているので、光強度変調を用いない暗電流バックグランドの除去方法では、受光素子間にわずかな温度変化における暗電流特性のずれが存在する場合、差動増幅により、バックグランドが残存し、残存量をモニタする機能がない。また、受光素子の経年劣化による交換の際には受光素子を1対で交換することが必須条件となり汎用性に乏しい。さらに、光通信用の受光モジュールのような同一チップ上に実装されていない既存の受光素子を用いる場合、暗電流特性は異なるため、バックグランドが残存する課題があった。
また、受光素子間の温度変化における暗電流特性の違いを解決するための方法では、受光素子周辺の温度に変化を与えられない環境下(例えば、生体計測など)での微弱光の測定や、電子冷却装置の応答時間よりも早い温度変動に対してはバックグランドの短期的な温度ドリフトが残存するなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、各光電変換手段の暗電流特性にわずかなずれが存在し、周囲温度が変化する場合であっても、暗電流成分を補償することができる高利得光電変換装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る高利得光電変換装置は、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とを演算する演算手段と、第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を演算された利得に応じて増幅する可変利得増幅手段と、演算された基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、第1の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号と可変利得増幅手段により増幅された電圧信号と基準電圧発生手段により発生された基準電圧とを加算する加算手段とを備えたものである。
【0007】
この発明に係る高利得光電変換装置は、光電変換手段を、同じ半導体ウェハ材料上の近傍領域から作製された複数個の受光素子を配列したもののうち、隣接した受光素子を対として用い、片側を遮光したものである。
【0008】
この発明に係る高利得光電変換装置は、第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号の高域周波数を遮断する低域通過フィルタを備えたものである。
【0009】
この発明に係る高利得光電変換装置は、演算手段に、予め測定した光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性に応じた測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを備えたものである。
【0010】
この発明に係る高利得光電変換装置は、全ての光電変換手段を遮光する遮光手段と、温度可変指令に応じて熱結合手段の温度を徐々に変更する温度可変手段とを備え、演算手段は、定期的に温度可変手段に温度可変指令を出力すると共に、温度測定手段により測定された熱結合手段の測定温度に応じた第1および第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を入力し、測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを更新するものである。
【0011】
この発明に係る高利得光電変換装置は、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度信号をAD変換するAD変換手段を備え、演算手段は、AD変換手段により変換されたデジタル信号と光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とをデジタル信号演算するデジタル信号処理手段により構成したものである。
【0012】
この発明に係る高利得光電変換装置は、基準電圧発生手段を、デジタル信号処理手段により演算された基準電圧をDA変換するDA変換手段により構成したものである。
【0013】
この発明に係る高利得光電変換装置は、デジタル信号処理手段とDA変換手段との間にフォトカプラを備えたものである。
【0014】
この発明に係る高利得光電変換装置は、遮光されていない光電変換手段に、増倍機能のある受光素子を用い、その光電変換手段に逆バイアス電圧を加える逆バイアス発生手段と、その加えられる逆バイアス電圧を測定する逆バイアス電圧測定手段とを備え、演算手段は、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧と光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性とに応じて、光電変換手段の光電変換感度を一定にする逆バイアス電圧指令を演算し、逆バイアス発生手段に出力するものである。
【0015】
この発明に係る高利得光電変換装置は、演算手段に、予め測定した光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性に応じた逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルを備え、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧とに応じた数値をその逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルから検索して、それら検索した数値から逆バイアス電圧指令を演算するものである。
【0016】
この発明に係る高利得光電変換装置は、CCDやMOS型の撮像素子の光出力を偶数個の光電変換手段にそれぞれ入力するものである。
【0017】
この発明に係る高利得光電変換装置は、光電変換手段を、受光端にシングルモード光ファイバが接続された受光モジュールから構成したものである。
【0018】
この発明に係る高利得光電変換装置は、光電変換手段を、受光端に光ファイバコネクタを備えた受光モジュールから構成したものである。
【0019】
この発明に係る高利得光電変換装置は、温度可変手段を、電子冷却器による冷却と、ヒータによる熱伝導とを併用して構成したものである。
【0020】
この発明に係る高利得光電変換装置は、温度可変手段を含む構成要素の全てまたは一部をOリングやガスケットを用いて外部との気密性を確保した筐体内に収納したものである。
【0021】
この発明に係る高利得光電変換装置は、筐体内を真空状態、あるいは希ガスを封入したものである。
【0022】
この発明に係る高利得光電変換装置は、各構成要素の駆動用の電源として、乾電池、蓄電池、太陽電池、燃料電池などの直流電源を用いたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高利得光電変換装置を示す構成図であり、図において、1aは信号用の受光素子(光電変換手段)、1bは暗電流用の受光素子(光電変換手段)であり、それら受光素子1a,1bは対になるように偶数個設けられており、それぞれ類似した暗電流特性および温度ドリフト特性を有するものである。2a,2bは受光素子1a,1bにそれぞれ逆バイアス電圧を加える逆バイアス発生手段、3は暗電流用の受光素子1bを遮光する遮光手段、4は受光素子1a,1bを熱的に結合する熱結合板(熱結合手段)である。
5は受光素子1aからの電流信号を高利得で電圧変換する信号用電流電圧変換器(第1の電圧変換手段)、6は受光素子1bからの電流信号を高利得で電圧変換する暗電流用電流電圧変換器(第2の電圧変換手段)、7は暗電流用電流電圧変換器6により電圧変換された電圧信号の高域周波数を遮断する低域通過フィルタである。
8は温度可変指令に応じて熱結合板4の温度を徐々に変更する温度可変手段、9は熱結合板4の温度を測定する温度センサ(温度測定手段)、10は温度センサ9により測定された熱結合板4の温度と受光素子1a,1bの暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とを演算する演算手段である。11は低域通過フィルタ7を通過した電圧信号を演算手段10により演算された利得に応じて増幅する可変利得増幅器(可変利得増幅手段)、12は演算手段10により演算された基準電圧を発生する基準電圧発生装置(基準電圧発生手段)、13は信号用電流電圧変換器5により電圧変換された電圧信号と可変利得増幅器11により増幅された電圧信号と基準電圧発生装置12により発生された基準電圧とを加算して、暗電流成分を相殺した入射信号光に応じた電圧信号を出力する加算器(加算手段)である。
【0024】
次に動作について説明する。
半導体受光素子に代表される光検知器は光の入力により、光強度に比例した電流と光入力に依存しない暗電流とを発生する。この実施の形態1において、受光素子1a,1bは偶数個用い、半数を信号用に半数を暗電流用に割り当て、対として用いる。暗電流用の受光素子1bの受光面には遮光手段3を設置する。
暗電流は受光素子に用いられている半導体材料と周囲温度とが均一であれば、ほぼ等しい。この性質を利用するため、対となる受光素子1a,1bは、同じ半導体ウェハ材料上の近傍領域から作製された複数個の受光素子を配列したもののうち、隣接した受光素子1a,1bを対として用い、暗電流特性および温度ドリフト特性に類似性を持たせる。また、周囲温度環境を均一にするため、熱結合板4に密着させる。
ここで、暗電流特性とは、デバイス、周囲温度および逆バイアス電圧に応じた各受光素子1a,1bの暗電流の特性であり、温度ドリフト特性とは、各受光素子1a,1bの暗電流特性における周囲温度に応じた変化率の特性である。
【0025】
信号用と暗電流用の受光素子1a,1bの後段には、同じ変換利得を持つ信号用電流電圧変換器5と暗電流用電流電圧変換器6とを接続する。さらに、低域通過フィルタ7により、暗電流用電流電圧変換器6で電圧変換された電圧信号の高域周波数を遮断する。これにより、暗電流用の電圧信号に含まれるノイズを遮断することができる。
信号用電流電圧変換器5、および暗電流用電流電圧変換器6から出力される電圧信号に含まれる暗電流成分Vd は、周囲温度T、受光素子1a,1bの逆バイアス電圧Vb を用いて次式(1)のように表される。
【数1】
上式(1)の暗電流成分Vd は、周囲温度T0 および逆バイアス電圧Vb0における暗電流成分Vd (T0 ,Vb0)と、温度変化ΔTと、逆バイアス電圧変化ΔVb とを用いて次式(2)のように表すことができる。
【数2】
上式(2)の第1項を暗電流オフセット成分、第2項を暗電流成分の温度ドリフト、第3項を暗電流成分の逆バイアス電圧ドリフトと呼ぶ。
【0026】
信号用および暗電流用の受光素子1a,1bの暗電流特性が完全に一致していれば、信号用電流電圧変換器5および暗電流用電流電圧変換器6からの電圧信号を差動増幅すれば暗電流成分は相殺され、光信号成分のみが増幅される。この場合、可変利得増幅器11の利得を1倍に設定し、加算器13を構成する後段の増幅器を組み合わせることで暗電流成分を補償した高利得の光電変換が実現できる。
しかし、信号用および暗電流用の受光素子1a,1bの暗電流特性に若干の差がある場合、差動増幅だけでは暗電流成分を補正しきれない。この実施の形態1においては、この状態においても暗電流成分を補償することができるようにしたものである。
【0027】
以下、その補償原理を説明する。簡単のため暗電流成分の逆バイアス電圧ドリフト(式(2)の第3項)は十分に小さく無視できるものとする。
信号用の受光素子1aによる出力電圧、すなわち信号用電流電圧変換器5の電圧信号をV1 、暗電流用の受光素子1bによる出力電圧、すなわち暗電流用電流電圧変換器6の電圧信号をV2 として次式(3),(4)で表す。
【数3】
ここで、VS は入射信号光に応じた電圧信号である。
後段の可変利得増幅器11の利得を−k、基準電圧発生装置12の基準電圧を−(Vd1−kVd2)とすれば、加算器13から出力される電圧信号V3 は次式(5)のようになる。
【数4】
ここで、可変利得増幅器11の利得−kを次式(6)のように設定した場合、
【数5】
加算器13から出力される電圧信号VS は、次式(7)のように入射信号光に応じた電圧信号VS となり、暗電流成分が補償されることが分かる。
【数6】
【0028】
図2は暗電流成分の温度特性を示す特性図である。
演算手段10には、予め受光素子1a,1bについて測定された図2に示したような暗電流成分の温度特性、すなわち、暗電流特性を保持しておく。これらの暗電流特性からは、温度に応じた変化率の特性、すなわち、温度ドリフト特性を演算することができる。また、図2に示したような、受光素子1a,1bについての暗電流特性からは、周囲温度T0 における受光素子1bから受光素子1aへの暗電流成分のオフセット値を演算することができる。さらに、受光素子1a,1bについての温度ドリフト特性からは、周囲温度T0 からΔT変化した場合における受光素子1bから受光素子1aへの暗電流特性の変化率の変換値を演算することができる。
これらの原理を利用して、演算手段10は、温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度と、受光素子1bから受光素子1aへの暗電流特性の変化率の変換値とから利得−kを演算すると共に、その演算された利得−kと周囲温度T0 における受光素子1bから受光素子1aへの暗電流成分のオフセット値とから基準電圧−(Vd1−kVd2)を演算する。
可変利得増幅器11は、低域通過フィルタ7を通過した電圧信号を演算手段10により演算された利得−kに応じて増幅し、基準電圧発生装置12は、演算手段10により演算された基準電圧−(Vd1−kVd2)を発生する。加算器13は、信号用電流電圧変換器5により電圧変換された電圧信号と可変利得増幅器11により増幅された電圧信号と基準電圧発生装置12により発生された基準電圧とを加算して、暗電流成分を相殺した入射信号光に応じた電圧信号を出力する。
【0029】
以上のように、この実施の形態1によれば、各受光素子1a,1bの暗電流特性にわずかなずれが存在し、受光素子1a,1bの温度が変化する場合であっても、加算器13からは暗電流成分を相殺した入射信号光に応じた電圧信号を出力することができ、暗電流成分を補償することができる。また、偶数個の受光素子1a,1bは、暗電流特性および温度ドリフト特性が類似していれば良く、一致している必要が無いので、1個の受光素子だけ代替することもできる。
【0030】
なお、図2に示したような暗電流特性は、解析式の形式で演算手段10に与えておいても良いが、予め測定した受光素子1a,1bの暗電流特性および温度ドリフト特性に応じた測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを演算手段10に与えておき、その演算手段10では、温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度に応じた数値をそれら測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルから検索して、それら検索した数値から利得と基準電圧とを演算するようにしても良く、テーブルを検索するだけで所望の数値を得ることができ、演算手段10における利得と基準電圧との演算を容易に行うことができる。
【0031】
また、演算手段10により演算される基準電圧は、受光素子1a,1bの暗電流成分Vd1,Vd2および利得kから演算されるが、それら暗電流成分Vd1,Vd2も温度の関数として表すことができる。この関数は受光素子によって異なるが、予め測定されている場合は、測定温度から暗電流成分Vd1,Vd2への変換式を用意するか、温度に対する暗電流成分Vd1,Vd2を演算手段10に数値テーブル化しておき、測定温度から直接参照可能な状態にしておいても良い。
【0032】
さらに、受光素子1a,1bの暗電流特性および温度ドリフト特性が不明な場合は、受光素子1a,1bの両方を遮光手段3により遮光し、演算手段10を実測モードに切り替えるようにしても良い。
この場合、実測モードに切り替った演算手段10は、温度可変手段11に温度可変指令を出力し、温度可変手段11は、その温度可変指令に応じて熱結合板4の温度を徐々に変更する。演算手段10は、温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度に応じた信号用電流電圧変換器5の電圧信号、および低域通過フィルタ7の電圧信号を入力し、測定温度−暗電流特性テーブルを更新すると共に、変化率を演算して測定温度−温度ドリフト特性テーブルを更新する。
また、演算手段10において定期的に実測モードに切り替えるようにしても良く、この場合、定期的に実測した値からテーブルの数値を更新することができ、受光素子1a,1bが経年劣化しても、その経年劣化に応じた数値から利得と基準電圧とを演算することができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる。
【0033】
図3はこの発明の実施の形態1による高利得光電変換装置の変形例を示す構成図であり、図において、22は温度センサ9により測定された熱結合板4の温度信号をAD変換するAD変換器(AD変換手段)、23はAD変換器22により変換されたデジタル信号と受光素子1a,1bの暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とをデジタル信号演算するデジタル信号処理装置(デジタル信号処理手段)である。
また、24はデジタル信号処理装置23により演算された基準電圧をDA変換するDA変換器(DA変換手段)、25はデジタル信号処理装置23とDA変換器24との間に設けられたフォトカプラ、26はデジタル信号処理装置23により出力された温度可変指令をDA変換するDA変換器である。
このように構成することによって、演算手段10を代替したデジタル信号処理装置23では、積和演算を高速処理できるので、利得と基準電圧とを高速演算することができ、実時間で暗電流成分を補償することができる。
また、基準電圧発生装置12を代替したDA変換器24では、デジタル信号処理装置23により演算された基準電圧をDA変換するだけで、加算器13に対して基準電圧を発生することができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる。
さらに、フォトカプラ25により、DA変換器24から微弱な基準電圧を発生する際に問題となるデジタル信号処理装置23から混入するノイズを除去することができ、基準電圧の発生を高精度に行うことができる。
【0034】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による高利得光電変換装置を示す構成図であり、図において、31aは信号用の受光素子(光電変換手段)であり、例えば、アバランシェフォトダイオード等により構成されたものである。32は受光素子31a,1bに加えられる逆バイアス電圧を測定するAD変換器(逆バイアス電圧測定手段)、33は温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度とAD変換器32により測定された逆バイアス電圧と受光素子31aの逆バイアス電圧−温度−暗電流特性とに応じて、受光素子31aの光電変換感度を一定にする逆バイアス電圧指令を演算するデジタル信号処理装置(デジタル信号処理手段)、34はそのバイアス電圧指令をDA変換して逆バイアス発生手段2a,2bに出力するDA変換器、35はデジタル信号処理装置33とDA変換器34との間に設けられたフォトカプラである。
その他の構成は、図3と同一である。
【0035】
次に動作について説明する。
実施の形態1と異なるのは、増倍機能のある受光素子31aを用い、その受光素子31aに適切な逆バイアス電圧を印加させて、10数倍程度の信号用の検出光電流の増倍機能がある領域で用いる点である。これによりさらに微弱な光の検出が可能となる。
図5は逆バイアス電圧−温度−暗電流特性を示す特性図であり、この図5に示すように、逆バイアス電圧と暗電流成分とは非線形に変化し、また、温度変化によっても暗電流成分は変化する。
したがって、デジタル信号処理装置33により、温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度とAD変換器32により測定された逆バイアス電圧とをモニタし、受光素子31aの逆バイアス電圧−温度−暗電流特性に応じて、受光素子31aの光電変換感度を一定にする逆バイアス電圧指令を演算する。その逆バイアス電圧指令は、フォトカプラ35およびDA変換器34を通じて逆バイアス発生手段2aに出力され、逆バイアス発生手段2aの逆バイアス電圧を制御する。これにより、受光素子31aでの光電変換感度を一定にできる。
【0036】
以下、2つの受光素子31a,1bに光電変換感度の違いがあり、かつ暗電流特性にも若干のばらつきがある場合における暗電流成分の補償方法について説明する。
信号用の受光素子31aによる電圧信号をV1 、暗電流用の受光素子1bによる電圧信号をV2 として次式(8),(9)で表す。
【数7】
ここで、αは信号用の受光素子31aの感度を1としたときの感度比を表す。後段の可変利得増幅器11の利得を−k′、DA変換器24の基準電圧を−(Vd1−αk′Vd2)とすれば、加算器13から出力される電圧信号V3 は次式(10)のようになる。
【数8】
ここで、可変利得増幅器11の利得−k′を次式(11)のように設定した場合、加算器13から出力される電圧信号VS は、入射信号光に応じた電圧信号VS となり、暗電流成分が補償されることが分かる。
【数9】
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、増倍機能のある受光素子31aに逆バイアス電圧を加えることによって、さらに微弱な光を検出することができる。また、デジタル信号処理装置33によって演算された逆バイアス電圧指令に応じた逆バイアス電圧を受光素子31aに加えることによって、光電変換感度の一定領域で受光素子31aを動作させることができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる。
また、デジタル信号処理装置33とDA変換器34との間にフォトカプラ35を設けたことにより、デジタル信号処理装置33からDA変換器34に回り込む電気的なクロックノイズなどの混入を防ぐことができ、高性能に動作させることができる。
【0038】
なお、デジタル信号処理装置33に、図5に示したような予め測定した受光素子31aの逆バイアス電圧−温度−暗電流特性に応じた逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルを与え、温度センサ9により測定された熱結合板4の測定温度とAD変換器32により測定された逆バイアス電圧とに応じた数値をその逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルから検索して、それら検索した数値から逆バイアス電圧指令を演算するようにしても良く、テーブルを検索するだけで所望の数値を得ることができ、デジタル信号処理装置33における逆バイアス電圧指令の演算を容易に行うことができる。
【0039】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による高利得光電変換装置を示す構成図であり、図において、2は逆バイアス発生手段である。また、信号用電流電圧変換器5において、41は高精度高抵抗器、42は低雑音低ドリフトオペアンプである。さらに、暗電流用電流電圧変換器6において、43は高精度高抵抗器、44は低雑音低ドリフトオペアンプである。45は信号用電流電圧変換器5により電圧変換された電圧信号を制限する抵抗器、46は低域通過フィルタ7を通過した電圧信号を利得に応じて調整する高精度可変抵抗器(可変利得増幅手段)である。47a,47bは基準電圧発生器、48はそれら基準電圧発生器47a,47bの発生電圧を分圧して、基準電圧を発生する高精度可変抵抗器であり、それら基準電圧発生器47a,47b、および高精度可変抵抗器48により基準電圧発生装置49を構成する。また、加算機13において、50は高精度高抵抗器、51は低雑音低ドリフトオペアンプである。
その他の構成は図1と同一である。
【0040】
次に動作について説明する。
この実施の形態3は、図1に示した構成を簡略化したものであり、受光素子1a,1bの温度変化が少ないことが前提条件となる。この場合、暗電流オフセット成分(式(3)の第2項)、温度係数(式(3)の第3項の微係数)は一定となる。
したがって、式(3),(4)は温度係数β1 ,β2 を用いて次式(12),(13)のように簡略化できる。
【数10】
高精度可変抵抗器46の利得を−k″、基準電圧発生装置49の基準電圧を−(Vd1−k″Vd2)として、かつ、利得−k″の値を次式(14)のように設定した場合、
【数11】
加算器13から出力される電圧信号VS は、式(15)に示すように、入射信号光に応じた電圧信号VS となり、微小な温度範囲ΔTで暗電流成分が補償されることが分かる。
【数12】
【0041】
この実施の形態3では、利得−k″と、基準電圧−(Vd1−k″Vd2)とを演算手段(図示せず)によりオフラインで求めておき、それらの調整はアナログ的に手動で行う。すなわち、利得は低域通過フィルタ7を通過した電圧信号を高精度可変抵抗器46で調整し、また、基準電圧は基準電圧発生器47a,47bの発生電圧を高精度可変抵抗器48で分圧電圧を調整する。
【0042】
以上のように、この実施の形態3によれば、装置構成を大幅に簡略化でき、コストを低減することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態1から実施の形態3において、CCDやMOS型の撮像素子の光出力を偶数個の受光素子にそれぞれ入力すれば、撮像素子を冷却せずに撮像素子の光出力の暗電流成分を補償することができ、室温や高温下での微弱光の撮像ができる。
【0044】
また、上記実施の形態1から実施の形態3において、受光素子を、受光端にシングルモード光ファイバが接続された受光モジュールから構成すれば、光通信用途に開発された受光素子を幅広く流用できる。
【0045】
さらに、上記実施の形態1から実施の形態3において、受光素子を、受光端に光ファイバコネクタを備えた受光モジュールから構成すれば、光の入力が光ファイバコネクタとなるため取り扱いが容易になる。
【0046】
さらに、上記実施の形態1から実施の形態3において、温度可変手段8を、電子冷却器による冷却と、ヒータによる熱伝導とを併用して構成すれば、周囲温度の変化による熱結合板4の温度変動を最小にすることができ、補償対象である暗電流成分の変動を抑えることができる。
【0047】
さらに、上記実施の形態1から実施の形態3において、温度可変手段8を含む構成要素の全てまたは一部をOリングやガスケットを用いて外部との気密性を確保した筐体内に収納して、温度可変手段8により冷却すれば、補償対象である暗電流成分を小さく抑えることができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる。
また、筐体を用いることで、外部からのほこりの進入や湿度の変化、風の進入を防止できることも副次的な効果である。これにより高利得増幅器を構成する上で問題となる浮遊容量の変化や漏洩電流の発生を抑制することができる。
【0048】
さらに、上記実施の形態1から実施の形態3において、その筐体内を真空状態、あるいは希ガスを封入すれば、冷却により生じる結露を防ぐことができ、構成要素の損傷を防ぐことができる。
【0049】
さらに、上記実施の形態1から実施の形態3において、各構成要素の駆動用の電源として、乾電池、蓄電池、太陽電池、燃料電池などの直流電源を用いれば、交流成分ノイズを避けることができる。
【0050】
さらに、受光素子、遮光手段、および熱結合板のみを、他の構成と切り離すことにより、小型、軽量化にすることができ、取り付けに対する制約を緩和できる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とを演算する演算手段と、第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を演算された利得に応じて増幅する可変利得増幅手段と、演算された基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、第1の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号と可変利得増幅手段により増幅された電圧信号と基準電圧発生手段により発生された基準電圧とを加算する加算手段とを備えるように構成したので、各光電変換手段の暗電流特性にわずかなずれが存在し、光電変換手段の温度が変化してしまう場合であっても、加算手段からは暗電流成分を相殺した入射信号光に応じた電圧信号を出力することができ、暗電流成分を補償することができる。また、偶数個の光電変換手段は、暗電流特性および温度ドリフト特性が類似していれば良く、一致している必要が無いので、1個の光電変換手段だけ代替することもできる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0052】
この発明によれば、光電変換手段を、同じ半導体ウェハ材料上の近傍領域から作製された複数個の受光素子を配列したもののうち、隣接した受光素子を対として用い、片側を遮光するように構成したので、デバイスおよび周囲温度を極めて類似させることができるので、暗電流特性および温度ドリフト特性の極めて類似した複数個の光電変換手段を用いることができ、高精度に暗電流成分を補償することができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0053】
この発明によれば、第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号の高域周波数を遮断する低域通過フィルタを備えるように構成したので、第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号の高域周波数(ノイズ)を遮断することができ、高精度に暗電流成分を補償することができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0054】
この発明によれば、演算手段に、予め測定した光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性に応じた測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを備えるように構成したので、テーブルを検索するだけで所望の数値を得ることができ、演算手段における利得と基準電圧との演算を容易に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0055】
この発明によれば、全ての光電変換手段を遮光する遮光手段と、温度可変指令に応じて熱結合手段の温度を徐々に変更する温度可変手段とを備え、演算手段は、定期的に温度可変手段に温度可変指令を出力すると共に、温度測定手段により測定された熱結合手段の測定温度に応じた第1および第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を入力し、測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを更新するように構成したので、定期的に実測した値からテーブルの数値を更新することができ、光電変換手段が経年劣化しても、その経年劣化に応じた数値から利得と基準電圧とを演算することができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0056】
この発明によれば、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度信号をAD変換するAD変換手段を備え、演算手段は、AD変換手段により変換されたデジタル信号と光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とをデジタル信号演算するデジタル信号処理手段により構成したので、デジタル信号処理手段では、積和演算を高速処理できるので、利得と基準電圧とを高速演算することができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0057】
この発明によれば、基準電圧発生手段を、デジタル信号処理手段により演算された基準電圧をDA変換するDA変換手段により構成したので、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0058】
この発明によれば、デジタル信号処理手段とDA変換手段との間にフォトカプラを備えるように構成したので、DA変換手段から微弱な基準電圧を発生する際に問題となるデジタル信号処理手段から混入するノイズを除去することができ、基準電圧の発生を高精度に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0059】
この発明によれば、遮光されていない光電変換手段に、増倍機能のある受光素子を用い、その光電変換手段に逆バイアス電圧を加える逆バイアス発生手段と、その加えられる逆バイアス電圧を測定する逆バイアス電圧測定手段とを備え、演算手段は、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧と光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性とに応じて、光電変換手段の光電変換感度を一定にする逆バイアス電圧指令を演算し、逆バイアス発生手段に出力するように構成したので、増倍機能のある受光素子に逆バイアス電圧を加えることによって、さらに微弱な光を検出することができる。演算手段によって演算された逆バイアス電圧指令に応じた逆バイアス電圧を受光素子に加えることによって、光電変換感度の一定領域で受光素子を動作させることができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0060】
この発明によれば、演算手段に、予め測定した光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性に応じた逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルを備え、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧とに応じた数値をその逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルから検索して、それら検索した数値から逆バイアス電圧指令を演算するように構成したので、テーブルを検索するだけで所望の数値を得ることができ、演算手段における逆バイアス電圧指令の演算を容易に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0061】
この発明によれば、CCDやMOS型の撮像素子の光出力を偶数個の光電変換手段にそれぞれ入力するように構成したので、撮像素子を冷却せずに撮像素子の光出力の暗電流成分を補償することができ、室温や高温下での微弱光の撮像ができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0062】
この発明によれば、光電変換手段を、受光端にシングルモード光ファイバが接続された受光モジュールから構成したので、光通信用途に開発された受光素子を幅広く流用できる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0063】
この発明によれば、光電変換手段を、受光端に光ファイバコネクタを備えた受光モジュールから構成したので、光の入力が光ファイバコネクタとなるため取り扱いが容易になる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0064】
この発明によれば、温度可変手段を、電子冷却器による冷却と、ヒータによる熱伝導とを併用して構成したので、周囲温度の変化による熱結合手段の温度変動を最小にすることができ、補償対象である暗電流成分の変動を抑えることができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0065】
この発明によれば、温度可変手段を含む構成要素の全てまたは一部をOリングやガスケットを用いて外部との気密性を確保した筐体内に収納するように構成したので、温度可変手段により冷却すれば、補償対象である暗電流成分を小さく抑えることができ、暗電流成分の補償を高精度に行うことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0066】
この発明によれば、筐体内を真空状態、あるいは希ガスを封入するように構成したので、冷却により生じる結露を防ぐことができ、構成要素の損傷を防ぐことができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【0067】
この発明によれば、各構成要素の駆動用の電源として、乾電池、蓄電池、太陽電池、燃料電池などの直流電源を用いるように構成したので、交流成分ノイズを避けることができる高利得光電変換装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による高利得光電変換装置を示す構成図である。
【図2】 暗電流成分の温度特性を示す特性図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による高利得光電変換装置の変形例を示す構成図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による高利得光電変換装置を示す構成図である。
【図5】 逆バイアス電圧−温度−暗電流特性を示す特性図である。
【図6】 この発明の実施の形態3による高利得光電変換装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1a,1b,31a 受光素子(光電変換手段)、2,2a,2b 逆バイアス発生手段、3 遮光手段、4 熱結合板(熱結合手段)、5 信号用電流電圧変換器(第1の電圧変換手段)、6 暗電流用電流電圧変換器(第2の電圧変換手段)、7 低域通過フィルタ、8 温度可変手段、9 温度センサ(温度測定手段)、10 演算手段、11 可変利得増幅器(可変利得増幅手段)、12,49 基準電圧発生装置(基準電圧発生手段)、13 加算器(加算手段)、22 AD変換器(AD変換手段)、23,33 デジタル信号処理装置(デジタル信号処理手段)、24 DA変換器(DA変換手段)、25,35 フォトカプラ、26,34 DA変換器、32 AD変換器(逆バイアス電圧測定手段)、41,43,50 高精度高抵抗器、42,44,51 低雑音低ドリフトオペアンプ、45 抵抗器、46 高精度可変抵抗器(可変利得増幅手段)、47a,47b 基準電圧発生器、48 高精度可変抵抗器。
Claims (17)
- 類似した暗電流特性および温度ドリフト特性を有する偶数個の光電変換手段と、上記光電変換手段のうちの半数を遮光する遮光手段と、上記遮光手段により遮光された光電変換手段と遮光されていない光電変換手段とを熱的に結合する熱結合手段と、上記遮光されていない光電変換手段からの電流信号を高利得で電圧変換する第1の電圧変換手段と、上記遮光手段により遮光された光電変換手段からの電流信号を高利得で電圧変換する第2の電圧変換手段と、上記熱結合手段の温度を測定する温度測定手段と、上記温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と上記光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とを演算する演算手段と、上記第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を上記演算手段により演算された利得に応じて増幅する可変利得増幅手段と、上記演算手段により演算された基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、上記第1の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号と上記可変利得増幅手段により増幅された電圧信号と上記基準電圧発生手段により発生された基準電圧とを加算する加算手段とを備えた高利得光電変換装置。
- 光電変換手段は、同じ半導体ウェハ材料上の近傍領域から作製された複数個の受光素子を配列したもののうち、隣接した受光素子を対として用い、片側を遮光したことを特徴とする請求項1記載の高利得光電変換装置。
- 第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号の高域周波数を遮断する低域通過フィルタを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の高利得光電変換装置。
- 演算手段は、予め測定した光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性に応じた測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを備え、温度測定手段により測定された熱結合手段の測定温度に応じた数値をそれら測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルから検索して、それら検索した数値から利得と基準電圧とを演算することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の高利得光電変換装置。
- 全ての光電変換手段を遮光する遮光手段と、温度可変指令に応じて熱結合手段の温度を徐々に変更する温度可変手段とを備え、演算手段は、定期的に上記温度可変手段に温度可変指令を出力すると共に、温度測定手段により測定された上記熱結合手段の測定温度に応じた第1および第2の電圧変換手段により電圧変換された電圧信号を入力し、測定温度−暗電流特性テーブルおよび測定温度−温度ドリフト特性テーブルを更新することを特徴とする請求項4記載の高利得光電変換装置。
- 温度測定手段により測定された熱結合手段の温度信号をAD変換するAD変換手段を備え、演算手段は、上記AD変換手段により変換されたデジタル信号と光電変換手段の暗電流特性および温度ドリフト特性とに応じて、利得と基準電圧とをデジタル信号演算するデジタル信号処理手段により構成したことを特徴とする請求項1記載の高利得光電変換装置。
- 基準電圧発生手段は、デジタル信号処理手段により演算された基準電圧をDA変換するDA変換手段により構成したことを特徴とする請求項6記載の高利得光電変換装置。
- デジタル信号処理手段とDA変換手段との間にフォトカプラを備えたことを特徴とする請求項7記載の高利得光電変換装置。
- 遮光されていない光電変換手段に、増倍機能のある受光素子を用い、その光電変換手段に逆バイアス電圧を加える逆バイアス発生手段と、その加えられる逆バイアス電圧を測定する逆バイアス電圧測定手段とを備え、演算手段は、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と上記逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧と上記光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性とに応じて、上記光電変換手段の光電変換感度を一定にする逆バイアス電圧指令を演算し、上記逆バイアス発生手段に出力することを特徴とする請求項1記載の高利得光電変換装置。
- 演算手段は、予め測定した光電変換手段の逆バイアス電圧−温度−暗電流特性に応じた逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルを備え、温度測定手段により測定された熱結合手段の温度と逆バイアス電圧測定手段により測定された逆バイアス電圧とに応じた数値をその逆バイアス電圧−温度−暗電流特性テーブルから検索して、それら検索した数値から逆バイアス電圧指令を演算することを特徴とする請求項9項記載の高利得光電変換装置。
- CCDやMOS型の撮像素子の光出力を偶数個の光電変換手段にそれぞれ入力することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載の高利得光電変換装置。
- 光電変換手段は、受光端にシングルモード光ファイバが接続された受光モジュールから構成したことを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の高利得光電変換装置。
- 光電変換手段は、受光端に光ファイバコネクタを備えた受光モジュールから構成したことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載の高利得光電変換装置。
- 温度可変手段は、電子冷却器による冷却と、ヒータによる熱伝導とを併用して構成したことを特徴とする請求項5記載の高利得光電変換装置。
- 温度可変手段を含む構成要素の全てまたは一部をOリングやガスケットを用いて外部との気密性を確保した筐体内に収納したことを特徴とする請求項1記載の高利得光電変換装置。
- 筐体内を真空状態、あるいは希ガスを封入したことを特徴とする請求項15記載の高利得光電変換装置。
- 各構成要素の駆動用の電源として、乾電池、蓄電池、太陽電池、燃料電池などの直流電源を用いたことを特徴とする請求項1から請求項16のうちのいずれか1項記載の高利得光電変換装置。
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