本発明は、内燃機関の排気系に吸蔵還元型のNOx触媒が配置された排気浄化装置に関し、特にNOx触媒の劣化を判定する技術に関する。
内燃機関の排気浄化装置に用いられる触媒として、吸蔵還元型NOx触媒(以下、単にNOx触媒と称する)が知られている。このようなNOx触媒の劣化を判定する方法としては、NOx触媒の上流及び下流に空燃比センサが配置された構成において、リッチスパイク操作時に下流側空燃比センサ出力が理論空燃比近傍に維持されている時間を計測し、その時間の長さに基づいてNOx触媒の劣化を判定する方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。
特開平11−93742号公報
特許第2692380号公報
特開平11−81994号公報
ところで、従来では、リッチスパイク操作時にNOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている時間、言い換えれば、NOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている間にNOx触媒へ供給される還元剤量は、NOx触媒が吸収又は吸蔵したNOx量に比例すると考えられていた。
しかしながら、NOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている期間にNOx触媒へ供給される還元剤量は必ずしもNOx吸蔵量と比例しないことが本願の発明者によって見出された。このため、上記した従来の方法では、誤判定を招く場合がある。
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気系に設けられたNOx触媒の劣化を精度よく判定することができる技術を提供する点になる。
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。先ず、本発明の特徴は、吸蔵還元型のNOx触媒に対してリッチスパイク制御を実行している際に、該NOx触媒をすり抜ける還元剤の量(以下、還元剤すり抜け量と記す)をパラメータとしてNOx触媒の劣化を判定する点にある。
本願発明者は、上記した課題を解決すべく種々の実験及び検証を行った結果、NOx触媒が劣化(例えば、NOx触媒が吸蔵又は吸収可能なNOx量が減少)すると、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒をすり抜ける還元剤量(詳細には、NOx触媒においてNOxの還元を完了させることができずにNOx触媒下流へ流れながらNOxを還元させる還元剤の量)が正常時とは異なる挙動を示すことを見出した。
更に本願発明者は上記の挙動について鋭意の検証を行った結果、NOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている期間にNOx触媒へ供給される還元剤量がNOx吸蔵量と比例しない場合であっても、上記の挙動が表れることも見出した。
そこで、本発明では、排気中に含まれる還元剤量を増加させることによりNOx触媒へ
流入する排気の空燃比を所定のリッチ空燃比とするリッチスパイク制御を行う内燃機関の排気浄化装置において、リッチスパイク制御実行時にNOx触媒をすり抜けた還元剤の量を推定する推定手段と、推定手段の推定値をパラメータとしてNOx触媒の劣化を判定する判定手段と、を備えるようにした。
このように構成された内燃機関の排気浄化装置によれば、推定手段により推定された還元剤すり抜け量が正常時とは異なる挙動を示した場合に、NOx触媒が劣化していると判定することができる。
この判定方法によれば、NOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている期間にNOx触媒へ供給される還元剤量がNOx吸蔵量と比例しない場合であっても、NOx触媒の劣化を判定することが可能となる。
リッチスパイク制御実行中に還元剤のすり抜けが発生すると、吸蔵還元型NOx触媒から流出する排気の空燃比(以下、下流側空燃比と称する)がリッチとなる。その際の還元剤すり抜け量は、排気流量(NOx触媒を流れる排気量)を下流側空燃比で除算した値から排気流量を理論空燃比で除算した値を減算することにより求めることができる。
NOx触媒の劣化を判定する具体的な方法としては、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒へ供給された還元剤量を積算し、その積算量が所定量に達した時点での還元剤すり抜け量が所定の上限値より多ければNOx触媒が劣化していると判定する方法を例示することができる。
これは、NOx触媒の劣化の程度が大きくなるほどリッチスパイク制御実行中の還元剤すり抜け量が多くなり、且つ、この特性はリッチスパイク制御実行中にNOx触媒へ供給された還元剤の積算量が所定の量に達した時に顕著に表れるという本願発明者の知見に基づくものである。
また、NOx触媒の劣化を判定する他の方法としては、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒へ供給された還元剤量を積算するとともに、リッチスパイク制御実行中の推定手段の推定値を積算(すなわち、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒をすり抜けた還元剤量を積算)し、還元剤供給量の積算量に対する還元剤すり抜け量の積算量が上限値より大きければNOx触媒が劣化していると判定する方法を例示することができる。
この判定方法によれば、判定精度の更なる向上を図ることが可能となる。すなわち、上記の判定方法によれば、下流側空燃比を検出する空燃比センサや酸素濃度センサ等の出力が外乱等によって一時的に乱れた場合や高分子HCが還元剤として排気中に含まれている場合等であっても、NOx触媒の劣化を検出し易くなる。
空燃比センサや酸素センサは高分子HCに反応し難いため、高分子HCが還元剤として排気中に含まれている場合にはセンサ出力が実際の空燃比よりも高い(リーン)空燃比を示すことが予想される。そのような場合には劣化時の還元剤すり抜け量と正常時の還元剤すり抜け量との差が小さくなる可能性がある。また、空燃比センサや酸素センサの出力が外乱等によって乱れた場合も、劣化時の還元剤すり抜け量と正常時の還元剤すり抜け量との差が小さくなる可能性がある。
これに対し、還元剤すり抜け量の積算量をパラメータとして劣化判定が行うことにより、劣化時の還元剤すり抜け量と正常時の還元剤すり抜け量との差が小さくなるような場合であっても誤判定し難くなる。
本発明は、NOx触媒より上流の排気通路に設けられた燃料添加弁を利用してリッチスパイク制御が行われる内燃機関に好適に適用することができる。これは、リッチスパイク制御においてNOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている期間にNOx触媒へ供給される還元剤量とNOx吸蔵量との相関は、燃料噴射弁からのポスト噴射等を利用してリッチスパイク制御が行われる場合に比べ、燃料添加弁から排気中への燃料添加を利用してリッチスパイク制御が行われる場合に低くなり易いからである。
また、本発明に係る判定方法は、NOx触媒より上流の排気通路に副NOx触媒が配置された内燃機関において、副NOx触媒の劣化を判定する場合にも利用することができる。
NOx触媒が正常且つ副NOx触媒が劣化している場合には、副NOx触媒に吸蔵されるべきNOxの一部がNOx触媒に吸蔵されることになる。このため、NOx触媒が正常且つ副NOx触媒が劣化している場合にNOx触媒が吸蔵するNOx量は、NOx触媒及び副NOx触媒が正常である場合にNOx触媒が吸蔵するNOx量より多くなる。
このようにNOx触媒のNOx吸蔵量が増加すると、リッチスパイク制御実行中の還元剤すり抜け量が少なくなる。従って、本発明にかかる判定手段は、還元剤供給量の積算量が所定量に達した時の還元剤すり抜け量が所定の下限値より少なくなった場合、又は還元剤供給量の積算量に対する還元剤すり抜け量の積算量が所定の下限値を下回った場合には、副NOx触媒が劣化していると判定することができる。
本発明に依れば、NOx触媒下流の空燃比が理論空燃比近傍に維持されている間にNOx触媒へ供給される還元剤量とNOx触媒のNOx吸蔵量とが比例関係に無い場合であっても、NOx触媒の劣化を精度良く判定することが可能となる。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
先ず、本発明の第1の実施例について図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施例を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、複数の気筒2を有する圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。
内燃機関1には、排気通路3が接続されている。排気通路3の途中には、遠心過給器(ターボチャージャ)4のタービン41が設けられている。タービン41より下流の排気通路3には、NOx触媒5が設けられている。
NOx触媒5は、該NOx触媒5へ流入する排気がリーン雰囲気(酸素過剰な雰囲気)のときには排気中のNOxを吸収又は吸蔵し、流入排気がストイキ或いはリッチ雰囲気のときには吸収又は吸蔵していたNOxを放出しつつ還元する吸蔵還元型NOx触媒である。
NOx触媒5より上流の排気通路と下流の排気通路3には、それぞれ空燃比センサ6、7が設けられている。尚、以下では、NOx触媒5より上流の空燃比センサ6を上流側空燃比センサ6と称し、NOx触媒5より下流の空燃比センサ7を下流側空燃比センサ7と称する。
タービン41より上流の排気通路3には、還元剤としての燃料を排気中へ添加するため
の燃料添加弁8が設けられている。この燃料添加弁8は、NOx触媒5へ流入する排気をストイキ又はリッチ雰囲気にする場合や、NOx触媒5の昇温を図る時などに作動する。
このように構成された内燃機関1には、ECU9が併設されている。ECU9は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等から構成される算術論理演算回路である。ECU9には、上述した上流側空燃比センサ6や下流側空燃比センサ7に加え、図示しない吸気通路に設けられたエアフローメータ10等の種々のセンサが電気的に接続されている。また、ECU9は、燃料添加弁8とも電気的に接続され、燃料添加弁8の作動状態を制御可能となっている。
ECU9は、燃料噴射制御やリッチスパイク制御等の既知の制御に加え、本発明の要旨となる触媒劣化判定制御を行う。本実施例における触媒劣化判定制御は、リッチスパイク制御の実行時に行われ、好ましくはSOx被毒解消制御実行後の最初に行われるリッチスパイク制御において実行される。
リッチスパイク制御では、ECU9は、燃料添加弁8の作動と停止を短周期で繰り返させることにより、NOx触媒5へ流入する排気の空燃比を所定の目標リッチ空燃比とする。
リッチスパイク制御が行われると、NOx触媒5へ流入する排気がリッチ雰囲気となる。このため、NOx触媒5は、吸収又は吸蔵していたNOxを放出するとともに、放出したNOxと排気中の燃料(還元剤)とを酸化・還元反応させる。その結果、NOx触媒5のNOx吸蔵能力が再生される。
次に、触媒劣化判定制御について述べる。図2は、リッチスパイク制御実行時に上流側空燃比センサ6及び下流側空燃比センサ7が出力する信号を計測した結果を示す図である。
図2において、リッチスパイク制御が開始されると、上流側空燃比センサ6の出力信号(以下、上流側空燃比と記す)は速やかにリッチ空燃比へ移行する。これに対し、下流側空燃比センサ7の出力信号(以下、下流側空燃比と記す)は、上流側空燃比センサ6との配置の差に起因した応答遅れを伴って低下する。下流側空燃比は、ストイキへ達した時点でしばらくの間(図2中のt)はストイキ近傍に維持され、その後リッチ空燃比へ移行する。
ここで、従来の劣化判定方法では、下流側空燃比がストイキ近傍に維持される時間(ストイキ維持時間と記す)tをパラメータとしてNOx触媒の劣化が判定されていた。これは、ストイキ維持時間tの間にNOx触媒へ供給される還元剤量は、NOx触媒のNOx吸蔵量に比例すると考えられていたからである。
ところで、本願発明者の鋭意の実験及び検証により、ガソリンを燃料とする火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)の場合はストイキ維持時間tの長さ(言い換えれば、ストイキ維持時間t内にNOx触媒へ供給された還元量)がNOx触媒のNOx吸蔵量と略比例するが、内燃機関1のような圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)の場合はストイキ維持時間tの長さ(ストイキ維持時間t内にNOx触媒へ供給された還元量)がNOx触媒のNOx吸蔵量と必ずしも比例しないことを見出した。
図3は、圧縮着火式内燃機関の排気系に新品のNOx触媒(劣化していないNOx触媒)を配置した場合のストイキ維持時間t内にNOx触媒へ供給された還元剤量と、劣化したNOx触媒を配置した場合のストイキ維持時間t内にNOx触媒へ供給された還元剤量
とを複数回計測した結果を示す図である。
図3中の縦軸はストイキ維持時間t内にNOx触媒へ供給された還元剤量を示し、横軸は還元剤供給前にNOx触媒へ供給されたNOx量(NOx吸蔵量)を示している。図3中の白抜き菱形は新品のNOx触媒の計測結果を示し、黒丸は劣化したNOx触媒の計測結果を示している。
図3に示すように、NOx吸蔵量と還元剤供給量との相関は、NOx触媒が新品であるか或いは劣化品であるかに関わらず一意に定まっていない。すなわち、NOx吸蔵量が同量であっても還元剤量が異なっている。更に、NOx吸蔵量が増加していても、それに比例して還元剤供給量が増加していない。
図4は、NOx吸蔵量が異なる新品のNOx触媒に対してリッチスパイク制御が行われた時の上流側空燃比及び下流側空燃比を計測した結果を示している。図中の実線はNOx吸蔵量が少ないNOx触媒の上流側空燃比及び下流側空燃比を示し、図中の点線はNOx吸蔵量が多いNOx触媒の上流側空燃比及び下流側空燃比を示している。尚、NOx吸蔵量が多いNOx触媒には、NOx吸蔵量が少ないNOx触媒の略2倍のNOxを吸蔵させて計測を行った。
図4に示したように、ストイキ維持時間は、NOx触媒のNOx吸蔵量が変化しても明確な変化を示していない。すなわち、NOx触媒のNOx吸蔵量が倍に変化してもストイキ維持時間が殆ど変化していない。
前述した図3、図4の計測結果により、圧縮着火式内燃機関においてはストイキ維持時間とNOx吸蔵量との相関が一意に定まらない場合が生じ得ることが判明した。圧縮着火式内燃機関においてストイキ維持時間とNOx吸蔵量との相関が一意に定まらない要因については十分に解明されていないが、おおよそ以下のような要因に拠ると考えられる。
すなわち、上記した現象は、下記の2つの要因が不規則に組み合わされて生じるものと考えられる。先ず、第1の要因は、NOx触媒へ供給された還元剤の一部がNOx触媒から放出されたNOxと即座に反応せずにNOx触媒に一旦吸着し、その後の不規則なタイミングでNOxと反応することである(この場合、下流側空燃比がリーン側へずれる)。
第2の要因は、NOx触媒により酸化/還元反応が誘起された還元剤とNOxの一部はNOx触媒内で反応を完了させることができずにNOx触媒下流へ流れながら反応を完了(すなわち、還元剤がNOx触媒をすり抜けながらNOxを還元)することである(この場合、下流側空燃比がリッチ側へずれる)。
従って、ストイキ維持時間tをパラメータとした劣化判定方法では、圧縮着火式内燃機関1の排気系に設けられたNOx触媒の劣化を正確に判定することは困難である。
これに対し、本願の発明者は、上記した第2の要因について鋭意の実験及び検証を行った結果、NOx触媒の劣化が進むほど、言い換えれば、NOx触媒が吸蔵可能なNOx量が少なくなるほど、NOx触媒をすり抜けながらNOxを還元する還元剤の量が増加することを見出した。
図5は、劣化の程度が異なるNOx触媒について下流側空燃比を計測した結果を示す図である。図5中の実線は新品のNOx触媒を示し、一点鎖線は劣化の程度が小さいNOx触媒を示し、点線は劣化の程度が大きいNOx触媒を示している。
図5において下流側空燃比が理論空燃比より低くなっている領域は、還元剤がNOx触媒をすり抜けていると考えられる。その際のすり抜け量は、NOx触媒の劣化の程度が大きくなるほど(NOx吸蔵能力が低下するほど)多くなっている(下流側空燃比が低くなっている)。
図6は、前述した図5の計測結果から求められた還元剤の積算供給量とすり抜け量との関係を示す図である。図6中の実線は新品のNOx触媒を示し、一点鎖線は劣化の程度が小さいNOx触媒を示し、点線は劣化の程度が大きいNOx触媒を示している。
図6中の積算還元剤供給量ΣRは、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒へ供給された還元剤の積算量(リッチスパイク制御実行中にNOx触媒へ供給された還元剤の総量)である。この積算還元剤供給量ΣRは、NOx触媒へ流入する排気量Aexを上流側空燃比A/Fuで除算した値(=Aex/(A/Fu))から前記排気量Aexを理論空燃比A/Fsで除算した値(=Aex/(A/Fs))を減算して得られる値(=Aex/(A/Fu)−Aex/(A/Fs))を積算したものである。
図6中の還元剤すり抜け量△rは、排気量Aexを下流側空燃比A/Fdで除算した値(=Aex/(A/Fd))から排気量Aexを理論空燃比A/Fsで除算した値(=Aex/(A/Fs))を減算して得られる値(=Aex/(A/Fd)−Aex/(A/Fs))である。
尚、NOx触媒へ流入する排気量Aexとしては、エアフローメータ10の出力信号を用いることができる。
図6から明らかなように、還元剤すり抜け量△rは、NOx触媒の劣化の程度が大きくなるほど多くなる傾向を示している。本願発明者は、諸元の異なる種々のNOx触媒について実験及び検証を行った結果、上記した傾向は積算還元剤供給量が所定量近傍(図6の例では、ΣR0近傍)にあるときに顕著となることを見出した。
そこで、本実施例の劣化判定制御では、ECU9は、リッチスパイク制御実行時において積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR0に達した時の還元剤すり抜け量△rを求め、その還元剤すり抜け量△rが新品時の還元剤すり抜け量(以下、正常時還元剤すり抜け量△rsと記す)より多く且つその差が所定量より多ければ、NOx触媒5が劣化していると判定するようにした。
以下、本実施例における劣化判定制御について図7に基づいて具体的に説明する。図7は、劣化判定制御ルーチンを示すフローチャートである。この劣化判定制御ルーチンは、ECU9のROMに予め記憶されているルーチンであり、ECU9が所定時間毎に繰り返し実行するルーチンである。
劣化判定制御ルーチンでは、ECU9は、先ずS101においてリッチスパイク制御実行フラグFrsの値が“1”であるか否かを判別する。リッチスパイク制御実行フラグFrsは、SOx被毒回復制御の実行後に初めてリッチスパイク制御が実行されるときに“1”がセットされ、劣化判定制御が完了した時に“0”がリセットされるフラグである。
前記S101において否定判定された場合は、ECU9は、S111及びS112において積算還元剤供給量ΣR及び還元剤すり抜け量△rを“0”にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
前記S101において肯定判定された場合は、ECU9は、S102へ進む。S102
では、ECU9は、上流側空燃比センサ6の出力信号(上流側空燃比)A/Fuと、下流側空燃比センサ7の出力信号(下流側空燃比)A/Fdを読み込む。
S103では、ECU9は、前記上流側空燃比A/Fuが理論空燃比A/Fsより低いか否かを判別する。このS103は、リッチスパイク制御の実行開始直後のようにNOx触媒5へ流入する排気の空燃比がリッチ空燃比まで低下していないとき(言い換えれば、NOx触媒5へ還元剤が到達していないとき)に、還元剤供給量の積算が行われることを防止するために設けられている。
前記S103において否定判定された場合は、ECU9は、本ルーチンの実行を一旦終了する。前記S103において肯定判定された場合は、ECU9は、S104へ進む。S104では、リッチスパイク制御実行開始時から現時点までの期間にNOx触媒5へ供給された還元剤の総量(積算還元剤供給量)ΣRを演算する。
具体的には、ECU9は、本ルーチンの前回の実行時に求められた積算還元剤供給量ΣRoldを読み出す。ECU9は、NOx触媒5へ流入する排気量Aexを前記S102で読み込まれた上流側空燃比A/Fuで除算(Aex/(A/Fu))するとともに、前記排気量Aexを理論空燃比A/Fsで除算(Aex/(A/Fs))する。ECU9は、前記Aex/(A/Fu)から前記Aex/(A/Fs)を減算して還元剤供給量(=Aex/(A/Fu)−Aex/(A/Fs))を算出する。ECU9は、還元剤供給量(=Aex/(A/Fu)−Aex/(A/Fs))を前記ΣRoldに加算することにより、現時点までの積算還元剤供給量ΣRを算出する。
S105では、ECU9は、前記S104で算出された積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR0に達したか否かを判別する。
前記S105において否定判定された場合は、ECU9は、本ルーチンの実行を一旦終了する。前記S105において肯定判定された場合は、ECU9は、S106へ進む。
S106では、ECU9は、前記S102で読み込まれた下流側空燃比A/Fdに基づいて還元剤すり抜け量△rを演算する。具体的には、ECU9は、前記排気量Aexを下流側空燃比A/Fdで除算(Aex/(A/Fd))するとともに、前記排気量Aexを理論空燃比A/Fsで除算(Aex/(A/Fs))する。ECU9は、前記Aex/(A/Fd)から前記Aex/(A/Fs)を減算することにより、還元剤すり抜け量△r(=Aex/(A/Fd)−Aex/(A/Fs))を算出する。
S107では、ECU9は、前記S106で算出された還元剤すり抜け量△rと正常時還元剤すり抜け量△rsとの差(△r−△rs)が所定量rより大きいか否かを判別する。ここで、正常時還元剤すり抜け量△rsに前記所定量rを加算した値(=△rs+r)は、本発明にかかる上限値に相当する。
前記S107において肯定判定された場合は、ECU9は、NOx触媒5が劣化しているとみなし、S108において触媒劣化フラグFdに“1”をセットする。この触媒劣化フラグFdは、NOx触媒5が劣化していると判定された時に“1”がセットされ、NOx触媒5が劣化していないと判定された時に“0”がリセットされるフラグである。
一方、前記S107において否定判定された場合は、ECU9は、NOx触媒5が劣化していないとみなし、S109において触媒劣化フラグFdに“0”をリセットする。
前記S108又は前記S109を実行し終えたECU9は、S110へ進む。S110
では、ECU9は、リッチスパイク制御実行フラグFrsを“0”にリセットする。
その後、ECU9は、S111及びS112において積算還元剤供給量ΣR及び還元剤すり抜け量△rを“0”にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
このようにECU9が劣化判定制御ルーチンを実行することにより、圧縮着火式内燃機関1の排気系に設けられたNOx触媒5の劣化判定を精度良く行うことが可能となる。すなわち、ストイキ維持時間とNOx吸蔵量との相関が一意に定まらない場合であっても、リッチスパイク制御実行中にNOx触媒5をすり抜ける還元剤の量をパラメータとすることにより、NOx触媒5の劣化を精度良く判定することが可能となる。
次に、本発明の第2の実施例について図8〜図11に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例では、積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR0に達した時の還元剤すり抜け量△rをパラメータとしてNOx触媒5の劣化判定を行う例について述べたが、本実施例では積算還元剤供給量ΣRに対する還元剤すり抜け量△rの変化の軌跡をパラメータとしてNOx触媒5の劣化判定を行う例について述べる。
リッチスパイク制御実行時に燃料添加弁8から排気中へ燃料を添加する場合には、排気中の高分子HCが増加する可能性がある。空燃比センサや酸素センサは高分子HCに反応し難いため、高分子HCが増加した場合には下流側空燃比センサ7が実際の空燃比よりも高い(リーン)空燃比を検出することが予想される。
下流側空燃比センサ7の検出値が実際の空燃比より高くなると、還元剤すり抜け量△rが実際のすり抜け量よりも少なく見積もられる可能性がある。そのような場合には、劣化時の還元剤すり抜け量△rと正常時の還元剤すり抜け量(正常時還元剤すり抜け量)△rsとの差が小さくなってしまう。
そこで、本実施例に係る劣化判定制御では、ECU9は、図8に示すように、リッチスパイク制御実行期間中の積算還元剤供給量ΣRに対する還元剤すり抜け量△rの変化の軌跡(図8中の実線で示す実際の軌跡)を求め、その軌跡が基準となる軌跡(図8中の一点鎖線で示す基準軌跡)を上回っていれば、NOx触媒5が劣化していると判定するようにした。尚、外乱などの影響による誤判定を防止するために、基準軌跡は新品時の軌跡(図8中の点線で示す新品時軌跡)より多少高く設定されている。
前記した実際の軌跡は、前述した第1の実施例における図6の説明で述べた方法と同様の方法により求めることができる。また、実際の軌跡と基準軌跡との具体的な比較方法としては、(1)基準軌跡に対応した還元剤すり抜け量△rの積算値(図8中の斜線部の面積に等しい。以下、この積算値を基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiと称する)と、実際の軌跡に対応した還元剤すり抜け量△rの積算値(以下、積算還元剤すり抜け量Σ△rと記す)とを比較する方法、(2)リッチスパイク制御実行中の所定期間毎(積算還元剤供給量ΣRが一定量増加する度)に基準軌跡の還元剤すり抜け量△rsiと実際の還元剤すり抜け量△rとを比較する方法等を例示することができる。
本実施例では、上記した(1)の方法を例に挙げて説明する。尚、積算還元剤すり抜け量Σ△rは積算還元剤供給量ΣRによって変化するため、基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiも積算還元剤供給量ΣRに応じて変化する可変値とすることが好ましい。そこで、
本実施例では、基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiと積算還元剤供給量ΣRとの関係を予め実験的に求めておき、それらの関係をマップ化しておくようにした。前記したマップは、例えば、積算還元剤供給量ΣRが多くなるほど基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiも多くなるようなマップである。
以下、本実施例における劣化判定制御について図9〜図11に基づいて具体的に説明する。図9は積算還元剤供給量ΣRを演算するルーチンである。このルーチンは、ECU9のROMに予め記憶されているルーチンである。
積算還元剤供給量演算ルーチンでは、ECU9は、S201においてリッチスパイク制御実行フラグFrsの値が“1”であるか否かを判別する。前記S201において否定判定された場合は、ECU9はS209において積算還元剤供給量ΣRを“0”にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
前記S201において肯定判定された場合は、ECU9は、S202へ進み、上流側空燃比センサ6の出力信号(上流側空燃比)A/Fuを読み込む。
S203では、ECU9は、前記S202で読み込まれた上流側空燃比A/Fuが理論空燃比A/Fsより低いか否かを判別する。これは、リッチスパイク制御の実行開始直後のようにNOx触媒5へ流入する排気の空燃比がリッチ空燃比まで低下していない時や、リッチスパイク制御の実行終了後のようにNOx触媒5へ流入する排気の空燃比が理論空燃比A/Fs以上に復帰した時などに、還元剤供給量の積算が行われることを防止するために設けられている。
前記S203において肯定判定された場合は、ECU9は、S204へ進み、積算還元剤供給量ΣRを演算する。この演算方法は、前述した第1の実施例と同様である。
S205では、ECU9は、リッチスパイク制御終了フラグFendの値が“1”であるか否かを判別する。このリッチスパイク制御終了フラグFendは、別途のリッチスパイク制御ルーチンにおいてリッチスパイク制御の実行が終了した時点で“1”がセットされるフラグである。
前記S205において否定判定された場合(リッチスパイク制御の実行が継続されている場合)は、ECU9は、前述したS202以降の処理を再度実行する。
前記S205において肯定判定された場合(リッチスパイク制御の実行が終了している場合)は、ECU9は、S206において上流側空燃比センサ6の出力信号(上流側空燃比)A/Fuを再度読み込み、次いでS207において該上流側空燃比A/Fuが理論空燃比A/Fs以上であるか否かを判別する。
これらS206及びS207の処理は、リッチスパイク制御の実行終了後であっても上流側空燃比A/Fuが直ちにリーンへ復帰しない場合(燃料添加弁8から最後に添加された燃料がNOx触媒5へ到達するまでに時間がかかる場合)を想定した処理である。
前記S207において否定判定された場合は、ECU9は、前述したS204以降の処理を再度実行する。その際、S204では、前記S206で読み込まれた上流側空燃比A/Fuに基づいて積算還元剤供給量ΣRが演算されるものとする。
前記S207において肯定判定された場合は、ECU9は、S208において前記S204で算出された積算還元剤供給量ΣRをRAMの所定領域に記憶させた後、本ルーチン
の実行を終了する。
また、前記S203において否定判定された場合は、ECU9は、S204をスキップしてS205へ進む。ここで、S203において否定判定され且つS205において肯定判定される場合としては、リッチスパイク制御の実行が終了して上流側空燃比A/Fuがリーン空燃比に復帰している場合を例示することができる。S203において否定判定され且つS205において否定判定される場合としては、リッチスパイク制御の実行開始直後において燃料添加弁8から添加された還元剤が上流側空燃比センサ6(NOx触媒5)へ到達していない場合を例示することができる。
このようにしてECU9が積算還元剤供給量演算ルーチンを実行することにより、リッチスパイク制御中にNOx触媒5へ供給された還元剤の総量を演算することが可能となる。
次に、図10は積算還元剤すり抜け量Σ△rを演算するルーチンである。このルーチンは、ECU9のROMに予め記憶されているルーチンである。
積算還元剤すり抜け量演算ルーチンでは、ECU9は、先ずS301において、リッチスパイク制御実行フラグFrsの値が“1”であるか否かを判別する。前記S301において否定判定された場合は、ECU9はS309において積算還元剤すり抜け量Σ△rを“0”にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
前記S301において肯定判定された場合は、ECU9は、S302へ進み、下流側空燃比センサ7の出力信号(下流側空燃比)A/Fdを読み込む。
S303では、ECU9は、前記S302で読み込まれた下流側空燃比A/Fdが理論空燃比A/Fsより低いか否かを判別する。
前記S303において肯定判定された場合は、ECU9は、S304へ進み、リッチスパイク制御実行開始時から現時点までの期間にNOx触媒5をすり抜けた還元剤の総量(積算還元剤すり抜け量)Σ△rを演算する。
具体的には、ECU9は、S304の前回の実行時に求められた積算還元剤すり抜け量Σ△roldを読み出す。ECU9は、NOx触媒5へ流入する排気量Aexを前記S302で読み込まれた下流側空燃比A/Fdで除算(Aex/(A/Fd))するとともに、前記排気量Aexを理論空燃比A/Fsで除算(Aex/(A/Fs))する。ECU9は、前記Aex/(A/Fd)から前記Aex/(A/Fs)を減算して還元剤すり抜け量△r(=Aex/(A/Fd)−Aex/(A/Fs))を算出する。ECU9は、還元剤すり抜け量△r(=Aex/(A/Fd)−Aex/(A/Fs))を前記Σ△roldに加算することにより、現時点までの積算還元剤すり抜け量Σ△rを算出する。
S305では、ECU9は、リッチスパイク制御終了フラグFendの値が“1”であるか否かを判別する。
前記S305において否定判定された場合(リッチスパイク制御の実行が継続されている場合)は、ECU9は、前述したS302以降の処理を再度実行する。
前記S305において肯定判定された場合(リッチスパイク制御の実行が終了している場合)は、ECU9は、S306において下流側空燃比センサ7の出力信号(下流側空燃比)A/Fdを再度読み込み、次いでS307において該下流側空燃比A/Fdが理論空
燃比A/Fs以上であるか否かを判別する。
これらS306及びS307の処理は、リッチスパイク制御の実行終了後であっても下流側空燃比A/Fdが直ちにリーンへ復帰しない場合(燃料添加弁8から最後に添加された燃料がNOx触媒5を通過するまでに時間がかかる場合)を想定した処理である。
前記S307において否定判定された場合は、ECU9は、前述したS304以降の処理を再度実行する。その際、S304では、前記S306で読み込まれた下流側空燃比A/Fdに基づいて積算還元剤すり抜け量Σ△rが演算されるものとする。
前記S307において肯定判定された場合は、ECU9は、S308において前記S304で算出された積算還元剤すり抜け量Σ△rをRAMの所定領域に記憶させた後、本ルーチンの実行を終了する。
また、前記S303において否定判定された場合は、ECU9は、S305へ進む。ここで、S303において否定判定され且つS305において肯定判定される場合としては、リッチスパイク制御の実行が終了して下流側空燃比A/Fdがリーン空燃比に復帰している場合を例示することができる。S303において否定判定され且つS305において否定判定される場合としては、リッチスパイク制御の実行開始直後のように燃料添加弁8から添加された還元剤がNOx触媒5をすり抜けていない場合を例示することができる。
このようにしてECU9が積算還元剤すり抜け量演算ルーチンを実行することにより、リッチスパイク制御中にNOx触媒5をすり抜けた還元剤の総量を演算することが可能となる。
図11は、本実施例における劣化判定制御ルーチンを示すフローチャートである。劣化判定制御ルーチンでは、ECU9は、先ずS401においてRAMの所定領域に記憶されている積算還元剤供給量ΣRと積算還元剤すり抜け量Σ△rを読み出す。
S402では、ECU9は、前記積算還元剤供給量ΣRに対応した基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiを前述したマップから求める。
S403では、ECU9は、前記積算還元剤すり抜け量Σ△rが前記基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiより多いか否かを判別する。前記基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiは、本発明にかかる上限値に相当する。
前記S403において肯定判定された場合は、ECU9は、NOx触媒5が劣化しているとみなし、S404において触媒劣化フラグFdに“1”をセットする。一方、前記S403において否定判定された場合は、ECU9は、NOx触媒5が劣化していないとみなし、S405において触媒劣化フラグFdに“0”をリセットする。
前記S404又は前記S405の処理を実行し終えたECU9は、S406へ進む。S406では、ECU9は、リッチスパイク制御実行フラグFrsを“0”にリセットする。
その後、ECU9は、S407及びS408において、RAMの所定領域に記憶されている積算還元剤供給量ΣR及び積算還元剤すり抜け量Σ△rを“0”にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
上記したような劣化判定制御によれば、前述した第1の実施例と同様の効果を得ること
ができる上、上流側空燃比A/Fuや下流側空燃比A/Fdが外乱等によって一時的に乱れた場合や排気中の高分子HC量が増加した場合であってもNOx触媒5の劣化を精度良く検出することができるという優れた効果を得ることも可能となる。
次に、本発明の第3の実施例について図12〜図13に基づいて説明する。ここでは、前述した第2の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第2の実施例では積算還元剤すり抜け量Σ△rをパラメータとしてNOx触媒5の劣化判定を行う例について述べたが、本実施例では積算還元剤供給量ΣRに対する積算還元剤すり抜け量Σ△rの比率(=Σ△r/ΣR)をパラメータとしてNOx触媒5の劣化判定を行う例について述べる。
図12は、本実施例における劣化判定制御ルーチンを示すフローチャートである。劣化判定制御ルーチンでは、ECU9は、先ずS501においてRAMの所定領域に記憶されている積算還元剤供給量ΣR及び積算還元剤すり抜け量Σ△rを読み出す。積算還元剤供給量ΣR及び積算還元剤すり抜け量Σ△rの求め方は、前述した第2の実施例と同様である。
S502では、ECU9は、前記積算還元剤すり抜け量Σ△rを前記積算還元剤供給量ΣRで除算して還元剤すり抜け率Pth(=Σ△r/ΣR)を演算する。
S503では、ECU9は、前記積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR1より多いか否かを判別する。S503の処理は、積算還元剤供給量ΣRが非常に少ない場合の還元剤すり抜け率Pthに基づいて劣化判定が行われることを防止するために設けられている。これは、図13に示すように、積算還元剤供給量ΣRが少ない時の還元剤すり抜け量△r(図13中の領域Aにおける還元剤すり抜け量△r)は、NOx触媒5が多少劣化していても正常時と殆ど変わらない量を示す可能性があるからである。
前記S503において否定判定された場合は、ECU9は、本ルーチンの実行を終了する。前記S503において肯定判定された場合は、ECU9は、S504へ進み、前記還元剤すり抜け率Pthが基準還元剤すり抜け率Psよりも高いか否かを判別する。前記基準還元剤すり抜け率Psは、前述した第2の実施例で述べた基準積算還元剤すり抜け量Σ△rsiを積算還元剤供給量ΣRで除算した値である。
前記S504において肯定判定された場合は、ECU9は、S505へ進み、触媒劣化フラグFdに“1”をセットする。前記S504において否定判定された場合は、ECU9は、S506へ進み、触媒劣化フラグFdに“0”をリセットする。
前記S505又は前記S506の処理を実行し終えたECU9は、S507〜S509の処理を実行する。S507〜S509の処理は、前述した第2の実施例における劣化判定制御ルーチンのS406〜8の処理と同様であるため、説明を省略する。
以上述べた劣化判定制御によれば、前述した第2の実施例と同様の効果を得ることが可能となる。
次に、本発明の第4の実施例について図14〜図15に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略す
る。
本実施例では、本発明にかかる劣化判定方法をNOx触媒5の上流に副NOx触媒が配置された構成に応用する例について述べる。
図14は、本発明にかかる第4の実施例を適用する内燃機関1の概略構成を示す図である。図14に示すように、NOx触媒5より上流の排気通路3にはNOx触媒11が配置されている。以下では、NOx触媒5を主NOx触媒5と称し、NOx触媒11を副NOx触媒11と称する。
主NOx触媒5は、例えば、パティキュレートフィルタに担持された吸蔵還元型のNOx触媒である。副NOx触媒11は、例えば、三元触媒にNOx吸蔵剤(NOx吸収剤)が担持された触媒である。
尚、上流側空燃比センサ6は主NOx触媒5より上流且つ副NOx触媒11より下流の排気通路3に配置され、下流側空燃比センサ7は主NOx触媒5より下流の排気通路3に配置されるものとする。
このように構成された内燃機関1の排気系において、副NOx触媒11が劣化すると、該副NOx触媒11に吸蔵又は吸収されるべきNOxが主NOx触媒5に吸蔵又は吸収されるようになる。すなわち、副NOx触媒11が劣化した場合に主NOx触媒5に吸蔵されるNOx量は、副NOx触媒11が正常である場合より多くなる。
その結果、図15に示すように、リッチスパイク制御実行時に主NOx触媒5をすり抜ける還元剤量(還元剤すり抜け量)△rは、主NOx触媒5及び副NOx触媒11の双方が正常である場合に比べ、主NOx触媒5が正常且つ副NOx触媒11が劣化している場合の方が少なくなる。この傾向は、積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR2の近傍にあるときに顕著となっている。
従って、ECU9は、リッチスパイク制御実行時において積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR2に達した時の還元剤すり抜け量△rを求め、その還元剤すり抜け量△rが正常時の還元剤すり抜け量に対して所定量以上少なければ、副NOx触媒11が劣化していると判定することができる。
尚、本実施例では、積算還元剤供給量ΣRが所定量ΣR2に達した時の還元剤すり抜け量△rをパラメータとして副NOx触媒11の劣化判定を行う例について述べたが、前述した第2の実施例で述べたような積算還元剤供給量ΣRに対する還元剤すり抜け量△rの変化の軌跡をパラメータとして副NOx触媒11の劣化判定を行ってもよく、或いは前述した第3の実施例で述べたような積算還元剤供給量ΣRと積算還元剤すり抜け量Σ△rとの比率をパラメータとして副NOx触媒11の劣化判定を行ってもよい。
例えば、積算還元剤供給量ΣRに対する還元剤すり抜け量△rの変化の軌跡をパラメータとする場合には、還元剤すり抜け量△rの軌跡が正常時の軌跡より低く設定された基準軌跡(下限値)を下回ったことを条件に副NOx触媒11が劣化していると判定するようにしてもよい。
また、積算還元剤供給量ΣRに対する積算還元剤すり抜け量Σ△rの比率Pth(=Σ△r/ΣR)をパラメータとする場合には、上記の比率が正常時の軌跡より低く設定された基準軌跡に基づく比率(下限値)を下回ったことを条件に副NOx触媒11が劣化していると判定するようにしてもよい。
第1の実施例における内燃機関の概略構成を示す図
リッチスパイク制御実行時の上流側空燃比及び下流側空燃比を示す図
ストイキ維持時間内にNOx触媒へ供給された還元剤量を計測した結果を示す図
NOx吸蔵量が異なるNOx触媒に対してリッチスパイク制御が行われた時の上流側空燃比及び下流側空燃比を計測した結果を示す図
劣化の程度が異なるNOx触媒に対してリッチスパイク制御が行われた時の下流側空燃比を計測した結果を示す図
図5の計測結果から求められた還元剤の積算供給量とすり抜け量との関係を示す図
第1の実施例における劣化判定制御ルーチンを示すフローチャート
積算還元剤供給量に対する還元剤すり抜け量の変化の軌跡を示す図
第2の実施例における積算還元剤供給量演算ルーチンを示すフローチャート
第2の実施例における積算還元剤すり抜け量演算ルーチンを示すフローチャート
第2の実施例における劣化判定制御ルーチンを示すフローチャート
第3の実施例における劣化判定制御ルーチンを示すフローチャート
積算還元剤供給量と還元剤すり抜け量との関係を示す図
第4の実施例における内燃機関の概略構成を示す図
主NOx触媒が正常且つ副NOx触媒が劣化している場合の積算還元剤供給量と還元剤すり抜け量との関係を示す図
符号の説明
1・・・・・内燃機関
5・・・・・NOx触媒(吸蔵還元型NOx触媒)
6・・・・・上流側空燃比センサ
7・・・・・下流側空燃比センサ
8・・・・・燃料添加弁
9・・・・・ECU
11・・・・副NOx触媒(副吸蔵還元型NOx触媒)