JP4191529B2 - コンクリート構造物のひび割れ幅検出方法およびひび割れモニタリング方法 - Google Patents

コンクリート構造物のひび割れ幅検出方法およびひび割れモニタリング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物のひび割れ幅の状況を検出し、コンクリート構造物の管理者へその状況に応じた適確な対応情報を提供するコンクリート構造物のひび割れ検出方法およびひび割れモニタリング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トンネルや高架橋等のコンクリートは、劣化によりコンクリートにひび割れが発生し、大きな事故をまねく恐れがあるので、コンクリートのひび割れを監視するモニタリングが行なわれている。そこでコンクリートのひび割れのモニタリング装置としては、従来光ファイバーをコンクリートの表面内部に埋め込んで、ひび割れをモニタリングすることが行なわれている。 光ファイバーを使用する例としては、光ファイバーの中を通る光は経路に曲がりがあると、その場所で光が外部に漏れ、ファイバー内部を通過する光の強度が減少するマイクロベンディングの原理を利用したもの等が知られている。しかしながら、光ファイバーが切断されることによってひび割れの位置をモニターする方法では、ファイバーが切断されるとそれ以降のモニタリングができないという問題があり、しかも光ファイバーはそのコストが高いという問題もある。
【0003】
また、コンクリートのひび割れをコンクリート内部に埋め込んだひずみゲージによりモニタリングするこころみも行なわれているが、このひずみを測定する方法では、測定位置が限定されることや測定精度が高過ぎて、維持管理のための判断基準となりづらいという欠点がある。
【0004】
そこで、従来のコンクリートのひび割れ監視方法は、コンクリートの表面または内部に、1種類あるいは伸び性能の異なる2種類以上の電気導電性を有する材料を絶縁材を介して設置し、その材料の電気導電性を測定し、導電性がなくなったことでひび割れの発生とそのひび割れの幅の概要を検知したり、コンクリートの表面または内部に、すでに発生しているひび割れ個所を横断して1種類あるいは伸び性能の異なる2種類以上の電気導電性を有する材料を絶縁材を介して設置し、その材料の電気導電性を測定し、導電性がなくなったことで、その後のひび割れの変化をモニターしているものがある(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開2002−257769号公報
【0006】
しかしながら、上記の公知の発明ではひび割れが増加しているかどうかの傾向は判るが、ひび割れ幅の値そのものは判らなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、コンクリート構造物のひび割れ幅の増加量をリアルタイムで検出できるコンクリート構造物のひび割れ幅検出方法と、そのコンクリート構造物の状況に応じて、例えば、ひび割れ発生によりコンクリートが落下する可能性があるとき、トンネルや市街地の高架橋では人身事故に繋がる可能性があるが、海上の桟橋では人身事故になる可能性は低い等という状況に応じて、それぞれ注意や危険等の情報をコンクリート構造物の管理者に適確に伝達できるコンクリート構造物のひび割れモニタリング方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コンクリート構造物の表面または内部に取り付けた線状または棒状の導電性材料の抵抗変化率と、ひび割れ幅の増加量との関係を把握し、導電性材料の電圧と電流を測定することにより抵抗値を算定し、抵抗値と導電性材料の初期抵抗値から抵抗変化率を算定し、増加したひび割れ幅を検出するコンクリート構造物のひび割れ幅検出方法からなり、またさらにコンクリート構造物の表面または内部に取り付けた線状または棒状の導電性材料の抵抗変化率と、ひび割れ幅の増加量との相互関係から、そのコンクリート構造物がおかれる種々の状況に応じて、注意や危険と判断するひび割れ増加幅を決定し、これに対応する抵抗変化率を基準値とし、さらに抵抗変化率の増加割合の基準値も決定しておき、計測により得られた導電性材料の抵抗値から抵抗変化率または抵抗値と抵抗変化率の増加割合とを基準値と比較して、注意や危険等の情報をインターネット経由または携帯電話によるパケット通信等でそのコンクリート構造物の管理者に提供するコンクリート構造物のひび割れモニタリング方法からなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態につき説明するが、まず本発明のひび割れ幅検出方法では、例えば曲げ試験によりひび割れが発生したコンクリート供試体の表面または内部に張り付けまたは埋込みにより、線状または棒状の導電性材料を取り付け、導電性材料の両端を電気抵抗計測器に接続して、電位と電流を測定して、初期抵抗値を算出する。続いて供試体に荷重を掛け、電気抵抗計測器により抵抗値を算出し、そのときのひび割れ幅の増加量を測定し、材料の初期抵抗から抵抗変化率を算定する。
【0010】
図1に抵抗変化率とひび割れ幅増加量wの関係を示しており、この図には付着固定(導電性材料とコンクリートとの付着を十分とったもの)ΔR/Ro =0.348w、処理なし(付着向上のための処理をしなかったもの)ΔR/Ro =0.236w、付着なし(付着を低下させたもの)ΔR/Ro =0.047wとあるように、抵抗変化率ΔR/Ro とひび割れ幅増加量w(mm)とはほぼ直線的な相互関係があることが判った。
【0011】
【数1】
Figure 0004191529
ここに、ΔR/R0 :抵抗変化率,R0 :モニタリング材料の初期抵抗値(Ω),R(w):モニタリング材料がw(mm)伸びたときの抵抗値(Ω)
【0012】
すなわち、コンクリート構造物のひび割れ幅は、使用する導電性材料の抵抗変化率とひび割れ幅の増加量との相関関係を事前に把握して、計測により得られた導電性材料の抵抗値からひび割れ幅の増加量を算出することによって求めることができる。
【0013】
コンクリート構造物が設置されている現場環境によって、コンクリート自体の温度変化が小さい場合と、そうでない場合とがあるが、コンクリート自体の温度変化が小さい場合は、導電性材料の抵抗のみを計測し、コンクリート自体の温度変化が小さくない場合は、湿度変化によりコンクリート自体が膨張および収縮するので、これに応じて導電性材料の抵抗値は変化する。したがって、温度変化の影響を考慮した導電性材料の抵抗値を算出する必要がある。
【0014】
すなわち、コンクリート構造物の温度変化による膨張、収縮の状況を把握する必要がある場合には、下記の3つの方法がある。
(1)現場の気温を測定するための温度センサーを配置し、現場の気温を測定する。
(2)コンクリート構造物自体の温度を測定するための温度センサーをコンクリート構造物に配置する。
(3)モニタリングするコンクリート構造物が置かれている自然環境とほぼ同一条件になる場所に供試体を設置し、これに同一の導電性材料を取付けて、供試体の温度を測定する温度センサーと導電性材料の電気抵抗器を設置して、電位と電流を測定し、抵抗値を算出するが、この(3)の例を図2における抵抗値と時間との関係線図に示している。
【0015】
次に、所定の間隔(任意の間隔に設定可能)ごとに、コンクリート構造物に設置した導電性材料の電気抵抗値(電圧と電流から算出)を計測し、そのときの時刻を一つのグループとするか、またはそのときの時刻と上記(1)から(3)のいずれかの手段により計測される値を一つのグループとしてコンピュータに記憶する。
【0016】
さらに、所定間隔ごとに、コンピュータに記憶されたグループのデータを携帯電話によるパケット通信またはインターネットによりひび割れ状況を判断するコンピュータに送られる。なお、これらのコンクリート構造物がある場所に必要な電源は、電力会社からの電源がない場合は、ソーラパネルを設置してもよい。
【0017】
ひび割れの状況を判断するコンピュータでは、蓄積されているデータの時刻による変化からコンクリート構造物がどのような状態なのかを判断し、コンクリート構造物の管理者が保有するコンピュータへインターネットでその状態を送る。また、その状態をコンクリート構造物の管理者の携帯電話へパケット通信で送ることも可能である。
【0018】
次に、本発明のひび割れモニタリング方法は、コンクリート構造物に取り付けた導電性材料の抵抗変化率とひび割れ幅の増加量との相関関係から、構造物の状況に応じて、注意または危険と判断するひび割れ増加幅を決定し、これに対応する抵抗変化率を基準値とする。この際、基準値は構造物の状況に応じて設定する。例えばひび割れが発生し、コンクリートが落下する可能性がある場合でも、トンネルや市街地の高架橋では人身事故に繋がる可能性があるので危険となるが、海上の桟橋では人身事故になる可能性は低いので、注意となることがある。
【0019】
また、ひび割れが急速に進む場合には、抵抗変化率の増加割合が大きくなるので、抵抗変化率の増加割合の基準値も決定しておく。
【0020】
そして、計測により得られた導電性材料の抵抗値から抵抗変化率または抵抗値と抵抗変化率の増加割合とを基準値と比較して、注意、危険等の情報をインターネット経由や携帯電話によるパケット通信等でコンクリート構造物の管理者に提供するものである。
【0021】
この抵抗変化率または抵抗値と抵抗変化率の増加割合による判断基準の例としては、下記a)、b)またはc)のようなものがある。
a) 抵抗変化率または抵抗値が判断基準値より大、かつ抵抗変化率の増加割合が判断基準値より大は、危険
b) 抵抗変化率または抵抗値が判断基準値より小、かつ抵抗変化率の増加割合が判断基準値より大は、注意
c) 抵抗変化率または抵抗値が判断基準値より小、かつ抵抗変化率割合が判断基準値より小は、注意
【0022】
【発明の効果】
本発明のコンクリート構造物のひび割れ幅検出方法およびひび割れモニタリング方法によれば、コンクリート構造物のひび割れ幅の増加量をリアルタイムで検出するとともに、その構造物の状況に応じて、それぞれ注意や危険等の情報をコンクリート構造物の管理者に適確に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のひび割れ幅検出方法における抵抗変化率とひび割れ幅との関係を示す曲げ試験結果における図である。
【図2】図1の方法における抵抗値と時間との線図である。

Claims (2)

  1. コンクリート構造物の表面または内部に取り付けた線状または棒状の導電性材料の抵抗変化率と、ひび割れ幅の増加量との関係を把握し、導電性材料の電圧と電流を測定することにより抵抗値を算定し、抵抗値と導電性材料の初期抵抗値から抵抗変化率を算定し、増加したひび割れ幅を検出するコンクリート構造物のひび割れ幅検出方法。
  2. コンクリート構造物の表面または内部に取り付けた線状または棒状の導電性材料の抵抗変化率と、ひび割れ幅の増加量との相互関係から、そのコンクリート構造物がおかれる種々の状況に応じて、注意や危険と判断するひび割れ増加幅を決定し、これに対応する抵抗変化率を基準値とし、さらに抵抗変化率の増加割合の基準値も決定しておき、計測により得られた導電性材料の抵抗値から抵抗変化率または抵抗値と抵抗変化率の増加割合とを基準値と比較して、注意や危険等の情報をインターネット経由または携帯電話によるパケット通信等でそのコンクリート構造物の管理者に提供するコンクリート構造物のひび割れモニタリング方法。
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