JP4190313B2 - 熱可塑性樹脂成形品の製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂シートを賦形すると共に、その表面と裏面の両方又はそのいずれか一方に部分的に熱可塑性樹脂からなる部材を一体化した熱可塑性樹脂成形品を製造する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱可塑性樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」ともいう)を賦形し、その表面と裏面の両方又はそのいずれか一方に部分的に補強用のリブや他部品への取付具であるボス、クリップ等の熱可塑性樹脂製機能性部材を一体化して構成された熱可塑性樹脂成形品は、軽量であり、且つまた、強度的にも優れている等の理由から、自動車内装部品を中心に使用されている。このような熱可塑性樹脂成形品の製造装置としては、下記の特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【0003】
図4に示すように、特許文献1に記載された製造装置100は、樹脂シート102を賦形するための装置としてプレス式の成形装置104を備えている。この成形装置104は、固定の金型支持盤106と、固定金型支持盤106の上面に取り付けられた金型(雄型)108と、固定金型支持盤106の上方に配置され上下方向に可動の金型支持盤110と、可動金型支持盤110の下面に取り付けられた金型(雌型)112とから構成されている。金型108の上面には、機能性部材を作るための凹部114が形成されている。また、金型108には、凹部114内と連通する溶融樹脂通路116が形成されており、その一端は金型108の側面にて開口している。
【0004】
また、特許文献1に記載の製造装置100は、プレス式の成形装置104に隣接して横向きに配置された射出装置118を備えている。この射出装置118の射出ノズル120は、成形装置104における金型108に形成された溶融樹脂通路116に接続されている。
【0005】
更に、製造装置100は、樹脂シート102を加熱、軟化させるためのオーブン式のシート加熱装置122を備えており、このシート加熱装置122は適当なシート移送装置124を介して成形装置104の近傍に配置されている。
【0006】
このような従来の製造装置100を用いて熱可塑性樹脂成形品を製造する場合、まず、シート加熱装置122において樹脂シート102を加熱する。次いで、この加熱され軟化された樹脂シート102をシート移送装置124により移送して成形装置104の金型108,112間に配置し、プレス成形を行う。樹脂シート102の賦形が完了した後、或いは、賦形中、射出装置118から溶融熱可塑性樹脂を射出すると、溶融樹脂は金型108の溶融樹脂通路116を通って凹部114に供給されるが、凹部114は樹脂シート102により閉じられ成形キャビティが形成されているので、そこで溶融樹脂は所望の機能性部材に成形されると共に、樹脂シート102と融着して一体化される。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−121561号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の熱可塑性樹脂成形品の製造装置100は、成形装置104、射出装置118、シート加熱装置122及びシート移送装置124がそれぞれ独立して工場床面に設置されるため、広大な設置スペースが必要になるという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決すべく省スペース型の熱可塑性樹脂成形品の製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、熱可塑性樹脂シートを賦形すると共に、賦形した該熱可塑性樹脂シートの表面と裏面の両方又はそのいずれか一方に部分的に熱可塑性樹脂製の部材を一体化してなる熱可塑性樹脂成形品を製造する製造装置において、架台と、架台に設けられ、熱可塑性樹脂シートを加熱軟化させるためのシート加熱装置と、架台に設けられ、少なくとも一方が他方に対して接近・退避できるよう可動となっている1対の金型支持盤と、可動の金型支持盤を駆動するための駆動装置と、それぞれが対応の金型支持盤により支持される、加熱軟化された熱可塑性樹脂シートを賦形するための1対の金型であって、少なくとも一方が熱可塑性樹脂製の部材を成形するための凹部及び該凹部に通じる溶融樹脂通路を有している前記1対の金型と、凹部及び溶融樹脂通路を有する金型に溶融樹脂を射出するための射出装置と、を備え、可動の金型支持盤が、凹部及び溶融樹脂通路を有する金型を支持しており、且つ、射出装置が、可動の金型支持盤に該金型支持盤の可動方向に延びるよう取り付けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成において、成形装置が例えば、上下1対の金型支持盤のうち少なくとも一方が上下に開閉する縦型のプレス成形装置及び/又は真空成形装置である場合、射出装置が可動の金型支持盤に上下方向に延びるよう取り付けられることから、射出装置は、上方から垂直下方に見た状態では、成形装置の占めるスペースにその大部分が含まれ、或いは全体が当該スペース内に含まれるため、本発明の製造装置は、従来の構成に比して、大幅に設置スペースが削減される。
【0012】
また、成形装置が、左右1対の金型支持盤のうち少なくとも一方が左右に開閉する横型のプレス成形装置及び/又は真空成形装置である場合においても、シート加熱装置を前記プレス成形装置及び/又は真空成形装置の上方に設けることにより、従来の成形装置に対する設置スペース削減効果が得られる。
【0013】
また、本発明による製造装置は、1対の金型支持盤の位置を検知する位置センサと、位置センサにより検知された位置情報に基づいて射出装置からの溶融樹脂の射出を開始するよう射出装置を制御する制御装置とを更に備えることが有効である。従来にあっては、金型の型締め圧力が所定値に達した際に射出を開始していたが、その方法では部材成形用の凹部の周辺に溶融樹脂が漏出してバリが形成されたり、型締め圧力により熱可塑性樹脂シートが傷付いたりする。これに対して、金型支持盤の位置、すなわち金型間の間隔(潰し代)に基づいて溶融樹脂の射出の開始を定めた場合には、従来おける前記弊害は生じない。
【0014】
また、熱可塑性樹脂シートが発泡層を有する熱可塑性樹脂発泡シートである場合において、制御装置は、位置センサからの位置情報に基づいて、金型間が所定の潰し代となる位置にて可動の金型支持盤を停止するよう駆動装置を制御するようになっていることを特徴としている。発泡シートが過度に潰れて、その外観や機能を損なうことを防止するためである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明による一実施形態に係る熱可塑性樹脂成形品の製造装置の概略図である。図示実施形態に係る製造装置10は、熱可塑性樹脂シート12を賦形ないしは成形すると共に、クリップやリブ、ボスのような熱可塑性樹脂製の機能性部材を裏面に融着してなる熱可塑性樹脂成形品を製造するためのものであり、樹脂シート12を賦形するための成形装置として、真空成形装置14を基本的に備えている。
【0017】
真空成形装置は1対の金型16,18を有しており、金型16,18は、工場等の床面に設置される架台20に上下動可能に取り付けられている。
【0018】
より詳細に述べるならば、架台20は、下部部分20aと、下部部分20aから上方に延びる互いに一定の間隔をおいた1対の側壁部分20b,20cと、側壁部分20b,20cの上端間で水平に横架された上部部分20dとを有している。
【0019】
架台20の下部部分20aと上部部分20dとの間には、上下1対の可動の金型支持盤(以下「可動盤」という)22,24が配置されている。可動盤22,24は駆動装置としての油圧シリンダ26,28により支持され且つ上下動されるようになっている。図示実施形態では、上側の可動盤22及び下側の可動盤24は共に、架台20の上部部分20dに固定された油圧シリンダ26,28から下方に延びるピストンロッド30,32の下端に固定されている。また、下側の可動盤24を支持するピストンロッド32は、上側の可動盤22を貫通して延びている。
【0020】
金型16,18は、このような可動盤22,24の対向面にそれぞれ支持されている。図示実施形態では、下側の可動盤24の上面に固定された金型18はいわゆる雌型であり、上側の可動盤22の下面に固定された金型16がいわゆる雄型となっている。下側の金型18には、当該金型18の表面、特に凹部34底面に通ずる空気流路36が形成されており、この空気流路36は、下側の可動盤24に形成された真空吸引口38を介して適当な真空ポンプ(図示しない)に接続されている。図1には、空気流路36は2本のみ示されているが、その数や位置は任意であり、また径も適宜選択できるものである。
【0021】
上側の可動盤22を上下動させる油圧シリンダ26と、下側の可動盤24を上下動させる油圧シリンダ28とには油圧回路が接続されている。油圧回路における制御弁40,42を適宜制御することにより、油圧ポンプ44から圧送されてくる作動油の油圧シリンダ26,28に対する流れ方向及び流量を調節することができ、これにより金型16,18の上下動を制御することができるようになっている。制御弁40,42は電磁式であり、製造装置10全体を制御するための制御装置46により制御される。
【0022】
真空成形装置14における上側の金型16の下面には、クリップ等の機能性部材を形成するための凹部48が形成されている。図示実施形態では、凹部48は1つのみであるが、複数であってもよく、その形状も1種類に限られない。凹部48には、金型16に形成された溶融樹脂通路50が通じている。また、溶融樹脂通路50は、上側の可動盤22の中央部に形成された溶融樹脂供給口52に連通している。図示しないが、溶融樹脂通路50には、溶融した熱可塑性樹脂が垂れるのを防止するため、若しくは、複数の機能性部材を設けるために複数の溶融樹脂通路50を形成した場合に各通路50を開閉して溶融樹脂供給量を制御するために、エアや油圧等で作動するシャットオフバルブが設けられることが好ましい。
【0023】
上側の可動盤22上には、溶融された熱可塑性樹脂を溶融樹脂供給口52に供給するための射出装置54が固定されている。射出装置54は、スクリュ56が内部に配置されたシリンダ58を備えた一般的に知られたものである。シリンダ58は、架台20の上部部分20dの開口60を貫通し、射出ノズル62を溶融樹脂供給口52に接続し垂直に立てた状態で上側可動盤22に固定されている。シリンダ58の上端部には、熱可塑性樹脂をシリンダ58内に供給するホッパ64が設けられている。スクリュ56は駆動装置66により回転駆動されると共に、軸線方向(上下方向)に往復動可能となっており、これにより所望量の溶融樹脂を射出することができる。駆動装置66は前記の制御装置46により制御される。なお、図示しないが、シリンダ58は、内部の熱可塑性樹脂を溶融するためのヒータを内蔵、或いは、外側に有している。
【0024】
この射出装置54は、その軸線が可動盤22の可動方向、すなわち上下方向となるように設置されているため、上方から垂直下方に見た状態では、射出装置54全体が架台20の設置スペースの内側に位置し、省スペース化が達成されている。また、射出装置54は、可動盤22と共に上下動されることを考慮し、その軸線を可動盤22の重心位置に一致させることが偏荷重が防止されて好ましく、更に比較的軽量、具体的には理論射出容量が500cc以下であることが有効である。
【0025】
更に、本実施形態に係る製造装置10は、熱可塑性樹脂シート12を上下の金型16,18間の所定位置にて水平に保持するためのシートクランプ68を備えている。シートクランプ68は、金型16,18を閉じた際に、金型16,18や油圧シリンダ26,28のピストンロッド30,32、可動盤22,24と干渉しない位置に設けられる。図示しないが、シートクランプ68に対してはシート搬送装置により樹脂シートを搬入・搬出することが可能であり、シートクランプ68によるクランプ・クランプ解除、及び、シート搬送装置の制御は制御装置46により行われる。
【0026】
熱可塑性樹脂成形品の製造時、熱可塑性樹脂シート12は、シートクランプ68によりクランプされた状態で、シート加熱装置70によって加熱され軟化されるようになっている。シート加熱装置70は、上下1対のヒータプレート72,74を有している。各ヒータプレート72,74は、架台20に設けられた対応の駆動装置76,78により水平移動可能に支持されている。駆動装置76,78を制御装置46により制御して作動させると、ヒータプレート72,74は、図1の実線で示す退避位置と、二点鎖線で示す加熱位置との間で往復動することが可能となっている。ヒータプレート72,74が加熱位置にあるとき、シートクランプ68により保持された熱可塑性樹脂シート12はヒータプレート72,74間に配置された状態となる。ヒータプレート72,74としては、遠赤外線式のものや近赤外線式等の樹脂シート加熱用の一般的なものを使用することができる。シート加熱装置70におけるヒータプレート72,74の温度制御も制御装置46により行われる。
【0027】
このようにシート加熱装置70が架台20に設けられており、ヒータプレート72,74自体が可動であるので、樹脂シート12の移送装置が不要となっていることから、これも製造装置10の省スペース化に貢献している。
【0028】
なお、制御装置46には、可動盤22,24の位置、ひいては金型16,18の位置を検出する位置センサ80,82、ヒータプレート72,74の位置を検出する位置センサ84,86、ヒータプレート72,74の温度を検出する温度センサ88,90からの情報信号が入力されるようになっている。
【0029】
次に、上記構成の製造装置10を用いて熱可塑性樹脂成形品を製造する手順について説明する。以下の説明では、熱可塑性樹脂シート12としてポリオレフィン系の熱可塑性樹脂発泡シートを用い、機能性部材には、ポリオレフィン系発泡シートに融着可能なポリオレフィン系樹脂を用いることとする。
【0030】
まず、初期状態においては、金型16,18は図1の如く開いており、シート加熱装置70のヒータプレート72,74は退避位置にある。制御装置46は、その状態を位置センサ80,82,84,86からの信号で確認したならば、シート搬送装置(図示しない)及びシートクランプ68を制御して、熱可塑性樹脂発泡シート12を製造装置10内に搬入し、シートクランプ68によりクランプする。また、制御装置46は、温度センサ88.90からの情報に基づいてヒータプレート72,74を所定の温度とすると共に、シートクランプ68で発泡シート12がクランプされたならば、シート加熱装置70の駆動装置76,78を駆動してヒータプレート72,74を加熱位置(図1の二点鎖線の位置)に移動させる。そして、発泡シート12を設定時間の間加熱する。制御装置46は内蔵タイマにより経過時間を計測し、設定時間の加熱が終了した後、再びシート加熱装置70の駆動装置76,78を駆動して、ヒータプレート72,74を退避位置に退避させる。これにより、発泡シート12は所望の程度に軟化される。
【0031】
なお、このシート加熱軟化工程において、上下のヒータプレート72,74を同時に移動させる必要はなく、それぞれを単独で移動させ、熱可塑性樹脂発泡シート12の上面と下面とで加熱時間を任意に変更することとしてもよい。
【0032】
制御装置46は、位置センサ84,86からの信号によりヒータプレート72,74が退避位置に戻ったことを検知したならば、続いて熱可塑性樹脂発泡シート12の賦形工程を行うべく、油圧回路における制御弁40,42と真空ポンプ(図示しない)の制御を行う。すなわち、まず、油圧回路の制御弁42のポジションを切り換えて作動油を油圧シリンダ28の下側ポートに供給し、ピストンロッド32を引き上げて下側の可動盤24及び金型(雌型)18を上昇させる。そして、金型18の上面が、軟化した発泡シート12の下面に接したならば、真空ポンプを駆動して発泡シート12と金型18との間の空間を空気流路36及び真空吸引口38を通して減圧する。これにより、発泡シート12は凹部34の内面に吸引され、所定の形状に賦形される。
【0033】
下側の金型18の表面には、真空成形と同時に熱可塑性樹脂発泡シート12に模様を転写するための皮しぼ状の凹凸模様が付与されてよい。この凹凸模様は、皮しぼ模様、各種幾何学模様並びに各種文字等、任意の模様を用いることができ、その凹凸模様を付与する範囲、模様の大きさ、凹凸深さ等も任意に選定できる。
【0034】
この真空成形の際、油圧回路の制御弁40を制御して油圧シリンダ26の上側のポートに作動油を供給し、ピストンロッド30を延ばして上側の可動盤22及び金型(雄型)16を下降させ、上昇させた金型(雌型)18とはめ合わせてから真空成形を行うこともできる。これにより、真空成形だけでなくプレス成形をも行うことができ、より高い精度で賦形が可能となる。特に、熱可塑性樹脂発泡シート12に対してプレス成形を行う場合、金型16,18間の間隔を過度に狭めた場合、発泡シート12が薄くなる弊害が生じるため、金型16,18間の間隔、いわゆる潰し代(図2参照)を位置センサ80,82からの信号に基づいて正確に設定することが好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂発泡シート12の賦形が完了したならば、次に機能性部材の成形を行う。機能性部材の成形は、図2に示すように金型16,18が閉じられた状態で行われ、制御装置46は位置センサ80,82からの信号により所定の潰し代の状態にあることを確認した後、溶融した熱可塑性樹脂を必要量、射出装置54から射出し、上側の金型16内の溶融樹脂通路50を通じて、凹部48と発泡シート12との間に形成された空間に充填する。この充填中、溶融樹脂の固化が始まらないよう、金型16はホットランナ金型を用いることが好ましい。溶融樹脂の充填後、型締め状態のまま必要時間、冷却することで、凹部48内の樹脂は固化し所望の形状に賦形され、また、発泡シート12に融着され一体化される。
【0036】
この機能性部材の成形工程において、金型16の凹部48の周辺に溶融熱可塑性樹脂のバリを生じさせず、且つ、下側の金型18を締め合わせる際に賦形された熱可塑性樹脂発泡シート12を傷つけないことが重要である。このため、溶融熱可塑性樹脂の射出開始は両金型16,18が所定の型締め圧力に達したことを確認した後に開始するのではなく、上下の金型16,18の位置(上下可動盤22,24の位置)が所定の位置に達したことを確認した後に、制御装置46が射出開始信号を射出装置54に発信するように構成することが好ましい。
【0037】
所定の冷却時間が経過したならば、制御装置46は、油圧回路の制御弁42,40を制御して油圧シリンダ26,28を動作させ、金型16,18を開き、その後、シートクランプ68による保持状態を解除しシート搬送装置により熱可塑性樹脂発泡シート12を取り出すことで、機能性部材が一体化され所望の形状に賦形された熱可塑性樹脂成形品が完成する。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、下側の可動盤にのみ真空吸引口が形成され、下側の金型に熱可塑性樹脂シートを吸着する構成を採っているが、上側の可動盤に真空吸引口を設けて上側の金型にて樹脂シートを真空成形してもよく、或いは、両可動盤に真空吸引口を設けてもよい。
【0040】
また、真空吸引口は、真空・圧空切換えバルブにより圧縮空気を噴出する噴出口としても使用し、いわゆる圧空成形を行うことが可能である。
【0041】
更に、機能性部材を形成する金型は、上側に限られず、下側の金型に機能性部材用の凹部を形成してもよく、両金型に形成してもよい。かかる場合、下側の可動盤にも射出装置が配置されることとなる。
【0042】
また、成形装置は、真空成形装置に限られず、プレス成形装置であってもよい。その場合、空気通路、真空吸引口、真空ポンプは不要となることは勿論である。更に、成形装置は、図3に示すように横型のもの(図3に示す成形装置14はプレス成形装置であり、左側の金型支持盤24は固定されている)であってもよい。この場合、左右に開閉する右側の可動盤22に射出装置54が横向きに取り付けられることとなり、設置スペース削減効果は図1に示す構成に比して少ないものの、成形装置14の上方にシート加熱装置70を配置することで、図4に示す従来構成に比して設置スペースはやはり大幅に削減されている。なお、図3において、図1の構成と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
更にまた、上記実施形態では、シート加熱装置のヒータプレートが可動となっているが、ヒータプレートを固定し、ヒータプレートに対して熱可塑性樹脂シートを水平移動させる構成を採ることもできる。シート加熱装置に関しては、更に、製造すべき熱可塑性樹脂成型品によっては、樹脂シートの片面側のみを加熱する型式のものも考えられる。
【0044】
熱可塑性樹脂シートについては、シート状に成形できる熱可塑性樹脂であればよく、上述のポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン)に限られない。例えば、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン等)、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル等)、ポリカーボネート系樹脂、アクリル酸エステルの単独又は共重合体(アクリル樹脂)、各種熱可塑性エラストマー等から作られたシートを使用することができ、これらシートの積層シートも使用することができる。
【0045】
また、樹脂成型品の軽量化の面からは、発泡樹脂シートが好ましいが、これに限られない。発泡樹脂シートの場合には、更に、その表面に表皮材を備えていてもよい。かかる表皮材は、前記発泡樹脂シートに積層されて、装飾、補強、保護等の作用をするものであり、表皮材としては、織布、不職布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物等が挙げられる。これら表皮材を構成する材料は特に限定されるのではないが、例としてはポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂、或いはシス−1,4−ポリブタジエン、エチレン/プロピレン共重合体等のゴムや熱可塑性エラストマー、麻、綿、竹等のセルロース系繊維等の天然繊維等が挙げられる。表皮材は、単層構成であっても、二層以上の層からなる多層構成であってもよい。
【0046】
一方、機能性部材を構成する熱可塑性樹脂は、広範な熱可塑性樹脂の中から、当該機能性部材を融着させる熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの変性物、二以上の樹脂からなるポリマーアロイ等を挙げることができる。更に、機能性部材は、一種類の熱可塑性樹脂で構成されてもよく、また、二種類以上の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。機能性部材を構成する熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂シートとの融着の面から、該熱可塑性樹脂シートと相溶性のある熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0047】
機能性部材を構成する熱可塑性樹脂は各種の充填材(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等)が配合されていてもよい。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮材等の各種の添加剤が適宜配合されていてもよく、発泡剤等が配合されていてもよい。
【0048】
なお、クリップやリブ、ボスのような機能性を有する部材のみならず、例えば熱可塑性樹脂製品の部材を装飾的に熱可塑性樹脂シートに融着する場合にも本発明による製造装置を用いることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、熱可塑性樹脂シートを賦形ないしは成形するための成形装置における金型が取り付けられる可動盤に、熱可塑性樹脂製の部材を成形するための射出装置を組み込んだことにより、製造装置の設置スペースを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱可塑性樹脂成形品の製造装置を概略的に示す説明図である。
【図2】図1における熱可塑性樹脂シートの賦形中の金型の状態を示す拡大図である。
【図3】本発明による製造装置の他の実施形態を概略的に示す説明図である。
【図4】従来の熱可塑性樹脂成形品の製造装置を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
10…製造装置、12…熱可塑性樹脂シート、16,18…金型、20…架台、22,24…可動盤(金型支持盤)、26,28…油圧シリンダ(駆動装置)、36…空気流路、38…真空吸引口、40,42…制御弁、46…制御装置、48…機能性部材形成用の凹部、50…溶融樹脂通路、54…射出装置、68…シートクランプ、70…シート加熱装置、72,74…ヒータプレート、76,78…駆動装置、80,82,84,86…位置センサ、88,90…温度センサ。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂シートを賦形すると共に、賦形した該熱可塑性樹脂シートの表面と裏面の両方又はそのいずれか一方に部分的に熱可塑性樹脂製の部材を一体化してなる熱可塑性樹脂成形品を製造する製造装置において、
架台と、
前記架台に設けられ、熱可塑性樹脂シートを加熱軟化させるためのシート加熱装置と、
前記架台に設けられ、少なくとも一方が他方に対して接近・退避できるよう可動となっている1対の金型支持盤と、
前記可動の金型支持盤を駆動するための駆動装置と、
それぞれが対応の前記金型支持盤により支持される、加熱軟化された熱可塑性樹脂シートを賦形するための1対の金型であって、少なくとも一方が前記熱可塑性樹脂製の部材を成形するための凹部及び該凹部に通じる溶融樹脂通路を有している前記1対の金型と、
前記凹部及び前記溶融樹脂通路を有する金型に溶融樹脂を射出するための射出装置と、
を備え、
前記可動の金型支持盤が、前記凹部及び前記溶融樹脂通路を有する前記金型を支持しており、
前記射出装置が、前記可動の金型支持盤に該可動の金型支持盤の可動方向に延びるよう取り付けられていることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造装置。 - 前記1対の金型支持盤の位置を検知する位置センサと、
前記位置センサにより検知された位置情報に基づいて前記射出装置からの溶融樹脂の射出を開始するよう前記射出装置を制御する制御装置と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形品の製造装置。 - 前記熱可塑性樹脂シートが発泡層を有する熱可塑性樹脂発泡シートである場合において、前記制御装置は、前記位置センサからの位置情報に基づいて、前記金型間が所定の潰し代となる位置にて前記可動の金型支持盤を停止するよう前記駆動装置を制御するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂成形品の製造装置。
- 前記可動の金型支持盤の可動方向が上下方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成形品の製造装置。
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