JP4189979B2 - クレーンの吊り荷位置検知方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数個積載した運搬物を、船舶、トラック、トレーラ等の運搬手段内に位置合わせして荷積み又は荷卸しする場合のクレーンの吊り荷位置検知方法、特にGPS(Global Positioning System)を用いた位置検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、船舶、トラック、トレーラ等の搬送手段内に複数個荷積した運搬物をクレーンで荷積み又は荷卸しする場合には、例えば、クレーン運転手と玉掛手とで互いに連絡合図しながら、運搬物近傍にいる玉掛手が運搬物に吊具を掛け外しすることにより行っていた。しかしながら、近年これら運搬作業の合理化要求が強まり前記玉掛手の省力化やクレーン運転手の省力化が進みつつある。これら省力化方策には種々の方法があるが、基本的には荷の位置とクレーンの吊り位置を自動的に一致させることが不可欠であり、移載機、クレーン等積み替え機器によってさまざまである。この場合のクレーンの吊り荷位置検知方法は、一般的には、決められた位置に荷を置きクレーンでその位置に位置合わせしたり、運搬物の位置を画像手段等により測定し、その測定位置にクレーンを位置合わせする等の方法が取られている。
【0003】
しかしながら、複数の運搬物を積んだトレーラーやトラック等の様に運転手による運搬物の位置合わせは、手動運転のため中々精度を出し難く、また、船舶等では、潮流や干満によって正確な位置合わせが困難な場合がある。
そのため、従来のクレーンの吊り荷位置検知方法としては、例えば、本発明と同一出願人の特許出願である特開平7−251949号公報に示されているような反射プリズムと光波距離計を有する自動追尾装置を使用してクレーンと吊り荷の位置決定することが考えられたり、GPSを利用した方法等が考えられている。
【0004】
このGPSを利用する方法は、基本的には固定基準局と移動局からなり、固定基準局に対する移動局の位置を3次元(x,y,z)的に位置測定するものであるため、移動局側GPS受信アンテナ(3−1)がクレーン側と搬送手段側の2個所に設置する必要がある。すなわち、GPSを利用するクレーンの吊り荷位置検知方法は、クレーンアーム先端の吊り位置と搬送手段内の2個所に移動局を設置して、移動局間の差を演算することによりクレーンの吊り荷位置を決定する方法である。
【0005】
尚、GPSを用いた位置測定装置は、複数の衛星(12)から発射される電波を利用し、衛星(12)から測位点までの電波伝播時間を算出することにより、三角測量法によって位置が測定される。この測定方法には、大別すると単独測位法と干渉測位法があり、前者は精度が約10m程度でカーナビ等に用いられ、後者は数cmオーダの精度で位置測定が可能である。後者の干渉測位方法は、その応用例が特開昭63−151880号、特開平9−119972号、特開平10−48321号公報に開示されている。具体的には、例えば、古野電気製の商品名「リアルタイムキネマティックGPS測量システムGS−10」が利用できる。その構成は複数の衛星(12)と固定基準局及び移動局(測定点に設置)とからなり、既知の固定基準局に対して移動局の位置を3次元的に測定するもので、連続的な精度の良い位置測定には、固定基準局と移動局で同じ衛星(12)を5個以上補足している必要があり、また、二重位相差により誤差を相殺するため、移動局が基準局からの位置補正データを受信できる構造となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の自動追尾方式によるクレーンの吊り荷位置検知方法は、運搬手段である船舶やトレーラーが変わるごとに初期原点合わせが必要なものであり、その方法は追尾装置から望遠鏡等を覗いて各反射プリズムに追尾装置を位置合わせする必要があるため、追尾開始までの準備時間が必要であり、又船舶等で積み替え移送運転中に何らかの急激な船舶揺れがあり一度追尾切れが発生すると再度前記初期原点合わせが必要となるものであった。
【0007】
また、前述のGPSを使用する方法にあっては、複数個の衛星(12)を利用したものであるためGPSアンテナの上空は広く天空が開けている必要があり、一般的にはアンテナの設置位置水平線に対して15°以上には障害物が無いことが必要で有るが、水平引込式クレーン(Level Luffing Crane;LLCと以下呼ぶ)等クレーンアーム先端に移動局側GPSアンテナを取り付けると天空がアームで遮断される場合等があり、クレーン側の吊り位置が計測中断する場合がある。
【0008】
そこで本発明のうち請求項1記載の発明は、予め決められた搬送手段の基準点(9)にクレーンを一旦位置合わせし、初期原点合わせ時間の短縮を図ると共に、極力移動局側GPS受信アンテナ(3−1)台数が少ない配置で確実に吊り位置が決定できる安価なクレーンの吊り位置検知方法を提供することを目的としている。
また、請求項2記載の発明は、クレーンの吊り位置上方の天空が十分広く取れない場合のクレーン先端吊り位置を特定するためのアンテナ設置による吊り位置決定方法を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クレーンアーム先端の吊り位置に移動局側GPS受信アンテナを設置し、該吊り位置座標を計測しながら、運搬手段内で予め決められた位置に積載された複数の運搬物を積み替え移動するに際し、予め決められた前記運搬手段内の基準点にクレーンの前記吊り位置を初期位置合わせして、その後、前記基準点から個々の運搬物の相対位置を演算して、運搬手段の座標を前記クレーンアーム先端の吊り位置座標に変換し、個々の運搬物の吊り位置を決定するものである。
本発明に従えば、運搬手段内へ移動局側GPS受信アンテナを設置して該運搬手段の位置を検知する必要がなく、クレーンの簡単な初期位置合わせにより、個々の運搬物の位置を決定できるため、運搬手段内へのGPS受信機の設置が不要となる効果がある。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記移動局側GPS受信アンテナを、前記吊り位置以外の天空が開けたクレーンアーム上に、間隔を設けて少なくとも2個所設置し、クレーンアーム先端の吊り位置を計測するものである。本発明に従えば、請求項1記載の発明のクレーンが水平引込式クレーン等でクレーンアーム先端の吊り位置へ移動局側GPS受信アンテナが設置できない場合等であっても、移動局側GPS受信アンテナを天空が開けたアーム上の吊り位置以外の2個所へ設置することにより、クレーンアーム先端の吊り位置座標を計測することができるという効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態について、以下説明する。
図1は、本発明の一実施例である機器配置図を示し、図2は、該実施例の制御機器構成を示している。また、図5は、運搬手段(7)である船内の運搬物(8)の積載状況を説明するものである。
【0012】
位置測定装置としては、前述の古野電気製の商品名「リアルタイムキネマティックGPS測量システムGS−10」が利用でき、図2の如く移動局側GPS受信アンテナ(3−1)、移動局側データ受信アンテナ(4−1)及び移動局(5)と、固定局側GPS受信アンテナ(3−2)、固定局側データ送信アンテナ(4−2)と固定局(6)より構成される。
【0013】
固定局(6)は、固定局GPS受信機(6−1)、固定局無線機(6−2)、固定局計算機(6−3)、及び固定局プリンター(6−4)で構成し、複数の衛星(12)の観測データは、固定局側GPS受信アンテナ(3−2)を経て固定局GPS受信機(6−1)で、デジタル信号化し固定局計算機(6−3)に入力される。固定局計算機(6−3)にて移動局(5)へ送る送信データ(各衛星と固定局間の距離、固定局の位置、その他位置補正データ)を生成し、固定局無線機(6−2)を経由して固定局側データ送信アンテナ(4−2)により移動局(5)へ伝送される。
【0014】
移動局(5)では、固定局(6)とほぼ同様に移動局側GPS受信アンテナ(3−1)で衛星(12)からの観測データを受信し移動局GPS受信機(5−1)を経て、該観測データを移動局計算機(5−3)に取り込む。一方、移動局側データ受信アンテナ(4−1)からは、前記固定局(6)観測データを無線機をへて移動局計算機(5−3)に取り込む。移動局計算機(5−3)では、固定局側GPS受信アンテナ(3−2)と衛星(12)間の距離、及び移動局側GPS受信アンテナ(3−1)と衛星(12)間距離をから、移動局側GPS受信アンテナ(3−1)の三次元位置(x、y、z)が演算計測される。
【0015】
すなわち、本発明で使用する吊り位置(10)測定方法は、前述の「リアルタイムキネマティックGPS測量システムGS−10」を使用して、クレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)に設置した移動局側GPS受信アンテナ(3−1)の三次元位置を常時追跡することによってリアルタイムに吊り位置座標を計測するものである。
尚、この場合の機器配置については、クレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)に移動局側GPS受信アンテナ(3−1)を設置することと、移動局側データ受信アンテナ(4−1)と固定局側データ送信アンテナ(4−2)間で無線通信できることが条件であり、他の機器については特に設置場所を限定するものではない。
【0016】
次に本発明の方法について以下説明する。
本実施例は、運搬手段(7)であるトラックから船にクレーン(1)でコイルを積み替える例である。移動局側GPS受信アンテナ(3−1)はクレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)に設置し、固定局側データ送信アンテナ(4−2)は、移動局側データ受信アンテナ(4−1)と無線通信の可能な建屋の屋上等へ設置し、移動局側GPS受信アンテナ(3−1)(吊り位置)の三次元位置座標をリアルタイムに測定する。
【0017】
トラック内は、図3に示す如く予め決められた位置(トラック内座標)にコイルが積載される様コイル置台が設置されており、船内も図5の如く同様にコイル積載位置が予め決められている。コイルは、上位計算機(11)のハッチプランと呼ばれる配船計画によって、船に積み込む順序及び場所が決定され、該計画に基づいて図示しない陸上の倉庫からトラック内にコイルが順次積み込まれ海岸に運ばれる。このトラック上のコイルは、トラック内の位置及び各コイルの識別番号が上位計算機(11)により認識されており、陸上の倉庫から海岸までコイル情報としてトラッキングされている。
【0018】
これら船内の積み込み位置、及びトラックのコイル位置は移動局計算機(5−3)と上位計算機(11)を配線接続(無線でも可)することにより移動局計算機(5−3)に記憶されている。
トラックが海岸に到着すると、トラックから船内へのコイルの荷替えを開始するが、コイルを吊り上げる前に先ず、クレーン運転手は、トラック内の吊り側基準点(9−1)にクレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)を空荷にて位置合わせする。この位置合わせによって、移動局計算機(5−3)は、該基準点(9)からコイルまでの相対距離に基づいてトラック内座標をクレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)座標に変換演算して、トラック内の運搬物(8)の吊り位置(10)を決定する。
【0019】
図4を用いて前記コイル位置の演算方法を以下説明する。図中の大文字(X,Y)はトラック上の座標を示し、小文字(x、y)は、「リアルタイムキネマティックGPS測量システムGS−10」によって計測されたクレーン(1)の吊り位置(10)の座標を表す。この例では、前記両座標が異なっている場合を示しており、この場合は搬送手段であるトラックの2箇所に基準点(9)を設け位置合わせを行う。
トラック内座標をクレーン(1)の吊り位置(10)座標に換算演算する方法を以下説明する。吊り側第1基準点(9−1a)のトラック座標(Xou,You),クレーンの吊り位置座標(xou,you)とし、吊り側第2基準点(9−1b)のトラック座標(Xeu,Yeu),クレーンの吊り位置座標(xeu、yeu)とすると、トラック座標(X1u,Y1u)のクレーン吊り位置座標(x1u,y1u)は下記の如く計算できる。
【0020】
【数1】
【0021】
以上の如く、予め決められたトラック座標に積載されたコイル位置を全座標について吊り位置座標に変換することができる。
また、荷積み側の運搬手段(7)である船内の積載位置についてもトラックと同様に卸し側基準点(9−2)にクレーン(1)の吊り位置(10)を合わせることにより、船内のコイル置き場座標に対応する吊り位置座標を演算することができる。
【0022】
次にクレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)にGPS受信アンテナ(3)が設置できない場合の吊り位置(10)を計測する実施例を、図6乃至図10を用いて説明する。
図6は、LLCクレーン(1)の概略図を示しており、吊り位置(10)にGPS受信アンテナ(3)を設置した場合、該天空がクレーンアーム(2)で障害となり衛星(12)との通信が困難となることがある。この場合、図に示すごとくGPS受信アンテナ(3)を天空が開けたクレーンアーム(2)上に2個所設置して、2個所のクレーン座標を「リアルタイムキネマティックGPS測量システムGS−10」を使用して計測し、該2個所の座標からクレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)を計測するものである。図7は、その計測制御機器構成図を示している。
【0023】
図8乃至図10は、吊り位置(10)を計測する演算方法を説明するものであり、図8はLLCクレーン(1)の動作概念図、図9は紙面図8の上側から見たクレーン(1)アーム(2)の平面概念図である。そして、図10は図中記載のα、βの距離関係を計測したものである。
LLCクレーン(1)は、▲1▼▲2▼は固定支点で▲3▼▲4▼▲5▼が動点として、クレーン先端の▲5▼はアーム(2)の伸縮により、水平にaからbの間を移動する。a−c間距離(β)は、b−c間距離(α)の関数(補正曲線と呼ぶ)で演算できるため、クレーンアーム(2)先端吊り位置(10)は、該補正曲線と第1GPSアンテナ位置及び第2GPSアンテナ位置から算出できる。
【0024】
補正曲線は、a点を例えば光波距離計で測定し、b、c点を前述のGPS測位システムで測定する。その測定結果をα―β距離の座標に整理したものが図10である。この測定点を回帰曲線で近似すると前記補正曲線を得ることができる。
従って、クレーンアーム(2)先端の吊り位置座標(x、y)は、次の如く算出できる。
αとβの関係は、下記の如くなる。
α:β=(x1−x2):(x−x2)
α:β=(y1−y2):(y−y2)
これを整理すると、
x=β(x1−x2)/α+x2
y=β(y1−y2)/α+y2
となるため、第1GPアンテナ座標(x1、y1)と第2GPSアンテナ座標(x2、y2)が測定出来ると、α2=(x1−x2)2+(y1−y2)2の関係からαが決まり、図10の補正曲線からβを決めることができるため、吊り位置(10)座標(x、y)を決定できる。
【0025】
【発明の効果】
この発明にかかるクレーンの吊り荷位置検知方法は、以上説明した如き内容のものなので、予め決められた搬送手段の基準点にクレーンを一旦位置合わせし、初期原点合わせをすることで、極力少ないGPS受信アンテナでクレーンの吊り位置を計測できるというの効果がある。
以上説明したように、この発明のうち請求項1記載の発明は、従来では運搬手段に各々GPSアンテナを設置して該運搬手段内の運搬物の位置を計測する必要があったが、移動局側GPSアンテナをクレーンアーム先端の吊り位置に設置するのみで、吊り側及び卸し側運搬物の位置が正確に検出できるため、クレーン運転手のみで運搬物の積み替えが可能となり玉掛者の合理化が可能であると共に、運搬手段が積み替え中に一次場所移動した場合にあっても、クレーン運転手による再度の初期原点合わせを行うことで短時間に運搬物の積み替え作業が再開できる効果がある。
また請求項2記載の発明はさらにクレーン等の型式が異なり吊り位置に移動局側GPSアンテナが設置できない場合にあっても、吊り位置を正確に計測できると言う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の一実施例である機器配置図である。
【図2】 図2は、図1の実施例の制御機器構成図である。
【図3】 図3は、運搬手段であるトラック内運搬物の積載状況説明図である。
【図4】 図4は、クレーン座標と運搬手段座標の変換方法説明図である。
【図5】 図5は、運搬手段である船内の運搬物の積載状況を説明する図である。
【図6】 図6は、本発明をLLCクレーンに適用した時の機器配置図である。
【図7】 図7は、図6の制御機器構成図である。
【図8】 図8は、 LLCクレーンの動作概念図である。
【図9】図9は、紙面図8の上側から見たクレーンアームの平面概念図である。
【図10】第1・第2GPSアンテナ間距離とクレーン吊り位置・第2GPSアンテナ間距離の補正曲線を表した図である。
【符号の説明】
1 クレーン
2 アーム
3 GPS受信アンテナ
3−1移動局側GPS受信アンテナ
3−2固定局側GPS受信アンテナ
4 データ受信アンテナ
4−1移動局側データ受信アンテナ
4−2固定局側データ送信アンテナ
5 移動局
5−1移動局GPS受信機
5−2移動局無線機
5−3移動局計算機
6 固定局
6−1固定局GPS受信機
6−2固定局無線機
6−3固定局計算機
6−4固定局プリンター
7 運搬手段(トレーラ、トラック等)
8 運搬物(コイル等)
9 基準点
9−1吊り側基準点
9−2卸し側基準点
10 吊り位置
11 上位計算機
12 衛星
Claims (1)
- クレーンアーム(2)先端の吊り位置(10)以外の天空が開けたクレーンアーム(2)上に移動局側GPS受信アンテナ(3−1)を間隔を設けて少なくとも2個所設置し、該吊り位置座標を計測しながら、運搬手段(7)内で予め決められた位置に積載された複数の運搬物(8)を積み替え移動するに際し、予め決められた前記運搬手段(7)内の基準点(9)にクレーン(1)の前記吊り位置(10)を初期位置合わせして、その後、前記基準点(9)から個々の運搬物(8)の相対位置を演算して、運搬手段(7)の座標を前記クレーンアーム(2)先端の吊り位置座標に変換し、個々の運搬物(8)の吊り位置(10)を決定することを特徴とするクレーンの吊り荷位置検知方法。
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