JP4189958B2 - 氷蓄熱空調システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、氷蓄熱槽内に蓄える蓄熱媒体として低濃度ブライン溶液を利用する氷蓄熱空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
氷蓄熱槽の氷充填率(Ice Packing Factor、以下IPFと称す)を高めることは、氷蓄熱空調システムを小型化するうえで有効な手段である。このため、蓄熱媒体に低濃度ブライン溶液を使用し、mush状(固―液共存の状態)の氷を製氷することにより高IPF化を図ろうとする技術が進められている。高IPF時に発生する氷のブリッジングによって蓄熱槽内の圧力が異常に上昇するが、氷をmush状にすることにより機械的圧力の異常上昇が緩和されるためである。
【0003】
そこで、蓄熱槽内に攪拌手段を設けてブライン溶液濃度を管理し、mush状の氷を製氷する例として、非特許文献1に示すような蓄熱槽が知られている。蓄熱槽、熱交換器、蓄熱槽外部の冷媒循環流路、循環ポンプなどを備え、製氷時、低圧のガス冷媒によって蓄熱槽内の蓄熱媒体より熱を奪うことによって、熱交換器の周囲にmush状の氷を生成させるものである。
【0004】
【非特許文献1】
熊本大学地域共同研究センター第13回共同研究成果発表会概要集 「高性能氷蓄熱システムの開発(4)」
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
低濃度ブライン溶液を使用した場合、製氷・融解のサイクルが繰り返されるとブライン濃度に勾配が生じ、蓄熱槽内の上部が薄く、下部が濃くなる。したがって、ブライン溶液濃度が薄くなった部位ではmush状の氷が生成されなくなるため氷のブリッジングが起き、圧力が異常に上昇する。圧力の異常上昇は熱交換器等へダメージを与え、高IPFが実現できなくなる。したがって、高IPFを実現できる期間が限られてしまう。
【0006】
そこで、濃度勾配を解消するため水槽内の蓄熱媒体を循環ポンプによって攪拌することが必要となるが、氷蓄熱空調システムは消費電力の低減を目的とするものであり、循環ポンプが非効率的に使用されると余分な電力が消費される。
【0007】
本発明の目的は、蓄熱槽内の上下のブライン濃度差を均一化して蓄熱槽内の熱交換器の破損防止と蓄熱容量の増大を図りつつ、循環ポンプの運転を効率的に行なえるよう循環ポンプの運転を制御し省電力を図ることができる氷蓄熱空調システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の氷蓄熱空調システムは、圧縮機及び室外熱交換器を有する室外ユニットと、室内熱交換器及び膨張開閉弁を有する室内ユニットと、氷蓄熱ユニットと、制御装置とを備え、該氷蓄熱ユニットは、蓄熱媒体を蓄える蓄熱槽と、該蓄熱槽に内蔵され前記蓄熱媒体と管内を流れる冷媒との間で熱交換させる蓄熱槽熱交換器と、前記蓄熱槽内の前記蓄熱媒体を攪拌する循環ポンプとを有し、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記室内熱交換器、前記膨張開閉弁及び前記蓄熱槽熱交換器でサイクルを構成してシステムの運転時に前記蓄熱槽に蓄えられた蓄熱媒体の蓄熱を利用して前記室内ユニットで冷房を行う氷蓄熱空調システムにおいて、該循環ポンプは、前記蓄熱槽の概ね最低部位置に設けられた吸込口と前記蓄熱槽の概ね最高部位置に設けられた吐出口とを連通する配管に介在して設けられ、前記蓄熱媒体は水にブライン溶液が混合されて構成されおり、前記制御装置は、前記蓄熱槽内の前記蓄熱媒体の上下方向のブライン溶液の濃度が0.2〜10%の範囲にあるように、システムの運転時間が所定の積算時間になる度に前記循環ポンプを運転するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る氷蓄熱空調システムの実施例の系統図である。氷蓄熱空調システムは、基本的にそれぞれ破線で示される室外ユニット1、室内ユニット2及び氷蓄熱ユニット3から構成されている。
詳しくは、室外ユニット1は冷媒ガスを圧縮する圧縮機4、外気と管内をながれる冷媒との間で熱交換させる室外熱交換器5、冷媒の流れを切替える四方弁6及び循環ポンプ13(攪拌装置)の運転を制御する制御装置7(詳細後述)から構成されている。また室内ユニット4は、室内空気と管内をながれる冷媒との間で熱交換させる室内熱交換器8及び膨張開閉弁9から構成されている。
【0013】
さらに氷蓄熱ユニット3は、蓄熱媒体を蓄える蓄熱槽10、該蓄熱槽10に内蔵され蓄熱媒体と管内を流れる冷媒との間で熱交換させる熱交換器11、該蓄熱槽10の液面の最上部もしくはその近傍(すなわち概ね最高部位置)の吸込口もしくは吐出口と、底部もしくはその近傍(すなわち概ね最低部位置)に吐出口もしくは吸込口とを連通させる配管12、該配管12に介在し蓄熱媒体を循環させる循環ポンプ13、蓄熱冷媒のブライン濃度を検出するブライン濃度検出器14、膨張開閉弁15、電磁開閉弁16,17,18などから構成されている。
【0014】
蓄熱媒体は、ブライン溶液を0.2ないし10.2%(重量)の範囲で混合して調整されることが好ましい。その理由は、ブライン溶液が0.2%以下になると、蓄熱容量が大きくなる反面、氷結時の蓄熱媒体の機械的応力が大きくなって熱交換器11を破損させる恐れがある。またブライン溶液が10.0以上になると、該機械的応力は小さくなるが氷結が起こり難く、蓄熱容量が小さくなる。
【0015】
これら機器は配管20,21,22,24,25,26によって接続され、機器間に冷媒液もしくは冷媒ガス(または、これらの二相冷媒)が流れる。前記制御装置7と前記ブライン濃度検出器14及び循環ポンプ13とは、信号の授受が可能に接続されている。
【0016】
上記構成のシステムにおいて、冷房運転時及び製氷運転時(蓄熱運転時)の作用を説明する。
まず製氷運転時について説明すると、膨張開閉弁9、電磁開閉弁18は閉にされ、膨張開閉弁15は開、電磁開閉弁16,17は開にされる。冷媒の流れは実線矢印で示されるように、圧縮機4の運転によって冷媒は四方弁6を通り、室外熱交換器5で外気と熱交換して温度が概ね外気温度まで低下した冷媒は膨張開閉弁15で断熱膨張によってより低温となって蓄熱槽10内に入る。蓄熱槽10の熱交換器11で、蓄熱媒体は冷媒と熱交換してより低温となり、冷媒自身は温度上昇して冷媒ガス(液―ガスの二相流)となって圧縮機4の吸入側に入るサイクルを行なう。このサイクルの繰り返しによって熱交換器11の表面に氷が生成される。
【0017】
冷房運転時は、電磁開閉弁16,17は閉にされ、電磁開閉弁18、膨張開閉弁9,15は開にされる。冷媒の流れは破線矢印で示されるが、製氷運転時と異なる流れについてのみ説明する。室外熱交換器5で外気と熱交換して低温となり、蓄熱槽10内の蓄熱媒体と熱交換してさらに低温となって室内熱交換器8に流入し、室内空気と熱交換するサイクルを繰り返す。
【0018】
しかし前述のように、ブライン溶液が混合された蓄熱媒体(一般に水)では、サイクルの繰り返しによって水とブライン溶液との比重差により、ブライン濃度は上部で薄く下部で濃い溶液となり、蓄熱媒体に濃度差が生じてしまう。蓄熱媒体に濃度差が生じると、濃度が薄い上部では応力が大きくなり、濃度の濃い下部では応力は少ないが氷が生成し難く、もしくは生成しなくなる、という好ましくない現象が起こる。
【0019】
この現象は、次の手段によって回避できる。
その一つ上記実施例のように、蓄熱媒体の濃度差は空調システムの運転時間によって概ね比例するので、空調システムの運転時間を積算し、積算運転時間が所定の時間になったら制御装置7によって循環ポンプ13を運転し、蓄熱媒体を攪拌して濃度差を均一化するものである。
【0020】
あるいは、次の手段によっても回避できる。
蓄熱媒体の上部ブライン濃度が所定濃度未満になったことが検出されると制御装置によって循環ポンプが運転されように制御し、蓄熱槽内の蓄熱媒体を攪拌して濃度を均一化する。
【0021】
さらに、次の手段によっても回避できる。
すなわち、予め決めてある製氷運転の直前もしくは製氷運転中(製氷運転中は伝熱管を流れる冷媒と管外の蓄熱媒体と温度差より大きく、より大きな伝熱効果が得られる)に循環ポンプが運転されるように制御する制御装置を設けることや、熱交換器の解氷運転後に循環ポンプが運転される制御装置を設けることによっても回避できる。
【0022】
図2は、暖房運転時の冷媒の流れを示したものである。
暖房運転時では、四方弁4が切替えられて冷媒は矢印一点破線で示されるように流れる。氷蓄熱ユニット5は利用されないため電磁開閉弁16は閉にして運転される。暖房運転時は、基本的には従来の氷蓄熱空調システムと作用が同じであるので、その説明は省略する。
【0023】
本実施例によれば、循環ポンプの運転を効率的に行なう制御装置を設けて循環ポンプの運転を制御することにより、省電力化を図ることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の氷蓄熱空調システムによれば、蓄熱槽内の上下のブライン濃度差を均一化して蓄熱槽内の熱交換器の破損防止と蓄熱容量の増大を図りつつ、循環ポンプの運転を効率的に行なえるよう循環ポンプの運転を制御し省電力を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の氷蓄熱空調システムに係る実施例の系統図で、製氷運転時及び冷房運転時の冷媒の流れを同時に示したものである。
【図2】図1の実施例における、暖房運転時の冷媒の流れを示したものである。
【符号の説明】
1…室外ユニット、2…室内ユニット、3…氷蓄熱ユニット、4…圧縮機、5…室外熱交換器、6…四方弁、7…制御装置、8…室内熱交換器、
9…膨張開閉弁、10…蓄熱槽、11…熱交換器、12…配管、13…循環ポンプ(攪拌装置)、14…ブライン濃度検出器、15…膨張開閉弁、16…電磁開閉弁、17…電磁開閉弁、18…電磁開閉弁、20,21,22,23,24,25,26…配管。

Claims (1)

  1. 圧縮機及び室外熱交換器を有する室外ユニットと、室内熱交換器及び膨張開閉弁を有する室内ユニットと、氷蓄熱ユニットと、制御装置とを備え、
    該氷蓄熱ユニットは、蓄熱媒体を蓄える蓄熱槽と、該蓄熱槽に内蔵され前記蓄熱媒体と管内を流れる冷媒との間で熱交換させる蓄熱槽熱交換器と、前記蓄熱槽内の前記蓄熱媒体を攪拌する循環ポンプとを有し、
    前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記室内熱交換器、前記膨張開閉弁及び前記蓄熱槽熱交換器でサイクルを構成してシステムの運転時に前記蓄熱槽に蓄えられた蓄熱媒体の蓄熱を利用して前記室内ユニットで冷房を行う氷蓄熱空調システムにおいて、
    該循環ポンプは、前記蓄熱槽の概ね最低部位置に設けられた吸込口と前記蓄熱槽の概ね最高部位置に設けられた吐出口とを連通する配管に介在して設けられ、
    前記蓄熱媒体は水にブライン溶液が混合されて構成されおり
    前記制御装置は、前記蓄熱槽内の前記蓄熱媒体の上下方向のブライン溶液の濃度が0.2〜10%の範囲にあるように、システムの運転時間が所定の積算時間になる度に前記循環ポンプを運転する
    ことを特徴とする氷蓄熱空調システム。
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