JP4189644B2 - 生体分子相互作用測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体表面上に生体分子を固定化して、固定化した生体分子と、生体分子又はその集合体との相互作用を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から生体分子の機能を調べる手段として、生体分子の相互作用が調べられてきた。相互作用を調べる手段としては、一方の分子を固体表面上に固定化し、対象物質を接触させて、対象物質が吸着するかどうかを検出する方法が一般的となってきている。相互作用を測定する際には、固定化した分子のモビリティを確保した上で、非特異的吸着を抑制されていることが好ましく、そのためには、固定化分子と表面のスペースを確保するスペーサーの存在が不可欠と考えられている。例えば、核酸分子を共有結合で固定化する方法において、核酸分子内にチミン16塩基あるいはポリエチレングリコールのスペーサーを設ける方法が示されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法では、架橋剤にスペーサーの効果がないために分子のモビリティが不十分で、相互作用解析の対象物質が限られる。
【0003】
一方、スペーサーとしてポリマーを用いる方法も報告されている(例えば特許文献2参照)。しかし、この方法において使用されるポリマーはアミノ基を多く有する多官能型ポリマーで、表面からの距離を十分に取ることができず、効果が不十分である。また、両端が同じ官能基であると、両端とも反応してしまい、生体物質との反応効率が悪くなる。
【0004】
米国特許においては、表面にハイドロゲルを形成し、ゲル内に官能基を設けることで固定化分子のモビリティを確保し、非特異的吸着を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。効果のある方法ではあるが、ゲルの内部と外部とで、対象物質の浸透、拡散速度が異なるため、リアルタイムに相互作用キネティクス(Kinetics)を厳密に測定する方法としては不適当である。
【0005】
また、親水性高分子を有するスペーサーの末端に生体分子を固定化するための官能基を有し、もう一方の末端に固体表面に直接結合できる官能基をもつ分子が設計され、相互作用観察を行うことも、報告されている(非特許文献1、2参照)。しかし、この物質単独を表面に密に充填することは難しく、非特異的吸着を抑制するために、その他の親水性基末端物質を高い比率で混合する結果となり、表面に生体分子が固定化される密度が低く、測定感度が低いという問題が生じる。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第00/67028号
【0007】
【特許文献2】
特開2000−146976号公報
【0008】
【特許文献3】
米国特許5436161
【0009】
【非特許文献1】
Sigal et.al. Anal.Chem. 68(1996)490−497
【0010】
【非特許文献2】
Jung et.al. Langmuir 16(2000)9421−9432
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、固定化した分子のモビリティを確保すると同時に、非特異的吸着を抑制し、厳密な相互作用キネティクス(Kinetics)解析を可能とする方法を提供することを主な目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討を重ねた。その結果、架橋剤としてヘテロ二官能型親水性高分子を用いて、固体表面上に生体分子を固定化した基板を用いて、生体分子間の相互作用を測定することにより、分子間相互作用を適切に測定し得ることを見出し、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本願発明は次の事項に係る。
【0014】
1.架橋剤として分子量が1,000以上20,000以下であり、かつ一般式X−R−Yで表されるヘテロ二官能型親水性高分子(ここでXはアミノ基もしくはスクシンイミド基を表す。Yはカルボキシル基もしくはマレイミド基を表す。Rは高分子の繰り返し単位を表す。)を用いて金薄層を表面に有する基板である固体表面上に生体分子(A)を固定化した基板を用いて、生体分子(A)と生体分子(B)又はその集合体との相互作用を表面プラズモン共鳴法又は表面プラズモン共鳴イメージング法を用いて測定する工程を有することを特徴とする生体分子相互作用測定方法。
2.ヘテロ二官能型親水性高分子のRが、下記繰り返し単位
−(−O−R 1 −)n−
(ここで、R 1 は、炭素数が2−5のアルキレン基を表す。nは4〜450。)
で表される構造を有することを特徴とする項1に記載の方法。
3.ヘテロ二官能型親水性高分子の官能基Xがスクシンイミド基、及びYがマレイミド基であることを特徴とする項1又は2に記載の方法。
4.固体表面が平面基板であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の方法。
5.固体表面が、一般式X’−R’−Y’で表される化合物(ここでX’は金薄層と反応する官能基を表す。Y’はアミノ基、カルボキシル基及びN−ヒドロキシスクシンイミド基から選ばれるヘテロ二官能型親水性高分子と結合する官能基を表す。R’は有機基を表す)を用いて金薄層表面に官能基を導入した固体表面であることを特徴とする項4に記載の方法。
6.一般式X’−R’−Y’で表される化合物が、8−アミノ−1−オクタンチオール(8−Amino−1−Octanethiol)又は7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール(7−Carboxy−1−Heptanethiol)であることを特徴とする項5に記載の方法。
7.生体分子(A)を固定化した基板が、複数の種類の生体分子(A)をアレイ状に固定化した基板であることを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の方法。
8.生体分子(A)を固定化した基板が、10種類以上の生体分子(A)を固定化した基板であることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載の方法。
9.生体分子(A)が核酸であることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載の方法。
10.生体分子(B)がタンパク質であることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の方法。
11.タンパク質が転写因子であることを特徴とする項10に記載の方法。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
ヘテロ二官能型親水性高分子
本発明は、固定化した生体分子のモビリティを確保すると同時に、非特異的吸着を抑制し、厳密な相互作用キネティクス(Kinetics)解析を可能とするために、生体分子を固体表面に固定化する方法において、架橋剤としてヘテロ二官能型親水性高分子を用いることを特徴とする。
【0032】
この方法により、表面から一定のスペースを保った状態で生体分子を固定化することが可能となり、生体分子の相互作用キネティクス(Kinetics)解析を、生体分子のモビリティを確保しつつ、リアルタイムで適切な観察を行うことができる。
【0033】
架橋剤として用いるヘテロ二官能型親水性高分子は、一般式X−R−Yで表される。ここでXは固体表面の官能基、もしくは固体表面に導入された官能基と結合する官能基を表す。Yは生体分子(A)と結合する官能基を表す。また、Rは高分子の繰り返し単位を表す。ここで、高分子とは繰り返し単位の数が3以上のものをいう。
【0034】
本発明の架橋剤となる高分子の末端となるヘテロな2つの官能基は、一方の末端の官能基Xが固体表面もしくは固体表面に導入された官能基と結合する官能基であり、他方の末端の官能基Yが生体分子(A)と反応するものであって、互いに異なる官能基で構成される。即ち、X≠Yである。
【0035】
官能基Yは固体表面と反応しない官能基であることが好ましい。官能基Yが表面と反応すると、表面にループが形成され、生体分子を固定化するための官能基が少なくなり、反応効率が悪くなるので好ましくない。
【0036】
官能基X及びYとしては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スクシンイミド基、スルホン化スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、アルデヒド基、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基、ヒドラジド基、アジド基などが挙げられる。このような官能基群の中からX及びYとして異なる2つの官能基を選択し、組み合わせて構成する。
【0037】
特に、X及びYの組合せとしては、反応対象が異なるアミノ基とカルボキシル基の組合せ、スクシンイミド基とマレイミド基の組合せが好ましい。
【0038】
生体分子(A)がDNAである場合、末端に導入する官能基Yはアミノ基、チオール基あるいはビオチンが好ましい。
【0039】
ヘテロ二官能基型親水性高分子の分子量は200以上、好ましくは1000以上、更に好ましくは1500以上であり、20000以下、好ましくは10000以下、更に好ましくは6000以下である。
【0040】
繰り返し単位で言うと、構成単位の繰り返し数が、4以上、好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、450以下、好ましくは225以下、更に好ましくは130以下である。
【0041】
本発明のヘテロ二官能型親水性高分子は、架橋剤となるだけでなく、スペーサーの役割も担う。分子量が小さすぎる場合には、十分なスペーサーとして機能しないため好ましくない。一方、分子量が大きすぎる場合には、一定のモル濃度が必要である固定化に要する架橋剤のグラム数が増大するため、好ましくない。
【0042】
本発明において、架橋剤を構成する高分子は、非特異的吸着を抑制するために親水性である必要がある。ここで親水性とは架橋剤となる高分子が水溶性であることを意味する。
【0043】
高分子の繰り返し単位Rは特に限定されるものではないが、下記繰り返し単位−(−O−R1−)n−
(ここで、R1は、炭素数が2−5のアルキレン基を表す。nは4〜450。)で表される構造を有することが好ましい。
【0044】
Rとしては、具体的には、-(-CH2-CH2-O-)-や-(-CH2-CH2-CH2-O-)-等の直鎖状のアルキレン基や、-(-CH(CH3)-CH2-O-)-等の分岐状のアルキレン基などが挙げられる。また、-(-CH2-CH2-O-)p-(-CH(CH3)-CH2-O-)q-のようなブロック共重合体も含まれる。
【0045】
このうち、親水性と鎖のフレキシビリティからみて、エチレングリコールの繰り返し単位-(-CH2-CH2-O-)-を有するものが好ましい。
【0046】
生体分子の固定化方法
架橋剤を用いて生体分子を固定化する方法は特に限定されないが、例えば、架橋剤の一方の末端Xを表面に反応して固定化した後に、反対側の末端に存在する別の官能基Yを利用して、生体分子を固定化する方法が挙げられる。
【0047】
具体的には、一方の末端にアミノ基を有し、他方の末端にカルボキシル基を有するヘテロ二官能基型高分子を架橋剤として用いる場合、カルボキシル基を導入した固体表面をカルボジイミドとN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化した後に、一方の末端であるアミノ基と反応させて、架橋剤を表面に固定化する。その次に架橋剤を介して表面に導入されたカルボキシル基を用いて生体分子(A)を表面に固定化する。
【0048】
また、一方の末端にスクシンイミド基を有し、他方の末端にマレイミド基を有するヘテロ二官能基型高分子を架橋剤として用いる場合、アミノ基を導入した固体表面に、架橋剤のスクシンイミド基を反応させる。次に架橋剤を介して表面に導入されたマレイミド基を用いて生体分子を表面に固定化する。
【0049】
生体分子(A)を架橋剤であるヘテロ二官能基型親水性高分子と結合する方法は特に限定されず、直接的に結合させても、また他の物質を介在させて間接的に結合させてもよい。結合の種類は特に限定されず、例えば、共有結合、イオン結合、キレート結合、水素結合などにより結合させることができる。
【0050】
本発明のヘテロ二官能型架橋剤を用いた後に、生体分子に結合する官能基又は物質を導入することも、本発明に含まれる。例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)基をヘテロ二官能型架橋剤で固定化した後に、NiキレートによりNTA基とヒスチジンタグとをキレート結合させて、ヒスチジンタグ蛋白を表面に導入する方法や、ビオチン或いはストレプトアジビンを架橋剤の官能基Yと反応させて導入した後に、導入したビオチン或いはストレプトアビジンと生体分子(A)を反応させる方法などが考えられる。
【0051】
生体分子を固定化する固体表面としては、相互作用解析に適している点で平面基板が好ましい。
【0052】
平面基板としては、表面プラズモン共鳴(SPR)法による相互作用解析に好適な金属基板が好ましい。金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム等が挙げられる。このうち、表面に金薄層を有する透明基板が特に好ましい。
【0053】
金薄層表面が好ましい理由として、金−硫黄結合を利用して、表面に官能基を導入できることが挙げられる。
【0054】
金−硫黄結合を利用して、表面に官能基を導入する方法としては、例えば、一般式X'-R'-Y'で表される化合物(ここでX'は金薄層と反応する、硫黄原子を有する官能基を表す。Y'はヘテロ二官能型親水性高分子と結合する官能基を表す。R'は有機基を表す)を用いて、官能基を導入した金薄層の固体表面に、ヘテロ二官能型親水性高分子を用いて生体分子(A)を固定化する方法などが挙げられる。
【0055】
官能基X'としては、例えば、チオール基、スルフィド基またはジスルフィド基などが挙げられる。Y'としては、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アジド基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、エポキシ基、カルボニルジイミダゾール基、イソシアネート基などが挙げられる。またR’としては、アルキレン基などが挙げられる。アルキレン基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が5以上18以下であることが好ましい。炭素数が4未満であると、アルカン鎖同士の疎水結合が十分でなく、自己組織化表面の安定性に欠ける。また19以上であると、アルカン鎖の疎水性が強く、親水性物質の反応・固定化が困難となるだけでなく、センサー表面として疎水性が強いために測定中の非特異的吸着が懸念される。
【0056】
一般式X'-R'-Y'で表される化合物としては、具体的には、Y'がアミノ基となる8−アミノ−1−オクタンチオール(8-Amino-1-Octanethiol)、Y'がカルボキシル基となる7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール(7-Carboxy-1-Heptanethiol)などが挙げられる。
【0057】
生体分子(A)としては、単独の物質を用いてもよく、複数の種類の物質を用いてもよい。複数の種類の物質を用いる場合には、ハイスループットな解析が可能になる。ハイスループットで解析を行うことにより、極めて多数の化合物を効率よくスクリーニングすることができる。特に8種類以上、好ましくは10種類以上、より好ましくは12種類以上、さらに好ましくは24種類以上の生体分子を用いることが好ましい。上限は特に限定されないが、通常96種類程度である。複数の物質を固定化するためにはアレイ状に物質を固定化するのが好ましい。それにより、それぞれの固定化部位にて相互作用を解析することが可能となる。
【0058】
生体分子(A)の種類は特に限定されず、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖などを用いることができる。中でも安定であることと、多くの種類を容易に確保し得るという点で、核酸が好ましい。
【0059】
本発明によって固定化された生体分子(A)はモビリティに優れ、非特異的吸着を抑制する効果を有するため、生体分子(B)又はその集合体との相互作用を適切な状態で測定することができる。
【0060】
生体分子(B)の種類も特に限定されず、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖など挙げられる。またタンパク質の二量体など、生体分子(B)の集合体も用いることができる。
【0061】
本発明は、特に転写因子等の複雑な構造を有するタンパク質の測定に、特に適している。なぜならば、転写因子はb−zipやzincフィンガーに見られるように立体的に特殊な構造を取るものが多く、結合する対象の核酸分子のモビリティが不十分だと、転写因子が容易に接近できない。また、転写因子は表面への非特異的吸着量が顕著に高いため、非特異的吸着を抑制しないと解析は不可能である。本発明においては固定化分子のモビリティを確保し、非特異的吸着を抑制できるため、転写因子等の特殊な構造をとる生体分子の相互作用評価の解析にも好適に用いることができる。
【0062】
転写因子の種類も特に限定されず、例えば、NF1ファミリー、Mafファミリー、GATAファミリーなどが適用できる。特にMafファミリーは、ホモ二量体だけではなく、ヘテロ二量体を形成することが知られている。本発明においては、このような生体分子の集合体の相互作用も適切に解析することができ、本発明の方法を用いることによって、様々なヘテロ二量体の組み合わせによる結合挙動の違いを評価するなどの、非常に意義深い測定を行うことが可能になる。
【0063】
本発明で測定可能な相互作用としては、例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、核酸−タンパク質相互作用、核酸−核酸相互作用、タンパク質−ペプチド相互作用、タンパク質−糖鎖相互作用、抗原−抗体相互作用などが挙げられる。
【0064】
測定方法
固定化された生体分子(A)と、生体分子(B)又はその集合体との相互作用の測定方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いることが好ましい。さらに、SPR法の中では、SPRイメージング法が特に好ましい。
【0065】
SPR法はラベルフリーかつリアルタイムな測定が可能な測定法である。従って、生体分子(A)又は(B)の少なくとも一方がタンパク質である場合に、特に好適である。なぜなら、タンパク質はラベル操作によって、構造が変化したり、活性を失う可能性があるが、SPR法は生体分子を標識化(ラベル)する必要のない相互作用解析方法であるため、生体分子の機能や活性を維持したまま適切な測定を行うことが可能である。また該方法により、リアルタイムな測定が可能であり、平衡状態だけではなく、結合と解離の速度を解析することが可能となるため、これらの結果から生体分子の機能を知るための貴重な情報を得ることができる。
【0066】
また、SPRイメージング法はアレイ全体に偏光平行光を照射し、その反射光をCCDカメラで撮影する方法であって、アレイのある地点における表面プラズモン共鳴角変位を反射光強度の変化によって知ることが可能である。よって、複数の配列を固定化した二本鎖オリゴヌクレオチドアレイと生体分子の相互作用解析をラベルフリーかつリアルタイムに測定することが可能であり、特に複数の生体分子を固定化したアレイを用いた生体分子相互作用の解析に好適に用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1
厚さ1mm、18mm×18mmのSF10製透明ガラス基板上にクロム3nmを蒸着した後、金を45nm蒸着した。蒸着の厚みは水晶発振子にてモニターした。金が表面に蒸着された基板を8−Amino−1−Octanethiol, Hydrochrolide(8−AOT,同仁化学研究所製)の1mMエタノール溶液に16時間浸漬し、8−AOTの自己組織化表面を形成させた。分子量3,400の末端にスクシンイミド(NHS)基とマレイミド(MAL)基を有するヘテロ二官能型ポリエチレングリコール(NHS−PEG−MAL,Sheawater Polymers社製)をリン酸緩衝液(20mM リン酸、150mM NaCl、pH7.2)に10mg/mlで溶解し、金表面の8−AOTに2時間反応させた。8−AOTのアミノ基とNHS−PEG−MALのNHS基が反応し、MAL基は未反応のまま残るため、PEGを介してマレイミド基を表面に導入することができた。
【0069】
得られた表面にGreiner bio−one社のHand spotterを用いて5’チオール末端のDNAの二種類をハイブリダーゼーションさせてからスポッティングした。DNAの配列はMaf 認識配列(MARE25)と、Maf非認識配列(MARE23)であり、詳細な配列は図1に示す。5’チオール末端からチミン15塩基スペーサーを介した後、目的の配列が入るように設計されている。
【0070】
X5SSC溶液(75mMクエン酸ナトリウム、750mM NaCl、pH7.0)に5’チオール末端DNAが25μM、その相補的DNAを100μMになるように溶液を調製し、沸騰浴中にて5分、0℃に急冷し15分、その後37℃で三時間インキュベートし、DNAをハイブリダイゼーションさせた。ハイブリダイゼーションした二本鎖DNA(dsDNA)をスポッティングし、15時間反応させてdsDNAを表面に固定化した。
【0071】
dsDNAを固定化した表面をリン酸緩衝液で洗浄した後、SPRイメージング機器(SPRImager:GWC Instruments社製)にセットし、10mM Hepes、300mM NaCl、4mM MgCl2、1mM EDTA、100μg/ml 牛血清アルブミン、pH7.9の転写因子測定用緩衝液をフローセル内に流した。
【0072】
SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、転写因子MafGのホモ二量体を1μg/mlの濃度で上記転写因子測定用緩衝液に溶解してセル内に10分間100μl/minの速度で注入し、さらに転写因子を含まない緩衝液を流し、結合と解離のSPRシグナルの変化を観察した。
【0073】
観察はMARE25とMARE23の固定化部位と何もDNAが固定化されていない部分(バックグラウンド部位)の三点で実施した。SPRシグナルの変化を示すグラフを図3に示す。MARE25配列のみにMafGホモ二量体が結合し、MARE23、バックグラウンド部位にはほとんど結合しないのが観察でき、結合速度定数2.22×105(M-1s-1)、解離速度定数8.80×10-4(s-1)、結合平衡定数2.52×108(M-1)を得た。
【0074】
MafGホモ二量体をセル内に注入する前に撮影した画像と、注入して10分後に撮影した画像を撮影し、両者の差を画像処理ソフトNIH Imageで演算処理を行った。その結果を図4に示す。MARE25配列のみにMafGが結合していることが明らかである。
【0075】
比較例1
実施例と同様に、金蒸着透明基板上に8−AOTの自己組織化表面を形成させ、スクシンイミド(NHS)基とマレイミド(MAL)基を有するヘテロ二官能型架橋剤Sulfo−SMCC( Sulfosuccinimidyl 4[N−maleimidomethyl]−cyclohexane−1−carboxylate)(Pierce社製)を1mMの濃度でリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、8−AOTに反応させた。Sulfo−SMCCは分子量436.37の低分子物質であり、繰り返し単位を有さない。
【0076】
実施例1と同様の方法で、5’末端にチオールを有するMARE25とMARE23配列をdsDNAとした上で表面に固定化し、SPRイメージング測定を行った。
【0077】
実施例1と同様にMafGホモ二量体の相互作用を観察したが、MARE25、MARE23、バックグラウンド部位のすべてに非特異的に吸着し、転写因子MafGの特異性は観察できなかった(図5)。
【0078】
【発明の効果】
本発明により、モビリティと活性・機能を保ったまま生体分子を固体表面に固定化することが可能になり、本発明の方法を用いることにより、生体分子もしくは生体分子集合体と生体分子との相互作用キネティクス(Kinetics)の厳密かつ適切な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、MARE25の塩基配列を示す図面である。
【図2】 図2は、MARE23の塩基配列を示す図面である。
【図3】 図3は、MafGホモ二量体の結合解離曲線(実施例)を示す図面である。
【図4】 図4は、MafGホモ二量体結合前後の画像の差(実施例)を示す図面である。
【図5】 図5は、MafGホモ二量体の結合解離曲線(比較例)を示す図面である。
Claims (11)
- 架橋剤として分子量が1,000以上20,000以下であり、かつ一般式X−R−Yで表されるヘテロ二官能型親水性高分子(ここでXはアミノ基もしくはスクシンイミド基を表す。Yはカルボキシル基もしくはマレイミド基を表す。Rは高分子の繰り返し単位を表す。)を用いて金薄層を表面に有する基板である固体表面上に生体分子(A)を固定化した基板を用いて、生体分子(A)と生体分子(B)又はその集合体との相互作用を表面プラズモン共鳴法又は表面プラズモン共鳴イメージング法を用いて測定する工程を有することを特徴とする生体分子相互作用測定方法。
- ヘテロ二官能型親水性高分子のRが、下記繰り返し単位
−(−O−R1−)n−
(ここで、R1は、炭素数が2−5のアルキレン基を表す。nは4〜450。)
で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。 - ヘテロ二官能型親水性高分子の官能基Xがスクシンイミド基、及びYがマレイミド基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 固体表面が平面基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 固体表面が、一般式X’−R’−Y’で表される化合物(ここでX’は金薄層と反応する官能基を表す。Y’はアミノ基、カルボキシル基及びN−ヒドロキシスクシンイミド基から選ばれるヘテロ二官能型親水性高分子と結合する官能基を表す。R’は有機基を表す)を用いて金薄層表面に官能基を導入した固体表面であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 一般式X’−R’−Y’で表される化合物が、8−アミノ−1−オクタンチオール(8−Amino−1−Octanethiol)又は7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール(7−Carboxy−1−Heptanethiol)であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 生体分子(A)を固定化した基板が、複数の種類の生体分子(A)をアレイ状に固定化した基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 生体分子(A)を固定化した基板が、10種類以上の生体分子(A)を固定化した基板であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 生体分子(A)が核酸であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 生体分子(B)がタンパク質であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- タンパク質が転写因子であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
Priority Applications (3)
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---|---|---|---|
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