JP4189193B2 - 非対称有機アニオンの金属塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン性液体として有用な有機オニウム塩の原料となる非対称有機アニオンの金属塩を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム一次電池、リチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、エレクトロクロミック表示素子、色素増感型太陽電池などの電気化学デバイスにおける電解質として、使用温度で液体であるために溶媒に溶解させる必要のない電解質であるイオン性液体を応用することが提案されている。該イオン性液体としては、常温溶融塩とも呼ばれる比較的融点の低い特定のオニウム塩が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。そして、本発明者らは、これらオニウム塩のなかでも下記式
{R−C(=O)−}{R−S(=O)2−}N−・Z+
(式中、Rは、互いに異なっていてもよい置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、Z+は有機オニウム塩である。)
で示されるオニウム塩は、そのアニオンが非対称な官能基を有するという構造的特徴に起因して融点が低いばかりでなくイオン伝導性が高いということを見出し、既に提案している(特願2001−231262号)。
【0003】
ところで、このようなオニウム塩は、一般にオニウム塩のカチオン種のハロゲン塩(カチオンハロゲン化物ともいう)と、当該オニウム塩のアニオン種の金属塩(アニオン金属塩ともいう)とを反応させることにより得ることができることが知られているが、これらオニウム塩は不揮発性で融点も低いため、晶析法や蒸留法といった通常の精製方法を用いて精製することは一般に困難である(非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−259543号公報
【特許文献2】
特表2001−517205号公報
【非特許文献1】
野田明弘、渡邊正義,「イオン性液体中のイオン輸送現象」,電気化学および工業物理化学,2002年,第70巻,第2号,p.140−144,p.141
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の様なオニウム塩を電気化学デバイスにおける電解質として使用する際には、微量の不純物がデバイス性能に影響を与えるため、不純物量を極力低減させる必要があるが、上記した理由により高純度のオニウム塩を得るためには、原料として高純度のカチオンハロゲン化物と高純度のアニオン金属塩とを反応させる必要がある。
【0006】
ところが、前記した非対称有機アニオンを有するオニウム塩に関しては、その原料となる非対称有機アニオンの金属塩を高純度で得ることは困難であった。例えば、非対称有機アニオンを有するオニウム塩であるテトラエチルアンモニウム2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミドの原料となる2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド金属塩は、トリフルオロメタンスルフォンアミドカリウム塩と無水トリフルオロ酢酸とをジエチルエーテル中で反応さることにより得ることができるが、この方法では、反応中に生成した目的物が一気に析出してしまい、攪拌が困難になるばかりでなく、得られた結晶には副生物であるトリフルオロ酢酸カリウム塩が混入してしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、高純度の非対称有機アニオンの金属塩を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果前記式で示されるオニウム塩の内、スルホニル基に結合するRがフルオロアルキル基であるものについては、その原料となるアニオン金属塩を高純度で効率よく製造する方法を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(I)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1はフルオロアルキル基であり、Mは一価の陽イオンとなり得る金属元素である。)
で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び下記一般式(II)
(R2CO)2O (II)
(式中、R2は、一価の有機残基である。)
で示される酸無水物を溶媒中で混合して反応させて下記一般式(III)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1はフルオロアルキル基であり、R2は一価の有機残基であり、Mは一価の陽イオンとなり得る金属元素である。)
で示される非対称有機アニオンの金属塩を製造する方法であって、前記溶媒として比誘電率が2〜40の溶媒を用い、且つ反応液中の該非対称アニオン金属塩の濃度をその飽和溶解度の6倍以下に維持しながら反応を行うことを特徴とする上記非対称有機アニオンの金属塩の製造方法である。
【0014】
本発明の製造方法の目的物である非対称アニオンの金属塩は、そのアニオンの非対称性に起因してその溶液は高度な過飽和状態になり得るため、例えば溶媒に原料を連続的に添加して反応を行った場合には反応液中の濃度制御を特に行わないと、何らかのきっかけにより反応液から目的物の結晶が一気に析出してしまい、反応溶液中に溶解している金属及び副生する酸に由来する金属塩が上記結晶中に取り込まれて析出する結晶の純度が低下したり、反応収率が低下したりする。これに対し、反応中における目的物の濃度管理を行う本発明の製造方法では、このような不純物の取り込みを起こすことなく高純度の目的物を析出させることができる。また、本発明の製造方法では反応中に結晶析出が一気に起こって急に攪拌不能になることがないため、安定して最後まで反応を行うことができ、反応収率も高くなる。
【0015】
さらに、上記本発明の製造方法によれば、例えば反応中に生成物の種結晶を添加して攪拌する等の方法により結晶を析出させながら反応を行って反応液中の生成物濃度を上記範囲内にコントロールすることもでき、この場合には反応終了後に反応液を濾過するといった非常に簡便な方法で高純度の目的物を分離することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明では原料として前記一般式(I)で示されるフルオロアルキルスルフォンアミドを使用する。前記一般式(I)において、R1はフルオロアルキル基である。フルオロアルキル基は、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されているものであれば特に制限されない。このようなフルオロアルキル基を具体的に例示すると、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロイソブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基等のフルオロアルキル基類、ペンタフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のフルオロアリール基類、ヘプタフルオロベンジル基、1,1−ジフルオロベンジル基等のフルオロアラルキル基等を挙げることができる。これらの中でも、耐酸化性が高いという理由から、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基、炭素数7〜9のパーフルオロアラルキル基であるのが特に好適である。
【0017】
また、前記一般式(I)においてMは一価の陽イオンとなり得る金属元素である。このような金属元素を具体的に例示すると、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、銀等の遷移金属類等を挙げることができる。中でも、カリウム塩は、原料であるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び本発明の目的物である非対称アニオン金属塩の結晶性が高いため扱いやすいのみでなく、非対称アニオン金属塩の吸湿性が低いため、特に好適に用いられる。
【0018】
本発明に於いて好適に用いられるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩を、具体的に例示すると、トリフルオロメタンスルフォンアミドリチウム塩、トリフルオロメタンスルフォンアミドナトリウム塩、トリフルオロメタンスルフォンアミドカリウム塩、ペンタフルオロメタンスルフォンアミドカリウム塩等を挙げることができる。
【0019】
本発明の製造方法で使用するもう一方の原料物質である酸無水物は、前記一般式(II)で示される構造を有する。該一般式(II)において、R2は、一価の有機残基、好適には炭素原子及び水素原子のみで構成される一価の炭化水素基又は該炭化水素基における水素原子がハロゲン原子等の置換基で置換された一価の置換炭化水素基を意味する。R2はこの条件を満足する基であれば特に制限されるものではないが、耐酸化性が高いという理由からハロゲン原子、特にフッ素原子で置換された一価の炭化水素基であるのが好適である。特に好適なフッ素原子で置換された一価の炭化水素基を具体的に例示すると、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロイソブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基等のフルオロアルキル基類、ペンタフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のフルオロアリール基類、ヘプタフルオロベンジル基、1,1−ジフルオロベンジル基等のフルオロアラルキル基等を挙げることができる。これらの中でも、得られる非対称アニオンの金属塩を用いて得られるオニウム塩のイオン伝導度が高いという理由から、R2は、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基、炭素数7〜9のパーフルオロアラルキル基であるのが最も好適である。
【0020】
前記一般式(II)で示される酸無水物の使用量は特に限定されないが、反応効率及び生成物の分離の容易さの観点から前記一般式(I)で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩1モルに対して0.8〜20モル、特に0.9〜5モル使用するのが好適である。
【0021】
本発明の製造方法では、前記一般式(I)で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩と前記一般式(II)で示される酸無水物とを溶媒中で混合して反応させることにより前記一般式(III)で示される非対称有機アニオンの金属塩を製造するが、このとき溶媒として比誘電率が2〜40の溶媒を用いる必要がある。溶媒として比誘電率が2未満の溶媒を用いた場合には反応は進行し難く、また比誘電率が40を超える溶媒を用いた場合には反応は進行するものの、目的物の収率が低くなり好ましくない。
【0022】
本発明において好適に使用できる比誘電率が2〜40の溶媒を具体的に例示すると、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類;tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール等のアルコール類等を挙げることができる。これらの中でも、副反応が少ないという理由から、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒であるエーテル類を用いるのが特に好適である。なお、これらの溶媒は、単一で用いても、混合して比誘電率が2〜40となるような混合溶媒として用いても一向に差し支えない。また、反応原料として用いる上記一般式(II)で示される酸無水物が反応温度において液状を示し、比誘電率が2〜40の範囲内であるならば、酸無水物を溶媒と兼用してもよい。
【0023】
これら溶媒の使用量は特に限定されないが、少なすぎると反応後期において副生する酸の濃度が高くなりすぎて収率が低下し、多すぎると反応時間が長くなってしまうため、生成する非対称アニオン金属塩100重量部に対して1〜10000重量部の範囲で用いるのが好適である。更に、反応温度制御の容易さ及び収率の高さの観点から、10〜5000重量部の範囲で用いるのが特に好適である。
【0024】
本発明の製造方法においては、上記溶媒中で反応を行うに際し、反応液中の該非対称アニオン金属塩濃度を飽和溶解度の6倍の以下に維持しながら反応を行うことが重要である。生成した目的物の濃度を上記のような範囲に維持することにより、効率的に反応が進行すると共に、反応中に生成物が一気に析出し、析出物中に不純物が混入(取り込み)するのを防止することが可能になる。なお、本発明においては反応の効率性の観点から、前記式(I)で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び前記式(II)で示される酸無水物を、それぞれ、これらを反応させたときに得られる前記式(III)で示される非対称アニオン金属塩の全量が反応開始時の反応液中の濃度に換算して該非対称アニオン金属塩の飽和溶解度以上となる量(上記全量を反応開始時の溶媒量で除した値が飽和溶解度以上となる量)使用し、反応を開始してから終了するまでの任意の期間における反応液中の該非対称アニオン金属塩の濃度を該非対称アニオン金属塩の飽和溶解度以上にすることをが好ましい。例えば、溶媒中に原料を連続的或いは断続的に供給しながら、又は上記したような量の原料を一度に供給して反応を行い、反応液中の生成物濃度を経時的に高めてゆき、生成物の濃度が飽和溶解度に達した以降はその濃度が飽和溶解度の6倍以下となるように濃度制御するのが好ましい。このような場合において、不純物の混入をより確実に防止できるという理由から、反応中の目的物の濃度は飽和溶解度の1〜3倍に維持するのが特に好適である。
【0025】
本発明の製造方法において反応液中の目的物濃度を飽和溶解度の1〜6倍、好ましくは1〜3倍に維持する方法は特に限定されず、(i)目的物の飽和溶解度から逆算して反応に使用する溶媒と原料物質の量比を決定する方法、(ii)反応中に溶媒を追加する方法、及び(iii)生成した目的物を析出させながら反応を行う方法等が採用できる。これら方法の中でも一度の反応で多量の目的物を得ることができ、しかも濾別という簡便な方法で目的物を分離することができるという理由から上記(iii)の方法を採用するのが好適である。上記(iii)の方法において、目的物を析出させながら反応を行うためには、ガスクロマトグラフィー等により目的物濃度を追跡しながら目的物の濃度が所定の範囲を超えないように反応中に目的物の種晶(種結晶)を添加して目的物の結晶化を促進したり(このとき攪拌を行うのが好適である)、或いは攪拌速度を上げたりして目的物の結晶化を促進すればよい。このとき攪拌速度は、反応器や攪拌翼の形状によっても異なるため、使用する装置や反応系ごとに予め予備的な実験を行って決定しておくのが好ましいが、目安として反応器として丸底フラスコを用い、攪拌翼として半月状のものを使用した場合には、攪拌翼の先端速度が0.5m/min以上、特に1m/min以上となるように攪拌を行うことにより、目的物の濃度をある範囲内に保ちながら連続的に目的物の析出を行うことができる。
【0026】
本発明の製造方法において、反応温度は特に制限されるものではなく、系の凝固点〜系の沸点の間の温度を選択すればよいが、低すぎると反応時間が長くなってしまい、高すぎると原料及び生成物の分解が起こってしまうため、−20℃〜100℃の範囲で行うのが好適である。反応温度は結晶化を促進するために反応途中で変化させてもよい。また、反応時間は原料であるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び酸無水物の反応性を勘案して適宜決定すればよいが、一般的には0.5〜50時間の範囲である。また、反応は常圧、加圧、減圧の条件で行うことができる。
【0027】
このようにして反応を行う事により、高い収率で目的とする非対称アニオンの金属塩を得ることができる。得られた非対称アニオンの金属塩は、上記(iii)の方法を採用した場合には結晶として析出しているので、この結晶を分離することにより、目的の非対称アニオン金属塩を簡便かつ高純度で得ることができる。分離する方法は公知の方法を制限なく用いることができるが、例を挙げて説明すると、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過、自然濾過等の濾過法、遠心沈降等のデカンテーション法等を好適に用いることができる。また、前記(i)及び(ii)の方法を採用した場合には目的物は反応溶液に溶解しているので、反応終了後に反応液を冷却したり或いは種晶を添加したりして目的物を析出させ、上記したのと同様の方法により分離すればよい。このようにして得られた非対称アニオンの金属塩は、洗浄、再結晶、乾燥等の操作を行うことによりさらに純度を上げることも可能である。
【0028】
このようにして得られた高純度の非対称アニオンの金属塩は前記したような新規なオニウム塩の原料として好適に使用することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
温度計、滴下漏斗、幅4cmの半月型攪拌翼及び窒素風船を装着した1000ml三口フラスコにトルフルオロメタンスルホンアミドカリウム塩87.15g(0.4656mol)を入れ、脱水ジエチルエーテル(比誘電率4.2)250mlを加えてスラリーとした。このスラリーを回転数5rpm(攪拌翼先端速度0.6m/min)で攪拌しながら0℃に冷却した後、無水トリフルオロ酢酸97.80g(0.4656mol)と脱水ジエチルエーテル250mlの混合液を滴下した。得られた溶液を0℃で反応させながら、溶液をガスクロマトグラフィーで分析し、反応転化率が10%を越えた時点{2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド カリウム塩濃度は飽和溶解度の1.7倍であった}で目的物の種結晶0.1gを添加した。種結晶添加後は、反応進行に従い結晶が析出して問題なく攪拌可能であった。なお、反応中における反応液中の目的物の濃度は飽和溶解度の1〜2倍の範囲であった。
【0031】
このようにして無水トリフルオロ酢酸添加後0℃で2時間攪拌した後、室温で4時間反応させた。次いで、得られたスラリーを濾過し、ジエチルエーテル100mlで洗浄して結晶を取り出した。この結晶を減圧下乾燥して白色粉体の2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド カリウム塩122.76g(収率93.1%)を得た。得られた塩について1H−NMR分析及び19F−NMR分析を行ったところ、1H−NMRではピークは見られず、19F−NMRでは−76.69ppm、−80.24ppmの2本のシングレットピークが確認された。また、−75.60ppmに現れているトリフルオロ酢酸カリウム塩のピーク面積と−76.69ppmに現れている2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミドカリウム塩のトリフルオロアセチル基由来のピーク面積とに基づいて求めた目的物の純度は99.1mol%であった。
【0032】
比較例1
反応中に種結晶を添加しなかった事以外実施例1と同じ操作を行った所、反応の進行に伴い原料であるトルフルオロメタンスルホンアミドカリウム塩の結晶が消失し、無色透明な均一溶液となった。この溶液を実施例1と同様に室温に温度を上げたところ、反応転化率が40%を超えたところ{2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド カリウム塩濃度は飽和溶解度の7倍であった}で結晶が一気に析出し、攪拌困難となった。攪拌翼の回転動力、回転速度を上げて無理に攪拌を行い、得られたスラリーを実施例1と同様に処理したところ、白色結晶74.50g(収率56.5%)を得た。19F−NMRで分析した目的物の純度は59.4mol%であった。
【0033】
実施例2
種結晶の添加をしないかわりに攪拌の回転数を50rpm(攪拌翼先端速度6m/min)にして実施例1と同様に反応を行った所、反応転化率が25%を超えたところ{2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド カリウム塩濃度は飽和溶解度の4.3倍であった}で結晶が析出しはじめ、反応進行に伴って結晶量が増加した。なお、反応中における反応液中の目的物の濃度は飽和溶解度の1〜5倍の範囲であった。このスラリーを実施例1と同様に反応、処理したところ、白色結晶12.23g(収率92.7%)を得た。19F−NMRで分析した目的物の純度は99.0mol%であった。
【0034】
実施例3
原料としてトルフルオロメタンスルホンアミドカリウム塩の代わりにトルフルオロメタンスルホンアミドナトリウム塩を用い、2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミド ナトリウム塩を得た以外は実施例1と同様に操作したところ、収率は88.8%、19F−NMRで分析した目的物の純度は97.5mol%であった。なお、反応中における反応液中の目的物の濃度は飽和溶解度の1〜3倍の範囲であった。
【0035】
実施例4〜5
攪拌速度を表1に示す速度に変えた以外、実施例2と同様に操作したところ、表1に示す反応転化率で結晶化が起こった。この反応液を実施例2と同様に操作した結果を表1に示す。なお、いずれの場合も反応中における反応液中の目的物の濃度は飽和溶解度の1〜6倍の範囲であった。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、融点が低くイオン伝導性が高いという性質を有するためにイオン性液体として好適に使用できるオニウム塩の原料となる非対称有機アニオンの金属塩を、高純度でしかも簡便且つ効率的に製造することができる。
Claims (3)
- 下記式(I)
で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び下記式(II)
(R2CO)2O (II)
(式中、R2は、一価の有機残基である。)
で示される酸無水物を溶媒中で混合して反応させて下記式(III)
で示される非対称有機アニオンの金属塩を製造する方法であって、前記溶媒として比誘電率が2〜40の溶媒を用い、且つ反応液中の該非対称アニオン金属塩の濃度をその飽和溶解度の6倍以下に維持しながら反応を行うことを特徴とする上記非対称有機アニオンの金属塩の製造方法。 - 前記式(I)で示されるフルオロアルキルスルフォンアミド金属塩及び前記式(II)で示される酸無水物を、それぞれ、これらを反応させたときに得られる前記式(III)で示される非対称アニオン金属塩の全量が反応開始時の反応液中の濃度に換算して該非対称アニオン金属塩の飽和溶解度以上となる量使用し、反応を開始してから終了するまでの任意の期間における反応液中の該非対称アニオン金属塩の濃度を該非対称アニオン金属塩の飽和溶解度以上にすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記非対称有機アニオンの金属塩を析出させながら反応を行うことにより反応を開始してから終了するまでの任意の期間における反応液中の該非対称有機アニオンの金属塩の濃度を飽和溶解度の1〜6倍に維持することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
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