JP4188773B2 - 真空処理装置および真空処理装置のクリーニング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧された真空容器内に存在する不要物を除去することができる真空処理装置、および、減圧された真空容器内に存在する不要物を除去するためのクリーニング方法に関する。真空容器としては、半導体のプラズマ処理装置や電子線描画装置および電子顕微鏡等の検査装置を含む。真空容器内の不要物としては、プラズマ処理の過程で発生する反応生成物や余剰の成膜材料、検査時に電子線を被検査体に照射したときに発生する分解、脱離物がある。
【0002】
【従来の技術】
プラズマ処理装置では、CVD処理やエッチング処理を連続的に行うにしたがって真空容器内部に成膜物や反応生成物が堆積すると、被ウエハ上に混入するパーティクル数が増加し不良製品の原因となったり、処理速度や処理の均一性が変動する問題が発生する。そこで、パーティクルが問題となる前に連続処理を中断し真空容器内部を手作業で掃除したり、反応性ガスを用いたプラズマ放電を行い真空容器内の堆積物を化学反応により除去しクリーニングを行っていた。
【0003】
プラズマ放電によるクリーニングは、自動化が可能で低コストであり、真空容器を大気開放しないので短時間で行うことができ生産効率が良いクリーニング方法である。しかし、プラズマ放電では真空容器内部の堆積物を一様に除去することは困難であり、一般的には、比較的に密度の高いプラズマの近い領域はクリーニングが短時間で完了し、低密度プラズマの近くでは遅くなる。そのため、真空容器の場所によって過剰なクリーニングによって容器壁材が損傷を受けて壁材料が不純物として処理中に混入したり、クリーニングが不十分な個所では堆積物が完全に除去できないために異物発生を早めてしまう。
【0004】
そこで、クリーニングを均一に行うための工夫が提案されている。例えばプラズマCVD装置では、プラズマ源は2個の電磁コイルを用いた電子サイクロトロン共鳴で、プラズマ生成室にNF3ガスを導入しプラズマを発生させて装置内をクリーニングする。このとき、ガス圧や磁場形状もしくは磁場強度との組合せでプラズマの分布や密度を変更することで、反応生成物除去場所を変化させ反応室内部を一様にクリーニングすることが試みられている(例えば、引用文献1参照)。
【0005】
また、プラズマ処理装置のチャンバの外側に置かれた複数の磁場コイルの電流を逆転しカスプ磁場構造として磁場を変化させることでチャンバ内壁の効率的なクリーニング行う方式がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、電子顕微鏡のクリーニングに関しては、電子線装置の真空容器にプラズマ発生機構を設けて活性化学種を発生させ真空容器内の汚れを化学的に除去することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−318579号公報
【特許文献2】
特開2002−110565号公報
【特許文献3】
特開平8−288247号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えばプラズマ処理装置の上記従来技術では、単にプラズマの発生状態を変化させただけではプラズマ温度、密度の高い部分と低い部分では接触する壁のクリーニング速度に差が生じてしまう。実際の真空容器内部は、凹凸部や複雑な部品で構成されており一様なクリーニングを困難にしており問題であった。
【0009】
また、真空容器内の構成部品の材質、例えば石英等の真空窓や金属製の壁材ではプラズマからのイオン照射に違いが生じクリーニング効果に差異が生まれる。この理由は、電気的に絶縁性材質の場合には、プラズマからの電子、又はイオンの流入によって表面に電荷が溜まり、所謂チャージアップ現象によりイオン、電子の流入が抑制され一般にはクリーニング効率が悪化する。したがって、絶縁材表面の汚れは取り残される傾向にある。
【0010】
電子線装置の場合には、真空容器内部の構造は複雑で精密あり、材質的にも多様な部品で構成されている。そのため、活性種による化学反応を利用したクリーニングでは短時間での一様なクリーニング効果は期待できない。
【0011】
本発明の目的は、真空処理装置において、真空容器内を一様に効率良くクリーニングすることができる構造を有する真空処理装置を提供すること、および、該真空処理装置において、真空容器内を一様に効率良くクリーニングする真空処理装置のクリーニング方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の真空処理装置は、減圧された真空容器を有し、該真空容器内に試料を収容し処理または操作(搬送等も含む)する真空処理装置において、少なくとも2個以上の磁場発生手段と、前記真空容器内に配置した2次電子放出電極と、該2次電子放出電極に高周波電力を印加する高周波電源とを備えた。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の真空処理装置のクリーニング方法は、減圧された真空容器と前記真空容器の外側には少なくとも2個以上の磁場発生手段と、該磁場発生手段の各々の磁場強度を独立に制御できる手段と、前記真空容器内において高周波を印加可能な電極を有し、該電極の少なくとも真空側の面を誘電体またはシリコン化合物で覆い、前記電極に少なくとも1W以上の高周波電力を印加し磁場発生手段の磁場の磁場形状または磁場強度を制御して前記電極から発生される2次電子の照射位置を制御し前記真空容器内部をクリーニングするようにした。
【0014】
また、本発明の真空処理装置のクリーニング方法は、上記クリーニング方法において、前記磁場発生手段が2個以上の電磁コイルで構成され、該電磁コイルの各々に流れる電流を変化させることで磁場形状または磁場強度を調整し2次電子の照射位置を制御するようにした。
【0015】
さらに、本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記磁場発生手段は永久磁石からなり、該永久磁石の位置を変化することで磁場形状または磁場強度を調整し2次電子照射位置を制御するようにした。
【0016】
また、本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記電極に替えてウエハ処理装置のウエハ保持電極に高周波を印加し前記磁場制御手段によって2次電子照射位置を制御し前記真空容器内部をクリーニングするようにした。
【0017】
さらに、本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記ウエハ保持電極と2次電子照射する前記真空容器上面の距離を50mmから180mmとした。
【0018】
さらに、本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記磁場発生手段の前記制御手段によりクリーニング個所を連続的に変化するようにした。加えて、本発明は、上記クリーニング方法において、前記高周波の周波数は100kHz以上で100MHz以下とした。
【0019】
本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記磁場発生手段に替えてプラズマ処理装置のプラズマ発生用の電磁コイルまたは永久磁石を用いた。さらに、上記クリーニング方法は、プラズマ処理装置または電子線描画装置または電子顕微鏡もしくはウエハ搬送装置に適用される。
【0020】
さらに、本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、前記電極に高周波を印加してクリーニングを行う場合に反応性ガスまたは酸素ガスあるいはあるいはアルゴン等の不活性ガスを前記真空容器内に流すようにした。
【0021】
本発明は、上記真空処理装置のクリーニング方法において、被クリーニング物質の元素を含む物質の発光信号情報または質量分析器等の前記被エッチング物質の残量を示す計測信号を処理して前記磁場発生手段を制御するようにした。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を、図1を用いて説明する。図1に示した実施例は、本発明にかかる真空処理装置のクリーニング方法を、誘導結合方式のプラズマエッチング装置に適用した場合を示す。図1のプラズマエッチング装置は、下部容器11および上部容器として働く誘電体真空壁12からなる反応室(真空容器)1と、排気口13と、反応室1内に配置された、静電吸着膜141を有するウエハ保持電極14、およびクリーニング用RF電極(2次電子放出電極)15、ならびにクリーニング用RF電極15の表面を覆う誘電体板16と、誘電体真空壁12の外側に設けたRFコイル21と、プラズマ生成用RF電源31およびプラズマ生成用RF整合器32からなるプラズマ生成用電源3と、プロセス制御用RF電源41およびプロセス制御用RF整合器42ならびにウエハ保持用直流電源43からなるウエハ保持電極用電源4と、クリーニング用RF電源51およびクリーニング用RF整合器52からなるクリーニング用電源5と、第1の磁場発生コイル22−1と、第2の磁場発生コイル22−2と、第1のクリーニング磁場用直流電源61−1および第2のクリーニング磁場用直流電源61−2ならびに電源制御装置62からなるクリーニング磁場用電源6と、分光データ処理装置71と、分光検出器72とを有して構成される。ウエハ保持電極14上には静電吸着膜141によって被処理ウエハ(試料)81が吸着される。反応室1内には、プラズマ85が生成される。
【0023】
反応室1の下側は金属製の部材である下部容器11で構成されており、上側は誘電体真空壁12で構成されており、エッチング処理に用いる反応性ガスを図示を省略したガス供給源から供給しながら排気口13により真空排気する。
【0024】
被処理物であるウエハ81は、ウエハ保持電極14の上面に設けてある静電吸着膜141の上に載置する。静電吸着膜141は内部に図示を省略した静電吸着電極を有している。ウエハ保持電極14の静電吸着電極にウエハ保持用直流電源43から数100Vの直流電圧を印加することによってウエハ81を静電力で吸着できる。
【0025】
プラズマ85の発生は、誘電体真空壁12の外側に設けたRFコイル21にRF電源31からの出力である高周波電力をRF整合器32を介して印加することで、RFコイル21がプラズマ85に誘導電磁界を誘起して電子加速、電離によりプラズマが生成、維持される。プラズマ生成用RF電源31は、周波数が13.56MHzから450MHzであり、出力電力が4kW以下である。
【0026】
エッチング処理の制御のためにウエハ保持電極14にはプロセス制御用RF電源41がプロセス制御用RF整合器42を介して接続されている。このプラズマ制御用RF電源41は、周波数が0.4MHzから20MHzで出力電力は5kW以下である。
【0027】
エッチング処理に用いる反応性ガスは、被処理物質によって多種多様であり、塩素、酸素、HBr、BCl3、CF4等がある。一般的なシリコン化合物のエッチングの場合には、例えば塩素ガスが用いられるが、その場合には反応性生物としてシリコンと塩素との化合物が反応室1の内壁に堆積する。
【0028】
そのため、一定枚数の処理毎にシリコン系の堆積物を除去すべくクリーニング放電が行われる。例えば、シリコン化合物を除去する場合には、SF6、NF3等のフッ素系ガスを用いてクリーニング放電することによて、これらのフッ素系ガスが反応室の内壁などに堆積したシリコン化合物と反応してSiF4となり気化して、排気口13から排気される。
【0029】
しかし、通常のクリーニング放電だけでは、プラズマ85の主たる生成場所はRFコイル21の近傍であり、そのためRFコイル21近くのプラズマ密度あるいは電子温度が高くなるとともに導入ガスの解離も活発になって活性化学種密度も高くなり、クリーニング速度は高くなる。一方、ウエハ保持電極14の側面から下方の領域では、プラズマ生成領域からの距離も長くなりプラズマ密度も活性化学種密度も低くクリーニング効率は低い。また、クリーニングされる部分の材質によってもクリーニング速度に違いが生じる。
【0030】
すなわち、誘電体真空壁12のような絶縁性部分では、導電性部分に較べるとプラズマからのイオン照射がチャージアップ効果により低減されるので、クリーニング速度は遅くなる。特に、プラズマ密度の低くなる誘電体真空壁12の最外周部分の汚れは取りにくい。このように、反応室1内のプラズマ密度の高い部分とプラズマ密度の低い部分とでは、クリーニング速度が不均一になり、内壁の過剰なクリーニングまたは堆積したシリコン化合物の残留など不適切なクリーニングの発生の原因となる。
【0031】
本発明にかかるクリーニングの場合には、クリーニング用RF電源51の高周波出力をクリーニング用RF整合器52を介してクリーニング用RF電極15に印加する。クリーニング用RF電極15とプラズマ85との間には誘電体板16が取り付けてあり、クリーニング用RF電極15からプラズマへの金属元素等の不純物混入を防いでいる。
【0032】
誘電体板16の材質は、処理中に不純物とならない元素を主成分とする物質が良く、一般には石英、サファイヤ、アルミナやシリコン等がある。
【0033】
クリーニング用RF電極15の形状および設置位置に関しては、クリーニングする場所によって任意の形状、位置を選択することができる。また、クリーニング用RF電極15の設置方式も、図示のように反応室1内に設けても良く、反応室1の壁面にクリーニング用RF電極15および誘電体板16を設けてもよい。
【0034】
反応室1の外部には、磁場発生手段として、例えば、2系統のクリーニング用磁場発生コイル、すなわち第1のクリーニング用磁場発生コイル22−1とクリーニング用磁場発生コイル22−2が設けられ、第1のクリーニング用磁場発生コイル22−1と第2のクリーニング用磁場発生コイル22−2の発生する磁場は、第1のクリーニング磁場用直流電源61−1、第2のクリーニング磁場用直流電源61−2の電流出力を電源制御装置62により制御することで必要な形状や強度のクリーング用磁場を形成することが可能となる。
【0035】
必要とする磁場の形状および強度によっては、クリーニング用磁場発生コイルの個数および設置位置を任意変更することができ、また、磁場形状の制御に有効な磁性体や永久磁石を利用することも可能である。磁場形成手段として永久磁石を用いる場合には、磁石の位置を制御して、形成されるクリーニング用磁場の形状や強度を制御する。
【0036】
磁場強度は、10ガウス程度以上の弱い磁場でも良く、各クリーニング用磁場生成コイルおよび直流電源出力も小型少容量でよい。
【0037】
本実施例においては、クリーニングの進行状況のモニタとクリーニングの終了確認のために、クリーニング時に発生する物質からの発光を分光検出器72を用いてモニタし、分光データ処理装置71によりクリーニングの進行状況や終了を分析することが、可能である。
【0038】
本発明にかかるクリーニングを行う場合には、クリーニング用RF電極15に高周波電力を印加する。このときのクリーニング用RF電極15近傍の電位分布を、図4を用いて説明する。図4は横軸にクリーニング用RF電極15からの距離を、縦軸に時間平均の電位を取っている。
【0039】
一般に、プラズマに接した電極に高周波を印加すると、高周波電力が流れるアース壁の面積に比較して高周波を印加する電極の面積が狭いと、図4のように直流電圧Vdcが印加電極部に発生する。直流電圧Vdcの値は数10Wの高周波電力を印加することで100V以上の負電圧になる。すると、電極方向に正イオンが加速され電極表面を叩き2次電子を放出する。このとき放出される2次電子は、数100VのVdcで加速され電極面から放出され、磁場がある場合には磁力線に沿って移動し磁力線と交差する壁面の堆積物を数100eVのエネルギーで照射し、堆積物を分解して、化学反応を促進しクリーニングする。
【0040】
また、壁面の堆積物が絶縁性の材質である場合には、2次電子照射によって堆積物がマイマス数100Vに帯電し、そのマイナスの帯電圧を打ち消すようにイオンが堆積物に流入する効果もクリーニング反応を促進する。
【0041】
正イオンにより叩き出される2次電子の割合は、イオン種および電極材質によっても差異はあるが、数100eVのイオン1個あたり数10%以上の割合で2次電子が発生する。また、誘電体材質は一般に2次電子放出の割合が高く、電極表面を誘電体で覆うことは2次電子発生の観点から有利であり、クリーニング効率も高くなる。
【0042】
図1の場合には、クリーニング用RF電極15に高周波を印加することによって、プラズマに面する誘電体板16の表面から2次電子eが放出される。前記2次電子eは磁力線mfに沿って移動し、磁力線mfが交差する場所の真空容器壁に前記2次電子eが流入する。このときの前記2次電子eのエネルギーはクリーニング用RF電極15に印加する高周波電力によって決まるが、数10W以上の印加で数100eVのエネルギーになり、誘電体真空壁12の2次電子eの入射した領域はマイナス数100Vに帯電し、このマイナスの帯電を打ち消すために引き寄せられた正イオンが壁および壁へ堆積している反応性生物等の余分な汚れ叩き、クリーニングする。
【0043】
このとき、図1のクリーニング用磁場発生コイル22−1および第2のクリーニング用磁場発生コイル22−2のコイル電流を制御して、形成される磁場形状を変化させることで、前記2次電子eが壁を照射する位置を移動できるので、希望する場所を局所的にクリーニングすることができる。
【0044】
クリーニングを目的としたクリーニング用RF電極15に高周波を印加すると同時に、あるいは、ウエハ保持電極14に高周波を印加してウエハ81からの2次電子を放出させ、クリーニング用RF電極15からの2次電子eおよび/またはウエハ81からの2次電子eを、誘電体真空壁12クリーニングに用いることも可能である。
【0045】
また、分光データ処理装置71からのモニタ出力に基づいて、電源制御装置62が、磁場発生機構による磁場形状、強度を操作してクリーニング効果が高まるよう磁場状態を自動調整したり、クリーニングの終点を判定してクリーニング個所を変えることが自動化できる
【0046】
本発明のクリーニング時には、反応室1内に反応成ガスを供給することができ、クリーニング時に分解、スパッタされた堆積物を化学反応させ気化性物質にしたり不活性ガスによる希釈効果で真空壁への再付着を低減したり、排気効率を高めることができる。反応性ガスとしては、塩素系、フッ素系、酸素、あるいはアルゴン等の反応性ガスを用いることができる。
【0047】
本発明の真空処理装置のクリーニング方法が適用されるプラズマ真空装置の
第2の実施例を、図2を用いて説明する。この実施例は、本発明にかかるクリーニング方法を平行平板電極による容量結合方式のプラズマエッチング装置に適用した例である。
【0048】
このプラズマエッチング装置は、プラズマ源用磁場発生コイル23を、クリーニング時の磁場発生用コイルに流用したものである。プラズマエッチング装置は、反応質1と、排気口13と、反応室1内に配置されたウエハ保持用電極14、およびクリーニング用RF電極(2次電子放出電極)15、ならびに誘電体板16と、反応室1の上部に配置された上部電極17と、反応室1の外部に配置された第1のプラズマ源用磁場発生コイル23−1および第2のプラズマ源用磁場発生コイル23−2と、プラズマ生成用電源3と、ウエハ保持電極用電源4と、クリーニング用電源5と、プラズマ源用電源(クリーニング磁場用電源)6と、分光データ処理装置71と、分光検出器72とを有して構成される。
【0049】
ウエハ保持電極14は、内部に静電吸着電極を有する静電吸着膜141が設けられており、ウエハ保持電極用電源4から静電吸着電極に直流電圧が印加される。
【0050】
上部電極17は、アンテナ171と、ガス放出板172と、ガス導入口173とを有している。アンテナ171には、プラズマ生成用電源3からRF電圧が供給される。ガス導入口173から反応ガスが供給され、ガス放出板172に設けた多数の開口から反応室1内に反応ガスが均一に供給される。
【0051】
プラズマ生成用電源3は、プラズマ生成用RF電源31と、プラズマ生成用RF整合器32と、ウエハ保持電極用電源4から供給された高周波を上部電極17を通してアースするためのフィルタ回路33とを有しており、プラズマ生成用RF電源31から上部電極17のアンテナ171にプラズマ生成用RF電力を供給する。
【0052】
ウエハ保持電極用電源4は、ウエハに高周波を印加しエッチング処理を制御するためのプロセス制御用RF電源41と、プロセス制御用RF整合器42と、ウエハを静電吸着するためのウエハ保持用直流電源43と、アンテナ171に印加するプラズマ生成用RF電源31から供給された高周波をウエハ保持電極14を通してアースに流すためのフィルタ回路44とを有している。
【0053】
クリーニング用電源5は、クリーニング用RF電源51と、クリーニング用RF整合器52とを有している。
【0054】
プラズマ源用電源6は、第1のプラズマ源用(クリーニング磁場用)直流電源61−1と、第2のプラズマ源用(クリーニング磁場用)直流電源61−2と、電源制御装置82とを有している。
【0055】
クリーニング用RF電極15の設置場所は任意であるが、例えば、図2のようにウエハ保持電極14の側面に設けると、磁力線mfを調整することによって、上部電極17を用いた通常のクリーニング放電ではプラズマの届かないウエハ保持電極14の側面等のクリーニングが可能となる。クリーニング用RF電極15へ高周波を印加すると同時にウエハ81にもプロセス制御用RF電源41により高周波を印加してウエハ面からも2次電子させてクリーニングすることも出来る。
【0056】
このプラズマエッチング装置は、反応室1の外部にプラズマ生成効率向上またはプラズマ均一性制御のための第1の磁場発生コイル23−1および第2の磁場発生コイル23−2と、第1のクリーニング磁場用直流電源61−1および第2のクリーニング磁場用直流電源61−2、ならびに、電源制御装置62が設けてある。エッチング処理時には、処理ガスをガス導入口173より導入しガス放出板172から反応室1内にガスを均一に供給し、プラズマ生成用RF電源31からプラズマ生成用RF整合器32を介して周波数13.45MHzから450MHzまでの高周波をアンテナ171に印加して、プラズマ85を生成する。
【0057】
ウエハ保持電極14には、ウエハを静電吸着するためのウエハ保持用直流電源43と、ウエハに高周波を印加してエッチング処理を制御するためのプロセス制御用RF電源41と、プロセス制御用RF整合器42が設けてある。また、アンテナ171に印加するプラズマ生成用RF電源31から供給された高周波がウエハ保持電極14を通してアースに流れるよう、プラズマ生成用RF電源31出力の周波数帯域の高周波を通すフィルタ回路44がウエハ保持電極に接続されている。
【0058】
クリーニング用RF電極15の設置場所は、任意に設定できるが、例えば、図2のようにウエハ保持電極14の側面に設けると、磁力線の調整によってはアンテナ171を用いた通常のクリーニング放電ではプラズマの届かないウエハ保持電極14の側面等のクリーニングが可能となる。クリーニング用RF電極15へ高周波を印加すると同時にウエハ81にもプロセス制御用RF電源41により高周波を印加してウエハ面からも2次電子を放出させてクリーニングすることも出来る。
【0059】
クリーニングの態様は、プラズマ源用磁場発生コイル23−1,プラズマ源用磁場発生コイル23−2をそれぞれ独立に制御することによって、クリーニング用磁場の形状や強度を制御して実施の形態に示した態様と同様に任意の個所をクリーニングすることができる。
【0060】
この実施例では、クリーニングに用いる磁場発生手段として、プラズマ源用磁場発生コイル23−1およびプラズマ源用磁場発生コイル23―2を流用している。磁場発生手段としては、これらのコイルに代えて永久磁石により構成してもよい。
【0061】
本発明の第3の実施例を、図3を用いて説明する。この実施例は、本発明にかかるクリーニング方法を電子顕微鏡に適用した例である。本発明にかかるクリーニング方法が適用される電子顕微鏡は、真空容器101と、試料を載置する試料台102と、電子ビームを発生し加速する鏡筒104と、電子ビームの対物レンズ103とからなり、真空容器101内部を真空排気するための排気口105と、ガス導入口107と、質量分析器130とが設けてある。さらに、この電子顕微鏡は、クリーニング用RF電極(2次電子放出電極)15と、誘電体板16を有しており、クリーニング用RF電極15は、クリーニング用RF電源51およびクリーニング用RF整合器52からなるクリーニング用電源5に接続されている。
【0062】
また、真空容器101の外部には、第1のクリーニング用磁場発生コイル22−1と第2のクリーング用磁場発生コイル22−2が配置される。さらに、第1のクリーニング磁場用直流電源61−1と、第2のクリーニング磁場用直流電源61−2と、電源制御装置62からなるクリーニング磁場用電源6から各クリーニング用磁場発生コイル22へ直流電力が供給される。
【0063】
この電子顕微鏡を用いて試料を観察する場合は、試料台102の上に試料を固定し数kVの電子ビームを対物レンズ103で収束し試料に照射するときに放出される電子を捕集し検出する。したがって、観察時には電子ビーム照射により試料の一部が気化し真空容器101内に付着、堆積し汚れとなる。
【0064】
クリーニング用RF電極15には、クリーニング用RF電源51からの高周波出力をクリーニング用RF整合器52を介して印加する。クリーニング用RF電極15の真空側には誘電体板16が設けてありクリーニング用RF電極15からの金属不純物混入を防いでいる。磁場発生手段は、第1のクリーニング用磁場発生コイル22−1および第2のクリーニング用磁場発生コイル22−2からなり、磁場強度制御手段は、第1のクリーニング用クリーニング磁場用直流電源61−1および第2のクリーニング用クリーニング磁場用直流電源61−2と、電源制御装置62より構成される。
【0065】
クリーニングの効果の確認は、質量分析器130による気相中の元素分析によりモニタできる。また、質量分析器130のモニタ信号を使って、クリーニングが終了したら電源制御装置62を操作して第1のクリーニング用磁場発生コイル22−1および第2のクリーニング用磁場発生コイル22−2への電力供給を制御し、クリーニング場所を移動して自動的にクリーニングを行うことも可能である。
【0066】
以上のように、本発明は、誘導結合方式のプラズマエッチング処理装置や平行平板電極による容量結合方式のプラズマエッチング処理装置やプラズマCVD処理装置等のプラズマ処理装置、または、電子線描画装置、もしくは電子顕微鏡等の、処理時間の経過とともに真空容器内壁に被処理対象(試料)から発生した反応生成物が堆積する真空処理装置に適用することができる。
【0067】
本発明は、真空容器内部の堆積物を2次電子の効果を使って高効率で局所的にクリーニングでき、磁場形状を制御することでクリーニング個所を変更できるので複雑な形状におおいても必要な範囲を一様にクリーニングできる。
【0068】
本発明は、磁場発生手段を2個以上の電磁コイルで構成することで磁場の制御を直流電源の電流値を操作するだけでよく容易に高精度な制御が可能となる。
【0069】
本発明は、磁場発生手段に永久磁石を用いることで、磁場発生部を小型化で低コスト化できる。
【0070】
本発明は、クリーニング用のRF電極とともに又はRF電極に代えてウエハ保持電極に高周波を印加しクリーニングに用いることで、同時にクリーニングできる領域が広がりクリーニング時間の短縮になる。また、クリーニングできる領域は制限されてしまうがRF電極の代用としてウエハ保持電極を使えば、装置構成が簡単になり低コストとなる。
【0071】
本発明は、前記ウエハ保持電極と2次電子照射する前記真空容器上面の距離を50mmから180mmとすることで、ウエハからの2次電子が損失することなくウエハに対向した面に照射でき効率的なクリーニングが可能となる。前記距離が50mm以下では2次電子照射により除去された被エッチング物質の排気効率が悪化し、前記距離が長くなると2次電子が真空容器内のガスにより散乱され180mm以下が望ましい。また、前記距離を変えることによっても2次電子の照射位置を調整可能でり、連続的に前記距離を変化させクリーニング位置を移動できる。
【0072】
本発明は、磁場制御手段を操作してクリーニング場所を移動することで、必要な場所だけを選択的にクリーニングが無駄なく効率的おこなえる。
【0073】
本発明は、RF電極へ印加する高周波の周波数を100kHzから100MHzとすることで、誘電体板でカバーした電極面に効率良く直流電圧Vdcが形成されクリーニングが有効に進行する。周波数が100kHz以下になると電極表面の誘電体板によるインピーダンス(インピーダンスZ∝d/(2πfεS)、d:誘電体板厚、f:高周波周波数、ε:誘電率、S:誘電体面積)が大きくなり実効的な高周波電圧が誘電体板表面に発生しなくなる。周波数が100MHz以上になるとRF整合器を汎用のコンデンサやコイルで構成することが困難になり、同軸スタブ等の立体回路部品が必要になり装置が大型化、高コストになってしまう。
【0074】
本発明は、電子線描画装置または電子顕微鏡のように通常放電機構を備えていない装置であっても、複雑な真空容器には小型のRF電極を設けてるだけであり、簡単な構成で必要な個所だけを局所的に簡単にクリーニングできるので、装置の汚れによる精度低下防止や稼動率向上に貢献する。
【0075】
本発明は、クリーニング時に反応性ガスを真空容器に塩素系、フッ素系、酸素、あるいはアルゴン等のガスを導入することでクリーニング時に分解、スパッタされた堆積物を化学反応させ気化性物質にしたり不活性ガスによる希釈効果で真空容器壁への再付着を低減したり排気効率を高める。
【0076】
本発明は、真空容器内の堆積物質のクリーニングの進行状況を例えば堆積物質の分解物質や化合物からの発光スペクトル強度や質量分析器による濃度等のモニタ信号を用いて、その場所のクリーニングが必要なレベルまで進んだら自動的に磁場制御しクリーニング場所を自動的に移動することが可能となり、クリーニングが無駄なく効率的で自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例にかかるエッチング装置の断面説明図。
【図2】本発明の第2の実施例にかかるエッチング装置の断面説明図。
【図3】本発明の第3の実施例にかかる電子顕微鏡装置の断面説明図。
【図4】図1のエッチング装置におけるRF電極から反応室壁までの高周波電位分布の時間平均を示すグラフ。
【符号の説明】
1:反応室
11:下部容器
12:誘電体真空壁
13:排気口
14:ウエハ保持電極
15:クリーニング用RF電極(2次電子放出電極)
16:誘電体板
21:RFコイル
22:クリーニング用磁場発生コイル
3:プラズマ生成用電源
31:プラズマ生成用RF電源
32:プラズマ生成用RF整合器
4:ウエハ保持電極用電源
41:プロセス制御用RF電源
42:プロセス制御用RF整合器
43:ウエハ保持用直流電源
5:クリーニング用電源
51:クリーニング用RF電極
52:クリーニング用RF整合器
6:クリーニング磁場用電源
61:クリーニング磁場用直流電源
62:電源制御装置
71:分光データ処理装置
72:分光検出器
81:ウエハ
85:プラズマ
Claims (5)
- 減圧された真空容器を有し、該真空容器内に試料を収容し真空処理する真空処理装置において、
前記真空容器内に磁場を発生する少なくとも2個以上の磁場発生手段と、
該磁場発生手段の各々の磁場形状または磁場強度を独立に制御する磁場強度制御手段と、
前記真空容器内に配置した2次電子放出電極と、
該2次電子放出電極に高周波電力を印加する高周波電源とを備え、
前記2次電子放出電極に前記高周波電源からの高周波出力を印加し2次電子を放出し、前記磁場強度制御手段を独立に制御して前記磁場発生手段により発生される磁場の磁力線方向を操作することにより前記2次電子放出電極から放射された2次電子を真空容器内壁の被クリーニング領域まで輸送し照射し局所的にクリーニングする
ことを特徴とする真空処理装置。 - 減圧された真空容器を有し、該真空容器内に試料を収容し操作する真空処理装置において、
前記真空容器内に磁場を発生する少なくとも2個以上の磁場発生手段と、
該磁場発生手段の各々の磁場形状または磁場強度を独立に制御する磁場強度制御手段と、
前記真空容器内に配置した2次電子放出電極と、
該2次電子放出電極の少なくとも真空側の面を覆いプラズマが直接前記2次電子放出電極に接触することを防ぐ誘電体と、
前記2次電子放出電極に高周波電力を印加する高周波電源とを備え、
前記2次電子放出電極に前記高周波電源からの高周波出力を印加し2次電子を放出し、前記磁場強度制御手段を独立に制御して前記磁場発生手段により発生される磁場の磁力線方向を操作することにより前記2次電子放出電極から放射された2次電子を真空容器内壁の被クリーニング領域まで輸送し照射し局所的にクリーニングする
ことを特徴とする真空処理装置。 - 減圧された真空容器と、該真空容器内に磁場を発生する少なくとも2個以上の磁場発生手段と、前記真空容器内に配置した2次電子放出電極と、該2次電子放出電極の少なくとも真空側の面を覆いプラズマが直接前記2次電子放出電極に接触することを防ぐ誘電体と、前記2次電子放出電極に高周波電力を印加する高周波電源とを有し、前記真空容器内に試料を収容し真空処理する真空処理装置のクリーニング方法において、
前記2次電子放出電極に高周波電力を印加するとともに、前記磁場発生手段の磁場形状または磁場強度を制御して前記磁場発生手段により発生される磁場の磁力線方向を操作することにより前記2次電子放出電極から放出された2次電子を真空容器内壁の被クリーニング領域まで輸送し照射して前記真空容器内部を局所的にクリーニングする
ことを特徴とする真空処理装置のクリーニング方法。 - 減圧された真空容器と、該真空容器内に磁場を発生する少なくとも2個以上の磁場発生手段と、該磁場発生手段の各々の磁場形状または磁場強度を独立に制御する磁場強度制御手段と、前記真空容器内に配置した試料を載置する電極と、該電極に高周波電力を印加する高周波電源とを有し、前記真空容器内に試料を収容し真空処理する真空処理装置のクリーニング方法において、
前記電極に誘電体またはウエハを載置した状態で高周波電力を印加するとともに、前記磁場発生手段の磁場形状または磁場強度を制御することにより磁場の磁力線方向を操作して前記電極から放射された2次電子が照射する真空容器内壁上の領域を特定して照射することにより前記真空容器内部を局所的にクリーニングする
ことを特徴とする真空処理装置のクリーニング方法。 - 減圧された真空容器と、少なくとも2個以上のプラズマ発生用磁場コイルと、該プラズマ発生用磁場コイルの各々の磁場強度を独立に制御する磁場強度制御手段と、前記真空容器内に配置した2次電子放出電極と、該2次電子放出電極の少なくとも真空側の面を覆う誘電体と、前記2次電子放出電極に高周波電力を印加する高周波電源とを有し、前記真空容器内に試料を収容し処理する真空処理装置のクリーニング方法において、
前記2次電子放出電極に高周波電力を印加するとともに、前記プラズマ発生用磁場コイルの磁場形状または磁場強度を制御することにより磁場の磁力線方向を操作して前記2次電極放出電極から放射された2次電子を真空容器内壁の被クリーニング領域まで輸送し照射して前記真空容器内部を局所的にクリーニングする
ことを特徴とする真空処理装置のクリーニング方法。
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