JP4187456B2 - ポリアミド樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂廃棄物のリサイクル技術として有用な、ポリエステル樹脂からポリアミド樹脂を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
資源の有効利用を図るとともに、廃棄物処理に伴う環境への負荷を低減するため、プラスチック廃棄物をリサイクルする技術が盛んに検討されている。その代表的なものが、ポリエステル樹脂の原料モノマーへの還元技術であり、メタノール分解法、エチレングリコール分解法、エステル交換法といった様々な技術が開発されている。
【0003】
しかしながら、このような方法で再生したモノマーは、バージン材に比べ価格が高くなる場合が多く、事業化しても採算性に乏しいものとなる。そして、このことが、リサイクル化の普及を妨げる大きな要因となっている。
【0004】
このようななかで、ポリエステル樹脂の1種であり、繊維、ボトル、フィルム、シート等に大量に消費され、したがってリサイクル化の要求も高いポリエチレンテレフタレートから直接ポリアミド樹脂を合成する方法が考案され、上記問題を解決するものとして注目されている。
【0005】
この方法は、基本的にエステル−アミド置換反応を利用するもので、ポリエチレンテレフタレートとジアミン化合物とを特定の溶媒を反応媒体として反応させることにより、ポリエチレンテレフタレートのエステル基をアミド基に置換してポリアミド化するものである。
【0006】
しかしながら、これまでに報告されているこの種の方法では、いずれも反応溶媒として有機溶媒を使用しているため、環境への負荷が大きいという問題があった。また、高分子量のポリアミド樹脂を得ようとすると、ポリエチレンテレフタレートとジアミン化合物との反応後に、さらに重縮合の工程が必要になるという問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ポリエチレンテレフタレートからポリアミド樹脂を直接合成する方法は、大量に消費されているプラスチックのリサイクル化を促進するものとして大いに期待されるが、環境への負荷が大きい、高分子量のポリアミド樹脂を得ようとすると工程が煩雑になる、などの問題があった。
【0008】
本発明はこのような点に対処してなされたもので、ポリエステル樹脂あるいはその廃棄物から有用な高分子量のポリアミド樹脂を簡単なプロセスで容易に製造することができ、しかも、環境への負荷も少ないポリアミド樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、ポリエステル樹脂とジアミン化合物とを、温度 350 ℃〜 450 ℃、圧力 10MPa 50MPa 超臨界水または亜臨界水中で反応させてポリアミド樹脂を生成し、次いで反応容器内を超臨界二酸化炭素で置換し、その後、降温降圧して前記ポリアミド樹脂を回収することを特徴とする。
【0012】
ここで、ポリエステル樹脂が廃棄物からの回収物であってもよく、また、ポリエステル樹脂がポリアルキレンテレフタレートであってもよい。
【0013】
本発明においては、十分に高分子量のポリアミド樹脂をポリエステル樹脂から実質的に一工程で製造することができ、しかも、反応溶媒として超臨界水または亜臨界水を使用するため、有機溶剤を使用する従来の方法に比べ、環境への負荷も低減される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において原料として使用されるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはその誘導体化合物と多価アルコールの脱水縮合反応により得られたものである。ジカルボン酸またはその誘導体化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジクロライド、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびその誘導体、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体が挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、テトラメチレングリコール等のアルキレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の芳香族2価アルコール等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、廃棄物から回収されたものであってもよい。
【0015】
また、上記ポリエステル樹脂の加水分解物と反応させるジアミン化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン化合物;p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、m-トルイレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニール、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニール、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニール、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエスルファイド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノアントラキノン、3,3’-ジメトキシベンチジン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-イソプロピルベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミン化合物;1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、α,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼン、メンタンジアミン等の脂環式ジアミン化合物;両末端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサン等のポリマー等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。本発明においては、なかでもテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミンの使用が好ましい。
【0016】
このジアミン化合物の使用量は、ポリエステル樹脂の繰返し単位1モルに対し1モル〜10モルの範囲が好ましい。ジアミン化合物の使用量が1モル未満では、ジアミン化合物自身の分解や装置系内の圧力維持のために反応容器から排出される分などもあるため、ポリエステル樹脂との反応が十分に進まず、また、10モルを超えると、ジアミン化合物の分解物の量が増え、この分解物がポリエステル樹脂やその加水分解成分と反応することにより低分子量のポリアミド成分が増加する。より好ましい範囲は、ポリエステル樹脂の繰返し単位1モルに対し2〜5モルの範囲である。
【0017】
さらに、上記のようなポリエステル樹脂を加水分解させるとともに、この加水分解によって生じたジカルボン酸成分とジアミン化合物の重縮合反応を進行させる反応溶媒として使用される超臨界水は、臨界温度(374.2℃)および臨界圧力(22.1MPa)を超えた非凝縮性の高密度水であり、また、亜臨界水は、臨界温度(374.2℃)および臨界圧力(22.1MPa)に近い温度、圧力で超臨界に近い状態にある水である。
【0018】
本発明においては、上記したようなポリエステル樹脂とジアミン化合物とを超臨界水または亜臨界水中で反応させ、ポリアミド樹脂を生成する。ポリアミド樹脂生成のメカニズムは未だ明確には解明されていないが、超臨界水または亜臨界水中でポリエステル樹脂分子鎖中のエステル結合部分にジアミン化合物が直接反応することによりエステル基がアミド基に置換される、いわゆるエステル−アミド置換反応と、ポリエステル樹脂が超臨界水または亜臨界水と接触、反応して加水分解され、この加水分解によって生じたジカルボン酸成分とジアミン化合物が重縮合するという、2つの反応が平行して進行しているものと考えられる。
【0019】
上記反応を進行させるための温度および圧力は、本発明の効果に大きく影響し、それぞれ350℃〜450℃および10MPa〜50MPaの範囲で調整することが好ましい。反応温度が350℃より低いとポリエステル樹脂の加水分解が進みすぎ、ジアミン化合物との反応が十分に進行しないおそれがある。ちなみに、ポリエステル樹脂が完全に加水分解されて生じるジカルボン酸モノマーは、カルボキシル基部分が会合して安定化してしまい、ジアミン化合物とはほとんど反応することはない。また、反応温度が450℃より高いと、ポリエステル樹脂のエステル結合以外の部分での分解が進み、また、ジアミン化合物の分解も進むようになる。一方、反応圧力が10MPaより低いとポリエステル樹脂の加水分解速度が低下し、非効率的となる。また、反応圧力が50MPaより高いと、反応温度が350℃より低い場合と同様、ポリエステル樹脂の加水分解が進みすぎ、ジアミン化合物との反応が十分に進行しないおそれがある。より好ましい範囲は、反応温度が375℃〜430℃、反応圧力が20MPa〜30Mpaの範囲である。
【0020】
本発明においては、このような反応を、例えば図1に示すようなセミバッチ式の装置を用いて行うことができる。
【0021】
すなわち、図1は、本発明に使用される装置の一例を概略的に示したものである。
図1に示すように、この装置は、電気炉1aを備えた耐圧反応容器1と、液体二酸化炭素ボンベ2と、この液体二酸化炭素ボンベ2から耐圧反応容器1内に加圧した二酸化炭素を送り込む送液ポンプ3と、供給される二酸化炭素を予熱する二酸化炭素予熱器4と、純水貯溜槽5と、この純水貯溜槽5から耐圧反応容器1内に加圧した純水を送り込む送水ポンプ6と、供給される純水を予熱する水予熱器7と、耐圧反応容器1から排出される成分から固形物を分離除去する固液分離器8と、これらの各機器を接続する配管9とを備えている。また、二酸化炭素予熱器4と耐圧反応容器1との間、水予熱器7と耐圧反応容器1との間、および耐圧反応容器1と固液分離器8の間の各配管9には、ラインヒータ10が付設されている。なお、耐圧反応容器1と固液分離器8間の配管9に付設されたラインヒータ10は、ポリエステル樹脂の加水分解物が耐圧反応容器1から排出される際に析出するのを防止するために設けられている。図中、11は液体二酸化炭素ボンベ2から送り出される二酸化炭素を脱水する脱水剤、12は流量計、13は温度測定用熱電対、14は温度制御用の熱電対、15は減圧弁をそれぞれ示している。
【0022】
このような装置においては、まず、耐圧反応容器1にポリエステル樹脂およびジアミン化合物を投入する。ポリエステル樹脂が廃棄物からの回収物であり、大きさなどが不均一な場合には、予め裁断するなどして大きさや形状をできるだけ均一にしたうえで投入することが好ましい。また、汚れやゴミなどが付着している場合には、反応への影響や回収後の精製工程の負荷を少なくするため、予め除去しておくことが好ましい。
【0023】
次いで、純水貯溜槽5から予熱器7およびラインヒータ10により加熱された純水を連続的に供給するとともに、耐圧反応容器1を加熱して、反応容器1内を前述したような温度および圧力範囲とする。温度および圧力の上昇にともない、ポリエステル樹脂とジアミン化合物が直接反応し、あるいは、ポリエステル樹脂の加水分解が進み、この加水分解によって生じたジカルボン酸成分とジアミン化合物重縮合反応し、ポリアミド樹脂が生成される。
【0024】
この後、耐圧反応容器1内の温度および圧力を維持したまま、液体二酸化炭素ボンベ2から予熱器4およびラインヒータ10により加熱された二酸化炭素を連続的に供給し、耐圧反応容器1内を超臨界二酸化炭素で置換する。耐圧反応容器1内が超臨界二酸化炭素で完全に置換されたところで、加熱を中止し、耐圧反応容器1内を常温常圧に戻し、生成されたポリアミド樹脂を回収する。なお、このように耐圧反応容器1内を超臨界二酸化炭素で置換するのは、耐圧反応容器1内を常温常圧に戻す過程で、ポリアミド樹脂が加水分解されて低分子量化するのを防止するためである。すなわち、生成されたポリアミド樹脂は、超臨界水または亜臨界水中では加水分解を受けることはなく安定であるが(これは、水が超臨界乃至亜臨界状態ではイオン積が小さく非プロトン性の溶媒の性質を示すことによる)、そのまま反応容器1内の温度および圧力を低下させると、ポリアミド樹脂は、イオン積が増大しプロトン性の溶媒に変わった水との接触が避けられず、加水分解が進行する。反応容器1内の温度および圧力を維持したまま、反応容器1内を超臨界二酸化炭素によって置換することにより、このようなポリアミド樹脂の加水分解を防止することができ、低分子量化を防止することができる。
回収したポリアミド樹脂は、その後、精製され、製品とされる。
【0025】
なお、本発明においては、耐圧反応容器1内にポリエステル樹脂およびジアミン化合物を投入した後、系内を一旦純水で満たして内部の酸素を除去し、その後、加熱加圧を開始するようにすることが望ましい。これによって、溶存酸素による副反応を防止することができる。また、同様の観点から、耐圧反応容器1に供給する水には、窒素ガスによるバブリング処理を施すなどして、溶存する酸素を除去したものを用いるようにすることが望ましい。さらに、反応の制御を容易にするため、耐圧反応容器1内の圧力を所定の圧力まで昇圧したうえで、加熱を開始することが望ましい。
【0026】
本発明は、上述したようないわゆるセミバッチ式の装置によらず、連続反応式の装置を用いて行うこともできる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例
市販のポリエチレンテレフタレート(PET)製の飲料用ボトルを回収し、数mm角の大きさのチップ状に裁断した後、約4gを量り取り、図1に示す装置の耐圧反応容器(内容積10ml)1内に投入した。さらに、ジアミン化合物としてヘキサメチレンジアミンを約3gと脱気した純水を投入し、耐圧反応容器1を密封した。
【0029】
次いで、耐圧反応容器1と固液分離器8を接続する配管9に付設したラインヒータ10の温度を350℃に設定するとともに、純水貯溜槽5から脱気した純水を連続的に送液し、耐圧反応容器1内の内圧を30MPaまで昇圧した後、その圧力を保持しながら約45分かけて耐圧反応容器1内を390℃まで昇温し、1分間保持した。その後、耐圧反応容器1内に脱水した超臨界二酸化炭素を5ml/minの流量で連続的に圧入し、耐圧反応容器1内の内温内圧を維持しつつ、耐圧反応容器1内を超臨界水から超臨界二酸化炭素に置換した。置換後、空冷して、耐圧反応容器1内の内温内圧を常温常圧に戻し、耐圧反応容器1内の固形物を回収した。
【0030】
この回収された固形物を80℃で5時間真空乾燥(10mmHg以下)させた後、ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液をろ過し、ろ液にクロロホルムを添加したところ、析出物が現れた。
【0031】
この析出物をろ過回収し、60℃で5時間乾燥させた後、赤外分光分析および1H−NMR分析を行い、析出物がポリアミド6Tであることを確認した。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)分析により、析出物の重量平均分子量(Mw)が約10000であることを確認した。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ポリエステル樹脂とジアミン化合物とを、超臨界水または亜臨界水中で反応させてポリアミドを生成するので、ポリエステル樹脂あるいはその廃棄物から有用な高分子量のポリアミド樹脂を簡単でしかも環境への負荷の少ないプロセスで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用される装置の一例を概略的に示す図。
【符号の説明】
1………耐圧反応容器
1a………電気炉
2………液体二酸化炭素ボンベ
3………送液ポンプ
5………純水貯溜槽
7………送水ポンプ
9………配管

Claims (3)

  1. ポリエステル樹脂とジアミン化合物とを、温度 350 ℃〜 450 ℃、圧力 10MPa 50MPa 超臨界水または亜臨界水中で反応させてポリアミド樹脂を生成し、次いで反応容器内を超臨界二酸化炭素で置換し、その後、降温降圧して前記ポリアミド樹脂を回収することを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
  2. ポリエステル樹脂が廃棄物からの回収物であることを特徴とする請求項記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  3. ポリエステル樹脂がポリアルキレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂の製造方法。
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