JP4187155B2 - ガス検出方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガス検出方法及びその装置に関し、詳しくはジメチルエーテルなどの雑ガスによる誤報を防ぐことのできるガス検出方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来より、都市ガスの漏洩や不完全燃焼により発生する一酸化炭素の発生は、検出ガス以外のガス検出による誤報を防ぎながら行われている。
【0003】
すなわち、活性炭を主成分とするガス透過性のフィルタを用いることにより、調理時に発生するエタノールやヘアースプレーに含まれるガス成分(いわゆる雑ガス成分)を吸着し、センサに到達しにくくすることで誤報を防ぎながら行われていた。
【0004】
しかしながら、一般的に言って、活性炭における吸着能力には限界があるため、前記フィルタにあっても同様、雑ガスの吸着能力には限界がある。従って、雑ガスが長時間にわたって滞留するような状況の場合には、前記フィルタにおける活性炭では処理しきれなくなり、充分に誤報を防ぐことができなかった。
【0005】
ところで、最近、くん煙式の殺虫剤が市販されている。この殺虫剤の噴霧成分にはジメチルエーテルが用いられている。このようなくん煙式の殺虫剤を使用する場合は、殺虫成分の薬効を最大限に引き出すために、数時間にわたって部屋を閉め切るのが通常である。このため、ジメチルエーテルが当該部屋の内部に充満し、長時間にわたって滞留することになり、前記フィルターが処理しきれなくなり(フィルター吸着能力に限界を来たし)、ガス検出装置の誤報を招いた。
【0006】
また、液化石油ガスは活性炭に強い吸着性を示すため、当該ガスの漏洩を検知する場合には活性炭フィルターを使うことができず、この場合にあっても上記と同様、ジメチルエーテルによる誤報の問題を招いた。
【0007】
なお、雑ガスによる誤報を防ぐ方法として、既に特許出願がされているが、これはあくまで水素ガスを雑ガスとする誤報を防ぐ方法に主眼を置いたものである(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−82083号公報
【0009】
【発明の目的】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は雑ガス、例えばくん煙式の殺虫剤等に含まれるガス(ジメチルエーテル)が室内に長時間滞留した場合でも誤報を発生しにくくするガス検出方法、及びガス検出装置を提供するところにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のガス検出方法は、ガスセンサ本体を加熱するヒータを制御することによって前記ガスセンサ本体の温度が高温期間と低温期間を繰り返し、高温期間において所定濃度を超える都市ガスまたは液化石油ガスが前記ガスセンサ本体に到達した場合に警報が発せられる機能と、低温期間において所定濃度を超える一酸化炭素が前記ガスセンサに到達した場合に警報が発せられる機能の内、両方もしくは一方を有するガス検出装置に設定されたガス検出方法であって、下記(1)〜(5)の工程を含むことで雑ガスに対する誤報を抑制することを特徴とするガス検出方法である。
【0011】
(1)予め、次の(S1)値、(S2)値、及び補正値(K) を定める。
【0012】
(S1)検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達した際の前記ガスセンサ本体の警報レベルセンサ信号。
【0013】
(S2)検出対象ガス以外の雑ガスによって誤報が発せられるのを防止するための補正判定基準センサ信号。
【0014】
(K) 検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達していないにもかかわらず、雑ガスの存在によって前記ガスセンサ本体のセンサ信号が変化し、これにより前記(S1)値を超えていると判断されて誤報が発せられるのを防止するための補正値。
【0015】
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S3)を測定する。
【0016】
(3)前記低温期間あるいは高温期間におけるガス検知時点での前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S4)を測定する。
【0017】
(4)前記(S3)値が補正判定基準センサ信号(S2)を超えた場合には補正値(K) 、あるいは(S3)と(S2)の差分および補正値(K) で以て前記(S1)値あるいは(S4)値を補正する。
【0018】
(5)前記補正が行われなかった場合は補正していない(S1)値と(S4)値を比較し、前記補正が行われた場合は補正済みの(S1)値と(S4)値を比較し、前記(S4)値が(S1)値を超えた場合に警報を発し、また(S4)値が(S1)値を超えなかった場合には警報を発しない。
【0019】
請求項2に記載のガス検出装置は、ガスセンサ本体を加熱するヒータを設け、前記ガスセンサ本体の温度が高温期間と低温期間を繰り返すべく前記ヒータを制御するとともにガスセンサ本体のセンサ信号から検出ガスの濃度を算出する情報処理部を設け、高温期間において所定濃度を超える都市ガスや液化石油ガスがガスセンサ本体に到達した場合に前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力する機能と、低温期間において所定濃度を超える一酸化炭素が前記ガスセンサに到達した場合に前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力する機能の内、両方もしくは一方を有するガス検出装置であって、前記情報処理部は、下記(1)〜(5)の情報を処理することで雑ガスに対する誤報を抑制することを特徴とするものである。
【0020】
(1)予め定められた次の(S1)値、(S2)値、及び補正値(K) を記憶する。
【0021】
(S1)検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達した際の前記ガスセンサ本体の警報レベルセンサ信号。
【0022】
(S2)検出対象ガス以外の雑ガスによって誤報が発せられるのを防止するための補正判定基準センサ信号。
【0023】
(K) 検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達していないにもかかわらず、雑ガスの存在によって前記ガスセンサ本体のセンサ信号が変化し、これにより前記(S1)値を超えていると判断されて誤報が発せられるのを防止するための補正値。
【0024】
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S3)を測定する。
【0025】
(3)前記低温期間あるいは高温期間におけるガス検知時点での前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S4)を測定する。
【0026】
(4)前記(S3)値が補正判定基準センサ信号(S2)を超えた場合には補正値(K) 、あるいは(S3)と(S2)の差分および補正値(K) で以て前記(S1)値あるいは(S4)値を補正する。
【0027】
(5)前記補正が行われなかった場合は補正していない(S1)値と(S4)値を比較し、前記補正が行われた場合は補正済みの(S1)値と(S4)値を比較し、前記(S4)値が(S1)値を超えた場合に警報を発し、また(S4)値が(S1)値を超えなかった場合には警報を発しない。
【0028】
ここで、センサ信号を取り出す方法によって、ガスがセンサに到達した場合にセンサ信号が増加する場合と減少する場合があることに注意が必要である。
【0029】
センサ信号を取り出す方法としては種々の方法が考えられる。例えば、センサの電気抵抗を測定しセンサ信号とする方法がある。あるいはセンサと直列に負荷抵抗を接続した上でセンサおよび直列抵抗の両端に電圧を加え負荷抵抗両端の電圧を測定しセンサ信号とする方法もある。
【0030】
可燃性ガスのセンサとして一般的に用いられている酸化スズガスセンサの場合は、可燃性ガスがセンサに到達するとセンサの電気抵抗が減少する。また、ガスの濃度が上昇するに従い電気抵抗が低下する。
【0031】
ここで、センサの電気抵抗をセンサ信号とする場合には、測定したセンサ信号(抵抗値)が警報レベルセンサ信号(抵抗値)、あるいは補正判定基準センサ信号(抵抗値)より低くなった場合に、測定したセンサ信号が警報レベルセンサ信号、あるいは補正判定基準センサ信号を超えたと判断することになる。つまりセンサ抵抗が高くなった場合にセンサ信号が小さくなったと判断し、センサ抵抗が低くなった場合にセンサ信号が大きくなったと判断する。
【0032】
一方、センサと直列に負荷抵抗を接続した上でセンサおよび直列負荷抵抗の両端に電圧を加え負荷抵抗両端の電圧を測定しセンサ信号とする場合には、可燃性ガスがセンサに到達するとセンサ信号が増加するので、測定したセンサ信号が警報レベルセンサ信号(電圧値)、あるいは補正判定基準センサ信号(電圧値)を上回った場合に、測定したセンサ信号が警報レベルセンサ信号、あるいは補正判定基準センサ信号を超えたと判断する。つまり負荷抵抗両端電圧が大きくなった時にセンサ信号が大きくなったと判断し、負荷抵抗両端電圧が小さくなったときにセンサ信号が小さくなったと判断する。
【0033】
【発明の実施の態様】
本発明のガス検出装置は、ガスセンサ本体(感ガス体)を加熱するヒータへの通電を制御することによってガスセンサ本体の温度を高温とする高温期間と低温とする低温期間とが所定間隔毎に交互に繰り返され、高温期間(例えば5秒間)において、例えば、ガスセンサ本体における負荷抵抗の両端電圧からメタンガスや液化石油ガス(イソブタンガス)などの可燃性ガスが検出され、また低温期間(例えば15秒間)において一酸化炭素が検出される。
【0034】
本発明のガス検出装置は、上記したような高温期間において可燃性ガスを検出するタイプの装置に使用され、また低温期間において一酸化炭素ガスを検出するタイプの装置に使用され、あるいはその双方、すなわち高温期間において可燃性ガスを検出し、かつ低温期間において一酸化炭素ガスを検出するタイプの装置に使用することができる。
【0035】
(S1):警報レベルセンサ信号
警報レベルセンサ信号(S1)をどの程度にするかについては、検出対象ガスの許容できる最高濃度(これ以上濃度が高くなると警報を発令しなければいけないとする濃度)を何ppmにするかや、使用するガスセンサにより異なるので一概には言えないが、メタンガスや液化石油ガスなど高温期間で検出されるガスであれば、許容できる最高濃度として、例えば50〜12,500ppmが挙げられ、また一酸化炭素など高温期間で検出されるガスであれば、許容できる最高濃度として、例えば10〜550ppmが挙げられ、警報レベルセンサ信号(S1)は、このような濃度のガスを検出した時のガスセンサ本体のセンサ信号(例えば、抵抗値、電圧値等)の数値とすることが好ましい。
【0036】
(S2):補正判定基準センサ信号
ジメチルエーテルのような雑ガスによって、ガスセンサ本体のセンサ信号が警報濃度レベルに達しても、警報を発しない工夫が必要である。雑ガスによる誤報を防ぐには、先ず雑ガスの存在を検出しなければならない。この補正判定基準センサ信号(S2)は雑ガスの存在を認識し、そしてこれによる誤報を防ぐために必要である。補正判定基準センサ信号(S2)は雑ガスの実体が何であるかによって変わる。すなわち、低温期間から高温期間に切り換わった直後に見られる雑ガスのセンサ信号の一時的な変化(ピーク)(雑ガスがもつ固有の変化(ピーク))を認識し、その変化(ピーク)によって雑ガスの存在を疑い、そして補正判定基準センサ信号(S2)が決定され、設定される。以下、具体的に説明する。
【0037】
なお、上記したように、本発明では、温度の切換時におけるセンサ信号の固有の(特有の)変化をみて「雑ガス」の存在を疑うのであることから、被検出対象ガスにおける温度の切換時におけるセンサ信号の変化と何ら変わりがないガスに対しては、それを「雑ガス」として認識することができず、本発明は適用できない。
【0038】
ここでいう「切り換わった直後」というのは、例えば次のような時間を意味する。すなわち、ジメチルエーテルを吸着した(ジメチルエーテルが到達し感知した)センサ本体のセンサ信号は、当該温度が切り換わってから急激に変化し、そして直ぐに復帰する。縦軸にセンサ信号の具体的数値の1つである抵抗値、横軸に時間としてグラフを描いた場合、温度が切り換わってからのグラフはV字状に表れるが、前記「切り換わった直後」とは、抵抗値が下がり始め、そして復帰するまでの間(具体的には0.01秒〜0.5秒の間)の任意の時間的ポイントをいい、好ましくは、当該V字部分の先端を示す(最低値を示す)時間的ポイント(あるいはその直ぐ近く)をいう(おおよそは切り換わってから0.2秒後、0.3秒後、0.4秒後など0.01秒〜0.5秒の間)。
【0039】
そして、補正判定基準センサ信号(S2)は、当該ピークの所定位置(例えば、抵抗値をセンサ信号とした場合には最低値を示す位置、直列負荷抵抗の両端電圧をセンサ信号とした場合は最大値を示す位置)において、警報濃度の検出対象ガスがセンサに到達した場合のセンサ信号と誤報を抑制したい濃度の雑ガスがセンサに到達した場合のセンサ信号(警報濃度の検出対象ガスが到達した場合よりも大きいセンサ信号を示す)との中間のいずれかの値とする。
【0040】
センサ信号としてセンサの抵抗値を選んだ場合には、誤報を抑制したい濃度の雑ガスがセンサに到達した場合のセンサ信号のたとえば1.05〜2.00倍、好ましくは1.10〜1.80倍、さらに好ましくは1.15〜1.60倍を、その具体的数値とする。
【0041】
雑ガスがジメチルエーテル(濃度1000ppm)の場合、低温期間から高温期間に移行した0.2〜0.4秒後に最小の抵抗値を示すとし、その値が例えば「200Ω」であるとすれば、補正判定基準センサ信号(S2)とする抵抗値は210〜400Ω(1.05〜2倍)、好ましくは220〜360Ω(1.1〜1.80倍)、さらに好ましくは230〜320Ω(1.15〜1.60倍)となる。
【0042】
前述したように、この補正判定基準センサ信号(S2)は雑ガスによる誤報を防ぐために必要であるが、この値(S2)をより小さく取れば(センサ信号が抵抗値の場合は、より高く取れば)、ごく少量(わずかな濃度)の雑ガスでも補正判定(雑ガスを検出したので補正が必要という判定)が下されるばかりでなく、高濃度の被検出対象ガスが存在した場合にも「雑ガスの存在」と誤認される可能性があり、また逆にこの値(S2)をより大きく取れば(センサ信号が抵抗値の場合は、より低く取れば)、雑ガスの存在が認識されない可能性が生じる。
【0043】
(S3):不安定期センサ信号
低温期間から高温期間に切り換わった直後のガスセンサ本体のセンサ信号(例えば、抵抗値、電圧値等)を測定し、これを不安定期センサ信号(S3)とする。
【0044】
ここでいう「切り換わった直後」というのは、上述と同様、例えば次のような時間を意味する。すなわち、都市ガス、液化石油ガス、一酸化炭素ガスあるいは被検出対象ガス以外の雑ガスを吸着(雑ガスが到達し感知、以下同様)したセンサ本体のセンサ信号はいずれも、当該温度が切り換わってから急激に変化し、そして直ぐに復帰する。縦軸にセンサ信号の1つである抵抗値、横軸に時間としてグラフを描いた場合、温度が切り換わってからのグラフはV字状に表れるが、前記「切り換わった直後」とは、抵抗値が下がり始め、そして復帰するまでの間(具体的には0.01秒〜0.5秒の間)の任意の時間的ポイントをいい、好ましくは、当該V字部分の先端を示す(最低値を示す)時間的ポイント(あるいはその直ぐ近く)をいう(おおよそは、切り換わってから0.2秒後、0.3秒後、0.4秒後など0.01秒〜0.5秒後の間)。
【0045】
(S4):固有センサ信号
低温期間あるいは高温期間におけるガス検出時点での前記ガスセンサ本体のセンサ信号(例えば、抵抗値、電圧値等)を測定し、これを固有センサ信号(S4)する。
【0046】
ここでいう「低温期間あるいは高温期間におけるガス検出時点」とは、ガスに対する感度が高く(低温期間にあっては一酸化炭素に対する感度が高く、高温期間にあっては、メタンガスなどの可燃性ガスに対すする感度が高く)、かつ安定している期間の時点をいい、縦軸に抵抗値、横軸に時間としてグラフを描いた場合における上記したV字状を示す部分の終了時から次の温度切り替わり時点までをいう。
【0047】
(K):補正値および補正の方法
前述したように、雑ガスによる誤報を防ぐために補正判定基準センサ信号(S2)が必要であり、被検出対象ガスを検出した時とは異なるセンサ信号(例えば、抵抗値)の変化(ガスがガスセンサ本体に吸着された時に生じるセンサ信号(抵抗値)の変化)を認識した場合には、それは被検出対象ガスとは異なるので、警報を発しないようにする工夫は必要である。
【0048】
しかしながら、雑ガスに混じって被検出対象ガスが存在している場合も当然あり得る。そこで、検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達しているにもかかわらず、雑ガスの存在によって前記ガスセンサ本体の警報レベルセンサ信号が変化し、これにより警報発令が抑えられるのを防止する工夫も必要である。
【0049】
例えば、100ppmのメタンガス中に数百ppmのジメチルエーテルが含まれている場合、100ppmのメタンガスが含まれることによって警報を発する必要があるが、数百ppmのジメチルエーテルの共存によって前記不安定期センサ信号(S3)が補正判定基準センサ信号(S2)を超えて(例えばセンサ信号が抵抗値の場合:不安定期センサ信号が補正判定基準センサ信号を下回り、例えばセンサ信号が負荷抵抗両端電圧の場合:不安定期センサ信号が補正判定基準センサ信号を上回り)、それが理由で補正判定がなされ、警報の発令が抑えられる可能性がある。
【0050】
そこで、雑ガスを検出した場合でも、当該雑ガス中に、被検出対象ガスも含まれていることを想定し、雑ガスが検出された場合に限り、前記警報レベルセンサ信号(S1)の数値を若干大きくして(例えばセンサ信号が抵抗値の場合:前記警報レベルセンサ信号(S1)の数値を若干低くして、例えばセンサ信号が負荷抵抗両端電圧の場合:前記警報レベルセンサ信号(S1)の数値を若干大きくして)、被検出対象ガスの検出による警報の発令を抑制するようにした。この際、警報レベルセンサ信号(S1)を補正するのではなく、固有センサ信号(S4)の数値を若干小さくして(例えばセンサ信号が抵抗値の場合:前記警報レベルセンサ信号(S1)の数値を若干高くして、例えばセンサ信号が負荷抵抗両端電圧の場合:前記警報レベルセンサ信号(S1)の数値を若干小さくして)、被検出対象ガスの検出による警報の発令を抑制するようにしても良い。
【0051】
具体的な補正の手段としては、例えば(S1)に補正値(K) を乗する(乗算する)方法(あるいはS4を補正値(K) で除算する方法)、前記(S1)に補正値(K) を加える(加算する)方法(あるいはS4を補正値(K) で減算する方法)などが挙げられ、またこのような四則演算に限らず、例えば、対数を用いた関数によって前記(S1)(あるいはS2)を補正する手段も本発明を妨げるものではない。
【0052】
また補正値(K) に加えて、不安定期センサ信号(S3)と補正判定基準センサ信号(S2)との差分を補正の手段に用いても良い。この場合にも、差分を補正のための演算に使用する方法として四則演算、あるいは対数を用いた関数を用いても良い。
【0053】
補正値(K) 、あるいは不安定期センサ信号(S3)と補正判定基準センサ信号(S2)との差分による前記(S1)(あるいはS2)の補正の度合いを大きくするほど、誤報を抑制する効果は大きくなる反面、被検出対象ガスの濃度が高くならないと警報が発令されにくくなる可能性がある。一方、補正値(K) 、あるいは不安定期センサ信号(S3)と補正判定基準センサ信号(S2)との差分による前記(S1)(あるいはS2)の補正の度合いを小さくするほど誤報を抑制する効果は小さくなる反面、被検出対象ガスに対して確実に警報を発令させることができる。
【0054】
上記に鑑み、補正値(K) をどの程度の値にするのが好ましいかは、センサ信号として抵抗値を用いるのか電圧値を用いるのか、補正値(K) 以外に不安定期センサ信号(S3)と補正判定基準センサ信号(S2)との差分を用いるのか、その補正を前述のように、乗算のよるのか減算によるのか、あるいは関数を用いて行うのかによって変わるので一概には言えないが、センサ信号としてセンサ抵抗を用い、補正値(K) 以外に不安定期センサ信号(S3)と補正判定基準センサ信号(S2)との差分は補正に用いず、乗算によって(S1)を補正する場合は、(K)=n/10(但し、0<n<10)であり、おおよそのところ0.5(n=5)〜0.9(n=9)であることが好ましく、0.6〜0.8であることが更に好ましいと思われる。
【0055】
【実施例】
本発明の一実施例を図面を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「抵抗値」をセンサ信号の一つの具体例として説明する。
【0056】
本発明のガス検出装置は、ガスセンサ本体を加熱するヒータが設けられており、このヒータは、前記ガスセンサ本体の温度が高温期間と低温期間を繰り返すべく制御される。これとともに、ガスセンサ本体の抵抗値から検出ガスの濃度を算出する情報処理部が設けられている。
【0057】
所定濃度を超える都市ガスや液化石油ガスが高温期間においてガスセンサ本体に到達した場合に、前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力し、また低温期間において所定濃度を超える一酸化炭素が前記ガスセンサに到達した場合にも前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力する。
【0058】
実施例1:メタンガスと雑ガスによる試験(1)
(メタン100ppmを許容最高濃度とする)
以下において、下記[表1]に示す環境(空気中、メタン(被検出対象ガス)、ジメチルエーテル(雑ガス))下で試験を行った。予め設定した警報レベル抵抗値(R1)、補正判定基準抵抗値(R2)、及び補正値(K) を同表に併記する。
【0059】
低温期間から高温期間に切り換わったガスセンサ本体の不安定期抵抗値(R3)を測定した(温度切り換え後、ガスセンサ本体の抵抗値が急激に低下し、0.3〜0.5秒後において抵抗値の極小値が観測され、その測定値を不安定期抵抗値(R3)とした)。この抵抗値(R3)の数値が、予め設定した補正判定基準抵抗値(R2)よりも小さければ、図1に示すように警報レベル抵抗値(R1)に補正値(K) が乗され、警報レベル抵抗値(R1)は補正抵抗値(R1’)に補正される。抵抗値(R3)の数値が、予め設定した補正判定基準抵抗値(R2)よりも大きければ、補正値(K) は乗さない。
【0060】
そして、高温期間におけるガス検出時点(例えば低温から高温に切り換わってから4秒経過後)での前記ガスセンサ本体の固有抵抗値(R4)を測定した。
【0061】
この固有抵抗値(R4)が、補正値(K) が乗された場合は(R1’)よりも(補正値(K) を乗しなかった場合は(R1)よりも)小さければ、警報を発令し、逆に大きければ警報を抑える。
【0062】
具体的な数値および結果(警報発令の有無)を下記[表1]に併記する。
【0063】
【表1】
【0064】
本実施例のガス検出装置における前記情報処理部は、下記(1)〜(5)の情報を処理する。すなわち、
(1)予め定められた上記の(R1)値、(R2)値、及び補正値(K) を記憶する。
【0065】
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体の抵抗値(R3)を測定する。
【0066】
(3)前記測定値が(R2)>(R3)(R2=R3を含む)の場合は、前記(R1)に補正値(K) を乗し、補正抵抗値(R1’)として記憶する。
【0067】
(4)前記高温期間におけるガス検出時点での前記ガスセンサ本体の抵抗値(R4)を測定する。
【0068】
(5)上記(4)で得られた測定値(R4)と補正抵抗値(R1’)または補正しない抵抗値(R1)を比較し、(R4)>(R1’or R1)(R4=R1’or R1を含む)の場合は、警報を鳴らさない。
【0069】
比較例1:メタンガスと雑ガスによる試験(2)
また補正を行わないで(補正値(K) を用いないで)、単に、警報レベル抵抗値(R1)と固有抵抗値(R4)との比較により警報を行えば、下記[表2]に示すように、ジメチルエーテルによる警報(誤報)が発令されてしまう。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例2:一酸化炭素スと雑ガスによる試験(1)
(一酸化炭素30ppmを許容最高濃度とする)
以下において、下記[表3]に示す環境(空気中、一酸化炭素(被検出対象ガス)、ジメチルエーテル(雑ガス))下で試験を行った。予め設定した警報レベル抵抗値(R1)、補正判定基準抵抗値(R2)、及び補正値(K) を同表に併記する。
【0072】
低温期間から高温期間に切り換わったガスセンサ本体の不安定期抵抗値(R3)を測定した(温度切り換え後、ガスセンサ本体の抵抗値が急激に低下し、0.3〜0.5秒後において抵抗値の極小値が観測され、その測定値を不安定期抵抗値(R3)とした)。この抵抗値(R3)の数値が、予め設定した補正判定基準抵抗値(R2)よりも小さければ、図1に示すように警報レベル抵抗値(R1)に補正値(K) が乗され、警報レベル抵抗値(R1)は補正抵抗値(R1’)に補正される。抵抗値(R3)の数値が、予め設定した補正判定基準抵抗値(R2)よりも大きければ、補正値(K) は乗さない。
【0073】
そして、低温期間におけるガス検出時点(例えば高温から低温に切り換わってから14秒経過後)での前記ガスセンサ本体の固有抵抗値(R4)を測定した。
【0074】
この固有抵抗値(R4)が、補正値(K) が乗された場合は(R1’)よりも(補正値(K) を乗しなかった場合は(R1)よりも)小さければ、警報を発令し、逆に大きければ警報を抑える。
【0075】
具体的な数値および結果(警報発令の有無)を下記[表3]に併記する。
【0076】
【表3】
【0077】
本実施例のガス検出装置における前記情報処理部は、下記(1)〜(5)の情報を処理する。すなわち、
(1)予め定められた上記の(R1)値、(R2)値、及び補正値(K) を記憶する。
【0078】
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体の抵抗値(R3)を測定する。
【0079】
(3)前記測定値が(R2)>(R3)(R2=R3を含む)の場合は、前記(R1)に補正値(K) を乗し、補正抵抗値(R1’)として記憶する。
【0080】
(4)前記高温期間が終了し、切り換わって低温期間に移行し、当該低温期間におけるガス検出時点での前記ガスセンサ本体の抵抗値(R4)を測定する。
【0081】
(5)上記(4)で得られた測定値(R4)と補正抵抗値(R1’)または補正しない抵抗値(R1)を比較し、(R4)>(R1’or R1)(R4=R1’or R1を含む)の場合は、警報を鳴らさない。
【0082】
比較例2:一酸化炭素ガスと雑ガスによる試験(2)
また補正を行わないで(補正値(K) を用いないで)、単に、警報レベル抵抗値(R1)と固有抵抗値(R4)との比較により警報を行えば、下記[表4]に示すように、ジメチルエーテルによる警報(誤報)が発令されてしまう。
【0083】
【表4】
【0084】
【発明の効果】
本発明により、雑ガス、例えばくん煙式の殺虫剤等に含まれるガス(ジメチルエーテル)が室内に長時間滞留した場合でも誤報を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はガス検出から警報発令あるいは無警報に至までの動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
K ……補正値
R1……警報レベル抵抗値
R1’…補正抵抗値
R2……補正判定基準抵抗値
R3……不安定期抵抗値
R4……固有抵抗値
Claims (2)
- ガスセンサ本体を加熱するヒータを制御することによって前記ガスセンサ本体の温度が高温期間と低温期間を繰り返し、高温期間において所定濃度を超える都市ガスまたは液化石油ガスが前記ガスセンサ本体に到達した場合に警報が発せられる機能と、低温期間において所定濃度を超える一酸化炭素が前記ガスセンサに到達した場合に警報が発せられる機能の内、両方もしくは一方を有するガス検出装置に設定されたガス検出方法であって、
下記(1)〜(5)の工程を含むことで雑ガスに対する誤報を抑制することを特徴とするガス検出方法。
(1)予め、次の(S1)値、(S2)値、及び補正値(K) を定める。
(S1)検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達した際の前記ガスセンサ本体の警報レベルセンサ信号。
(S2)検出対象ガス以外の雑ガスによって誤報が発せられるのを防止するための補正判定基準センサ信号。
(K) 検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達していないにもかかわらず、雑ガスの存在によって前記ガスセンサ本体のセンサ信号が変化し、これにより前記(S1)値を超えていると判断されて誤報が発せられるのを防止するための補正値。
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S3)を測定する。
(3)前記低温期間あるいは高温期間におけるガス検知時点での前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S4)を測定する。
(4)前記(S3)値が補正判定基準センサ信号(S2)を超えた場合には補正値(K) 、あるいは(S3)と(S2)の差分および補正値(K) で以て前記(S1)値あるいは(S4)値を補正する。
(5)前記補正が行われなかった場合は補正していない(S1)値と(S4)値を比較し、前記補正が行われた場合は補正済みの(S1)値と(S4)値を比較し、前記(S4)値が(S1)値を超えた場合に警報を発し、また(S4)値が(S1)値を超えなかった場合には警報を発しない。 - ガスセンサ本体を加熱するヒータを設け、
前記ガスセンサ本体の温度が高温期間と低温期間を繰り返すべく前記ヒータを制御するとともにガスセンサ本体のセンサ信号から検出ガスの濃度を算出する情報処理部を設け、
高温期間において所定濃度を超える都市ガスや液化石油ガスがガスセンサ本体に到達した場合に前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力する機能と、低温期間において所定濃度を超える一酸化炭素が前記ガスセンサに到達した場合に前記情報処理部は警報を発するべく信号を出力する機能の内、両方もしくは一方を有するガス検出装置であって、
前記情報処理部は、下記(1)〜(5)の情報を処理することで雑ガスに対する誤報を抑制することを特徴とするガス検出装置。
(1)予め定められた次の(S1)値、(S2)値、及び補正値(K) を記憶する。
(S1)検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達した際の前記ガスセンサ本体の警報レベルセンサ信号。
(S2)検出対象ガス以外の雑ガスによって誤報が発せられるのを防止するための補正判定基準センサ信号。
(K) 検出対象ガスが警報を発すべき濃度に達していないにもかかわらず、雑ガスの存在によって前記ガスセンサ本体のセンサ信号が変化し、これにより前記(S1)値を超えていると判断されて誤報が発せられるのを防止するための補正値。
(2)前記低温期間から高温期間に切り換わった直後の前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S3)を測定する。
(3)前記低温期間あるいは高温期間におけるガス検知時点での前記ガスセンサ本体のセンサ信号(S4)を測定する。
(4)前記(S3)値が補正判定基準センサ信号(S2)を超えた場合には補正値(K) 、あるいは(S3)と(S2)の差分および補正値(K) で以て前記(S1)値あるいは(S4)値を補正する。
(5)前記補正が行われなかった場合は補正していない(S1)値と(S4)値を比較し、前記補正が行われた場合は補正済みの(S1)値と(S4)値を比較し、前記(S4)値が(S1)値を超えた場合に警報を発し、また(S4)値が(S1)値を超えなかった場合には警報を発しない。
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