JP4186108B2 - スリーブと補強筋の連結具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンクリート建造物の梁や壁等に貫通孔を形成する際、コンクリート内に埋設される、スリーブと、補強筋と、の両者を接続するための連結具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート建造物の梁や壁等に対して各種の配管を通すための貫通孔を形成するには、まず紙管や塩化ビニール管からなる円筒状のスリーブを鉄筋に支持させ、次いで型枠設置後においてこのスリーブの上方から型枠内にコンクリートを打ち込む。そして、コンクリートの固化後に型枠を外すことによってスリーブ設置位置には貫通孔が形成され、このスリーブは抜き出されるか、またはその場に固定される。そして、形成した貫通孔に目的の配管を通した後、必要に応じて貫通孔内に再びコンクリートが打ち込まれ一連の作業は終了する。
【0003】
ところで、貫通孔の開口部周縁の強度を確保するため、今日では貫通孔用の補強筋が広く利用されている。図9に示す10は貫通孔用の補強筋であり、この補強筋10はスリーブSが挿通可能な適宜の大きさをなした環状の鉄筋部材と、スリーブSの下方側に接する2本の支え足と、を備えて構成されている。
【0004】
この補強筋10およびスリーブSを鉄筋に対して設置するには、スリーブSの両端部の近傍に一対の補強筋10をそれぞれ通し、この補強筋10の支え足上にスリーブSの両端部をそれぞれ載置させ、補強筋10と鉄筋とが重なる各部位を針金や紐からなる複数本の結束線によって連結する。そして、この補強筋10を複数の結束線とともにコンクリート内に埋設することによって該当部位の強度を確保する。
【0005】
なお、こうした貫通孔用の補強筋は今日において種々の形状のものが提案されていて、一本の鉄筋を複数回折り曲げて環状にしたもの、あるいは図10に示す補強筋10のように複数の鉄筋環状体を重ね合わせ接触部位を溶接して構成したもの等が利用されている。
また、大小のスリーブに適応するため、補強筋もまた大小のものが提供されていて、補強筋を構成する鉄筋の太さもまちまちである。
【0006】
【非特許文献1】
特開2000−136597号公報
【非特許文献2】
特開平11−193599号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のスリーブ補強筋には次に挙げる不都合がある。
図9に示すように補強筋10上に載せられたスリーブSは、コンクリートの打ち込み時において位置ずれを起こし、これによって梁等に形成する貫通孔に位置ずれが生じるという看過できない重大な問題が発生する事がある。
【0008】
すなわち、補強筋10は複数の結束線によって鉄筋に固定されているが、スリーブSにおいては補強筋10の2本の支え足に載せたのみの不安定な状態となっているのでこの状態においてコンクリートを打ち込むと、スリーブSがコンクリートの流動圧によって左右前後に揺動することになる。また、コンクリートがスリーブSの下端に達するまで打ち込まれると、コンクリートよりも軽いスリーブSはコンクリートの上面へと浮き上がり、コンクリート上面の上昇とともに上方へと移動することになる。
【0009】
こうした不都合を解消するため、従来においては図11に示すように補強筋10の幅よりも充分に長い鉄棒11を用意し、この鉄棒11の中央部位をスリーブSの上端部に接触させ、鉄棒11と鉄筋とが重なる各部位を複数の結束線によって連結固定するようにしている。すなわち、スリーブSを補強筋10と鉄棒11との両者によって鉄筋に対し強固に固定することによってコンクリートの打ち込み時においてもスリーブSが揺動あるいは移動することがないようにする対策がとられている。
【0010】
しかしながら、図11に示すような鉄棒11を複数本予め用意するとともに、これら鉄棒11をスリーブSに接触させた状態で鉄筋に対して固定するには煩雑で時間を要する作業を余儀なくされ、このスリーブ設置作業の能率を低下させる要因ともなっていた。
【0011】
また、上述の作業時における問題とは別に、スリーブSを固定するための鉄棒11の存在は建造物の耐久性を低下させるという問題もある。すなわち、鉄棒11はスリーブSの上端と接触しているので、コンクリートの固化後においてスリーブSを抜き出すと形成された貫通孔の内壁面(中央上部)には鉄棒11の表面が一部露出した状態となる。換言すれば鉄棒11とコンクリート表面との間に、当業者間で「かぶり厚」と称されるコンクリートの厚みを確保することが出来ないという問題が生じ、これによってこの鉄棒11の露出部から鉄筋へと腐蝕が進行する虞がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るスリーブと補強筋の連結具は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、スリーブと補強筋の連結具を、螺子棒およびこの螺子棒の先端に設けられる非腐食性材からなる当接体とを有したスリーブ押付体と、前記螺子棒に螺合するナット部材およびこのナット部材と一体に形成され補強筋を支持する捕捉手段とを有してなる補強筋連結体と、を具えて構成する。
【0013】
そして、前記補強筋連結体の捕捉手段は、補強筋連結体のナット部材に固着された一本あるいは複数本の結束線により構成する。
【0014】
また、前記補強筋連結体の捕捉手段を、補強筋連結体のナット部材と一体に形成され前記スリーブ押付体の後端に向うにしたがいスリーブ押付体から距離をおくよう傾斜する捕捉片によって構成する。
【0015】
あるいはまた、前記補強筋連結体の捕捉手段を、補強筋を保持するための湾曲部を有し、補強筋連結体のナット部材に固着される針金によって構成する。
【0016】
以上のようにスリーブと補強筋の連結具を構成し、スリーブを補強筋に対して押し付けこれら両者を連結することによって上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。
図1はこの発明の請求の範囲第1項に係るスリーブと補強筋の連結具を示す分解斜視図である。
【0018】
図1において3はスリーブ押付体であり、このスリーブ押付体3は、螺子棒1と、この螺子棒1の先端(図では下端)に設けられ頭部に丸みを帯びた当接体2と、から構成されている。また、この螺子棒1の上端にはドライバーの係合溝が形成されている。
【0019】
なお、スリーブ押付体3の当接部2は非腐食性の素材から形成されており、その材料は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂材、あるいは打ち込まれるコンクリートと同程度の硬度かそれ以上の硬度を有するコンクリート、モルタルによって形成するのが好ましい。
【0020】
一方、図に示す4は補強筋連結体であり、この補強筋連結体4は、ナット部材5と、捕捉手段6と、から構成されている。
ナット部材5は前記スリーブ押付体1の螺子棒1に螺合する螺子孔部を有していて、図においては一例として円筒形のものを示すがその外形は特に限定されるものではなく、例えばナットとして広く利用される六角筒形状のものを用いても良い。
【0021】
そして、捕捉手段6はナット部材5に対して固着される結束線により構成されていて、この例において結束線は二本設けられ、それぞれ中央位置がナット部材5に溶着されている。
【0022】
以上構成からなるスリーブと補強筋の連結具の使用時における作用を図2および図3により説明する。
まず、スリーブSを補強筋10の支え足の上に載せ、図2および図3に示すようにスリーブと補強筋の連結具をスリーブS上方に位置する補強筋10に対し結束線6により固定する。
なお、結束線6は当業者間では周知の通称「ハッカー」と称される道具によって容易に結束可能である。また、周知のように結束線は自由に形状を変化させることが可能であるので、補強筋10の鉄筋太さや鉄筋本数に関わらずあらゆる補強筋10に結束可能である。
【0023】
次いで上述の補強筋10への結束作業後、螺子棒1を回転させてスリーブ押付体3の当接体2によってスリーブSの上部を押さえ付ける。この際、螺子棒1は手動で回転させることも出来るが、頭部に設けられたドライバー溝を利用し、電動ドライバー等で螺子棒1を回転させるようにすれば作業はより容易なものとなる。
【0024】
以上のように連結具を設置することによって、図2の矢符に示すように、スリーブ押付体3はスリーブSとともに下方へ、また補強筋連結体4は補強筋10とともに上方へ、とそれぞれ移動しようとする力が生じ、スリーブSと補強筋10との両者はしっかりと固定される。そして、この連結具は補強筋10およびスリーブSとともにコンクリート内に埋設される。
【0025】
これによってコンクリートの打ち込み時におけるスリーブSの位置ずれ、換言すれば貫通孔の位置ずれを完全に防止することが出来る。また、スリーブ押付体1の先端には非腐蝕材からなる当接体2が設けられているのでスリーブSを抜き出した後に貫通孔の内壁面に鉄筋が露出してしまうこともない。
【0026】
次に図4ないし図6によってこの発明の請求範囲第2項に係るスリーブと補強筋の連結具の説明をする。なお、図1ないし図3に示した連結具と同一箇所には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0027】
この連結具の補強筋連結体4は、中央部が適度な角度で折り返されてなる断面「く」の字状の鉄板によって形成されている。そして補強筋連結体4は図に示すように中央部の折り返し部を境にして二つの平坦面が形成され、その一面の中央部に螺子孔を設けることでナット部材5が形成されている。
【0028】
また、補強筋連結体4の他面側は、スリーブ押付体3と連結した際、図5に示すように所定角度を有して上方へ立ち上がる捕捉片7となり、この捕捉片7の上面はスリーブ押付体3の後端(上端)に向うにしたがいスリーブ押付体3から距離をおく傾斜面となる。
【0029】
以上の構成からなる連結具は、図5および図6に示すように捕捉片7によって補強筋10を下方側から持ち上げるように支持することが出来る。
【0030】
なお、補強筋10を構成する鉄筋は上述のように太さがまちまちで、更に補強筋10には図10に示すように2本の鉄筋を溶接して構成したものもあるが、この連結具の捕捉片7は、上方に向けて傾斜しているので、補強筋10の鉄筋の太さや鉄筋の本数にかかわらず、どのような補強筋10であっても適正に支持可能である。
【0031】
このスリーブと補強筋の連結具も上述の連結具と同様に、スリーブSを補強筋10に対してしっかりと固定可能であり、また、スリーブSを抜き出した後に貫通孔の内壁面に鉄筋が露出してしまうこともない。
【0032】
一方図7は、図5および図6に示したスリーブと補強筋の連結具の螺子棒1を長く形成した例を示すものである。この螺子棒1は図に示すように先端部近傍のみに螺子部を備えている。
この長手の螺子棒1を具えてなる連結具は作業者の手が届かない位置にあるスリーブ、例えば床面下方(作業場下方)に設置されるスリーブを固定する際に便利であり、螺子棒1の上端部に設けられたドライバー溝を利用して螺子棒1を回転させることで離れた位置にセットされたスリーブを無理なく固定することが出来る。
【0033】
一方図8は、この発明の請求範囲第3項に係るスリーブと補強筋の連結具の一構成例を示す外観斜視図である。次に図8にもとづいてこの連結具の説明をする。なお、上述の連結具と同一箇所には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0034】
この連結具は、円筒形状のナット部材5と、このナット部材5に溶着される捕捉手段としての針金8と、からなる補強筋連結体4を具えている。
この針金8は、図に示すようにU字形状の一対の湾曲部8a、8aを具えていて、これら各湾曲部8aはいずれも補強筋10を下方側から持ち上げるようにして支持することが出来る。また、この湾曲部8aは補強筋10の太さに応じて適宜にその形状を変化させることが出来るので、大小いずれの補強筋10であっても無理なく支持可能である。
【0035】
また、各湾曲部8aの間には湾曲突出部8bが設けられ、この湾曲突出部8bは、スリーブSと補強筋10との両者を設置箇所へと下降させる際、吊り下げ用ロープのフックとして利用可能である。
なお、こうした形状をなす針金8は、一本の針金を所定の形状に変形させる周知の技術(マルチフォーミング)によって安価かつ短時間で生産可能である。
この連結具も上述の連結具と同様に、補強筋10とスリーブSとの両者の間に介在しこれら両者をしっかりと連結することが出来る。
【0036】
【発明の効果】
この発明に係るスリーブと補強筋の連結具は、以上説明したように螺子棒と当接体とからなるスリーブ押付体と、このスリーブ押付体に螺合するナット部材および補強筋を支持する捕捉手段からなる補強筋連結体と、を具えて構成したので次に挙げる効果を有する。
【0037】
このスリーブと補強筋の連結具によれば、スリーブと補強筋との両者を揺動することなくしっかりと連結する事が出来、これによってコンクリート打ち込み時のスリーブの揺動から生じる貫通孔の位置ずれを解消することが可能である。
【0038】
また、鉄棒を利用してスリーブを固定する煩雑な作業を省略するとともに、スリーブ押付体の非腐蝕材からなる当接体によってコンクリート表面からの鉄棒の露出問題を解決する事が出来、作業能率の向上とともに建造物の耐久性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の請求の範囲第1項に係るスリーブと補強筋の連結具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示した連結具の使用状態を示す側面図である。
【図3】図1に示した連結具の使用状態を示す正面図である。
【図4】この発明の請求の範囲第2項に係るスリーブと補強筋の連結具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示した連結具の使用状態を示す側面図である。
【図6】図4に示した連結具の使用状態を示す正面図である。
【図7】この発明の請求の範囲第2項に係るスリーブと補強筋の連結具の螺子棒を長めに構成した例を示す外観斜視図である。
【図8】この発明の請求の範囲第3項に係るスリーブと補強筋の連結具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図9】従来の例として、補強筋とスリーブとの両者を鉄筋に設置した状態を示す外観斜視図である。
【図10】複数の鉄筋環状体を重ね合わせ接触部位を溶接してなる補強筋を示す正面図である。
【図11】従来の技術として鉄棒と結束線とを利用してスリーブを固定する例を示す正面図である。

Claims (3)

  1. コンクリート建造物の梁等に貫通孔を形成する際、コンクリート内に埋設される、スリーブと、補強筋と、の両者を接続するための連結具であって、このスリーブと補強筋の連結具を、螺子棒およびこの螺子棒の先端に設けられる非腐食性材からなる当接体とを有してなるスリーブ押付体と、前記螺子棒に螺合するナット部材およびこのナット部材と一体に形成され補強筋を支持する捕捉手段とを有してなる補強筋連結体と、を具えて構成し、前記補強筋連結体の捕捉手段は、補強筋連結体のナット部材に固着された一本あるいは複数本の結束線により構成したことを特徴とするスリーブと補強筋の連結具。
  2. コンクリート建造物の梁等に貫通孔を形成する際、コンクリート内に埋設される、スリーブと、補強筋と、の両者を接続するための連結具であって、このスリーブと補強筋の連結具を、螺子棒およびこの螺子棒の先端に設けられる非腐食性材からなる当接体とを有してなるスリーブ押付体と、前記螺子棒に螺合するナット部材およびこのナット部材と一体に形成され補強筋を支持する捕捉手段とを有してなる補強筋連結体と、を具えて構成し、前記補強筋連結体の捕捉手段は、補強筋連結体のナット部材と一体に形成され前記スリーブ押付体の後端に向うにしたがいスリーブ押付体から距離をおくよう傾斜する捕捉片によって構成したことを特徴とするスリーブと補強筋の連結具。
  3. コンクリート建造物の梁等に貫通孔を形成する際、コンクリート内に埋設される、スリーブと、補強筋と、の両者を接続するための連結具であって、このスリーブと補強筋の連結具を、螺子棒およびこの螺子棒の先端に設けられる非腐食性材からなる当接体とを有してなるスリーブ押付体と、前記螺子棒に螺合するナット部材およびこのナット部材と一体に形成され補強筋を支持する捕捉手段とを有してなる補強筋連結体と、を具えて構成し、前記補強筋連結体の捕捉手段は、補強筋を保持するための湾曲部を有してなり、補強筋連結体のナット部材に固着される針金により構成したことを特徴とするスリーブと補強筋の連結具。
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