JP4184820B2 - コレステロールエステラーゼおよびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なコレステロールエステラーゼに関するものであり、さらにはトリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を培養し、培養液よりコレステロールエステラーゼを精製することによりなるコレステロールエステラーゼの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血清総コレステロールの測定はコレステロール代謝機能を知るうえで重要な検査項目になっている。高コレステロール値は甲状腺機能低下症、糖尿病、ネフローゼ症候群、動脈硬化症などに見られ、低コレステロール値は甲状腺機能亢進症、肝臓障害、貧血、栄養失調などの可能性がある。
【0003】
血清中のコレステロールは、大部分が脂肪酸とのエステルとして存在している。そのため、総コレステロールの酵素的測定法においては、まずコレステロールエステラーゼによってコレステロールエステルを加水分解してコレステロールと遊離脂肪酸にする。ついで、コレステロールオキシダーゼによってコレステロールを酸化し、4−コレステン−3−オンと過酸化水素にする。最後に、過酸化水素をペルオキシダーゼを用いて発色させ、生成するキノンイミン色素を比色定量する。
【0004】
微生物起源のコレステロールエステラーゼとしては、現在までにシュードモナス属(たとえば、特許文献1、2、3および4参照)、ストレプトミセス属(たとえば、特許文献5参照)、ノカルデイア属(たとえば、特許文献6参照)、担子菌のカワラタケ(たとえば、特許文献7参照)、スエヒロタケ(たとえば、特許文献8参照)などから採取されたものが知られている。また、そのほかにも多くの微生物由来のコレステロールエステラーゼが開示されている(たとえば、特許文献9参照)。
【0005】
一方、血清中のコレステロールエステルの脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などさまざまの脂肪酸が含まれている。そのため、血清中の総コレステロールの測定に用いるエステラーゼとしては、鎖長の異なる広範囲の脂肪酸エステルに作用するものが望まれる。また、これを脂質汚染されたものの洗浄用酵素として利用する場合にも、同様に広範囲の脂肪酸エステルに作用するものが望ましい。しかしながら、従来知られているコレステロールエステラーゼはすべて脂肪酸特異性を有しており、作用しやすいコレステロールエステルと作用しがたいコレステロールエステルがあり、広範なコレステロールエステルに非特異的に高く作用するコレステロールエステラーゼは知られていない。さらに、産業的に利用するうえでは、温度、pH、薬剤、空気酸化などに対して安定な酵素が必要とされる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭50−157588号公報
【特許文献2】
特開昭52−7483号公報
【特許文献3】
特開昭56−42586号公報
【特許文献4】
特開平9−251号公報
【特許文献5】
特開昭53−109992号公報
【特許文献6】
特開昭57−43686号公報
【特許文献7】
特開昭55−114288号公報
【特許文献8】
特開昭53−9391号公報
【特許文献9】
特開昭62−36200号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑み、広範囲の脂肪酸コレステロールエステルに対して非特異的に高い活性を示し、かつ安定性の高いコレステロールエステラーゼを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下の理化学的性質を有するコレステロールエステラーゼに関する。
(1)基質特異性:リノール酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、n−カプリル酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、カプリン酸コレステロール、カプリル酸コレステロール、カプロイン酸コレステロール、酪酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、酢酸コレステロールおよび安息香酸コレステロールに対し、非特異的に高い活性
(2)最適pHおよびpH安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適pHは4.5〜6.5、ブリットン−ロビンソン広域緩衝液を用いた場合、25℃、16時間後の残存活性はpH4〜8.5で約100%
(3)最適温度および温度安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適温度は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で約40℃、同緩衝液中、各温度で30分処理後の残存活性は60℃までほぼ100%
(4)等電点:蔗糖密度勾配アンフォライン電気泳動でpH4.7±0.3
(5)分子量:約114kDa(約57kDaのサブユニット2個)
【0009】
また、本発明は、トリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を培養し、その培養物からコレステロールエステラーゼを採取することを特徴とする前記コレステロールエステラーゼの製造法に関する。
【0010】
前記製造法において、トリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌が、トリコデルマ属 スギハラ菌株(Trichoderma sugihara;FERM BP−8273)であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の製造法で用いるコレステロールエステラーゼ生産菌としては、トリコデルマ属に属するものであって、脂肪酸鎖長の異なるコレステロールエステルに対して非特異的に作用し、かつ安定性の高いコレステロールエステラーゼを生産する菌株であればいずれのものでもよく、とくに種を限定されるものではない。このような菌の最も好ましい具体例としては、トリコデルマ属 スギハラ菌株(Trichoderma sugihara;FERM BP−8273)があげられる。この菌株は土壌により新たに分離したものであり、その菌学的諸性質を以下に示す。
【0012】
(a)形態学的性状
(1)巨視的観察結果:25℃で、じゃがいもデキストロース寒天培地(PDA)、オートミール寒天培地(OA)および麦芽抽出物寒天培地(MEA)上での培養では、菌糸による表面の色調は白ないし黄白色のビロード状ないしは羊毛状を呈し、5日以降から分生子の着生が認められ、PDAプレート上では黄白色、OAおよびMEA上では緑色へのコロニー色調の変化が認められる。コロニー表面は乾燥性となり、滲出液は認められず、可溶性色素の産生も認められない。分生子は分生子柄の先端より塊状となり、分生子柄も集塊し、瘤状となる。
【0013】
(2)微視的観察結果:分生子柄は規則的に分岐したトリコデルマ属のかびの分生子柄様のものが多数あり、分生子は一細胞性で2〜3μm、表面は平滑、形状は球ないし亜球状である。菌糸の先端にあって分生子を出芽形成する梗子は散開し、90%以上が2〜4分岐しており、平滑で短く、中腹で膨れている。また、気中菌糸基部より球形で平滑な厚壁胞子も存在する。
【0014】
以上の諸性質から、本菌はトリコデルマ属群に帰属すると考えられる。同様の形態を示す菌も他にあるが、分生子が緑色であること、球形ないし亜球形であること、一細胞性であること、さらにコロニーが速やかに生育し、菌糸は明色を呈すること、梗子は分生子柄全体に存在すること、散開状で短く、中腹で膨れた形状を示すことは、Carmichaelら1980年の文献(Carmichael, J.W., et al.,Genera of Hyphomycetes, The University of Albeta Press, pp.386, Alberta,8(1980))記載のトリコデルマ属の形態性状と一致している。したがって、本菌はトリコデルマ属であると同定し、トリコデルマ属 スギハラ菌株(Trichoderma sugihara)と命名した。
【0015】
なお、本トリコデルマ属 スギハラ菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号FERM BP−8273として寄託されている。
【0016】
本発明のコレステロールエステラーゼはトリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を培養し、その培養物からコレステロールエステラーゼを採取することにより製造できる。
【0017】
本発明によるトリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を培養するには、通常の栄養培地を使用することができ、炭素源、窒素源、無機塩類などを適当に含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれも使用することができる。
【0018】
炭素源としては、グルコース、澱粉、糖蜜などの糖質、アルコール類、有機酸類、オリーブ油、大豆油などの油脂、およびこれらの組み合わせを用いることができる。窒素源としてはコーンスティープリカー、大豆粉、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなどの有機窒素化合物、硫安、硝安、尿素などの無機窒素化合物を用いることができる。無機塩類としては、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウムなどを使用できる。これらの炭素源、窒素源および無機塩類は、使用する微生物に合わせて適宜選択することができる。さらに、コレステロールエステラーゼ生産を促す各種コレステロールエステルを培地に添加してもよい。
【0019】
培養は、このような成分を含む液体培地中で通気撹拌などの好気的培養により行なうことができる。培養温度は15〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。培養温度が15℃より低いと生育が遅くなる傾向があり、50℃より高いと部分的に死滅する傾向がある。培養のpHは4〜9.5が好ましく、5〜8がより好ましい。pHが4より低いと生育が遅くなる傾向があり、9.5より高いと死滅する傾向がある。培養期間は2〜10日間が好ましく、3〜7日間がより好ましい。培養期間が2日より短いと酵素生産が不充分となる傾向があり、10日より長いと酵素が部分失活する傾向がある。
【0020】
培養液からコレステロールエステラーゼを採取するには、ろ過または遠心分離により培養液から菌体を除去し、該ろ液または上清液から硫安塩析、アルコール、アセトンなどを用いる溶剤沈殿、限外ろ過膜による濃縮などの公知の方法で酵素標品を得ることができる。さらに、高度に精製された酵素標品を得るには、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどの従来から用いられている精製法で精製すればよい。
【0021】
本発明のコレステロールエステラーゼは、以下の性質を有する。
(1)基質特異性:リノール酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、n−カプリル酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、カプリン酸コレステロール、カプリル酸コレステロール、カプロイン酸コレステロール、酪酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、酢酸コレステロールおよび安息香酸コレステロールに対して非特異的に高い活性
(2)最適pHおよびpH安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適pHは4.5〜6.5、ブリットン−ロビンソン広域緩衝液を用いた場合、25℃、16時間後の残存活性はpH4〜8.5で約100%
(3)最適温度および温度安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適温度は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で約40℃、同緩衝液中、各温度で30分処理後の残存活性は60℃までほぼ100%
(4)等電点:蔗糖密度勾配アンフォライン電気泳動でpH4.7付近
(5)分子量:約114kDa(約57kDaのサブユニット2個)
【0022】
これらの理化学的性質は、たとえば下記の方法により測定することができる。
【0023】
<コレステロールエステラーゼ活性測定法>
コレステロールエステラーゼ活性の測定は、コレステロールエステルを基質とするコレステロールエステラーゼ反応により遊離させたコレステロールをコレステロールオキシダーゼで酸化したのち、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼにより4−アミノアンチピリンと反応させ、生成したキノン色素を分光光度計により定量する方法を用いた。
【0024】
たとえば、コレステロールエステラーゼ活性はリノール酸コレステロール((株)ICN ファーマスーティカルズ製)を基質として用い、0.03Mの同基質溶液(イソプロパノールに溶解したもの)2mlを72〜74℃の1%トリトンX−100水溶液100mlと混和して30分間この温度に保ったのち、室温まで冷却する。これに0.2Mリン酸カリウム緩衝液150ml、1.76%の4−アミノアンチピリン水溶液5ml、6%のフェノール水溶液10ml、および西洋わさび由来のペルオキシダーゼ水溶液(150プルプロガリン単位を0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解したもの)10mlを混和する。この反応混合液2.75mlを試験管にとり37℃で5分間加温し、コレステロールオキシダーゼ水溶液(300単位/ml)0.1mlを加えてさらに2分間加温する。ついで、コレステロールエステラーゼを含む試料液0.1mlを加えて混和したのち、水を対照として、37℃に温度制御された分光光度計で500nmの吸光度変化を1分間記録し、その初期勾配から1分間あたりの吸光度変化(ΔAt)を求める。盲検値として試料液の代わりに5分間煮沸して完全失活させた酵素を0.1ml加え、前記と同様の操作を行ない1分間あたりの吸光度変化(ΔAb)を求める。両吸光度の差を(ΔAt−ΔAb)とすると、試料液のコレステロールエステラーゼ活性は次式で求められる。ただし、コレステロールエステラーゼ活性は前記条件で、1分間に1μモルのコレステロールを生成する酵素量を1単位と定義する。
活性(単位/ml)=(ΔAt−ΔAb)×4.281
【0025】
<最適pH測定法>
本酵素の各pHにおける活性を、基質としてリノール酸コレステロールを用いて測定する。0.2Mブリットン−ロビンソンの広域緩衝液を用いて、0.2mMの基質溶液を調製する。各pHの基質溶液(コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを含まない)2.75mlに、本発明により採取精製したコレステロールエステラーゼ溶液(以下、精製酵素液と称する)50μlを加え、37℃で10分間保温したのち、0.2Mフェニルメタンスルフォニルフルオライド水溶液を50μl加えて、酵素を失活させる。これに、コレステロールオキシダーゼ(300単位/ml)、ペルオキシダーゼ(150単位/ml)、および0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)を1:1.2:8.25の割合で混合したものを1.045ml加えて、500nmの吸光度を測定し、生成コレステロールを定量する。盲検値として、精製コレステロールエステラーゼの代わりに、水を用いて同様の操作を行なって求める。
【0026】
<最適温度測定法>
0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を用いる以外は前記最適pH測定法と同様の操作を20〜60℃で行ない、最適温度を求める。
【0027】
<安定pH域測定法>
ブリットン−ロビンソン広域緩衝液(pH3.5〜11.5)50μlと精製酵素液50μlを混和し、25℃で16時間保温した。その後、その溶液のpHを測定するとともに、前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして残存活性を測定する。残存活性95%以上を安定とし、安定pH域を求める。
【0028】
<安定温度測定法>
0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50μlと精製酵素液50μlを混和し、20〜75℃で30分間保温する。ついで、その混和液を氷冷し、前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして残存活性を測定する。
【0029】
<等電点測定法>
蔗糖密度勾配等電点電気泳動装置(LKB社製)を用いて、400Vで2日間泳動した後、1.2mlずつ分画し、pHと活性を測定する。
【0030】
<基質特異性測定法>
表1の各種酸のコレステロールエステル(リノール酸コレステロールのみ(株)ICN ファーマス−テイカルズ製で、その他は東京化成株式会社製)に対する加水分解活性を前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして測定し、基質特異性を決定する。
【0031】
<ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動>
9%の分離用アクリルアミドゲルの上に3%の濃縮用アクリルアミドゲルを乗せ、pH8.3の泳動用緩衝液を用いて100Vの電圧で泳動させる。泳動後、和光純薬工業株式会社製のクイックCBB液で染色する。分子量マーカーとして、ホスホリラーゼb(94キロダルトン)、牛血清アルブミン(67キロダルトン)、オボアルブミン(43キロダルトン)、カルボニックアンヒドラーゼ(30キロダルトン)、大豆トリプシンインヒビター(20.1キロダルトン)を用いる。
【0032】
【表1】
【0033】
つぎに、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0034】
実施例1
ペプトン2%(W/V)、酵母エキス1%(W/V)、食塩0.1%(W/V)、第一リン酸カリウム0.1%(W/V)および水道水からなる培地(pH6.0)150mlを500ml用の振とうフラスコに入れて、120℃で15分間殺菌した。この培地にトリコデルマ属 スギハラ菌株(Trichoderma sugihara;FERM BP−8273)を接種し、これを26℃で約4日間振とう培養した。培養終了後、培養液をろ過して菌体を除去し、ろ液に粉末硫安を終濃度70%飽和になるまで加え、15℃で1日放置した。これを遠心分離して生じた沈殿を集め、15mlの水に溶解し、2mMのリン酸緩衝液(pH7.0)(以下緩衝液Aという)に対して透析した。つぎに、硫安を終濃度20%飽和になるように加え、ブチルトヨパール650C(東ソー株式会社製)に吸着させた。ついで、硫安濃度を徐々に0%まで下げ、吸着蛋白を溶出した。活性画分を集め、限外ろ過膜を用いて濃縮した後、0.15Mの食塩を含む緩衝液Aで平行化したSuperdex200のカラム(1×30cm、アマシャム バイオサイエンス社製)によるゲルろ過を行なった。活性画分を集め、限外ろ過膜で濃縮した後、緩衝液Aに対して透析した。これをアニオン交換用MonoQカラム(0.5×5cm、アマシャム バイオサイエンス社製)に吸着させ、緩衝液Aでよく洗浄後、溶離液中の食塩の濃度を0〜0.5Mまで徐々に上げ、吸着したコレステロールエステラーゼを溶出させ精製酵素標品を得た。
【0035】
基質特異性
前記基質特異性測定法と同様の方法で、表1記載の酸のうち、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸および安息香酸のコレステロールエステルについて相対加水分解活性を測定した。得られた結果を、表2および図1に示す。表2において、基質であるコレステロールエステルは、該エステルを構成する酸で示し、該酸が脂肪酸である場合は、炭素数および不飽和度で示す。本酵素は芳香属の酸を含むすべてのコレステロールエステルに対し、ほぼ等しい加水分解活性を示した。
【0036】
最適pH
前記最適測定法と同様にして測定を行なった結果を図2に示す。最適pHは4.5〜6.5であった。
【0037】
pH安定性
前記安定pH域測定法と同様にして測定を行なった結果を図3に示す。本酵素はpH4〜8.5のあいだで安定であった。
【0038】
最適温度
前記最適温度測定法と同様にして測定を行なった結果を図4に示す。本酵素の最適温度は40℃であった。
【0039】
温度安定性
前記温度安定性測定法と同様にして測定を行なった結果を図5に示す。本酵素は60℃まで安定であるが、それ以上の温度で失活し始め、70℃で活性が消失した。
【0040】
等電点
前記等電点測定法と同様にして測定を行なった結果、等電点は4.7であった。
【0041】
分子量
前記ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と同様にして測定を行なった結果を図6に示す。本酵素は約57キロダルトンのサブユニットからなり、ゲルろ過法の結果(本酵素の分子量約11万)から、サブユニット2個からなる酵素であることが判明した。
【0042】
これら本酵素の理化学的性質を従来知られているコレステロールエステラーゼの理化学的性質と比較したものを表2に示す。他のコレステロールエステラーゼはすべて脂肪酸特異性を有しているのに対し、本酵素はそのような特異性を示さないばかりでなく、芳香酸のコレステロールエステルに対しても脂肪酸のコレステロールエステルと測定誤差範囲内で等しい加水分解活性を示す。したがって、本酵素は既知のコレステロールエステラーゼと異なるものであることが明らかである。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明によるコレステロールエステラーゼは、広い範囲の炭素原子数の脂肪酸のコレステールエステルに対してのみならず、芳香酸のコレステロールエステルにもほぼ同一の加水分解活性を示すという他に例のない特性を有し、しかも安定であるため、血液中の総コレステロールの定量に使用する臨床検査薬としてのみならず、洗剤用酵素としても有用である。また、本発明の方法によれば、広い範囲の炭素原子数の酸のコレステロールエステルに対して、高くかつほぼ同一の加水分解活性を示すコレステロールエステラーゼを大量にかつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコレステロールエステラーゼの基質特異性を示すグラフである。
【図2】本発明によるコレステロールエステラーゼのpH−活性曲線を示すグラフである。
【図3】本発明によるコレステロールエステラーゼのpH−安定性曲線を示すグラフである。
【図4】本発明によるコレステロールエステラーゼの温度−活性曲線を示すグラフである。
【図5】本発明によるコレステロールエステラーゼの温度−安定性曲線を示すグラフである。
【図6】本発明によるコレステロールエステラーゼのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果である。
Claims (3)
- 以下の理化学的性質を有するコレステロールエステラーゼ。
(1)基質特異性:リノール酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、n−カプリル酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、カプリン酸コレステロール、カプリル酸コレステロール、カプロイン酸コレステロール、酪酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、酢酸コレステロールおよび安息香酸コレステロールに対し、非特異的に高い活性
(2)最適pHおよびpH安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適pHは4.5〜6.5、ブリットン−ロビンソン広域緩衝液を用い、25℃で16時間保温した場合、pH4〜8.5で安定
(3)最適温度および温度安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適温度は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で約40℃、同緩衝液中、各温度で30分処理した場合、60℃まで安定
(4)等電点:蔗糖密度勾配アンフォライン電気泳動でpH4.7±0.3
(5)分子量:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した場合に約57kDa、ゲルろ過法で測定した場合に約11万(約57kDaのサブユニット2個) - トリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を培養し、その培養物からコレステロールエステラーゼを採取することを特徴とする請求項1記載のコレステロールエステラーゼの製造法。
- トリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌が、トリコデルマ属 スギハラ菌株(Trichoderma sugihara;FERM BP−8273)である請求項2記載の製造法。
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