図1は、本発明の磁気ヘッドの製造方法を用いて形成された磁気ヘッドの正面図であり、図2は図1に示された磁気ヘッドをA−A線で切断して矢印方向からみた部分縦断面図である。
図2に示す記録用の磁気ヘッドWが本発明の製造方法を用いて形成された磁気ヘッドであり、いわゆるインダクティブヘッドWである。このインダクティブヘッドWは、例えば磁気抵抗効果を利用した再生用磁気ヘッドHrの上に積層される。
図1及び図2に示される磁気ヘッドは、浮上式ヘッドを構成するセラミック材のスライダSのトレーリング側端面Saに形成されたものであり、再生用磁気ヘッドHrと、書込み用のインダクティブヘッドWとが積層された、複合型薄膜磁気ヘッドとなっている。
図1及び図2に示すように、スライダSのトレーリング側端面Sa上にAl2O3膜22を介して再生用磁気ヘッドHrが形成されている。再生用磁気ヘッドHrは、磁気抵抗効果を利用してハードディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界を検出し、記録信号を読み取るものである。
再生用磁気ヘッドHrは、例えばスピンバルブ膜に代表される巨大磁気抵抗効果を利用したGMR素子やトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR素子、異方性磁気抵抗効果を利用したAMR素子で形成される磁気抵抗効果素子である磁界読み取り部Mと、磁界読み取り部Mの上下に下部ギャップ層24及び上部ギャップ層25を介して形成された下部シールド層23と上部シールド層26を有している。
磁界読み取り部Mのトラック幅方向(X方向)の長さが、再生用磁気ヘッドHrのトラック幅Trである。また、上部シールド層26と下部シールド層23間の距離はH2である。
下部ギャップ層24及び上部ギャップ層25は、Al2O3やSiO2などの絶縁性材料からなり、下部シールド層23及び上部シールド層26は、NiFe系合金(パーマロイ)などの高透磁率の軟磁性材料で形成されている。
上部シールド層26の上には、Al2O3やSiO2などの絶縁性材料からなる分離層27が積層されており。分離層27の上にインダクティブヘッドWが積層されている。
分離層27の上には、本発明の第1の磁性部に相当する下部コア層30が積層されている。下部コア層30上には、図2に示されるようにGd決め層31が形成されている。
Gd決め層31の材料には、レジストなどの有機絶縁性材料、Al2O3やSiO2などの無機絶縁性材料、NiP、NiReP、Cuなどの非磁性金属材料を用いる。なお、Gd決め層31は単層で形成されても、多層膜で形成されてもよい。
記録媒体との対向面FからGd決め層31の前端面31aまでの長さ寸法でギャップデプス(Gd)が規制される。
また図2に示すように、記録媒体Kとの対向面FからGd決め層31上にかけて磁極部33が形成されている。
磁極部33は下から下部磁極層34、非磁性のギャップ層35、及び上部磁極層36が積層されて形成されている。
下部磁極層34は、下部コア層30上にメッキ形成されている。また下部磁極層34の上に形成されたギャップ層35は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上を選択できる。また、ギャップ層35は単層膜で形成されていても多層膜で形成されていてもどちらであってもよい。
なお本発明における具体的な実施形態としてギャップ層35にはNiPが使用される。NiPでギャップ層35を形成することで前記ギャップ層35を適切に非磁性状態にできるからである。またギャップ層35がNiP合金で形成されると、製造上の連続メッキ容易性に加えて、耐熱性に優れ、下部磁極層34及び上部磁極層36との密着性も良い。また下部磁極層34及び上部磁極層36との硬さも同等とすることができるので、例えばイオンミリング等により、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を加工する際の加工量も同等とすることができ加工性を向上させることができる。
なお、ギャップ層35はNiP合金であって元素Pの濃度は8質量%以上で15質量%以下であることが好ましい。これにより例えば発熱等の外的要因に対しても安定して非磁性であることが可能である。また、NiP合金等のギャップ層35の合金組成の測定は、SEMやTEM等の組合わされたX線分析装置や波形分散形線分析装置等で特定可能である。
なおギャップ層35は例えばAl2O3などの絶縁物であっても良いが、かかる場合、ギャップ層35上に上部磁極層36をメッキ形成するためのメッキ下地を形成する必要があり、磁極部33の形成が煩雑化するため、ギャップ層35はメッキ形成されることが好ましい。
さらにギャップ層35の上に形成された上部磁極層36は、その上に形成される上部コア層41と磁気的に接続される。上部コア層41が本発明の第2の磁性部に相当する。
上記のようにギャップ層35がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を連続メッキ形成することが可能である。
図1及び図2に示す薄膜磁気ヘッドでは、上部磁極層36のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法は上部コア層41のトラック幅方向寸法及び下部コア層30のトラック幅方向寸法よりも短く形成されており、この上部磁極層36の幅寸法でトラック幅Twが規制されている。トラック幅Twは、例えば0.1μm〜1.0μmである。または0.1μm〜0.5μmである。また、ギャップ層35及び下部磁極層34のトラック幅方向(図示X方向)寸法も上部コア層41のトラック幅方向寸法及び下部コア層30のトラック幅方向寸法よりも短く形成されている。
上部磁極層36及び下部磁極層34は、NiFe、CoFe、FeCoNi、或いはCoFeX又はFeNiX(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Ptのいずれか1種または2種以上の元素である)の組成式で示される軟磁性材料のうちいずれか1種或いは2種以上を用いて形成される。
本実施の形態では、上部磁極層36は、磁性層36aと磁性層36bの積層構造で形成され、図2に示されるように磁性層36aはギャップ層35上からGd決め層31上にかけて形成されている。
磁性層36bは、磁性層36aを形成する軟磁性材料と同じ組成式で表わされる軟磁性材料で形成されてもよいし、異なる組成式を有する軟磁性材料で形成されてもよい。
ただし、磁性層36aは磁性層36bよりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料によって形成されることが好ましい。
このようにギャップ層35に近い磁性層36aを飽和磁束密度の大きい磁性材料で形成することで上部コア層41から流れてきた磁束をギャップ近傍に集約することが容易になり、記録密度を向上させることが可能になる。
なお磁性層36bも磁性層36aと同じ材質の磁性材料で形成する場合、例えばNiFe合金で形成する場合には、磁性層36a側のNiFe合金のFe量を磁性層36b側のNiFe合金のFe量よりも大きくすることで、磁性層36aの飽和磁束密度Bsを磁性層36bの飽和磁束密度Bsよりも大きくすることができる。
また上部磁極層36が3層以上の多層膜として形成される場合も同様に、ギャップ層35に近い磁性層ほど飽和磁束密度Bsが高くなるように磁性材料を選択することが好ましい。
なお磁極部は、ギャップ層35及び上部磁極層36のみで構成されていてもよい。
下部コア層30の上であって、Gd決め層31のハイト方向(図示Y方向)後方には絶縁層37が形成されており、絶縁層37上には、Cuなどの導電性材料によってコイル層38の下部コイル層38aが螺旋状にパターン形成されている。下部コイル層38aは無機絶縁材料製の絶縁層39によって覆われている。コイル層38は2層構造になっており、絶縁層39の上に上部コイル層38bが形成されており、下部コイル層38aの巻き中心38a1と上部コイル層38bの巻き中心38b1が導電性の接続層44によって接続されている。なお、下部コイル層38aと上部コイル層38bの巻き方向は互いに逆方向である。上部コイル層38bは有機絶縁材料製のコイル絶縁層40によって覆われている。
図2に示すように、磁極部33上からコイル絶縁層40上にかけて上部コア層41が例えばフレームメッキ法によりパターン形成されている。また、図1に示すように、上部コア層41の先端部41aは、記録媒体との対向面Fでのトラック幅方向における幅寸法がW1で形成され、かかる幅寸法W1はトラック幅Twよりも大きく形成されている。なお、上部コア層41の前面41a1は記録媒体との対向面Fよりもハイト方向後方に位置しており、上部コア層41は記録媒体との対向面Fに露出していない。
また図2に示すように、上部コア層41の基端部41bは、下部コア層30上に形成された磁性材料製の持上げ層(バックギャップ層)42上に接続されている。
また、上部コア層41は、上部磁極層36の磁性層36bと結合している。磁性層36bは上部コア層41よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料によって形成されることが好ましい。
上部コア層41と下部コア層30は、NiFeなどによってメッキ形成されている。上部コア層41と上部磁極層36は同じ材質でも異なる材質で形成されてもよい。下部コア層30と下部磁極層34は同じ材質でも異なる材質で形成されてもよい。また、下部磁極層34は、下部コア層30よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料で形成されることが好ましい。
記録媒体との対向面において、下部コア層30の上面30aは平坦面30b1で形成されてもよいし、磁極部33の基端からトラック幅方向(図示X方向)に離れるにしたがって下面方向に傾く傾斜面30b2で形成されてもよい。下部コア層30の上面が傾斜面30b2で形成されると上部コア層41と下部コア層30の間隔を広げられるためサイドフリンジングの発生を抑制することが可能である。
図1に示すように、磁極部33のトラック幅方向(図示X方向)の両側には絶縁層39が露出している。
コイル層38に記録電流が与えられると、下部コア層30及び上部コア層41に記録磁界が誘導され、ギャップ層35を介して対向する下部磁極層34及び上部磁極層36間に漏れ磁界が発生し、この漏れ磁界により、ハードディスクなどの記録媒体に磁気信号が記録される。
図1及び図2に示された磁気ヘッドの特徴部分についてのべる。
図3に、図1及び図2に示された磁気ヘッドの磁極部33及び下部コイル層38a周辺の拡大部分断面図を示す。
図3に示されるように、磁極部33の上面33aが下部コイル層38aの上面38a2より低くなっている。すなわち、磁極部33の上面33aが下部コイル層38aの上面38a2より、図示Z方向と反対方向(スライダSのトレーリング側端面に近づく方向)に位置している。
これは、下部コイル層38aの上の絶縁層39をマスクし、磁極部33の上の絶縁層39を削り、さらに磁極部33の上面33a全体を削る工程を有する磁気ヘッドの製造方法に由来している。また、磁極部33の上に絶縁層39の溝39aが形成されこの溝内に上部コア層41の先端部41aが入り込む形になっている。図1ないし図3に示された磁気ヘッドの製造方法については後に詳細に説明する。
図1及び図2に記載された磁気ヘッドが搭載されたスライダSは記録媒体Kが回転するときに発生する空気流によって浮上した状態で、記録媒体Kに磁気信号を記録する。このとき、コイル層38から発生するジュール熱によって、磁気ヘッドの磁極部33周辺が記録媒体K方向に熱膨張・突出して記録媒体Kと接触することがある。磁気ヘッドと記録媒体Kが不用意に接触すると、磁気ヘッドや記録媒体が損傷することがある。
本発明の製造方法を用いると下部コイル層38aの膜厚t11を大きくすることができる。従って、下部コイル層38aの直流抵抗値を小さくしてコイル層38全体の直流抵抗値及び発熱量を小さくすることができる。
コイル層38の直流抵抗値を低減することにより、コイル層38から発生するジュール熱を低減し、磁極部33周辺の突出を抑制できる。従って、磁気ヘッドや記録媒体の損傷を抑制することができる。
図3に示されるように、下部コイル層38aはギャップ層35のハイト方向(図示Y方向)後方に形成されている。下部コイル層38aの膜厚t11を大きくするということは、下部コイル層38aの上面38a2をなるべく磁気ヘッドの上方(図示Z方向)に位置させかつ、下部コイル層38aの下面38a3を下方向(図示Z方向に反対方向)に位置させることである。ギャップ層35のハイト方向後方に下部コイル層38aを形成すると、下部コイル層38aの下面38a3がギャップ層35より下方に位置することになり、下部コイル層38aの膜厚t11が大きくなる。
図4は本発明の磁気ヘッドの製造方法を用いて形成された他の磁気ヘッドの部分断面図であり、図5は図4に示された磁気ヘッドの磁極部33及び下部コイル層38a周辺の拡大部分断面図である。
図4及び図5に示された磁気ヘッドは、図1ないし図3に示された磁気ヘッドと磁極部33の形状が異なっている点で相違している。再生用磁気ヘッドHr及びインダクティブヘッドWの磁極部33の形状以外の構成は図1ないし図3に示された磁気ヘッドと同じである。
図4及び図5に示されるように、磁極部33の上面33aには段差33a3が存在している。段差33a3よりも記録媒体との対向面F側(図示Y方向と反対方向)に第1上面33a1が形成され、段差33a3よりもハイト方向後方側(図示Y方向)に第2上面33a2が形成されている。第1上面33a1は第2上面33a2よりも低くなっている。すなわち、第1上面33a1の下部コア層30の上面からの高さ寸法t15は、第2上面33a2の下部コア層30の上面からの高さ寸法t14よりも低くなっている。つまり、第1上面33a1が第2上面33a2より、図示Z方向と反対方向(スライダSのトレーリング側端面に近づく方向)に位置している。
さらに、磁極部33の第2上面33a2が下部コイル層38aの上面38a2より低くなっている。
これは、下部コイル層38aの上の絶縁層39をマスクし、磁極部33の上の絶縁層39を削り、さらに磁極部33の第1上面33a1を削る工程を有する磁気ヘッドの製造方法に由来している。なお、磁極部33の第2上面33a2は成膜時の状態で維持されている。すなわち、第2上面33a2の下部コア層30の上面からの高さ寸法t14は、磁極部33の成膜時の成膜膜厚に相当する。
磁極部33の上に絶縁層39の溝39aが形成されこの溝内に上部コア層41の先端部41aが入り込む形になっている。また、図5に示されるように、下部コイル層38aはギャップ層35のハイト方向(図示Y方向)後方に形成されている。
図6は本発明の磁気ヘッドの製造方法を用いて形成された他の磁気ヘッドの部分断面図であり、図7は図6に示された磁気ヘッドの磁極部33及び下部コイル層38a周辺の拡大部分断面図である。
図6及び図7に示された磁気ヘッドは、図1ないし図3並びに図4及び図5に示された磁気ヘッドと磁極部33の形状が異なっている点で相違している。再生用磁気ヘッドHr及びインダクティブヘッドWの磁極部33の形状以外の構成は図1ないし図3並びに図4及び図5に示された磁気ヘッドと同じである。
図6及び図7に示されるように、磁極部33の上面33aには、第1上面33a4と第2上面33a5が存在している。第1上面33a4は下部コア層30の上面30aと平行方向に延びている。第2上面33a5は、徐々に図示上方向に向かう傾斜面または曲面である。
図7に示されるように、磁極部33の第1上面33a4及び第2上面33a5が下部コイル層38aの上面38a2より低くなっている。
これは、下部コイル層38aの上の絶縁層39をマスクし、磁極部33の上の絶縁層39を削り、さらに磁極部33を削って、第1上面33a4及び第2上面33a5を削る工程を有する磁気ヘッドの製造方法に由来している。なお、磁極部33の第2上面33a5の上端部50の下部コア層30の上面からの高さ寸法t16は、磁極部33の成膜時の成膜膜厚に相当する。
なお、磁極部33の上に絶縁層39の溝39aが形成されこの溝内に上部コア層41の先端部41aが入り込む形になっている。また、図7に示されるように、下部コイル層38aはギャップ層35のハイト方向(図示Y方向)後方に形成されている。
図1ないし図7に示された磁気ヘッドの製造方法、すなわち本発明の磁気ヘッドの製造方法の実施の形態を説明する。
図8ないし図17に示す製造工程図は製造途中の磁気ヘッドの縦断面図(すなわち図示Y−Z平面と平行な平面から切断した断面図)である。
図8に示す工程では、NiFe系合金等からなる下部コア層30をメッキ形成し、下部コア層30のハイト側後端面よりもハイト方向(図示Y方向)や前記下部コア層30のトラック幅方向(図示X方向)の両側をAl2O3などの絶縁材料層43によって埋める。絶縁材料層43の形成後、CMP技術等を用いて下部コア層30表面及び絶縁材料層43の表面を研磨加工し平らな面としてもよい。
下部コア層30が本発明の第1の磁性部に相当し、トラック幅寸法Twよりも広いトラック幅方向(図示X方向)寸法で形成される。
次に、下部コア層30上の所定位置に、Gd決め層31を形成する。Gd決め層31の材料にはレジストなどの有機絶縁性材料、Al2O3やSiO2などの無機絶縁性材料、NiP、NiReP、Cuなどの非磁性金属材料を用いる。なお、Gd決め層31は単層で形成されても、多層膜で形成されてもよい。Gd決め層31は0.2μm〜3.0μmの厚さで形成される。
次に、磁極部33の形状の溝部が形成されたレジスト層R1をフレームとして、下部磁極層34、ギャップ層35、上部磁極層36からなる磁極部33を連続メッキ成膜する。磁極部33は下部コア層30より狭いトラック幅方向寸法で形成される。
下部磁極層34及び上部磁極層36には、NiFe合金やCoFe合金、CoFeNi合金などの磁性材料を使用でき、これら磁性材料は組成比を調整することで高飽和磁束密度Bsを得ることができる。この実施形態において高飽和磁束密度Bsとは1.8T以上の飽和磁束密度を意味する。下部磁極層34及び上部磁極層36は単層構造であってもよいし多層の積層構造であってもよい。
ギャップ層35は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上を選択できる。また、ギャップ層35は単層膜で形成されていても多層膜で形成されていてもどちらであってもよい。
なお本発明における具体的な実施形態としてギャップ層35にはNiPが使用される。NiPでギャップ層35を形成することで前記ギャップ層35を適切に非磁性状態にできるからである。またギャップ層35がNiP合金で形成されると、製造上の連続メッキ容易性に加えて、耐熱性に優れ、下部磁極層34及び上部磁極層36との密着性も良い。また下部磁極層34及び上部磁極層36との硬さも同等とすることができるので、例えばイオンミリング等により、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を加工する際の加工量も同等とすることができ加工性を向上させることができる。
なお、ギャップ層35はNiP合金であって元素Pの濃度は8質量%以上で15質量%以下であることが好ましい。これにより例えば発熱等の外的要因に対しても安定して非磁性であることが可能である。また、NiP合金等のギャップ層35の合金組成の測定は、SEMやTEM等の組合わされたX線分析装置や波形分散形線分析装置等で特定可能である。
上記のようにギャップ層35がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を連続メッキ形成することが可能である。
下部コア層30の上面30aから磁極部33の上面33aまでの高さ寸法を磁極部33の成膜膜厚t21とする。
磁極部33のトラック幅方向(図示X方向)寸法によって、具体的にはギャップ層35と上部磁極層36の接合面のトラック幅方向(図示X方向)寸法によって、磁気ヘッドのトラック幅寸法が規定される。トラック幅寸法が0.1μm〜0.5μmのインダクティブヘッドWを形成するためには、磁極部33のトラック幅方向(図示X方向)寸法を0.1μm〜0.5μmの寸法で形成することになる。
従って、磁極部33を形成するためのレジストフレームR1の溝R1aは0.1μm〜0.5μmの極小幅で形成される必要がある。レジストフォトリソグラフィーによって、レジスト層R1に溝R1aを形成するときに、フォトリソグラフィーの解像度を上げて極小幅の溝R1aを形成するためには、レジスト層Rの膜厚t20をできる限り小さくすることが要求される。
また、磁性材料は応力が大きいので、磁極部33の成膜膜厚t21を大きくすると磁極部33に歪みが生じやすくなるという問題も発生する。したがって、磁極部33の成膜膜厚t21を任意に大きくすることはできず、磁極部33の成膜膜厚t21は1μm〜6μmになる。
磁極部33をメッキ形成したのち、磁極部33からハイト方向(記録媒体との対向面Fから離れる方向;図示Y方向)に所定距離離れた下部コア層30上にNiFeなどの磁性材料からなる持上げ層42をメッキ形成する。持上げ層42の下部コア層30の上面30aからの高さ寸法t22は磁極部33の成膜膜厚t21より大きくする。
次に、図10に示される工程では、Gd決め層31のハイト方向後方にAl2O3やSiO2などの無機材料によって絶縁層37を形成した後、コイル層38の下部コイル層38aを巻き中心38a1を中心とする螺旋状にメッキ形成する。下部コイル層38aが本発明の磁気ヘッドの製造方法におけるコイル層に相当する。
図10に示される工程では、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t11を磁極部33の成膜膜厚t21より大きくしている。具体的には、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t11を1μm〜55μmにしている。この結果、下部コイル層38aの上面38a2は磁極部33の上面33aよりも高くなる。なお、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t11は、磁気ヘッド完成時の下部コイル層38aの膜厚に等しい。
また、ギャップ層35のハイト方向後方に下部コイル層38aを形成することにより、下部コイル層38aの下面38a3をギャップ層35より下方に位置させ、下部コイル層38aの膜厚t11を大きくできる。
次に、図11に示される工程では、磁極部33、下部コイル層38a、及び持上げ層42を覆う絶縁層39を成膜し、例えば研削研磨加工(CMP)技術を用いて絶縁層39の上面39b、持上げ層42の上面42aとを同一平面に平坦化する。この平坦化工程では、磁極部33の上面33a及び下部コイル層38aの上面38a2を絶縁層39の内部に位置した状態を維持する。すなわち、磁極部33の上面33a及び下部コイル層38aの上面38a2を、絶縁層39の上面39b、持上げ層42の上面42aと同一平面に露出させないことが重要である。
次に、図12に示される工程では、下部コイル層38aの上の絶縁層39をマスク層51によってマスクする。磁極部33の上の絶縁層39はマスクされず、次の工程でエッチングされる。マスク層51の材料にはレジストなどの有機絶縁性材料、Al2O3やSiO2などの無機絶縁性材料を用いる。
次に、図13に示されるように、マスクされていない磁極部33の上の絶縁層39を削って、磁極部33の上面33aを露出させる。通常、磁極部33の上面33aは削り込まれるので、磁極部33の膜厚は成膜膜厚t21より小さい完成時の膜厚t12になる。絶縁層39には溝39aが形成される。
イオンミリングの入射角度は、平坦化された絶縁層39の上面39bに対する法線方向を0°方向としたときに、20°から60°の範囲である。図13では、磁極部33の上面33a全体が削られて、上面33aは連続面となる。なお、磁極部33は上部磁極層36のみが削られるようにすることが必要である。図13では、上部磁極層36の磁性層36bの途中でエッチングを止めている。
イオンミリング終了後、磁極部33の上面33aは、下部コイル層38aの上面38a2より低くなる。すなわち、磁極部33の上面33aが下部コイル層38aの上面38a2より、図示Z方向と反対方向(スライダSのトレーリング側端面に近づく方向)に位置する。
磁極部33の上面を露出させた後、マスク層51を除去する。このマスク層51を除去せずに、上部コイル層38bの絶縁層として用いることもできる。しかし、マスク層51の上面はイオンミリングによって荒れた状態になっているので、マスク層51を除去するほうが好ましい。
さらに、絶縁層39の上に上部コイル層38bを形成する。上部コイル層38bは下部コイル層と同じくCuなどの導電性材料をメッキすることによって形成される。このとき、下部コイル層38aの巻き中心38a1と上部コイル層38bの巻き中心38b1を導電性の接続層44によって接続する。なお、下部コイル層38aと上部コイル層38bの巻き方向は互いに逆方向である。
次に、上部コイル層38bを有機絶縁材料製のコイル絶縁層40によって覆い、磁極部33上からコイル絶縁層40上にかけて上部コア層41を例えばフレームメッキ法によりパターン形成する。磁極部33の上に絶縁層39の溝39aが形成されており、この溝39a内に上部コア層41の先端部41aが入り込む形になる。なお、上部コア層41の基端部41bは、下部コア層30上に形成された磁性材料製の持上げ層(バックギャップ層)42上に接続される。
これらの工程を経て形成された磁気ヘッドが、図1ないし図3に示された磁気ヘッドである。
図1に示すように、上部コア層41の先端部41aは、記録媒体との対向面Fでのトラック幅方向における幅寸法がW1で形成され、かかる幅寸法W1はトラック幅Twよりも大きく形成されている。
本発明では、図12に示される工程において、下部コイル層38aの上の絶縁層39をマスクした状態で、磁極部33の上の絶縁層39を削って磁極部33の上面33aを露出させている。
このため、下部コイル層38aは成膜時の膜厚t11を完成時まで維持できる。すなわち、従来のように、磁極部を研削研磨するときに下部コイル層38aが同時に研削研磨されることがないので、下部コイル層38aの膜厚t11を磁極部33の成膜膜厚t21以上の任意の膜厚に設定することが可能である。
本発明によって形成された磁気ヘッドは、記録媒体が回転するときに発生する空気流によって浮上した状態で、記録媒体に磁気信号を記録する。このとき、コイル層から発生するジュール熱によって磁気ヘッドの磁極部周辺が熱膨張・突出すると記録媒体と接触することがある。磁気ヘッドと記録媒体が不用意に接触すると、磁気ヘッドや記録媒体が損傷することがある。
下部コイル層38aの膜厚t11を任意に大きくすることによって、コイル層38の直流抵抗値を下げることができ、コイル層38から発生するジュール熱を低減して、磁極部周辺の突出を抑制できる。
なお、下部コイル層38aのハイト方向幅寸法(図示Y方向寸法)を大きくしても、コイル層38の直流抵抗値を低減することはできる。しかし、下部コイル層38aのハイト方向幅寸法を大きくすると、上部コア層41、磁極部33、下部コア層30、持上げ層42からなる磁気回路のハイト方向長さL(図1参照)が大きくなり、磁気ヘッドが大型化してインダクタンスが大きくなるという不具合が発生する。
絶縁層39の上に形成されるマスク層51の前端面51aの位置と傾斜角度によって、磁極部33の上面33aの形状は変化する。
例えば、マスク層51の前端面51aの位置と傾斜角度を調整して、図14及び図15に示されるように、磁極部33の上面33aの一部を露出させるようにしてもよい。
磁極部33の上面33aの記録媒体との対向面F側(図示Y方向と反対方向)が削り込まれて第1上面33a1となり、段差33a3が形成される。段差33a3よりもハイト方向後方側(図示Y方向)の削られない上面が第2上面33a2となる。なお、絶縁層39には溝39aが形成され、第1上面33a1はこの溝39a内で露出することになる。
イオンミリングの入射角度は、平坦化された絶縁層39の上面に対する法線方向を0°方向としたときに、20°から60°の範囲である。なお、磁極部33は上部磁極層36のみが削られるようにする。図15では、上部磁極層36の磁性層36bの途中でエッチングを止めている。
イオンミリング終了後、磁極部33の第1上面33a1の下部コア層30の上面からの高さ寸法(膜厚)t15は、0.5μm〜6μmになる。また、磁極部33の第2上面33a2は成膜時の状態で維持される。すなわち、第2上面33a2の下部コア層30の上面からの高さ寸法t14は、磁極部33の成膜時の成膜膜厚t21に相当する。
図14及び図15に示されるように磁極部33の上面33aを削り、上部コイル層38b、コイル絶縁層40、上部コア層41を形成すると、図4及び図5に示された磁気ヘッドを形成することができる。
あるいは、マスク層51の前端面51aの位置と傾斜角度を調整して、図16及び図17に示されるように、磁極部33の上面33aを露出させてもよい。
磁極部33の上面33aには、第1上面33a4と第2上面33a5が形成される。第1上面33a4は下部コア層30の上面30aと平行方向に延びており、第2上面33a5は、徐々に図示上方向に向かう傾斜面または曲面である。
イオンミリングの入射角度は、平坦化された絶縁層39の上面に対する法線方向を0°方向としたときに、20°から60°の範囲である。なお、磁極部33は上部磁極層36のみが削られるようにする。図17では、上部磁極層36の磁性層36bの途中でエッチングを止めている。
イオンミリング終了後、磁極部33の第1上面33a4の下部コア層30の上面からの高さ寸法(膜厚)t17は、0.5μm〜6μmになる。また、磁極部33の第2上面33a5は成膜時の状態で維持される。すなわち、第2上面33a5の上端部50の下部コア層30の上面からの高さ寸法t16は、磁極部33の成膜時の成膜膜厚t21に相当する。
図16及び図17に示されるように磁極部33の上面33aを削り、上部コイル層38b、コイル絶縁層40、上部コア層41を形成すると、図6及び図7に示された磁気ヘッドを形成することができる。
図18は本発明の製造方法の他の実施の形態によって形成された磁気ヘッドの縦断面図である。
図18に示される磁気ヘッドは、磁極部33及び上部コア層41の構造が図1ないし図3に示される磁気ヘッドと同じものである。図18に示される磁気ヘッドと図1ないし図3に示された磁気ヘッドが異なる点は、図18では下部コイル層38aの上面38a2が絶縁層39の上面39bと同一面上に露出していることである。
下部コイル層38aはレジストなどの有機絶縁性材料によって形成されたコイル絶縁層45によって覆われ、コイル絶縁層45の上に上部コイル層38bが積層されている。
図18に示される磁気ヘッドは図1ないし図3に示された磁気ヘッドよりも下部コイル層38aの膜厚t11を大きくすることができるので、下部コイル層38aの直流抵抗値を小さくしてコイル層38全体の直流抵抗値及び発熱量をより小さくすることができる。
図18に示される磁気ヘッドの製造方法を説明する。
まず、図8及び図9に示される工程によって下部コア層30、磁極部33、Gd決め層31、持上げ層42を形成する。
次に図19に示される工程によって、Gd決め層31のハイト方向後方にAl2O3やSiO2などの無機材料によって絶縁層37を形成した後、コイル層38の下部コイル層38aを巻き中心38a1を中心とする螺旋状にメッキ形成する。下部コイル層38aが本発明の磁気ヘッドの製造方法におけるコイル層に相当する。
図19に示される工程では、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t13を磁極部33の成膜膜厚t21より大きくしている。具体的には、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t13を1μm〜55μmにしている。この結果、下部コイル層38aの上面38a2は磁極部33の上面33aよりも高くなる。なお、下部コイル層38aのメッキ成膜時の膜厚t13は、磁気ヘッド完成時の下部コイル層38aの膜厚t11より大きい。
また、ギャップ層35のハイト方向後方に下部コイル層38aを形成することにより、下部コイル層38aの下面38a3をギャップ層35より下方に位置させ、完成後の下部コイル層38aの膜厚t11を大きくできる。
次に、図20に示される工程では、磁極部33、下部コイル層38a及び持上げ層42を覆う絶縁層39を成膜し、例えば研削研磨加工(CMP)技術を用いて絶縁層39の上面39b、下部コイル層38aの上面38a2、持上げ層42の上面42aとを同一平面に平坦化する。この平坦化工程では、磁極部33の上面33aを絶縁層39の内部に位置した状態を維持する。すなわち、磁極部33の上面33aを絶縁層39の上面39b、下部コイル層38aの上面38a2、持上げ層42の上面42aと同一平面に露出させないことが重要である。
次に、図21に示される工程では、下部コイル層38aの上をマスク層51によってマスクする。磁極部33の上の絶縁層39はマスクされず、次の工程でエッチングされる。マスク層51の材料にはレジストなどの有機絶縁性材料、Al2O3やSiO2などの無機絶縁性材料を用いる。
次に、図22に示されるように、マスクされていない磁極部33の上の絶縁層39を削って、磁極部33の上面33aを露出させる。通常、磁極部33の上面33aは削り込まれるので、磁極部33の膜厚は成膜膜厚t21より小さい完成時の膜厚t12になる。絶縁層39には溝39aが形成される。
イオンミリングの入射角度は、平坦化された絶縁層39の上面39bに対する法線方向を0°方向としたときに、20°から60°の範囲である。
図22では、磁極部33の上面33a全体が削られて、上面33aは連続面となる。なお、磁極部33は上部磁極層36のみが削られるようにすることが必要である。図22では、上部磁極層36の磁性層36bの途中でエッチングを止めている。
イオンミリング終了後、磁極部33の上面33aは、下部コイル層38aの上面38a2より低くなる。すなわち、磁極部33の上面33aが下部コイル層38aの上面38a2より、図示Z方向と反対方向(スライダSのトレーリング側端面に近づく方向)に位置する。
磁極部33の上面を露出させた後、マスク層51を除去する。このマスク層51を除去せずに、上部コイル層38bの絶縁層として用いることもできる。しかし、マスク層51の上面はイオンミリングによって荒れた状態になっているので、マスク層51を除去するほうが好ましい。
さらに、下部コイル層38aの上にコイル絶縁層45及び上部コイル層38bを形成する。コイル絶縁層45は有機絶縁性材料又はAl2O3やSiO2などの無機絶縁性材料を用いて形成する。上部コイル層38bは下部コイル層と同じくCuなどの導電性材料をメッキすることによって形成される。このとき、下部コイル層38aの巻き中心38a1と上部コイル層38bの巻き中心38b1を導電性の接続層44によって接続する。なお、下部コイル層38aと上部コイル層38bの巻き方向は互いに逆方向である。
次に、上部コイル層38bを有機絶縁材料製のコイル絶縁層40によって覆い、磁極部33上からコイル絶縁層40上にかけて上部コア層41を例えばフレームメッキ法によりパターン形成する。磁極部33の上に絶縁層39の溝39aが形成されており、この溝39a内に上部コア層41の先端部41aが入り込む形になる。なお、上部コア層41の基端部41bは、下部コア層30上に形成された磁性材料製の持上げ層(バックギャップ層)42上に接続される。
これらの工程を経て形成された磁気ヘッドが、図18に示された磁気ヘッドである。
なお、図21および図22に示される工程の代わりに、図14及び図15に示される工程と同様にして磁極部33の上面33aを削ると、磁極部33の形状を図5に示される磁気ヘッドと同様の形状にできる。また、図21および図22に示される工程の代わりに、図16及び図17に示される工程と同様にして磁極部33の上面33aを削ると、磁極部33の形状を図7に示される磁気ヘッドと同様の形状にできる。
このように、本発明の磁気ヘッドの製造方法を用いると、磁極部33の上面33aの露出を、研削研磨加工ではなく、エッチングによって行うことができるので、磁極部33の上面33aの下部コア層30の上面30aからの高さ寸法(膜厚)を細かく制御でき、磁気ヘッドのオーバライト特性などの書き込み特性の向上を図ることができる。また、磁極部33の上面33aの形状を様々な形に加工することも可能になる。
これまで説明した実施の形態では、下部コイル層38aの膜厚t11を磁極部33の成膜膜厚t21以上にしていた。しかし、本発明では、下部コイル層38aの膜厚t11を磁極部33の成膜膜厚t21以下にすることもできる。このときには、下部コイル層38aの上面38a2と絶縁層39の上面39bの距離を離すことができ、下部コイル層38aの絶縁性向上という効果を奏することができる。
なお、記録媒体との対向面F上に、膜厚15Å〜70ÅのDLC(ダイヤモンドライクカーボン)製の保護膜が形成されていてもよい。
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法は、第1の磁性部または第2の磁性部の周囲をトロイダル状に巻き回するコイル層を有する磁気ヘッドの製造方法としても用いることができる。このときは、トロイダル状に巻き回するコイル層の、磁極部のハイト方向後方に位置する部分の膜厚を大きくすることができる。
また、コイル層38は上部コイル層38bが形成されず、下部コイル層38aのみの一層構造でもよい。