JP3929926B2 - 磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ヘッドに係り、特に記録時の磁気飽和を適切に防止して、ギャップ近傍にて大きな漏れ磁界を発生させることができ、またオーバーライト特性などの諸特性の向上を図ることができ、さらにはトラック幅制御性を向上させることが可能な気ヘッド製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図24は、従来における磁気ヘッド(インダクティブヘッド)の構造を示す部分正面図、図25は、図24に示す25−25線から切断された薄膜磁気ヘッドを矢印方向から見た部分縦断面図である。
【0003】
図24及び図25に示す符号1は、パーマロイなどの磁性材料で形成された下部コア層であり、この下部コア層1の上に、絶縁層9が形成されている。
【0004】
絶縁層9には、記録媒体との対向面からハイト方向(図示Y方向)にかけて、トラック幅方向(図示X方向)への内幅寸法がトラック幅Twで形成された溝部9aが形成されている。
【0005】
この溝部9a内には、下から順に、下部コア層1に磁気的に接続する下部磁極層3、ギャップ層4、及び上部コア層6に磁気的に接続する上部磁極層5がメッキ形成されている。
そして図24に示すように、上部磁極層5上に上部コア層6がメッキ形成されている。
【0006】
また図25に示すように、絶縁層9の上には、螺旋状にパターン形成されたコイル層7が設けられている。
【0007】
そしてコイル層7は、レジストなどのコイル絶縁層8により覆われており、コイル絶縁層8の上に、上部コア層6が形成されている。上部コア層6は、その先端部6aにて上部磁極層5と、また基端部6bにて下部コア層1と磁気的に接続された状態になっている。
【0008】
図24および図25に示すインダクティブヘッドでは、コイル層7に記録電流が与えられると、下部コア層1及び上部コア層6に記録磁界が誘導され、下部コア層1と磁気的に接続する下部磁極層3及び上部コア層6と磁気的に接続する上部磁極層5間からの洩れ磁界により、ハードディスクなどの記録媒体に磁気信号が記録される。
【0009】
図24及び図25に示す従来の薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体との対向面からハイト方向に所定距離だけ離れた下部コア層1上に、例えば有機絶縁材料で形成されたGd決め層10が形成されている。
【0010】
対向面からGd決め層10間には、下から下部磁極層3、ギャップ層4及び上部磁極層5が順に積層されている。図21では、ギャップデプス(Gd)は、対向面からギャップ層4とGd決め層10とが接する位置までの長さT2で決められ、ギャップデプスの長さの制御をGd決め層10の形成位置で容易に適正化できると共に、上部磁極層5をGd決め層10上にまで延ばして形成することで、上部磁極層5をギャップデプスの長さよりも延ばすことができるから、ギャップデプスの長さ寸法に関わらず、上部磁極層5と上部コア層6との接触面積を大きくすることができ、今後の高記録密度化においても上部磁極層5の磁気飽和を適切に低減できる。
【0011】
図24及び図25に示される磁気ヘッドは、特許文献1に記載されている。
しかし、図24及び図25に示される磁気ヘッドでは、下部磁極層3のハイト方向長さ寸法が記録媒体との対向面からGd決め層10の前端面までの距離で規定されることになり、下部磁極層3の体積を大きくすることが難しかった。
【0012】
図26に示される磁気ヘッドは、下部磁極層のハイト方向(図示Y方向)長さ寸法を大きくすることが容易な磁気ヘッドである。
【0013】
図26に示される磁気ヘッドでは、下部コア層11の記録媒体との対向面側上に、下部磁極層12が接続されており、下部磁極層12の後方部12aが削り取られて前方部12bより膜厚が薄くなっている。下部コア層11の上には絶縁層13が形成されており、絶縁層13の先端部13aが下部磁極層12の後方部12aの上に積層されている。
【0014】
図26に示される磁気ヘッドのギャップデプス長は記録媒体との対向面から絶縁層13の先端部13aまでの距離T3で規定される。
【0015】
下部磁極層12の上には、ギャップ層14、上部磁極層15が形成されている。図26に示される磁気ヘッドのトラック幅Twも下部磁極層12、ギャップ層14、及び上部磁極層15のトラック幅方向(図示X方向)寸法で規定される。
【0016】
ギャップ層14、上部磁極層15の後方及び側方には絶縁層16が設けられている。また、絶縁層16の上には、螺旋状にパターン形成されたコイル層17が設けられている。そしてコイル層17は、レジストなどのコイル絶縁層18により覆われており、コイル絶縁層18の上に、上部コア層19が形成されている。上部コア層19は、その先端部19aにて上部磁極層15と、また基端部19bにて下部コア層11と磁気的に接続された状態になっている。
図26に示される磁気ヘッドの磁極構造は、特許文献2に記載されている。
【0017】
【特許文献1】
特開2002−352402号公報
【特許文献2】
特開2002−8208号公報(第9頁、第3図)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
図24及び図25に示される磁気ヘッドでは、下部磁極層3の体積を大きくすることが難しいため、下部磁極層3のところで磁気飽和が生じやすく、オーバーライト特性を向上させることが難しい。
【0019】
一方、図26に示される磁気ヘッドは、下部磁極層のハイト方向(図示Y方向)長さ寸法を大きくすることが容易であり下部磁極層3のところにおける磁気飽和が生じにくい。
【0020】
しかし、図26に示される磁気ヘッドは、下部磁極層12の後方部12aを削り取る位置によってギャップデプス長が決まるものである。下部磁極層12の後方部12aを削り取る位置にはバラツキ生じやすい。すなわち、図26に示された磁気ヘッドの構造だとオーバーライト特性にバラツキ生じやすくなる。
【0021】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、形成位置を正確に規定することができるGd決め層を有しつつ、下部磁極層の体積を大きくすることが可能な磁気ヘッド製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気ヘッドの製造方法は以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)下部コア層上の記録媒体との対向面となる位置よりもハイト方向に離れた位置に、非磁性材料を用いて、Gd決め層を形成する工程と、
(b)前記Gd決め層によってマスクされない前記下部コア層の表面を削り、前記Gd決め層の下に補助磁極層を形成する工程と、
(c)次工程で、前記補助磁極層と下部磁極層とが磁気的に接続されつつ、電気的に絶縁されるように、前記補助磁極層の前端面に絶縁層を設ける工程と、
)前記下部コア層上であって、記録媒体との対向面となる位置から前記補助磁極層の前端面に形成された前記絶縁層の前端面にかけて下部磁極層をメッキ形成し、これにより、前記下部磁極層と前記補助磁極層とを磁気的に接続し、電気的に絶縁する工程と、
)前記下部磁極層上にギャップ層をメッキ形成した後、前記ギャップ層上から前記Gd決め層の上面にかけて上部磁極層をメッキ形成する工程と、
)前記下部磁極層、ギャップ層、上部磁極層からハイト方向に離れた位置にコイル層を形成する工程と、
)前記上部磁極層の上に、上部コア層を形成する工程。
【0023】
本発明では、下部コア層上に、非磁性材料からなるGd決め層を設けるため、ギャップデプス長を正確に規定することが容易である。従って、磁気ヘッドのオーバーライト特性を均一化できる。
【0024】
さらに、Gd決め層と下部コア層の間に、磁性材料によって形成された補助磁極層を設け、前記下部磁極層の後端面を前記補助磁極層の前端面に接続するため、下部磁極層のところにおける磁気飽和を低減でき、磁気ヘッドのオーバーライト特性を向上させることができる。
【0025】
また、前記下部磁極層と前記補助磁極層が電気的に絶縁されていると、前記下部磁極層の上面を平坦化することが容易になり、磁気ヘッドの記録特性を均一化することが容易になる。
【0026】
または、本発明の磁気ヘッドの製造方法は以下の工程を有することを特徴とするものである。
【0027】
(h)下部コア層上に、この下部コア層を形成する磁性材料とは異なる磁性材料からなる磁性材料層を形成する工程と、
(i)前記磁性材料層上の記録媒体との対向面となる位置よりもハイト方向に離れた位置に、非磁性材料を用いて、Gd決め層を形成する工程と、
(j)前記Gd決め層によってマスクされない前記磁性材料層の表面を削り,Gd決め層の下に補助磁極層を形成する工程と、
(k)次工程で、前記補助磁極層と下部磁極層とが磁気的に接続されつつ、電気的に絶縁されるように、前記補助磁極層の前端面に絶縁層を設ける工程と、
(l)前記下部コア層上であって、記録媒体との対向面となる位置から前記補助磁極層の前端面に形成された前記絶縁層の前端面にかけて下部磁極層をメッキ形成し、これにより、前記下部磁極層と前記補助磁極層とを磁気的に接続し、電気的に絶縁する工程と、
(m)前記下部磁極層上にギャップ層をメッキ形成した後、前記ギャップ層上から前記Gd決め層の上面にかけて上部磁極層をメッキ形成する工程と、
(n)前記下部磁極層、ギャップ層、上部磁極層からハイト方向に離れた位置にコイル層を形成する工程と、
(o)前記上部磁極層の上に、上部コア層を形成する工程。
【0028】
本発明の磁気ヘッドの製造方法を用いると、前記補助磁極層を下部コア層と異なる材料によって形成することができる。
【0029】
また、前記下部磁極層と前記補助磁極層が電気的に絶縁されていると、前記下部磁極層の上面を平坦化することが容易になり、磁気ヘッドの記録特性を均一化することが容易になる。
【0030】
特に、前記磁性材料層の飽和磁束密度を、前記下部コア層を形成する磁性材料の飽和磁束密度より大きくすると、前記補助磁極層の飽和磁束密度を、前記下部コア層を形成する磁性材料の飽和磁束密度より大きくすることができる。
【0031】
本発明の磁気ヘッドの製造方法では、前記Gd決め層の前端面と前記補助磁極層の前端面を連続面にすることができる。
【0032】
前記下部磁極層と前記補助磁極層の磁気的な接続を確実にするために、前記()工程及び前記(k)工程において、前記絶縁層の前記補助磁極層の前端面に対する法線方向の膜厚を、50Å以上6000Å以下にすることが好ましい。
【0033】
本発明では、前記ギャップ層を、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上から選択された非磁性金属材料でメッキ形成することが好ましい。
【0034】
また本発明では、前記(c)工程及び前記(k)工程は、前記下部コア層、前記補助磁極層及びGd決め層を覆うように無機絶縁材料より成る前記絶縁層を形成した後、前記下部コア層上及び前記Gd決め層上に形成された前記絶縁層を除去することによって行うことが好ましい。
【0035】
あるいは、前記(c)工程及び前記(k)工程は、前記補助磁極層の前端面に有機絶縁材料から成る前記絶縁層をフォトリソグラフィー技術により形成することによって行ってもよい。
【0036】
【発明の実施の形態】
図1は、参考例の形態の磁気ヘッドの正面図、図2は図1に示す磁気ヘッドをA−A線から切断し矢印方向から見た縦断面図である。図2に示す記録用の磁気ヘッドHwが本発明の磁気ヘッドであり、いわゆるインダクティブヘッドHwである。このインダクティブヘッドHwは、例えば磁気抵抗効果を利用した再生用磁気ヘッドHrの上に積層される。
【0037】
図1及び図2に示される磁気ヘッドは、浮上式ヘッドを構成するセラミック材のスライダ21のトレーリング端面21aに形成されたものであり、再生用磁気ヘッドHrと、書込み用のインダクティブヘッドとが積層された、複合型薄膜磁気ヘッドとなっている。
【0038】
図1及び図2に示すように、スライダ21のトレーリング側端面21a上にAl膜22を介して再生用磁気ヘッドHrが形成されている。再生用磁気ヘッドHrは、磁気抵抗効果を利用してハードディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界を検出し、記録信号を読み取るものである。
【0039】
再生用磁気ヘッドHrは、例えばスピンバルブ膜に代表される巨大磁気抵抗効果を利用したGMR素子やトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR素子、異方性磁気抵抗効果を利用したAMR素子で形成される磁気抵抗効果素子である磁界読み取り部Mと、磁界読み取り部Mの上下に下部ギャップ層24及び上部ギャップ層25を介して形成された下部シールド層23と上部シールド層26を有している。
【0040】
磁界読み取り部Mのトラック幅方向(X方向)の長さが、再生用磁気ヘッドHrのトラック幅Trである。また、上部シールド層26と下部シールド層23間の距離はH2である。
【0041】
下部ギャップ層24及び上部ギャップ層25は、AlやSiOなどの絶縁性材料からなり、下部シールド層23及び上部シールド層26は、NiFe系合金(パーマロイ)などの高透磁率の軟磁性材料で形成されている。
【0042】
上部シールド層26の上には、AlやSiOなどの絶縁性材料からなる分離層27が積層されており、分離層27の上にインダクティブヘッドHwが積層されている。
【0043】
分離層27の上には、下部コア層30が積層されている。下部コア層30上には、図2に示されるように補助磁極層31を介してGd決め層32が形成されている。本態では、補助磁極層31は下部コア層30と一体に形成されている。Gd決め層32の前端面32aと補助磁極層31の前端面31aは、段差のない連続面をなしている。Gd決め層32及び補助磁極層31は、本形態の特徴をなす構成要素であるので、のちにくわしく説明する。
【0044】
記録媒体との対向面FからGd決め層32の前端面32aまでの長さ寸法でギャップデプス(Gd)が規制される。
【0045】
また図2に示すように、記録媒体との対向面FからGd決め層32上にかけて磁極部33が形成されている。
【0046】
磁極部33は下から下部磁極層34、非磁性のギャップ層35、及び上部磁極層36が積層されて形成されている。
【0047】
下部磁極層34は、下部コア層30上にメッキ形成されている。また下部磁極層34の上に形成されたギャップ層35は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上を選択できる。また、ギャップ層35は単層膜で形成されていても多層膜で形成されていてもどちらであってもよい。
【0048】
なお形態では、ギャップ層35にはNiPが使用される。NiPでギャップ層35を形成することで前記ギャップ層35を適切に非磁性状態にできるからである。またギャップ層35がNiP合金で形成されると、製造上の連続メッキ容易性に加えて、耐熱性に優れ、下部磁極層34及び上部磁極層36との密着性も良い。また下部磁極層34及び上部磁極層36との硬さも同等とすることができるので、例えばイオンミリング等により、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を加工する際の加工量も同等とすることができ加工性を向上させることができる。
【0049】
なお、ギャップ層35はNiP合金であって元素Pの濃度は8質量%以上で15質量%以下であることが好ましい。これにより例えば発熱等の外的要因に対しても安定して非磁性であることが可能である。また、NiP合金等のギャップ層35の合金組成の測定は、SEMやTEM等の組合わされたX線分析装置や波形分散形線分析装置等で特定可能である。
【0050】
なおギャップ層35は例えばAlなどの絶縁物であっても良いが、かかる場合、ギャップ層35上に上部磁極層36をメッキ形成するためのメッキ下地を形成する必要があり、磁極部33の形成が煩雑化するため、ギャップ層35はメッキ形成されることが好ましい。
【0051】
さらにギャップ層35の上に形成された上部磁極層36は、その上に形成される上部コア層41と磁気的に接続される。
【0052】
上記のようにギャップ層35がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を連続メッキ形成することが可能である。
【0053】
図1及び図2に示す薄膜磁気ヘッドでは、上部磁極層36のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法は上部コア層41の幅寸法よりも短く形成されており、この上部磁極層36の幅寸法でトラック幅Twが規制されている。トラック幅Twは、例えば0.1μm〜1.0μmである。または0.1μm〜0.5μmである。
【0054】
上部磁極層36及び下部磁極層34は、NiFe、CoFe、FeCoNi、或いはCoFeX又はFeNiX(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Ptのいずれか1種または2種以上の元素である)の組成式で示される軟磁性材料のうちいずれか1種或いは2種以上を用いて形成される。
【0055】
態では、上部磁極層36は、磁性層36aと磁性層36bの積層構造で形成され、図2に示されるように磁性層36aはギャップ層35上からGd決め層32上にかけて形成されている。
【0056】
磁性層36bは、磁性層36aを形成する軟磁性材料と同じ組成式で表わされる軟磁性材料で形成されてもよいし、異なる組成式を有する軟磁性材料で形成されてもよい。
【0057】
ただし、磁性層36aは磁性層36bよりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料によって形成されることが好ましい。
【0058】
このようにギャップ層35に近い磁性層36aを飽和磁束密度の大きい磁性材料で形成することで上部コア層41から流れてきた磁束をギャップ近傍に集約することが容易になり、記録密度を向上させることが可能になる。
【0059】
なお磁性層36bも磁性層36aと同じ材質の磁性材料で形成する場合、例えばNiFe合金で形成する場合には、磁性層36a側のNiFe合金のFe量を磁性層36b側のNiFe合金のFe量よりも大きくすることで、磁性層36aの飽和磁束密度Bsを磁性層36bの飽和磁束密度Bsよりも大きくすることができる。
【0060】
また上部磁極層36が3層以上の多層膜として形成される場合も同様に、ギャップ層35に近い磁性層ほど飽和磁束密度Bsが高くなるように磁性材料を選択することが好ましい。
なお磁極部は、ギャップ層35及び上部磁極層36のみで構成されていてもよい。
【0061】
下部コア層30の上であって、Gd決め層32のハイト方向(図示Y方向)後方には絶縁層37が形成されており、絶縁層37上には、Cuなどの導電性材料によってコイル層38が螺旋状にパターン形成されている。またコイル層38は2層構造になっており、無機絶縁材料製の絶縁層39及び有機絶縁材料製のコイル絶縁層40によって覆われている。
【0062】
図2に示すように、磁極部33上からコイル絶縁層40上にかけて上部コア層41が例えばフレームメッキ法によりパターン形成されている。また、図1に示すように、上部コア層41の先端部41aは、記録媒体との対向面Fでのトラック幅方向における幅寸法がW1で形成され、かかる幅寸法W1はトラック幅Twよりも大きく形成されている。
【0063】
また図2に示すように、上部コア層41の基端部41bは、下部コア層30上に形成された磁性材料製の接続層(バックギャップ層)42上に接続されている。
【0064】
また、上部コア層41は、上部磁極層36の磁性層36bと結合している。磁性層36bは上部コア層41よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料によって形成されることが好ましい。
【0065】
上部コア層41と下部コア層30は、NiFeなどによってメッキ形成されている。上部コア層41と上部磁極層36は同じ材質でも異なる材質で形成されてもよい。下部コア層30と下部磁極層34は同じ材質でも異なる材質で形成されてもよい。また、下部磁極層34は、下部コア層30よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料で形成されることが好ましい。
【0066】
記録媒体との対向面において、下部コア層30の上面は平坦面30aで形成されてもよいし、磁極部33の基端からトラック幅方向(図示X方向)に離れるにしたがって下面方向に傾く傾斜面30bで形成されてもよい。下部コア層30の上面が傾斜面30bで形成されると上部コア層41と下部コア層30の間隔を広げられるためサイドフリンジングの発生を抑制することが可能である。
【0067】
図1に示すように、磁極部33のトラック幅方向(図示X方向)の両側には絶縁層39が露出している。
【0068】
コイル層38に記録電流が与えられると、下部コア層30及び上部コア層41に記録磁界が誘導され、ギャップ層35を介して対向する下部磁極層34及び上部磁極層36間に漏れ磁界が発生し、この漏れ磁界により、ハードディスクなどの記録媒体に磁気信号が記録される。
【0069】
徴部分についてのべる。
図3は、図2に示された薄膜磁気ヘッドの記録媒体との対向面F周辺の部分拡大断面図である。
【0070】
記録媒体との対向面Fよりもハイト方向後方の下部コア層30上にはGd決め層32が設けられている。Gd決め層32が設けられていると、ギャップデプス長を正確に規定することが容易になる。本態では、ギャップ層35の後端面35aが、Gd決め層32の前端面32aと接しており、記録媒体との対向面FからGd決め層32の前端面32aまでの距離でギャップデプス長L1を正確に規定することができる。従って、磁気ヘッドのオーバーライト特性を均一化できる。
【0071】
さらに、Gd決め層32と下部コア層30の間に、磁性材料によって形成された補助磁極層31が設けられており、下部磁極層34の後端面34aが補助磁極層31の前端面31aに接続されているため、下部磁極層34のところにおける磁気飽和を低減でき、磁気ヘッドのオーバーライト特性の立ち上がりが急峻になる。またオーバーライト特性の絶対値も大きくなるので記録電流をすくなくすることができる。また、磁束を上部磁極層36の後方部から補助磁極層31に逃がすことができ、サイドフリンジングを低減できる。
【0072】
態では、Gd決め層32の前端面32aと補助磁極層31の前端面31aを段差のない連続面Cとすることができる。また、補助磁極層31は下部コア層30から削りだされたものであり、補助磁極層31と下部コア層30は一体に形成されている。
【0073】
なお、Gd決め層32の上面の全領域に,メッキ下地層84が形成されているので、上部磁極層36全体を所定膜厚で形成することができる。
【0074】
Gd決め層32の上面にメッキ下地層84が形成されていれば、上部磁極層36を所定膜厚で形成することができる。ただし、Gd決め層32の幅が4μm以下であればメッキ下地層84がなくても、上部磁極層36を所定膜厚で形成することがてきる。
【0075】
従って、上部磁極層36が磁気飽和することを防止することができ、磁性層36aの対向面からは大きな漏れ磁束が発生し、高記録密度化に適切に対応可能な薄膜磁気ヘッドを提供することが可能である。
【0076】
図1ないし図3に示された磁気ヘッドの製造方法を図4ないし図12に示す製造工程図を用いて以下に説明する。図4ないし図12に示す製造工程図は製造途中の磁気ヘッドの縦断面図(すなわち図示Y−Z平面と平行な平面から切断した断面図)である。
【0077】
図4に示す工程では、NiFe系合金等からなる下部コア層30をメッキ形成し、下部コア層30のハイト側後端面よりもハイト方向(図示Y方向)や前記下部コア層30のトラック幅方向(図示X方向)の両側をAlなどの絶縁材料層43によって埋めた後、CMP技術等を用いて下部コア層30表面及び絶縁材料層43の表面を研磨加工し、平らな面とする。
【0078】
次に、下部コア層30及び絶縁材料層43上にGd決め層32となる非磁性層81を成膜する。非磁性層81は、レジストなどの有機絶縁材料やAl3、SiOなどの無機絶縁材料によって形成している。非磁性層81をレジストを用いて形成したとき、このレジストを熱硬化させると後の工程で、Oを用いる反応性イオンエッチングによってパターン形成することがてきる。
さらに、第2非磁性層82の上にメッキ下地層84を金属材料によって形成する。
【0079】
メッキ下地層84は、例えば、Ti膜やTi/Au積層膜などの非磁性膜、または、FeCo膜、FeCo/Ti/Au積層膜などの磁性膜として形成される。ただし、メッキ下地層84はTi膜やTi/Au積層膜などのメッキ液中における耐蝕性が高い膜のほうが好ましい。
【0080】
メッキ下地層84は100Å〜200Å、非磁性層81は0.2μm〜3.0μmの厚さで形成される。
【0081】
次に、メッキ下地層84を、Gd決め層32の平面形状と同じ平面形状にパターン形成する。
【0082】
次に図5に示される工程では、パターン形成されたメッキ下地層84によってマスクされない領域の非磁性層81を、イオンミリングや反応性イオンエッチングを用いて除去する。残された非磁性層81がGd決め層32になる。
【0083】
非磁性層81が熱硬化処理されたレジスト層であるときにはOを用いる反応性イオンエッチングを行う。マスクされない領域の非磁性層81を反応性イオンエッチングによって除去することにより、Gd決め層32の前端面32aを、下部コア層30の上面に対する垂直面にすることが可能になる。
【0084】
ただし、非磁性層81をレジストフォトリソグラフィーによってパターン形成し熱硬化させることで、Gd決め層32を形成してもよい。
【0085】
次に、Gd決め層32をマスクとして下部コア層30の表面をイオンミリングでけずって、補助磁極層31を形成する。このとき、Gd決め層32の前端面32aと補助磁極層31の前端面31aは段差のない連続面Cとなる。補助磁極層31は下部磁極層34とギャップ層35の合計膜厚より小さな膜厚で形成する。本態では補助磁極層31を、0.2μm〜2.0μmの厚さで形成する。
【0086】
次に、図7に示される工程では、磁極部33の形状の溝部が形成されたレジスト層R1をフレームとして、下部磁極層34、ギャップ層35、上部磁極層36を連続メッキ成膜する。
【0087】
下部磁極層34及び上部磁極層36には、NiFe合金やCoFe合金、CobFeNi合金などの磁性材料を使用でき、これら磁性材料は組成比を調整することで高飽和磁束密度Bsを得ることができる。この態において高飽和磁束密度Bsとは1.8T以上の飽和磁束密度を意味する。
【0088】
また下部磁極層34及び上部磁極層36は単層構造であってもよいし多層の積層構造であってもよい。
【0089】
ギャップ層35は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上を選択できる。また、ギャップ層35は単層膜で形成されていても多層膜で形成されていてもどちらであってもよい。
【0090】
なお本では、ギャップ層35にはNiPが使用される。NiPでギャップ層35を形成することで前記ギャップ層35を適切に非磁性状態にできるからである。またギャップ層35がNiP合金で形成されると、製造上の連続メッキ容易性に加えて、耐熱性に優れ、下部磁極層34及び上部磁極層36との密着性も良い。また下部磁極層34及び上部磁極層36との硬さも同等とすることができるので、例えばイオンミリング等により、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を加工する際の加工量も同等とすることができ加工性を向上させることができる。
【0091】
なお、ギャップ層35はNiP合金であって元素Pの濃度は8質量%以上で15質量%以下であることが好ましい。これにより例えば発熱等の外的要因に対しても安定して非磁性であることが可能である。また、NiP合金等のギャップ層35の合金組成の測定は、SEMやTEM等の組合わされたX線分析装置や波形分散形線分析装置等で特定可能である。
【0092】
なおギャップ層35は例えばAlなどの絶縁物であっても良いが、かかる場合、ギャップ層35上に上部磁極層36をメッキ形成するためのメッキ下地を形成する必要があり、磁極部33の形成が煩雑化するため、ギャップ層35はメッキ形成されることが好ましい。
【0093】
上記のようにギャップ層35がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層34、ギャップ層35及び上部磁極層36を連続メッキ形成することが可能である。
【0094】
このとき、下部磁極層34の後端面34aが補助磁極層31の前端面31aに接続されるため、下部磁極層34のところにおける磁気飽和を低減でき、磁気ヘッドのオーバーライト特性の立ち上がりが急峻になる。またオーバーライト特性の絶対値も大きくなるので記録電流をすくなくすることができる。また、磁束を上部磁極層36の後方部から補助磁極層31に逃がすことができ、サイドフリンジングを低減できる。磁気ヘッドのオーバーライト特性を向上させることができる。
【0095】
また、ギャップ層35のハイト方向側の後端面35aが、Gd決め層32の対向面側の前端面36aに接触する状態になるようにする。これによって、記録媒体との対向面FからGd決め層32の前端面32aまでの距離でギャップデプス長L1を正確に規定することができる。
【0096】
またGd決め層32のギャップ層35と接触する面(前端面)32aが下部コア層30の表面に対する垂直面であると、ギャップ層35のハイト方向寸法を正確に規定でき、ギャップデプスの寸法を正確に形成することが容易になる。ただし、Gd決め層32の前端面32aが、傾斜面や曲面状になっていてもよい。
【0097】
上記の磁気ヘッドの製造方法では、パターン形成されたメッキ下地層84をマスクとして、Gd決め層32を形成するので、メッキ下地層84をGd決め層32の上面の全ての領域を覆うものとして形成できる。
【0098】
従って、上部磁極層36をメッキ下地層84上まで確実に形成することができ、安定した記録特性を発揮することのできる磁気ヘッドを提供することができる。
【0099】
次に、図8に示される工程では、Gd決め層32のハイト方向後方にAlやSiOなどの無機材料によって絶縁層37を形成した後、コイル層38の下層部を螺旋状にメッキ形成し、無機材料からなる絶縁層39を成膜する。
【0100】
さらに、図9に示される工程では、例えばCMP技術を用いて磁極部33の上面、絶縁層39の上面、接続層42の上面とを同一平面に平坦化する。
【0101】
その後、絶縁層39の上にコイル層38の上層部を螺旋状にメッキ形成した後、コイル層38の上にコイル絶縁層40を形成する。そして磁極部33上からコイル絶縁層40上にかけて上部コア層41を例えばフレームメッキ法により形成する。上部コア層41の基端部41bは接続層42に接続される。これによって、図1及び図2に示される磁気ヘッドを得ることができる。
【0102】
図10は、図5に示された工程における下部コア層30、Gd決め層32の斜視図、図11は、図6に示された工程における下部コア層30、補助磁極層31、Gd決め層32の斜視図、図12は、図7に示された工程後における下部コア層30、補助磁極層31、磁極部33及びGd決め層32の斜視図である。
【0103】
図11に示されるように、補助磁極層31はGd決め層32をマスクとして形成されるので、補助磁極層31は、Gd決め層32と同じ平面形状で形成される。
【0104】
また、図12に示されるように、補助磁極層31及びGd決め層32のトラック幅方向寸法(図示X方向寸法)は磁極部33のトラック幅方向寸法より大きくなっており、下部磁極層34のところにおける磁気飽和を効果的に低減することができる。
【0105】
態では、Gd決め層32をマスクとして補助磁極層31を形成したのち磁極部33をメッキ形成している。これに対し、図13に示されるように、Gd決め層32を形成したのち、レジスト層R1に形成した溝内部に磁極部33をメッキ形成し、図14に示される工程において、イオンミリングをおこなって下部コア層30の表面を削り、補助磁極層31を形成する方法も考えられる。しかし、図13及び図14に示される方法だと以下に示す問題が生じることがある。
【0106】
まず、図14に示されるイオンミリング工程において、下部コア層30の表面を削ったとぎの削りカスが磁極部33のトラック幅方向側部に付着して、再付着層S1,S1が形成され上部磁極層36と下部磁極層34が短絡するという問題が生じる。また、上部磁極層36と下部磁極層34のトラック幅方向寸法を所定の大きさに正確に加工できなくなる。
【0107】
また、同イオンミリング工程において、下部コア層30の表面を削ったとの削りカスが補助磁極層31及びGd決め層32の記録媒体との対向面側の前端部及びハイト方向側の後端部に付着して、再付着層S2,S2が形成され、これによっても上部磁極層36と下部磁極層34が短絡するという問題が生じる。
【0108】
また、磁極部33をメッキ形成したあとのイオンミリング工程によって、磁極部33の上面が厚さt1だけ削られる。したがって、図13に示される工程において磁極部33を該イオンミリング工程によって削られる厚さ分だけ厚く形成する必要があり、その分だけレジスト層R1を厚く形成する必要がでてくる。しかし、レジスト層R1を厚くすると、レジストフォトリソグラフィーの解像度が低下し、磁極部33を形成するための溝のトラック幅方向寸法を小さくすることが難しくなる。すなわち、磁極部33のトラック幅方向寸法を小さくすることが難しくなる。
【0109】
さらに、図14に示される工程におけるイオンミリング工程で、補助磁極層31を形成する際に、補助磁極層31の膜厚寸法(図示Z方向寸法)を大きくすることが難しくなり、下部磁極層34のところにおける磁気飽和を効果的に低減するだけの体積を有する補助磁極層31を形成できなくなることがある。
【0110】
一方、図5から図7に示されるように、Gd決め層32をマスクとして補助磁極層31を形成したのち磁極部33をメッキ形成すれば、これらの問題を回避することができる。
【0111】
また補助磁極層と下部コア層を異なる材料によって形成することもきる。
この場合には、図15に示されるように、下部コア層30上に、この下部コア層30を形成する磁性材料とは異なる磁性材料からなる磁性材料層90を形成し、
磁性材料層90上にGd決め層32となる非磁性層81を成膜する。第1非磁性層81は、レジストなどの有機絶縁材料やAl3、SiOなどの無機絶縁材料によって形成している。
【0112】
さらに、非磁性層81の上にメッキ下地層84を金属材料によって形成し、メッキ下地層84を、Gd決め層32の平面形状と同じ平面形状にパターン形成する。
【0113】
次に図16に示される工程では、パターン形成されたメッキ下地層84によってマスクされない領域の非磁性層81をイオンミリングや反応性イオンエッチングを用いて削って除去する。残された非磁性層81がGd決め層32になる。
【0114】
非磁性層81が熱硬化処理されたレジスト層であるときにはOを用いる反応性イオンエッチングを行うことにより、Gd決め層32の前端面32aを、下部コア層30の上面に対する垂直面にすることが可能になる。
【0115】
ただし、非磁性層81をレジストフォトリソグラフィーによってパターン形成し熱硬化させることで、Gd決め層32を形成してもよい。
【0116】
次に、Gd決め層32をマスクとして磁性材料層90をイオンミリングでけずって、補助磁極層91を形成する。このとき、Gd決め層32の前端面32aと補助磁極層91の前端面91aは段差のない連続面Cとなる。補助磁極層91は0.2μm〜2.0μmの厚さで形成される。
【0117】
次に、図7に示される工程と同様に、磁極部33の形状の溝部が形成されたレジスト層をフレームとして、下部磁極層34、ギャップ層35、上部磁極層36を連続メッキ成膜し、さらに、コイル層38、上部コア層41を形成する。
【0118】
特に、磁性材料層90の飽和磁束密度を、下部コア層30を形成する磁性材料の飽和磁束密度より大きくすると、補助磁極層91の飽和磁束密度を、下部コア層30を形成する磁性材料の飽和磁束密度より大きくすることができ、ギャップ層35付近に近づくにつれて磁束密度を大きくすることができる。
【0119】
なお、図17に示される工程では、磁性材料層90と下部コア層30のさかい目までイオンミリングでけずって補助磁極層91を形成しているが、磁性材料層90と下部コア層30のさかい目よりも上または下でイオンミリングをとめてもよい。磁性材料層90と下部コア層30のさかい目よりも上でイオンミリングをとめると、補助磁極層91以外の磁性材料層90は、下部コア層として機能する。また、磁性材料層90と下部コア層30のさかい目よりも下でイオンミリングをとめると、補助磁極層91の一部は、下部コア層30と同じ材料の層になる。
【0120】
ところで、助磁極層31を形成したのち磁極部33をメッキ形成すると、下部磁極層34及びギャップ層35をメッキ形成するときに、補助磁極層31上からも、下部磁極層34及びギャップ層35が成長することがある。その結果、図18に示されるように、下部磁極層34及びギャップ層35のGd決め層32付近に湾曲部34b、35bが形成され、下部磁極層34及びギャップ層35が平坦な薄膜として形成されなくなることがある。下部磁極層34及びギャップ層35が湾曲すると、磁気ヘッドの記録特性が劣化することがある。
【0121】
下部磁極層34の上面及びギャップ層35を確実に平坦化するためには、図19(実施形態)に示されるように、下部磁極層34の後端面34aと補助磁極層31の前端面31aの間に、薄い絶縁層92を設けて、下部磁極層34と補助磁極層31が磁気的に接続されつつ、電気的に絶縁されている状態にすることが好ましい。
【0122】
下部磁極層34と補助磁極層31が電気的に絶縁されていると、下部磁極層34及びギャップ層35をメッキ形成するときに、補助磁極層31上から、下部磁極層34が成長して湾曲することを防止でき、下部磁極層34及びギャップ層35をを確実に平坦化させて、磁気ヘッドの記録特性を均一化することが容易になる。
【0123】
なお、下部磁極層34と補助磁極層31の電気的な絶縁及び磁気的な接続を確実にするために下部磁極層34の後端面34aと補助磁極層31の前端面31aの距離t2は、ギャップ層35の膜厚の2倍以下であることが好ましく、より好ましくは、ギャップ層35の膜厚以下である。本実施の形態では、距離t2は50Å以上6000Å以下であることが好ましい。
【0124】
なお、図19では補助磁極層31の後端面31b側にも、絶縁層92が設けられているが、これは後述する製造方法に由来するものである。
【0125】
絶縁層92は、図6に示された工程によって補助磁極層31を形成したのち、例えば以下にしめす方法で形成することができる。
【0126】
まず、図20に示されるように、下部コア層30、補助磁極層31、Gd決め層32、メッキ下地層84を覆うように絶縁層92をスパッタ法や蒸着法を用いて成膜する。絶縁層92の材料にはAlやSiOなどの無機絶縁材料を用いる。次に、図21に示される工程で、下部コア層30及びメッキ下地層84の膜面垂直方向(図示Z方向と逆方向)からの異方性イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって、下部コア層30及びメッキ下地層84上の絶縁層92を除去する。このとき、下部コア層30及びメッキ下地層84上の絶縁層92を完全に除去し、補助磁極層31の前端面31a上の絶縁層92の膜厚を50Å以上6000Å以下にする。その後、図8に示される工程と同様にして磁極層33を形成し、さらにコイル層、上部コア層を形成する。
【0127】
あるいは、図22に示されるように、下部磁極層34の後端面34aと補助磁極層31の前端面31aの間の絶縁層93をレジストなどの有機絶縁材料を用いて形成してもよい。絶縁層93はレジストフォトリソグラフィーによって所定の形状に形成される。なお、下部磁極層34の後端面34aと補助磁極層31の前端面31aの距離t3を、50Å以上6000Å以下にすることが好ましい。また、下部コア層30の膜面垂直方向(図示Z方向と逆方向)からの異方性イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって、Gd決め層32上の絶縁層93を除去してもよい。
【0128】
図23は、他の形態の磁気ヘッドの縦断面図である。
再生用磁気ヘッドHrの構成は、図1及び図2に示された磁気ヘッドの再生用磁気ヘッドHrと同じである。なお、以下の説明において図1及び図2に示された磁気ヘッドと同じ名称の層は、特に説明のない限り同じ材料で形成されているものとする。
【0129】
そして分離層27の上に下部コア層60が形成されている。下部コア層60はNiFe系合金などの磁性材料で形成される。下部コア層60は記録媒体との対向面Fからハイト方向(図示Y方向)に所定の長さ寸法で形成される。
【0130】
下部コア層60には記録媒体との対向面Fからハイト方向(図示Y方向)にかけて所定の長さ寸法で形成された隆起部60aが形成されている。隆起部60aは下部コア層60の一部をなすものであるが、下部コア層60の下層部60bと一体に形成されていてもよいし、別体に形成されていてもよい。
【0131】
隆起部60aのハイト方向後端面60a1からハイト方向(図示Y方向)に所定距離離れた位置にバックギャップ層62が下部コア層60上に形成されている。
【0132】
隆起部60a及びバックギャップ層62は磁性材料で形成され、下部コア層60の下層部60bと同じ材質で形成されてもよいし、別の材質で形成されていてもよい。また隆起部60a及びバックギャップ層62は単層であってもよいし多層の積層構造で形成されていてもよい。隆起部60a及びバックギャップ層62は下部コア層60の下層部60bに磁気的に接続されている。
【0133】
下部コア層60及びバックギャップ層62に囲まれて形成された空間内にAlやSiOなどの絶縁材料で形成されたコイル絶縁下地層63が形成され、コイル絶縁下地層63上に、バックギャップ層62の周囲をらせん状に巻回するコイル層64が形成されている。コイル層64の上にはコイル絶縁層65が,無機材料によって形成されている。
【0134】
隆起部60aの上には、記録媒体との対向面Fからハイト方向(図示Y方向)に所定距離だけ離れた位置からハイト方向に向けてGd決め層32が形成されている。
【0135】
さらに、Gd決め層32と下部コア層60の隆起部60a間に、磁性材料によって形成された補助磁極層94が設けられている。補助磁極層94は隆起部60aから削りだされたものであり、補助磁極層94と隆起部60aは一体に形成されている。Gd決め層32の前端面32aと補助磁極層94の前端面94aは段差のない連続面となっている。
【0136】
また、記録媒体との対向面FからGd決め層32までの隆起部60a上、またGd決め層32よりハイト方向のコイル絶縁層65上、及びバックギャップ層62上に、下から下部磁極層69及びギャップ層70が形成されている。この態では下部磁極層69及びギャップ層70はメッキ形成されている。
【0137】
ギャップ層70上及びGd決め層32上には、上部磁極層71がメッキ形成され、さらに上部磁極層71上には上部コア層72がメッキ形成されている。上部磁極層71は、Gd決め層32上を経てバックギャップ層62上まで延びている。
【0138】
23に示すように、下部磁極層69、ギャップ層70、上部磁極層71及び上部コア層72の4層73上には、例えばAlやレジストなどの絶縁材料で形成された絶縁層74が形成されている。
【0139】
また隆起部60a上とバックギャップ層62上間を直線状の4層で結んで磁路長を形成するため、上部コア層72下の層が盛り上がって形成される磁気ヘッドに比べて磁路長を短くできる。
【0140】
このため磁気ヘッドを構成するコイル層64のターン数を少なくしても一定の記録特性を維持することができ、ターン数を減らせることでコイル抵抗を低減できるから磁気ヘッドの駆動時においても磁気ヘッドの発熱を抑え、この結果、ギャップ層70が記録媒体との対向面Fから突き出す等の問題を抑制することができる。
【0141】
また磁路長を短くできるので磁界反転速度を上げることができ、高周波特性に優れた磁気ヘッドを形成することができる。
【0142】
さらにコイル層64を覆うコイル絶縁層65に無機絶縁材料を用いることができる。よって磁気ヘッドの熱膨張係数を低減させることができる。
【0143】
次に、Gd決め層32よりも記録媒体との対向面F側に位置する下部磁極層69、ギャップ層70及び上部磁極層71は磁極層として機能し、Gd決め層32よりもハイト側に位置する下部磁極層69、ギャップ層70及び上部磁極層71はヨーク層として機能している。
【0144】
すなわち下部磁極層69、ギャップ層70、および上部磁極層71は、隆起部60a上からバックギャップ層62上まで延びて形成されているが、Gd決め層32の前後で機能が分離されており、この機能の分離によって磁気ヘッドの記録特性の性能を向上させることが可能になっている。
【0145】
また下部磁極層69、ギャップ層70、上部磁極層71及び上部コア層72の4層をすべてメッキ形成しており、これら4層を同じフレームでメッキ形成することができ、形成が非常に容易である。また4層メッキ構造とすることで、特に上部磁極層71の対向面の幅寸法で決まるトラック幅Twを所定寸法に高精度に規制でき、従来のようにトリミング処理などを施してトラック幅Twを小さくする必要性が無い。またこれら4層を同じフレームでメッキ形成しているから、これら4層の平面形状はすべて同じ形状になる。
【0146】
態でも、下部磁極層69の後端面69aが補助磁極層94の前端面94aに接続されているため、下部磁極層69のところにおける磁気飽和を低減でき、磁気ヘッドのオーバーライト特性の立ち上がりが急峻になる。またオーバーライト特性の絶対値も大きくなるので記録電流をすくなくすることができる。また、磁束を上部磁極層71から補助磁極層94に逃がすことができ、サイドフリンジングを低減できる。磁気ヘッドのオーバーライト特性を向上させることができる。
【0147】
なお、Gd決め層32の上面の全領域には,メッキ下地層95が形成されているので、上部磁極層71全体を所定膜厚で形成することができる。
【0148】
以上本発明をその好ましい実施例に関して述べたが、本発明の範囲から逸脱しない範囲で様々な変更を加えることができる。
【0149】
例えば、上部コア層または下部コア層を軸としてトロイダル状に巻回するコイル層を形成してもよい。
【0150】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、下部コア層上に、非磁性材料からなるGd決め層が設けられているため、ギャップデプス長を正確に規定することが容易である。従って、磁気ヘッドのオーバーライト特性を均一化できる。
【0151】
さらに、Gd決め層と下部コア層の間に、磁性材料によって形成された補助磁極層が設けられており、前記下部磁極層の後端面が前記補助磁極層の前端面に接続されているため、下部磁極層のところにおける磁気飽和を低減でき、磁気ヘッドのオーバーライト特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例の形態の磁気ヘッドの構造を示す部分正面図、
【図2】図1に示す磁気ヘッドの縦断面図、
【図3】図1及び図2に示す磁気ヘッドのGd決め層周辺の部分拡大図、
【図4】1の磁気ヘッドの製造方法を示す一工程図、
【図5】図4に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図6】図5に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図7】図6に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図8】図7に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図9】図8に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図10】図5に示す工程にある製造過程の磁気ヘッドの斜視図、
【図11】図6に示す工程にある製造過程の磁気ヘッドの斜視図、
【図12】図7に示す工程後の磁気ヘッドの斜視図、
【図13】気ヘッドの他の製造方法を示す一工程図、
【図14】図13に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図15】参考例の形態の磁気ヘッドの製造方法を示す一工程図、
【図16】図15に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図17】図16に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図18】下部磁極層及びギャッブ層が湾曲した磁気ヘッドのGd決め層周辺の部分拡大図、
【図19】本施の形態の磁気ヘッドのGd決め層周辺の部分拡大図、
【図20】本施の形態の磁気ヘッドの製造方法を示す一工程図、
【図21】図20に示す工程の次に行なわれる一工程図、
【図22】本施の形態の磁気ヘッドのGd決め層周辺の部分拡大図、
【図23】参考例の形態の磁気ヘッドの構造を示す縦断面図、
【図24】従来における磁気ヘッドの構造を示す部分正面図、
【図25】図24に示す磁気ヘッドの縦断面図、
【図26】従来における磁気ヘッドの縦断面図、
【符号の説明】
30 下部コア層
31 補助磁極部
32 Gd決め層
33 磁極層
34 下部磁極層
35 ギャップ層
36 上部磁極層
38 コイル層
41 上部コア層

Claims (8)

  1. 以下の工程を有することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
    (a)下部コア層上の記録媒体との対向面となる位置よりもハイト方向に離れた位置に、非磁性材料を用いて、Gd決め層を形成する工程と、
    (b)前記Gd決め層によってマスクされない前記下部コア層の表面を削り、前記Gd決め層の下に補助磁極層を形成する工程と、
    (c)次工程で、前記補助磁極層と下部磁極層とが磁気的に接続されつつ、電気的に絶縁されるように、前記補助磁極層の前端面に絶縁層を設ける工程と、
    (d)前記下部コア層上であって、記録媒体との対向面となる位置から前記補助磁極層の前端面に形成された前記絶縁層の前端面にかけて下部磁極層をメッキ形成し、これにより、前記下部磁極層と前記補助磁極層とを磁気的に接続し、電気的に絶縁する工程と、
    (e)前記下部磁極層上にギャップ層をメッキ形成した後、前記ギャップ層上から前記Gd決め層の上面にかけて上部磁極層をメッキ形成する工程と、
    (f)前記下部磁極層、ギャップ層、上部磁極層からハイト方向に離れた位置にコイル層を形成する工程と、
    (g)前記上部磁極層の上に、上部コア層を形成する工程。
  2. 以下の工程を有することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
    (h)下部コア層上に、この下部コア層を形成する磁性材料とは異なる磁性材料からなる磁性材料層を形成する工程と、
    (i)前記磁性材料層上の記録媒体との対向面となる位置よりもハイト方向に離れた位置に、非磁性材料を用いて、Gd決め層を形成する工程と、
    (j)前記Gd決め層によってマスクされない前記磁性材料層の表面を削り,Gd決め層の下に補助磁極層を形成する工程と、
    (k)次工程で、前記補助磁極層と下部磁極層とが磁気的に接続されつつ、電気的に絶縁されるように、前記補助磁極層の前端面に絶縁層を設ける工程と、
    (l)前記下部コア層上であって、記録媒体との対向面となる位置から前記補助磁極層の前端面に形成された前記絶縁層の前端面にかけて下部磁極層をメッキ形成し、これにより、前記下部磁極層と前記補助磁極層とを磁気的に接続し、電気的に絶縁する工程と、
    (m)前記下部磁極層上にギャップ層をメッキ形成した後、前記ギャップ層上から前記Gd決め層の上面にかけて上部磁極層をメッキ形成する工程と、
    (n)前記下部磁極層、ギャップ層、上部磁極層からハイト方向に離れた位置にコイル層を形成する工程と、
    (o)前記上部磁極層の上に、上部コア層を形成する工程。
  3. 前記磁性材料層の飽和磁束密度は、前記下部コア層を形成する磁性材料の飽和磁束密度より大きい請求項2記載の磁気ヘッドの製造方法。
  4. 前記Gd決め層の前端面と前記補助磁極層の前端面を、連続面にする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気ヘッドの製造方法。
  5. 前記(c)工程及び前記(k)工程において、前記絶縁層の前記補助磁極層の前端面に対する法線方向の膜厚を、50Å以上6000Å以下にする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気ヘッドの製造方法。
  6. 前記ギャップ層を、NiP、NiReP、NiPd、NiPt、NiRh、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Cr、Ag、Cu、Tiのうち1種または2種以上から選択された非磁性金属材料でメッキ形成する請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気ヘッドの製造方法。
  7. 前記(c)工程及び前記(k)工程は、前記下部コア層、前記補助磁極層及びGd決め層を覆うように無機絶縁材料より成る前記絶縁層を形成した後、前記下部コア層上及び前記Gd決め層上に形成された前記絶縁層を除去することによって行う請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気ヘッドの製造方法。
  8. 前記(c)工程及び前記(k)工程は、前記補助磁極層の前端面に有機絶縁材料から成る前記絶縁層をフォトリソグラフィー技術により形成することによって行う請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気ヘッドの製造方法。
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