JP4183165B2 - 弾性表面波共振子及びこれを用いたラダー型弾性表面波フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の移動体通信機器に用いられる弾性表面波フィルタに関し、圧電基板上に1対の櫛歯状電極が互いに噛み合ったIDT電極(インターディジタルトランスデューサ)が複数形成された弾性表面波共振子及びこれを備えたラダー型弾性表面波フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電波を利用する電子機器のフィルタ,遅延線,発振器等の構成素子として多くの弾性表面波装置が用いられている。特に、小型・軽量でかつフィルタとしての急峻遮断性能が高い弾性表面波フィルタは、移動体通信分野において、携帯端末装置のRF段及びIF段のフィルタとして多用されるようになってきており、低損失かつ通過帯域外の遮断特性として、高い減衰特性と、広い帯域幅が要求されている。
【0003】
携帯電話等のRF段に用いるフィルタの1種には、同一圧電基板上に複数個の一端子対の弾性表面波共振子を配設し、この弾性表面波共振子を直並列に梯子状に接続したラダー型弾性表面波フィルタが知られている。このラダー型弾性表面波フィルタは小型であると共に低損失であり、急峻な減衰特性のフィルタが実現できるため、携帯電話等のRF−弾性表面波フィルタとして広く使用されている。
【0004】
このようなラダー型弾性表面波フィルタの場合、比帯域幅BW/fo(BW;通過帯域幅、fo;中心周波数)は、フィルタを構成する弾性表面波共振子の共振周波数frと反共振周波数faの差であるΔf(=fa−fr)を共振周波数で規格化したものでほぼ決定される。
【0005】
また近年、携帯電話システムの急激な変化に伴って、システム側の要求スペックもより厳しいものになってきているので、従来に比して広帯域でより矩形に近く、急峻性に優れた通過帯域特性を持つ弾性表面波フィルタが切望されている。
【0006】
弾性表面波フィルタの通過帯域の急峻性は、やはり上記Δf(=fa−fr)で決定され、Δfの小さい弾性表面波共振子を用いることにより、急峻性に優れた通過帯域特性が得られることが分かっている。比帯域幅および通過帯域の急峻性を決定するΔfは、圧電基板の材料定数である電気機械結合係数と電極パターンの膜厚に大きく依存し、所望の比帯域幅を得るために最適な電気機械結合係数を有する圧電基板と電極膜厚の組み合わせを選択してフィルタを作製する必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電基板の最適基板方位を見出すことは、SAWフィルタの開発の他に圧電基板の開発が加わることになり、完成までに非常に多大な開発期間を要し、顧客の要求に満足できなくなるという問題点があった。そこで、圧電基板は、やむを得ず一般的な基板・方位のものを採用し、電極構造で改善する方法が検討されていた。
【0008】
また、電極構造は、上記の説明のとおり、梯子型(ラダー型)電極が有望視されているが、従来のラダー接続の弾性表面波装置は図6に示すとおり、直列腕を構成する弾性表面波共振子と、並列腕を構成する弾性表面波共振子とが、交互に信号線上に接続され、いわゆる梯子(ラダー)状に接続された構造が一般的に用いられている。
【0009】
ところが、上記電極構造による電気特性の改善方法は、一般に各共振子のIDT電極対数、電極指周期、交差幅、反射器本数などを変更する程度であり、若干の改善は見られるものの、フィルタの要求仕様を満たすような改善は見られず、品質的に問題のあるSAW装置になってしまうという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、圧電基板・カット方位は従来の一般的な基板を使用した状態で、急峻性に優れた通過帯域特性を有し、品質的に良好なフィルタとすることが可能な弾性表面波共振子とこれを用いたラダー型弾性表面波フィルタを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波共振子は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指とが、1本ずつ交互に噛み合うように配置された内側IDT電極と、前記圧電基板上であって、前記内側IDT電極の片端側または両端側の弾性表面波伝搬路上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群とが、電極指群どうしが交互に噛み合うように配置され、前記内側IDT電極と電気的に並列接続された外側IDT電極と、を有し、前記外側IDT電極は、前記内側IDT電極によって発生する共振特性の1/n(nは、一方または他方の前記電極指群を構成する電極指の数)の周波数にて共振するものである。
【0012】
また、本発明の弾性表面波共振子は、上記構成において、前記外側IDT電極は、前記内側IDT電極の一端から前記内側IDT電極を構成する電極指幅の整数倍の距離の90%〜110%だけ離して配置されたものである。
【0013】
また、本発明の弾性表面波共振子は、上記構成において、前記内側IDT電極と、前記外側IDT電極との間に、さらに反射器電極が設けられたものである。
【0014】
また、本発明のラダー型弾性表面波フィルタは、直列共振子と並列共振子とを有し、前記直列共振子及び前記並列共振子の少なくとも一方に、本発明の弾性表面波共振子を用い たものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を模式的に示した図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1に本発明の弾性表面波フィルタの一部に使用する弾性表面波共振子の構造を表す。図中の1は不図示の圧電基板上に形成した本発明の弾性表面波共振子であり、一方の櫛歯状電極の一部を構成する1本の電極指と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する1本の電極指とが、交互に噛み合うように配置された内側IDT電極1と、これの弾性表面波伝搬路上の両側(または片側)に反射器電極2と、一方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群とが、電極指群どうしが交互に噛み合うように配置された外側IDT電極3とからなっている。この実施形態では、外側IDT3の電極指ピッチは内側IDT電極1の2倍としている。また内側IDT電極1に電気的に並列接続している。このように、例えば2本単位で交互に噛み合った外側IDT電極3は、本来のIDT電極によって発生する共振特性の1/2の周波数帯域にて共振するため、通過帯域内では純粋な容量成分として働く。
【0017】
急峻な肩特性を持ったフィルタ特性を実現するために、本発明の弾性表面波フィルタでは、弾性表面波の伝搬特性を変えずに、並列に付加した、1本ずつ交互に噛み合っていない櫛歯状電極指からなるIDT電極(外側IDT電極)の持つ静電容量によって、各弾性表面波共振子のΔfを任意に制御することができる。これによりフィルタの通過帯域特性をより急峻にできる。
【0018】
図12は本発明の弾性表面波共振子の等価回路を説明するための図であり、外側IDT電極で構成された付加容量Cp(17)を接続した場合の電気的等価回路図である。ここで、共振周波数fr=1/√(L1・C1)、反共振周波数fa=1/fr・√(1+C1・(Co+Cp))で表すことができる。付加容量Cpを増加させることによって、faは低下するが、frは変化しない。ここで、15は内側IDT電極1と反射器2の等価的内部容量でC1、16は内側IDT電極1と反射器2の等価的並列容量Co、17は説明したように外側IDT電極3で構成された付加容量Cp、18は内側IDT電極1と反射器2の等価的内部抵抗R、19は内側IDT電極1と反射器2の等価的内部インダクタンスL1である。このように、従来の弾性表面波共振子を構成する回路要素C1(15)、Co(16)、R(18)、L1(19)に対して、これと並列にCp(17)=外側IDT電極(3)が加わることで反共振周波数faのみを変化させることができる。
【0019】
以上のように、外側DT電極によって付加した容量Cpを増加させることによって、インピーダンス特性の共振周波数と反共振周波数との差Δfを制御することができる。また、このようにして構成された弾性表面波共振子を、直列側もしくは並列側の共振子に少なくとも一箇所以上使用したラダー型フィルタを形成すればΔfが小さくなり、これにより通過帯域特性の両側もしくは、どちらか片方の急峻性が向上する。
【0020】
ここで、図9に示すように、直列共振子に本発明の弾性表面波共振子を用いた特性(12)は、それを用いない特性(11)に比べて通過帯域の高周波側の急峻性が向上していることがわかる。また図示していないが、並列共振子に本発明の弾性表面波共振子を用いた場合は、低周波側の急峻性が向上する。また図示していないが、直列共振子と並列共振子の両方に本発明の弾性表面波共振子を用いた場合は、通過帯域の高周波側、低周波側の両方の急峻性が向上する。
【0021】
なお、フィルタの構成は例えば図5に示すように行なう。図5は2.5段T型ラダー型フィルタであり、直列共振子に本発明の外側IDT電極3を弾性表面波共振子に付加した場合のラダー型弾性表面波フィルタを示したものである。
【0022】
図7に従来の2.5段T型フィルタの例を示す。図7は2.5段T型フィルタであり、並列共振子に本発明の外側IDT電極3を付加した場合の弾性表面波フィルタの例である。なお、4、5はパッケージの入出力パッドにワイヤーボンディングもしくはバンプボンディングによって接続される入出力電極であり、6はパッケージのグランドパッドにワイヤーボンディングもしくはバンプボンディングによって接続されるグランドの電極である。
【0023】
また、本発明の外側IDT電極は、すべての弾性表面波共振子に付加するのではなく、少なくとも1個の弾性表面波共振子に付加することで、弾性表面波共振子によって発生する減衰極の周波数を異なる設定にすることができ、減衰帯域幅を広くすることも可能である。
【0024】
IDT電極1と外側IDT電極3の間に反射器電極2を設けることが、最も共振特性を劣化させずにΔfだけを制御することができる方法であるが、図3に示すような反射器電極2を用いないようにしてもよく、この場合は共振特性は若干劣化するがフィルタサイズを大幅に削減できるというメリットがある。これは、弾性表面波が外側IDT電極で大部分反射するからである。
【0025】
なお、図4に示すように、反射器電極2を外側IDT電極3の外側に配置した場合、弾性表面波は外側IDT電極3の外側にほとんど漏れないため、共振特性は図3の場合とほぼ同様となる。ただし、フィルタサイズが大きくなるというデメリットもある。
【0026】
ここで、従来のラダー型フィルタを構成する弾性表面波共振子(IDT電極1、反射器電極2)の弾性表面波伝搬路の延長線上(もしくは間に)に、外側IDT電極3を近接して配置しても、それぞれで発生する共振周波数が異なるため影響を及ぼすことはない。
【0027】
このため、本発明の弾性表面波共振子を使用すると、余分な基板スペースを必要としないため、チップサイズの小型化ができる。
【0028】
なお、本発明に係る弾性表面波共振子の別の構造として、図1に示すように外側IDT電極を2本単位で交互に噛み合わせる方法以外に、図13に示すように3本単位で交互に噛み合わせる場合、図14に示すように4本単位で交互に噛み合わせる場合など、交互に噛み合わせる単位数で様々な形態が考えられる。これらは外側IDT電極にて発生する不要共振の周波数を変更し、容量を微調整することができる。
【0029】
また、本発明によれば、従来のIDT電極に並列に外側IDT電極が付加されていることで、印加電力が分散され、付加されていない場合のIDT電極に比べて、電極指1本当たりにかかる電力は低減される。結果として耐電力特性に優れた弾性表面波フィルタを作製することができる。
【0030】
また、本発明によれば、電極のパターニング時に焦電効果等によって発生する静電気による電極破壊も、電力が分散されるため発生しにくくなる。
【0031】
また、従来のIDT容量付弾性表面波共振子のように電極指ピッチを単純に変更して共振周波数を異ならせた構造であると、1チップ内で電極線幅および電極間スペースが異なる。このため、どちらかの線幅にあわせたプロセス条件で作製すると、もう一つのIDT電極線幅の方の微細加工時の電極作製精度が悪く再現性に欠けるが、本発明に係る外側IDT電極であれば、電極線幅はIDT電極の電極線幅と90%〜110%の範囲で等しいためこのような問題は起きにくい。以上の理由から、より好適には100%が良い。
【0032】
また、外側IDT電極の線幅が、本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子の内側IDT電極線幅の90%〜110%でほぼ同一とすることにより、電極作製時の線幅制御が単一のプロセス条件に固定でき再現性に優れるという点から、高歩留りを実現できるという特徴を持っている。なお、より好適には内側IDT電極線幅の97%〜103%であることが望ましい。
【0033】
また、本弾性表面波フィルタは外側IDT電極を、本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子の片側に配置しても動作するが、より好適には両側に配置することで、その効果が倍になる。
【0034】
また、外側IDT電極が、本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子の両端から内側IDT電極線幅の整数倍の距離の90%〜110%だけ離して配置することで、この外側IDT電極と本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子との間に弾性表面波の相互干渉が発生せず、通過帯域内に細かなリップルが生じない。より好適には内側IDT電極線幅の97%〜103%であることが望ましい。
【0035】
また、外側IDT電極が、2本以上の単位で交互に噛み合っている理由は、例えば2本にすることで、該外側IDT電極の電極指ピッチを2倍にでき、これによって発生する共振を内側IDT電極によって発生する共振の1/2の周波数領域に移動させることで、直接、フィルタの通過特性に影響を与えないようにするためである。このため、影響を与えないために3本や4本やそれ以上の単位でこれを構成してもよい。なお、好適にはチップサイズの関係から2本であることが望ましい。
【0036】
なお、反射器を具備しない構造であっても、共振特性の特に共振周波数と反共振周波数の差を急峻にする効果は備えている。
【0037】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した弾性表面波フィルタを試作した実施例について説明する。
【0038】
42°YカットLiTaO3単結晶から成る基板上に、Al(98wt%)−Cu(2wt%)による電極パターンを形成した。このパターン作製には、縮小投影露光機(ステッパー)、およびRIE(Reactive Ion Etching)装置によりパターニングを行なった。
【0039】
まず、基板材料であるタンタル酸リチウムウエハをアセトン・IPA等の有機溶剤によって超音波洗浄し、有機成分を洗浄した。次に、クリーンオーブンによって充分に基板乾燥を行なった後、電極の成膜を行なった。電極成膜には、スパッタ装置を使用し、Al−Cuの合金材料を成膜した。この電極膜厚は約0.2μmとした。
【0040】
次にフォトレジストを約0.5μm厚みにスピンコートによってコーティングし、縮小投影露光装置(ステッパー)により、所望のパターニングを行なった。
【0041】
次に、現像装置にて不要部分のフォトレジストをアルカリ系現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた。
【0042】
次に、RIE装置により、Al−Cu電極の露出した部分のエッチングを行ない、電極のパターンニングを終了した。この後、保護膜の作製工程に移る。SiO 2 をCVD(Chemical Vapor Deposition)装置にて成膜し、その後、再度フォトリソグラフィによってレジストのパターニングを行ない、RIE装置等でワイヤーボンディング用パッド部のSiO 2 エッチングを行ない、保護膜パターンを完成した。
【0043】
次に、圧電基板をダイシング線に沿って切断し、弾性表面波フィルタ素子ごとに分割した。そして、各弾性表面波フィルタ素子をダイボンド装置にてピックアップし、Si樹脂を主成分とする樹脂でSMD(表面実装型)パッケージ内にダイボンドした。この後、200℃の温度でSi樹脂を乾燥・硬化した。SMDパッケージは、3mm角の積層タイプを用いた。次に、30μmφAuワイヤーをSMDパッケージのパッド部と弾性表面波フィルタ素子上のAlパッド上にボールボンディングした後、リッドをパッケージにかぶせ、封止機にて溶接封止して完成した。なお、弾性表面波フィルタ素子上の接地用電極パターンは各々分離して配線し、Auボールボンディングにてパッケージ上のグランドパッドに電気的に導通をとった。
【0044】
なお、ラダー型弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子は、IDT電極の対数(本数の1/2)が40〜120対、交差幅が10〜30λ(λは弾性表面波の波長)で、弾性表面波の波長λは直列と並列で違えてあるが、概略2μmとした。ここで、反射電極本数は直列共振子、並列共振子とも20本とした。
【0045】
フィルタ構成の例は図5、7に示す通りである。図5では直列共振子が3個、並列共振子が2個で構成される2.5段T型の例であり、直列共振子に本発明の弾性表面波共振子を使用している。図7は並列共振子に本発明の弾性表面波共振子を使用している例である。なお、図6は従来の弾性表面波フィルタの例であり、同じく直列共振子が3個、並列共振子が2個で構成される2.5段T型の例である。
【0046】
図8は、本発明の弾性表面波共振子のインピーダンス特性8と位相特性10であり、7と9は従来の弾性表面波共振子のインピーダンス特性と位相特性である。7のΔf=73.5MHzであったのに対して、8のΔf=66.5MHzであり、Δfを9.5%減少させることができた。
【0047】
また、この共振子を直列腕に用いた場合のフィルタ特性は図9となった。従来のフィルタ特性11に比べて、本発明のフィルタ特性12は周波数急峻性が向上し斜線部の仕様線(−30dBの部分)での周波数マージンが約8MHz増加した。なお、測定器はネットワークアナライザを用いて行ない、Sパラメータ測定をした。フィルタ特性測定には専用のテストフィクスチャを用いた。
【0048】
本発明の弾性表面波フィルタでは、弾性表面波共振子に並列に外側IDT電極を追加することで、比較的容易に共振子特性のΔfを変えることができる。
【0049】
図10は本発明の弾性表面波共振子において、図1の構成で付加した外側IDT電極3の本数を変化した場合のインピーダンス特性13と位相特性14を示したグラフである。
【0050】
外側IDT電極の本数は0、10、20、40、80本である。これをΔfの変化で散布図に書き直したのが図11に示すグラフである。外側IDT電極の本数の増加とほぼ比例してΔfが減少することがわかった。
【0051】
なお、実験に用いたラダー型弾性表面波フィルタを構成するIDT電極および外側IDT電極の1本の線幅は、概略0.5μmとした。また、IDT電極の交差幅はW=10λ(λは弾性表面波の波長:概略2μm)とした。
【0052】
また、外側IDT電極を、本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子の両端に配置することで、片側に配置した場合に比べて弾性表面波共振子全体として対称な構造となる。これにより、異常な共振モードの発生が押さえられ、不要な帯域内リップルを防ぐことができる。
【0053】
また、外側IDT電極が、本来の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振子の両端からIDT電極線幅の整数倍の距離の90%〜110%だけ離して配置することによって、異常な共振モードの発生が押さえられ、不要な帯域内リップルを防ぐことができる。
【0054】
また、他の実施例として、図13のようにIDT電極を3本単位で交互に噛み合っている櫛歯状電極指からなる外側IDT電極を付加した弾性表面波共振子、図14のような4本単位で交互に噛み合っている櫛歯状電極指からなる外側IDT電極を付加した弾性表面波共振子があり、それぞれの弾性表面波共振子で発生する不要共振を1/3の周波数、1/4の周波数に移動させることができた。ただし、チップサイズが最小でΔfを制御することができるのは2本単位である。チップサイズを優先させる設計の場合は2本単位とすべきである。このため、本構造は要求される周波数特性によって適宜変更し実施する必要がある。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の弾性表面波共振子は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指とが、1本ずつ交互に噛み合うように配置された内側IDT電極と、前記圧電基板上であって、前記内側IDT電極の片端側または両端側の弾性表面波伝搬路上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群とが、電極指群どうしが交互に噛み合うように配置された外側IDT電極と、を有し、前記内側IDT電極と前記外側IDT電極とが電気的に並列接続されたものである。これにより、圧電基板・カット方位及び電極膜厚を変えずに、急峻性に優れた通過帯域特性を有するラダー型弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0056】
また、1本ずつ交互に噛み合っていない櫛歯状電極指からなるIDT電極(外側IDT電極)を内側IDT電極に並列に付加したことで印加電力が分散され、結果として耐電力特性に優れる弾性表面波フィルタを提供できる。
【0057】
さらに、電極のパターニング時に焦電効果等によって発生する静電気に起因するところの電極破壊も、印加電力が分散されるため発生しにくい優れた弾性表面波フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の弾性表面波共振子の構造を示す平面図である。
【図2】 従来の弾性表面波共振子の構造を示す平面図である。
【図3】 本発明の別の実施例の弾性表面波共振子の構造を示す平面図である。
【図4】 本発明の弾性表面波共振子の構造を示す平面図である。
【図5】 本発明の弾性表面波共振子を直列腕に用いたラダー型弾性表面波フィルタの構造を示す平面図である。
【図6】 従来の弾性表面波共振子を用いたラダー型弾性表面波フィルタの構造を示す平面図である。
【図7】 本発明の弾性表面波共振子を並列腕に用いたラダー型弾性表面波フィルタの構造を示す平面図である。
【図8】 本発明の弾性表面波共振子のインピーダンス特性と位相特性を示すグラフである。
【図9】 本発明の弾性表面波共振子を用いたラダー型弾性表面波フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図10】 本発明の弾性表面波共振子の外側IDT電極の本数を変化させた場合のインピーダンス特性と位相特性を示すグラフである。
【図11】 本発明の弾性表面波共振子の外側IDT電極の本数を変化させた場合のΔfの変化を示すグラフである。
【図12】 本発明の弾性表面波共振子の等価回路を示すグラフである。
【図13】 本発明の弾性表面波共振子の別の実施例の構造を示す平面図である。
【図14】 本発明の弾性表面波共振子の別の実施例の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
1:IDT電極(内側IDT電極)
2:反射器電極
3:2本単位で交互に噛み合った櫛歯状電極指からなるIDT電極(外側IDT電極)
4:入力電極
5:出力電極
6:グランド電極
7:従来の弾性表面波共振子のインピーダンス特性
8:本発明の弾性表面波共振子のインピーダンス特性
9:従来の弾性表面波共振子の位相特性
10:本発明の弾性表面波共振子の位相特性
11:従来の弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタの周波数特性
12:本発明の弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタの周波数特性
13:本発明の弾性表面波共振子の外側IDT電極の本数を変化した場合のインピーダンス特性
14:本発明の弾性表面波共振子の外側IDT電極の本数を変化した場合の位相特性
15:従来の弾性表面波共振子の等価的内部容量C1
16:従来の弾性表面波共振子の等価的並列容量Co
17:本発明の弾性表面波共振子の等価的内部容量Cp
18:従来の弾性表面波共振子の等価的内部抵抗R
19:従来の弾性表面波共振子の等価的内部インダクタL1
20:3本単位で交互に噛み合った櫛歯状電極指からなるIDT電極(外側IDT電極)
21:4本単位で交互に噛み合った櫛歯状電極指からなるIDT電極(外側IDT電極)
Claims (4)
- 圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する電極指とが、1本ずつ交互に噛み合うように配置された内側IDT電極と、
前記圧電基板上であって、前記内側IDT電極の片端側または両端側の弾性表面波伝搬路上に形成され、一方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群と、他方の櫛歯状電極の一部を構成する複数の電極指から成る電極指群とが、電極指群どうしが交互に噛み合うように配置され、前記内側IDT電極と電気的に並列接続された外側IDT電極と、を有し、前記外側IDT電極は、前記内側IDT電極によって発生する共振特性の1/n(nは、一方または他方の前記電極指群を構成する電極指の数)の周波数にて共振する、弾性表面波共振子。 - 前記外側IDT電極は、前記内側IDT電極の一端から前記内側IDT電極を構成する電極指幅の整数倍の距離の90%〜110%だけ離して配置された、請求項1記載の弾性表面波共振子。
- 前記内側IDT電極と、前記外側IDT電極との間に、さらに反射器電極が設けられた、請求項1または2に記載の弾性表面波共振子。
- 直列共振子と並列共振子とを有し、前記直列共振子及び前記並列共振子の少なくとも一方に、請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波共振子を用いた、ラダー型弾性表面波フィルタ。
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