JP4183054B2 - 低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法 - Google Patents

低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物品を加熱により乾燥処理する、乾燥処理装置に関する、更に詳細には、食品工場から排出される加工製造後の残さ物を、水蒸気により湿潤処理した後に、過熱水蒸気を用いて乾燥処理し、有価物として再利用可能とする、過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生鮮食品を扱う工場からは、加工製造の材料である魚、貝、肉、野菜、果物等の、製品にはなり得なかった残さ物、即ち生ゴミが、日々、大量に排出されている。又、スープや出汁は調味液等の煮出しや抽出後の残さ物が大量に排出されてくる。他にも、漢方薬抽出工場からの残さ物や、香料や薬品等の抽出後の残さ物が排出される。これらの処理については種々の方法があるが、何れも問題点を抱えていた。
【0003】
食品加工製造工場から排出される残さ物は有機物であるから、微生物の分解、発酵作用を原理とするコンポストによって堆肥化できる。コンポスト技術では、残さ物の殆どの量が堆肥として再利用されるので、環境改善に役立つ。又、用いられる微生物は好気性微生物が多く、ひどい悪臭も発生しない。微生物を利用しているので、エネルギーコストも大きいものではないが、現在では、微生物の分解、発酵作用の速度は非常に遅く効率が悪い。排出量の大きな変動があれば追従できない。工場から排出される大量の残さ物を処理しようとすれば、広い敷地と長い時間を必要とし、土地、時間を含めての評価をすれば、現状ではコスト高である。堆肥の販売先や引取先を探すのも困難になってきている。
【0004】
残さ物は有機物であるから燃やして処理することも可能である。しかしながら、焼却設備は、設置場所の制約がある上に初期コストが嵩み、維持保全も煩雑である。残さ物を焼却してしまうと再利用の途も限られ、焼却により発生する排気ガスを考慮すれば、環境に優しいといえる技術ではない。排気ガスをなるべく出さずに完全燃焼しようとすれば、多くの酸素と高い燃焼温度が必要となる。この場合、エネルギーコストは非常に高くなる上に設備も肥大化し、益々初期コストが嵩み、維持保全も煩雑さを極める。
【0005】
一方、残さ物を、熱風乾燥する技術が考案されている。外気を導入し加熱昇温させ熱風とし、この熱によって被乾燥物の水分を気化蒸発させる技術である。熱風乾燥法は、被乾燥物から熱風中に移動した水分を、熱交換器によって冷却して除湿し再加熱する技術で、熱の有効利用や運転コスト低減のため、熱風は循環させ一部を吸気、一部を排気することが多い。
【0006】
熱風乾燥法には、大量に臭気ガスが発生し、この臭気処理が困難であるという問題があった。臭気処理の技術として、生物分解法、加熱分解法等が知られている。より低エネルギーコストである生物分解法は、被乾燥物によって性能が変わる等、残さ物への適用には問題があり、加熱分解方法は、600℃以上の温度とするため、エネルギーコストが高い。何れの方法でも設備の初期コストが嵩むという問題があった。
【0007】
又、熱風乾燥法は、被乾燥物の品質が熱によって変性するのを防止するため、乾燥工程において初期に高温とし、後期は80℃程度の低温とすることが一般的であるが、乾燥は被乾燥物の表面から進み、表面に固い乾燥皮質が形成されるので、内部の乾燥は阻害されてしまう。乾燥における水分の蒸発時には湿球温度以上に被乾燥物の温度が上昇しないので、完全な殺菌、滅菌は行われない。このため被乾燥物をより積極的に有価物として食料、飼料としてリサイクルすることは不可能であった。内部まで完全に乾燥、殺菌するために、乾燥工程の後期にも高温とすれば既に乾燥してしまっている被乾燥物の表面が変質して品質低下し、更に被乾燥物表面の酸化が進めば、焦げや自己発火にまで至る。
【0008】
180℃以上の高温ガスを吹き込み、120℃以上に出口温度を保ちながら運転する高温高湿乾燥法が知られている。この方法は、装置内での結露防止や水蒸気置換のために安定運転までに時間を要し、連続で大量処理するのには適しているがバッチ式では困難な方法である。又、原料の投入に伴う空気の流入が避けられないため排気の臭気処理が難しく、更には、原料の形状によっては前処理が必要であり、設備も複雑となるのでコストアップとなる。
【0009】
特開平5−317840号公報によれば、一般家庭、飲食店から発生する生ゴミ、所謂厨芥を、過熱蒸気を用いて乾燥する厨芥乾燥処理機が提案されている。厨芥より発生する蒸気を100℃以上に加熱して過熱蒸気とし、この過熱蒸気を乾燥に用いた乾燥機で、より低温で厨芥を乾燥出来ることから省エネルギーである。処理された厨芥は、燃焼エネルギーとして利用でき、又、乾燥工程中に外部に一部放出される過熱蒸気は少ない。従って、臭気が、厨芥乾燥処理機から外部へ漏れ難い等の効果をもたらしていた。
【0010】
しかしながら、この厨芥乾燥処理機では、厨芥から蒸発した蒸気を加熱することによって過熱蒸気を作っているため、乾燥工程における乾燥初期では通常の熱風乾燥と同じ処理方法となる。即ち、熱風乾燥によって被乾燥物の表面には固い乾燥皮質が出来てしまい、表面の酸化等もあわせて被乾燥物の品質低下が生じる。被乾燥物は、燃焼エネルギーとしては利用出来るものの、より積極的な有価物、例えば食料、飼料へのリサイクルは困難である。又、乾燥工程における乾燥初期には、被乾燥物から発生した臭気は、過熱蒸気が存在しないために空気中に放散され、蒸気中の臭気除去を行う脱臭装置では処理されずに排出され、乾燥機の近傍で悪臭を発するという問題も生じていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
最近、企業には、公害の防止、廃棄物の低減だけでなく、環境改善を見据えた、より積極的なリサイクル社会の実現への取り組みが求められている。食品加工製造工場においては、従来のような、エネルギーコストの低減、臭気対策、肥料や燃料への再利用等に加えて、残さ物を、より上流側のリサイクル先である食料、飼料等の原料として再利用し、より望ましい再資源化を図ることが求められていた。
【0012】
本発明は、上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被乾燥物の品質を維持しつつ殺菌、滅菌を行え、被乾燥物内部まで完全に乾燥することが出来て、尚且つ、臭気が出ず、省エネルギーで低ランニングコストの低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法により、食品加工製造工場から排出される残さ物を、肥料、燃料等のみならず、食料、飼料へ再利用することを実現し、工場から排出される廃棄物のより一層好ましい再資源化を図ることによって、食品加工製造工場の競争力向上に寄与すると共に、環境改善に貢献することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、種々検討した結果、乾燥運転を実施する前に乾燥室内に水蒸気を吹き出して乾燥室内の空気を追い出し、水蒸気の充満した湿潤環境において、被乾燥物に水の皮膜を形成させて湿潤状態とした後に、水蒸気を昇温して過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気により被乾燥物の乾燥を行う低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法の提供により、上記の目的を達成出来ることを見出した。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、食品残さ物の加熱乾燥に使用される、少なくとも乾燥室、加熱器、循環用ファンを備えた低温過熱水蒸気循環式乾燥装置であって、乾燥運転の実施以前に乾燥室内を水蒸気で充満し、食品残さ物である被乾燥物を充分に湿潤させる湿潤手段と、乾燥室に充満した水蒸気を昇温して過熱水蒸気とし、その過熱水蒸気により被乾燥物を乾燥する乾燥手段とを有することを特徴とする低温過熱水蒸気循環式乾燥装置が提供される。
【0014】
本発明の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置において、吹き込む水蒸気の量は、標準圧力状態(大気圧)で乾燥室容積の略1乃至10倍の量であることが好ましい。又、過熱水蒸気の温度は、略100℃乃至150℃であることも好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、食品残さ物を過熱水蒸気を用いて乾燥させる乾燥方法であって、乾燥室中に所定の量の水蒸気を吹き込み充満させ、食品残さ物である被乾燥物を充分に湿潤させる湿潤工程と、乾燥室内を所定の温度に昇温して水蒸気を過熱水蒸気とし、所定の時間、過熱水蒸気により被乾燥物の乾燥を行う乾燥工程とを含んで成ることを特徴とする乾燥方法が提供される。
【0016】
本発明の乾燥方法によれば、湿潤工程中の水蒸気の所定の量は、吹き込んだ後に乾燥室内で大気圧となり、標準圧力状態で乾燥室容積の略1乃至10倍の量であることが好ましい。又、過熱水蒸気の温度は、略100℃乃至150℃であることも好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置に関し、実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
本発明は、少なくとも乾燥室、加熱器、循環用ファンを備えており、一般には他に乾燥棚、循環経路、凝縮器、排気口、被乾燥物出入口、及び冷却器等を備えている低温過熱水蒸気循環式乾燥装置であり、減圧弁、制御弁を備えた、水蒸気用の吹込口を有している。本発明の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置においては、乾燥運転の実施以前に、乾燥室内の空気を追い出し水蒸気で充満しておいて、被乾燥物を充分に湿潤させることに大きな特徴がある。その後に、乾燥室内を加熱しながら循環運転を実施して、充満している水蒸気を昇温して過熱水蒸気とする。過熱水蒸気は、乾燥能力を持ち被乾燥物から水分を除去出来る。又、被乾燥物から蒸発した蒸気は凝縮器に入って除去される。
【0019】
過熱水蒸気による乾燥方法とは、飽和水蒸気温度以上の高い温度の乾燥能力を有した蒸気、所謂ドライスチームによる乾燥方法である。水蒸気は100℃未満では飽和水蒸気であり乾燥能力を持たないが、100℃以上になると乾燥能力を有するようになり、温度を上げる程、乾燥速度は高まる、即ち、物品を乾燥させ易くなる。水蒸気の温度では150℃〜180℃辺りに、加熱した空気乾燥よりも過熱水蒸気の方が乾燥速度が速くなる温度、所謂逆転点温度がある。本発明においては、乾燥速度を速めることよりも、より低いエネルギーコストになることを優先して、又、高温で乾燥処理することによる被乾燥物の品質低下をより防止する点から、逆転点温度以下の低い温度で、過熱水蒸気による被乾燥物の乾燥を行うことが好ましい。
【0020】
過熱水蒸気による乾燥の特長は、乾燥室内を水蒸気で満たしたまま乾燥を行えるため、被乾燥物の表面の硬化による皮質の形成が無く、蒸発が内部まで行われ易いというところにある。殺菌、滅菌、酵素失活も被乾燥物の内部まで行われるので、残さ物を乾燥した後に食料、飼料として再利用することが可能である。堆肥化の場合でも水分調節材や保管原料として有効である。
又、150℃以下の温度で行う過熱水蒸気による乾燥は、昇温によるエネルギー必要量が少なく低コストで運転でき、又、被乾燥物表面の酸化による焦げの発生や、場合によっては火災が起きるということがなく安心である。
【0021】
本発明においては、乾燥運転を行う前に乾燥室に水蒸気を吹き込み水蒸気で充満させることに特徴がある。このことは過熱水蒸気を循環して乾燥する乾燥工程の準備段階であると同時に、予め乾燥室を水蒸気で充満させることによって、空気を用いた被乾燥物の熱風乾燥を殆ど行わなくすることが出来るので、乾燥工程中における、被乾燥物表面の皮質形成の回避、被乾燥物内部からの蒸発の促進、被乾燥物内部までの完全な殺菌、滅菌の実施等の効果を導く。更には、水蒸気を被乾燥物表面に付着させ、被乾燥物から発せられる臭気の空気中への放散を防止する。水蒸気を乾燥室内へ充満させなければ、乾燥工程の初期の空気には、乾燥に伴って被乾燥物から発せられる臭気が含まれ、臭気が凝縮器を通り抜けて乾燥装置の外部へ排出されてしまい、悪臭を発する。水蒸気を充満させた後ならば、乾燥に伴い被乾燥物から発せられる臭気は、水蒸気中に出て凝縮器で処理され、排水中に回収される。即ち、乾燥装置の外部の空気中へ放散されず、臭わない。
【0022】
乾燥室を充満させるために必要な水蒸気量は、乾燥室自体の昇温や被乾燥物の加熱にエネルギーが消費されるため、乾燥室容積の約1〜10倍程度必要である。通常、被乾燥物が少ないときは1〜5倍、被乾燥物が多いときは5〜10倍の水蒸気を乾燥室内へ吹き込む。尚、10倍より多くの量を吹き込んでもよいがエネルギーの無駄となる。
水蒸気が、乾燥室に入った瞬間に均一に分散される完全混合流れのモデルで考えてみると、次式
C=1−e-n(n:乾燥室容積に対する吹込水蒸気量の比、C:乾燥室内の水蒸気置換率)
で表される蒸気量を吹き込めばよい。被乾燥物にもよるが、臭気が少なければn=1、臭気が多ければn=5程度の水蒸気量を吹き込む。
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法について説明する。
図1は、本発明に係る、低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の一実施例を示す図で、加熱器を上部に配した装置の側面図である。本例での乾燥装置は、主に、被乾燥物が載せられて、効率よく過熱水蒸気が通過する、乾燥棚6が乾燥室1の中に配置され、系内の水蒸気を循環させる循環ファン3と電動機7、及び水蒸気を加熱する加熱器4とから構成されていて、減圧弁、制御弁を備えた水蒸気吹き込み用の配管が水蒸気吹込口2に接続され、必要に応じ乾燥後の被乾燥物の冷却用に外気取り入れ用の配管が空気吸入口10に接続されている。空気吸入口10には必要に応じて無塵、無菌化された空気が流入するように高性能なHEPAフィルターが取り付けられる。被乾燥物の乾燥によって蒸発した臭気成分を含む水分は、スクラバ等の凝縮器5によって冷却され、凝縮処理水9は系外に排出され排水処理を経て放流される。凝縮器5の循環水の温度調節のため、冷却塔8が用意される。又、置換される空気の排出、及び、乾燥室1をほぼ大気圧に保つために、排気口12が用意される。
【0024】
図5は、本発明に係る乾燥方法の一実施例を示す図で、乾燥工程毎の乾燥室内の温度変化を示している。図1と図5によって、本発明の乾燥方法の動作の一例を説明する。乾燥工程は、導入工程、湿潤工程、乾燥工程A、乾燥工程B、冷却工程、搬出工程の順に進められる。
乾燥工程時間t0から開始され、乾燥工程時間t1までが被乾燥物の導入工程である。通常、乾燥室内温度11は常温(20℃)で、被乾燥物の出し入れのために側面に扉があり、ここから乾燥棚6は乾燥室1の外に出されていて、食品加工製造工場等の残さ物が、乾燥棚6に格納された後、乾燥室1の中に納められ、扉を閉め密閉される。この間の所要時間t0〜t1は乾燥物の量にもよるが概ね5〜15分である。
【0025】
乾燥工程時間t1から乾燥工程時間t2までが、本発明の主な特徴を示す湿潤工程である。加熱器4を稼働してから1〜3分後に、水蒸気が乾燥室1中へ吹き込まれる。水蒸気は減圧弁でゲージ圧(以下、圧力値は全てゲージ圧とする)0.1MPa〜0.5MPaの圧力に調圧され、制御弁を開いて水蒸気吹込口2より吹き込まれて乾燥室1内に充満する。水蒸気の圧力は、一般に0.2MPa程度で使用される。水蒸気量は、乾燥室1自体の昇温や被乾燥物の加熱に消費されるエネルギー分を含んで吹き込む必要がある。この間の所要時間t1〜t2は、乾燥室1の大きさにもよるが概ね5〜10分である。水蒸気吹き込み後の乾燥室内温度11は、被乾燥物の加熱により熱を奪われ概ね80℃前後になる。そして、押し出された空気は排気口12より排出される。又、水蒸気は凝縮器5で冷やされ、凝縮処理水9となる。
【0026】
乾燥工程時間t2から乾燥工程時間t3までが、乾燥工程Aである。循環ファン3を稼働させ、加熱器4で水蒸気を100℃〜130℃の過熱水蒸気にして循環させながら、被乾燥物の乾燥を行う。即ち、乾燥室内温度11は100℃〜130℃となる。循環ファン3の能力は3〜20m/sec程度の風速が必要で、循環ファン3の能力が大容量であるほど乾燥速度は速くなる。乾燥によって被乾燥物から除かれた臭気を含む水分は、蒸気となって移動し、凝縮器5で冷やされて凝縮処理水9となり、一定量ずつ排水処理へ送水される。この間の所要時間t2〜t3は概ね120分である。乾燥工程時間t3から乾燥工程時間t4までが、乾燥工程Bである。引き続き循環ファン3、加熱器4を稼働させ、被乾燥物の乾燥を続ける。この間の所要時間t3〜t4として約120分経過後、加熱器4を停止する。
【0027】
乾燥工程時間t4から乾燥工程時間t5までは冷却工程である。加熱器4を停止の後、約10分間循環ファン3を稼働させる。被乾燥物の乾燥後の冷却が必要な場合は更にその後、空気吸入口10の制御弁を開とし、外気を取り入れ、乾燥装置内の循環を継続し、取り入れられた外気は排気口12より排出され、乾燥室内温度11が30℃になったら循環ファン3を停止する。外気温にもよるが、通常、この間のt4〜t5の所要時間は、約40分である。
そして乾燥工程時間t5から乾燥工程時間t6までの搬出工程で、乾燥室1の扉を開け、乾燥棚6を運び出し、被乾燥物を取り出す。この間の所要時間t5〜t6は乾燥物の量にもよるが概ね5〜15分である。
本発明による乾燥方法の全乾燥工程時間t0〜t6は、乾燥装置の大きさ(乾燥室1の容積)、被乾燥物の量等にもよるが、概ね5〜8時間を要する。
【0028】
図2は、本発明に係る低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の別の一実施例を示す図で、加熱器4を側面に配した装置の側面図である。図3は、本発明に係る低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の、更に別の一実施例を示す図で、電動機7を乾燥装置内に配し、凝縮器5部分を一体化した形式の装置の側面図であり、この場合は電動機7の周囲の温度も100℃〜150℃になるので、絶縁仕様に留意した電動機7の選定が必須となる。又、図4は、循環ファン3を乾燥室1より独立させた、本発明に係る低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の別の一実施例を示す側面図である。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例)
スープの素を製造する食品工場において、乾燥室の寸法が内側で、幅2m、奥行2m、高さ3mの低温過熱水蒸気循環式乾燥装置を用いて、出汁をとった魚の残さ物800kgを乾燥した。
魚の残さ物を乾燥棚に5分で格納し、乾燥室に納めて(導入工程)、加熱器を稼働させて3分後に0.2MPaの水蒸気を乾燥室に吹き込み、魚の残さ物を充分に湿潤させた(湿潤工程)。乾燥室容積2m×2m×3m=12m3、水の分子量18、吹き込み後の乾燥室温度を80℃として、12m3×273°K÷(273+80)°K×18g/mol÷22.4l/mol=7.5kgが乾燥室容積相当の蒸気量であるから、被乾燥材料加熱分を含み約8倍量である60kgを、300kg/hの能力を有するボイラーを使用して、60kg÷300kg/h=0.2h=12分間吹き込んだ。
【0031】
その後、制御弁を閉めて乾燥室への水蒸気吹込を止め、加熱器で乾燥室内を120℃に調節しながら、循環ファンを循環風量10m/secで廻して、魚の残さ物の乾燥を行った(乾燥工程A)。乾燥工程Aは2時間行い、その間の魚の残さ物の乾燥により除去された水分量は600kgであった。引き続いて魚の残さ物の乾燥を2時間行い(乾燥工程B)、加熱器を停止した。この間の乾燥により除去された水分量は150kgであった。
【0032】
加熱器を停止してから10分間循環ファンを空運転し、その後、空気吸入口から高性能なHEPAフィルターを介して冷たい外気を乾燥室に取り入れ、乾燥室内を冷却した(冷却工程)。乾燥室内が30℃に冷やされるまで20分を要した。その後に乾燥室を開けて乾燥棚を取り出し(搬出工程)、被乾燥物を観察した。被乾燥物の重量は96kgであった。
【0033】
全ての乾燥工程に要した時間は約5時間であった。この間、ガスが排出される凝縮器近辺でも臭気は殆ど感じられなかった。又、乾燥後の魚の残さ物には表面に焦げや変色が全くなかった。乾燥後の魚の残さ物を粉砕してみたが、粉砕性は良好で全てが細かい粒状となった。回収水分(600+150)kg+乾燥後の魚の残さ物96kg=846kgと、乾燥前の魚の残さ物800kg+吹込蒸気60kg=860kgとの重量差は14kgあり、この重量差は蒸気の漏れによるものと考えられた。乾燥後の魚の残さ物から100mgを取り培養試験を行った結果は0colであり、生菌は確認されなかった。
【0034】
(比較例)
魚の残さ物の乾燥を行う前に、乾燥室を水蒸気で充満させる湿潤工程を省き、その他は実施例1と同じ条件で、魚の残さ物の乾燥を実施した。
全乾燥工程に要した時間は約4時間40分であった。この間、乾燥工程Aにおいては凝縮器近辺にて異臭が感じられた。又、乾燥後の魚の残さ物を観察すると、薄い焦げつきが見られ、表面が固くなっている部分も多く観察された。乾燥後の魚の残さ物を切って内部を観察してみると、完全に乾ききっていないと思われる柔らかな部分が見られた。又、乾燥後の魚の残さ物を粉砕してみると、細かくならずに残った固い小片がいくつも見られた。乾燥後の魚の残さ物から100mgを取り培養試験を行った結果は20colであった。
【0035】
(考察)
魚の残さ物が、湿潤工程を設けることによって、より完全に乾燥され、乾燥後の魚の残さ物の品質も、より高められることが確認できた。実施例では、培養試験の結果から完全な殺菌が示され、HEPAフィルターで無菌の空気を取り入れたこと、及び、湿潤工程を設けたことの効果が確認された。乾燥後の魚の残さ物はペット用飼料の原料としてのリサイクルが期待された。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、品質を維持しつつ被乾燥物の殺菌、滅菌が行え、被乾燥物内部まで完全に乾燥することが出来、更には、臭気も出ず、省エネルギーで低ランニングコストである低温過熱水蒸気循環式乾燥装置及び乾燥方法が提供され、これによって、食品加工製造工場から排出される残さ物を、肥料、燃料等のみならず、食料、飼料へも再利用でき、廃棄物のより望ましい再資源化が図られて、食品加工製造工場の競争力向上に寄与すると共に、環境改善に貢献することが出来るといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る、低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の一実施例を示す図で、加熱器を上部に配した装置の側面図である。
【図2】 本発明に係る、低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の別の一実施例を示す図で、加熱器を側面に配した装置の側面図である。
【図3】 本発明に係る、低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の別の一実施例を示す図で、電動機を乾燥装置内に配し、凝縮器部分を一体化した装置の側面図である。
【図4】 本発明に係る、低温過熱水蒸気循環式乾燥装置の別の一実施例を示す図で、循環ファンを乾燥室より独立させた装置の側面図である。
【図5】 本発明に係る、乾燥方法の一実施例を示す図で、乾燥工程毎の乾燥室内の温度変化を示す図である。
【符号の説明】
1…乾燥室、2…水蒸気吹込口、3…循環ファン、4…加熱器、5…凝縮器、6…乾燥棚、7…電動機、8…冷却塔、9…凝縮処理水、10…空気吸入口(外気取入)、11…乾燥室内温度、12…排気口、t0〜t6…乾燥工程時間。

Claims (6)

  1. 食品残さ物の加熱乾燥に使用される、少なくとも乾燥室、加熱器、循環用ファンを備えた低温過熱水蒸気循環式乾燥装置であって、
    乾燥運転の実施以前に前記乾燥室内を水蒸気で充満し、前記食品残さ物である被乾燥物を充分に湿潤させる湿潤手段と、
    前記乾燥室に充満した前記水蒸気を昇温して過熱水蒸気とし、前記過熱水蒸気により前記被乾燥物を乾燥する乾燥手段とを有することを特徴とする低温過熱水蒸気循環式乾燥装置。
  2. 前記水蒸気の吹き込み量が、標準圧力状態で前記乾燥室容積の略1乃至10倍の量であることを特徴とする請求項1に記載の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置。
  3. 前記過熱水蒸気の温度が、略100℃乃至150℃であることを特徴とする請求項1に記載の低温過熱水蒸気循環式乾燥装置。
  4. 食品残さ物を過熱水蒸気を用いて乾燥させる乾燥方法であって、乾燥室中に所定の量の水蒸気を吹き込み充満させ、食品残さ物である被乾燥物を充分に湿潤させる湿潤工程と、
    前記乾燥室内を所定の温度に昇温して前記水蒸気を前記過熱水蒸気とし、所定の時間、前記過熱水蒸気により前記被乾燥物の乾燥を行う乾燥工程とを含んで成ることを特徴とする乾燥方法。
  5. 前記湿潤工程中の、前記水蒸気の所定の量が標準圧力状態で前記乾燥室容積の略1乃至10倍の量であることを特徴とする請求項4に記載の乾燥方法。
  6. 前記過熱水蒸気の温度が、略100℃乃至150℃であることを特徴とする請求項4に記載の乾燥方法。
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